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2024年11月15日金曜日

中国から大規模な対ドローン高出力マイクロ波兵器が登場(The War Zone)

   

CSCG/Norinco capture via X




今年の珠海航空ショーで複数の高出力マイクロ波システムが登場し、中国の指向性エナジー対ドローンへの取り組みが勢いを増している


ドローン能力に対する需要が世界的に爆発的に高まっている中で、マイクロ波・レーザー指向性エナジー兵器の開発、実戦配備、輸出における中国の着実な進展が目立つ。 

 正式には中国国際航空宇宙展覧会として知られる珠海航空ショーは、中国および外国の企業が地上および海上の製品を展示する機会も提供している。 

 来週の正式な開幕を前に、各種航空機やその他のシステムの写真や動画が着々と登場している。 

 珠海で準備が進む中、ネット上に出回っている画像には、国営企業である中国南方工業集団公司(CSGC)とノリンコのプロモーション・ビデオがあり、2つの高出力マイクロ波指向性エナジー兵器やその他の防空システムの映像が含まれている。 

 そのひとつは、8×8軽装甲車のシャーシの上に搭載された大型平面アレイからなるマイクロ波システムである。 

 このシステムには小型の回転レーダーも搭載されており、目標探知と追跡を目的としている。

 

基礎となる車両は、625E型自走式短距離防空システムで使用されているものと同じか、プロモーションビデオにも映っている


CSGC/Norincoの別の製品である、その変形または派生型のようだ。 軽装甲車のシャーシに搭載された高出力マイクロ波指向性エナジー兵器システムを示すCSCG/ノリンコ・ビデオの画面キャプチャ。


 中国のインターネット CSGC/Norincoのビデオには、さらに大型のマイクロ波システムも映っており、やはり平面アレイとレーダーを含むが、今回はシャックマンSX2400/2500シリーズ8×8トラックに搭載されている。 


CSCG/Norincoのキャプチャ via X 


 ビデオでは、CSGC/Norincoの高出力マイクロ波兵器システムの全機能や能力について、追加センサーの有無も含め、具体的な詳細は明らかにされていない。 

 最後のクリップでは、小型ドローンがシステムの1つによって撃墜され、赤外線カメラの映像も映っている。 

 電気光学カメラと赤外線カメラは、しばしば指向性エナジー対ドローンシステムと組み合わされ、標的の識別と追跡に役立っている。 CSCG/Norinco capture via X 


 シャックマンSX2400/2500シリーズトラックに搭載された第3の高出力マイクロ波指向性エナジー兵器システムの写真も公開された。このシステムは、車両後部の異なるスタイルの連結マウントにマイクロ波アレイを搭載しており、運転席側の伸縮可能なマストにはドーム内のレーダーらしきものも搭載されている。 

 珠海の準備についてネット上に出回っている画像には、様々なレーザー指向性エナジー・システムらしきものも写っている。これも主に対ドローン用と思われ、軽装甲車や乗員なしの地上プラットフォームに搭載されている。 

 対ドローン用を含む様々なタイプの指向性エナジー兵器に関する中国や世界中の他の場所での研究は、新しいものではない。 

 米軍は、地上や艦船をベースとした多くのシステムを積極的に追求している。 

 しかし、近年、米軍含む世界中の軍の間で、航空機を使用しない脅威に対する防衛能力を拡大しようという新たな動きが目立っている。 

 現在進行中のウクライナ戦争は、長距離攻撃から前線部隊への神風攻撃に至るまで、あらゆるレベルで双方によるドローンの使用によって大きく規定されるようになった。 

 中東やその周辺を含む他の紛争でも、搭乗員のいない航空機システムの使用が増加しており、それも一因となっている。 

 マイクロ波指向性エナジー兵器は、その出力レベルとともに、ビームをどのように集束させるかが、その最大有効射程距離と、一度にどれだけの数の脅威と交戦できるかに影響する。 

