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2022年9月4日日曜日

テンペストの開発はどこまで進んでいるのか。展望と日本、イタリアの関与度合いは。

  

Leonardo illustration

 

4年前のファーンボロー航空ショーで発表されたテンペスト戦闘機計画は、ヨーロッパに旋風を巻き起こした。同プログラムは新たな実証機と国際パートナーシップ確保に照準を合わせ、関係者は将来の戦闘につながる機体の実現を期待している。

 

 

英国防省は、今年の航空ショーで、テンペスト未来戦闘航空システム(FCAS)による次世代飛行実証機を2027年に飛行させると発表した。また、防衛関連企業は、最終製品に向けどの技術を構築し、試験を行っているのか、詳細を明らかにした。

 

同プログラムでは、有人型または無人で運用でき、スウァームとして知られる小型無人機多数を制御可能な第6世代戦闘機を想定している。国防省によると、実証機は「ステルス対応機能」の統合など、最終的な戦闘機に搭載される新技術のテストを目的とする。

 

超音速実証機は、技術テストに加えて、2035年までに次世代ジェット機を運用開始するため開発者が使用するスキル、ツール、プロセス、テクニックを紹介し、テストする。

 

新しい実証機に加え、英政府は日本との新たなパートナーシップを航空ショーでアピールした。三菱重工業が主導する日本のF-X戦闘機プログラムは、テンペスト戦闘機とともに、プログラム最適化につながる情報を共有し、学んでいく。

 

国防省のリチャード・バーソンRichard Berthon未来戦闘機担当部長は、英軍が日本と協力条約を結び120年経つと述べた。

 

日本の協力範囲は未定だが作業関係は軌道に乗っているという。

 

「エンジニアリング面では、軍と連携がうまくいっていると思います。私たちは、価値観や機会を共有し、ミッションを共有しているという実感があり、とてもエキサイティングだ」(バーソン)。

 

ベン・ウォレス英国防相は、日本やヨーロッパのパートナー、イタリアとの「最先端」の技術協力は、世界における英国の同盟関係の際立った利点であると、声明で述べた。

 

フォーキャスト・インターナショナルのヨーロッパ、アジア、オーストラリア、環太平洋地域担当上級アナリスト、ダン・ダーリング Dan Darlingは、日本がF-Xステルス戦闘機を発表したのとほぼ同じ時期にイギリスはテンペスト開発を開始したので、協力は「自然のパートナーシップ」のように思える、と言う。

 

「日本との提携で技術革新を共有することは非常に理にかなっています」。

 

英国が大規模戦闘機計画を実施するのは、大きな後ろ盾がなければ難しい、と彼は付け加えた。イギリスはF-35戦闘機の第一級国際パートナーで、第五世代機を開発せず第六世代機を作るのは困難だ。

 

このパートナーシップは、宇宙などの防衛分野での協力の出発点となり得ると、彼は付け加えた。両国には「非常に野心的な」宇宙開発プログラムがあり、これを活用できる、という。

 

「常に大局的な視点が必要だ。航空機だけではないのです」。

 

一方、テンペスト開発におけるこの4年間は驚くべきものだったと、レオナルドUKの主要航空プログラムのコリン・ウィルスColin Willsは言う。元戦闘機パイロットであるウィルスは、BAEシステムズロールスロイスMBDAミサイルシステムなどが国防省と密接な協力を求めたプログラムに最初にサインしたとき、「少し懐疑的」だったと言う。

 

「昔は、逆でした。国防省は、産業界に対して、『これが我々の望むものだ、さあ、作ってみろ』と言うのです」と、彼は航空ショーで述べている。

 

しかし、今回の新しい没入型アプローチはうまくいっていると言う。

 

「当社は『チーム・テンペスト』として、コンセプト立案と運用分析のレベル、それ以上のレベルでの重要なメンバーとして、本当によく働いています」。

 

ウィルスは、チームの協力の1つにデジタル技術の活用があるという。例えば、英国北部にあるBAEシステムズが主導する実証実験では、合成モデリングとモデルベースシステムエンジニアリングを使用している。

 

