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2018年10月9日火曜日

★★フランスと交渉難航するオーストラリアはやはり日本潜水艦技術を求めてくるのか

うーん、これはどうなんでしょう。いかにも虫の良い主張であり、完全にオーストラリアの視線の記事ですが、日本としても遺恨よりも前向きに未来を展望したほうがいいのかとも思えます。そもそも日本の産業界が輸出なり現地建造に積極的だったのかわかりませんが、かねてから主張しているように政府主導の輸出振興は最初の段階はともかく、成約までフォローすることに無理があり、プロの総合商社に任せたほうがいいと考えています。ただし、死の商人のイメージを恐れる既存企業では無理なら第三セクターの防衛装備国際普及機構を作ればいいのではないでしょうか。ともあれ、オーストラリアから再び甘言が来そうですね。



Aussies At Impasse With France Over New Sub; Japan May Win オーストリア次期潜水艦交渉でフランスと難航、日本に受注の可能性か



By ROBBIN LAIRD and HARALD MALMGRENon October 05, 2018 at 9:53 AM



JS Hakuryu (SS-503) arrives Pearl Harbor in 2013
そうりゅう級ディーゼル電気推進攻撃型潜水艦
ランスとオーストラリアの関係では英海軍が到達する数日前にフランス人がオーストラリアに来ていた事実は意外に知られていない。オーストラリア大陸探検は大部分をフランスが行っている。そのフランスとオーストラリアの関係は新型攻撃潜水艦ショートフィン・バラキューダを巡る戦略的提携関係が締結されれば密接になる。だがその可能性が日増しに薄れる中で両国で事業へ疑問が強まっている。では代替策はあるのか。
フランスとオーストラリアは豪海軍向け新型潜水艦建造を巡る意見の相違点を埋める必要があるが、来年に予定されるオーストラリア新政権発足の前に解決が求められ、最も有望な代替策が日本だ。
2016年新型潜水艦をフランスと共同建造するとの発表がオーストラリア政府から出た。老朽化してきたコリンズ級潜水艦6隻にかわり新型艦は航続距離を延長し「地域内で右に出るもののない潜水艦」(豪政府)を12隻建造する構想だ。
新型潜水艦はフランス技術を採用するが、建造はオーストラリア国内で行い、オーストラリア国内雇用を確保し2020年代中の運用開始を目指す。
ただしフランス、オーストラリアの間で建造をめぐり意見が食い違ったままなのが問題だ。信頼・信義を巡る問題であり、フランス、オーストラリア共に協力関係を強める動きを示していない。
直近の報道から合意達成は困難なようだ。オーストラリア-フランス合作のショートフィン・バラキューダ潜水艦事業は設計段階が始まっているがフランスで新政権が発足し、国防相、調達部門DGAの長がともに交代した。オーストラリアとの基本合意が知的財産権ほかで未解決のままだ。
オーストラリアで鍵となる問題は建造と知財(IP)の他、そもそも新型潜水艦を連続建造する能力が国内にあるのかとの疑問だ。二国間で新型潜水艦を共同開発するため技術移転が双方向で必要であり脅威関係が急速に変化する中で潜水艦開発は長期になる。
オーストラリアの目指すショートフィン・バラキューダ新型潜水艦はフランス設計、オーストラリア建造で米製戦闘システムを搭載する構想だ
フランスで新政権が生まれたが、オーストラリアでも政権交代がありそうだ。議会選挙は来春の前に行われる。現在の国防相クリストファー・パインChristopher Pyneは潜水艦建造に当初から関与している。選挙区は南オーストラリア州で建造場所となる予定だ。また前国防産業相としてパインは政権変更前に合意達成をなんとしても実現したいところだろう。だが同事業をめぐり政界のコンセンサスが腰砕けになっているとオーストラリア放送協会ABCが報じている。
「南オーストラリア州選出無所属上院議員四名が構想を批判し、フランス企業ネイバルグループを使い12隻建造する同案では別の国際企業なら数十億ドルの費用節減が生まれるとしている」(ABC報道)
ではフランスとの共同建造案が放棄されればどうなるのか。フランス案以外の選択肢はあるのか。
内部事情に詳しい筋によればオーストラリアにはフランス以外の選択肢はないとフランス側が高をくくっているのは明白でフランスとしては展開を待っていれば、オーストラリア現政権あるいは新政権が折れて従来型技術の移転に落ち着くはずと見ているが、オーストラリア側は広範囲の共同開発で次世代にふさわしい潜水艦の実現を目指している。
オーストラリアが求めているのは第一線級の機能を有する潜水艦で米国や日本の海軍部隊と共同作戦能力のある艦だ。オーストラリア-日本-米国による対中国ASW包囲網の実現が最大の課題だけにこのことは理解できる。
フランス案がつぶれた場合に一番の選択肢が日本との共同開発であるのは明白だ。
日本の造船産業界は本件の受注失敗から共同開発とオーストラリア国内建造に真剣に対応すべきだったとの教訓を得たはずだ。
防衛体制の強化で日本への関心が高まる中で、オーストラリアは国内防衛産業基盤の再建も必要なため、完璧な提携国になる。両国は米国とも密接な関係がある。両国は米国の政治状況が急変した場合の担保が必要な点でも共通する。また両国は国防産業力の強化を目指す点も共通だ。技術面でのねらい、対米関係の強化でともに全く新しい産業力がオーストラリアに生まれる可能性につながる。
日本にとっても柔軟度を高める効果が期待できる。オーストラリアはコリンズ級の近代化改装に取り組んでおり、次期潜水艦導入までの耐用年数延長を狙っている。新型艦は大型かつ性能が大幅向上でき、オーストラリア国内で建造され、日本も一部の建造艦を購入する合意が可能だろう。日本も次期潜水艦を調達でき、日本列島の防衛に特化した艦として導入できるのだ。
両国が協力して潜水艦建造に乗り出せばこれ以外の防衛装備でも同様の動きに発展する可能性がある。日本では新型装備の試験場確保が国内で制約となっているが、オーストラリア内部の広大な地域が理想的な試験場となる。
フランス政府が事業に残る意向であれば、太平洋の環境が急変している事実を直視し、オーストラリアが軍事・産業双方で主要勢力になる野望を持っていることを理解するのが賢明だろう

