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2014年6月10日火曜日

ボーイング防衛部門トップに聞く 差別化を目指すボーイング


Face to Face With Boeing's Defense, Space & Security Head

aviationweek.com May 28, 2014 | Aviation Week & Space Technology

クリス・チャドウィックはボーイング国防宇宙保安 Boeing Defense, Space & Security (BDS)の社長兼CEOだ。彼の眼には国防宇宙市場の予算環境が悪化する中で多くの同業他社が旧態依然に写る。そこで同社の戦略は他社から一歩抜け出し、本人がいうところの「本当の差別化」をすることなのだという。Aviation Week編集者に本人が語った。
Chris Chadwick
President/CEO of Boeing Defense, Space & Security (BDS)
Age: 53
Education: B.S., Iowa State University; M.B.A., Maryville University
Career: On Dec. 31, 2013, the same day his former boss Dennis Muilenburg was promoted to COO of the Boeing Co., Chadwick was named to head BDS. Prior to this, he had been president of Boeing Military Aircraft.

AW&ST: 他社の一歩先に行くために研究開発投資を増やすのか。群れから抜け出るためにはボーイングはもっと多くの資金を投入するのか。
チャドウィック: 当社はかねてより国防関連を重視し、ここ数年は投資規模が他社より大きくなっている。この市場では強制予算削減があるが、世界的なバランス再編のニーズがあり、いまこそ先に進むべき時だと判断している。新規案件が少なくなっており、足元を固めるべきで、今後もこの姿勢を守る。
差別化というが、具体的にどうするのか。たとえば、海軍の無人空母運用監視偵察攻撃機 (Uclass) の受注をめざしているが。.
Uclassについては多くは語れない。これまでは部門別に自分たちだけのことを考える傾向になりがちだったが、ジム・マクナーニーの提唱するOne Boeingでチームでよい結果が得られるようになってきた。つまり社内文化の障壁がなくなって、社内の透明度が上がってきたことで技術開発、製造技術開発、投資活動の効果がUclassやT-X練習機開発に出てきた。よく知られるコスト曲線の影響を受けない考え方に切り替わっている。
コスト曲線を断ち切るにはいろいろ方法があり、ひとつは設計開発の考え方だ。成長の方向性を組み込んで正しいコストで進める正しい能力のことだ。製造現場では新技術の応用だ。供給メーカーの側ではコスト曲線の先を行き一日目から切れ目なしに共同作業することだ。
KC-46A開発も半ば過ぎたが、ボーイングが相当の資金を投入して開発を進めているのは公然の秘密。ボーイングにとって同機開発を続ける意義は何か。また空軍、会計検査院(GAO)、ボーイングそれぞれ異なる見積もりを出しているが、どう折り合いをつけるのか。
当社は2017年に18機を引き渡す約束を履行する。変更はない。コストのくいちがいでは当社は顧客と話しており、顧客としてコストを独自に検討するのは当然だ。工程一日目からコスト、日程を共に守っている。これが当社の姿勢だ。初飛行も第3四半期予定で、ボーイングとしての見積もりには変更がない。
同機では海外販売も視野に入れているのか。ファーンボロ航空ショーなどを利用して?
検査院の最新報告を見ても給油機開発の現状に好意的な評価が出ているし、国際販売の見通しも有望だ。そこで海外営業に焦点を当てている。そのためにも中心となる顧客に対して開発が順調であると示す必要がある。One Boeingが給油機ではうまく働いている。P-8でも効率よく進められた。ファーンボロ―で大々的に売り出すかどうかは言えないが、国際市場には焦点を当てているのは事実。何と言っても市場規模が大きいから。