ウィルスは、デジタル・システムによって、エンジニアやプロジェクト・リーダーが戦闘機プロトタイプを以前より速く設計できるようになったと述べている。

 

「各地の安全なビデオ会議を通じコミュニケーションできるため、一緒に行うことができる」「このため、アイデアを急に変更する必要が生まれても、すぐに実行できる」。

 

レオナルドU.K.は実証機に取り組む一方で、飛行テストベッド機材に向けた技術にも熱心に取り組んでいると、ウィルスは述べた。

 

レオナルドがテンペストプログラム用に開発中のステルス対応機能の1つが、多機能無線周波数システム、センサースイートレーダーだ。同社の主な作業は、統合センシングと非キネティック効果を飛行テストベッド機のボーイング757 Excaliburに接続することだ。

 

「従来の標準レーダーより高性能です。しかし、詳細については、話すことができません」。

 

センサーは機首に設置される可能性が高いが、機体の他の部分に追加される可能性もある。最終的な位置は、イタリアや日本との共同分析を含め、このコンセプトの解析が進行中のため未定だ。

 

「最終決定は、今後数年のうちに、国やコンソーシアムとして何を望むか、どの程度の大きさにするか、どのような形状にするかなど、段階を経て行われます。搭載センサーの種類やサイズも検討します」(ウィルス)。

 

多機能無線システムに加え、レオナルドは電子戦攻撃、支援、保護機能を提供する。赤外線脅威への防御も搭載する。

 

ロシアはウクライナ侵攻後の軍事作戦で、電子戦を多用している。

 

センサーはすべて、現在F-35を含む第5世代のステルス戦闘機で動作する、とウィルスは指摘する。レオナルドの新しいセンサー群が次世代にジャンプするのは、センサー処理システムであると彼は言う。

 

ウィルスは、これを「デジタルバックボーンを持つ多機能処理システムコンピュータ」と表現した。その目的は、センサーが送るすべての情報を取捨選択し、パイロットの負担を軽減することと説明した。

 

すべてのセンサーデータが同じ精度になるとは限らない。例えば、敵ジャマーによる偽情報を検知・遮断し、最も正確な画像を提示することができる。これは、敵が狙うセンサーを自動的にオフにして実現する。

 

「今のところ、すべて人間の脳が行っており、戦争の霧の中ではかなり厄介なことなんです」(ウィルス)。

 

レオナルドがテンペストにオープンシステムアーキテクチャを採用したことは、開発プロセスと第6世代機への移行で極めて重要だ

 

「アルゴリズムの改良が必要な場合、オープンシステムアーキテクチャの採用で、より容易に行うことができるようになる」。

 

能力の最終設計は、紛争環境での戦闘に備えることに帰着する、とウィルスは述べている。

 

「潜在的な敵能力を知る必要があります。そして、作戦分析、ウォーゲーム、合成環境試験を通じて、『この能力を持つシステムがあった場合、どのように対処するのか』という分析を行います」。

 

イタリアのレオナルド本社がこのプロジェクトにどのように関わるかは、まだ完全には決まっていないという。「レオナルド・イタリアが関わらないわけではない......が、現在進行形です」とウィルスは言った。

 

レオナルドがセンサーを扱う一方で、MBDAミサイルシステムズ英国支社は、独自の武器効果管理システムを提供している。

 

MBDAの戦闘機プログラムのチーフエンジニアであるアンガス・ペンライスAngus Penriceは、有人型・無人機のチーム編成の拡大や、現代の戦闘空間における無人飛行体の多用により、戦闘空間は複雑になっていると述べている。

 

MBDAの管理システムは、機械学習と人工知能を利用し、複雑な環境を平易にするという。MLとAIベースのソフトウェアは、レオナルド製センサーの助けを借りて、脅威を特定し、どの武器を採用するのが最適かをパイロットに伝えることができる、とペンライスは航空ショー会場で述べた。

 

同プログラムはまだ計画・設計段階であるため、武器管理システムに関連するハードウェアのオプションについて「具体的に説明するのは時期尚早」と述べた。

 

