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2021年4月1日木曜日

北朝鮮のEMP攻撃にどこまで対応できるか。EMP攻撃は大量報復反撃を招くだけで、実施不能では。しかし、キ〇ガイの考えることは予測不能だろう。

 

 

 兵器で電磁パルス(EMP)を発生させるのは可能だが、戦闘形態としては効果が必ずしも高いわけではない。

EMPというと怖い響きがあるが、電力網を機能不全にできるのか議論の余地がある。また、核攻撃に踏み切れば、その国は米国により完全に破壊されることとなる。

 

北朝鮮が開発中の長距離大陸間弾道ミサイル、核弾頭をめぐり朝鮮半島で開戦となれば、通常兵器のみ投入の場合でも破滅的な結果が待っている。核兵器投入に踏み切れ場もっと悪い結果が生まれ、事態は最後の審判の日にまでエスカレートする。

 

大都市圏が核攻撃された場合の損害は周知の想定だが、戦術核兵器は軽視されがちだ。北朝鮮が米主導の侵攻作戦を食い止めようと戦術核兵器投入に踏み切った場合、核爆発でEMP効果が加わる。電子装置は防護措置がないとEMPにより深刻な損傷を受ける。米軍の作戦がネットワークや高性能センサー装備に依存する分だけ脆弱になる。

 

国防専門家や軍内部にはEMPによる損害予測で公言を差し控える傾向が強い。情報が極秘扱いのためもあるが、米国や同盟国でEMP効果への防護策のある装備が一部にとどまっているためだ。

 

「実際に発生するのか、発生しないのか、装備ごとで事情が異なる」とミッチェル研究所長デイヴィッド・デプチュラ空軍中将(退役)はThe National Interestに述べていた。「追加課題になる。EMP防護策に大金が必要だ。ここ25年間にわたりコスト削減が叫ばれているが、まだ優先順位は低いままだ」

 

戦略予算評価センター主任研究員のブライアン・クラークはもっと直接的な表現をしている。

 

「わが方の装備品でEMP対策は一部に限られる。旧式アナログ方式装備や冷戦時の装備は耐えられる」とThe National Interestに語った。

 

「大気圏高高度の核爆発でEMP効果が発生するかはっきりしていない。また北朝鮮がその実行に踏み切れば自らも影響を受けるのではないか」

 

戦略予算評価センターで航空戦力を専門とする研究員マーク・ガンジンガーはB-52パイロット経歴を有し、ペンタゴンはEMPのような非対称脅威を想定しているものの、真剣に対応するためには予算獲得が必要だとThe National Interestに述べた。

 

「ここ数十年にわたり、DoDは『ハイブリッド』脅威を振りかざす潜在的侵攻勢力が通常兵器、非通常兵器など非対称能力を組み合わせ運用する事態を恐れており、WMD(大量破壊兵器)もここに含まれる。

 

「DoDの各軍部隊、兵装システムの対応能力整備には予算が必要だ」

 

北朝鮮についてはガンジンガーはEMPで北朝鮮軍にも影響は免れないが、米軍のほうが脆弱ぶりを露呈するのは確実と述べている。

 

「北朝鮮が粗削りなEMP兵器を朝鮮半島で作動させれば、自軍も影響を受け、もっと影響が深刻なのが自らの指揮統制の基本機能だ」

 

高性能機能に依存が高い米軍のほうが影響を多く受けるのではとの問いに、ガンジンガーはそれは別の可能性だと答えた。

 

「可能性は高い、そうだね。ただし、この問題にはまりたくない。

 

「軍用装備に機能不全が発生し、ネットワークも適正に強化していないと影響を受ける。同盟国部隊にも影響が出ることを忘れてはいけない」

 

ただし、北朝鮮が核兵器で都市圏を攻撃しなくても、米軍や同盟国軍部隊の頭上でEMP爆発に踏み切れば、米国が核兵器で反撃するのは必至だ。

 

「超強力EMPで北米大陸の配電網が機能不全になって、大統領は『打つ手がない』と言い訳できるだろうか」と問うのはNonproliferation Review編集者のジョシュア・H・ポラックだ。

 

「そこまで言うとオーバーだ。1.4メガトン核爆弾がホノルル上空で爆発して見通し線内で街路灯数本が消えたが、EMP専門委員会の想定する最悪のシナリオが現実になれば、抑止力にどんな影響が生まれるか予測できない。核攻撃を受け大規模被害が発生したら、同様に破壊的な効果を生む反撃に踏み切るのが自然だろう」

 

いずれにせよ、米国が介入しピョンヤンの現体制を転覆させようとすれば、北朝鮮も自制を考えなくなるだろう。

 

「せっかくの核兵器を理論上のEMP効果の実験用に投入するとは考えにくい」とPloughshares Fundを主宰していた軍備管理専門家ジョセフ・クリンシオンがThe National Interestに述べていた。

 

「EMPはいかれた発想だ。敵が核兵器を投入すれば、核使用の閾値を超え、核兵器による反撃を招く。米軍指揮官が『単なる空中爆発だ。こちらも同様の形で対応しよう』などと言うはずがない。圧倒的かつ破壊的な核兵器攻撃で応対するはずだ。か細いEMP爆発にはならないだろう」■

 

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Are North Korean EMP Weapons a Real Threat or Huge Joke?