空軍のT-X訓練機案件ではボーイング案は他社とどうちがっているのか、他社が完全新型機ではなく既存機種を利用する中でどう対応するつもりなのか。
T-X次世代空軍向け練習機では絶対的な差を見せられると固く信じている。提携先のサーブは他社と設計開発の考え方が違っている。そこで当社と考えをぶつけあって、低予算でも多くが求めらえる環境で優れた解決策をみつけることができた。
当社の設計案は米空軍の要求内容を忠実に実現し、ニーズにこたえるものだが、他社はちがう。他社製品は他国空軍向けの内容だ。多少改修し、フライトテストからはじめるつもりだ。ただ性能はそれではたりないので拡張したり、一部性能は割愛すればコストに影響が出る。コストの点では当社案が優位だ。
競争相手が存在しない時代は終わった米国に契約から配備まで20年もかかる案件を手掛ける余裕があるだろうか。.
我々業界にあるものは素早く動く方法を見つけねばならない。スムーズかつ効率よく安価に次世代技術を設計に取り入れる方法をどうやって見つけるか。しかも今現在ではなく、5年後10年後の技術を今どうやって確保するか。iPhoneやアンドロイド携帯を見れば、アップグレードを素早く行うことがカギだとわかる。これは言うのは簡単だが、当社の関心事は技術陣にある。長い目で見て当社の差別化はここにある。
社長職で引き継いだ国防関連事業にはミサイル防衛も入っている。ボーイングは地上配備中間コース防衛システムGround-based Midcourse Defense system (GMD)の費用を下げたが、要求性能水準は引き上げられている。同システムでは2008年以降は目標捕捉成功の実績がないまま、どうやって同ミサイル開発を立て直すのか。
GMDに関しては顧客と一緒になって順調に作業を続けており、今後のテストを準備中だ。GMDについて話ができる範囲が狭いが、一度後戻りしてシステムを見直し、リスクとチャンスを把握して次回テストを成功させる。
ボーイングにとって戦闘機開発を続ける意義を見出すためには何が必要になるか。ペンタゴンには独占企業の出現を食い止める意識はあまりないようだ。米政府は戦闘機メーカー二社体制維持を意識的に進める必要があると思うか。
国防総省高官とは具体的に国際市場でF-15およびF-18を公正に販売する課題を相談したことがある。同省も公正な競争の必要性を認めてくれた。F-15は2018年までの販売が確実で、まだ潜在的な需要があるとみている。F-18は現時点では2016年までだが、軍、国防長官、議会で今後のF-18調達予算の話が進んでおり、当社は楽観視している。
それ以外に戦闘機畑で培った技術をUclassや長距離攻撃機、さらにある程度までT-Xに応用できるので感情が高ぶっているところ。各機はまもなく現れる。当社の目標はF-15とF-18の威力を可能な限り維持することと、これから出る次世代機各種案件で出来るだけ多く受注に成功することだ。各案件はうまく統合されていくと思う。
イノベーション効果について口にしていたが、反対に機体販売は最近下降気味ではないか。T-X受注が不調に終われば、国防総省向け機体メーカーとしての将来に疑問がつくのではないか。その場合、企業活動をシステム統合に振り向けるのか。
同じ質問は5年前にも出ている。企業収入の観点からは減少傾向は終わっている。34年前からは二けたのパーセントの増加になっている。そこで長距離攻撃機とT-Xの受注に重点を移している。両案件で当社が有利になっていると強気にみている。
ボーイングは無人機分野では高性能機種で大きな売り上げを実現していないが、これがUclassにどんな影響を与えるか。
ノースロップ・グラマンが一歩先にあり、ロッキード・マーティンが堅調といいたいのだろう。ボーイングにも機会があった。無人機市場はこの数年で大きく様変わりしている。無人機は大きい市場だが、万能ではないし、実績も多くない。さらに今後20年から40年先を見通すと、無人機が国内外の軍用機で主流にならないと見るのは困難だ。そこで当社はひとつずつ先に進めていく方針だ。■


