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2025年3月3日月曜日

シコースキーがX2テクノロジーをヘリコプターのF-35として想定(The Aviationist)―X2は反転二重ローターと推進プロペラで高速かつ取り回しのよい新次元のヘリコプター実現を狙う技術ですね。

 

An head-on view of the S-97 Raider. (All images credit: Stefano D'Urso/The Aviationist)

The S-97 over Sikorsky’s Development Flight Center.

The Raider banking left at the end of a high speed pass.

The S-97 Raider and, in the background, an MH-60R Seahawk, providing a quick comparison between the two main rotor technologies.






コースキーは、将来のX2航空機に関する構想ビジョンを共有し、興味深いことに、低空領域におけるF-35ライトニングIIとして構想している。

 2024年に米陸軍の将来型攻撃偵察機(FARA)プログラムが中止された後も、シコースキーはX2技術の開発に積極的に取り組んでいる。同技術はNATOおよび韓国の次世代ヘリコプタープログラムの候補のひとつとなっている。


共同開発

X2テクノロジー・デモンストレーションの初日、ロッキード・マーチンのフューチャー・バーティカル・リフト・インターナショナル部門のディレクターであるルイージ・ピアンタドージは、X2テクノロジーに関する同社のビジョンと、NATOの次世代回転翼機能力(NGRC)イニシアティブの現状についてプレゼンテーションを行った。後者に関しては、同社はエアバスおよびレオナルドとともに、詳細なプラットフォーム構想の研究を委託されている。

 現在、シコースキーと親会社であるロッキード・マーティンが提供しているX2コンセプトは、これまでのX2テクノロジーと米陸軍のフューチャー・バーティカル・リフト・プログラムの成果を基に構築されている。X2コンセプトは、ヘリコプターの運用方法を完全に変える可能性を秘めており、軍事および民間部門双方で新たな可能性への道を開こうというものだが、現在は軍事部門に重点が置かれている。

シコースキーの開発飛行センター上空のS-97。

次世代の回転翼航空機へのニーズ

ウクライナ紛争などを含む現在の運用環境の分析から、先進的な回転翼航空機が必要であることが浮き彫りになっている。紛争により、ヘリコプターの脆弱性が再び浮き彫りになり、生存性を最大限に高め、敵対勢力による標的捕捉を困難にするために、低空飛行と高速飛行が求められている。

 低空・高速飛行は、発見をより困難にするだけでなく、敵対勢力が反応する時間を短縮し、ヘリコプターに武器を向ける時間を短くする。逆に、高速飛行であっても、高高度を飛行すれば発見は容易になり、敵対者に反応する時間を与えることになる。

 したがって、生存性は高度と速度に直接的に関連する。数値で示すと、高高度では発見率は100%に近づき、生存性は大幅に低下する。しかし、高度500フィート以下で飛行すれば、探知率は約40%にまで低下し、100フィートでは探知率は7%と最小限に抑えられ、生存能力は大幅に向上する。

 従来の単一メインローターヘリコプターに対するX2テクノロジーの大きな利点は、優れた敏捷性を維持しながら、より高速で低空飛行できる能力だとシコルスキーは述べています。


低空領域におけるF-35のパートナーとしてのX2

シコースキーは、X2テクノロジーとF-35ライトニングIIの興味深い比較を行った。F-35は、精密な標的設定、センサーとデータ融合、激しい戦闘環境下での生存性、安全な通信など、高高度領域における能力でよく知られている。

 シコースキーは、X2テクノロジーで強化された生存性、融合された戦域認識、高度なターゲティングソリューションを提供することで、低空域でもこれらの利点を再現できると考えている。結局のところ、シコースキーはF-35の製造元であるロッキード・マーチンの一部であり、これらの能力は、現在中止となった米陸軍の未来攻撃偵察機(Future Attack Reconnaissance Aircraft)が想定していた武装偵察任務に大いに役立つだろう。

 また、F-35がヨーロッパで達成したことを考慮すると、この比較は理にかなっている。当初はNATO同盟国の一部でしか採用されていなかったF-35が、今では10年以内に700機以上が配備される見込みで、ヨーロッパで最も普及した戦闘機となってきた。現在、NGRC構想には5カ国が参加しているが、さらに多くの国が参加し、F-35の協力関係を再現し、欧州全域のヘリコプター部隊の標準化を進めることも可能となる。