ロールス・ロイスは、飛行実証機の一部となる「オルフェアーズ」と呼ばれる新エンジンを発表した。ロールス・ロイス・ノースアメリカのCEOであるトム・ベルTom Bellは、防衛部門におけるグリーンテクノロジーの将来についてのパネルディスカッションで、同エンジンのプロトタイプを宣伝しました。ガスタービンエンジンの同プロトタイプは、18ヶ月で組み立てられ、評価されたという。

 

国防省は、テンペスト関連企業が開発中の能力以外にも、次世代の航空生存能力を開発している「チーム・ペローニャ」Team Pelloniaという別の技術協力による能力の追加も検討している。

 

空軍副司令官リンカーン・テイラー少将Air Vice-Marshal Lincoln Taylorは、「高度脅威から機体を守るその能力は、次世代戦闘機計画含む各種航空プラットフォームに通じる」と述べている。

 

同ログラムでは、スパイラル方式で、レオナルド(英国)、タレス(フランス)、ケムリング(英国)の技術を、早ければ2023年に機体へ統合すると、少将は述べている。■

 

U.K. Fighter Program Edges Closer to Runway

9/2/2022

By Meredith Roaten


2022年7月20日水曜日

FCASテンペストの実現を目指し、日英伊三カ国の作業分担が明らかになった(ファーンボロ航空ショー2022)


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Jaguarの取り組みでは、FCAS用のユニバーサル周波数センサーの技術開発が焦点となる。

タリア国防省とレオナルドの上級代表は、英国主導の未来型戦闘航空システム(FCAS)開発の作業分担について、センサーと通信機能に関する日本の協力の詳細を含む、新たな詳細を明らかにした。

 イタリア空軍のFCASプログラム・オフィスのダビデ・デンタマロDavide Dentamaro中佐とレオナルド経営陣は、ファーンボロー航空ショーで火曜日にメディアに対し、単一および複数国レベルで評価段階にあることを確認した。

 「我々は、それぞれの国家要件の重複を評価するために、政府と協議中」とデンタマロ中佐は、確認し、「これは、要件を定義するための重要な段階」と付け加えた。

 中佐はまた、現在進行中のFCASの取り組みが、ヨーロッパの戦闘機における従来の取り組みとは「まったく異なる」ことを示唆し、「産業界のパートナー間で完全な相乗効果がある」という。

 FCASは、第6世代の戦闘航空能力を設計する多国間プログラムで、2018年に英国国防省によって設立されたこのプログラムには、イタリアと、日本との協業が含まれており、プログラム関係者によると、スウェーデンもプロセスを注視しているという。

 しかし、レオナルドUK の Major Air Programmes のディレクターであるアンドリュー・ハワードAndrew Howardは、時間経過とともに各国の要求の違いが出てくると予想している。

 「効率化のため共通化は必要ですが、オープンアーキテクチャで対応できるような自由な操縦や行動の自由が必要です。一国が単独でこのプログラムを実現するのは無理がある」と述べた。

 7月18日、英国のFCASチーム(英国国防省、BAEシステムズロールス・ロイス、レオナルドUK、MBDAで構成)は、FCASプログラムの主要部分であるテンペスト戦闘航空プラットフォーム実証機を今後5年以内に飛行させると発表した。

 ハワードによれば、今後2年間は各国の要求を一致させ、3極のFCASチームが能力を発揮する期間としてに10年を与えることになる。

 一方、レオナルドのFCASディレクター、グリエルモ・マヴィリアGuglielmo Mavigliaは、イタリア、イギリス、日本が2035年以降に「新しい防衛資産」の恩恵を受けると確認したが、コンソーシアムは、早ければ2040年に輸出市場の「活用」を目指すとも述べた。

 マヴィリアはまた、イタリアとイギリスの第5世代F-35で生み出された戦術・運用経験が、第6世代戦闘航空プラットフォームの開発で重要と説明した。

 「4G(タイフーン)から6G(戦闘機)への飛躍は、本当に大変なことかもしれません」と警告した。

 また、マヴィリアは、日本がこれまでの議論に「シームレスに」溶け込み、スケジュール面でも同様の野心を共有していると説明しました。

 「日本の要求は、イタリアやイギリスの要求と似ています」。さらにハワードは、イギリスとイタリアのレオナルドが、ELT含む業界パートナーとFCASの統合センシングと非誘電効果(ISANKE)および統合通信システム(ICS)の開発に注力していると説明し、「初期協議は非常に心強い」と述べた。

