ラベル LCS沿海域戦闘艦 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル LCS沿海域戦闘艦 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2025年1月21日火曜日

沿岸戦闘艦がヘルファイアミサイルで空中ドローンを迅速に撃墜可能に(The War Zone)―存在価値が低かったLCSが近接防衛で面目躍如となるかもしれません。アーレイ・バーク級への過度な依存が減るといいですね。

 

2018年、ヘルファイアミサイルをテスト発射したフリーダム級LCS USSミルウォーキー。USN


紅海でのフーシ派からの攻撃に対応し、海軍は対ドローン用ヘルファイア能力をフリーダム級LCSに急遽搭載した

海軍は2024年、レーダー誘導式AGM-114Lロングボウ・ヘルファイア・ミサイルを搭載したフリーダム級沿海域戦闘艦(LCS)が、未搭乗空中システム(UAS)、言い換えればドローンに対し搭載武器を発射できるようにするクラッシュ・プログラムを実施した。これは、紅海とその周辺で活動する米海軍艦艇へのフーシ派ドローンからの脅威に直接応えるものだ。

 フリーダム級LCSの新しい対ドローン能力に関するヒントは、今週初めの水上艦艇海軍協会の年次シンポジウムで初めて明らかになった。 海軍は、1月15日の本誌からの詳細情報の問い合わせに対し、翌日に発表されたプレスリリースに本誌を招待することで回答した。

 USSインディアナポリスが対ドローンアップグレードを得た最初のフリーダム級LCSとなった。 インディアナポリスは2024年3月から11月にかけて配備され、その間大西洋やヨーロッパ周辺でも活動した。インディアナポリスはフリーダム級インディペンデンス級あわせLCSとして戦闘行為綬章を初めて受章した。


USSインディアナポリスのストック写真。 米海軍


米海軍のリリースによると、「2024年秋、[海軍の沿海域戦闘艦ミッションモジュール]プログラムオフィスは、展開中の艦の防御を強化するべく、地対地ミサイルモジュール(SSMM)のソフトウェアとハードウェア双方をアップグレードしました。C-UAS(対航空機システム)能力のこの迅速な展開は、地上、陸上、空中の課題を含む様々な脅威に対処するSSMMの柔軟性を強調しています」。同じくリリースによると、「C-UASのこの迅速な展開は、地上、陸上、空中の課題を含む様々な脅威に対処するSSMMの柔軟性を強調している」。

 SSMMの主要要素は、最大24個のAGM-114Lを搭載できるランチャーである。他のヘルファイアと異なり、ロングボウ・ヘルファイアはレーザー誘導ではなくミリ波レーダーを搭載する。 LCSのレーダーがミサイルを誘導し、ミサイルのシーカーが自律的にロックオンして指定された目標を破壊する。SSMMは2019年にフリーダム級LCSで初期運用能力を達成した。同年、海軍はインディペンデンス級LCSで同モジュールの試験を開始した。

 「米第5艦隊の責任領域(AoR)における最近の出来事は、新たな脅威を寄せ付けない最新のC-UASシステムを艦艇に装備する重要性を強調しています」と、LCSミッション・モジュール・プログラム・オフィスの責任者であるマシュー・レーマン海軍少佐は声明で述べた。「実績ある技術を活用することで、我々は艦隊の重要ニーズに応えることができた。この成果は、沿海域戦闘艦ミッション・モジュール・プログラムの創意工夫と機知を示すものです」。

 「このC-UAS能力の迅速な統合は、私たちの戦力投射能力を向上させ、戦闘環境での機動性の自由を維持します」と海軍海上システム本部(Naval Sea Systems Command:NAVSEA)のケビン・スミス海軍少将(Program Executive Officer for Unmanned and Small Combatants)も声明で述べている。「SSMMのような先進的で柔軟なシステムをLCSに装備することで、差し迫った脅威に対処するだけでなく、作戦の敏捷性、抑止力、沿岸地域における持続的な優位性のための海軍の全体的な戦略を強化している」。

 SSMMの主な目的は当初、フリーダム級やインディペンデンス級LCSに、友人・無人を問わず小型ボートの群れに対抗する能力を追加することだった。イエメンでは、イランに支援されたフーシ派武装勢力が、爆発物を積んだ無搭乗の神風ボートを使用する先駆者となった。しかし、ウクライナが黒海とその周辺で神風型含む無搭乗の水上艦艇を大幅に使用していることが、神風型がもたらす危険性を主流意識に完全に押し上げる原因となっている。2022年、海軍はSSMMが陸上目標にロングボウ・ヘルファイアとして使用できることを示した。

 SSMMを活用し、LCSに対ドローン能力を追加する迅速な道筋をつけだことは理にかなっている。艦船自身にとって、乗員なしの空中からの脅威に対する自己防衛の追加レイヤーを提供するだけでなく、近くにいる他の友好的な艦船に短距離ながら防御を提供できるかもしれない。  AGM-114Lが空中からではなく地上から発射された場合の射程は不明である。ロングボウ・ヘルファイアの空中発射モードでの最大射程は、5マイルから5.5マイル(8,000メートルから9,000メートル)と言われている。

 AGM-114、特にレーダー誘導型ロングボウを空中の脅威に対して使用するというアイデアは新しいものではない。 イスラエルのAH-64攻撃ヘリコプターは、ヘルファイアでドローンを撃墜しており、米陸軍もアパッチで同じ訓練が増えてきた。他の米軍ヘリも空対空でヘルファイアを使用できるかもしれない。陸軍は過去に地対空迎撃ミサイルとしてAGM-114Lの採用も検討している。■


Littoral Combat Ship Can Now Rapidly Shoot Down Aerial Drones With Hellfire Missiles

Houthi attacks in the Red Sea prompted the Navy to rush the counter-drone Hellfire capability to the Freedom class LCS.

Joseph Trevithick

https://www.twz.com/sea/littoral-combat-ship-can-now-rapidly-shoot-down-aerial-drones-with-hellfire-missiles


2024年12月16日月曜日

LCS沿海域戦闘艦がMk70垂直発射装置を搭載し、ついに戦力増強が実現へ(The War Zone)



LCSは火力不足で悪名高いが、モジュール式ランチャーがそれを補いそうだ。しかし、これにはトレードオフが伴う


沿海域戦闘艦(LCS)の攻撃能力強化の大きな一歩として、カルロス・デル・トロ海軍長官は水曜日、「多数」のLCS艦がモジュール式Mk 70ペイロード・デリバリー・システムを受領すると発表した。苦境に立たされていたLCSは強力な火を装備することが可能になる。

 Mk 70は、米軍や外国軍の軍艦多数で使用されているMk 41垂直発射システム(VLS)をベースとしたコンテナ式発射システムで汎用性の高いスタンダードミサイル6(SM-6)やトマホーク陸上攻撃ミサイル(TLAM)など、各種ミサイルに対応する。


USSサバンナ(LCS 28)はMk 70モジュラーミサイルランチャーからSM-6ミサイルの発射テストを2023年実施した。(米海軍)


Mk 70はLCSに「敵対勢力への圧倒的な火力と、さらに優れた戦術的優位性」をもたらす、とデル・トロ長官はワシントンD.C.で開催された米国海軍協会の2024年防衛フォーラムで述べた。

 「LCSは復活しました。フリーダム級とインディペンデンス級です。世界中のあらゆる場所に積極的に配備します。ペルシャ湾も当然その対象です。掃海能力を備え、必要とされる場所であればどこでも、特に太平洋地域ではこれらの追加能力のまま配備するつもりです」とデル・トロ長官は述べた。

 かつては海軍の未来における重要な多目的艦として期待されていた高価なLCSは、実戦配備されることのなかったミッションモジュールや、インディペンデンス級とフリーダム級にそれぞれ影響を与えた船体亀裂の問題や全艦にわたる推進力の問題などを抱えてきた。また、各艦は限定的な運用にとどまっている。

 デルトロ長官の発言は、LCSの運勢を逆転させ、最終的により高度な戦闘に耐えうる艦艇を準備するため、Mk 70が何ができるかについて海軍は楽観視している様子を示唆している。デルトロ長官が指摘したように、LCSが実際に「積極的」に派遣された場合のLCSの生存能力については疑問が残る。


 本誌は海軍に連絡を取り、アップグレードのスケジュールやどのLCSが関与するのかなど、より詳しい情報を入手しようとしている。

 Mk 70はすでに一部LCSに配備されており、2024年11月のUSS ナンタケットNantucket(LCS-27)就役時の画像にランチャーが設置されている様子が写っている。


2024年11月のUSS Nantucket (LCS-27) の就役時の写真には、すでに設置されたMk 70ミサイルランチャーが写っている。(米海軍)


 このような能力があれば、LCSは数種類のミサイルを少量ずつ発射でき、特に中国との太平洋戦で重要となる。そこでは、Mk 41を装備した大型水上戦闘艦の需要が高まるだろう。これらの艦船は、航空機やミサイルの脅威から防衛し、多数の海上および沿岸の標的に対する離れた場所からの攻撃を支援する。