安倍政権は米国のみとの安全保障関係を見直す検討をしており、国内産業能力は米国やオーストラリアと提携させたほうが効果が高いと考えている。日本の対オーストラリア経済関係は通商と直接投資が伝統的に中心だが今や新しい段階にあり、新型防衛装備の共同開発が両国に望ましい効果を生む。協力関係によりオーストラリアは武器輸入国の位置づけを脱し、世界の工業開発面のトップに踊り出せる。

2018年5月16日水曜日

これがフランスの新型原潜バラクーダ級だ

いまだにオーストラリアがまだ実艦が存在しないバラクーダ級改を採用した理由がわかりませんが、艦の大きさが決め手だったのでしょうか。よくわかりません。


France Is Building a New Nuclear Powered Submarine. Here Is What It Can Do. 

フランスが建造中の新型原子力潜水艦の能力は?



May 12, 2018


ランスが攻撃型原子力潜水艦を追加発注した。
国防大臣フローレンス・パルリが主催した5月2日の大臣間投資会合を受けて、フランス政府はバラクーダ級原子力攻撃型潜水艦の5号艦発注を発表した。この前にフランス海軍参謀総長クリストフ・プラザック大将が議会で昨年10月に5号艦の発注が近づいていると発言していた。
さらに2019-2025年にかけての国防予算原案が2018年2月に発表され、その中でバラクーダ級6隻の建造予算の言及があった。艦名はシュフランSuffren、デュゲイ=トルーアンDuguay-Trouin、トゥールヴィルTourville、デュプティ=トゥアールDupetit-Thouars、デュケーヌDuquesne、ド・グラースDe Grasseと決まっており、一号艦のシュフランは2020年に海軍へ引き渡し予定だ。
パラクーダ級の建艦工程は1998年に始まったと国防関連データベースGlobal Securityが特記している。建艦に向けた設計作業はその四年後の2002年に始まり、2006年にフランス国防省が国営艦船建造企業DCN(その後DCNSに、さらに今日はNaval Groupへ社名変更)に79億ユーロ(93億ドル)で発注された。原子力関連部分はArevaが担当する。原子炉はフランス海軍の原子力空母シャルル・ドゴールの炉を原型とするが、フランスは高濃縮ウラニウムを使わず民生市場で核燃料を調達する。
バラクーダ級では原子力弾道ミサイル潜水艦(SSBN)ル・トリオンファン級の最終艦ル・テリブルで採用した戦闘制御システムSYCOBSを採用する。Naval Technologyによれば「同システムはアクティブ、パッシブ双方のセンサー、電気音響視覚の各センサー、データ処理、外部戦術データダウンロードの処理、魚雷、ミサイル、対抗措置の制御、外部通信、航法をすべて統合する。通信装備には衛星通信や超長波リンクを使う」とある。
完成すればバラクーダ級SSN各艦は四隻残るリュビ級潜水艦、二隻在籍する改良型アメティスト級に交代する。新型潜水艦は潜航時おおむね5,300トンでリュビ級のほぼ二倍となる。艦体は大型化するが新型バラクーダ級乗組員は60名のみと現行艦より10名少ない。全長99.5メートル、全巾8.8メートルで最大深度は350メートルとなる。潜航時の巡航最大速度は25ノットと言われる。
兵装では533mm魚雷管4本で魚雷あるいはミサイル発射管18から20本をミッションで使い分ける。「F21魚雷、エクゾセSM39ブロック2Mod2対艦ミサイル、MdCN(巡航ミサイル)、FG29機雷を搭載する」との元関係者証言もある。
新型潜水艦でフランス海軍は二種類の新しい機能を実用化する。まず対地攻撃能力でこのため空中発射式巡航ミサイルスキャルプEP(英国名称ストームシャドウ)の改装が進んでいる。Naval Technologyによれば「長距離精密攻撃能力があり最大1,000キロの攻撃能力がある。スキャルプには慣性誘導で飛翔中もデジタル地形マッチングとGPSによる補正を行う。赤外線イメージシーカーと自動標的認識能力で最終誘導を行う」とある。また「同ミサイルは潜水艦魚雷発射管からと水上艦の垂直発射管の双方での運用を目指す」
次の新機能は特殊部隊チームを上陸させることでフランスが展開中の北アフリカでの対テロ作戦をにらむと有益だ。さらに無人水中機(UUVs)の運用も将来実現できる設計だともいわれる。
就役前の艦であるが、バラクーダには海外からの関心も集まっている。まず、オーストラリアが通常動力型のショートフィン・バラクーダを現行コリンズ級の後継艦として実績のあるドイツ提案の216型、日本のそうりゅう級を押さえて採用している。さらに韓国がバラクーダを国産原子力潜水艦の原型として注目している。韓国にとってバラクーダ級の魅力は前述のように高濃縮ウラニウムが不要な点だ。■
Zachary Keck is a former managing editor of the National Interest and the official foreign-policy advisor of the 06010. He tweets at @ZacharyKeck.

Image: Wikimedia Commons

2016年10月6日木曜日

★そうりゅう級潜水艦がオーストラリアに採用されなかったのは航続距離の不足が理由なのか



なるほどオーストラリアの求めた長距離性能が現行型では不足して、居住性でもケチを付けられていたわけですか。でもそんなことはオーストラリア版改修設計で対応できていたはずなので、選外となったのは別の理由があるのでしょうね。

