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2024年12月3日火曜日

BAEはユーロファイター・タイフーンの英国最終組み立てラインをどのようにして存続させようというのか(Breaking Defense)―4.5世代機としてまだ伸びしろがあるのか、GCAPが英国で生産されるか保障はない。


Eurofighter Typhoon

英国空軍のユーロファイター・タイフーンはNATOの防空任務を実施している(英国国防省)


ウォートン施設で最後のタイフーン2機が2025年に引き渡されると、BAEは第6世代GCAP戦闘機の製造で頼みの綱となる労働力をつなぎとめるためにも、輸出市場で顧客を見つけ出ざるを得なくなる



週、カタール首長が英国を訪問するにあたり、ロンドンから北西に約250マイル離れたプレストン市の動向が注目されている。

 なぜなら、プレストンにはBAEシステムズのウォートン施設があり、ユーロファイター・タイフーンの最終組み立てが行われているからだ。 そして、シェイク・タミーム・ビン・ハマド・アール・サーニーが今回の訪問で、第4世代ジェット戦闘機の新たな注文を発表するとの期待が高まっている。実現すれば、この地域の航空機産業の衰退に終止符を打つ可能性がある。

 ウォートン工場では、カタールからの24機のジェット機に関する以前の注文分として、2025年末までにタイフーンの最終機を2機生産する予定である。しかし、その後、英国製のタイフーンの将来は不透明だ。

 BAEシステムズの広報担当者は、英国の防衛大手である同社がワートン施設を閉鎖する計画はないと断言し、国際的な受注の可能性を指摘した。アナリストや同社幹部は、カタール、サウジアラビア、トルコが今後の受注の有力な候補であると述べている。

 しかし、英国政府にワートンの生産ラインへの投資を懇願する書簡を議員に送ったことで、英国で大きな反響を巻き起こした労働組合の主要人物スティーブ・マグニスにとって、こうした「もしも」の可能性はさほど慰めにはならないようだ。同氏は、タイフーン・プログラムの将来のためだけでなく、英国の先進的な戦闘機生産の将来のためにも、ワートン・ラインへの投資を強く求めている。

 「タイフーンの国内受注がなければ、航空機の製造と飛行に必要な技術が失われるため、GCAP(グローバル・コンバット・エア・プログラム)が実現しなくなる深刻な懸念があります」と、労働組合ユニテの航空宇宙・防衛執行委員会メンバーであるマクギネスは記している。

 BAE社は、将来のプロジェクトに向けた研究開発努力を継続することで、一部業務だけでも継続できる。また、ウォートン工場で現在働いているスタッフを、タイフーン事業や同社が運営する他の航空戦闘プロジェクトに再配置することも可能だ。

 しかし、結局のところ、タイフーンの生産ラインを稼働させ、GCAPまでの間、労働力を雇用し続ける最善の方法は、タイフーンをより多く販売することしかない。そして、同機は大きな逆風に直面している。

 「世界は新世代へと移行しつつあります」と、ティール・グループの上級アナリストであるJJ・ガートラーは言う。「近年、タイフーンの市場は、性能基準よりもむしろ外交目的でタイフーンを導入する国々によって形成されてきました」。

現状

マクギネスの書簡を受け、英国の保守系出版物である『ザ・スペクテイター』誌は、「ユーロファイター・タイフーンの悲しい死」と題する記事を掲載した。これにより、書簡はヘッドラインニュースとなった。

 「もしあなたがBAEシステムズの経営トップであったなら、労働組合から出されたその報告書を好意的に受け止めなかったでしょう」と、英国空軍の元空軍准将であるゲイリー・ウォーターフォールは本誌に語った。「生産の見通しがやや先走りしすぎている」と語った。

 「タイフーンに対する関心は依然として高く、中東やヨーロッパでは現在、数件の受注を追及しています。また、ヨーロッパのユーファイターパートナーからの追加受注も検討しています。これは最近の報道でも取り上げられています。」BAEの回答はさらにこう付け加えた。「追加受注があれば、生産は今世紀後半まで継続されるでしょう」。

 アナリストによると、世界は「4.5世代」のタイフーンよりもさらに進化したシステムに向かっているため、追加販売の選択肢は限られている。

 「ステルス性能は、ほぼすべての戦闘機市場への参入コストとなっています。F-35のようなシステムがハイエンド戦闘機に取って代わるケースが多く見られます」とガートラーは指摘する。「タイフーンが今後も担う任務の一部、例えば領空警備のような任務については、複雑で高価なシステムではなく、より安価なシステムでも同じ仕事をこなすことができます」。

 タイフーンは、英国(BAE)、ドイツ(エアバス)、イタリア(レオナルド)、スペイン(エアバス)の4カ国のパートナーで製造されている。各社はそれぞれ最終組み立てラインを所有し、自国の軍用機や海外の顧客向けの最終仕上げを行っている。輸出販売の主導キャンペーンを展開するメーカーが最終的に最終組み立ての権利を獲得するのが一般的だ。英国は、カタール、トルコ、サウジアラビア王国に関連するユーロファイター輸出キャンペーンの主導国。

 マクギネスが指摘する問題の主なものとして、英国がユーロファイター・タイフーン24機の新規発注を断念したことが挙げられる。また、ロンドンが(2025年に退役予定の)ユーロファイター・タイフーンの旧型機(トランシェ1)を、ロッキード・マーチンF-35の追加発注機と入れ替えるという報道もある。ロンドンは2009年に、ユーロファイターのパートナー国とともに112機の航空機に関する共同契約の一部として、最後にタイフーンを調達した。2021年の国防指令書によると、ロンドンは「デジタルおよび将来の運用環境における限定的な有用性」を持つ航空機を処分する必要性を、トランシェ1ジェット機を廃止する動機として挙げている。

 マクギネスの書簡では、このようなF-35の取得決定は「英国の航空機産業にとって致命的な打撃となり、この国における高速ジェット機の設計、製造、組み立てを終焉させる可能性があり、主権能力に深刻なダメージを与える」と警告している。


CON-20230227-149-RSAF Typhoons-英コブラ・ウォリアー演習に先立ち、英国リンカンシャー州のRAFコニングスビーに到着したサウジアラビア空軍のユーロファイター・タイフーン(英国王立空軍)


タイフーンのさらなる販売の可能性はあるのか

タイフーンの国内需要の低迷や、近年F-35が圧勝しているにもかかわらず、アナリストらは、BAEが中東への販売の可能性に期待を寄せるのは間違いではないと述べている。

 トルコはユーロファイター40機の購入を希望していると発表している。トルコのヤシャ・ギュレル国防相によると、最近、この取引に反対していたドイツが合意に向けて「前向きな回答」を示したという。

 また、ドイツは1月にサウジアラビアへの販売禁止措置を解除し、長らく遅れていた第2弾の航空機発注(運用中の72機への追加)が実現する道が開けた。正式合意はまだだが、来月、英国のスターマー首相が中東訪問の一環でアラブ首長国連邦(UAE)を訪問する際に、議題に上る可能性がある。

 「トルコへのキャンペーンは非常に活発で、最優先事項です」と、コンサルティング会社AeroDynamic Advisoryの常務リチャード・アブラフィアは述べた。「実現の可能性は高いでしょう。2番目のサウジアラビア向け分についても同様です。しかし、幸運にも、英国のタイフーン生産ラインが、4か国のパートナーの中で、2010年代末まで最も生き残る可能性が高いのです」。