シンプルさとモジュール性がコスト効率の高い設計につながる

高度な性能にもかかわらず、X2は基本的にシンプルでモジュール式のテクノロジー、とシコルスキーは主張する。モジュール式であることはコスト削減につながり、拡張性と適応性のあるソリューションを実現しり。現在、あらゆる新しい軍事プログラムで採用されているMOSA(モジュラー・オープン・システムズ・アプローチ)は、プラットフォームを常に最新状況に保ち、低コストで維持する最良のツールとなる。

 例えば、戦場に新たな脅威が現れた場合、完成機メーカー以外の企業でも、それに対抗するアップグレードされたシステムを開発し、それを機体に迅速に搭載することができる。多くの場合、アップグレードはライン・リプレイサブル・ユニット(LRU)の交換のみで済み、これは飛行ラインでも迅速に実施でき、最小限のコストとダウンタイムで済む。


飛行力学の違い

高速回転飛行におけるな空力上の課題は、非対称揚力だ。前進するブレードが後退するブレードより多くの揚力を発生させることで、不安定な状態を引き起こす可能性がある。だが同軸二重反転ローターは、両側で揚力をバランスさせるため、根本的な問題を解消する。

 また、従来のヘリコプターでは、メインローターのトルクを相殺し、ヨー制御を行うためテールローターが必要だ。X2では、2つのメインローター間でトルクをバランスさせ、トルク差を利用してヨー制御を行う。

 これにより、テール部分に後部に取り付けられたプッシャープロペラを前方への追加推力用に確保できる。このプロペラは、高い旋回能力や高い位置での機体減速など、さらなる利点をもたらす。

 タイトな旋回を行う場合、X2はプッシャープロペラに逆推力を加えて減速し、負荷係数を最大限に高める。旋回を終えると、前方推力が再び導入され、効率的に速度を回復する。この方法により、旋回を高速で終えながら、旋回半径を可能な限り小さくできる。

 従来のヘリコプターで着陸する場合、減速するには機首を上げる必要があり、特に不慣れな着陸地点に接近する際には、飛行の最も重要な局面のひとつで視界が低下する可能性がある。また、減速を開始する適切なタイミングを計画する必要があり、つまりヘリコプターはより低速でより長い距離を移動する必要がある。

 一方、プッシャープロペラは、パイロットが着陸地点を遮るものなく見渡しながら減速し、より素早く速度を落とすことを可能にする。シコースキーは、UH-60ブラックホークとの比較を行い、X2 はより高速で走行を開始した場合でも、停止までに必要な距離が34%少ない約 500m であることを示した。レイダーは高速通過の最後に左に傾斜した。


拡張性と多様性

X2テクノロジー・デモンストレーションに関するレポートの第1部で述べたように、最初のX2デモンストレーターは2008年に飛行した。このテクノロジーはその後、S-97レイダーと同様のレイダーX用に拡張され、さらに14トンのSB>1デファイアントにまで発展し、拡張性を実証した。

 シコースキーによると、複数国が14~15トンの範囲の回転翼機の要件を評価しているが、明確な要件は設定されていない。しかし、同社は12トンの構成が能力と価格の最適なバランスを提供できる可能性があると信じており、軍に費用対効果の高い持続可能なソリューションを提供し、最終的には商業市場にも提供できると考えている。

 その主な利点は、多様な任務に複数のプラットフォームを投入するのではなく、単一プラットフォームを各種用途に合わせて再構成できるため、機材管理を最適化し、取得コストを削減できるという、多用途への適応性だ。12トンのX2コンセプトについて、シコースキーは、攻撃、海上、空挺、捜索救助、および多用途の任務に合わせ機内を迅速に再構成できる可能性を評価している。


自律性

X2は、フライ・バイ・ワイヤ(FBW)システムにより、有人から無人への移行が容易になるため、オプションとして無人操縦機能が統合されている。実際、FBWシステムには包括的なセンサーと制御装置が含まれているため、無人操縦機能を追加するには、FBWシステムを搭載していない従来の航空機と比較して、ソフトウェアの修正と最小限の追加作業のみで済む。