 しかし、マイクロ波指向性エナジー兵器は、レーザー指向性エナジー兵器に比べ、ビームが比較的広いのが一般的で、標的をより早く捉えることができる。 

 また、環境要因の影響も受けにくい。 

 このように、高出力のマイクロ波ベースのシステムは、完全にネットワーク化された群れの一部として動作するドローンを含む、大量の脅威を打ち負かすための特に魅力的なオプションを提示する。 

 マイクロ波エナジーは、さまざまな電子システムを混乱させ、あるいは破壊することができるため、巡航ミサイルを含む空中や下方の他の種類の標的にとっても脅威となる。 

 対ドローン戦線において、中国は、珠海でも展示されている様々な層の非搭乗型空中システム、および群れ飛行能力の開発・実戦配備への多額の投資を行い、現在も拡大していることから、脅威の生態系が拡大し続けていることを十分に認識している。 

 また、珠海では、既存の地上型も含め、指向性エナジー能力の開発も着実に進んでいる。 

 珠海で展示されるマイクロ波指向性エナジーやその他のシステムは、輸出の側面も強調している。 

 中国はすでに指向性エナジー対ドローンシステムを海外に販売している。 

 ちょうど10月、イランの首都テヘランでイランのアヤトラ・アリ・ハメネイが注目を集めた際、中国のレーザー指向性エナジー兵器が登場した。 

 イランの最高指導者を守るために、他にどのような兵器が配備されたのかは不明だが、本誌は当時、このイベントの画像に、マイクロ波ベースのシステムでよく見られるような平面アレイのようなものが写っていたと指摘している。 


2024年10月にテヘランに配備された中国のレーザー指向性エナジー対ドローンシステム(赤枠内がハイライト)を示す注釈付き画像。左側に平面アレイらしきシステムも見える。via X 


 ただし、これらの中国のシステムの実際の能力は不明であることを強調しておく。 

 同時に、米軍が伝統的な戦場の内外で著しく後れを取っている一方で、中国はこれらのシステムを少なくともある程度のレベルで運用できるようにするために着々と取り組んでいる。 

 国内のドローン防衛に関して言えば、米軍部隊は、指向性エナジー兵器や、地対空ミサイルや銃のような伝統的なキネティック・エフェクターには、現在まったく興味を持っていない。 

 一方、中国が続けている高出力マイクロ波とレーザーによる指向性エナジー開発は、今年の珠海航空ショーで特に重要な役割を果たすことになりそうだ。


Massive Chinese Anti-Drone High-Power Microwave Weapon Emerges

China's directed energy counter-drone efforts are building steam with multiple high-power microwave systems featured at this year's Zhuhai Airshow.

Joseph Trevithick

Posted on Nov 7, 2024 1:47 PM EST


https://www.twz.com/news-features/massive-chinese-anti-drone-high-power-microwave-weapon-emerges


2024年1月24日水曜日

1発13ドル(もっと安くなるのでは)のレーザーで飛行標的に命中。英国のDragonFireの実戦搭載が期待されるが....

 レーザー含むDEWの技術革新が進んでいるとはいえ、実戦の厳しい状況で実用に耐えるまで一皮むけるまではまだ道のりは遠いようです。とはいえ、技術面ではいつもブレイクスルーもありますので、悲観ばかりしていてもしかたがありません。今回は英国による試写成功を伝えるBreaking Defense記事のご紹介です。

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The UK has test fired the DragonFire high energy laser weapon against ‘aerial targets’ for the first time (UK Defence Science and Technology Laboratory)


イギリスが「空中標的」に対し、1発13ドルのレーザー兵器DragonFireの試射に成功

1発10ポンド(13ドル)以下と推定される高エナジー・レーザーが、スコットランド北西部の試験場で空中標的に命中した。

英国の国防革新部門である国防科学技術研究所(Dstl)が開発し、レオナルドMBDAQinetiQの各社と共同で、英国国防省(MoD)のヘブリディーズ試験場でDragonFireレーザー指向性エナジー兵器(LDEW)が「空中目標」を攻撃する「高出力発射」に成功した。(DSTLの声明)