 同様に、英国に拠点を置く国際戦略研究所(IISS)の軍事航空宇宙部門シニア・フェローであるダグラス・バリーは、「現在進行中のいくつかの輸出キャンペーンを考慮すると、タイフーンの生産がパートナー諸国全体で2030年代前半から半ばまで続く可能性も『考えられないことではない』」と付け加えた。

 さらに、英国はタイフーンの能力開発パッケージに24億ポンド(30億ドル)を投資しており、その一環としてBAEは先進のアクティブ・電子走査アレイ(AESA)レーダーである欧州共通レーダーシステム(ECRS)Mk 2の納入契約を結んでいる。

 BAEシステムズの広報担当者は、「これらのアップグレードは、次世代戦闘機であるTempest/GCAPの準備として、技術と技能の開発を支援する目的もあります」と付け加えた。

 英国国防省の報道官は、「現行の計画では、タイフーンは少なくとも2040年までは英国空軍で運用される予定であり、退役までこの重要な能力が英国およびNATOの戦闘航空力の最先端であり続けるよう努めてまいります」と述べた。

 英国の航空宇宙・防衛業界の業界団体ADSグループのCEO、ケビン・クレイブンは、本誌に宛てた電子メールで次のように述べた。「ワートンで実施されているような数十年にわたるプログラムは、英国が世界的な防衛と安全保障を支援するという永続的な取り組みを象徴するものであり、英国にとってより深い戦略的国際同盟の構築を支えるものです。わがほうのサプライチェーンは強靭ですが、英国政府からの矛盾したシグナルにより打撃を受けています」。



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ロンドンで開催されたDSEIで展示されたグローバル・コンバット・エア・プログラム(GCAP)の主要車両コンセプト(Breaking Defense


GCAPの開発

ウォートンで楽観視されているもう一つの理由は、GCAPの重要性であり、それはBAEだけでなく、英国にとって地政学的な切り札となるからだ。次世代プログラムはイタリアや日本とも関連し、また、フランス・ドイツ・スペインのFCAS/SCAFが遅れをとれば、西側諸国でF-35以外の選択肢として浮上する可能性もある。

 GCAPの重要性から、ユーロファイターが脱落した場合でも、ワートン工場での生産が継続される可能性は高い。

 「世代間の橋渡しという観点では、一般的に生産作業よりも設計作業の方が重要です。これが、ユーロファイターのアップグレード問題が生産ラインの存続と同等か、あるいはそれ以上に重要な理由です」とアブラフリアは指摘する。

 「GCAPとの何らかの橋渡しが必要になるのでしょうか? その可能性は高いでしょう。しかし、特に現在の英国の緊縮的な国防政策を考慮すれば、その橋渡しはユーロファイターとは似ても似つかないものになるでしょう」とガートラーは付け加えた。

 バリーは、英国の用語で「Collaborative Combat Aircraft(協調戦闘機)」を意味する「Autonomous Collaborative Platforms(ACP)」を用いたタイフーンの実験が近い将来に始まる可能性を示唆した。

 「GCAPに先駆けてACPを導入する野望があります。ですから、タイフーンにACPの能力を統合する技術や研究開発が必要になるでしょう」と彼は述べました。

 今月初め、英国空軍(RAF)の最高司令官であるリチャード・ナイトン空軍大将は、「年度末までに、運用上意味のある最初のACPを受領する予定である」と述べた。英国は、具体的にどのACPを選択したかについては明らかにしていないが、使い捨てタイプになるだろう。ロンドンは、ACP戦略によると、2030年までに「ACPのセット」を運用する予定だす。

 「戦闘能力を早期に開発し、生産することができれば、より良い」とバリーは述べた。■


How BAE plans to keep its Eurofighter Typhoon UK final assembly line alive for GCAP

The last two Typhoons on order at the Warton facility are set to be delivered in 2025, meaning BAE needs to find more export customers to keep fresh a workforce it is counting on to make the sixth-gen GCAP fighter in the future.

By   Tim Martin

on December 02, 2024 at 4:29 AM



https://breakingdefense.com/2024/12/how-bae-plans-to-keep-its-eurofighter-typhoon-uk-final-assembly-line-alive-for-gcap/


2024年10月20日日曜日

ユーロファイター・タイフーンがF-22ラプターを「撃墜」した成果が今も議論を呼んでいる(The National Interet)

 



F-22 Raptor

 

Eurofighter



2012年のレッドフラッグ演習で、ドイツ空軍のユーロファイター・タイフーンは、近距離ドッグファイトでF-22ラプターを撃墜することに成功した。この驚くべき結果で視認距離でラプターと交戦したタイフーンの敏捷性が浮き彫りになった。

 

-F-22はステルス性能と視程外射程能力により優位性を保っているが、今回のドッグファイトでは、近距離ではユーロファイターも対抗できることが示された

-今回の演習は、空中戦に関する重要な疑問を提起し、世界最高性能の戦闘機でも特定のシナリオでは課題に直面しうることを示した


F-22 ラプター vs ユーロファイター タイフーン:10年前のドッグファイトから得られた意外な結果

世界で最も優れた制空戦闘機として知られるF-22ラプターだが、このステルス戦闘機は長年にわたり、F-16や海軍の電子戦専門機EA-18G グラウラーといった旧式で性能の劣る機体との想定ドッグファイトで数々の敗北を喫してきた。しかし、10年ほど前に実施されたドイツのユーロファイター・タイフーンとの一連の模擬空中戦ほどラプターの評判にこれほどダメージを与えた訓練は存在しない。

 これらの喪失はあくまでも演習でのものだったが、一部の人々はこれを深刻に受け止めた。事実、ドイツのユーロファイターが「ランチにラプターサラダを食べた」とし、機体にF-22のキルマークが付けられているのが目撃されたほどだ。

空軍の次世代制空戦闘機が今後10年以内に就役する予定であることから、強力なラプターが怒りに任せて他機に一発も発砲することなく退役し、模擬戦闘演習と数回のエキサイティングな迎撃がラプターの空対空戦闘の遺産のすべてとなる可能性が高くなっている。


F-22は本当に優れているのだろうか?それとも、同機の最大の利点はステルス性ではなく、誇張された宣伝文句なのか?

F-22とユーロファイター・タイフーンに関する議論は、主に2012年にアラスカ上空で行われた米空軍の大規模なレッドフラッグ空中戦闘訓練にドイツのユーロファイターが参加したことに端を発している。

 レッドフラッグは、さまざまな航空機(多くの場合、複数の国から参加)が、現実の同等の戦闘をシミュレートするための大規模かつ現実的な脅威に立ち向かうという、高度な空中戦闘訓練コースだ。

 同年にドイツは150名の航空兵とJG74(ドイツ空軍第74戦術航空軍団)所属の8機のユーロファイター・タイフーンをアラスカ州のイールソン空軍基地に派遣し、2週間にわたってさまざまな任務に参加した。 その中には、アメリカのラプター戦闘機との近距離での一連の基礎戦闘機動(BFM)訓練も含まれていた。BFMとは戦闘機パイロットの隠語でドッグファイトを意味する。

 演習終了後、ドイツのユーロファイターパイロットは2012年のファーンボロー国際航空ショーに到着し、F-22に対する勝利について早速議論を交わした。The AviationistのDavid Cenciottiによる報道によると、ドイツパイロットは、F-22が外部燃料タンクを取り付けた状態で飛行し、視認可能な範囲内で戦闘を行っていれば、タイフーンはラプターを凌駕することが多いと説明した。


