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2024年6月16日日曜日

A-10のアベンジャーGAU-8/A 30mm砲に匹敵する装備は未だ存在しない

A-10の存在意義として搭載する強力な30mmガトリング砲があり、もともとロシア戦車を葬ることが想定されていました。Warrior Mavenがあらためて同砲に焦点をあててまとめてくれましたのでご紹介しましょう。



30mm油圧駆動7連ガトリング式自動大砲GAU-8/Aの起源は、1971年に開始されたアメリカ空軍のA-Xプログラムにあった


A-10サンダーボルトII、通称ウォートホグは、その恐ろしいGAU-8/Aアベンジャー機関砲という致命的なコンセプトを中心としたエンジニアリングの証である。その伝説的な火力により、この砲は現代の航空戦における航空機の役割を定義し、ウォートホグを空対地支配の象徴とした。


30mm油圧駆動式7連ガトリング式自動機関砲GAU-8/Aの起源は、1971年に開始されたアメリカ空軍のA-Xプログラムにある。このプログラムは、近接航空支援専用の航空機の開発をめざした。ジェネラル・エレクトリック社とフィルコ・フォード社は、プロトタイプ・キャノンの製作を任され、最終的にGAU-8が採用された。この砲の航空機への統合は非常に深いものがあり、A-10はしばしばユーモラスに「火砲を中心に作られた」と呼ばれる。


Wikipedia


アベンジャー・キャノンは軍事工学の驚異であり、毎分最大3,900発の発射速度が可能である。標準弾は、劣化ウラン徹甲弾と高火薬焼夷弾で、重さはそれぞれ約1ポンド、大きさはビール瓶とほぼ同じである。この巨大な火力には、同様に重大な課題が伴う。大砲の反動と爆風効果を管理することであり、航空機の操作とパイロットの安全に影響を与えるほど強力なものである。


1974年の試験飛行では、大砲のマズルフラッシュがパイロットの目をくらませ、反動で煤煙の雲が発生し、それがフロントガラスや機体を覆って視界が悪くなり、低空での射撃を複雑なものにした。さらに、繰り返し発射することでの激しい振動と熱は、機体の早期摩耗と構造的ストレスを引き起こした。


開発チームは、これらの問題を軽減するため革新的な解決策を実施した。そのひとつが、砲身を延長して機体の近くで爆風を抑えるというもの。さらに、弾薬も改良され、金属リンク式からリンクレスのプラスチックケース式に移行することで、給弾の信頼性が向上し、武器にかかる熱的・機械的負担が軽減された。


エンジニアたちは、ガスディフレクターやマズルブレーキの開発など、銃の排気と閃光を管理する構成を実験した。その中で最も注目されたのは、G-F-U-16-A Gun Gas Diverterで、「くすぐり装置」とも呼ばれ、大砲のガスを重要な航空機システムやパイロットの視線から遠ざけることを目的としていた。当初は期待されたものの、この解決策は乱気流の増加や構造疲労など他の問題を悪化させ、最終的に中止されるに至った。


アベンジャーの運用状態を確保するための究極の改良は、エンジンの自動再点火機能の統合だった。このシステムは、エンジンの吸気口が大砲の煙や未燃焼の推進剤によって損なわれても、エンジンが失速しないことを保証し、戦闘行動中の航空機の重要な電力供給を維持した。


困難な開発にもかかわらず、GAU-8/Aアベンジャーは非常に効果的な兵器であることが証明された。装甲車や要塞構造物を貫通する能力により、A-10は紛争地帯で恐れられる存在となった。世界対テロ戦争における同機の役割は、その精度と圧倒的な火力によって、険しい地形で敵に囲まれた地上作戦を支援する大砲の価値を浮き彫りにした。


A-10が耐用年数の終わりに近づき、10年以内に段階的に廃止される計画がある中、ウォートホグの戦闘効果の中心的な特徴であるアベンジャー砲の遺産は誇張しすぎることはない。同機とその砲は、技術革新と戦術的先見の明のユニークな融合を体現しており、戦場での優位性を達成するために武器システムとプラットフォーム設計を統合することの重要性を強調している。