March 24, 2021  Topic: North Korea  Region: Asia  Blog Brand: The Reboot  Tags: EMPNorth KoreaMilitaryTechnologyWorldU.S.

by TNI Staff

 

Image: Wikipedia 


2021年3月2日火曜日

B-2スピリットにあらためてEMP攻撃への防御力を強化する意味とは。


EMP攻撃が制御可能な形で実施できるのか不明ですが、シナリオとしてはもっとも恐ろしい影響を与えるはずで、我々の生活が電気中心となっているなか、テキサス州のように大規模停電が発生すれば飲水も確保できなくなります。防御策を強化しても攻撃側が出力を増やせば効果がなくなるといういたちごっこの構図になるはずですが、サイバー含め日本も真剣にこのシナリオを考えておかないとまたもや想定外として言い逃れをする状況を許すことになります。



Airmen prepare a B-2 Spirit for takeoff.

Airmen prepare a B-2 Spirit for takeoff at Naval Support Facility Diego Garcia in support of a Bomber Task Force mission, Aug. 17, 2020. (U.S. Air Force/Tech. Sgt. Heather Salazar)

 

空軍がB-2スピリット爆撃機で電磁パルスEMP攻撃への防御強化を目指していることが政府調達関連公表サイトから判明した。

 

空軍物資司令部が先月から「B-2をEMPから防御する技術の性能一式」及び関連提案を公募していることをMilitary.comに認めた。

 

情報開示の締切はすでに終わっているが、空軍は引き続き同機の「残存性増強」のため近代化改装を狙っていると同司令部は述べている。「B-2装備担当部門は近代改修を続け核攻撃の指揮統制通信 (NC3) の機能を維持していく」(同司令部)。

 

EMPとは核爆発の際に発生する膨大なエナジー放出で電気系統を機能一時停止あるいは破壊する効果がある。中国のEMP攻撃に米国は脆弱と警告する向きもあるが、EMPより核爆発そのものに注意すべきとの声もある。

 

EMPは自然現象の地磁気嵐でも発生するが、いずれにせよ爆撃機には脅威となる。ドナルド・トランプ大統領は2019年に米政府各省庁に対し、EMP攻撃への対応での調整を求める大統領命令を発出した。その内容では研究開発を続けて脅威が最も深刻な影響を及ぼしかねない機能の防御策を求めており、全国送電網や軍事装備品、基地を対象としていた。

 

B-2のエイビオニクスは一部兵器からの攻撃に「耐える」強化策を施されている。今回想定する改修では「画期的手段により接近阻止領域拒否環境でも兵装としての有効性を維持し残存性を高める」のが目的と物資司令部は述べている。A2/ADとは敵部隊の陸海空活動をさせないための軍事戦略であり実施体制を意味する。

 

B-2の性能を段階的に引き上げる計画だが、具体的な内容は保安上の理由で説明できないと物資司令部は説明している。

 

B-2は20機あり、B-21の供用開始となる2020年代中頃までは唯一のステルス爆撃機だ。ただし、空軍はB-2の退役を2032年より開始する予定。

 

B-52Hストラトフォートレスは2050年代まで供用予定で、現時点でEMP防護テストが行われている。

 

空軍発表資料によればティンカー空軍基地(オクラホマ)のコンパス・ローズテスト施設でアンテナから電磁エナジーを機体に放出する実験を昨年行っていた。

 

EMPで機体がどう反応するかを実証すると、同基地の第555ソフトウェアエンジニアリング飛行隊が説明していた。機体に何が発生するのか、性能への影響はどうなるのか、電子装備に影響が出るのかをテストしたという。

 

空軍は実験はトランプ大統領指令に沿うものであり、同時に2017年の国家安全保障戦略でも中国、ロシアの脅威の高まりを強調し、両国がEMP技術に関心を高めていると指摘していた、と説明している。■

 

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Air Force Wants to Harden the B-2 Bomber to Withstand an EMP Attack

22 Feb 2021

Military.com | By Oriana Pawlyk




 