ユーロファイター タイフーンとF-22 ラプターの比較

世代の違いにもかかわらず、F-22 ラプターとユーロファイター タイフーンには、実際、多くの共通点がある。両機は、冷戦時代に生まれた制空戦闘機として設計されたもので、タイフーンは1994年に初飛行し、F-22は1997年に続いた。同様に、両戦闘機は最終的に2000年代初頭から半ばにかけて就役し、タイフーンは2003年に、そしてラプターは2005年に就役した。

 しかし、ほぼ同時期にほぼ同様の任務を遂行するために設計されたにもかかわらず、両機は任務遂行の方法で劇的な違いがある。

 F-22ラプターは、に航空戦力の革命となることを目指して開発され、米国の画期的なステルス技術に大きく依存して、地球上で最もステルス性の高い実戦用戦闘機となった。そして、それは現在も変わらない。しかし、ラプターが優れたプラットフォームである理由はステルス性だけではありません。高度なセンサーフュージョンと先進的なエイビオニクスを誇り、パイロットの認知負荷を軽減しながら、極めて高度な状況認識を可能にしている。つまり、F-22のオンボードコンピュータにより、パイロットは戦闘に集中でき、航空機の操作に気をとられることが少なくなる。

 「ラプターを操縦しているとき、操縦を意識する必要はありません」と、MITでの講演でF-22パイロットのランディ・ゴードンは説明しました。「ラプターをどう使うかについて考えるのです。飛行は二の次です」。

 しかし、F-22はステルス性とセンサーフュージョンだけではない。また、第4世代ドッグファイト機の要素も取り入れている。例えば、スラストベクター制御(機体から独立してジェットノズルを方向づけ、信じられないほどアクロバティックな操縦を行う能力)や、高い推力重量比、機内に搭載された480発を毎分6,000発という驚異的な速度で発射できるM61A2 20mmガトリング砲などだ。

 「ラプターにはベクトル推力があるが、タイフーンにはない」と、2013年に英国空軍タイフーンのパイロット兼中隊長リッチ・ウェルズは『Breaking Defense』に語っていた。「この機体が何ができるか、それは驚異的だ。タイフーンにはできないことだ」。

 通常、内部に合計8つの兵器(AMRAAM 6基、AIM-9 Sidewinder 2基)を搭載するが、大武装が必要なら、4つの外部パイロンステーションに追加の兵器を搭載することができる。

 その結果、F-22は2つの戦闘哲学を橋渡しし、高度なステルス性と状況認識能力により、相手がその存在に気づく前にほとんどの戦闘に勝利できる。また、伝統的なドッグファイト特性も高く評価されており、前世代の最もダイナミックなホットロッド・ドッグファイターと互角に立ち回ることができる。

 一方、ユーロファイター・タイフーンは、既存の航空優勢モデルを再構築することを目指していたわけではない。デルタ翼のデザインは、F-22の爆撃機型構想に採用された形状であり、揚力と航続距離の増加とともに、高度な亜音速での操縦性を実現している。この設計とタイフーンの機体素材は、同等の性能を持つ第4世代戦闘機よりも高度なステルス性を実現している。

 事実、ユーロファイターの宣伝資料によると、「この航空機は、レーダーに映りにくい高度な複合材料で製造されており、強固な機体構造を実現しています。金属は機体の表面のわずか15%で、ステルス運用とレーダーベースのシステムからの保護を実現しています。」 

 F-22をはじめとする戦闘機多数と同様に、タイフーンもまた、レーダー反射を不明瞭にする電子戦能力を活用している。また、整備に手間がかかるラプターとは異なり、タイフーンは修理時間を最小限に抑えるため、交換可能なモジュール15個で組み立てられ、メンテナンスが容易な設計となっている。タイフーンのモーゼル BK27mm砲は、1分間に1,000発または1,700発の弾丸を発射し、150発の弾薬を搭載する。

 就役以来、タイフーンは極めて優れた多用途プラットフォームへ成長を遂げ、そのルーツである制空戦闘機としての能力を残しつつ、現在就役している戦闘機の中でも最もバランスのとれた戦闘機の一つとなっている。

 「ユーロファイターは、操縦のスムーズさと高いGフォースに耐える能力において、確かに非常に素晴らしい機体です」と、前空軍参謀総長で、ラプターとタイフーンの両方で操縦経験を持つ数少ないパイロットの一人ジョン・P・ジャンパー大将は説明します。「特に私が操縦したバージョンは、エイビオニクスやカラー・ムービング・マップ・ディスプレイなど、すべてが最高水準でした。接近戦での機動性も非常に印象的でした」。

 タイフーンは、ユーロジェットEJ200アフターバーニングターボファンエンジンを2基搭載しており、ラプターほど強力ではないものの、マッハ2の最高速度まで加速させる。ラプターの最高速度はマッハ2.25ですが、最高速度は戦闘ではそれほど意味がない。また、ユーロファイターの重量が比較的軽いため、迎撃機形態での推力重量比は、同様の装備のラプターよりも優れている。


F-22対ユーロファイタータイフーン:演習で分かっていること

2012年のドッグファイト演習について詳細は依然不明だが、確実に分かっていることもある。パイロット証言によると、少なくとも一部(すべてではないとしても)は一対一の戦闘であったことが分かっている。最も重要なのは、視認可能な距離で行われたということ、そして、ラプターがステルス機能(および曲技飛行機能)を備え、外部燃料タンクを搭載していたという複数の報告があることだ。

 この違いは極めて重要である。なぜなら、戦闘は事実上、ラプターの最大の強みであるステルス能力と状況認識能力を無効化する強制的な偽装工作の下で開始されたことを意味するからだ。

 現実の戦闘では、F-22のパイロットはタイフーンが気づくよりも先に、ほぼ確実にタイフーンに気づくだろう。これにより、戦闘が始まる前にラプターが有利な位置につくことが可能になる(あるいは、視認できない距離からタイフーンを撃墜することも可能だ)。言うまでもなく、翼に外部燃料タンクを付けたまま、パイロットが命を懸けたドッグファイトを挑むことはない。

 しかし、この種の訓練は軍事訓練では一般的で、レスリングにおける攻防の構えに例えることができる。レスリングでは、ニュートラルな状態からスタートし、両選手とも立った状態から始まる。これは、戦闘機2機が実戦さながらに飛行しながら演習を行うようなものである。

 一方、守勢(または不利な)ポジションから始まるのは、レスリングで一方の選手が手と膝をついて始まり、相手選手がその隣で片膝をつき、腕を背中に回す(アドバンテージ)という状態から始まる場合だ。この演習の場合、F-22は膝立ちの状態から不利な立場からスタートした格闘機として、ユーロファイターの強みを活かした演習を行った。

 

 とはいえ、レスリングと同様に、不利な立場からスタートしたからといって、負けを正当化する理由にはならない。これはゲームの一部に過ぎない。

 戦闘開始前にもユーロファイターにはいくつかの配慮がなされていた。F-22が外部燃料タンクを搭載していたため、その機動性能とステルス性能がいくらか損なわれていたのに対し、ラプターとの一対一のドッグファイトに参加したユーロファイタータイフーンは、燃料タンクだけでなく、外部兵装を一切搭載せずに飛行することが許可されていた。これによりタイフーンの機動性は向上しただけでなく、実戦ではあり得ない。

「1対1で戦った朝が2回ありました。最大迎角(迎え角)を得るために、燃料タンクを全部取り外しました。」と、演習に参加したパイロットの一人ドイツのマーク・グルーン少佐は説明している。