タイムズ紙は、DragonFireが「数マイル先からドローンを攻撃した」と報じている。Dstlは、この兵器が5年以内にイギリス海軍艦艇で運用されると予測している。

Dstlの声明では、DragonFireを運用環境に移行する意欲が確認できるが、時期は言及されていない。

英国防省の広報担当者は、本誌取材に対し、この兵器を搭載する艦船は 「現時点では」選ばれていないが、「レーザーが20年代末までに実用化される可能性はある」と語った。

Dstlは、レーザーの運用コストは「通常1ショットあたり10ポンド(13ドル)以下」であり、視線システムとして設計されており、その射程距離は機密扱いだと述べている。同兵器は「ピンポイントの精度」も提供するとされているため、将来的には、高価な弾薬を削減しながら、正確な照準を英国に提供する可能性がある。

「DragonFireは高出力レーザーを長距離照射できる。要求される精度は、1キロ先の1ポンド硬貨を打つのと同じである」。

最新の試験は、英国による「初の静的高出力レーザー発射」含む以前の試験の延長線にある。2017年から開始された1億ポンドのDragonFireプログラムには、MoDと産業界が共同で資金を提供している。MBDAはレーザー兵器のコマンド・コントロールとターゲット追跡システムを提供し、レオナルドは高度なビーム・ディレクターと光学系を製造し、QinetiQは精密レーザー光源を提供する。

海軍ベースの高コストミサイルは、HMSダイヤモンド45型駆逐艦、USSアイゼンハワー空母打撃群、米国の駆逐艦とF / A - 18スーパーホーネット戦闘機が18ドローン、2対艦巡航ミサイルと1対艦弾道ミサイルの弾幕を撃退したときのように、最近紅海で効果を実証している。

イギリスの駆逐艦は、1基100万ポンド(130万ドル)以上すると推定されるシー・バイパー・ミサイルを飛来する標的に命中させた。ドローンは比較的安価であるため、通常兵器が群れを破壊するのと大きな格差があり、世界中の軍隊が、わずかなコストで役割を担う方法としてレーザー兵器に注目している。

LDEW技術プロジェクトは通常、長い研究開発期間を要するが、その主な理由は、工学的見地から、目標にとどまり、射程距離で破壊するために必要な出力とビームの安定性の維持が非常に困難と考えられているためだ。動く標的では、さらに大きな挑戦となる。

米海軍のレーザー技術兵器への取り組みを管理する水上戦部門(N96)のディレクターであるフレッド・パイル海軍少将は、今月初め、米海軍と産業界はレーザーシステムの能力について互いにもっと「知的に正直」になるべきだと述べるとともに、「過剰に約束し、過小に提供する傾向」を批判した。

少将は、海軍による指向性エナジー能力への継続的な投資の必要性を強調し、目下の技術的問題は、「スペース、重量、電力、冷却を必要とし、現在の水上戦闘艦では困難である」と述べた。

海軍とロッキード・マーティンは、誘導ミサイル駆逐艦USS Preble (DDG 88)に同メーカーのHigh Energy Laser with Integrated Optical-dazzler and Surveillance (HELIOS)を搭載しようと共同作業中だ。■


In first, UK test fires $13-per-strike DragonFire laser weapon against ‘aerial targets’ - Breaking Defense

By   TIM MARTIN

on January 19, 2024 at 11:55 AM


2022年8月11日木曜日

ストライカーだけじゃない、米陸軍のレーザーは対無人機防御のため進化している

 

第10軍航空・ミサイル防衛司令部、第4防空砲兵第5大隊アルファ隊のが、2021年5月25日、ドイツのオーバーダッハシュテッテン射場施設でM-SHORADストライカーのドライバー訓練を実施する (U.S. Army photo by Georgios Moumoulidis)