The National Interest

Why Japan’s Soryu-Class Submarines Are So Good

October 1, 2016

  1. 第2次大戦で日本が得た教訓はふたつ。そのうち自ら開戦すべきでないという教訓はしっかりと生きているようだ。もうひとつが戦時中の連合国による海空の封鎖体制で日本は飢餓一歩手前まで追いやられたことだ。資源に乏しく耕作地も限られた日本にとって次の戦争を生き残り、海空の交通路を確保することが必須であり、そのため日本は第一級の海空部隊を保持する必要がある。
  2. 戦後の日本潜水艦部隊は世界有数の実力を備えるに至っている。海上自衛隊の潜水艦部隊は22隻までの潜水艦を保有を許され、隻数も世界有数の規模だ。すべて国産で三菱重工業と川崎重工業が神戸で建造している。
  3. 日本の潜水艦は反復建造が特徴で新型潜水艦がほぼ20年サイクルで現れるまでは既存型の建造を続ける。現在のそうりゅう級はおやしお級のあとに出現し、二型式だけで潜水艦部隊を構成する。そうりゅう級は自動化を高めたのが特徴で、乗員数も幹部9名科員56名と以前のはるしお級から10名の削減が可能となった。
  4. そうりゅう級は潜行時排水量4,200トンで9隻が在籍中で戦後日本最大の潜水艦だ。全長275フィートで全幅はほぼ28フィードである。航続距離は6,100カイリで最大深度は2,132フィートと伝えられる。そうりゅう級の特徴にX型尾部があり、一説では海底近くでの操艦性を高める効果があるという。このため浅海域で運動が優秀となり、日本への侵攻ルートに想定される主要海峡を意識しているのだろう。
  5. 各艦には電子光学式マストとZPS-6F水上監視・低高度対空レーダーを備える。ただし潜水艦として主センサーはソナーでヒューズ・沖電機によるZQQ-7ソナーは艦首のソナーアレイと、艦側部につけたアレイ四本活用する。また曳航式ソナーアレイも装備し艦尾方向の探知に活用する。
  6. 533ミリ魚雷発射管6門を艦首につけ、武装は89式大型ホーミング魚雷で射程27カイリあり、実用上は2,952フィート深度で発射できる。魚雷発射管は米国との強い関係で共通化しており、そうりゅうはUGM-84潜水艦発射方式のハープーンミサイルも運用できることになる。Combat Ships of the World では各艦は兵装30本の搭載可能と未確認のまま掲載しており、旧型の20本より多くなっている。
  7. また自艦防御装備も充実し、ZLR-3-6電子対抗装置および3インチの水中対抗装置発射管二本で音響装置を放出する。パッシブ防御として艦体は音響タイルで覆い、艦内騒音の漏出が減るとともに敵のアクティブ・ソナーにも効果を発揮する。
  8. 推進方式でも注目を集める。浮上時13ノット、潜行時20ノットを出す。動力には川崎重工製12V 25Sディーゼルエンジン12基と東芝製タンデム配置電動モーター一式を利用する。静粛潜行にはスターリングV4-275R Mk大気非依存推進システムをスウェーデンのライセンスで搭載し、最大2ノットでの潜行中移動が可能だ。最終号艦ではリチウムイオン電池の搭載が噂されている。
  9. ただし、そうりゅう級も完璧とは言い難い。一つの問題がオーストラリア潜水艦調達競合で明らかになった。作戦航続距離が比較的短いことだ。6,100カイリという性能はもともとそうりゅう級が日本近海の防衛任務の想定であったためだ。
  10. オーストラリア向けそうりゅうはオーストラリアから台湾まで3,788マイルを移動する想定のため途中一回は燃料補給が必要となる。おそらく2回になっていただろう。オーストラリア向け商戦では乗員の快適度ならびに航続距離を延長するため全長を6メートルないし8メートル伸ばすことになっていた。ただしオーストラリア向け仕様改修は日本に逆効果だっただろう。
  11. 長距離ステルス性能、センサー性能、最新型魚雷やミサイルを組み合わせるとそうりゅう級は高性能ハンターキラーになる。ただし特化したハンターキラーでオーストラリアにとってはいささか取扱に困る艦となっていただろう。
  12. 後継艦の建造が今後数十年に渡り始まると見られるが、日本は無人水中潜行機の可能性を模索しており、水中通信や水中無線電力送電技術も検討いているのだ。そうりゅう級の後継艦がどんな形になるのか注目したい。■

Kyle Mizokami is a defense and national security writer based in San Francisco who has appeared in the Diplomat, Foreign Policy, War is Boring and the Daily Beast. In 2009 he cofounded the defense and security blog Japan Security Watch. You can follow him on Twitter: @KyleMizokami.
Image: Japan Maritime Self Defense Force submarine Hakuryu arrives at Joint Base Pearl Harbor-Hickam for a scheduled port visit. Wikimedia Commons/U.S. Navy



2016年10月4日火曜日

オーストラリア次期潜水艦建造でDCNS・ロッキード連合が開発契約交付を受ける


オーストラリア潜水艦選定問題ではストレスを感じた国内読者が多かったと思いますが、太平洋地区の重要なパートナー国のオーストラリア海軍の戦力整備は日本も関心を決して失っていては許されない問題です。引き続き、本問題の進展をフォローしていきます。