 各戦闘機がこの訓練に何機参加したのか、交戦ルールはどうだったのか、最終的な撃墜率など、詳細については、両国とも明らかにしていないが、ネット上でさまざまな主張がなされている。これらの主張は確認されていないが、ユーロファイターよりもF-22の方が勝利数が多いという報告ばかりだが、F-22も明らかにいくつかの損失を出している。

 現在のユーロファイター・タイフーンには、敵戦闘機を機首を向けずに攻撃できるヘルメット搭載照準システムと、最大30マイル離れた距離からステルス戦闘機を発見できる可能性のある赤外線捜索追跡(IRST)システムが搭載されている。これは、現在までいずれも搭載していないF-22に対し大きな優位性となるはずだったが、このドッグファイト訓練が行われた時点では、これらのシステムはまだドイツ空軍に配備されたばかりであり、訓練に参加したタイフーンには搭載されていなかった。

 ドイツ人パイロットによると、戦闘が始まると、F-22の推力偏向制御(TVC)は、タイフーンと近距離で模擬戦を行った際には、ラプターを助けるどころか、むしろ妨げとなったという。

 「重要なのは、F-22にできるだけ近づき、そこに留まることだ。彼らは、我々がこれほどまでに攻撃的に旋回するとは思ってもみなかっただろう」と、グルーネは2012年に『Combat Aircraft』誌に語っている。「マージしてもタイフーンは必ずしもF-22を恐れる必要はない」 

(「合流 Merge」とは2機の戦闘機が正面から接近してすれ違う際に戦闘機パイロットが呼ぶ名称だ。)

 TVCで戦闘機は極端な機動を行えるが、その代償も大きい。ドッグファイトでは、対気速度が命であり、TVCが実現するエキゾチックなディスプレイは、その対気速度を大幅に低下させる。F-22が推力偏向ノズルを使って急旋回すると、機体は再び対気速度を取り戻すまで無防備な状態となる。このような機動を行った直後に敵機を撃墜できなければ、強力なF-119-PW-100ターボファンエンジン2基が70,000ポンドの戦闘機を再び動かすまで、ラプターは格好の標的となってしまう。

以下は匿名のユーロファイターのテストパイロットが説明した内容だ。

「防御的」な姿勢で、かつ推力偏向ノズルを搭載している場合、敵機を追い越すことは可能ですが、それは良い考えとは言えません。タイフーンのようなエネルギー戦闘機は、エナジーを維持し、ミサイルや銃撃に備え攻撃的な位置に変更するために、都合よく『垂直方向を利用』します。また、その後の加速には非常に長い時間(と燃料)を要するため、相手に短距離武器を駆使して永遠に追いかけられる機会を与えることになります」。

 しかし、攻撃時であっても、TVCを使用して戦闘機の機首を素早く敵に向けるのは、必ずしも良い考えとは言えない。攻撃機動で戦闘機からエナジーを奪うため、目の前の相手は撃破できるかもしれないが、近くにいる他の敵には脆弱な状態になってしまう。この推力偏向戦闘戦術に内在する問題こそが、他のアメリカの戦闘機にこの戦術が装備されていない理由であり、事実、ラプターのパイロット自身も、TVCの真の利点は、ドッグファイトで航空ショーのような機動を行うことではなく、むしろ、制御面が有効でない高迎角飛行中に、ある程度の機動性を維持することにあると語っている。


ユーロファイターがF-22を2機撃墜…しかし、この話には続きがあった

少なくとも一部(おそらく2機)のユーロファイターが、この訓練でF-22の相手機を撃墜したことは確かだ。この話は、高価なラプターが期待に応えられなかったというニュースを待ち望んでいた世界中の報道機関によって、すぐに取り上げられた。

 しかし、公式発表から判断すると、その数はゼロではなかったことは明らかです。つまり、このニュースは、ラプターが常にユーロファイターに負けたというものではなく、時には負けたというものだった。

 では、これは一体何を意味するのか?

 航空機マニアたちが、お気に入りの(あるいは最も苦手な)戦闘機プラットフォームに関する記事や動画のコメント欄で激論を交わし始めると、議論が、よく考えられた討論のように聞こえるのは長くは続かず、3年生が「誰のパパが一番強いか」について言い争っているように聞こえるようになるまで時間はかからない。 

 空戦の複雑な背景は、単純化や誇張へとつながり、やがては個人攻撃や、根拠のない、あるいは引用できないような統計へと発展していく。

何と言ったらいいのか。飛行機マニアは熱狂的だ。

 しかし、この論争には双方の立場から理にかなった主張がある。以下にそれをまとめてみよう。

ラプター派の主張

ラプター支持派は、このような訓練は、作られた状況や意図的に一方的な交戦規則があるため、訓練には適していても、より幅広い状況を考慮しない限り、戦闘機の実際の性能を測るには不十分だと主張するだろう。この演習の性質そのものが、ラプターを不利な立場に置くことを目的としている。ラプターの最大の強みであるステルス性と視程外射程能力を排除し、ベトナム戦争以来、規模の面で類を見ないような旧式の銃撃戦を好むというのだ。報道によると、F-22は視程外射程から交戦することができたため、片翼を縛られた状態で飛ぶ必要がなく、タイフーンを「壊滅」させたとある。

 実際の戦闘では、F-22はタイフーンが気づくよりもずっと前にタイフーンの存在に気づいている可能性が高く、また、ユーロファイターとパイロットがスティック操作が素早すぎて遠距離からAMRAAMで撃墜されることはなかったとしても、ラプターは優れた状況認識能力と低被発見性により、有利な位置からヨーロッパの敵に接近し、成功の可能性を大幅に高めることができるだろう。

 そして、おそらく最も重要なこととして、ラプターのファンは、ドイツがラプターを数機撃墜したことを自慢してもユーロファイターがラプターよりも多くの模擬戦で勝利したと主張したことは一度もないと主張するだろう。彼らは単に、いくつかの勝利を収めたと主張しただけであり、それは彼らに多くの明確な優位性が与えられていたからだった。

 実際には、見出しを飾るような話題はユーロファイターがF-22を圧倒したことではなく、多くの人が無敵だと思っている機体に2機が勝利を収めたことだった。


タイフーンファンの主張

一方、ユーロファイター・タイフーンの支持者たちは、これらの演習は実戦と同様、公平なものではないと主張するだろう。ユーロファイターがラプターと接近戦で互角に戦える能力を持っていることは、タイフーンが近接航空戦闘において、世界で最も先進的(かつ高価)な戦闘機と互角に戦える能力を持っていることの証明だ。

 そして、その戦闘以来明らかになっている改良型エイビオニクスと視程外射程能力と組み合わせることで、ユーロファイター・タイフーンは世界でも最高の戦闘機の一つとなる。

 同機の海外販売価格は1億2400万ドル前後だ。これは、少なくとも研究開発費を含めると、1機あたり4億ドルと見積もられているラプターと比較すると、信じられないほどのお買い得品だ。

 たとえ、複数の情報源が報じているように、ドイツ軍がラプターに対して行った以上の戦果をタイフーンが挙げたとしても、第4世代のユーロファイターがF-22にとって真の脅威であったという事実は、ラプターの熱狂的ファンたちが信じているほど、F-22の優位性が確実なものではないことを証明している。


しかし、真実は...