ストライカー用の指向性エナジー兵器に加え、米陸軍は小型車両用の小型レーザー兵器も開発中

陸軍は、ストライカー部隊に初の戦闘用レーザーを今後数週で納入する計画で、別の車両にレーザー兵器を搭載するプロジェクトも進めている。

アラバマ州ハンツビルで開催された宇宙・ミサイル防衛シンポジウムで、迅速能力整備・重要技術開発室Rapid Capabilities and Critical Technologies Office, RCCTOのニール・サーグッド中将Lt. Gen. Neil Thurgood,は、今日、DE M-SHORAD(指向性エナジー機動短距離防空ミサイル)の最初の隊が、今後45日以内にオクラホマ州フォートシルに送られると発表した。

DE M-SHORADプログラムは、陸軍の上位の近代化優先事項35の1つで、50キロワットのレーザーをストライカーに搭載する。ロケット弾、迫撃砲、大砲に加え、サイズグループ1(最大20ポンド)から3(最大1,320ポンド)までの無人機から地上部隊を守る設計だ。サーグッド中将はプレゼンテーションで、陸軍は指向性エナジーについて「学ぶことがたくさんある」と述べながら、戦術、技術、手順(TTPs)に変化はないと述べた。

「レーザー発射のTPPは、弾丸発射TPPとほぼ同じです」「レーザーは光の弾丸で、それが唯一の違いです」(サーグッド中将)。

サーグッド中将によると、DE M-SHORADは2回実射している。初回は、迫撃砲弾を「追跡」できたものの、「破壊」できなかった。その後6カ月間の作業を経て、DE M-SHORADプログラムは迫撃砲の撃破に成功した。

歩兵部隊の防御用に、RCCTOは最近、歩兵分隊車(兵士9人名が乗る小型兵員輸送車)に20キロワットのレーザーを搭載するプロジェクトを開始したとサーグッド中将は述べた。新しいプロジェクトは、Army Multi-Purpose High Energy Laser(AMP-HEL)と呼ばれ、2023年度に納品される。

AMP-HELの20キロワットレーザーはストライカー搭載型より能力が限定的で、グループ1および2の無人システムに対してのみ防御が可能となる。グループ3の無人機やロケット弾、大砲、迫撃砲に対しては脆弱なままだ。

米陸軍は対無人航空機装備に何億ドルも投資している。低価格無人機の拡散が、国内外で兵士や施設を脅かしているからだ。ここ数年の海外紛争では、無人機は目標への攻撃、索敵、その他の偵察任務で有効性を実証している。2022年度予算編成で議会は陸軍にUAS対策に4億3400万ドルを与えており、予算要求の6000万ドルを上回っている。■

‘Bullet made out of light’: Army to field first Stryker-mounted combat laser in next 45 days

By   ANDREW EVERSDEN

on August 10, 2022 at 4:26 PM


2021年8月14日土曜日

米陸軍のレーザー搭載ストライカー車両が射撃実証を完了。成果は非公表だが、2022年度には実戦配備が始まる。レーザーの実用化は思ったより早く進展している。

  

Photo by Jim Kendall

 

陸軍は無人航空機システム(UAS)、ロケット弾、砲弾、迫撃砲弾(RAM)への対応を目指し、ハイテクレーザー兵器装備の整備を続けている。

 

陸軍の最新広報資料ではマルチドメイン作戦へ対応しつつ新型スタンドオフ機能を実現するとある。

 

中でも指向性エナジーの応用が最も進展しており、陸軍は24カ月でレーザーを車体に搭載し、戦闘用途の試作車を完成させた。

 

無人機やRAMにレーザーで対抗することで陸軍の防空ミサイル防衛体制が充実し、同時にシステム全体のライフサイクルコストが補給活動の必要が減るため低下する効果も実現する。

 