2020年1月6日月曜日

北朝鮮のEMP攻撃は現実の脅威だ、防衛体制は整備できるか

北朝鮮の動きを見ているとEMP攻撃を想定しているように思えてなりません。全米が影響を受けるのには大規模な高高度核爆発数十発必要でしょうが、日本の場合はどうでしょう。例えば東京の中心部だけを狙ったEMP攻撃なら日本経済は機能不全となります。昨年の台風で停電が一番怖いことは国民も痛い体験をしています。太陽嵐もこわいのですが、ここは電力業界にもEMP対策としての強化策を真剣に実施してこそ国土強靭化が実現するのでは。米国全土で20億ドルなら日本はその数分の一程度でしょう。
本軍の真珠湾奇襲攻撃から78年目になったが、もっと恐ろしい奇襲攻撃の脅威が米本土で現実になりかねないことを忘れがちだ。米本土へのEMP攻撃の脅威の評価委員会は議会EMP委員会として知られ、2004年の時点で「米国を高高度核爆発による電磁パルス(EMP)で攻撃する能力を有する敵性国家があり、能力を整備中の国家もある。攻撃は西側諸国も狙うだろう」と指摘していた。
この十年でEMP攻撃の脅威に党派を超えた警戒意識が生まれた。2010年には民主党が多数を占める下院がGRID法案を賛成多数で通過させている。上院も批准し、20億ドルで全国電力網をEMPならびにスーパー太陽嵐から防御するものだ。2017年には重要インフラ防御法案が両党の圧倒的多数の賛成で成立している。
これだけ多数の議会人の賛同があるのに、フリーランス記者マシュー・ゴールトは2016年にEMPの脅威は非現実的と主張していた。EMP兵器が一度も試験されておらず、本当に専門家が述べるような壊滅的効果があるのか不明とも述べていた。これに対し米国の国防関係者、情報機関関係者のトップの面々さらにEMP委員会が反論した。これについてもNational Interestで「米国人死者数百万人:EMP攻撃への備えはできているか」との表題で以前記事が配信されており、巧妙に仕組まれたEMP攻撃を受ければ国家機能の喪失は十分有り得るとの見解が出ている。
別の記事「国防関連補佐官もEMPを正しく理解せず」で議会EMP委員会の首席補佐であり全国有数の核兵器EMP専門家であるピーター・プライ博士が寄稿しゴールト記者の誤りを論破した。プライは「高高度EMP攻撃は大気圏外で起こり、爆風・高熱・放射性降下物は地上に全く到達しない。EMPのみ到達する。そのためEMPより爆風やその他核兵器の影響のほうが恐ろしいとの記者の言い分はナンセンスだ」と述べていた。
プライ博士は同時に「EMP攻撃に高出力熱核兵器が必要というのは間違っている。EMP委員会ではいかなる核兵器もEMP脅威につながるとし、テロリストが用いる荒削りな装置でも同じだ。最大のEMP効果はスーパーEMP爆弾が生む。低出力ながらガンマ線を発生しこれがEMP効果となる。この場合の爆発規模は小さい。スーパーEMP兵器の出力は非常に低く10KT(キロトン)以下でよい。だがEMP磁界は100–200 KV/meterと25MT(メガトン兵器)の50KV/meterより高い」と説明。
ゴールト記者の最大の誤りは「北朝鮮には核兵器を米国まで飛ばすミサイルがない」と記したことだ。プライ博士は「国防総省の2015年版朝鮮民主人民共和国関連軍事安全保障面での進展報告書では北朝鮮が保有する核搭載の移動型ICBMのKN-08、KN-14での米国攻撃の可能性に触れている」と指摘しており、「EMP委員会、韓国軍事情報部、中国がそれぞれスーパーEMP兵器が北朝鮮に配備済みと警句を発している」とした。
また2017年10月に発表された「北朝鮮による核EMP攻撃の脅威は現実に存在する」の中でEMP委員会委員長ウィリアム・グラハム博士が議会にこんな警告を出していた。「EMP攻撃を北朝鮮衛星が今この瞬間にも行うかもしれない。超強力EMP兵器は比較的小さく軽量で北朝鮮の光明星-3、-4衛星の中に収まる。同衛星は米国上空を周回中だ。南極軌道にあるため米弾道ミサイル早期警戒レーダーや国家ミサイル防衛体制で探知できない」。またプライ博士は北朝鮮が超強力EMP衛星を遠隔起動できる。この形の攻撃だとあらかじめ探知できず、米指導部も誰の犯行か特定できない。ロシア、中国ともに同様の兵器を米国上空の軌道上に配備しているといわれる。