まとめると、GAU-8/Aが問題を抱えた試作機から戦場で実証ずみの資産になるまでの道のりは、軍の適応性と革新性に関するより広範な物語を反映している。ノースロップ・グラマンのエッセイにあるように、ウォートホグの開発ストーリーは、単に巨大な兵器システムの統合というハードルを乗り越えるということにとどまらず、航空戦の戦略と技術で新たな道を切り開いたことを示している。■


Why There is now no Equal to the A-10 Warthog's GAU-8/A 30mm Cannon - Warrior Maven: Center for Military Modernization


2016年7月16日土曜日

★★★A-10の主力装備GAU-8機関砲とは

A-10の存在意義であるガトリング砲GAU-8について詳しく解説しています。もともとがガン専門誌の記事なのでややマニアックかもしれません。また訳にも一部おかしなところがあるかもしれません。ご存知の方はご指摘ください。


War Is Boring We go to war so you don’t have to
U.S. Air Force photo. All other art via Wikipedia

Everything You Ever Wanted to Know About the A-10 Warthog’s Big-Ass Gun

The GAU-8 is a fearsome shooter

by MATTHEW MOSS

ジェネラル・エレクトリックの30ミリGAU-8アヴェンジャー機関砲は米空軍A-10サンダーボルトII対地攻撃機の主要兵装として40年に渡り使用されている。同じ砲は海軍の近接防空システムであるゴールキーパーにも採用されている。巨大で畏怖感を与える銃だ。
  1. GAU-8は銃身7本と円形ロック機構付きボルトで構成する。動力に油圧モーター2基を使い理論上は戦車を貫く劣化ウラン弾を毎分4,200発発射できる。
  2. 1960年代に空軍は対地攻撃専用機材として導入可能な低価格で装甲車両や固定陣地を破壊できる近接支援機が必要と結論づけた。ソ連装甲師団が大量に西ヨーロッパに流れ込む脅威から主力戦車や装甲兵員輸送車を破壊できる機体が必要となった。
  3. 1966年9月に米空軍は試作攻撃機事業、別名A-Xで新型近接航空支援機の開発を始めた。
  4. A-Xでは安価な機体に低速での操縦性、長時間の空中待機性能を付与し残存性と火力を重視した。空軍はA-1スカイレイダーのパイロットからヴィエトナム実戦体験を求め、提案内容を1970年夏に修正した。
  5. また提案書では30ミリ回転式自動砲に毎分4千発の発射性能を要求した。空軍はM61を以前に開発したジェネラル・エレクトリック、成功しなかった25ミリGAU-7の開発元フィルコ-フォードの二案を競合させた。
  6. ジェネラル・エレクトリック案が採択され、制式名称GAU-8別名A/A49E-6ガンシステムとなった。
  7. ジェネラル・エレクトリックは以前からある20ミリM61ヴァルカン砲を拡大すれば空軍の想定する最大機体重量を超過するとわかっていたので別の方策をとり、新設計軽量装備にヴァルカンのリンク無し弾薬供給機構を組み合わせた。
  1. 一方で機体では二社案があり、フェアチャイルド・リパブリックのYA-10とノースロップYA-9を比較検討していた。フェアチャイルドのYA-10では機関砲をやや左側に搭載し、弾薬バレルを右側9時の位置に配置した。
  2. これでGAU-8に45キロニュートン相当の反発力を機体中央線に沿って与えるとともにA-10が砲を発射しても機体がずれて目標を外さないようにした。
  3. 公試は1972年末に始まり、翌年1月に空軍はYA-10を採用した。A-10は頑丈で長持ちする機体でメンテナンスは比較的軽微ですみ、支援設備が不十分な前線基地からも運行可能とするため、滑走路が不完全でも対応できる設計にした。
  4. ファエチャイルドは残存性を高くするため機体全体は23ミリ機関砲に耐え、コックピット周りは57ミリ砲の銃撃にも耐える構造にした。燃料タンクは自動密封型とし、油圧系統、エイビオニクスを損傷しても「手動復帰モード」で飛行可能だ。