今夏、陸軍迅速能力整備重要技術開発室Rapid Capabilities and Critical Technologies Office (RCCTO)が航空ミサイル防衛機能横断チーム等とレーザー搭載ストライカーをオクラホマのフォート・シルへ持ち込み、指向性エナジー機動短距離防空Directed Energy-Maneuver Short-Range Air Defense (DE M-SHORAD)の戦闘発射実証を行った。実戦部隊をUASやRAMの脅威から防御すべくRCCTOはレーザー搭載ストライカー4両で1個小隊を2022年度までに整備する。

 

「レーザーの初めての戦闘応用となります」とL・ニール・サーグッド中将(極超音速・指向性エナジー・宇宙・迅速調達担当)は語った。中将はRCCTOも統括する。「現時点で技術は準備が整った。未来の扉を開く」

 

戦闘射撃想定ではストライカーに現実を想定したシナリオが準備された。陸軍にとっても初の出来事であり、今後のDE M-SHORAD装備に必要となる特性を考慮した。

 

「前例のない試みです」と語るのはG・スコット・マクロード大佐(RCCTOのDE M-SHORAD事業主査だ。「これまでどこにもない機能を実現し配備する。改修や性能向上ではない。わずか24カ月で政府民間合同で設計、統合の上実用環境で作動する装備に仕上げた」

 

Photo by Jim Kendall

 

DE M-SHORAD用の試作装備は陸軍が進める近代化戦略の一環で対空防衛、ミサイル防衛を意識している。戦闘射撃実証は7月に終わり、隊員は新型装備の取り扱い訓練を完了し、最新技術を通じDE M-SHORAD装備に習熟することができた。数日で装備の操作が可能となり、標的捕捉の技量を示し、交戦を実際を行えるようになった。

 

隊員を考慮した設計が試作装備のあちこちに見受けられる。例えば、訓練では民生用のゲーム用コントローラを使っており、標準型の軍用コントローラより使い勝手が良い。ストライカーの三次元モデルがハンドヘルド機器で使え、仮想的にシステムを移動でき、部品単位で分解できる。またオンラインでシステム研修資料にアクセス可能だ。

 

演習で隊員は実際の脅威を再現した戦闘シナリオを体験した。E M-SHORAD兵装システムは設計どおりの性能を実証し、22年度配備をめざし大きな一歩となった。

 

「今回の実証は迅速試作化の好例となった」とクレイグ・ロビン博士(RCCTOのDEプロジェクト室)が語る。「はじめて戦闘対応レーザーを一定の距離から脅威対象に向け放射した。まだ完全ではないものの、隊員のフィードバックを反映し、将来の指向性エナジー兵器としての完成度を上げていく」

 

「今回の試作品から学ぶ点は多い。2つの狙いがある。一つは隊員が安全に運用できる装備の設計、2番目は、確実に脅威に対応できるようにすること。技術開発は完了している。次は隊員に初の実戦能力を与えることだ」(サーグッド中将)■

 

この記事は以下を再構成し人力翻訳でお送りしています。

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US Army evaluates laser-equipped Stryker combat vehicle

ByColton Jones

Aug 13, 2021

2021年5月6日木曜日

航空機搭載レーザー兵器の実用度はここまで進んでいる。F-3の発電容量拡大も指向性エナジー兵器搭載を想定している模様。

Stars and Stripes

 

2017年にThe Driveが入手した米空軍のプレゼン資料では第六世代戦闘機に機体内部搭載あるいは「一体型」のレーザー装備を導入するとある。

 

4月23日、空軍研究本部(AFRL)が光ファイバー方式レーザーをホワイトサンズ試射場(ニューメキシコ)で実験し、「飛翔中のミサイル数発」を撃ち落とした。

防御用高エナジーレーザー実証装置(SHIELD)は大型の地上装備だが、空軍はSHIELDをポッド搭載可能になるまで小型化が可能と楽観視しており、2021年までにF-15で試射するとし、その後F-16やF-35のような単座戦闘機に搭載するとしていた。一部にはC-17やC-130輸送機でテストを開始するとの観測もあった。