さらにプライ博士はEMP効果について、「高度30キロ以上での核爆発でEMPが発生する」としている。「EMP効果は発生が不安定でテストされたことがない」と言われることに対し、「EMP効果は半世紀にわたり確認されており、サイバー戦より理解度は高い」と述べている。シンガー博士は高性能ICBMでEMP攻撃の実施が想定されるが、EMP委員会は各種手段で実施可能で衛星、中長距離ミサイル、短距離ミサイルを貨物船から発射、巡航ミサイル・対艦ミサイルの利用、民間旅客機の利用、さらに気象観測用気球も考えられる。ICBMを利用する場合だが、精密誘導は必要なく、大気圏再突入の必要もない。
ゴールト記者はこれまでEMP攻撃の実施が皆無なのは核戦争につながる恐れがあるためと記しているが、プライ博士の指摘の通り、ロシア、中国、北朝鮮、さらにイランの軍事指導教義はすべて低出力EMP兵器は核攻撃とみなさずサイバー戦の一部だと明白に解説している。米国や同盟国に対する決定的な勝利を最小限の負担で実現できるとある。となると米国にこうした兵器を投入するしきい値は実はこちらの想定よりずっと低いのかもしれない。
安全保証に詳しいビル・ガーツはワシントンフリービーコン紙に昨年1月「中国、ロシアがスーパーEMP爆弾を開発中で『停電戦』を狙っている」との記事を発表した。「中国、ロシア等が強力な核兵器で超大型電磁パルスを発生させ電子製品全般を数百マイルに及ぶ範囲で使用不可能にしようとしているとの議会調査結果がある」とあり、この調査は「核EMP攻撃のシナリオおよび各種サイバー戦」でEMP委員会がまとめた。「核EMP攻撃はロシア、中国、北朝鮮、イランの軍事方針、演習で既定方針となっており、軍事部隊や民間重要インフラに対する画期的な新型戦としてサイバー、妨害工作と並びEMPが掲げられている」と報告書は述べている。更にガーツはロシアがEMP攻撃を宇宙空間から行う新戦略を採用し、大規模な破壊的効果を与え敵は抵抗できなくなると考えているのだという。
ガーツは「中国あるいはロシアとの大規模戦となれば第一発は宇宙空間でスーパーEMP兵器を起動し米国の核指揮命令系統や核兵器を使用不可能にするだろう」と述べ、「スーパーEMP兵器はすでにロシア、北朝鮮が保有しており、もっとも有効な防御を施した米装備でさえ影響は不可避で米核抑止力も機能維持が危うくなる」とも書いている。さらにガーツは機密解除になったEMP委員会研究内容からロシア原子力ミサイル潜水艦一隻ないし二隻でスーパーEMP兵器による奇襲攻撃に出れば米国の核・非核兵力が使用不能となり電力網への攻撃で大規模停電となる他、ミサイル防衛体制が不能となり、指揮命令センターがダウンし、NORADや核爆撃機基地、核潜水艦基地が被害を受ける。ここまで大規模なEMP攻撃でも事前警告はほぼなく、数分で効果が発生する。スーパーEMPを大気圏外で起動すれば爆発後の痕跡が残らず犯行元を探知されずに米重要インフラを破壊し、米国民数千万人の生命を奪える。同研究ではロシアがNATOを制圧しヨーロッパを占領する際、あるいは中国が台湾の防衛体制を破壊し、米空母戦闘群をノックアウトし、台湾侵攻を実行する際にも投入の可能性があると指摘している。
EMP委員会は別の資料も発表しており、大規模EMP攻撃が米本土を狙った場合、米国人口の9割が一年以内に死に直面するとしている。これは食品流通が崩壊し飢餓が広がり、飢餓から疾病が蔓延するなど悪効果が生まれるためだ。ゴールト記者はこの試算を疑い大げさと一蹴している。だが米国民数千万人を死に追いやる可能性のある危険をゴールト記者が読者に信じてもらいたい「想像の世界だけの存在」のままとしていいのだろうか。
米国に立ちふさがる脅威には全面核戦争からその存在が疑わしい人工気候変動まであるが、EMP攻撃が中でも財政的に対応が一番容易だ。全米の配電網の防御はわずか20億ドルで可能だ。米指導部は核兵器体系を再編し、国家ミサイル防衛を広げ、電力網をEMPの脅威に耐えるよう強化すべきだ。しかも迅速に。これで核ミサイル・EMP攻撃に対する備えができ、そうした攻撃を加えようとする敵への抑止効果も生まれる。米国も独自にスーパーEMP兵器の開発に踏み出すべきで、同様の兵器による米国攻撃を企てる勢力に対する抑止効果を柔軟に生み出すべきだ。■