DCNS Satisfied With Australia's Pick of Lockheed for Sub Project

By: Pierre Tran, September 30, 2016


PARIS — DCNSがオーストラリ政府が同社およびロッキード・マーティンの設計契約を承認し、バラクーダ・ショートフィン1A遠距離攻撃潜水艦構想が前進することを歓迎する声明を発表。
  1. 「DCNSは第一段階契約がオーストラリア向け次世代潜水艦建造事業で締結に至ったことを歓迎し、ロッキード・マーティンが戦闘システム統合事業者として選定されたことも歓迎する」
  2. 設計および展開契約が調印されたことで事業着手に向かい、ロッキード社および現地業者との統合調整が開始されると同社は述べている。
  3. オーストラリア国防相マリーズ・ペインおよび国防産業相クリストファー・パインから9月30日に報道ではレイセオンが優勢といわれてきたものがロッキード・マーティンが選定されたと発表している。
  4. オーストラリア発表を受けて「長期間に渡るフランスの潜水艦部門での戦略的提携関係の大事な第一歩」とフランス国防相ジャン・イブ・ルドリアンも同日声明を発表している。
  5. DCNSの株式35%はタレスが保有しており、同社はソナー技術で独自の技術力を誇る。
  6. 「DCNSはオーストラリア政府、ロッキード・マーティン社ならびにオーストラリア国内産業界と長期に渡る戦略的関係を築くことに期待している」とDCNS会長兼CEOのエルヴェ・ジローは述べている。「今回の契約によりDCNSはオーストラリア向け次世代潜水艦建造の第一段階に進むことができる」
  7. 同社がインド向けに建造中のスコルペヌ型潜水艦の技術情報が漏洩した事件で国内メディアが表明した懸念は無関係とオーストラリアは主張するつもりなのだろう。
  8. フランス政府はDCNSを支援し、ドイツのティッセンクルップ・マリン・システムズおよび日本政府が後押した三菱重工業・川崎重工業案を破り採用されている。■


2016年5月5日木曜日

★オーストラリア潜水艦選定結果>日豪関係と選定結果は別の話と見るのがオーストラリア多数意見のようですが....



さて日本では当面の入札失敗の犯人捜しをするのでしょうが、当のオーストラリアでは選定結果を受けて建造、配備、運用など先のことを中心に考えているようです。その中で日本の論調を伝えるこの記事は貴重な存在になるかもしれません。日本の戦略思考の程度とともに品格が問われそうですね。今回はオーストラリア専門サイトからご紹介します。この案件は当面大きな進展がない限りこれまでとします。

Goodbye Option J: The view in Japan

3 May 2016 6:09PM
今週オーストラリアは潜水艦HMASランキンを日本へ派遣し共同演習に参加させ、二国間協力を促進するが、先週に三菱重工業が12隻の潜水艦建造事業で落札に失敗したことを公表したばかりだ。オーストラリア国内では入札プロセスでの日本の取扱いについて批判がすでに生まれているが(下参照)、当の日本はどう見ているのだろうか。
  1. 日本メディアは潜水艦事業の顛末に極めて高い関心を示しており、選定結果が出た今はこの傾向が強い。日本は軍事ハードウェアの輸出を可能にする改正まで行いオーストラリア向け潜水艦事業は初事案になると期待していた。特に潜水艦の共同建造は日豪並びに日米豪の防衛協力の強化につながると見ていた。
  2. 日本としては提案が採択されるものと見ていた。読売新聞は天地がひっくり返ったようだと政府の驚きぶりを表現している。The Australian紙への記事でグレッグ・シェリダンが日本で政治家や外交評論家に取材しており、日本が戦略パートナーとしてのオーストラリアへ厳しい視線を見せている様子を伝えている。特にオーストラリアと中国の関係を問題視しているようだ。
  3. オーストラリアではDCNS案の採択は日本との二国間関係とは切り離してとらえられている。しかし日本では不採択の理由に関心が集まっており、今後の影響については二の次のようだ。
  4. 日本メディアで一番目立つ論調は三菱重工業の経験不足かつオーストラリア国内建造に熱意を示したのが遅すぎたというものだ。フランス、ドイツ側がオーストラリア国防筋や政治家に積極的にロビー活動を展開した一方で日本案を売り込んだのは在オーストラリア日本大使だったという。日本の防衛関係者の一部が機密性の高い防衛技術の輸出に及び腰だったのも日本に熱意が不足していた理由とされる。
  5. 記事の多くが日本案の不採択理由を国内政治に求めている。オーストラリア前首相トニー・アボットが2015年早々に「競合評価手順」を導入したことに言及するものもあるが、それよりも同年後半に首相がマルコム・ターンブルに交代した意味を重視しているようだ。
  6. 目を通した記事の半数が中国の影響を取り上げている。読売新聞は「もしオーストラリアが中国に配慮して日本案を不採択としたのなら見過ごすことはできない」とし、日経新聞はオーストラリアが中国の機嫌を損ねたくなかったのではないかとの見方を紹介しているがこれは日本政府内部にも広がる見方と同一だ。Newsweekはターンブルの訪中と潜水艦事業の採択発表までが極めて短期間であり、首相には中国と親族・ビジネスを通じたつながりもあると指摘している。
  7. 今後の日豪関係での展望はわずかだが、以下の記事が目立つ。
  8. 産経新聞は日豪、さらに日米豪の協力にひびが入れば中国の南シナ海軍事拠点化が止まらなくなると警鐘を鳴らしている。南シナ海での各国共同パトロール案は検討の価値があり、安倍首相にはオーストラリアとの二国間関係強化を求め、日豪関係さらに日米豪の協力関係が失速していると見られないようにすべきと主張。
  9. 読売新聞は「アボット前首相は日米豪協力の重要性を認識していた。ターンブル政権にはアジア太平洋の安定性確保でどんな役割を果たすつもりなのかを説明してもらいたい」と述べている。
  10. メディアは今回の結果でショックと失望を伝える一方、オーストラリアの提案採択手順を批判する声は出ていない。日本国内ではターンブルの対日政策、対中政策はアボット政権との一貫性が高いと見ているものの、アボットが極めて日本寄りだっただけに今回の決定を日本メディアは従来の路線が変更になったと見ており、今後の論調でこの見方が出てくるだろう。