 「私たちは、イタリアのエレトロニカと、共通のISANKEとICSのアーキテクチャの可能性を共同評価するなど、プロジェクト多数で協力しています。この作業は、イタリアが間もなく参加する第6世代センサー能力に関する日本との継続的な協力関係を補完するものです」と述べた。

 レオナルドによると、ISANKEは、FCASの機体全体に配置され各能力の「蜘蛛の巣」となる。

 「ISANKEは、多機能な無線周波数と電気光学のセンシングおよび非キネティック エフェクト ノードの完全に統合されたネットワークです。各ノードは、電磁波スペクトル全体で情報を収集し、高度な融合アルゴリズムを使用し情報を結合します。その結果、包括的な状況認識画像が得られ、航空機乗員に戦闘空間の強化された姿と戦闘における真の情報優位性を提供します」と、イベント後にレオナルド広報担当者が述べていた。

 ICSは、複数の戦術的通信と安全なデータリンクシステムを備え、FCAS編隊全体で迅速に情報を交換し、ISANKE融合能力を活用する。

 「ICSはまた、FCASがより広い戦力構成と情報を共有することを可能にし、マルチドメイン作戦における情報の優位性に貢献します。これは、FCASの第6世代の能力の重要な要素です。パイロットは、戦場における周囲の状況や他の存在について、これまで以上に素早く、より長い距離で認識が可能になります。その結果、優れた戦闘効率と生存率が実現するでしょう」と広報担当者は付け加えた。

 ISANKEとICSの最も重要な要素は統合になるかもしれないので、ハワードは、レオナルドがFCASのデジタルバックボーンを作成するプロセスを続けていることについても説明した。戦闘用クラウドも提供される予定だ。

 より深いコラボレーションを実現するため、具体的な分野を検討している」とハワードは語る。「例えば、ICSはイタリアの専門技術で重要な分野であり、多機能処理について英国国防省の技術実証プログラムを背景に、今後協力していきます」。

 さらにハワードは、2月に締結された、戦闘機のセンサー技術に関する日英協力研究の取り決めも紹介した。

 当時のレオナルド社声明によると、「ジャガー」の取り組みは、航空機が「空、陸、海からの将来の脅威をより良く検知し、素早く正確に目標を見つけ、敵対国が運用する監視技術を拒否する」ことを可能にする普遍的な周波数センサー技術の開発が特徴だ。(FCASの取り組みで日本に期待される役割は、その後拡大している)。

 レオナルド関係者は、レーダーの小型化も今後含まれる可能性を示唆しており、同社は「より深いレベル」で実現をめざしているとと同社幹部は結論づけている。■



Italy expects Tempest exports by 2040; Japan working on jet's Jaguar system - Breaking Defense


By   ANDREW WHITE

on July 20, 2022 at 5:02 AM

 

2022年7月14日木曜日

日本の参加で活気づいてきたテンペスト(FCAS)開発事業

  

Tempest combat aircraft


英国が日本と戦闘航空機開発で関係を強化するとテンペストも一気に実機の実現に近づくといってよい

Credit: BAE Systems

 

  • パートナーシップはエンジンやレーダーセンサー技術に拡大

  • 米国は、F-2で日本の産業界の進歩を制限していた

  • FCASは輸出市場でF-35と競合する可能性がある

 

 5月にロンドンを訪問した岸田文雄首相は、「将来型戦闘航空システム」に関する日英共同の取り組みが、両国間関係の「礎」になると示唆した。

 

2010年代半ばにレーダー技術や将来の空対空ミサイルの研究で始まった両国間共同事業は、その後、エンジン技術や高度レーダーセンサーの実証に関する作業へ拡大してる。

 