この記事は以下を参考にしています。

The Threat of EMP Attack is Very Real

This can't be minimized--this is a threat to the American people that must be taken seriously.
December 15, 2019  Topic: Security  Region: Americas  Blog Brand: The Buzz  Tags: EMPEMP AttackAmericaFaraday CageNuclear Attack


2019年4月3日水曜日

EMP攻撃の悪夢 北朝鮮の小型核爆発で米本土は壊滅的被害を受ける では日本は?

コメントは下にあります。




North Korean EMP Weapons: Is America Vulnerable?

北朝鮮のEMP攻撃に米国は脆弱なのか

Or is this a myth?
March 20, 2019  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: North KoreaMilitaryTechnologyWorldEMP

ャック・リューやジェフリー・ルイスのような優れたアナリストのおかげで北朝鮮のミサイル、核開発の現状を一般大衆は知ることができている。また「情報量豊かな解説」にも触れている。
ただし両名は北朝鮮による電磁パルス(EMP)攻撃は、「ありえない」「SFの世界だ」として解説していない。両名は10キロトンないし20キロトンの北朝鮮保有の核弾頭では効果あるEMP攻撃実施は不可能と見ている。だがEMPによる電子装置への影響を調べるテストは1963年から実施されている。
米議会は電磁パルス攻撃による米国への脅威度評価委員会を2001年に諮問機関として設置し、議会、大統領、国防総省等に核爆発によるEMP攻撃の軍事装備、民間重要インフラへの影響を調査させた。同委員会は2015年に再結成され、太陽嵐のような自然現象のEMP効果、人為的EMP効果全て、サイバー襲撃、妨害工作、統合サイバー戦も検討対象に含めた。EMP委員会は極秘データへのアクセスを許され国防総省に勧告する権限を与えられた。
以下、読者各位にEMP脅威の実態を伝え、流布している説明、分析あるいは俗説を正したい。
初歩的核爆弾、「スーパーEMP」の核爆発はともにEMP脅威を生む
EMP委員会がみつけたのは初歩的低出力核兵器でもEMP脅威を十分生むことができ、北朝鮮のような無法者国家あるいはテロリストがEMP攻撃を実施することは可能と言う点だ。[1] 2004年版報告書では「比較的低出力核兵器で破滅的効果につながるEMP効果を広範囲の地上にもたらすことは可能で過去25年にそうのような兵器が悪意ある勢力の手に渡った可能性がある」と同委員会は指摘していた。
2004年にロシア人EMP専門家将官二名がロシアのスーパーEMP弾頭は1メーターあたり20万ボルトのEMP場を生む能力があり、「誤って」北朝鮮に運ばれたとEMP委員会へ注意喚起した。搬送されたのは「頭脳流出」が理由だったという。北朝鮮にはロシア科学者がおり、ミサイル、核開発を支援している。韓国軍情報部は北朝鮮内のロシア科学者がEMP核弾頭の開発を助けていると報道陣に語っている。2013年には中国の軍事評論家が北朝鮮がスーパーEMP核兵器をすでに保有していると語っている。 [2]
スーパーEMP兵器とは低出力で爆発威力を追求せず、を高レベルガンマ光線を放出し高周波E1 EMPを生むねらいに特化した兵器で、電子製品を広範囲で損傷させるのが目的だ。北朝鮮の核実験では2006年の初回からこのスーパーEMP兵器と同じ出力を一貫して試している。上記ロシア将官は北朝鮮核実験の開始を正確に予言し、出力についても同様だったので北朝鮮がスーパーEMP兵器を保有中との指摘を真剣に受け止めるべきだ。
衛星からのEMP脅威
アナリスト陣では北朝鮮がいつ信頼性の高い大陸間弾道ミサイル、誘導装置、再突入体を完成し米本土をねらう戦力を整備するかに気を取らる傾向が強く、EMP脅威は概ね無視されている。EMP攻撃には精密誘導装置は不要だ。効果範囲は数百、数千キロと広大なためだ。再突入体も不要で弾頭は大気圏外の高高度で爆発させればよい。ミサイルの信頼性も関係ない。EMP攻撃にはミサイル一本あればよい。
例として北朝鮮が米国へのEMP攻撃で短距離ミサイルを沖合の貨物船、あるいは潜水艦から、あるいは気球を使い高度3万メートルから発射したとしよう。低高度EMP攻撃で米本土全てを攻撃対象にできないが、東部の配電網を使用不能にできれば、米国の電力需要75パーセントを占める人口稠密地帯が影響を受ける。
さらに北朝鮮衛星でEMP攻撃が実施できる。EMPあるいはスーパーEMP兵器は小型軽量にでき、形状は米W-79核砲弾に似る。この大きさなら北朝鮮の光明星3号Kwangmyongsong-3 (KMS-3)あるいは光明星4号に搭載できる。両衛星は地球周回軌道上にあり、極周回軌道のため米弾道ミサイル早期警戒レーダーや国家ミサイル防衛体制の探知を逃れる。これはロシアが冷戦中に極秘開発した部分軌道周回爆撃システムFractional Orbital Bombardment System (FOBS)に類似し核弾頭を搭載した衛星で米国を奇襲攻撃する構想だった。 [3]
金正恩は「核の雷電」で米国を「灰燼」に帰すと恫喝し、米国の外交軍事圧力には「衛星発射を可及的速やかに実施させる」と発言したのは「敵勢力がこちらの息の根を止めようと厳しい制裁措置を加えている」さなかでのことである。[4]
誤った理解を正す
ジェフリー・ルイス、ジャック・リューによる北朝鮮EMP能力評価は根本的に誤っている。[5]