  5. GAU-8機関砲の単体重量は620ポンド(約280キロ)で、A/A49E-6ガンシステム全体は4,029ポンド(約1.8トン)とA-10の全体重量のおよそ16%を占める。GA-8の銃身は7本あり、導入当初は毎分4,200発の発射が可能だったが、空軍は3,900発に下げる。この速度だと各銃身は毎分557発を発射し相当の威力であることに変わりない。
  1. 実際にはパイロットは発射を一秒から二秒にとどめ、弾薬を節約し銃身の寿命を長引かせる。空軍は銃身の寿命を2万発に設定している。銃身は簡易脱着式としメンテナンスや脱着作業を容易にしている。
  2. 装備の全長は18フィート(約5.5メートル)で弾薬ドラムの直径は3フィートだ。GAU-8の弾倉は1,174発まで収納できるが、空軍は通常は1,150発しか装填しない。油圧モーターが二基あり、合計77馬力を発生し、弾薬ドラム装填、砲の発射に使う。またモーター二基でGAU-8の銃身7本をほぼ瞬時に回転させる。
  3. A/A49E-6ガンシステムでは薬きょうを機外に排出せずドラム型の弾倉に戻し飛行後に地上要員が取り外すこれで薬きょうをエンジンに吸い込まず機体の損傷を防ぐ
  4. 当初は地上要員がA-10の弾倉を手作業で装填していたが時間がかかっていた。1976年に空軍は自動装てんシステムの提案要求を出し、コロニーエンジニアリングColoney Engineering Companyが弾薬装填と使用済み容器の取り外しを同時に行う装置を納入した。
  5. ジェネラルエレクトリックはGAU-8用30ミリ弾を機関銃の基本設計を元に開発した。戦車の装甲を貫徹する弾丸には高硬度貫通部分が必要とされた。最適素材としてタングステンが浮かび上がったが、タングステン供給は中国とソ連が大部分を占めていた。
  6. そこで代替策が見つかった。劣化ウラニウムで発電用原子炉に使うウラニウム濃縮工程で生まれる副産物だ。天然由来のウラニウムのおよそ60パーセントの放射能強度がある。実際に使用すると、推進部分から分離し断片に分かれ炎が発生する。ジェネラルエレクトリック広報では劣化ウラニウムを「重金属」と一般的に説明していた。
  7. ジェネラルエレクトリックはエリコンの304 RK弾丸を原型に二種類の弾薬を開発した。装甲貫徹型焼夷弾はPGU-14/Bの名称がついた。PGU-13/Bは高性能爆薬を使う焼夷弾だ。A-10はPGU-14/BとPGU-13/Bを5対1の比率で装填する。共にアルミ合金の筐体で重量軽減とペイロードを増やしている。
  8. PGU-14/B  API弾は距離1,200メートルで装甲55ミリを貫通し、300メートルだと76ミリ装甲も貫徹する。1979年のテストでA-10はM47パットン戦車をソ連のT-55やT-62に見立て攻撃後評価は「深刻な被害」と評し、低空通過攻撃は「大変効果がある」としている。
  9. 11発から27発命中すれば戦車は破壊される。1,200メートルの距離からでもA-10は12メートル範囲に80パーセントの弾丸を命中させられる。
  10. 1970年代中頃にオランダの武装メーカーHollandse Signaalapparaten B.V.はGAU-8をゴールキーパー近接防御装備システムに採用した。ゴールキーパーは水上艦艇をミサイル、航空機、高速艇の脅威から2,000メートルの有効範囲で守る。複数の海軍が採用している。
  11. A-10はさらに16千ポンドの兵装を主翼下のハードポイントにロケット弾、ミサイルとしてAGM-65マーヴェリック他各種爆弾を搭載できる。A-10の初実戦は1991年の湾岸戦争で推定3千両のイラク車両を破壊しており、うち戦車は900両だった。ある交戦ではA-10二機のでイラク戦車23両を破壊した。
  12. 湾岸戦争の空軍機材では戦車を一番多く撃破したのはF-111だったが、A-10は近接航空支援の中心だった。1991年以降にA-10はアフガニスタンにも配備され、2003年のイラク戦争や2011年のリビア作戦にも投入された。直近ではイラク、シリアでイスラム国を攻撃中だ。
  13. 空軍と州軍に改修済みA-10Cが283機配備されている。ジェネラルエレクトリックはGAU-8機関砲を770基製造し、A-10とゴールキーパーが搭載している。■