参考)4月26日にオーストラリアABC放送が伝えた関係者の声は以下の通りです。(テレビ番組からの書き下ろし)

Transcript

司会 オーストラリアの造船所ではカヌー一隻も建造できないとの悪口が当時の政府首脳から出て一年半ですが、その政府がこのたび史上最大の国防建造事業をフランスのDNCS案を採択し、500億ドルで設計、12隻建造まで一括して発注することになりました。ただし建造の大部分は国内で行います。国政選挙を数週間に控え、政府は国内雇用2,800名分が生まれると自慢していますね。政治部のリプソン記者が後で追加情報をお伝えします。

マルコム・ターンブル首相(画像) : これは象徴的な事業になります。海軍には大きな進展の日となりました。オーストラリアの21世紀経済にも大きな意義が生まれます。将来の雇用にも大きな日です。オーストラリア製、オーストラリアの雇用、オーストラリア生まれの鋼板、すべてこの国に朗報です。

デイヴィッド・リプソン記者: 事業の規模にふさわしい美辞麗句で首相は史上最大の防衛契約を交付することになります。

アンドリュー・デイヴィス(戦略政策研究所)(画像): 今回整備する潜水艦は足掛け50年の事業となり総額は900億ドルになります。

リプソン記者: フランスのDCNSはショートフィン・バラクーダ潜水艦12隻を原子力推進から通常型推進に変える形で建造し、就役を2030年以降と想定しています。我が国の国防には大きな進展となり地元製造業への活性化効果が期待されています。

ターンブル首相(画像) : さらに2,800名分の雇用がオーストラリアで波及効果として生まれ、経済効果は実に大きなものがあります。

リプソン記者:南オーストラリア州の産業界は信頼を試される機会になりますね。わずか17か月前に当時の国防相ディヴィッド・ジョンストンが造船企業ASCを公然と侮辱していました。

ジョンストン前国防相(画像) カヌー一隻もまともに作れないあそこを信頼していないとわからないかな

リプソン記者: この発言がでて一か月後にジョンストンはアボット政権から更迭されました。当時首席補佐官だったショーン・コステロがDCNSの採択を今回成功に導きました。公職にあった時から何らかの情報を知っていたのではないですか。

ショーン・コステロ(DCNSオーストラリア法人CEO)(画像) DCNSで働くことは政府の事前審査と承認済みを経て実現しており、事業関係者すべてで異論がないはずです

リプソン記者: 今回DCNS案が差がつけたのはバラクーダのステルス推進方式、ポンプジェットです。

コステロ(画像): ちょうどプロペラ機とジェット機のちがいのようなものです。ローターと(聞き取り不能)が防護枠の中でずっと低い音紋つまり騒音しか生みません。

リプソン記者: 探知が困難になりますね。

コステロ(画像): ずっと困難になりますよ。

リプソン記者: 政府としてはDCNSが12隻全部をオーストラリア国内で建造する点が気に入ったわけですね。

コステロ(画像): 一部はフランスで作業します。特殊な部分です。それでも全体の10%未満でしょう。

リプソン記者: フランス案はドイツ案、日本案より抜きんでいました。敗れた両国は失望感を表明してますが、日本のコメントがとくに辛辣です。日本の防衛相は選考結果は大変遺憾といっています。

アンドリュー・デイヴィス(画像): 今回の選定で日本の取り扱い方では問題があったと思いますよ

リプソン記者: 問題はトニー・アボットが日本から潜水艦を「完成品」として導入する話を付けたとの報道があったときから始まっていました。南オーストラリア州はこれに対して国内造船業の将来で懸念を表明しました。さらに議会内の勢力を考慮して党から追放される前日にアボットは言い方を変えて競争評価手順で行くと発表しています。