まずルイスは「ホノルルで街灯一系統が点灯しなくなっただけだ」と1962年のスターフィッシュ・プライム高高度核爆発テストについて述べEMPは無害とする証拠にしている。[6] 事実は36系統で街灯が消え、電話通信の高周波中継局がダウンし、高周波無線リンク(長距離通信用)が消え、盗難警報が使えなくなり、その他にも損害が生まれた。ハワイ諸島で壊滅的な長期停電が発生しなかったのはEMP界の外縁部分に位置したためで、かつ当時は真空管中心だったためだ。ゆっくり到達するE3パルスはハワイ事件では少なかったが、長距離配電系統へ大きな影響を与えていたはずだ。
スターフィッシュ・プライム以外の実験もあった。ロシアは1961年から62年にかけ高高度核爆発を連続実施しEMP効果をカザフスタンでテストした。この面積はほぼ西欧に等しい。 [7] テストでカザフの配電網に被害が生まれた。[8] さらに今日の電子装置は低電圧作動の設計が中心のためEMP効果に脆弱で、スターフィッシュ・プライムやカザフスタン実験の1962年当時と異なる。米本土上空で同様のEMPが発生すれば相当の脅威となる。 [9]
ルイスによればEMP発生時でも自動車は影響を受けないとあり、その根拠として車両対象のEMPシミュレーションで55台中動けなくなったのは6台だけだからとする。[10] だが、EMP委員会のテストでは自動車に損害を与える効果は想定しなかった。修理費用を計上していなかったためだ。この際でさえ一台が破損し、少なくとも2パーセントの車両が大きく損傷した。50年に渡るEMP実験では完全効果のEMPなら2パーセントでは済まないと判明している。現在の自動車ははEMPにさらに脆弱だ。電子装備が当時より広範囲に搭載されている。さらに自動車の走行にはガソリンスタンドでの燃料補給が必要だが、停電となればガソリンを出せない。ポンプ自体がEMP被害を受けている可能性もある。
ジャック・リューはネヴァダ州上空核実験で発生したEMPでラスベガスが停電にならず、EMPは脅威でないと記している。ただしリューが触れた核実験は大気圏内で行われ、発生したEMPは5マイルにとどまっていた。高高度EMP(HEMP)は高度30キロ以上の大気圏外爆発を意味し、範囲は数百キロ数千キロに及ぶ。
リューは計算間違いもしている。「20キロトン爆発が適正高度で発生すれば最大EMP効果は20キロ地点までとなる」とし、「15千ボルト/メートル以上」のE1要素がないと損傷が発生しないからとする。この数字はシステム被害を発生させる閾値を過大評価している。電子システムの損傷や妨害を発生させるE1界強度はリューのいう「15千ボルト/メートル以上」よりはるかに低い。半導体デバイスに1メートル電線をつなぐ、つまりマウスのコードや接続コードは低出力核爆発の場合数百マイル離れても数千ポルトの電流をマイクロエレクトロニクス部品に与える。EMP実験に繰り返し立ち会った経験でいうと半導体の作動は数ボルトでも作動範囲を超えれば破損し、さらに接続部分の破損につながる。
さらにリューはシステム上の混乱も弱みとなることを無視している。デジタル電子部品に数ボルトでも高いパルスが流れれば作動異常となる。給配電網の無人制御装置、長距離通信リピーター施設、ガスパイプラインのいずれでも電子的に混乱が発生すれば永続的損傷につながる。一時的に電子装置の作動が乱れても軍では決定的な結果につながる。いかなる電子装置も強化措置を受けたり試験検証されないかぎりEMPの影響を受けないとは言えない。高度に重要ながら防護されていない電子装置がEMPシミュレーションテストで破損あるいは妨害をうけており、「15千ボルト/メートル以上」ではなく1,000ボルト/メーターが脅威だ。
このため10-20キロトン低出力核兵器でもEMPは未防護装備に危険な事態を引き起こす。EMP委員会の2004年報告書は米軍で民生品利用が広がっていることに警句を述べ、EMP防護措置がないことを特記している。「高性能電子装備への依存度が高まる一方で高性能装備はEMPへの脆弱性が一層高まっており、放置すれば敵勢力にとって訴求力のある攻撃手段となる」[11] 北朝鮮の2017年4月29日ミサイルテストの爆発地点は高度72キロで10キロトン弾頭によるEMP攻撃の最適高度だった。この場合に実際に損害を与えるEMP界は推定半径930キロとなり、リューのいう20キロ半径は計算ミスだ。
米国はEMPにどこまで脆弱なのか
米軍や民間重要インフラのEMP脆弱性を見れば、高度にネットワーク化された装備の複雑な相互依存関係を意識する必要がある。EMPでその一部でも損傷・妨害すれば全体のシステムが作動しなくなる。 [12]
現実には給配電網で各種要因で機能停止が発生しており、EMP委員会、国防総省、連邦エネルギー規制委員会、国土保全省、国防脅威削減疔はすべてEMP攻撃で壊滅的効果が生まれると見ている点で正しい。一地点で電力網が被害を受ければカスケード効果で多方面にひろがり給配電網全体が使えなくなり、全体の1パーセント未満の損害から影響が拡散する。[13]
一地点での停電や小規模事故による停電とちがい、核EMP攻撃による広範囲障害が給配電網で発生すると被害が数百万地点に広がる。米国の給配電網は大部分が強化措置を受けておらずまた核EMP効果に耐えられるかテストも受けていない。米本土が核EMP攻撃を受けた場合、広範囲の停電が長期間続くことは避けられない。[14]
そのため北朝鮮保有の核兵器が初歩的かつ低威力だとしても、また別の国家やテロ集団が同様の兵器を高度30キロ以上で爆発させれば、EMP委員会の2004年報告書で警告したように「損害レベルは壊滅的効果を国家に与える。現在の脆弱性が攻撃を招きかねない」のだ。■
William R. Graham served as President Ronald Wilson Reagan's Science Advisor, Acting Administrator of the National Aeronautics and Space Administration (NASA), and Chairman of the Congressional EMP Commission.