 デルトロ長官の発表は、2023年10月に東太平洋で、インデペンデンス級LCSのUSSサバンナ(LCS-28)に搭載されたMk 70ランチャーからSM-6ミサイルの発射実験が成功したことに続くものである。SM-6が標的に命中したことは、「リトルアール・コンバット・シップのモジュール性と致死性を実証し、コンテナ化された兵器システムを統合して水上標的と交戦する能力があることを示した」と海軍は当時発表していた。


Mk 70 Mod 1 遠征発射機(パブリックドメイン)のレンダリング


 サバンナは、以前に本誌が報告したとおり、試験にMk 70 Mod 1 遠征発射機の一形態を採用した。このシステムは、SM-6に加え、陸上攻撃用、対艦用に最適化されたトマホーク派生型も発射できる。Mk 70発射機は、SM-6やトマホークを発射する米陸軍の地上配備型タイフォンシステムに関連しています。

 また、海軍は実験用大型無人水上船「レンジャー」に搭載したMk 70シリーズ発射機からSM-6の発射実験も行なっているが、トレーラー搭載型の発射機もデンマークでの演習で実演しており、ロッキード・マーチンは2024年5月、コンテナ型発射機からペイトリオットPAC-3 MSE迎撃ミサイルの発射に成功し、模擬巡航ミサイルを撃墜したと発表した。

 海軍がサバンナの試験発射成功を発表した後、Mk 70が提供するものを本誌は次のように解説していた。

「Mk 70シリーズは、適切な甲板スペースを持つ幅広い種類の艦船の火力を比較的簡単に増強する方法を提供します。これには、LCSインディペンデンス級のようなヘリパッドを備えた小型水上戦闘艦、各種の水陸両用戦闘艦、そして商業設計を含む特定の支援艦艇が含まれます。コンテナ化されたランチャーは、SM-6やトマホークを発射できるという機能だけでも非常に柔軟性があり、また、Mk 41 VLSの伝統を受け継いでいるため、将来的にはより多くの弾薬オプションを統合できる可能性が間違いなくあります」。

 多目的ミサイルSM-6は、空中および海上の各種標的に対処でき、従来の弾道ミサイルの終末段階の飛行だけでなく、より新しい極超音速の脅威に対処できると、本誌は以前に報告している。SM-6改良型が開発中で、より長い射程と極超音速での最高速度が期待されている。

 Mk 70ランチャーにトマホークミサイルを装填すれば、LCSの能力は飛躍的に向上し、この艦級は全方向で約1,000マイル以内の陸上および海上の目標を攻撃できるようになる。これにより、中国軍の防衛が手厚い地域にある目標を攻撃することも可能になる。トマホークは目標上空で待機することもでき、飛行中に目標を変更することも可能である。

 サバンナの試験発射は、LCSにこのような装備が搭載されていることを初めて垣間見せたわけではない。本誌は以前、ハワイで2022年に実施された環太平洋合同演習(RIMPAC)中に撮影された写真について報じていた。写真には、同様の装備が搭載されたUSSタルサ(LCS-16)が写っていた。しかし、海軍は装備の詳細や、タルサが演習中にこのシステムを使用してミサイルを発射したかどうかについては一切明らかにしていない。


2022年の環太平洋合同演習(リムパック)中の米ハワイ州パールハーバーに停泊する沿海域戦闘艦タルサ(LCS-16)。(米海軍)


 デル・トロ長官は、LCSに搭載されるMk 70ランチャーにどのようなセンサーが搭載されるかについては言及していない。しかし、SM-6やトマホーク、空中、海上、陸上、宇宙に存在する外部プラットフォームからの遠隔センサーやターゲティングデータなど、LCSの限られたセンサー群を考慮すると、それらのデータを艦にデータリンクするオプションが最も実現可能な選択肢である可能性が高い。ミサイルをより多くの艦船や地域に分散し、その射撃統制と標的を分散させるコンセプトは、海軍にとって長らく大きな関心事となっていた。

 しかし、他のセンサーを搭載することも可能だ。例えば、昨年サンディエゴを出航して試験発射を行った際、サバンナの飛行甲板にトレーラー搭載型AN/TPQ-53レーダーと思われるものが目撃されていた。

 そのレーダーは主に、飛来するロケットや砲弾を探知・追跡し、発射地点を特定することで、味方部隊がいわゆる「反砲兵射撃」を行うことを可能にするように設計されていると、本誌は報じている。また、無人機を検出・追跡する能力も実証されている。

 本誌は以前、同レーダー(Counterfire Target Acquisition Radarとも呼ばれる)がもたらすその他の利点についても解説しており、Mk 70を搭載した艦船が、艦船に組み込まれた能力に関係なく、独自に目標を特定し、攻撃する能力が向上することを挙げていた。また、同システムが艦船の甲板にどのように取り付けられ、カスタマイズされたミッションセットのセンサー能力を拡大するのに役立つかについても例を挙げて説明した。

 デル・トロ長官は水曜日、多数のLCSが現在、非常に高性能な対艦巡航ミサイルであるNaval Strike Missile(NSM)を装備しているが、SM-6ほど柔軟性はなく、トマホークほど射程距離も長くないと指摘した。米海軍は、2032会計年度までにLCS全艦にNSMを搭載する計画を推進している。この件についてInside Defenseが報じている。


海軍ストライクミサイル(NSM)。(米海軍)


 ただし、Mk 70ランチャーとNSMでLCSの火力が強化される一方で、トレードオフも存在する。本誌は次のように報告していた。

「後部飛行甲板をMk 70シリーズランチャーやその他の関連機器の搭載場所として使用すると、ヘリコプターの発着艦ができなくなることに留意すべきである。海軍は長年にわたり、LCSがMH-60R シーホークヘリコプターやMQ-8C ファイアースカウト無人ヘリコプターを搭載できる能力を、遠距離での標的発見と攻撃、小型ボート群のような接近する脅威からの防御、そして状況認識の向上に役立つ重要な要素として宣伝してきた」。

 LCSにとって、飛行甲板と搭載航空能力は非常に重要であり、その柔軟性と作戦の独立性を大幅に拡大するものであるため、このトレードオフは大きな代償となる。Mk70ミサイル1基につき4発のミサイルを搭載するだけで、おそらく少なくとも3つのシステムを搭載できる能力を放棄することは、大きな譲歩となる。海軍のマーク41システムのように、各セルに4連装の改良型シー・スパロー・ミサイル(RIM-162)を搭載できる可能性もあります。

 これによりLCSは発射機1基あたり16発のミサイルを搭載できるが、ミサイルはあくまで自衛用であり、中距離までの地域防空用として使用される。ただし、LCSのセンサーがその使用をサポートできる場合に限る。データリンクを装備したRIM-162ブロックIIが鍵となる可能性がある。これにより、LCSの防空能力と、より高度な脅威環境下での生存性が大幅に向上するだろう。

 海軍は25隻のLCSを運用しているが、2021年以降、就役期間が5年未満の艦船を含む7隻を退役させている。海軍は、この動きを、より有望なシステムへの投資に資金を回すための経費削減策と説明している。

 一部で「リトル・クラッピー・シップ(Little Crappy Ship)」という俗称で呼ばれるほど、取得が無駄骨に終わったLCSをMk 70が救済するのだろうか。このシステムがどれほど速く実戦配備できるか、また本格的戦でのLCSの生存能力について疑問が残ったままだが、果たしてどうだろうか。

 答えは時が経てばわかるだろう。■


Littoral Combat Ships To Sail With Mk70 Vertical Launchers Strapped To Their Decks

The LCS is notorious for lacking firepower and the modular launcher could help with correcting that, but there are tradeoffs in doing so.

Geoff Ziezulewicz


https://www.twz.com/news-features/littoral-combat-ships-to-sail-with-mk70-vertical-launchers-strapped-to-their-decks


2023年11月24日金曜日

LCS沿海域戦闘艦は最大級の失敗プロジェクトだった。多額の費用をかけ21世紀型の艦艇になるはずだったのに、何がまずかったのだろうか。

 USS Tulsa (LCS 16) transits the Andaman Sea in 2021.