2つの主張はどちらも正しい。F-22ラプターが最も支配的な空中優勢戦闘機と考えられていないのは、負けることがないからではない。戦闘とはそういうものではない。どんな戦いもそうだ。どんなに有能でも、どんなに先進的でも、どんなに訓練を積んでいても、誰もが自分自身が克服できない不利な状況に深くはまり込む可能性がある。

 

今年初め、米海軍の元作戦スペシャリストであるエリック・ウィックランドは、この点を非常に雄弁に説明した。

「第二次世界大戦のエースパイロット、エリック・ハートマンは、352機を撃墜した史上最高のスコアを誇るパイロットです。しかし、彼が一度も負けたことがなかったというわけではありません。彼は16回撃墜されています!それでも彼が最高のパイロットである理由は、負けた回数よりも勝った回数の方がはるかに多いからです」。

 F-22の高度な電子機器、高い機動性、極めて低い探知性は、この戦闘機を非常に優れたプラットフォームにしているが、戦闘機を無敵にするものは何もありません。どんなものでも、不利な状況に追い込まれれば限界が見えてくる。そして、パイロットとプラットフォームの両方の限界を見つけることが、このような演習が存在する真の理由であることを認識することが重要なのだ。

 レッドフラッグはインターネット上のドッグファイトに勝つことではなく、現実の戦いに勝つことを目的としている。一連の模擬演習で勝利を収めることは、何も意味しないわけではないものの、すべてを意味するわけでもない。

 実際、ユーロファイター・タイフーンは非常に優れた第4世代戦闘機だが、第5世代戦闘機と戦わせた場合、そのステルス性能を持つ相手(F-22、F-35、あるいはJ-20)は、ほとんどの戦闘で比較的退屈な(かつずる賢い)方法で勝利を収める可能性が高い。

 しかし、もしステルス戦闘機がユーロファイターの射程距離内に位置すれば、勝者が誰になるかは容易に予測できない。これが、この演習から4世代目および5世代目のパイロットが学ぶべき重要な教訓だ。

 この主張は、確認できる数字によって裏付けられている。2006年と2007年にレッドフラッグに初めて登場した際、F-22はそれぞれ144機と241機を撃墜したが、F-16Cのような低レベル第4世代戦闘機にも数機を失った。F-16Cは模擬ドッグファイトで初めてF-22を撃墜した戦闘機となった。F-22が初めて視程距離内に限定されない空対空戦闘に出た際には、F-15を8機撃墜したものの、F-15は一度もF-22に照準を合わせることができなかった。

 しかし、F-22に接近し、その技術的優位性を排除できれば、ラプターは単なる戦闘機にすぎません。

 「ラプターの能力は圧倒的ですが、空中戦の一部にすぎないマージに到達した時点で、タイフーンは必ずしもあらゆる面でF-22を恐れる必要はありません。例えば、低速時のエネルギー効率はF-22よりも優れています」と、模擬戦闘について第74戦闘航空団のアンドレアス・ファイファー大佐は語った。

 これは、何年も前に米国の特殊作戦部隊について、米国情報機関の請負業者が筆者に語ったことを思い出させる。彼らは最高の訓練を受け、最高の装備と最高の支援を得ている世界で最も精鋭の部隊だ。しかし、過去20年間に戦闘で死亡した海軍特殊部隊員、デルタ部隊員、あるいは陸軍レンジャーのほぼ全員が、ISISやアルカイダの同様の精鋭部隊に倒されたわけではない。多くの場合、訓練不足の若者が整備不良のAK-47を携え、防弾チョッキも着けず、運だけを頼りに戦っている。戦闘員たちに世界中のあらゆる利点を与えたとしても、戦闘が実際にどのように展開するかは、実際に戦ってみるまで誰にもわからない。実際、トーマス・バーゲソン空軍大佐によると、レッドフラッグ演習では「戦力の10パーセントの喪失に終われば、素晴らしい一日となる」のだそうだ。そして、彼だけではない。「これまで一度も損失を出したことのないような数字を見ても、私は、それが最大限の能力を発揮した訓練だとは思わない」と、2007年に第27戦闘航空団の司令官であったウェイド・トリバー中佐は説明している。「そうしなければ、いつかその損失をシミュレートする時が来る。そうなれば、私たちは自分たちの能力を最大限に発揮することはできないでしょう」

 これが防衛技術分析の残念な現実だ。真の答えが簡潔で単純なことはまれであり、より広範な文脈なしに単独で成り立つことはほとんどない。インターネットでは簡潔で絶対的な表現が好まれるが、現代的なプラットフォーム2機種のうちどちらが優れているかと尋ねられれば、鋭い答えは、「状況による」というものだ。

 任務、状況、交戦規定、パイロット、ミッション計画、訓練、予算、包括的な戦闘教義、そしてパイロットの誰かが今朝余分に2杯のコーヒーを飲んでしまい、トイレに行きたくて気が散っているかどうかによって変わる。

 「F-22がどんなに素晴らしい機体であっても、パイロットは誰でもミスを犯す可能性があります」と、2007年に空軍のダーク・スミス中佐は説明している。「レッドフラッグの素晴らしいところは、厳しいシナリオで戦術を実践し、ミスを犯し、教訓を学び、実際の戦闘に備えることができる点です」。


では、F-22 ラプターとユーロファイター タイフーンの比較結果は?

ユーロファイター タイフーンは、F-22 ラプターとのドッグファイトに勝てるのか? 答えは明確にイエスだ。 非常に高性能なジェット機であり、まれにしか起こらない特殊な状況下では、F-22に勝てるものはいくらでもある。もしあなたがタイフーンのF-22撃墜マークに感銘を受けたのであれば、空想上の勝利の後、他の航空機にもマークが付けられていることを知っておくべきだ。

 しかし、F-22パイロットたちはこのことを心配しているのか?答えはノーだ。

 「センサーが機能し、各機が互いに通信し合える状況ならば、ラプターはほぼ無敵です」と、F-22パイロットのマイク・シャワーは、バート・シモンズ著『F-15イーグル』の中で語っている。

 「F-22と第4世代の戦闘機との戦いは、アメフトのチーム同士の試合のようなもので、一方のチーム(F-22)は目に見えないのです!」

 F-22 ラプターが「空の覇者」と呼ばれるのは、決して負けないからではない。バスケットボールのコート上のマイケル・ジョーダンや戦場のチェスティー・プリーヤーのように、F-22ラプターが空に翼を広げたからといって、勝利が保証されるわけではない。彼らには皆、数回の敗北が経歴に記されている。

 常に勝利を収める者はいない。 強力なラプターでさえも。


About the Author

Alex Hollings is the editor of the Sandboxx blog and a former U.S. Marine that writes about defense policy and technology. He lives with his wife and daughter in Georgia


How the Eurofighter Typhoon 'Shot Down' An F-22 Raptor in a Wargame

by Alex Hollings

October 15, 2024  Topic: Security  Region: Americas  Blog Brand: The Buzz  Tags: F-22F-22 RaptorStealthEurofighter TyphoonMilitaryDefense

https://nationalinterest.org/blog/buzz/how-eurofighter-typhoon-shot-down-f-22-raptor-wargame-210461


2024年4月2日火曜日

F-22対ユーロファイター・タイフーンのドッグファイトでどちらが勝者になったのか。ラプターをキルとの主張の真相に迫る。

 戦闘機ファンならいつも気になる話題です。戦闘演習でドッグファイトはいつも重要な題目ですが、ラプターは本当に最強の戦闘機なのか、ユーロファイター・タイフーンがラプターをキルしたとの報告は真実なのか、Sandboxxが包括的な記事を掲載していますのでご紹介します。


Eurofighter Typhoon F-22 Raptor dogfight montage

A Eurofighter Typhoon (Left) and an F-22 Raptor. (Image created by Alex Hollings using USAF assets)


F-22ラプターとユーロファイター・タイフーンの対決結果の真相は?