 

航空機搭載レーザーが想定通り実用化されれば、航空戦闘の姿が大きく変わる。戦闘機、爆撃機、はては給油機や輸送機で対空ミサイルからの防御能力が画期的に高まる。さらに超高速空対空、空対地攻撃兵器になり、事実上無限の発射が可能となる。

 

まず、航空レーザーの強み、短所、応用範囲を理解しよう。その後、ペンタゴンが進めているレーザー兵器か計画三点をご紹介する。

 

レーザーのドッグファイトは実現するのか

 

レーザーの兵器応用は急速に進んでおり、小火器から、戦車搭載(中国がこれを開発中)さらに地上配備あるいはヘリコプター搭載対無人機装備(米陸軍がテスト中、近接防御装備として米海軍が実用化を狙う装備まで多岐にわたる。レーザーには発射速度(光速)、ステルス、精密度とともに一回の「射撃」コストが極めて低価格になり、事実上無尽蔵の弾倉が実現する。

 

ただし、レーザーには大電力が必要で特に長距離射程でこれがあてはまり、大気状態で効力を減じることがあり、発熱量が大きく冷却装置が必要となり、最近まではかさばる電源が必要だった。

 

SHIELDは敵ミサイルを撃破すべく開発されたアクティブ防御システムの最先端装備だ。ロシアには48N6地対空ミサイルやR-37空対空ミサイルといった長距離装備があり、無防備な早期警戒機や給油機を200マイル先から狙う。第4世代機、第5世代機がレーダー探知されるのはこれよりずっと短い距離で、高機動の短距離ミサイルを回避する可能性は20-30パーセントといわれる。

 

レーザーに運動エナジー効果はないが、比較的小出力でもミサイルの光学誘導装置を妨害あるいは破壊できる。理論上は。より強力なレーザーだとミサイルの飛翔制御用フィンを破壊する、あるいは弾頭を加熱できる。地上発射レーザーで無人機を破壊した事例もある。

 

出力をさらに強力にすると敵機を狙う攻撃兵器となり、水上艦も標的になりうる。レーザーは同時にセンサー機能も発揮するので、極めて迅速な戦闘対応が実現する。

 

レーザーの破壊効果を左右する要素は射程距離や「焦がす」機能が何秒持続できるかだ。さらにレーザーが対応できるのは一回にひとつだけで、かつ敵を直線で狙う必要がある。

 

とはいえ、レーザーで弾薬数の制約がなくなり、資材や車両を相手に非殺傷で付随被害を押さえた攻撃を精密に実施できる。ここに特殊部隊が60キロワット級レーザーをAC-130Jゴーストライダー・ガンシップに搭載を進めている理由がある。

 

ステルス、非ステルスの戦闘機が制空権未確立の空域で行動する際にレーザーがあれば生存性が大幅に高まる。敵は飽和攻撃に近い形でミサイル多数の発射を迫られるだろう。

 

エナジー兵器は敵奥地に侵攻するB-2スピリットや間もなく登場するB-21といったステルス爆撃機に防御手段を実現する。B-2ではステルス性能だけが生存のカギとなっており、ミサイルが視界に入っても防御手段がない。同様に、レーザーが輸送機、給油機等の支援機材に導入されれば、こうした大型かつ脆弱な機体でもミサイル奇襲攻撃を回避する可能性が増える。

 

さらにレーザーが大規模導入されれば、ステルス戦闘機や視界外射程ミサイルの優位性が否定されることになり、敵はミサイルを多数発射して命中を狙うはずだ。過剰交戦が視界内ドッグファイトで実現し、レーザー攻撃も加われば、操縦性の高さで、あるいはおとり装置で生き残ることは困難になる。

 

LANCE とCHELSEA

 