 無人操縦機能は、UH-60 OPV(オプション操縦機)プログラムを通じてすでに実証済みだ。2024年10月、ロッキード・マーティン・ロータリー・アンド・ミッション・システムズ社長のステファニー・ヒルは、300マイル離れた場所からフライ・バイ・ワイヤのUH-60ブラックホークヘリコプターの実験機を操縦しました。

 タブレットとデータリンクを使用して、MATRIX 自律飛行システムを搭載したヘリコプターに離陸とホバリングを自律的に実行するよう指示し、その後、同乗しているパイロットからの入力なしで旋回飛行を行い、再び着陸した。この公開デモンストレーションは、少なくとも2020年以降に実施された複数のテストに続くものです。

 このシステムは、パイロットを置き換えるのではなく、AIによる支援でパイロットを補佐し、地表への制御飛行の防止、悪天候時の航行の容易化、作業負荷の軽減を支援する。 主な考え方は、複雑な任務ではパイロットを支援し、遠隔地への補給任務など日常的な任務ではパイロットに代わり任務を遂行できるように、ヘリコプターに自律性を装備することだ。

 もちろん、これを実現するには、航空機に複数のセンサーを装備し、空間認識能力と人工知能アルゴリズムを備える必要がある。これにより、地形、交通、燃料、天候、空域制限などを考慮した最適な飛行経路をシステムが決定し、任務の安全な遂行が可能になる。


技術的優位性

将来の技術的進歩、例えば、積層造形やハイブリッド電気推進などは、成熟すればX2の能力をさらに強化する可能性がある。これらの技術はすでに現在利用可能とはいえ、成熟度がまだ十分とはいえない。

 オープンシステムアーキテクチャ(OSA)は、航空隊と能力の管理方法を変化させることができます。システムが小さなインターフェースのコンポーネントに分割されることで、ヘリコプターのほとんどすべての部品を、新しい要件に合わせて取り外し、交換、アップグレードすることが可能となる。

 また、センサーとコンピューターが収集したすべてのデータは、運用とメンテナンスの改善にも利用できる。ダウンタイムを最小限に抑える効率的なメンテナンスにより、ヘリコプターの能力を最大限に活用することが可能となる。


NATO次世代ロータークラフト能力(NGRC)

NATOは新たな運用上の課題とギャップを特定し、次世代ロータークラフト能力(NGRC)イニシアティブを推進している。NGRCは、NATOの複数の同盟国向けの新しい中型多用途ロータークラフトのコンセプト開発を目的としている。

 NATO支援・調達機関(NSPA)は、NGRCの運用能力およびサポート能力を満たす可能性のある統合プラットフォーム構想を実現する最先端技術を特定し、活用するよう請負業者に要請している。また、デジタル設計および開発プロセス、先進材料および製造における革新も求めている。2024年、NSPAはエアバス・ヘリコプターズ、ロッキード・マーティン・シコルスキー、レオナルドの3社に詳細なプラットフォーム構想研究を実施する契約を交付した。

 現在、NGRCには6か国が参加しており、5つの研究が進められている。そのうち3つは産業界との共同研究、2つは内部研究です。完全な電気推進は今後20~30年は実現不可能であるという結論に達した新型エンジン研究、ロッキード・マーチンに委託されたオープン・システム・アーキテクチャ(OSA)研究、初期要件を精査するために2024年に3社に委託されたプラットフォーム・コンセプト研究などがある。


共同開発

シコースキーは、X2技術の大部分は国際パートナーと共同開発が可能であり、米国国防総省の技術移転規制の対象となるとしている。企業やパートナーとの新たな契約は、技術を継続的に改良するエンジニアリングコミュニティの維持にも役立つ。

 旧式機種に代わる次世代の回転翼機に対する世界的な需要は大きいことから、海外との協力の可能性も決して低くない。実際、NATOだけでも2035年以降に900機以上の軍用ヘリコプターの更新が予定されており、また韓国では次世代ヘリコプタープログラムに400機のヘリコプターが必要になると見込まれている。

 NATOの公式な提案依頼書は来年にも発表される予定で、すでに専任のプログラムマネージャーと専門家チームが配置されている。また、準軍事、法執行、商業用途など、幅広い市場の可能性も、この技術の恩恵を受けるだろう。■