F-22ラプターは世界で最も高性能な制空権戦闘機という評判にもかかわらず、長年にわたり、F-16や海軍の電子戦専門機EA-18Gグロウラーのような、旧型で進化していないプラットフォームにドッグファイト判定で何度も敗れてきた。しかし、ちょうど10年ほど前に行われたドイツのユーロファイター・タイフーンとの一連の訓練ドッグファイトほど、強力なラプターの評判を傷つけた演習はない。

 これらの損失は架空のものだったかもしれないが、一部の人々は明らかに真剣に受け止めていた。実際、ドイツ軍のユーロファイターが「昼食にラプターサラダを食べた」と報道陣に語った後、機体にF-22のキルマークを付けているのが目撃されたほどだ。

 空軍の次世代制空戦闘機が今後10年で実用化されるため、ラプターは他の航空機に怒りの発砲をすることなく引退することになりそうだ。

 では、そのレガシーの実体とは?F-22は人々が信じているほど本当に優勢なのだろうか?それとも、この戦闘機の最大の長所はステルス性ではなく、誇大広告なのだろうか?


すべての始まりは...

F-22とユーロファイター・タイフーンに関する議論は、2012年にアラスカ上空で行われた空軍の大規模な空戦演習「レッドフラッグ」にドイツのユーロファイターが参加したことに端を発している。

 レッドフラッグは高度な空中戦闘訓練コースで、多種多様な航空機、多くの場合複数国の航空機が、大規模かつ現実的な脅威と戦う。

 その年、ドイツはJG74(ドイツ空軍第74戦術空軍航空団)から150人の飛行士と8機のユーロファイター・タイフーンをアラスカのアイルソン基地に派遣し、2週間にわたりさまざまな任務に参加させた。その中には、アメリカのラプターとの一連の近距離基本戦闘機演習(BFM)も含まれていた。BFMとは戦闘機パイロットの用語でドッグファイトのことである。

 演習が終わった後、ドイツのユーロファイター・パイロットは2012年のファーンボロー国際航空ショーに到着し、そこでF-22に対する勝利について早速話し合った。David Cenciottiが『The Aviationist』に寄稿した記事によると、ドイツのタイフーンパイロットは、F-22が外部燃料タンクを装着して飛行し、目視範囲内で戦闘を行った場合、タイフーンはしばしばラプターを上回ることができたと説明したという。


ユーロファイター・タイフーンとF-22ラプターの比較は?

(米空軍の画像を使用してAlex Hollingsが作成したグラフィック)

世代の違いはあるが、F-22ラプターとユーロファイター・タイフーンには実は多くの共通点がある。タイフーンは1994年に、F-22は1997年に初めて空を飛んだ。同様に、タイフーンは2003年に、ラプターは2005年に再び現役に復帰した。

 しかし、両機はほぼ同時期に同じような任務を果たすため設計されたにもかかわらず、任務を達成の方法には大きな違いがある。

 F-22ラプターは、アメリカの画期的なステルス技術に大きく傾倒し、この地球上で最もステルス性の高い戦闘機を生み出した。しかし、ラプターを有能なプラットフォームにしているのはステルス性だけではない。高度なセンサー・フュージョンと先進的なエイビオニクスによって、パイロットの認識負荷を軽減しつつ、極めて高度な状況認識を可能にしている。言い換えれば、F-22に搭載されたコンピューターによって、パイロットは戦闘により多くの注意を向け、航空機の操作に集中することができる。

 F-22パイロットのランディ・ゴードンはMITでの講演で、「ラプターを操縦しているときは、操縦は考えていない。飛ぶことは二の次だ」。

 しかし、F-22はステルスとセンサーフュージョンだけではない。推力ベクトル制御、つまりジェットノズルを機体から独立させ、信じられないような曲技飛行を行う能力、高い推力重量比、そして毎分6000発という驚異的な速さで480発の弾丸を発射できるM61A2 20mmガトリング砲などだ。

 「ラプターには推力偏向機能があるが、タイフーンにはない」とRAFタイフーンのパイロットで飛行隊長のリッチ・ウェルズは2013年にブレイキング・ディフェンスに語っている。

 そして、タイフーンは通常、合計8つの武器(6つのAMRAAMと2つのAIM-9サイドワインダー)を内部に搭載するが、追加弾薬のために4つの外部パイロン・ステーションを取り付けることができる。

 その結果、F-22は2つの戦闘哲学の架け橋となり、高度なステルス性と状況認識能力を提供することで、相手がその存在に気づく前にほとんどの戦闘で勝利することができる。また、前世代の最もダイナミックなホットロッド・ドッグファイターと肩を並べる伝統的なドッグファイトの特徴も備えている。

 一方、ユーロファイター・タイフーンは、既存の制空権モデルの再発明ではなく、そのまま完成させることを目的としていた。デルタ翼のデザインは、実現しなかったF-22の爆撃機仕様の兄弟機も採用した形状であり、揚力と航続距離の増加とともに、高度な亜音速機動性を提供する。デザインだけでなく、タイフーンの機体素材もすべて、比較的に先進的な第4世代戦闘機に見られるような高度なステルス性をもたらしている。

 実際、ユーロファイターの宣伝資料によると この機体は先進的な複合材料で作られており、レーダー探知機の影響を受けにくく、強靭な機体を実現している。金属は機体表面のわずか15%だけで、「ステルス動作とレーダーベースのシステムからの保護を実現している」。

 F-22を含む他の多くの戦闘機と同様に、タイフーンも電子戦能力を活用してレーダー・リターンを不明瞭にしている。また、メンテナンスに手間のかかるラプターとは異なり、タイフーンはメンテナンスしやすい設計で、交換可能なモジュール15個から組み立てられ、修理時間を最小限に抑えている。タイフーンのマウザーBK27mm砲は、毎分1,000発または1,700発を発射する。

 タイフーンは就役以来、極めて有能なマルチロール・プラットフォームへと成熟し、制空権というルーツを捨てて、現在就役している戦闘機の中で最も総合的な戦闘機のひとつとなった。

 ラプターとタイフーンの両方に搭乗したことのある数少ないパイロットの一人であるジョン・P・ジャンパー元空軍参謀総長は、「ユーロファイターは、操縦のスムーズさと(高Gを維持する)引き離す能力に関しては、確かに非常に素晴らしい」と説明する。「特に私が操縦したバージョンでは、エイビオニクス、カラー・ムービング・マップ・ディスプレイなど、すべてが超一流だった。接近戦での機体の操縦性も非常に印象的だった」。

 タイフーンの2基のユーロジェットEJ200アフターバーニング・ターボファン・エンジンはラプターほど強力ではなく、最高速度はラプターの2.25に対し、ユーロファイターはマッハ2である。

 詳細は不明なままだが、2012年のドッグファイト演習について確実に分かっていることがある。パイロットの証言から、少なくともそのうちの数回(すべてではないにせよ)は1対1の交戦だったことがわかっている。最も重要なことは、ラプターがステルス(および曲技飛行)の妨げとなる外部燃料タンクを搭載していたとする報告多数と、目視範囲内で発生したことである。

 この区別は、戦闘がラプターの最大の強みである、ステルス性と状況認識を使って交戦の開始を指示する能力、そして燃料タンクに関する報告が事実であれば、その曲技的な機動性を事実上無力化する、強引な見せかけの下で始まったことを意味するため、極めて重要である。