USS Tulsa (LCS 16) transits the Andaman Sea in 2021. U.S. NAVY / MASS COMMUNICATION SPECIALIST 1ST CLASS DEVIN M. LANGER


米海軍を未来へと導くはずだった沿海域戦闘艦が世界中で故障を多発。海軍は同型艦の処分に入った



 2016年7月、ハワイ沖と南カリフォルニア沖に20数カ国の軍艦が集結し、米国とともに世界最大規模の海軍演習を行った。イギリス、カナダ、オーストラリア、日本、韓国などが駆逐艦、空母、戦闘機を派遣した。彼らは長い列をなして海を渡り、力と威信の象徴となった。

 USSフリーダムは、艦隊の中で特別な存在だった。沿海域戦闘艦LCSとして知られる新しいクラスの艦船だった。米海軍は、小型、高速、軽量で、海上で敵と戦い、機雷を狩り、潜水艦を沈めることができる技術的な驚異として宣伝していた。

 しかし実際には、LCSは海軍の長い歴史の中で、最悪の大失策になりつつあった。5億ドルをかけた2隻は、数カ月前に恥ずかしい故障に見舞われていた。水中機雷を破壊する能力を見せつけたフリーダムの演習中のパフォーマンスは、世界の舞台でこの艦の記録を若返らせることを意味していた。同艦は歴史的にも重要で、最初に建造され、8年前に就役した最初のLCSだった。

 しかし、LCSプログラムの評判と同様、フリーダムはひどい状態だった。艦内では多数の機器が修理中だった。新クラスのため乗組員の訓練は、予想以上に難しいことが判明していた。フリーダムの乗員は、艦の最も重要なシステムのいくつかを操作する能力を示す試験に合格していなかった。

 進水の日が近づくにつれ、プレッシャーは増していった。上層部は何度も同艦を訪れた。ProPublicaが入手した海軍文書によれば、フリーダムの乗員は、「港にとどまる『意欲なし』の『失敗なし』の任務」であることを理解していた。

 フリーダムのマイケル・ウォンハース少佐は士官と相談した。エンジンの1つが作動不能になる致命的な問題があったにもかかわらず、彼と彼の上司は、同艦は演習には他の3つのエンジンに頼ることができると判断した。

 フリーダムは任務を完了したが、その成果は空しいものだった。帰港して5日後、整備点検の結果、不調だったエンジンは演習中に海水による「疾走腐食」を起こしていたことが判明した。ある乗員はエンジンルームを「恐怖のショー」と表現した。海軍の最新鋭艦のはずの同艦は、その後2年間、数百万ドルで修理されることになる。

 エンジン故障の謎解明に数カ月を要した。しかし、これだけは最初から明らかだった: フリーダムの故障は、海軍が何十億ドルもの大金を投じて、10年以上もかけて、致命的な欠陥のある軍艦を作り続けてきたことの、もうひとつの紛れもない証だった。

 LCSの現在進行中の問題は、ニュース記事や政府報告書、議会の公聴会などで何年も前からよく知られている。各艦は最終的に、当初の見積もりの2倍以上の費用となった。さらに悪いことに、LCSは機械的な故障多数に足をとられ、想定していた任務を遂行することはできなかった。

 プロパブリカは、このような明らかな欠点を持つ艦船が、20年近くにわたって海軍指導部からどのような支持を受けていたかを追跡することにした。何千ページもの公文書を精査し、建造の各段階で関わった海軍と造船の内部関係者を追跡した。

 その結果、なぜLCSがその約束を果たせなかったのか、新たな詳細が明らかになった。海軍トップは、LCSの欠陥に関する警告を何度も無視した。ある海軍長官は、LCSが海上で故障し、兵器システムに不具合が生じたにもかかわらず、LCSを建造を続けようとした。海軍の強固な擁護者たちは、何十億ドルもする艦で本来の役割を果たすためのチェックを回避した。

 利益を得たい請負業者は、議会へのロビー活動に数百万ドルを費やし、議員たちは、海軍が望むよりも多くの艦船を地元に建造するため戦った。苛立ちを募らせた乗員の多くが、航海よりも修理に多くの時間を費やしたと回想している。

 この調査結果は、半世紀にわたりアメリカの新兵器システム建造プロセスを内外から批判してきた結論と呼応する。LCSの武勇伝は、議会、国防総省、国防請負業者が、納税者の利益とアメリカの安全保障に反して、しばしば協調して、ドワイト・D・アイゼンハワー大統領が離任式の演説で "軍産複合体 "と表現したものを生み出していることを、如実に物語っている。

 「この広大な生態系には大金が流れており、どういうわけか、これらの人々が同意できる唯一のことは、もっと、もっと、もっと、ということだ」と、米海軍大学校の元教授で、現在はブラウン大学で戦争のコストを調査しているライル・ゴールドスタインは言う。「残念なことに、それがこのシステムの本質なのかもしれない」。

 国防総省は今年、連邦政府支出のほぼ半分に当たる8420億ドルという途方もない予算を議会に要求した。上下両院の指導者たちが最終的な数字を交渉している間、LCSのような大失敗を将来防ぐ方法について話し合うことに多くの時間が割かれることはないだろう。

 そのような話し合いは、軍のほぼすべての部門で行われたプロジェクトに費やされた、何千億という税金の無駄遣いに及ぶ:海軍、海兵隊、空軍が配備したF-35戦闘機は、10年以上遅れ、1830億ドルの予算超過となっている。海軍の最新空母ジェラルド・R・フォードは130億ドルで建造されたが、まだ確実に飛行機を発進させる証明ができていない。陸軍の未来戦闘システムは、軍隊、戦車、ロボットをつなぐ戦場情報ネットワークに2000億ドル以上を費やしたあげく、2009年に大部分が放棄された。

 LCS計画は、悪名高い調達の災難のほとんどすべてに見られる、もうひとつの明確な教訓を提供している。いったん大規模なプロジェクトが勢いを増し、国防請負業者が雇用を開始すれば、政治的に善貨を投じることは容易となる。

 兵器プログラムを途中で止めるということは、人々が仕事を失い、莫大な税金の無駄遣いを公に認めることを意味する。LCSの場合、最終的にプログラムを中止させるため、海軍の指導者たちとあわせ2代にわたる国防長官が必要だった。しかし、海軍が必要な沿海域戦闘艦は32隻だけで、当初計画の50隻以上よりはるかに少なくなると発表した後も、議会は国防総省に3隻の追加購入を強要した。

 レナルド・ロジャーズ元中尉は、2012年のサンフランシスコへの試験任務のためにフリーダムを準備するため、サンディエゴで日の出から日没まで何カ月も労働したことを覚えている。ロジャースは当初、この近未来的な船が『スタートレック』に出てきそうだと思った。しかし彼はすぐに、それがスターシップ・エンタープライズではないことを知った。あまりにめったに出港しないので、同艦は「ドライ・ドック・ワン」と揶揄され、ウォーターフロントの笑いものになった。

 「最低だ」とロジャーズは言った。LCSは 「機会を逸した」。

海軍は多くの沿海域戦闘艦を、耐用年数から何年も前に退役させようとしている。25年持つように設計された艦は、10年未満しか使用されなかった後、モスボールされている。

 質問に対して海軍は、LCSが中国など互角の大国と戦うには適していないことを認めた。LCSは「ハイエンド戦で必要とされる致死性や生存性を提供しない」。

 「海軍が必要としているのは、準備も能力も殺傷力も劣る大きな艦隊よりも、準備も能力も殺傷力もある艦隊だ」。

 政府説明責任局GAOで長年トップ軍事アナリストを務め、LCSの盛衰をワシントンの誰よりも詳しく研究してきたジョン・ペンドルトンは、このプログラムのコストに頭を悩ませてきた。

 現在は引退しているが、彼が35年近いキャリアの中で遭遇した最も無駄の多いプロジェクトであるとの見方を守り、ペンデルトンは数十年前にさかのぼる予算文書とGAO報告書をプロパブリカのために見直した。彼の結論はこうだ: LCSクラスの生涯コストは1000億ドル以上に達するかもしれない。

 「結局のところ、納税者が手にするのは、30隻以下で限られた耐用年数の単一ミッション艦だ」。

 この評価はペンドルトンだけではない。LCSの紆余曲折を、軍事革新の世界で横行する傲慢の有害な系統の証拠とみなす者は多い。

 元海兵隊大尉で、現在は非営利団体Project on Government Oversightで国防総省改革に取り組むダン・グラージャーは言う。「しかし、莫大な資金が投入され、政治資金が投入されているため、問題が深刻になるまで、誰もこの列車を止めることはできない」。

 議会は止められなかった。海上では危ういという2隻の物語は、2015年12月から10ヶ月の間に驚くほど絡み合った。その期間中、5隻が世界中で故障し、それぞれが新たな問題を浮き彫りにし、批判者の正しさを事実上証明した。

 フリーダムは故障した3隻目だった。600ページ以上に及ぶ海軍の調査報告によると、この事故は海軍の窮状を示す特に悲惨で詳細な例として際立っている。


提督のビジョン

2002年、ヴァーノン・クラーク提督はデンマークの桟橋で、デンマークの軍艦の甲板から下を見つめ、米海軍の将来を形作るデモンストレーションを見た。

 眼下には大きな甲板砲が鎮座していた。デンマーク海軍関係者の命令で、クレーンがそれを桟橋から吊り上げ、艦に設置した。40分も経たないうちに、水兵たちは武器を回転させ、運用の準備を整えた。