協力関係はさらに広がり、2040年代に向けた日本の将来型有人戦闘機で、英国を重要な海外パートナーとする可能性がある。戦闘機に関し米国を選んできたこれまでから劇的な方向転換となる。英国産業界では、日本が戦闘機で新しいパートナーを探す決定は、「米国側のペースで形作られてきた」と評し、従来の産業活動に原因があると指摘している。

 

三菱F-2の開発では、アメリカの「高度な指令と制御」のもとで行われ、「日本の産業界が学び、成長し、成果を上げるペースが制限されてきた」と、関係者は言う。

 

英国主導のFCAS(通称テンペスト)に参加することで、日本は「本質的に対等なパートナーになり、能力を開発し、自国産業力を発揮することができる」と当局者は評する。このパートナーシップで、日本はイタリアとプログラムのトップ・テーブルにつく。

 

英国、日本、イタリアは、FCASプログラムの中核となる有人戦闘機のコア・プラットフォームのコンセプト検討に入っている。日英両国は、戦闘機技術に関する協力の覚書に昨年12月調印している。

 

日英パートナーシップの次のステップに関する発表が年末までに出るかもしれないが、産業界はさらに広範な関係を期待し相手国とパートナーシップを迅速に確立するよう努力している。

 

日本との緊密なプログラム・リンクは、テンペスト構想に新たな勢いを与えており、日本からの情報提供で、パートナー国にとって手頃なプログラムになるとの認識が高まっているようだ。

 

しかし、あと1年半以内で、手頃な価格を証明することが重要となる。テンペスト関係者は英国国防省の財務委員会に対し、2024年末までに提案中の国際プログラムが、他事業や米国からロッキード・マーチンF-35共用戦闘機の導入を追加するより良い価値を提供できると証明するよう求められている。

 

「1年前、日本は話題になっていなかった」と英国国防省の未来型戦闘機プログラムのプログラム・ディレクター、ジョニー・モートン空軍准将Air Cdre. Jonny Moretonは、Aviation Weekに語っている。「国際的なパートナーでこれまでと異なる環境になった」。

 

モートンにとって、英国が実質的パートナーになりうる他のプログラムはない。米国は次世代航空支配プログラムへのアクセスを許可しそうになく、仏独スペインのFCAS(しばしばフランス語の頭文字でSCAFと呼ばれる)は、英国のニーズと適合しない。

 

産業界への影響

F-35をさらに購入すれば、英国はF-35プログラムで唯一のTier 1メンバーとして産業上の利益を得ることができるが、戦闘機生産のエンドツーエンド能力の維持には必ずしも役立たない。

 

その結果、モートン准将は、英国は「テンペスト」開発を「全力で」進めていると述べ、「プログラムでの提携、国際的影響力の拡大、未来型戦闘システムの開発は、絶対に進むべき道である」と指摘している。

 

このような事業は、経済面、産業面で利益をもたらし、他分野への技術の波及をもたらすという。准将は、同構想で数千名の雇用を創出しており、イギリス中の工学部卒業生や実習の関心を呼び起こし、これまで重工業頼みだった地域のレベルアップを図りたい政府の取り組みと一致していると指摘した。

 

英国とイタリアは、テンペストから生まれる有人戦闘機が2040年代にユーロファイター・タイフーンを置き換えるよう望んでおり、日本は、F-16から派生したF-2を同時期に置き換えるために、F-Xという名称の戦闘機の実現を望んでいる。

 

モートン准将によれば、3カ国ともF-35を補完する機体、将来の敵に対応すべくより自由に適応し、時とともに進化する戦闘機を求めているという。

 

3カ国で共有する要件は、3カ国それぞれが「かなりよく一致している」という(モートン准将)。

 

スウェーデンも、英国のFCASの主要パートナーのままだが、コア・プラットフォームには関心がなく、乗員付きプラットフォーム(スウェーデンの場合はサーブ「グリペンE」)と連携して運用する無人補助機(忠実なウィングマン)の開発に重点を置いている。

 

テンペストの単価はF-35より高くなる可能性が高く、輸出市場では米国のプラットフォームと競合する可能性があるという認識もある。しかし、テンペストのセールスポイントは、行動と修正の自由度が高いことで、購入者はニーズ、能力、脅威のプロファイルに合わせたカスタマイズが可能となる。