[1] John S. Foster, Jr., Earl Gjelde, William R. Graham, Robert J. Hermann, Henry M. Kluepfel, Richard L. Lawson, Gordon K. Soper, Lowell L. Wood, Jr., and Joan B. Woodard, Report of the Commission to Assess the Threat to the United States from Electromagnetic Pulse (EMP) Attack, Volume. 1: Executive Report (Washington DC: EMP Commission, 2004), 2.
[2] Peter V. Pry, Statement Before the United States Senate Subcommittee on Terrorism, Technology, and Homeland Security Hearing on Terrorism and the EMP Threat to Homeland Security: “Foreign Views of Electromagnetic Pulse (EMP) Attack,” March 8, 2005, https://www.gpo.gov/fdsys/pkg/CHRG-109shrg21324/pdf/CHRG-109shrg21324.pdf.; Min-sek Kim and Jee-ho Yoo, “Military Source Warns of North’s EMP Bomb” JoonAng Daily, September 2, 2009; Daguang Li, “North Korean Electromagnetic Attack Threatens South Korea’s Information Warfare Capabilities” Tzu Chin, June 1, 2012, 44-45.
[3] Miroslav Gyűrösi, “The Soviet Fractional Orbital Bombardment System Program,” Air Power Australia, January 27, 2014, http://www.ausairpower.net/APA-Sov-FOBS-Program.html.
[4] Alex Lockie, “North Korea threatens ‘nuclear thunderbolts’ as US And China finally work together,” Business Insider, April 14, 2017, http://www.businessinsider.com/north-korea-us-china-nuclear-thunderbolt-cooperation-war-2017-4; “US General: North Korea ‘will’ develop nuclear capabilities to hit America,” Fox News, September 20, 2016, www.foxnews.com/world/2016/09/20/north-korea-says-successfully-ground-tests-new-rocket-engine.html.
[5] Jeffrey Lewis, “Would A North Korean Space Nuke Really Lay Waste to the U.S.?” New Scientist, www.newscientist.com/article/2129618; Lewis quoted in Cheyenne MacDonald, “A North Korean ‘Space Nuke’ Wouldn’t Lay Waste To America” Daily Mail, May 3, 2017, http://www.dailymail.co.uk/sciencetech/article-4471120/A-North-Korean-space-nuke-WOULDN-T-lay-waste-America.html.; Lewis interviewed by National Public Radio, “The North Korean Electromagnetic Pulse Threat, Or Lack Thereof,” NPR, April 27, 2017, www.npr.org/2017/04/27/525833275.; “NPR hosts laugh hysterically while America remains in the cross hairs of a North Korean nuclear warhead EMP apocalypse,” Natural News, May 1, 2017, www.naturalnews.com/2017-05-01-npr-laughs-hysterically-north-korean-emp-nuclear-attack.html.
[6] Lewis, “Would A North Korean Space Nuke Really Lay Waste to the U.S.?”
[7] 高高度EMP(HEMP)は高度30キロ以上での核爆発で発生する。広島型原爆でもHEMPの発生は可能で広範囲で電子装置が破壊される。