 アメリカ海軍では、このように甲板の上と下で兵器を入れ替えることはできなかった。しかしデンマークは、異なる任務を遂行するため艦船を再構成する能力を簡単に見せた。当時アメリカ海軍のトップだったクラークは、その技術に驚嘆した。

 「これだ。もちろん、これだ」とクラークは自分に言い聞かせたのを覚えている。「こんなことができるのか......」。

 クラークにとって、デンマークのデモンストレーションは、それまでの海軍とは異なる新型艦の構想を具体化するものだった。小型で、比較的軽装備で、平均的な軍艦よりはるかに少ない40人程度で運用する。兵器システムは常設しない。

 その代わり、彼は海軍版のスイスアーミーナイフのようなものを構想していた。一式の武器で武装し、潜水艦を狩り、破壊することができる。しかし、脅威が変化すれば、水中機雷を探知して除去したり、他の軍艦と戦うために素早く装備することができる。

イラク戦争に参加するためにペルシャ湾に、追跡するためにカリブ海に、小国の海軍を助けるために東南アジアに、といった具合だ。この艦船は世界最速の軍艦となり、海岸近くで戦い、大型艦船を出し抜き、イランのような敵の小型艦船を追い詰めることができる。この船は素早く、大量に、低コストで建造される。

 最初の赤信号は、LCS構想の時点で出ていた。クラークがその構想を語り始めると、海軍の造船専門家たちの間で、その構想が野心的で技術的に実現不可能ではないかと懸念する声が出始めた。クラークは屈しなかった。

 彼は造船界に革命を起こす可能性の低い候補者だった。ミズーリ州にあるキリスト教系の小さな学校、エヴァンジェル・カレッジで学士号を取得し、アーカンソー大学でMBAを取得した彼は、メリーランド州アナポリスの海軍兵学校で学び、当初からリーダーシップを発揮するように教育された海軍作戦部長の型と違っていた。

 自称 "急進派 "で、時に不遜で熱情的な彼は、海軍をビジネスのように運営し、訓練を合理化し、無駄遣いをなくし、輝く船員を確保し、そうでない船員を排除することを望んだ。

 彼は、海軍には費用対効果が高く、技術的に進歩した艦隊が必要と考えていた。海軍艦艇の多くは冷戦時代に建造されたものだ。巨大な空母、駆逐艦、戦艦、巡洋艦は退役時期を迎えていたが、その理由のひとつは、最新技術で更新するには法外な費用がかかるからだ、とクラークは語った。

 クラークは、自身のビジネス経歴に基づき、新造艦をできるだけ少人数で運用することを望んだ。「本当に欲しいのは、R2-D2が乗っている無人艦だ」と彼は当時の考えを振り返った。

 クラークの夢は最初から疑心暗鬼を呼んだ。議会は2003年にこの艦の開発着手に同意したが、下院歳出委員会の報告書は「海軍が必要とするシステムをどのように実現するかの『ロードマップ』はない」と警告していた。

 同艦の計画に携わったある元提督は、クラークがスピード(最大45ノット、時速約50マイル)にこだわったことで、すぐ問題が生じたと語った。それほど長く高速で走ることができない。LCSはLittle Crappy Shipの略だと海軍の多くの人が冗談で言っていたが、その小ささゆえに搭載できる武器も限られていた。

 元提督は、上官に懸念を伝えたが、もっと声を大にして言えばよかったと語った。「部下として、上司から "シャベルがあるから穴を掘れ "と言われたら、穴を掘りに行くものだ」。

 海軍は突き進んだ。2004年5月、海軍は国防請負業者の2チームに、それぞれ独自設計で試作品を2隻まで製造する契約を結んだ。

 両チームとも、この契約を勝ち取るために激しいロビー活動を展開した。ロッキード・マーチンは、ウィスコンシン州のマリネット・マリーン造船所と提携し、ワシントンD.C.の地下鉄に広告を張り巡らせた。

 もう1つのチームは、ジェネラル・ダイナミクスとオーストラリアの造船会社オースタルの合弁会社で、アラバマ州で建造する予定だった。

 海軍の目標に応えるため、両社は自動車や旅客用の高速フェリーを部分的に参考にした。

 スピードと器用さを重視したため、艦船は大きな損傷に耐えられるよう設計ではなかった。クラークは、より大きく、より威力のある艦の保護の下で戦うと考えた。大規模な装甲に投資しすぎると、海岸近くで活動するには重くなりすぎると考えた。

 「最新兵器で直撃を受けても生き残れる艦があるんだったら教えてくれ」と彼は言った。「なぜ見せかけにこんな金を使うのか?」

 この主張は議員たちを不安にさせた。クラークの任期が終わりに近づくにつれ、議員たちは、これは海軍がLCSの乗員を消耗品と見なしたことを意味するのかと質問し始めた。

 クラークが2005年7月に海軍を去ると、海軍はその懸念に応え、乗員を保護するために建造中の艦の設計図を描き直した。

 コストは劇的に上昇し始めた。当初は1隻2億2千万ドル以下で建造の予定だった。しかし、最終価格は1隻約5億ドルに跳ね上がった。

 元国防副長官で、同艦の主要な推進者となったロバート・ワークは、海軍の多くが最初の見積もりは非現実的だと考えていたと語る。「少なくとも艦船を建造する立場の海軍は決して信じなかった」と彼は言う。

 コスト上昇にもかかわらず、ワークはLCSの新たな推進者となり、彼プログラムを縮小しようとする国防長官2代の努力に抵抗した。


「予見できた」災害

2015年11月23日の朝、USSミルウォーキーは処女航海で五大湖の極寒の海を渡った。コスト超過は大きな話題だったが、5隻目が進水したことで、海軍当局は同艦の性能がプロジェクトへの疑念の高まりを和らげるよう期待していた。

 海軍はミルウォーキーをウィスコンシン州マリネットのミシガン湖畔にある造船所から新しい母港であるサンディエゴまで航行させる計画だった。そこから最終的には、姉妹艦のUSSフォートワースとともに、西太平洋で存在感を増す中国海軍に対抗する一翼を担うはずだった。

 進水数日前のプレスツアーで、ケンドール・ブリッジウォーター中佐は、敵が「こちらに対抗できる艦船を見つけるのは難しいだろう」と宣言し、自信を見せた。

 しかし、同艦が最初の敗北を喫するのに戦う必要はなかった。最大の敵はエンジンだった。

 ミルウォーキーのコンバインギアは、ディーゼルエンジンとガスタービンを推進シャフトに接続し、最高速度に達するため必要な動力を生み出す複雑な機構だ。

 海軍は、ヴァージニア州ノーフォーク近郊の基地で修理するため、同艦を約40マイルも曳航しなければならなかった。南シナ海はおろか、東海岸の半分も進んでいなかった。もしミルウォーキーが新車なら、ディーラーを出てすぐエンストしたのと同じことだ。

 元将校の中には、この故障とその後の故障は、海軍造船の基本原則である "少数購入と大量テスト "の明らかな違反だったと振り返る者もいる。しかしLCSでは、海軍はその逆を行った。司令官たちは、配備されつつある艦船の欠陥について学んでいた。「これは完全に予測できた結果だ」と、艦船が艦隊に入港する際に海軍作戦副部長補佐を務めた元少将のジェイ・バイナムは言う。「考えてみてください。トヨタは、車がショールームに並ぶ前に、すべてをチェックしているのです。トヨタの技術陣が、『エンジンはあれだが、とりあえず売り始めよう』と言ったらどうなる?」


この艦を生き残らせたいか?

2011年3月の爽やかな金曜日、レイ・メイバス海軍長官は、アラバマ州モービルの造船所に集まった恰幅のいい政治家たちと屈託のない労働者たちを前に演説した。

 背が高く、身なりの良いメイバスは、海軍の最新鋭沿海域戦闘艦2隻の名前を発表した。1隻は「USSジャクソン」と呼ばれ、彼の故郷であるミシシッピ州州都にちなんでいる。

 モービル湾の海を眺めながら、メイバスは10年前のクラークの構想から生まれた新しいクラスの艦を賞賛した。

 「麻薬密売人にとって最悪の悪夢であり、潜水艦にとっては最悪の悪夢だ。「アメリカやアメリカ海軍に危害を加えようとする者にとっては、最悪の悪夢だ」。

 実際、LCSは海軍にとって最悪の悪夢になろうとしていた。

 軍事的な経験よりも政治的な洞察力で知られるメイバスは、70年代前半に海軍に3年間勤務したことがある。

 その後、民主党を経てミシシッピ州知事、駐サウジアラビア大使となり、最終的に第一次世界大戦後で最長の海軍長官となった。

 海軍の文民指導者としての在任中、彼は男女の統合や再生可能燃料の使用など、さまざまな進歩的政策を追求し、海軍にその足跡を残した。また、全米のメジャーリーグ球場で始球式を行うというユニークな特典も利用した。