 

Tempest aircraft concept

 

初期のテンペスト機は、ユーロファイター・タイフーンや、今後10年間で汎欧州の航空機に注入される技術に多くを負う可能性がある。Credit: BAE Systems

 

 

テンペストの開発状況

日本と交渉が続く中で、英国側プログラムは、技術の成熟段階から調達への移行を反映して、一部で再編成されている。

 

4月1日までは、テンペストは基本的に戦闘機技術を試験し成熟させる研究開発プロジェクトの集合体だった。英国空軍のRCO(Rapid Capability Office)と、BAE SystemsLeonardo UKMBDARolls-Royceからなるチーム・テンペスト産業チームが運営するFCAS TI(Future Combat Air System Technology Initiative)が実施してきた。

 

このFCAS TIは英国国防省のFCAS alongside the Acquisition Program (FCAS AP)に吸収された。FCASの取り組みを一つの傘下に置くことで、プログラムは首尾一貫したアプローチをとることができるようになるとモートン准将は解説している。RCOは、Alvina群ロボットシステムなどの「今ここにある」プロジェクトや、持続可能な燃料の研究にも引き続き取り組んでいく。

 

FCAS TIには、「ミニ科学プロジェクトから、必要に応じ飛行する本格的な製品まで」、各種規模のプロジェクト100個が含まれているとモートン准将は言う。

 

日英間の現在の研究には、日本のアクティブ電子スキャンアレイ(AESA)無線周波数(RF)シーカーを搭載したMBDAメテオ派生型の共同新型空対空ミサイル(JNAAM)の研究がある。さらに最近、ロールス・ロイスとIHIは、IHIのXF9-1実験用パワープラントとロールス・ロイスのテンペスト用パワーシステムXG240をベースに、共同で将来型戦闘機用エンジン実証機の開発を始めた(AW&ST Feb.7-20, p.30)。

 

このエンジン計画の発表直後に、Leonardo UKが日本産業界と共同で、それぞれの国で培われたレーダーの専門知識を基にした先進の多機能AESAレーダー計画「ジャガーJaguar」を進めると明らかになった。

 

Leonardoの主要航空プログラム担当ディレクターであり、テンペストプログラムにも関わる上級責任者アンドリュー・ハワードAndrew Howardは、ジャガーはテンペストよりも前に行われていた、と語る。

 

ジャガーが搭載する先進機能の詳細は明らかにされていないが、ハワードによれば、このセンサーは「現行能力を大幅に向上させるもので、テンペストの多機能無線周波数システム(MRFS)やテンペストが英国内で開発した将来型レーダーの能力を上回る」という。MRFSは、英国のユーロファイター・タイフーン用に開発中の欧州共通レーダーシステムMk.2センサーの「反復発展型」となる予定だったが、小型化され、より高い出力を実現するねらいがある。

 

また、テンペストのセンサー入力を融合して処理する、レオナルドが「Integrated Sensing and Non-Kinetic Effect(Isanke)」システムの主要センサーになるはずだった。ジャガーの開発はMRFS開発を補完するものであり、一部分野では「MRFSの能力を超えている」とハワードは述べている。

 

「ジャガーは、FCAS/Tempest/F-X国際レーダープログラムの最初の主要ビルディングブロック」と付け加えている(AW&ST Nov.23-Dec.6, 2020, p.46)。

 

もう一つの大きなハードルは、すべての国と産業パートナーに適した産業モデルを構築し、欧州のSCAFプログラムを無力化したといわれるワークシェアの不一致を避け、プログラムに新規参入する可能性がある企業にペナルティを与えないことであろう。

 

この一環で、パートナー諸国と分類法について合意し、国家間の信頼関係を構築する必要がある。「国同士の信頼関係を築くことができれば、難しい話もできるようになります」とモートン准将は付け加えた。

 

ユーロファイター・タイフーン、パナビア・トーネード、F-35などの計画から教訓を学ぶことになる、とモートン准将は言う。「このことは、英国とイタリアで共有する価値の1つです。私たちは(多国籍プログラムについて)何が好きで何が嫌いかを深く理解してる」と、モートン准将は指摘した。