 実際の戦闘では、F-22のパイロットはタイフーンが認識する前にほぼ間違いなくタイフーンを認識し、ラプターは戦闘が始まる前に有利なポジションにつくことができる(あるいは単に目視範囲外からタイフーンを倒すことができる)。また、外部燃料タンクを翼にぶら下げたまま、命懸けのドッグファイトをしたいパイロットがいないことは言うまでもない。

 しかし、この種の訓練は軍事訓練では一般的なものであり、レスリングの攻防に例えることができる。レスリングのニュートラルスタートは、両選手が立っている状態から始まる。これは、2人のファイターが実生活と同じように練習に飛び込むようなものだ。

 一方、ディフェンシブ(不利な)ポジションでのスタートとは、一方のレスラーが両手両膝をつき、相手が片膝をついて背中に腕を回している(有利な)状態でピリオドを始めることである。今回の演習では、F-22は不利な立場で膝から始めるレスラーの役割を果たした。

 しかし、レスリングのように、防御的なポジションや不利なポジションからのスタートが負けの言い訳になるわけではないことに注意しなければならない。それも試合の一部なのだ。

 戦闘が始まる前に、ユーロファイターにも手当がなされた。F-22が外部燃料タンクを搭載していたため、ある程度、曲技性能とステルス性能の両方が損なわれていたのに対し、ラプターとの1対1のドッグファイトに参加したユーロファイター・タイフーンは、燃料タンクなしだけでなく、外部弾薬も一切なしで飛行することが許された。これはタイフーンの機動性を向上させただけでなく、ユーロファイターが銃だけになってしまわないように、実戦ではありえないことだった。

 「1対1で対戦した朝が2回あった。ユーロファイターはタンクなしだと猛獣になる」と、訓練に参加したパイロットの一人であるドイツのマルク・グリューネ空軍大将は説明する。

 それぞれの戦闘機が何機訓練に参加したのか、交戦ルールはどうだったのか、各戦闘機の最終的なキルレシオはどうだったのか、これらすべての詳細は両国とも明らかにしていないが、ネット上では多くの主張がなされている。各主張はまだ確認されていないが、いずれもF-22の勝利数がユーロファイターよりも多いことを伝えている。

 現在のユーロファイター・タイフーンには、ヘルメット装着型の照準システムが装備されており、(機首を向けることなく)見通し外の敵戦闘機と交戦することができる。また、PIRATE赤外線捜索・追跡(IRST)システムも装備され、30マイルも離れたステルス戦闘機を発見できる可能性がある。しかし、このドッグファイト演習の時点では、これらのシステムはまだドイツ空軍に導入されておらず、訓練に参加したタイフーンには搭載されていなかった。

 ドイツ軍パイロットによると、戦闘が始まると、F-22の推力偏向制御(TVC)はタイフーンとの接近戦でラプターを助けるどころか、むしろ邪魔になったという。

 「重要なのは、F-22にできるだけ近づき、そこにとどまることだ。彼らは私たちがそれほど積極的に旋回するとは思っていなかった」とグリューネは2012年に『コンバット・エアクラフト』誌に語っている。「合流するやいなや...タイフーンは必ずしもF-22を恐れる必要はない。

(念のため説明しておくが、「マージ」とは、単に偉大な航空ニュースレターの名前ではない。戦闘機パイロットが、2機の戦闘機が至近距離で正面衝突するときの呼び名でもある)。

 TVCは戦闘機に極端な操縦を可能にするが、高い代償が伴う。ドッグファイトでは対空速度が命であり、TVCのエキゾチックなディスプレイは、それを大量にスクラブすることを可能にする。F-22がスラストベクタリングノズルを使って急旋回すると、機体は対気速度を回復するまで脆弱である。このような操作の直後にキルを決めることができないと、F-119-PW-100ターボファンエンジンの強力なペアが7万ポンドの戦闘機すべてを再び動かすことができるまで、ラプターは格好の餌食となる。

ある無名のユーロファイター・テストパイロットがチェンチオッティに語ったところでは、こうだった:

タイフーンのような戦闘機は、都合よく "垂直を利用して"エナジーを保持し、ミサイルや銃撃のため積極的に体勢を変える。また、その後の加速は時間(と燃料)を大量に消費し、相手に短距離武器アレイを駆使して永遠に尾を引く機会を与えてしまう。

 しかし、攻撃時でさえ、TVCを使って機首を素早く敵に向けることは、必ずしも良いアイデアとは言えない。アグレッシブなマニューバーは戦闘機のエナジーを奪うため、目の前の相手にはキルを取れるかもしれないが、近くにいる他の相手には無防備なままになってしまう。実際、ラプターのパイロットたちは、TVCの本当の利点は、ドッグファイトで航空ショーのようなマニューバーを行うことよりも、コントロール・サーフェスがそれほど効果的でない高い迎え角で飛行しながら、ある程度の操縦性を維持することだと言うだろう。


少なくとも2機のユーロファイターがF-22をキルした

少なくとも何機か(おそらく2機)のユーロファイターが、この訓練でF-22相手に想定外のキルを実際に記録したことは確かだ。この話は、アメリカの高価なラプターが期待に応えられなかったというストーリーを熱望する世界中の報道機関がすぐに取り上げた。

 しかし、我々が知らないのは、ラプターがタイフーン相手に何機キルしたかだ。公式発表によれば、その数がゼロでなかったことは間違いないようだ。つまり、ラプターが常にユーロファイターに負けていたのではなく、むしろ負けることもあったという話だ。

 では、正確にはどういうことなのか?

 好きな(あるいは嫌いな)戦闘機プラットフォームについて、記事やビデオのコメント欄で航空マニアが対立し始めると、その言説が十分な情報に基づいた議論に聞こえなくなり、誰の父親が誰の父親を打ち負かすことができるかについて議論している小学3年生のように聞こえるようになるまで、たいていの場合時間はかからない。空戦の複雑な背景が、過剰に単純化され、誇張された表現に変わり、ついにはすべてが名誉毀損的な攻撃や、一見でっち上げのように見える統計に発展してしまうのだ。

 飛行機乗りは一生懸命だ。

 しかし、この議論にはどちらの側からも合理的な主張がある:


ラプターファンの主張

ラプター陣営は、意図的に仕組まれた状況や一方的な交戦規則でのこのような演習は、訓練にはいいかもしれないが、より広い文脈がない以上、戦闘機の実際の性能を測るには不十分だと主張するだろう。このような演習の本質は、ラプターを不利な立場に追いやることであり、同機の最大の強みであるステルス性と目視範囲を超える能力を排除し、ベトナム戦争以来大規模に行われていないような昔ながらの撃ち合いを優先している。メディアの報道によれば、F-22は片翼を後ろに縛って飛ぶ必要がないため、目視範囲外から交戦ができ、タイフーンを「壊滅」させたという。

 現実の戦闘では、F-22はタイフーンよりもかなり前に相手機の存在に気づくだろう。たとえユーロファイターとパイロットが棒立ちで、遠距離のAMRAAMで倒せないことがわかったとしても、ラプターはその優れた状況認識能力と低い被観測性を利用して、有利な位置から敵に接近することができ、成功の可能性を大幅に高めることができる。

 そして、おそらく最も重要なことは、ラプター・ファンは、ドイツがラプターに対して数回キルしたことを自慢していたと主張することだろう......しかし、彼らはユーロファイターがラプターよりも多くのスパーリングマッチに勝ったとは一度も主張していない。しかし、彼らはユーロファイターがラプターよりも多くのスパーリングマッチで勝利したと主張したことは一度もない。

 実際のところ、大ニュースとなったのは、ユーロファイターがF-22を圧倒したという話ではなかった......それは、多くの人が無敵だと思っている航空機に対して、2機がなんとか勝利を収めたという話だったのだ。


