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2024年12月11日水曜日

注目)グアム初のイージス・アショア・ミサイル防衛テストで、傾斜式Mark 41ランチャーが登場(The War Zone)―テストには海上自衛隊も参加していた模様。グアムの守りはこれから強化されるが中国の飽和攻撃に耐えられるか

 


Mk 41 launcher MDA Guam  Missile Defense Agency




SM-3が標的を撃墜したテストは、グアム島に設置された巨大な防空システムにとって大きな前進となった


ミサイル防衛局(MDA)は火曜日、グアム島から弾道ミサイルを初めて実弾で迎撃した。このテストの成功で新しいイージス・グアム・システムで使用される発射機に関する詳細も明らかになった。

 Flight Experiment Mission-02(FEM-02)と名付けられたこの試験発射は、戦略的前哨基地を360度保護する重要なステップと考えられている。イージス・グアム・システムは、空中発射された模擬中距離弾道ミサイル(MRBM)を迎撃するために、スタンダード・ミサイル-3ブロックIIA(SM-3ブロックIIA)を発射した。MDAと米軍のミクロネシア統合任務部隊によると、標的のMRBMは島の北東200海里以上の地点で命中させることに成功した。

グアム沖で弾道ミサイルの迎撃に成功した米ミサイル防衛局。 (米ミサイル防衛局)

 イージス・グアム・システムは、Mk41垂直発射システム(VLS)をベースとした発射装置からSM-3ブロックIIAを発射した。MDAとロッキード・マーティンが発表した写真(下)を見ると、発射台は少なくとも一方向に傾けることができ、武器の搭載や整備のために垂直にすることができることがわかる。これは、既存のイージス・アショア・システムで使用されている固定式ランチャー・タワーとは異なる。本誌は、この発射システムを開発したロッキード・マーティンに、この発射システムの利点等詳しい情報を求めている。 

 ランチャーを主に脅威が発せられるであろう西側に傾けることで、一部兵器の射程距離を伸ばせる可能性がある。

 多層的なミサイル攻撃から島を守るためには、1マイル(約1.6キロ)でも重要なのだ。


(米ミサイル防衛局)

Missile Defense Agency(米ミサイル防衛局)

 今回のテストはまた、弾道ミサイル防衛の実戦テスト中にAN/TPY-6レーダーを利用した初のエンド・ツー・エンドの交戦となり、島を覆うことになる重層的かつ統合的な防空・ミサイル防衛網の拡大を示す最初のデモンストレーションである、とMDAは述べている。

 製造元のロッキード・マーティンによれば、AN/TPY-6はAN/TPY-7長距離識別レーダー(LRDR)と同じ技術に基づいている LRDRは現在アラスカで使用されており、ハワイでも計画されていたが、2023年にインサイド・ディフェンスが報じたところによると、ハワイでの取り組みに対する予算は枯渇している。

 グアムはワシントンD.C.の約3倍の大きさで、米海軍の戦闘艦艇と戦闘機のローテーション配備を受け入れている。インド太平洋地域における米国防総省の戦略的抑止努力の中心的歯車である。有事の際には、島の港と飛行場には米軍と同盟軍の部隊とプラットフォームが殺到する。 この地域におけるアメリカの任務で、グアムを守ることほど重要なものはない。

 そのため、本格紛争が勃発した場合、北京はグアムとその米海軍、空軍、海兵隊の部隊を十字線上に置くことになる。中国の弾道ミサイルの増強は、戦略的前哨基地であるグアムにとって最大の脅威である。


 MDAは声明の中で、「将来はグアムを防衛し、あらゆる潜在的な地域のミサイルの脅威から部隊を守ることに重点を置く」と述べた。

 火曜日のテストは、いわゆるグアム防衛システム(GDS)の進行中の増強の一部であり、オンライン軍事記録では強化統合防空ミサイル(EIAMD)システムとも呼ばれている。中国との戦争が勃発した場合の攻撃に対抗するため、地対空迎撃ミサイル、レーダー、その他の資産を備えた20もの新しい防空拠点に傾注することになる。