デイヴィス(画像): 南オーストラリア州とアボット氏の政治関係が日本政府をいやいやながらヨーロッパの民間会社との競争に従わせたのだと思いますね。ヨーロッパ各社には状況は困難だったのです。すると安倍氏は国内で潜水艦輸出の承認を得るべく政治力を多用しました。これまで防衛装備の輸出実績がない国にとっては大きな案件です。そこでオーストラリアはこの微妙な事情を理解してあげて何らかの穴埋めをする必要があります。

リプソン記者: 日本は残念に思っていますが、オーストラリア国内の専門家は選定結果は正しいと見ています。

ピーター・ブリッグス(潜水艦専門家(画像): 日本はこれまで自国内で潜水艦を時間をかけて発達させてきましたが、フランスやドイツの潜水艦の作り方と比べると時代遅れです。

リプソン記者: ではここから難しい話題です。オーストラリアは現在六隻のコリンズ級潜水艦を運用中で、まず2036年に一隻が退役となります。なんか遠い先の話に聞こえるかもしれませんが次世代の潜水艦は相当複雑な仕組みであり、建造が遅れれば一号艦就役が2030年代に先送りされ我が国の国防力に穴が開いてしまいますが、域内での武力紛争の可能性が高まっていきます。

ブリッグス(画像): まず三隻が2030年、2032年、2034年に稼働可能となります。さらに9隻が加われば相当の強化になります。ただし設計工程に時間をかけすぎると一号艦の就役が2035年になり、現有の六隻も稼働できるよう維持する必要があり、2030年時点で望ましい形になりません。とくにこれからの戦略構図を考えると。



2016年5月4日水曜日

★オーストラリア潜水艦選定>浮かれるパリ、一方で豪州には早くも心配の声、日本は何を学べたか



今回の商談の結果についてはこれから各種の分析が出てくると思いますが、とりあえずオーストラリア側とフランスからの発信が目立ちます。たくさん経験を積むのはいいのですが、方向性を持たずにたくさん鉄砲玉を打っても効率が悪いですね。商談に勝つことの難しさは皆さんの方がよくご存じでしょう。当面はインドとのUS-2商談の行方が注目ですかね。

「defense news」の画像検索結果Australia’s Submarine Decision: Concerns Down Under, Celebrations in Paris

Nigel Pittaway, Pierre Tran and Christopher P. Cavas, Defense News4:12 p.m. EDT May 2, 2016