 米軍戦略に関する彼の最も変革的な見解は、より多くの艦船が必要だという信念だった。

 艦隊は冷戦末期には600隻あったものの半分以下に縮小していた。中国は海軍を急速に拡大し、ロシアは新型潜水艦に多額の投資をしていた。

 2009年に長官に就任したメイバスは、海軍で最も天才的な造船業者のひとつとなる計画を追求した。

 ProPublicaとのインタビューで、彼は艦隊にとって「数の重要性」を繰り返し強調した。彼がLCSを支持したのは、海軍のさまざまなニーズをできるだけ早く満たすのに役立つからだと彼は言った。

 LCSを批判する上級士官の数が増え始めても、メイバスはプログラムを拡大し、議会や国防総省の強力な反対派からLCSを守るために、彼の政治的コネクションと巧みな交渉術を駆使した。

 メイバスは、LCSプロジェクトを支持したことで、海軍のトップ将校や文民軍幹部と対立することになっと認めた。彼が "同窓会 "と呼ぶ、強力な元海軍将校たちの抵抗を思い出した。彼らは、海軍がこれまで建造してきた艦船とはあまりにも異なっていたため、反射的かつ不当に同艦を嫌っていたという。メイバスにとって、伝統に縛られた軍の文民リーダーとしての重要な役割は、変化や革新に対する敵意を克服することだった。

 メイバスによれば、旧態依然とした批判者の筆頭は、アリゾナ州選出の共和党員で、父親と父方の祖父が海軍提督であった海軍退役軍人であるジョン・マケイン上院議員だ。マケイン上院議員は、ミシガン州選出のカール・レビン上院議員(民主党)とともに、上院軍事委員会のリーダーとしてLCSに懐疑的だった。両議員は初期導入艦の1隻あたり7億5000万ドル以上に高騰したコストに警鐘を鳴らしていた。

 こうした懸念に応えるため、海軍は2つの請負業者チームを入札競争で競わせることで価格を引き下げた。オースタルとロッキード・マーチンは、2案の設計の艦船を同じような価格で提出した。海軍首脳は、どちらを選択するかで迷った。

 2010年秋、当時海軍次官だったワークによると、メイバスは海軍の幹部を集め単刀直入な質問を投げかけたという:「この艦を生き残らせたいか?」

 グループがイエスと答えると、メイバスは政治的に巧みな解決策を提案した: 海軍は、アラバマとウィスコンシンの2つの造船所で新造船を建造する両社を選定した。

 メイバスは、数千の雇用と数百万ドルの支出をそれぞれに提供することで、両地域の議会代表団の支持を得られると計算した、とワークは振り返る。富を分散させれば、生き残る可能性は高まる。しかし、問題が発生するとプログラムの中止が難しくなる。

 「彼はプロの政治家ですから、問題を私たちと違う視点で見ていました」とワークは言う。

 メイバスの計画は、海軍首脳を悩ませた。インディペンデンス級のベースとなったオースタル案は、アルミ製のトリマラン(3つの船体を持つ船)である。フリーダム級のベースとなったロッキード・マーチン案は、鍛造鋼鉄製のよりオーソドックスな単船体だ。設計が根本的に異なるため、部品や乗員の交換ができず、維持費や乗組員のコストが高くなる。さらに、契約では合計20隻の艦船を建造することになっており、比較的実績のない請負業者には大きな負担となる。

 しかし、メイバスと彼のチームは、これらの追加コストは、海軍が長期的に享受する節約に比べれば些細なものと主張した。

 ある高官は、海軍が両社と長期契約を結ぶことで29億ドルの節約になったと述べている。メイバスにとって、これは関係者すべてにとってWin-Winの関係であった。各艦船にはそれぞれ利点があり、納税者はより良い価格を得ることができ、海軍はより多くの艦船をより早く手に入れ、造船所はより多くの雇用を得られる。

 真のインセンティブは価格であり、政治的なものではなかったと彼は言う。

 しかし、政治的見返りはすぐ明らかになった。

 マケインは公聴会を開き、海軍を非難した。「この艦の話は、元海軍人として、また州の納税者に責任を持つ者として、恥ずかしい話だ」。(マケインは2018年に死去)。

 しかし12月下旬、政府活動を維持する土壇場の予算案で、アラバマ州選出の共和党上院議員リチャード・シェルビーは、両造船所から艦船を購入する文言を挿入した。

 シェルビーの広報担当者は当時、「彼が実現させたのです」と語っていた。

 ミシガン州選出の民主党議員レビンは、かつて同造船所に批判的だったが、現在は支持している。マリネット造船所はミシガン州境を越えたウィスコンシン州にある。レビンはそこで10隻の艦船を建造する計画を「この地域の経済を大きく押し上げるもの」と呼び、コストを下げる努力をする海軍に拍手を送った。(レヴィンは2021年に死去)ある退役中将は、「造船ビジネスでは政治が王様だ」と言った。


助けを求めても十分ではない

USSミルウォーキーがヴァージニア沖合で行き詰まったわずか1カ月後、南シナ海で合流するはずのUSSフォートワースが恥ずかしい故障に見舞われた。

 USSフォートワースは、順調な展開活動の終わりに近づいていた。インドネシアの民間機墜落事故後の捜索救助活動に協力し、同盟国海軍との合同演習にも参加していた。

 しかし、海軍は燃え尽き症候群を減らそうと、LCSクルーを頻繁に交代させることを決め、2015年11月、経験の浅い新しいクルーが後を引き継いだ。

 後の海軍調査によると、艦長のマイケル・アトウェルでさえ、配属前に「貴重な海上経験を積む機会はほとんどなかった」という。

 1月5日、燃料数百ガロンが主機械室に流出した。乗員は火災を防ぐため、燃料に化学泡を吹きかけなけた。その後、過酷な交代勤務で、交代で狭い区画にもぐりこみ、雑巾やポンプを使い清掃した。

 流出事故の翌日、フォートワースは1週間の定期整備のためシンガポールに入港した。

 海軍調査に応じた士官によると、そこで明らかになったのは、同艦が「激しく乗り回されていた」ということだった。さまざまな部分で漏水が発生し、エンジンは調子が悪く、発電機の修理が必要で、乗組員は疲労困憊していた。ある乗員は、「休みも猶予もなく、日々の任務が増えるばかりだった」と艦上での日々を語った。

 艦長は、上層部のサポート不足を訴えた。「我々は助けを求めるが、十分ではなかった」。

 同艦は当初、香港での寄港のため、1月12日までに出港する予定だった。海軍の調査によれば、アトウェルと上級士官は、それを実現するために「とてつもないプレッシャー」を感じていたという。

 乗組員はエンジンのテストに奔走し、近道をした。エンジンの始動を担当した水兵の一人は、コンバインギヤに適切な注油を怠り、ルーティンステップを飛ばしてしまった。

 「スピードを出しすぎて、すべてを台無しにしてしまった」とその乗員は後に説明した。

 このミスでコンバインギアが損傷し、交換部品を待つ間、7ヶ月間放置せざるを得なかった。

 海軍はアトウェルを指揮官として不適格とみなし、解任した。

 アトウェルはコメントを拒否した。

ミルウォーキーとフォートワースの故障は、LCSプログラムの一生を刻むことになったパターンの始まりだった:艦は不安定な装備で海に急行した。十分な訓練もサポートもないまま、人手不足の乗組員や艦長が艦を動かそうとした。故障が続いた。そして、LCSプログラムの評判を回復し、成果を上げなければならないというプレッシャーが再び強まり、このサイクルが繰り返された。

 やがてUSSフリーダムの番となった。


「私たちは本質的に嘘をついていた」

2012年初頭、国防総省のブリーフィングルームの蛍光灯の下で座っていたサム・ペレス少将は、厳しい警告を受けた。

 数週間前、ジョナサン・グリーナー海軍作戦部長はペレスに、今後数年間に海軍に引き渡される沿海域戦闘艦数十隻をどう使うのが最善かを考えるのに役立つ報告書を作成するよう求めていた。

 結果は厳しいものだった。

 会議テーブルを囲んで詳細を議論していたある同僚将校は自分のこめかみに指を立て、銃が暴発する真似をした: ペレスはキャリア自殺の危険を冒そうとしているのだ。

 それはLCSのパターンだった。LCSを批判した士官は、その結果に直面した。好ましくないポストへの配属。解雇さえも。

 ペレスは乗組員が少なすぎることに気づいた。指揮官が甲板の掃除に時間を割かなければならないほど、手薄になっているのだ。

 クラークがデンマークで観察したのとは逆に、さまざまな兵器システムを交換するのは容易ではない。海軍は、さまざまな任務のため世界各地から派遣される請負業者や船員などのために数週間かかることを考慮していなかった。

 LCSの2型式が問題を複雑にした。部品も乗員も交換できない。ペレスと彼のスタッフは、装備も訓練された乗組員も不足しているため、LCSがお蔵入りになることを心配した。