 

また、有人型戦闘機のサイズ、重量、補助装置の数など最終的な構成を固めるため定義付けの研究も続いており、現在7通りのコンセプトが分析されている。有人型プラットフォームの最終構成は、ヨーロッパや最近の中東での展示会で公開されたデルタ翼テンペスト実物大模型と大きく異なるものになりそうだ。「現在は、未知数の部分より既知の部分が多く、重要な特性数点はかなり確定しています」とモートン准将は言う。「正しい方向に進んでいることは間違いない」。■

 

Enhanced Japanese Collaboration Could Transform Tempest Outlook | Aviation Week Network

Tony Osborne June 29, 2022

 

 

Tony Osborne

Based in London, Tony covers European defense programs. Prior to joining Aviation Week in November 2012, Tony was at Shephard Media Group where he was deputy editor for Rotorhub and Defence Helicopter magazines.


2022年5月18日水曜日

日本が英主導テンペストに接近し、米側の思惑が外れるのか、それともやはり米国がゴリ押ししてくるのか

 Japan F-3 fighter

 

アメリカは日本の次期戦闘機事業に加わる機会を逸したのか。報道では日本が今年中に英国のテンペスト事業に加わるとあるが...

本のメディアは、日本側が次世代戦闘機F-Xの製造で、アメリカではなくイギリスと提携を考えていると伝えている。どうやら、BAEシステムズが最も有力なパートナーに選ばれたようだ。この計画は、2035年頃に新型戦闘機を配備する目標で、、英国のテンペスト未来戦闘航空システム(FCAS)と同じスケジュールだ。

最新の決定は今月初めの日英米のハイレベル会合でなされたようだ。岸田文雄首相は5月5日、英国のボリス・ジョンソン首相と英国で会談し、年内に「将来の戦闘機プログラムについて協力することで基本合意した」と報じられた。前日には、岸信夫防衛大臣がロイド・オースティン米国防長官と会談し、次期戦闘機も議題に上ったようだ。

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テンペストのモックアップがファンボロ国際航空ショーに展示去れた。2018年。BAE Systems

報道によれば、日本側はBAEシステムズと、日本の次世代戦闘機における役割の拡大で交渉を始めている。英各社は、推進装置の開発を支援し、新型機へ採用をめざす新世代の空対空ミサイルでの提携で日本と合意している。

さらなる二国間協力には、英国防省による日本の新型空対空ミサイル計画(JNAAM)への支援も含まれる。同兵器は、MBDAミーティアの可視距離外空対空ミサイル(BVRAAM)に関する英国の専門知識と、日本が開発した高性能無線周波数(RF)シーカーの組み合わせが予想されている。

BAEシステムズが戦闘機の開発パートナーになれば非常に重要なステップとなる。だが、米国の防衛関連企業、特にロッキード・マーティンには悪い知らせとなる。2020年末、防衛省はロッキードをパートナー候補として発表した。しかし、その後、技術移転をめぐり双方に意見の相違が出ているようだ。

日本が不満としているのは、供用開始後のアップグレード方法のようだ。具体的な内容は不明だが、ロッキードがソフトウェアやハードウェア更新で主導権を取る想定の可能性があり、日本側の自律性を制限する。

三菱重工業(MHI)は、新型機開発でF-2と同様に主契約者の役割を担う。その他業界パートナーとして、IHIがパワープラントを担当し、ロールス・ロイスとパートナーシップを組んでいる。昨年、2020年初頭にフルスケール実証機用動力システムの共同作業を開始すると発表された。ロールス・ロイスは、テンペストのパワープラントも製造する。

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テンペストの推進系の説明図。Rolls-Royce

 

以前の日本報道で、テンペストとF-Xはエンジンだけでなく、「エアインテーク...と排気口付近」も共有し、ステルスに最適化されるとあった。両部分は、ステルスの品質と性能を実現する点で、難易度が最高のエンジニアリング要素だ。

日英両国が合意すれば、三菱重工など日本の産業パートナーがテンペスト計画に正式参加する道が開かれる。中型から大型のステルス双発戦闘機となるテンペストは、日本の要求内容と合致するように思われる。英空軍も2035年までにタイフーンをテンペストで置き換える計画を立てており、日本の目論見と合致する。