Australian Sub Turnbull(Photo: James Knowler/AFP/Getty Images)
オーストラリアが次期潜水艦12隻建造でフランス大手DCNSを選定したのは外部でも大きな驚きを呼んだ。事業規模は500億オーストラリアドル(380億ドル、332億ユーロ)でドイツのティッセンクルップ・マリンシステムズ(TKMS)と日本政府が受注でしのぎを削っていた。
  1. マルコム・ターンブル首相が4月26日にフランス案の優位性が「明白」と述べるとパリではシャンパン瓶が次々と開けられたがオーストラリアでは政治観、評論家が選定を巡り意見を戦わせていた。
  2. 「疑いの余地ない結果として国防省から提言が届いた。三案はいずれも優れた内容だった」(ターンブル)
  3. 日本には失望の結果となった。もとはといえばトニー・アボット前首相自らが日本に参加を求め、当時のオーストラリア報道では首相のお墨付きとまで報じられていた。
  4. オーストラリア戦略政策研究所の上級研究員アンドリュー・デイヴィスは「わが方の首相から安倍首相へ電話で伝えたとしているが、これで当面は豪日関係は冷たくなるだろう」と見ている。
  5. 「決定そのものは悪くないと思う。どの案でも優秀な潜水艦になっていたはずだ。三カ国が競い合うのは極めて恵まれた環境だ」とデイヴィスは述べた。
French President Francois Hollande holds up a model選考に残ったフランス潜水艦の模型を掲げるフランス大統領フランソワ・オランド。DCNSのパリオフィスにて。4月26日。左はジャン・マルク・アイロー外相とジャン・イヴ・ルドゥリアン国防相。右はDCNSのCEOエルヴェ・ジロー(Photo: Christopher Petit Tesson/AFP/Getty Images)
  1. パリでは同日にフランソワ・オランド大統領自らはDCNSを訪問し、ロビーでシャンパンをふるまいながら演説をしている。関係者の手を握りながら一般社員の手まで握るという予想外の振る舞いに出た。
  2. 「これは歴史的な事業で史上最大の武器輸出案件になった」と大統領府は声明を発表し、選定は当然である、何故なら両国関係はこの50年で「戦略的段階」まで進展したと述べている。
  3. フランスが期待する事業量は170億ユーロ(195億ドル)と国防相ジャン・イブ・ルドリアンに近い筋の話として週刊誌ルポワンが報じている。ロイターは80億ユーロとこれと異なる金額を報道している。
  4. DCNSの株式35%を保有するタレスにも朗報となった。タレスは10億ユーロ(12億ドル)の売上げを期待し、一隻あたり1億ユーロ相当をソナー、電子戦装備、潜望鏡等で売り上げる。
  5. 次は設計契約の交渉とDCNS副社長マリピエール・バリエンクールが述べ、2017年早々に締結を期待している。
  6. その次は装備品の選択だ。仕様で米戦闘システム統合企業と米製兵装が求められている。報道ではレイセオン、ロッキード・マーティンの二社が入札の準備中で、オーストラリア海軍駆逐艦でロッキードはイージスシステムレーダーを、レイセオンがシステム統合の実績がある。