 LCSを潜在的な敵国の艦隊と比較したペレスは、この艦は軽武装の小型高速攻撃艇としか戦えないと結論づけた。

 同僚の士官から、海軍の最高幹部である海軍士官長に対してこのような非難を浴びせるような肖像画を描くことは、彼のキャリアに傷をつけることになりかねないと警告された。その時点で、海軍はすでに数十億ドル相当の艦船を少なくとも20隻以上買い増すことを約束していた。

 ペレスはすでに、海軍で2番目に高い地位にあるマーク・ファーガソン海軍作戦副部長と調査結果の一部を共有していた。

 この出来事に詳しい元上官によると、ファーガソンはペレスに、彼は艦船を間違った見方をしていると言ったという。「小型艦の性能は哨戒艇と比較されるべきだ」。

 ペレスは反論した。哨戒艇は機雷を除去したり、潜水艦と戦ったり、水上戦艦を攻撃したりするものではない。哨戒艇ははるかに小型で、主に監視と妨害のために設計されている。

 このプロジェクトに携わっていた元将校によれば、スタッフたちは2週間ほどこの比較に取り組んだ後、「本質的に嘘を言っていることになるので、お互いを引き裂き始めた」という。投票の結果、彼らはLCSを哨戒艇と比較するのをやめることにした。

 ペレスは報告書を提出した直後、当時ファーガソンの下で働いていた元少将のバイナムから電話を受けた。バイナムはペレスに報告書を秘密扱いにするよう言った。

 「それが私の提案でした」とバイナムはProPublicaのインタビューで語った。報告書には、"公開報道で共有する必要のない脆弱性の数々 "が含まれていた、と彼は言った。

 パワーポイントによる調査結果のプレゼンテーションで、ファーガソンは無愛想だった。ファーガソンはペレスに1スライドにつき2語程度しかしゃべらせず、最後の1枚が終わる前に次の画像に切り替えるよう指示したという。

 ProPublicaとのインタビューで、ファーガソンはペレスにLCSと哨戒邸を比較するよう頼んだ覚えはないが、報告書の重要部分に失望したと認めた。無愛想なスタイルで知られる彼は、プレゼンを早口でまくしたてたかもしれないと語った。

 批評に異論はなかった。「LCSには深刻な問題があった。LCSには重大な問題があった。しかし、私は、どのように前進するか、艦隊にどう統合するかについて、提言が欲しかった」。

 その直後、ペレスは海軍の国際関係部に配属された。約1年後、彼は国務省との連絡係になった。どちらも、海上任務にキャリアを費やしてきた提督にとって理想的な任務とは見なされていない。

 ペレスはコメントを避けた。

 グリーナーは、ペレスが発言したことで罰せられたという考えは "ナンセンス "だと述べた。それどころか、LCSの人員と予算を増やすきっかけになったと語った。

 同じ頃、グリーナーは別の上級士官、トム・コープマン中将に、水上艦隊に関するより報告書の一部としてLCSの評価を依頼した。

 当時、海軍の戦闘艦艇の適性を担当していたコープマンは、LCSの戦闘能力に懸念を口にした。彼は、LCSは十分な威力がないと考えていた。海軍の契約では24隻、50隻以上の建造が計画されていた。コープマンは海軍に対し、契約完了後に建造を中止するよう勧告した。

 2013年3月、このメモが業界紙にリークされた。コープマンはすぐにメイバスのトップスタッフから電話を受けた。彼はコープマンに、コープマンが公に反対意見を述べたことにメイバスが非常に失望していると伝えた。コープマンは、メモは決して公にするものではなく、なぜ流出したのかもわからないと話した。

 ProPublicaが以前報じたように、グリーナーは2013年半ばにコープマンに早期退職を要請した。コープマンは、海軍の艦船の戦闘適性について公に懸念を表明していたからだ。

 グリーナーは、コープマンは早期退職を要請されたのではないと述べた。彼は、コープマンがLCSにもっと多くの武器を搭載するよう求めるよう説得するのに役立ったと述べた。

 コープマンはコメントを控えた。

 海軍はより多くの艦船を必要としており、LCSプログラムはそれを提供する手助けをするはずだった。


フリーダムのトラブル

姉妹艦2隻が修理のためにドック入りしてから約半年後、フリーダムがスポットライトを浴びる番が来た。

 2016年7月7日、多国間海軍演習に参加する前日、相次ぐ機器の故障で艦長は窮地に追い込まれた: ウォンハースは上官に "航行不能l "のメッセージを提出しなければならなかった。

 フリーダムの技術員は夜を徹して作業し、やがて複雑な推進システムでキャノンプラグと呼ばれる部品の交換の必要があることに気づいた。それがなければ、どこにも行くことができない。

 彼らはロサンゼルスから北へ約1時間のポート・ヒューネメで、同部品を発見した。エンジニアは、南カリフォルニアの交通渋滞の中を5時間かけ引き取りに行き、持ち帰った。艦は1日遅れでサンディエゴを出港した。

 メキシコ領海の外3マイル地点で大きな金属音が鳴り響き、乗組員を驚かせた。ウォンハースは減速させたが、艦は漂流し始めた。乗組員は錨を下ろして止め、港に戻った。

 ウォンハースは上級士官から任務を中断させたと批判された。

 そして7月11日の夕方、艦の心臓部である主機械室で漏水が発生し、電気系統に海水がかかった。床には1、2センチの水溜りができた。水漏れをすぐに止めなければ、ショートや火災を引き起こす可能性があった。

 ある乗組員は、水漏れの原因を手で探し、熱いパイプで腕を火傷しながら、水が漏れている穴を見つけた。乗員たちは穴を塞いだが、修理が裏目に出た。潤滑油システムから海水を排除していたゴム・シールを破って水が浸入したのだ。海水はオイルと混ざり合い、4基あるエンジンのひとつに乳化した液体を送り込んだ。

 二日後、再び同艦をサンディエゴのドックに戻さなければならなかった。入港中の責任者であるエンジニアは、エンジンの完全修理に2週間かかると判断した。ウォンンハースの上司はこの考えを却下した。環太平洋演習(リムパック)が迫っていた。

 海軍のディーゼルエンジン専門家は、特殊な洗浄剤でエンジンの腐食を防ぐ方法を提案した。

 海軍の調査で "第一人者 "と呼ばれたフィラデルフィアの海軍専門家は、その方法を承認した。この方法なら、より早く海に戻り、残る3つのエンジンで任務を完了できる。

 訓練期間中、2人の海軍少将、海兵隊大将、提督を含む海軍高官が同艦を訪れた。彼らは、フリーダムのリムパック参加はLCSプログラム全体にとって「決定的に重要」であると明言した。フリーダムの性能は、「プログラムへの批判をおそらく和らげるだろう」と彼らは考えていた、と調査は述べている。

 その数ヶ月前にフォートワースとミルウォーキーで起こったことを考えると、海軍のトップは「プログラムに"勝利"をもたらすプレッシャーを感じていた」。

 ある幹部は、太平洋艦隊司令官スコット・スイフト提督が、この地域を海軍の "実験場 "にすることを望んでいる、と言った。

 電話取材に応じたスウィフトは、自分は「LCSの信奉者」であり、太平洋で新しい兵器システムをテストするよう海軍に勧めてきたことを認めた。しかし彼は、それはどんな犠牲を払っても配備しろという命令ではないと強調した。

 「ラインから外したいのなら外せばいいと明言したが、さらに下の連鎖の人たちがその選択肢を感じていなかったとしても、私は驚かない」と彼は言った。「この申し出は命令と受け取られる可能性もあったし、LCSから勝利を得るためにもっと強くプッシュしたい者たちに利用される可能性もあった。

 「4つ星である以上、あまり頻繁に何かを求めると、人々はそれを要求だと受け止める」と彼は言った。

 2016年7月17日の朝、同艦はやっと準備が整ったように見えた。

 請負業者は洗浄を終え、出発の荷造りをしていた。しかし、機関長はエンジン内部で採取したサンプルを見て、深く憂慮した。

 海軍の調査によると、エンジン内にまだ水が残っていると思ったという。彼はウォンハースにメッセージを送ったが、それは後に誤解を招くものだったと認めた。彼は、送信前に文章を「校正しなかった」ことがミスの原因だとした。

 午前9時50分、彼は「洗浄は終わりました」と書いた。

 ウォンハースはこれを朗報と受け止め、上司に伝えた:

午前11時36分、ウォーレン・ブラー提督への電子メールには、「すべてが定刻に出発する方向で進んでいます」と書かれていた。

 実際、フィラデルフィアの第一人者が承認した手順は問題を解決していなかった。この処置は、そもそもエンジンオイルから海水ではなく砂埃を除去する対策だった。

 翌朝、フリーダムが出発準備中に、上級下士官エンジニアがジョーという名の請負業者に出くわした。

 ジョーはエンジンは汚染されたままだと彼に言った。心配した機関士は、前甲板でタバコを吸っていた機関長に状況を相談した。

 海に出ればエンジンが錆びてしまう、と機関士は言った。機関長は、そのことは分かっており、ウォンハースに伝えに行くと言った。

 調査官とのインタビューで、機関長はウォンハースに「このままでは航行できない、何とかしなければ」という趣旨のことを言ったと語った。

 ウォンハースはこの記事へのコメントを拒否した。調査官とのインタビューで彼は、チーフエンジニアから汚染されたサンプルのことを聞いたとき、エンジンが作動不能であることを理解したと語った。しかし、彼は他のエンジンに頼ることで、さらなる損傷を避け、任務を完遂できると確信していた。

 「LCSが任務を果たせないということはありえないという強い思いがあった」とウォンハースは語った。彼は、航行を開始しなければならないプレッシャーから、エンジンがまだ汚染されているという不快な事実を上官に伝えなかった、と調査は述べている。

 フリーダムは出航し、水中で機雷を探知した。任務は成功した--少なくとも誰もがそう思っていた。

 しかし、8月3日、ウォンハースが艦を戻した5日後、定期検査でエンジンに大きな損傷があることが判明した。エンジンの交換が必要となった。

 海軍の調査によると、フリーダムでは1つの故障が別の故障を引き起こしていた: 未熟な乗組員が漏れを止めるため間違った手順を使い、海軍の "技術コミュニティ "がエンジン洗浄で間違った手順を勧め、請負業者がそれを実行し、腐食を防げるという "偽りの希望 "を与えた。

 調査によれば、ウォンンハースの重大な過ちとある: 彼は、エンジンがまだ海水で汚染されていることを上官に伝えなかった。

 ウォンハースはこの事件で艦長を解任された。海軍報告書では名前と肩書きが伏せられているが、他にも懲戒処分が勧告された。


「大きな冗談みたいに感じた」

2017年初頭までに、ジェット・ワトソン中尉は、自分が海軍のキャリアを浪費するために契約したのかと疑い始めていた。

 彼はLCSの士官として、サンディエゴに設置されたバーチャル・リアリティ・シミュレーターで何時間も過ごし、あたかも操艦している感覚を味わう訓練の真っ最中だった。

 デジタル体験は印象的だったが、本物のLCSを海に出すのはもっと複雑だった。

 「エンジンが停止して大きな煙が上がり、タグボートに桟橋に引き戻されるのを見るのは面白かった。つまり、見ているだけで、ほとんどゲームだった」。

 海軍で一人前の水上戦将校になるには、何百時間もの海上勤務が必要だ。現役将校や元将校へのインタビューでは、LCSプログラムはキャリアが死ぬような場所だと語られた。艦は頻繁に故障し、士官たちは海上で経験を積むはずの重要な数年間を、修理が完了するのをじっと待つことに費やした。

 ワトソンは騙されたと思った。

 わずか数年前、海軍兵学校の生徒としてLCSの魅力にとりつかれていた。

 そこでLCSの募集担当者たちは、少人数の乗組員と積極的な配備スケジュールという福音を広め、同艦は最もエリートな乗員や士官だけに適していると彼を説得した。

 ワトソンはLCSの将来性に魅了され、士官学校の友人たちにLCSに参加するよう説得する "LCSの伝道師 "のような存在になった。

 卒業式でメリーランド州の太陽のうだるような暑さの中、メイバスが新しく士官となった者たちに最後の訓示を述べたことを覚えている。

 「我々はアメリカのアウェーチームだ。アナポリスに来たのも、ここを去るときに家でじっとしているためではない。海軍隊員と海兵隊員は、平時も戦時も同じように世界中に配備されている」。

 テキサス州ラボック出身のワトソンは、LCSが海軍でのキャリアの切符になると考えていた。

 彼はその後、問題の少ないインディペンデンス級3隻の沿海域戦闘艦に乗り組んだ。

「私たちが任務をこなしていたかというと、躊躇してしまう」と彼は言う。

 その代わり、彼や他の士官たちは、ある上級下士官が「大きなクソサンドイッチ」と形容するようなものを、乗艦当初は胃に詰め込まなければならなかった。

 ジェネラル・ダイナミクスとロッキード・マーチン両社は、LCSに搭載されるデータや装備の多くを専有物とみなしていた。その結果、特定の修理は自社従業員しか行うことが許されなかった、と元将校は語った。そのため、請負業者が海外に出向くこともあり、旅費が何百万ドルもかかり、任務が遅れることもしばしばあった。海軍は最近、データの一部を購入した。海軍の広報担当者は、"独占的な理由のため "価格を明らかにしなかった。

 LCSに乗艦した経験のある複数の将校へのインタビューによると、艦内の多数が機密扱いとされていたため、ワトソンらは乗船中、契約業者の護衛に多くの時間を費やしていた。

 煩雑な交渉のため、請負業者を乗船させるのに数週間かかることもあった。レーダーから兵器システム、艦内食堂に至るまで、すべてをつなぐコンピューター・ネットワークを修理しようとしたとき、その遅れにいらだたされた。別の元中尉によれば、システムはソフトウェアの不具合で頻繁にシャットダウンしていたという。

 艦は常に修理が必要だった。しかし、技術マニュアルは機器を製造した請負業者の母国語でしか書かれていないこともあった。ある元将校によれば、捜索救助艇を降ろすクレーンの一種であるダビットのマニュアルはノルウェー語だったという。ヒューズ2本の交換に、海軍は数千ドルかけてノルウェーから業者を呼び寄せなければならなかったという。

 海軍は最近、乗組員による整備を増やしている。

 2021年に海軍を退役したワトソンは、「大きな冗談のように感じた」と語った。彼が一緒に働いていた優秀な水兵の多くは、LCSでの時間が無駄で、自分のスキルを活かしたり、新しいスキルを学ぶ機会がほとんどないと感じていたため、精神的な支援を求めていたと語った。

 「平均的な1週間は、港で90時間から100時間、正直言って、何もしていない。ばかばかしいと思った。何度も、ただそこにいなければならないという理由で、私たちはそこにいた」。

 ある時、海軍高官が講堂に集まった50人以上のLCS乗員を前にして、何人が再志願して戻ってくるか尋ねた。このプレゼンテーションに詳しい2人の元将校によると、「はい」と答えたのはほんの一握りだったという。


未来をめぐる戦い

LCS問題は国防総省上層部からも注目され、最終的に国防長官2人がLCSの建造を中止させようとした。

 最初は2014年、元陸軍歩兵分隊長で上院議員のチャック・ヘーゲルだった。軍はアフガニスタンとイラクで戦争を戦っていたが、同時に資金を節約する必要もあった。ヘーゲルのアドバイザーは、LCSを32隻に抑え、52隻建造の計画を断念することでそれが可能になると彼に言った。

 すでに深い問題を抱えていると理解されていた同艦を削減することになる。LCSはミサイル攻撃を受けても戦い続けることができず、もともとLCSの中核にあったアイデアである、交換可能な戦闘パッケージは性能を発揮できないと明らかになっていた。

「将来の海軍艦隊の5分の1を、打撃を受けて任務を続行できなくなる艦船にしていいのか」と、ある顧問は当時考えていたと回想している。

 2014年2月、ヘーゲルは32隻への削減を公約し、海軍に新型フリゲート(より大型でタフな軍艦)の設計案を出すよう求めた。しかし、メイバスが反発した。海軍のタスクフォースは、LCSをフリゲート艦に改造する可能性を示唆した。国防総省のトップ兵器試験官は、それは不可能だとヘーゲルに伝えた。しかしヘーゲルは、海軍が「それに耐え、それを正当化しなければならない」と答えた。ヘーゲルはProPublicaのインタビューにこう答えている。

 2014年12月、ヘーゲルは国防長官としての最後の仕事として、海軍が最大52隻の小型艦船を建造することに同意した。それは、沿海域戦闘艦と、LCSの設計をベースに、より多くの兵器を搭載した新型フリゲートの混合である。

 屈服したという批判に対して、ヘーゲル長官は、政府トップの専門家の助言に基づいた「妥協」だったと述べた。

 ヘーゲル長官は、「われわれは、両側から多くの異なる人々を招き入れた。国防長官としてこのような大きなプロジェクトを評価する唯一の責任ある方法だ。ただ、一人の人間がそんなに賢いわけではありません」。

 海軍はその後、新しいフリゲート艦の建造契約を造船会社のフィンカンティエリ・マリーン・グループに発注した。

 ヘーゲルに続くアッシュ・カーター国防長官もLCSに狙いを定めていた。

 カーター国防長官は、2015年12月にメイバス長官に宛てた鋭い言葉のメモの中で、海軍は "致死性よりも量を優先する "罪を犯していると述べた。長官は海軍に対し、沿海域戦闘艦やフリゲートを含め、将来の購入を40隻に制限するよう指示した。

