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2021年11月24日水曜日

いまだに大統領を乗せて飛行できない新型マリーンワン、VH-92Aは何が問題なのか。

 次期大統領専用ヘリコプターとして実機は完成しているものの、供用が遅れているVH-92Aは国家緊急時への投入がまだできない状態にあるとして、いまだに供用開始時期が決まらない。The Warzoneが以下伝えています。60年代から稼働中のVH-3の退役も待ったなしの中、どうするのでしょうか。



AP

 

 

ョー・バイデン大統領が新型大統領専用ヘリコプター、シコースキーVH-92Aに搭乗する機会は当面発生しない。同機事業はさらに遅延し、「ホワイトトップ」塗装のマリーンワンとしての要求事項を満たしていない。中でも国家の存亡にかかわる緊急対応時フライトを十分な信頼性をもって実施できないとの指摘がある。

 

ブルームバーグの本日の記事では米政府関係者が匿名を条件にバイデン政権がVH-92Aが第一海兵ヘリコプター飛行隊 (HMX-1)での運用で安全性を確認できていないとある

 

ブルームバーグは米海軍航空システムズ本部(NAVAIR)の9月28日付内部評価を入手し、VH-92Aを「信頼性、稼働率、整備性のいずれでも最低限の要求水準を満たしていない」との内容を伝えている。

 

同書類ではVH-92Aを「運用に適している」とは評価しておらず、政府機能の継続を緊急時に確実にする点で懸念を呼ぶとしている。大きな危機が発生した場合に大統領を移動させる手段としては致命的欠陥となる。

 

VH-92Aで安心して重要な運航ができない理由としてブルームバーグ記事ではミッション通信装備(MCS)の問題を取り上げているが、全体像は不明だ。試験評価部門の総括によれば、MCSは「緊急時ミッション開始時に重要な通信で遅延が生じ、適時かつ連続した安全な交信が確立できなかった」とある。

 

このMCS問題が発生したものの、整備陣に診断能力がなく、修理が必要な部分へのアクセスに時間がかかりすぎたという。

 

MCS問題は2020年度に出た運用テスト評価部門長 (DOT&E) によるレポートで登場したもので、MCSバージョン3.0のテストを2020年1月に開始している。同バージョンはDOT&EによるVH-92A運用評価OT-B1レポート(2019年5月28日付)の提言を採用し、評価作業中に発覚した欠陥事項に対応している」

 

BLEND QATIPI

VH-92Aが首都上空を編隊飛行した 

 

MCS 3.0についてDOT&Eレポートでは「ハードウェア設計の変更、とくに機内通信システムのコードを変更し、機内各座席間の交信機能を向上すべき」と記載がある。

 

また同じDまた同じレポートではMCS3.1ソフトウェアもテストしたとあり、NAVAIRの設計陣が「改良にとりくんでいる」とし、MCS3.2テストが2021年1月に始まるとある。

 

危機緊急時に大統領を迅速かつ安全に移動させる際に信頼できる通信の確立が最高重要事項になるのは言うまでもない。通信系統で欠陥があれば大統領が最高司令官として機能できなくなる。また米国の核抑止力の信頼性、実効性にも影響が出る。さらに信頼できる通信の維持が大統領による危機時の指揮統制で絶対必要条件となる。


AP

マリーンワンVH-3Dから空軍将校が「フットボール」と呼ばれるブリーフケースを携行している。中には核兵器使用に使う遠隔指揮装置が入っている。

 

ブルームバーグが入手したテスト内容ではさらに「不安定かつ客室内装に欠陥があり、点検頻度の増加、後部エアステア部品」の組み合わせで点検作業に時間がかかり、結果として機体稼働性が低下しているとある。

 

ヘリコプター特有の問題も未解決だ。2018年9月時点でVH-92Aのエンジン排気とローターによりホワイトハウスでマリーンワンが離発着するサウスローンに損傷が発生しているのが見つかっていた。テスト結果総括ではこの問題は未解決とあり、その後も同じ問題が何度も指摘されている。

 

「エンジン排気とともに液体漏出により離着陸地点で損傷が発生しており、利用可能な離着陸地点が限定されている」とあり、さらに海兵隊に「エンジン排気および液体漏出の影響を抑える工夫を継続する」よう求めている。ただし、この点が実行されているかは明らかではない。

 

U.S. MARINE CORPS/SGT. HUNTER HELIS

ホワイトハウスのサウスローンにVH-92Aが2018年9月に初めて着陸した。

 

このためか、ホワイトハウス軍事事務局はVH-92Aでの大統領移動実施を承認していない。

 

VH-92Aは長年稼働しているVH-3Dの後継機として7月に初期作戦能力を獲得のはずだったが、いまだこれは実現していない。ブラックホーク原型のVH-60Nの交代も2023年に迫り、新型ヘリコプター23機を調達する構想だった。IOCは2020年6月の当初予定が今年1月に先送りになっていた。

 