 MDAのテストはまた、グアムの防衛の共同性、連動性、そしてその任務が米軍だけでなく地域の同盟国も巻き込む可能性が高いことを示した。

 代替脅威ミサイルがイージス・アショアで追跡された一方で、駆逐艦USSミリウス(DDG-69)も弾道ミサイルを探知、追跡、交戦シミュレーションを行い、海上ベースのミサイル防衛のもう一つのレイヤーを提供したと、ミクロネシア統合任務部隊は述べている。一方、グアムに拠点を置く米陸軍の高高度防衛ミサイル(THAAD)部隊もミサイルを追跡し、日本の駆逐艦「はぐろ」(DDG-180)も「防空支援を行使した」という。


 本誌は2023年8月、グアムの防衛を大幅に強化する計画を最初に報じた。軍当局が地元住民にこの取り組みと、それが彼らの生活にどのような影響を与えるかを知らせるために努力したためである。火曜日のテストで使用されたイージス・アショア・システムは、グアム防衛計画の中核をなすものだが、ルーマニアとポーランドにある他の米軍イージス・アショア・サイトと全く異なっている。ルーマニアのシステムは2016年から運用されている。

 グアムにおけるイージス・アショアの最終的な構成はまだわからないが、MDAは、今回のイージス・アショアは広範囲に分散され、特定のコンポーネントが硬化した地下施設や道路移動可能な地上プラットフォームに配置される可能性があると指摘している、と述べていた。

 グアムのイージスシステムは、2024年10月の本誌レポートによると、他の点でも異なっている:

 「イージス・アショアは、主にSM-3迎撃ミサイルを使って、地球の大気圏外を飛行する弾道脅威のミッドコース部分を交戦するように設計されている。しかし、Mk41はモジュラーランチャーであり、終末段階の迎撃・対空ミサイルSM-6や、近々登場する滑空位相迎撃ミサイル(GPI)などの対ミサイル迎撃ミサイルを追加することができる。GPIは、他の兵器と同様に、飛来する極超音速の脅威を撃墜する能力を持ち、グアムの防衛に特に関連する可能性がある。ランチャーを増設し、島の周辺に分散させれば、進化型シースパロー・ミサイル(ESSM)ブロックIIや最新のSM-2のような射程の短いミサイルでも、巡航ミサイルやドローンのような空中に飛来する脅威から身を守ることが可能だ。 パトリオット迎撃ミサイルも可能性が出てきた」。

 MDAが2024年10月に発表した地図には、グアム北端のリティディアン・ポイント、島の中央にあるグアム海軍基地(NBG)のバリガダ・サイト、南の海軍軍需施設(NMS)内の場所など、島全体で16の防空システム資産の候補地が示されている。


MDA

別の地図では、現在海兵隊の新しいキャンプ・ブラズの管轄下にあるリティディアン・ポイントから突出した比較的大きなアークを含む9つのレーダー・アークが示されている。


MDA

攻撃中に様々な種類の弾道ミサイルや巡航ミサイル、固定翼機やドローンと交戦する可能性のある他の航空システムには、ペイトリオット地対空ミサイルや、中距離・短距離(SHORAD)システムを含む下層対空ミサイルシステム、さらに将来的には指向性エネルギー兵器も含まれる。

 計画されているすべてのGDSがいつ設置され、運用できるようになるのか、正確な時期はまだ不明だが、政府関係者は、2026年までに少なくとも一部コンポーネントを運用できるようにしたいと述べている。

 まだわからないことは多いが、火曜日の弾道ミサイルの脅威の撃墜は、危機発生時にグアムの空域を封鎖する計画の1つの方法と、この重要な任務を達成するための多様なシステムの必要性を強調した。■


Tilting Mark 41 Launcher Emerges During Guam’s First Aegis Ashore Missile Defense Test

The test that saw an SM-3 swat down target is a big step forward for the massive air defense system being installed on the island.