TAGGED:Lockheed Martin次世代ロータークラフト能力NGRCS-97 RaiderSikorskyX2 技術デモンストレーション


Sikorsky Envisions X2 Technology as the Helicopter Equivalent of the F-35

Published on: February 26, 2025 

 Stefano D'Urso


2015年5月26日火曜日

シコルスキーS-97レイダー初飛行に成功


ブラックホーク後継機種として米陸軍、その先に各軍共通次世代ヘリを目指し、まずシコルスキーは革新的な同軸ローターのレイダーを自社開発しました。ボーイング・ベルはティルトローターで競合するはずですが、どうなりますかね。

Sikorsky S-97 Raider Achieves First Flight

By Joe Gould1:01 p.m. EDT May 22, 2015
(Photo: Sikorsky)
WASHINGTON — シコルスキーS-97レイダーが5月22日初飛行に成功した。
同機はウェストパームビーチ(フロリダ州)の同社施設を離陸しおよそ1時間で予定の飛行運動すべてをこなした。今年中のテストで徐々に性能を試していく。
「新世代のヘリコプターの同機による初飛行はシコルスキー社のみならず航空業界全般で大きな一歩だ」とマーク・ミラー(同社研究エンジニアリング部門副社長)は述べた。「初飛行は毎日あるものではないが、既存製品と大きく異る新型機だと特別なイベントになる」
シコルスキーは同機が米陸軍の求める次世代垂直離着陸機(軽)ならびに武装偵察機の性能要求に答えるものと期待している。
同社関係者はレイダーは特殊作戦任務に有益だとし、今後陸軍が求める大型機の実証の役割もあるとする。陸軍は各軍共用多用途ヘリコプターの後継機を企画中で、ブラックホークに代わる機種を調達する。
ミラーはレイダーの性能に自信を示し、同機を単なる新型ヘリコプターとしては見ていないという。なぜなら同機は従来のヘリコプターではできないこと、想定もしていないことを実現するからだという。高速飛行、高高度上昇、高温環境での飛行、搭載量も拡大するという。「アパッチでは不可能な性能が多数あります」
ミラーによると同社は「同機に大きな賭けをしている」という。レイダー開発費用の四分の三はシコルスキー自社負担で残りは主要取引企業54社が負担している。
「航空業界はこれまで創造性に欠けるとか革新性がないといわれてきたが、この機体の技術は根本から性能を変える。ヘリコプターの二倍の速度で飛行し、ヘリコプターにはない性能も発揮できる」
レイダーの原型はX-2技術実証機で、これはシコルスキーが2000年代後半に開発したものだが、レイダーでは機体は11,000ポンドと二倍になり、6名の強襲任務隊員と装備弾薬を運ぶ。
同社パイロット、ビル・フェル Bill Fell によればS-97は「岩のようにしっかりと」しており、振動・騒音ともに低く、反応がよいという。副パイロットのケビン・ブレーデンベック Kevin Bredenbeck はX-2で主パイロットをつとめ、両名はS-97が通常のヘリコプターと異なる機体だと述べ、性能に好印象を持ったという。
同機のリジッド・ローターシステムにより「驚くべき量の機体制御」が可能になったとフェルは語る。「ロール、ピッチのインプットを素早く入れると遅延なく反応する」
もともと設計工程の完了後48ヶ月後に初飛行する予定になっていた。これでも防衛産業の常識では相当早いが、実際は数ヶ月遅れたという。新技術導入による製造面での追加作業のためだが、遅れた分は一年間のテスト期間中に取り戻せるという。
テストでは装備搭載状態で220ノット(約400キロ)を実現し、装備を外せばもう少し早くできるとアンディ・バーナード Andy Bernhard 技術主幹は言う。テストの目的はスピードと高G機体操作の確認だ。
テストには2機投入し、一機は性能確認用、もう一機は顧客向けデモ飛行のほかミッション装備・武装の搭載の可能性検証に投入するという。
「概念を根本から変える性能があり、顧客むけに体験飛行をし、性能を確かめてもらう準備中です」とミラーは言う。「試してもらえればわかってもらえるはずで、一刻も早く正式採用したくなるのではないでしょうか」■