ただし、VH-92Aにも朗報がある。同上のテストレポートでは同機が通常の政府向けミッションに適合していると評価している。例としてキャンプデイヴィッドへの往復移動やエアフォースワン大統領専用機が待機するワシントン郊外アンドリュース共用基地への大統領移動がある。

 

これにより「運用上の効果」はある程度認められるものの、50億ドルを投じたVH-92でペンタゴンがホワイトハウスが想定した内容には到底届かない。

 

また、同機事業の詳細の公表がここまで遅れた理由も不明だ。DOT&Eによるテストは今年4月に終了しており、5月初めに海兵隊のグレッグ・マシエロ少将Major General Greg MasielloがNAVAIR特殊ミッション事業の責任者として「同飛行隊及び同機事業は本日任務実行の準備が整った」と述べていた。

 

ブルームバーグはテスト担当部門に接触し、三カ月に及ぶ試用期間の結果を求めたが、結果は「公開情報ながら統制下にある」との回答を得ただけだった。テスト部門の報道官かはらVH-92Aが「大統領、副大統領、閣僚、国家機関の長の移動任務実施を効果的かつ適度に行えるかを評価した」との回答を得た。

 

他方で海兵隊航空部門報道官はブルームバーグに同報告書では提示された問題点が解決していないとの指摘事項は記載されていないと伝えてきた。ただし、同報道官はVH-92Aが大統領を乗せてのフライトミッションをいつ開始できるか見通しを述べていない。

 

VH-92A製造にあたるロッキードのシコースキー航空機部門の広報は「弊社顧客と同機が運用上の要求内容を達成できるよう努力している」と述べた。

 

そのため、VH-92Aがマリーンワンとして投入されるのがいつになるのか見通しがつかない。海軍がVH-92A合計23機分として15億ドルを支出ずみだが、各種問題を解決しないと同機はミッションの完全実施ができない。VH-3DおよびVH-60Nの後継機種が必要な中、これ以上の遅延は望ましくない。■



Future Marine One Helicopter Is Struggling To Meet Requirements For Emergency Missions: Report

 

BY THOMAS NEWDICK NOVEMBER 23, 2021

https://www.thedrive.com/the-war-zone/43260/future-marine-one-helicopter-is-struggling-to-meet-requirements-for-emergency-missions


2016年2月8日月曜日

米海軍用オスプレイの正式名称はCMV-22B、2018年度から調達開始



Navy’s Osprey Will Be Called CMV-22B; Procurement To Begin In FY 2018

By: Megan Eckstein
February 5, 2016 1:49 PM

MV-22 Osprey assigned to Marine Medium Tiltrotor Squadron (VMM) 163 launches from USS Makin Island (LHD-8) on Aug. 24, 2014. US Navy Photo
海兵中型ティルトローター飛行隊(VMM)163所属のMV-22オスプレイがUSSマキンアイランド(LHD-8)で運用された。2014年8月24日撮影。US Navy Photo

米海軍の次期空母輸送機(COD)となるオスプレイの呼称はCMV-22Bと発表した。

  1. 海軍は一年前にV-22導入を発表していた。同機は空軍特殊作戦軍団と海兵隊が海陸で運用中。COD任務には現在はノースロップ・グラマンC-2Aグレイハウンドターボプロップ機が使われ、人員、郵便物、補給品その他を陸上から空母へ輸送している。
  2. 海軍はもともとC-2A後継機に固定翼機を想定していたが、昨年の決定でオスプレイ投入が決まり、現在生産中の同機の生産ライン、完熟した補給体制、訓練施設を利用できる。海軍はV-22を駆逐艦他水上艦からも離着陸ができるよう型式証明をとり、固定翼機より運用柔軟度が上がると期待。
  3. USNI NewsはC-2Aがベル=ボーイングV-22より有利と考えていた。たとえば高高度飛行能力があるが、COD候補の検討で旧式化したC-2Aの機材更新は予想以上に高くつくことが判明した。
  4. 海兵隊はMV-22、空軍はCV-22と呼称しており、海軍はその二つを合わせた形とする。空軍の機材呼称方針でCは貨物であり、機体は「重量貨物、人員および、あるいは傷病兵を運ぶもの」としている。Mは多用途機能であり、「特殊作戦の支援機材」とされる。Vは垂直離陸または短距離離陸が可能な固定翼機に使う。
  5. これまで海軍と国防総省は海軍仕様のオスプレイをHV-22と呼称しており、Hは回転翼機の頭文字であり、捜索救難機にも使われている。たしかにオスプレイが捜索救難ミッションにも活躍しそうだが、CODミッションとは別物だ。
  6. そこでCMVの呼称がCODミッションを一番よく体現すると海軍航空システムズ司令部’NAVAIR)は発表しており、「統合軍海上部隊に時間を有効活用し、長距離空輸を可能とする手段となり人員、郵便物、重要貨物を前方基地から海上基地に輸送する」のだという。
  7. 海軍のミッション要求ではCMV-22Bは長距離飛行用の燃料系統、高周波見通し線外通信機能および機内通報装置を追加する。
  8. 海軍は当初48機を必要としていたが、その後44機で十分と結論づけた。NAVAIRによればCMV-22Bの生産は2018年度に始まり、納入は2020年以降だ。
  9. 海軍は上記三項目の改良の技術改良提案(ECP)をMV-22設計をもとに進める。ECP契約はまだ準備できていないが、2016年度予算に組み込まれるはずだ。つまりあと数か月で決定となる。■