Geoff Ziezulewicz, Joseph Trevithick


https://www.twz.com/land/tilting-mark-41-launcher-emerges-during-guams-first-aegis-ashore-missile-defense-test


2020年6月27日土曜日

イージス・アショア頓挫で日本のミサイル防衛体制について米シンクタンクが提言


 

航空自衛隊がPAC-3対空迎撃ミサイル装備を米横田基地に展開し能力を実証した。 Aug. 29, 2017. (Eugene Hoshiko/AP)

本政府がイージス・アショア弾道ミサイル防衛導入を取りやめる決定をし日米同盟へ懸念が生まれている。ミサイル防衛推進派の反対意見が出てくるのは確実で、北朝鮮の弾道ミサイル攻撃対処では実効性がイージス駆逐艦部隊より高いと主張してくるはずだ。
その主張は部分的に正しい。というのはイージス・アショア設置費用が当初予定より倍増しているとはいえ各18億ドルと、単価16億ドルでイージス・アショアのかわりに導入する3隻ないし4隻より安くなるからだ。
日本の防衛相は取りやめの理由の第一に費用をあげたがもっと大きな理由に近隣住民の懸念がありミサイルの一部が落下する、高出力レーダーが健康に不安を与えるというものがあった。
こうした懸念の一部は根拠が怪しいが、安倍政権は中期防衛計画の実現のためイージス・アショア予算を「総合的対空対ミサイル防衛能力」の整備に流用し日本が直面する全方位脅威に対応するべきだ。
イージス・アショアがあれば日本を広範囲で弾道ミサイルから防衛できる。ただし、施設内のミサイル数で性能が限定され、配置場所が固定され攻撃を受ける可能性がある。北朝鮮は弾道ミサイルを相当数配備しており、おとりやその他補助手段も動員しイージス・アショアのミサイル24本に飽和攻撃を試みるはずだ。敵のミサイルに防衛側が迎撃ミサイル複数を発射すると見越しているためだ。中国やロシアはさらに大規模な攻撃をしてくるはずで、イージス・アショア施設自体も標的となる。
防衛省はイージス・アショア代替策として以下を検討中。SM-3ではブースターを洋上に落下させるプログラム作成、レーダー設置場所を海岸線近くに移動し、近隣住民への影響を抑える。またイージス・アショアそのものを艦船やはしけに搭載する案も検討している。こうした動きは社会の懸念に答えるものだが、費用は現行より高くなりそうだ。
弾道ミサイル防衛が不調に終わる内容に予算を増やすより、防衛省は総合的な防衛体制の防空、ミサイル防衛の実現を目指すべきだ。特に中国等との激しい競争に日本が直面していることを考えると、日本は抑止効果の観点からも早期警戒、標的捕捉の能力を引き上げ、巡航ミサイル・弾道ミサイルの双方に対応し、意思決定を迅速化し、防衛網をかいくぐるミサイルがあっても靭性を発揮すべきだろう。
では日本の防空・ミサイル防衛はどうあるべきか。以下要素が5つあり、一部は既に実現しており、実行に必要な予算を下げられる。イージス・アショアに行くはずだった予算で以下すべてが実現できる。.
  • 移動式、固定式双方のセンサー(パッシブ、アクティブ)で分散型ネットワークを構築する。海自イージス駆逐艦もこの一部とし、米衛星群、AN/TPY-2レーダーに加え現在計画中の長時間飛行可能無人機に赤外線センサーを搭載し弾道ミサイルや極超音速ミサイルの発射を早い段階で探知する
  • 迎撃手段は短中距離ミサイル対応を重視すべきだ。こうしたミサイルは小型で安価で性能が高い。対応は現行のSM-3、今後登場するSM-6を海上運用し、広域防衛させ敵機も迎撃させる。ペイトリオット性能向上型-3迎撃ミサイルは重要地区・基地施設の防衛にあて、 Rolling Airframe Missile (RAM)は局地防衛に投入する。さらに発射直後の北朝鮮ミサイルには今後登場するブースト方式空対空迎撃ミサイルで対応する。
  • 高出力マイクロ波、電子戦ジャマー、おとりの他重要施設周辺にレーザーを配備すれば無限の発射回数が実現し、既存の短距離迎撃手段や局地防衛手段を補完できる。
  • 指揮命令系統が攻撃を受けてもすぐ回復できるようにし、米軍ともデータを融合し、脅威に対し経済的な迎撃手段を選択することで防衛の効率を高める。
  • 受動防衛措置として防衛部隊のカモフラージュ、隠蔽、偽装の他、一部施設を強化、再整備し、敵の標的捕捉能力を劣化させつつ防衛部隊の継戦能力を確保すること
防衛能力の補完や代替策として攻撃作戦が話題になる事が多い。しかし、日本の攻撃能力では北朝鮮への先制攻撃はありえず、中国やロシアのミサイル発射装置や指揮命令所を実質的に使用不能にできない。
日本政府はイージス・アショア凍結で生まれた好機をとらえ総合的なアプローチにより日本を敵機、ミサイルから守るべく、各種防衛手段を組み合わせ、さらに指揮命令機能を引き上げ、弾力性を加え敵攻撃を抑止することが可能だ。これができないままだと日本の安全保障体制向上につながらないまま弾道ミサイル迎撃手段の夢を追い求めることになりかねない。■