空軍のSHIELDは総額155百万ドルの予算で開発が進み、構成要素は三つある。LANCEレーザーはロッキードが空軍研究本部と共同開発している。つぎがSTRAFE制御システムでノースロップ・グラマンが担当し、最後にレーザーポッド研究開発をボーイングが行っている。

 

初期のレーザーは不安定な化学物質を使ったが、LANCEでは光ファイバーのケーブルで光ビームをひとつにし「数万キロワット」級出力を実現する。モジュラー構造により出力規模を増減させる。エナジー効率が40パーセントと高効率が特徴だ。

 

LANCEでは高高度や高速飛行中に耐える改善がまだ必要だが、ポッド搭載可能なまで小型化できれば作動中に生まれる発熱を防ぐこともできる。F-35のブロック4性能改修ではエンジン改良で発電容量を引き上げることになっており、指向性エナジー装備搭載を念頭に置いているのだろう。

 

2019年1月にAFRLから期間6カ月で高エナジーレーザーサブシステム技術評価(CHELSEA)の公告があり、「2024年までにレーザー小型化を実現する最も有望な技術を特定する」ことを目的としていた。CHELSEAレーザーがゆくゆくSHIELDにとってかわれば、攻撃用途に道が開ける。

 

T2017年にThe Driveが入手した空軍プレゼン資料では空軍はレーザーを第6世代機の機内あるいは「一体型」として搭載するとあり、機体の空力特性を犠牲にしない方法でステルス性能も確保するとある。また、100KW級出力を実現し対空、対艦攻撃に使う展望が示されていた。

 

三番目にステルス無人機へのレーザー兵器搭載があり、敵の弾道ミサイル施設上空に滞空し、発射後の加速中ミサイルを狙う構想だ。

 

2010年初頭に空軍は改装747ジャンボジェットに化学酸素イオンレーザーを搭載し、弾道ミサイル2発を撃破する実験を行ったが、その後同事業は中止となった。理由として非ステルス機では敵空域で生存が望めないためだ。F-35で指向性エナジー兵器を搭載し、弾道ミサイル撃破に使う構想も検討されたが、同機の航続距離が短く滞空時間が限られる点が障害になると判明した。

 

ステルス無人機なら残存性とともに長時間滞空性能が実現する。2018年秋にミサイル防衛庁はロッキード・マーティン、ジェネラル・アトミックス、ボーイングの三社に契約交付し、「低出力レーザー実証機」の作成を求めた。低速飛行の無人機は目標地点まで1,900マイル移動し、高度63千フィートの楕円飛行パスで、36時間滞空後に帰還する。レーザーは140から280キロワットで30分照射可能なバッテリーを搭載する。

 

レーザー装備導入を想定するのは米空軍だけではない。仏独共同開発のFCAS、英国のテンペストの両ステルス戦闘機、ロシアのMiG-41迎撃機では指向性エナジー兵器(DEWs)の搭載を最初から想定している。さらに日本のF-3、タイフーン両機のエンジンはターボ発電機能を採用し、発電容量に余裕を持たせているのはDEWs他搭載の想定のためであろう。■

 

 

2020年11月5日木曜日

レイルガンの夢と現実。

 

「指向性エナジー兵器」構想は早くも19世紀の通俗小説にあらわれたが、SFの世界をそのまま現実にする兵器技術をフランス人発明家が第一次大戦中に提唱していた。

 

レイルガン構想は化学反応では到底無理な距離まで発射体を大型電気回路で飛ばそうというもので、提唱したのはアンドレ・フォション-ヴィレプレーだった。このフランス人は簡単な構造の電気砲を作り、フランス軍の注目を集めた。当時ドイツが運用中の「パリ砲」に対抗可能な長距離砲が欲しかったからだ。

 

1918年にフランス軍需省発明局の命令でフォション-ヴィレプレーは簡単な電気砲の作成に取り掛かった。今日でも画期的な同装置はフランス軍には未来と写ったはずだ。

 

だがフォション-ヴィレプレーのレイルガン開発が進展を示す前に終戦となってしまった。

 