2014年2月26日水曜日

MDA予算増額で地上配備迎撃態勢の整備をすすめるねらいは北朝鮮とイラン


MDA Budget Request To Boost GMD, Add Radar

By Amy Butler abutler@aviationweek.com
Source: AWIN First

aviationweek.com February 12, 2014

昨年のテストが失敗して日が浅い中、チャック・ヘイゲル国防長官は地上配備中間コースミサイル迎撃システム Ground-Based Midcourse Defense (GMD) の開発予算を増額しミサイル防衛庁(MDA)に2015年度から19年度にかけ45億ドルを追加する。
  1. これまでペンタゴンは1,570億ドルを各種ミサイル防衛手段に投入しており、GMDもその一部。
  2. ペンタゴンの予算要求案は来月に議会に提出予定で、ヘイゲル長官はGMDの予算確保を重視している模様だ。その狙いはテスト自体が目的化している現状を打破し技術の進歩を促進し、今春の迎撃テストで結果を出すことらしい。
  3. さらに最低でも15億ドルで新型レーダーを開発し、北朝鮮が発射したミサイルの探知をめざす。また大型浮遊式宇宙配備Xバンドシステムを東海岸に移動させ、イランからの攻撃を監視させる可能性もある。
  4. MDA予算はそもそも70億ドル台へ減額されるはずが、かつての90億ドル台近くまで回復される。その背景にはGMDが不当な扱いを受けているとのヘイゲル長官の懸念がある。
  5. 北朝鮮あるいはイランのICBM攻撃に対する唯一の国土防衛手段として、GMD開発が失敗すれば国家の一大事だ。GMDの契約企業はボーイングで 2013年7月5日のテストでは難易度が低いはずの内容が実施できなかった。しかも5年前には成功していたのと同じ内容だった。ヘイゲル長官は北朝鮮の挑発的発言を意識し昨年3月にテスト実施を命じ合衆国領土を防御する有効策を示す狙いだった。
  6. それが反対にシステム有効性に疑念を持たせることになった。GMD迎撃部隊はアラスカ州フォート・グリーリー基地とカリフォーニア州ヴァンデンバーグ空軍基地に合計30基が配置されている。
  7. 失敗に終わったテストでは実弾ミサイルを警戒態勢に置き、常時発射できるようにし、世界各国に対しその有効性を示そうとしていた。実際にはレイセオン製大気圏外攻撃飛翔体 Exoatmospheric Kill Vehicle (EKV) がオービタルサイセンシズ製ブースターから切り離しに失敗している。「こんなことは60年代にいつもやっていたことだ」と業界筋は切り離しの難易度が高いはずがないという。この結果200百万ドルが無駄になったが、その原因はクランプあるいはほかの製造精度が低いハードウェアとの仮説を立てる向きもある。原因調査はまだ完了していない。
  8. その結果ヘイゲル長官はGMD予算を増額し、モニタリングを強化するとともに改修作業を進め、システム性能を引き上げることにしたと国防筋は言う。ペンタゴンにとって同システムの失敗は耐えられない。「今回の失敗は5年間の努力が失敗したことになり、国防総省と議会の間で決まったGMDの設計変更、仕様改善の凍結が失敗に終わったことを意味する」のだという。
  9. ペンタゴンは現行仕様から外れないようにしており、EKVのCE(性能向上策)Iベイスライン仕様では14回のうち8回で迎撃に成功している。2008年以降の失敗例3回のうち2回がCE-II仕様で、その内容は秘密のままだが妨害手段を回避する操縦性の改良とみられる。ペンタゴンの主任試験官からEKVの設計改良で提言が出ているが、国防総省高官は唯一の解決方法はEKVを超越した存在いわゆる共通破壊飛翔体Common Kill Vehicle (CKV)だとみているようだ。2014年度予算でその開発予算が含まれており、共通というのは GMDとSM-3イージス迎撃体で相互利用できるからだ。ただこれがどうなるかは見えてこない。ヘイゲル長官の指導でEKVに代わる手段へ進むことになる。迎撃手段の開発で全体戦略が欠如しているとの声もある。
  10. ただ迎撃手段の統一が実現するか不明で、たとえばEKVは単弾頭を目標とする設計だが、不複数弾頭を相手にできる迎撃手段が開発できるのか不明のままである。国防関係者と議会は次期迎撃手段を2020年めどで配備したいとしている。
  11. GMDの信頼性がぱっとしないのは同システムがまだ未完成だからだ。GMDは開発と配備を同時並行する構想で、ジョージ・W・ブッシュ大統領時代に「限定防衛作戦手段」との通称でいかにも作戦能力があるかのように命名されている。THAAD(最終段階高高度地域防衛システム)では10年近く設計変更で稼働できなかったのとは異なり、ホワイトハウスはGMDを「オフライン」にすることを拒否している。
  12. CKVを全面的に推進してもEKVの放棄にならず、今後も改良を続け信頼性を向上させていくだろう。
  13. 一方でペンタゴンは新型レーダーを開発し太平洋地域に配備する案を検討中だ。長距離識別レーダー Long Range Discrimination Radar (LRDR) の呼称であるが、正式には未決定だ。実現すれば飛来する弾頭とレーダーを混乱させる対抗手段を区別することができる。ビール空軍基地(カリフォーニア州)にある早期警戒レーダー、前進配備中のAN/TPY-2Xバンドレーダー、浮遊式海上配備Xバンド(SBX)レーダーならびにコブラデインLバンドレーダーの機能を強化できる。太平洋地域ではイージス艦もSPY-1レーダーを搭載している。
  14. LRDRはレーダー技術開発と生産方法の改良内容を反映して高信頼度で感受性高いシステムになっており、送受信部分、搭載する半導体、アクティブ電子スキャンアレイはSBXが生まれた1990年代から成熟化している。ただしSBXの問題点は信頼性が突如低下することがある点だ。もともとはGMDの性能を測定する技術陣の支援用に創案されたものであり、24時間の監視用途は想定外だ。ただし、GMDが実用化されるとともに北朝鮮の脅威が現実になったので、関係者は警戒用に信頼度がもっと高いシステムを希望している。
  15. このためMDAはSBXを東海岸に移送し、イランを想定した国内の対ICBM防衛体制が不十分と懸念する国会議員を安心させることとした。
  16. 一方で5年以上のブランクを経て初のGMD迎撃テストを行う検討が続いている。前回テストはFTG-06飛行追跡テストとして難易度が最も高いもので失敗に終わっているが、もう少し基本的なシナリオで実施してはどうかと考える関係者もいる。「とにかく成功例がほしい」というのが国防筋の偽らざる心境だ。
  17. FTG-06では敵目標に見立てた高性能なロッキード・マーティンLV-2にEKVのCE-Iを真正面から迎撃させている。接近速度が高いため精度と性能が問われた。
  18. MDAは同テストを再実施する必要があるが、関係者もCE-I仕様の威力を展示するのであればリスクを低くした方がいいとみており、結果的にシステムへの信頼度が回復するという。
  19. GMDテストは毎回200百万ドルほどの経費となる。MDA長官ジェイムズ・シリング海軍中将 Vice Adm. James Syring はGMD発射を再開しテストを定期的に実施することを希望している。■