[8] Electric Infrastructure Security Councilの報告書Report: USSR Nuclear EMP Upper Atmosphere Kazakhstan Test 184, ( www.eiscouncil.org/APP_Data/upload/a4ce4b06-1a77-44d-83eb-842bb2a56fc6.pdf), によればOak Ridge National Laboratoryでの研究内容を引用しており, 同様のEMP攻撃が現時点で米本土に行われれば「全米365地点の変圧器が損傷し、米人口4割が電気のない生活を4年から10年強いられる」
[9] Foster, et al., Report of the Commission to Assess the Threat to the United States from Electromagnetic Pulse (EMP) Attack, Volume. 1: Executive Report, 4-8.
[10] Lewis, “Would A North Korean Space Nuke Really Lay Waste to the U.S.?”
[11] Ibid., 47.
[12] John S. Foster, Jr., Earl Gjelde, William R. Graham, Robert J. Hermann, Henry M. Kluepfel, Richard L. Lawson, Gordon K. Soper, Lowell L. Wood, Jr., and Joan B. Woodard, Report of the Commission to Assess the Threat to the United States from Electromagnetic Pulse (EMP) Attack: Critical National Infrastructures (Washington, D.C.: EMP Commission, April 2008), http://www.empcommission.org/docs/A2473-EMP_Commission-7MB.pdf.
[13] 例として the Great Northeast Blackout of 2003では 50 百万人が丸一日電気がない生活を強いられ、少なくとも11名が死亡し推定$6 の損害が発生したが、きっかけは電力ケーブルが木に接触した1件だったのでシステムの0.00001%が影響を与えたことになる。ニューヨーク市のBlackout of 1977では4,500件の強奪、警察官550名の負傷となったがきっかけは変圧所への落雷で回路遮断器が作動したことだった。インドの2012年全国停電は 670百万人に影響が出た最大規模の事件で高圧電線の過負荷が原因だった。
[14] US FERCのモデルではテロリスト攻撃で2,000箇所ある EHV 変圧所のうち9箇所つまり0.45%がダウンすれば全国規模の長期停電になると推定している。議会EMP委員会ではテロリストによるEMP攻撃で10キロトン核兵器が使われた想定でEHV変圧器十数箇所が破壊されると給配電網は壊滅し米東部が停電し数百万人の生命が危険となるとした。 For the best unclassified modeling assessment of likely damage to the US national electric grid from nuclear EMP attack see: US Federal Energy Regulatory Commission (FERC) Interagency Report, coordinated with the Department of Defense and Oak Ridge National Laboratory: Electromagnetic Pulse: Effects on the U.S. Power Grid, Executive Summary (2010); FERC Interagency Report by Edward Savage, James Gilbert and William Radasky, The Early-Time (E1) High-Altitude Electromagnetic Pulse (HEMP) and Its Impact on the U.S. Power Grid (Meta-R-320) Metatech Corporation (January 2010); FERC Interagency Report by James Gilbert, John Kappenman, William Radasky, and Edward Savage, The Late-Time (E3) High-Altitude Electromagnetic Pulse (HEMP) and Its Impact on the U.S. Power Grid (Meta-R-321) Metatech Corporation (January 2010).
コメント EMP攻撃で影響を受ける範囲は広大です。電力、通信、データが消滅した社会は想像もできません。光ファイバーは影響を受けなくても両端のデバイスは被害を免れませんし、現在の社会では現金より電子上の決済が多いためEMPでこれが消えれば経済は大損害を受けます。電気が止まれば水道も使えなくなり、自動車の点火装置が破壊されれば用をなさなくなります。航空機は飛行できず次々に墜落するでしょう。震災には影響を受けない地域から援助ができましたが、全国規模で電気通信が使えなくなればなにもできません。自衛隊がどこまで防護措置をしているかわかりませんが、国防どころではなくなります。つまり一瞬にして私達の今の社会が明治初期に戻ることになり、復旧まで数十年かかるでしょう。ではこんな攻撃をして北朝鮮になんの得があるのか。米本土へのEMP攻撃には米軍がもっと強靭なEMP攻撃を加えますが、旧式装備中心の北朝鮮社会には以外に影響は少ないかもしれません。EMP攻撃が悪夢と言われるのはわかる気がします。