タイフーンファンの主張

一方、ユーロファイター・タイフーン陣営は、このような演習は実際の戦闘と同様、公平性を保つためのものではないと主張するだろう。ユーロファイターがラプターと至近距離で立ち回れたことは、タイフーンが至近距離での空中戦において、地球上で最も先進的な(そして高価な)戦闘機と互角に戦えることを証明した。

 そして、この相互作用以降に改善されたエイビオニクスや目視範囲を超える性能と相まり、ユーロファイター・タイフーンは、地球上のどこの戦闘機よりも優れた戦闘機のひとつとなっている。

 少なくとも、F-22の価格タグに研究開発費を含めると、ラプターが1機あたり4億ドル程度と推定されるのに比べれば、信じられないほどお買い得である。

 多くの情報筋が報じているように、ラプターがタイフーンに対してドイツ軍のラプターに対する撃墜数を上回ったとしても、第4世代ユーロファイターがF-22の真の脅威であったという事実は、多くのラプターファンが信じたいほど、F-22の覇権が確実なものではないことを証明している。


しかし、真実は...

どちらの主張も正しい。F-22ラプターが空で最も優勢な戦闘機と考えられているのは、負けたことがないからではない。それは戦闘がどのように機能するかということではない。どんなに能力が高くても、どんなに高度であっても、どんなに訓練を受けていても、克服できない不利な状況に膝から崩れ落ちることは誰にでもある。

 米海軍の元オペレーション・スペシャリスト、エリック・ウィックランドは今年初め、この点をかなり雄弁に語っている:「第二次世界大戦のエース、エーリッヒ・ハルトマンは、352キルという史上最高の得点を挙げたエースである。だからといって、一度も負けたことがないわけではない。彼は16回撃墜されていた!負けた回数より勝った回数の方がはるかに多かっただけだ。"

 F-22の先進的なエイビオニクス、高度な操縦性、極めて低い観測性、これらすべてがF-22を信じられないほど有能なプラットフォームにしているが、戦闘機を無敵にするものは何もない。何に対しても限界を見つけることができる。パイロットとプラットフォームの両方の限界を見つけることが、このような演習が存在する本当の理由であることに注意することが重要だ。

 レッドフラッグはインターネット上のドッグファイトに勝つためのものではなく、実際のドッグファイトに勝つためのものなのだ。一連の演出された演習で成果を獲得しても、何の意味もないわけではないが、全てでもない。

 実際のところ、ユーロファイター・タイフーンは信じられないほど高性能な第4世代戦闘機だが、第5世代戦闘機と戦わせた場合、ステルス性の高い相手--F-22であれ、F-35であれ、あるいはJ-20であれ、比較的退屈な(そしてむしろ卑劣な)方法でほとんどの交戦に勝利する可能性が高い。

 しかし、これらのステルスジェットがユーロファイターの銃が届く範囲にいることが判明した場合、勝敗を占うのはそう簡単ではない。そしてそれは、第4世代と第5世代のパイロットの両方が、この演習から得るべき重要な教訓なのだ。

 2006年と2007年にレッドフラッグに登場したF-22は、それぞれ144勝と241勝を挙げたが、模擬ドッグファイトでF-22を撃墜した最初のプラットフォームであるF-16Cのような第4世代戦闘機に敗れている。実際、F-22の最初の空対空戦では(目視範囲内に制限されることなく)、F-22は8機のF-15を撃墜し、F-15はF-22を目標にすることなく撃墜した。

 しかし......F-22に接近し、その技術的優位性を排除することができれば、ラプターは命がけの戦いを強いられる普通の航空機になる。

 「ラプターのユニークな能力は圧倒的だが、空戦のごく狭い範囲に過ぎない(中略)合流するやいなや、タイフーンは必ずしもF-22を恐れる必要はない。タイフーンは、例えば、低速のときにはF-22より大きなエナジーを得ることができる」と、74戦闘航空団司令官アンドレアス・ファイファー大佐は模擬戦闘について語った。

 この話を聞くと、数年前にアメリカの情報請負業者から聞いた、アメリカの特殊作戦部隊についての話を思い出す。彼らは最高の訓練、最高の装備、最高のサポートを備えた世界で最もエリートなオペレーターだ......しかし、過去20年間に戦闘で殺されたネイビーシールズ、デルタ、陸軍レンジャーは、ISISやアルカイダのコマンドーの同様のエリートグループによって倒されたわけではない。多くの場合、整備不良のAK-47を持ち、防護服もつけず、訓練不足の若者が殺されるのだ。

 戦闘員に世界中のあらゆる利点を与えることはできるが、戦いがどのように展開するかは、そのときになってみなければ誰にもわからない。実際、トーマス・バーグソン空軍大佐によれば、レッドフラッグ演習では「戦力の10パーセントを失うだけで、素晴らしい一日になる」という。

 2007年当時、第27飛行隊司令官だったウェイド・トリバー中佐は、「もし損失が皆無の数字が出たとしたら、能力をフルに発揮して訓練していないのだと思います」と説明した。「もし、ある時点で模擬的な損失がなければ、自分たちの能力を最大限に発揮することはできない」。

 これが防衛技術分析の残念な現実だ。本当の答えが簡潔で単純であることは稀であり、より広い文脈なく成り立つことはほとんどない。インターネットでは、簡潔で絶対的な言葉で語られることを好むが、現代の2つのプラットフォームのうち、どれがベストかと問われたときに本当にできる唯一の鋭い答えは......場合による。

 それは任務、状況、交戦規則、パイロット、任務計画、訓練、予算、包括的な戦闘ドクトリン、そしてパイロットの誰かが今朝コーヒーを2杯余分に飲み、トイレを探す差し迫った必要性に気を取られているかどうかによる。

 「魔法のようなF-22でも、パイロットがミスを犯す可能性がある」、と2007年にダーク・スミス空軍中佐は説明した。「レッドフラッグの素晴らしさは、困難なシナリオの中で戦術を練習し、ミスを犯し、教訓を学び、実戦に備えることができたことだ」。


F-22ラプター対ユーロファイター・タイフーンの決着は?

ユーロファイター・タイフーンはドッグファイトでF-22ラプターに勝てるのか?答えは明確にイエスだ。タイフーンは非常に高性能なジェット機であり、稀で異常な状況下であれば、どんなものでもF-22に勝つことができる。実際、タイフーンにつけられたF-22のキルマークに感銘を受けたのなら、他の機体にもつけられていることを知っておくべきだ。

 しかし、F-22のパイロットはこのことで不眠になっているのだろうか?答えはノーだ。

 F-22パイロットのマイク・'ドーザー'・シャワーはバーティ・シモンズの著書『F-15 Eagle』の中でこう語っている。

 「F-22対第4世代戦闘機というのは、2つのフットボールチームが対戦しているようなもので、片方(F-22)は目に見えない。人々はF-22ラプターを空の王者とは呼ばない。バスケットコートのマイケル・ジョーダンや戦場のチェスティ・プラーのように、F-22ラプターを空に羽ばたかせることが勝利を保証するわけではない。彼らは皆、履歴書にいくつかのLがついている」。

 常に勝ち続ける人などいない。強大なラプターでさえも。

 しかし、もし読者がコメント欄で喧嘩したいのなら......筆者の父なら読者の父を打ち負かすことができたと思う。■


編集部注:この記事は2023年1月に掲載されたものです。



What really happened when F-22 Raptors squared off against the Eurofighter Typhoon? | Sandboxx

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