2015年4月30日木曜日

★米海軍>F-35C調達が間に合わない、スーパーホーネット追加調達へ



F-35Cの調達があまりにも遅いため米海軍はしびれをきらしたようです。またこれ以前の海軍からの発言を見てもステルス命という姿勢を海軍は(有人機では)取っていないことが明らかですね。メーカーのボーイングにとっては海外販売の可能性が薄いところに海軍からの追加調達が本当に実現すれば生産ラインを維持できるわけで産業基盤の維持にもつながります。


Navy Leans Toward Building More Super Hornets After F-35C Delays

by KRIS OSBORN on APRIL 22, 2015

2SuperHornet
米海軍はF/A-18スーパーホーネット調達を2017年以降も継続する。これはF-35Cの生産が遅れているのに加えホーネットへの需要が高まっていることへの対応。
  1. F/A-18スーパーホーネット生産は2017年で終了し、共用打撃戦闘機に更新する予定だった。
  2. だが作戦上のリスク回避のためにスーパーホーネット二ないし三飛行隊を追加し、A型からD型が耐用年数の限界に到達しても対応する。
  3. 「CNO(海軍作戦部長)が言うように2020年代、30年代を見越すとF-35C調達を進める一方でスーパーホーネット二個ないし三個飛行隊を追加しないと作戦上のリスクに直面する」と海軍航空戦を統括するマイケル・マナジール少将 Rear Adm. Michael Manazir はMilitary.com取材に答えている。
  4. 各空母は10機編成の飛行隊2と12機編成の飛行隊2で合計44機の攻撃用機材を擁する他に電子戦機材等がある。そこで海軍が求める追加機材数は20機を超える規模だとわかる。
  5. 空母飛行隊ではスーパーホーネット24機とホーネット20機を揃えるのが多い。旧型ホーネットのA型からD型はF-35Cに置き換えるはずだった。
  6. F/A-18A型とC型では8,000飛行時間に到達すると耐用年数延長の改修を受け、10,000時間まで飛行可能となる。しかし実際には大掛かりな修理が必要となることが多く旧型機のうち54%が使用できない。F-18は各地で必要となっており、改修作業が間に合わないのが現状だ。
  7. スーパーホーネットは2030年代まで十分実用に耐えるよう計画されているが、2040年代まで延長が必要との声が多い。マナジール少将によれば2020年までに導入できるF-35Cは20機程度だ。
  8. 「F/A-18を年間350時間ほど操縦していたが、みんなが同じペースだと年間35機か39機を新型機に更新する必要がある。F-35Cはこの規模にならないので、機数が不足する。攻撃戦闘機は必要だが近い将来に不足が発生するのは目に見えている。」とマナジールは言う。
  9. 2016年度の要求にスーパーホーネット12機とF-35C8機が加えられているが予算の裏付けのない追加調達の願望リストとして議会に送られ、年間予算に組み込むかを検討する。
  10. ボーイングのF/A-18生産ラインでは F/A-18 E/Fスーパーホーネットに加えてEA-18Gグラウラー電子攻撃機も生産中。F/A-18 E/F累計生産数は500機ほどだという。F/A-18E/Fの調達予定は563機だが、増えそうだ。
  11. ボーイングとしては生産ラインの継続のため今年末までに決断が出て、リードタイムが長い部品の調達にとりかかりたいところだ。.
  12. F/A-18関連の産業分布は44州に渡り、年間経済規模は90億ドル程度で、間接直接含め9万人分の雇用が実現している。
  13. マナジール少将は航続距離等の性能面でF/A-18スーパーホーネットの性能改修を企画しているという。
  14. その中に機体一体型燃料タンク、エイビオニクス能力向上やレーダー反射を抑えた外部武装ポッドがあるという。
  15. これらはボーイングが自社負担で準備中だが、もし海軍が563機を超える調達をしても全機に改修実施できないという。
  16. マナジールはスーパーホーネットとF-35Cの共同運用も考えている。ただし専門家の中にはステルス性が劣るスーパーホーネットあるいはグララ-がF-35Cと組むと敵に探知されやすく、結果としてF-35のステルス性が無駄になると懸念を示す向きがある。
  17. 敵陣営の技術の急速な進歩で防空体制が変わってきたことでF-35Cのステルス技術があってもグラウラーと一緒に運用する必要があるとの認識だ。
  18. 「すべての帯域で有効なステルスが重要で、ある特定の帯域だけに特化したステルスがあっても残りの帯域のことを忘れていいわけではない。高性能の防空体制を相手にするのであれば低レーダー断面積に加え敵を妨害する性能も必要となる」とグラウラーとの同時作戦投入をマナジールは必要と考えている。■