 メイバスは、この方針転換に不意を突かれ、プライベートでカーターと「激しい議論」になったと語っている。

 最初は海軍シンポジウムで、次に議会で、そしてウィスコンシン州の造船所で、LCSの建造者たちに世界最高の船に取り組んでいると断言した。2016年3月、LCSを「お気に入りの話題」と呼ぶアラバマ州選出の共和党議員ブラッドリー・バーンから質問を受け、メイバスは下院軍事委員会で、海軍には52隻の艦船への「有効な必要性」があると述べた。

 メイバスが証言している間にも、艦船は海上で故障する頻度が高まっていた。

 メイバスは事故の重大性を軽視していた。

 「我々は真摯に受け止めた。「しかし、我々が見ていた限りでは、それが組織的な問題であるとは思えなかった。

 建造した請負業者は、パフォーマンスを擁護した。

 イタリアに本社を置く造船会社フィンカンティエリの広報担当者エリック・デントは、マリネットでフリーダム船を建造したのもフィンカンティエリであり、ロッキード・マーチンと海軍の設計に従って建造したと述べ、両者への質問に答えた。

 ロッキード・マーチンの広報担当者パトリック・マクナリーは、同社は海軍との仕事に誇りを持っており、"プラットフォームへの手頃な改良 "を提供することに集中していると述べた。

 インディペンデンス級艦船を建造したオーストラリアの造船会社オースタルと、コンピューターのインフラを構築したジェネラル・ダイナミクスは、この記事へのコメントを拒否している。

 兵器システムは、エンジンと同じくらいひどく故障していた。

 元中佐のマーク・ウェストは、軍服時代と民間人として長年にわたり、海軍の戦闘パッケージ開発を指揮した。

 LCSが21世紀の戦争で重要な任務である機雷を発見するのを助けるため、海軍は水中爆発物を探知する遠隔操作のミニ潜水艦を建造した。ウェストらは、その運用があまりにも難しいことが判明したと述べている。海軍は老朽化した掃海艇に依存している。

 「25歳の水兵が、4、5ノットのスピードで20,000ポンドの重さの[ミニ潜水艦]を遠隔操作するところを想像してみてください。クレーンでサドルを降ろし、水面から浮上させる。それは不可能に近かった」。

 開発に15年、遠隔地雷探知システムに7億ドル以上が投資された後で、海軍は2016年3月にこれを中止した。

 潜水艦を狩るため、防衛請負業者は艦尾から長いケーブルで水中を引きずるソナー装置を作った。この装置は潜水艦を探知すると艦に信号を送り、艦はヘリコプターを派遣して海上にホバリングさせ、別のソナー装置を海中に突入させることになっていた。その後、ヘリコプターが魚雷を投下して潜水艦を破壊する。

 これらのコンポーネントは、どれも互いに効果的に通信していなかった。また、LCSの航跡はソナーの発射と回収を極めて困難にしたと、このプログラムを直接知る元提督の一人は言う。

 このモジュールに数億ドルをつぎ込んだ後、海軍はこの機能を新しいフリゲート艦に移した。

 ウェストはインタビューの中で、海軍はモジュールに艦船と同じ優先順位を与えることはなかったと語った。モジュールは常に "二の次"だったとウエストは言う。モジュールの開発に携わる人々は、"成功"を確実にするために必要な時間と資金を得るために、"戦い、引っ掻き回さなければならなかった"。


コロナドとモンゴメリー

フリーダムのエンジンが故障した約1カ月後、4隻目のLCSであるUSSコロナドがシンガポールに向かう途中で故障し、足を引きずりながらハワイに戻ってきた。

 この時点で故障は日常化していた。最初に、新しく命名された船に対するファンファーレがあり、旗を振り、握手し、スピーチをし、シャンパンの瓶を割って祝う。その後、数日から数週間にわたる洋上での危険な旅が続き、また部品が壊れて港まで牽引される。

今回のコロナドでは、カップリングと呼ばれる部品が原因だった。ウォータージェットとエンジンをつなぐこの装置が故障し、船の複雑な推進システムに支障をきたした。海軍は他の沿海域戦闘艦数隻でもこの問題があることを発見した。

 艦船を批判する何十もの報告書を作成してきたGAOは後に、コロナドが2016年から2017年にかけて6回も航行できなかったのは、"単純な問題を修正するための正しい部品が搭載されていなかった "からだと知った。

 「回路カードアセンブリ、ワッシャ、ボルト、ガスケット、空調ユニットのダイヤフラムのような重要なアイテムが艦内になかった」と報告書は発見した。「LCSにこうしたアイテムをストックする十分なスペースがない可能性がある」。

 2016年8月、海軍は技術クルーを再教育し、艦のパフォーマンスを向上させるため、すべての沿海域戦闘艦の30日間待機を命じた。

 その1カ月後、5隻目の艦船USSモンゴメリーが災難に見舞われた。2ヶ月の間にエンジンが故障し、タグボートと衝突し、パナマ運河の閘門に衝突して艦体に亀裂が入った。


「海軍も欲しくない」

2017年5月4日、ドナルド・トランプ大統領政権が発足して3カ月ほど経った頃、当時のホワイトハウス行政管理予算局OMBのミック・マルバニー局長は、保守系トークラジオ番組の司会者ヒュー・ヒューイットのインタビューに応じた。

 彼らは『ゲーム・オブ・スローンズ』、オバマケアの廃止、OMBの新入職員について話した後、海軍艦船を350隻に増やすというトランプ公約に話を移した。ヒューイットが知りたかったのは、大統領はどうやってそれを達成するつもりなのか、ということだった。

 マルバニーは前日、パリ協定(気候変動による破滅的な結果を回避するための国際条約)に関する会議を欠席し、沿海域戦闘艦をさらに購入するかどうかを議論していたと語った。

 「海軍はいらないと言っている」とマルバニーは言った。海軍はより強力なフリゲート艦建造に向かっており、LCS計画はもう限界のようだった。海軍はその年、LCS1隻分の予算しか要求しなかった。

 しかし、またしても政治が介入した。

 ウィスコンシン州選出の民主党上院議員、タミー・ボールドウィンは、より多くの予算を求めて戦っていた。彼女は5月12日、トランプ大統領に手紙を送り、LCSは彼女と大統領が協力するまたとない機会だと訴えた。彼女は、どちらもアメリカの労働者がアメリカの製品を製造することを支持しているが、建造予算が少なすぎると、彼女の州の造船所は労働者何百人を解雇することになると述べた。

 5月24日、防衛界に衝撃を与えた動きとして、トランプ政権は議会に予算が送られた後で、さらに1隻の艦船を予算に組み込んだ。トランプ政権は突然、海軍が要求していない新造船を5億ドルで発注したのだ。

 ボールドウィンはプロパブリカへの電子メールで、「ウィスコンシン州の造船業界を代表することに大きな誇りを持っている」と述べ、LCSを支持したのは "海軍に新たな能力と能力を提供する "からだと付け加えた。

 翌年、議会はさらに多くの艦船に資金を提供し、海軍は必要とする艦船よりも3隻多い35隻を保有することになった。この追加に15億ドル以上の税金が投入された。

 それ以来、LCSの両船型は大きな問題に直面し続けている。インディペンデンス級では、ほぼ半数の船体に亀裂が入っている。海軍は、コンバイニング・ギアの欠陥がフリーダム・クラス全体に影響を及ぼしていると判断した。海軍は、ロッキード・マーチンと折半で、1隻あたり800万ドルから1000万ドルをかけて修正した。

 海軍の専門家たちは、LCSの故障が海軍を中国に対しより不利な立場に追いやったと懸念している。国防総省の最新の議会報告書によれば、中国軍は約340隻の艦船と潜水艦を保有し、世界最大の海軍を誇っている。それに比べ、米海軍の艦船と潜水艦の数はおよそ294隻である。

 海軍は、沿海域戦闘艦を早期モスボール化し始めている。2022年3月、海軍はフリーダム級9隻を早期退役させる計画を発表した。

 予想されたパターンで、艦船が配備されている州を代表する議員たちは、より多くの艦船を海に残すために戦った。その結果、海軍は4隻だけ退役させることになった。うちの1隻は先月退役したが、就役から5年未満だ。他の3隻はすでにモスボール化されていた。

 海軍は現在、メイバスの出身州の州都の名を冠したUSSジャクソンを含む、さらに2隻を退役させようとしている。この艦は昨年10月に最初の配備を終えた。25年の寿命を持つはずの艦は、わずか9年しかもたないだろう。■


How the Navy Spent Billions on Failed Littoral Combat Ship Program — ProPublica

BY JOAQUIN SAPIEN

REPORTER, PROPUBLICA

SEPTEMBER 7, 2023


Joaquin Sapien is a reporter at ProPublica covering criminal justice and social services.

This story was produced by ProPublica, a nonprofit newsroom that investigates abuses of power. Get a behind-the-scenes look at the investigation in an Instagram Live conversation on September 12. Follow @propublica for updates.