この記事は以下を再構成したものです。

It's time to rethink Japan's missile defensesIt’s time to rethink Japan’s missile defensesBy: Bryan Clark and Timothy A. Walton 8 hours agoBryan Clark is a senior fellow at the Hudson Institute think tank, where Timothy A. Walton is a fellow.

2020年6月21日日曜日

日本のイージス・アショア導入は中止になったわけではない

本がイージス・アショア導入の2番目の予定地でも作業を止めたことで米国がめざす太平洋ミサイル防衛ネットワークの構築が打撃を受ける。
6月15日に河野太郎防衛相が突如発表し、発射後のロケット筐体を近隣住宅地に落下させない方策を米政府・ロッキード・マーティン双方が提示できなかったためと説明。▶イージス・アショアは秋田県、山口県の各陸上自衛隊基地に設置の予定だった。▶「費用と日程を考慮の上、イージス・アショア導入を停止した」と河野防衛相は述べたが日本は2年前に導入決定していた。「当面はイージス艦で対応する」
事業規模21億ドルの同装備導入は今回の発表前からもたつきを示しており、秋田では現地の反対の声を受けて導入は白紙に戻すと日本政府は述べ、2025年の同時稼働開始は危うくなっていた。▶今回、二番目の設置場所でも作業が止まり、事業再開となっても目標達成は不可能だ。
ロッキード・マーティン広報は「当社は米ミサイル防衛庁(MDA)、日本防衛省と緊密に動き、イージス・アショア装備の実現を予定通り予算内で目指す。日本政府の懸念を解消したい」と声明を発表した。▶日本政府は今後も続け候補地を模索する。条件のひとつが人口密度が低い地点をみつけることだが、評価作業がいつ完了するか不明だ。
問題が浮上したのはSM-3ブロックIIAミサイルのソフトウェア改良が不十分と判明したためだ。▶構想ではブースター分離方法を変え破片等が住宅地に落下させないはずだった。▶SM-3ブロックIIAは日米共同開発事業で河野防衛相は日本は10億ドル近くを開発に支出ずみとも発言した。▶両国は同ミサイルの試験で協力しており、日本には2021年にイージス駆逐艦8隻体制を求め、うち4隻にSM-3ブロックIIA運用能力を付与する。
「日本の想定脅威が米国政府の考えとずれている証拠だ」と新アメリカ安全保障センターのアナリスト、エリック・ソーヤーズが述べた。▶「戦略面で見れば海上自衛隊の中心任務はミサイル防衛となる。数に限りがあるイージス艦を待機させ本土防空任務に投入するのでは得策と言えない。日本に最善の策は固定陸上ミサイル防衛基地の活用であり、艦船は別任務にあてることだ」(ソーヤーズ)
今回の日本政府の決定はイージス・アショアの世界展開を後退させる別の要素になった▶MDAはポーランドで建設中のイージス・アショアで工程の遅れを認め、完工時期を2年遅らせる。▶このため2021年に追加費用96百万ドルが発生する。ポーランドでの遅れによりイランの中距離弾道ミサイルの追尾迎撃を目指すヨーロッパの対応能力に影響が生まれ、ルーマニア国内の別の基地と合わせ多重的防護措置の実現も遅れる。▶これに対しMDA広報官マーク・ライトは米陸軍工兵隊とMDAがポーランドで努力中で「運用能力の開始」は2022年より先送りしないと述べたが、詳細には触れていない。■
この記事は以下を再構成したものです。

on June 15, 2020 at 1:31 PM