  7. 米製戦闘装備の搭載がオーストラリアで建造する理由で、機密技術がからむためとロビン・レアード(コンサルタント企業ICSA)が解説する。タレスのオーストラリア法人にとってDCNSとならび米企業と連携して作業を進めるよい機会になるだろうとレアードは見る。
  8. ただDCNSに米企業と組んだ経験がないことが懸念材料だ。また米企業秘密をどう守るかという点もある。
  9. 「米海軍はどの案が採択されても知財面の影響を検討済みと思います」と語るのはガイ・スティット(AMIインターナショナル)だ。「オーストラリアは米知的財産を保護できる仕組みを整えています」
The DCNS Shortfin Barracuda Block 1A design is a conventionally-poweredDCNSのショートフィン・バラクーダ・ブロック1Aは通常型動力推進で、フランスの原子力潜水艦スフラン級が原型。 (Photo: DCNS)
  1. オーストラリア政府は12隻全部をASCが南オーストラリア州アデレードで建造すると確認しているが、南オーストラリア州へは国内から批判も生まれている。政府調達の艦船の大部分を同州が建造しているという意見だ。たしかに同州アデレードにあるASCでは2020年から次世代フリゲート艦の建造も始まり、遠洋哨戒艇OPVs12隻の建造が2018年開始となる。ただしOPV建造はその後西オーストラリア州へ移管し、フリゲート艦の建造をすすめる。
  2. 潜水艦建造のスタートは2022年か2023年になると国防省報道官は言うが、このまま実施は難しいとの見方が早くも出ている。建造が遅れれば、既存コリンズ級を改修しつつ新型潜水艦の就役を待つことになる。
  3. 「2022年は希望的すぎますね。OPV建造が2018年から次世代フリゲート艦が2020年と決まっていますからね。これだけでも相当の作業量であり、技術面、施設面で手一杯というところですから」とデイヴィスは指摘する。
  4. 特に一号艦の建造は簡単ではない。「初号艦の海上公試は2028年ごろ、就役はその二年後の2030年でしょう」とデイヴィスは見る。「建造開始から海上公試までが四年間とすれば開始が2024年になってもおかしくない」
  5. ターンブル首相はオーストラリア国内でまず1,100名が直接関連し、間接サプライチェーン含めると1,700名分の仕事が生まれると述べている。波及効果はフランスの方が大きい。DCNS広報によれば協力企業含み4千名分の雇用につながるという。
  6. 日本にとって今回の敗退は学習の機会になるとの見方が多い。フランス、ドイツともに海外の防衛需要で納入実績がある中で、日本にとって初の挑戦となった。武器輸出を自ら禁止してきたのだ。日本には優秀な装備も他にあり注目も集める一方、自信過剰な態度が時として顕著に出ていた。
  7. 「初挑戦の日本は教訓を多く得たのではないか」とスティットは見ている。日豪関係には独特の側面があり、安倍政権としても潜水艦商談を特別扱いしyていたとスティットは見る。
  8. 「日本が今後世界を相手に商売するつもりがあるのかわかりません。日本も次回は完成品輸出をいきなり提案する前にもう少し現実的に成約できそうな商談にもっていくのではないでしょうか」
  9. それでも日本はあきらめず世界の防衛需要に焦点を合わせているようだ。「三菱重工の営業報告2015年版では国際防衛市場の拡大に着目していますね」(スティレット)■