イギリスとBAEシステムズにとって、テンペスト・プログラムに国際的なパートナーを迎えることは、コストを下げ、全般リスクの軽減効果が生まれる。

チーム・テンペストには、すでにイタリアの防衛請負業者レオナルドとヨーロッパのミサイル・コンソーシアムMBDAも参加しており、スウェーデンも加わる。しかし、イタリアもスウェーデン両国は、同機を購入すると公式発表していない。

一方、日本にとっては、「チーム・テンペスト」に参加して得られるものが多い。ステルス有人戦闘機だけにとどまらないからだ。このプログラムは最終的に、忠実なウイングマン型無人機、センサー、空中発射兵器、支援アーキテクチャを含む第6世代の「システム・オブ・システムズ」空戦能力の実戦配備を目標としている。

 

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BAE Systems

航空自衛隊(JASDF)はこれまでアメリカ製戦闘機に依存しており、防空戦闘機部隊はF-15Jイーグルと、F-35Aステルス戦闘機が中心だ。次世代戦闘機にはアメリカ製装備品との相互運用性が期待されるが、日本がBAEシステムズを採用しても大きな問題にはならないはずだ。イギリスもテンペストを自国のF-35Bと供用する計画だ。

日経によると、アメリカが日本の次世代戦闘機プログラムに残る可能性はまだあるようだ。記事では、開発分担の最終決定は今年後半の予定で、ロッキード・マーチンなどとの長年にわたる関係が、アメリカに有利に働く可能性はまだ残っている。

しかし、現時点では、BAEシステムズに勢いがある。同社が日本の第6世代の航空戦闘プログラムに機会を提供するように見えるが、少なくとも現段階では、米国のライバル各社が同程度に関与する可能性は低い。アメリカの最新の航空優勢戦闘機であったF-22ラプターの入手に日本が興味を示した際に、機密部品と能力の詳細が漏れることを恐れて、要請を断ったことを思い出すとよい。

日本が懸念しているとされる米国との技術移転問題については、詳細は不明だが、日本を含むF-35プログラムの外国パートナー各国は、アップグレードや適応に関し、各国の独立性のレベルに懸念を表明している。一方、海外で運用中のF-35戦闘機が、機密データを収集・保存しているが、米国に転送するプログラムになっていることに不満を持っている。

ただし、日本にとってチーム・テンペストへの参加はリスクも伴う。英国は、同プログラムを自国の戦闘航空戦略の中心要素だと繰り返し強調しているが、非常に高価な事業であり、今でも厳しい英国の防衛予算に相当の負担をかける。英国ではF-35B138機を全機購入するのと並行し、テンペストを十分に取得するのは困難だろう。F-35Bの購入機数を減らしても、テンペストの財政負担を分散させるため、国際パートナーのコミットメントが必要だ。

BAEシステムズと手を組めば、三菱重工のX-2「心神」実験機やIHIで開発中のXF9戦闘機用エンジンの将来が危うくなる。ただし、これらの成果が日英共同プログラムに反映される余地はあり、特にX-2は将来戦闘機の開発用ではなく、専用試験機の想定だった。

政治的には、英国が日本と防衛関係を拡大すれば、急増する中国の領土的野心と軍拡を見据え、英国が戦略と軍事的優先順位をアジア太平洋地域に切り替えていく中で、確実に英国政府も支持を示すだろう。ベン・ウォレス国防相は昨年、インド太平洋地域でのパートナーシップ強化が「戦略的優先事項」と述べ、例として日本とのエンジン協定を指摘していた。

BAEシステムズから見れば、日本が開発費用を分担し、実際に機材を購入してくれれば、チーム・テンペストの今後が確実にさらに強固となると期待しているはずだ。■

 

Did America Just Miss Its Chance To Help Build Japan's Future Fighter?

Reports suggest that Japan may well join the British Team Tempest future fighter program by year-end.

BY

THOMAS NEWDICK

MAY 17, 2022 10:58 AM

THE WAR ZONE