第二次大戦中にナチドイツのヨハヒム・ヘンスラーもレイルガン構想を提唱し、秒速2千キロで発射弾を飛ばすと豪語していた。終戦後に研究内容を発掘した米調査団は構想の弱点として発射には当時のシカゴの半分の照明用にあたる電力が必要だと理解した。

 

レイルガンは数々のコンピュータゲームに登場しているが、大型の「レーザー砲」との誤解がついてまわっている。ゲームではレイルガンは大型ライフルや機関銃の扱いを受けたり、ロボットの腕に装着されたりしている。ゲームデザイナーにはこれだけの威力を誇る兵器にどれだえ電力が必要となるのかわかっていないようだ。

 

レイルガンとは基本的に大型電気回路であり、電源、レイル二本、移動式回転部品の三要素で構成される。こういうと単純な構造に聞こえるが、問題は必要な電力があるかだ。中大型レイルガンでは百万単位のアンペアが必要となる。

 

レイルは伝導性の高い銅などで形成するとしても30フィート超の長さが必要だ。そうなるとライフルや機関銃の大きさのレイルガンなど実現困難だとわかる。

 

レイル二本の間をつぐぎ回転部品や伝導性の高い金属部品が必要だ。電流は電源の正極からプラス荷電のレイルを伝わり、回転部品を通過してマイナスのレイルを伝わり、電源に帰ってくる。

 

簡単に言えば、これで電磁力が生まれ発射体を高速度で打ち出す。

 

レイルガンの長所

 

化学爆発を利用する従来型兵器に対しレイルガンには大きな利点がある。まず発射速度が圧倒的に高くなる。海面上でマッハ10に達し、M16ライフルの弾丸より三倍速い。射程距離は供用中の爆発力利用砲の10倍に達する。高速度、質量運動エナジーの大きさのため発射体に爆発物を入れなくても十分な破壊効果を発生できる。

 

運動エナジーは大きく、非爆発性の発射体でもトマホークミサイルと同様の効果を発揮でき、軍艦を破壊できる。高速度ながら精度は三倍になり風の影響も受けない。

 

レイルガンの短所

 

これだけの威力を発揮するレイルガンが普及しないのは問題があるためだ。実際に多数の問題がある。まず、前に述べた電力消費の問題だ。今日でもこの兵器を稼働させる電力量の利用が困難だ。このため、今のところ応用範囲は電力量が確保できる軍艦等に限られている。

 

つぎに抵抗発熱の問題がある。レイル表面が熱で損傷を受けかねない。機関銃でも発熱が当初から問題視され、初期には水冷式構造も考案されたが、のちに銃身の交換が有効と目されるようになった。冷却方法がいろいろ模索されているが、連続発射すれば本体が損傷を受けるような兵器では軍も採用できない。

 

最後に残る問題は大電流で深刻な疲労破裂が生じることで試作型も数回の発射で使えなくなる。

 

ただしこうした問題によりレイルガン研究が中止になっているわけではない。事実はその逆で、米海軍が導入を検討する中、中国は実用型レイルガンの運用に近づいている。この場合、毎分の発射回数を10回程度に抑えてもかまわないとする。

艦載砲としてレイルガンの発射回数は従来型砲より少なくなるが、精度は上がり、破壊効果ははるかに大きくなる。このためかつては夢の世界の話だった構想の研究に期待が寄せられているのだ。■

 

この記事は以下を再構成したものです。

 

Naval Railguns: A Far-Off Dream or a Super Gun?

November 4, 2020  Topic: Security  Blog Brand: The Reboot  Tags: RailgunInnovationMilitaryDirected Energy Weapons

by Peter Suciu

 

Peter Suciu is a Michigan-based writer who has contributed to more than four dozen magazines, newspapers and websites. He is the author of several books on military headgear including A Gallery of Military Headdress, which is available on Amazon.com. This article first appeared earlier this year.