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2022年1月3日月曜日

冷戦時代の遺物Tu-160ブラックジャックの本当の戦力は? 時代に取り残されつつある巨大機をロシアが今後も維持できるのか注目

  

Russian Tu-160 Bomber. Image Credit: Creative Commons.

 

衛アナリストが苦労するのは敵側の装備品の能力と限界の把握だ。推測や仮定を相手国の装備品に当てはめるのはさして難しくないのだが、相手国装備品が秘密のベールに覆われていたり、宣伝工作が強いと性能や効果を実際以上に評価しがちだ。

ロシア軍事産業専門誌にTu-160「ブラックジャック」戦略核爆撃機に関し興味深い記事が出た。ロシア流の視点で戦略核抑止航空兵力が直面する課題をまとめている。

著者はアンドレ・ゴルバチェフスキAndrey Gorbachevskiyで記事への批判にこたえ続編も発表している。レーダー専門家で1980年代から防空技術開発に携わっている。

今回の記事からロシアの核抑止力の優先順位について異論があるのがわかり、かつロシアから見て北米の防空体制がどう映っているかもわかる。

Tu-160 ブラックジャックは絶滅を待つ恐竜なのか

ツボレフTu-160(NATOコードネーム「ブラックジャック」は大型可変翼爆撃機でマッハ2飛行が可能で亜音速巡航で長距離飛行が可能だ。ブラックジャックが供用開始したのは冷戦末期で、ロシアは同型機の生産再開に巨額予算を投じ、現在16機ないし17機が飛行可能となっている。

Tu-160の主任務は長距離核巡航ミサイルを発射し米国内の重要標的を攻撃することで、ロシアの地上配備核兵力が敵の先制攻撃で破壊された場合に世界規模での「第二波攻撃」を実施することにある。さらにTu-160には米海軍空母打撃群撃破の任務もある。

ゴルバチェフスキの記事は21億ドル相当を投じ近代化改修したTu-160M2爆撃機を10機追加生産するとのロシア政府発表を受け出たものだ。これは常軌を逸しているとし、特に供用期間を通じ高運用コストを指摘している。

レーダー断面積が10から15平方メートルに及ぶことから「電子戦装備があるといってもTu-160のように大きな存在を隠せない」と言い切っている。

Tu-160M2は新鋭電子戦装備を搭載しているが、ゴルバチェフスキは今日のアクティブ電子スキャンアレイ(AESA)レーダーに対抗するには搭載する1980年代製バイカル・ジャマーの出力は10倍以上に強化する必要があると試算している。そのためには機内発電容量を増やし、当然重量増に対応することになる。

ゴルバチェフスキはTu-160は小型の米B-1Bに劣ると主張し、ソ連時代の設計のTu-160は超音速ダッシュ飛行が可能だが、B-1BのRCSはずっと小さいと指摘。

Tu-160 Bomber. This file comes from http://vitalykuzmin.net

Tu-160. Image: Creative Commons.

 

「大部分の飛行を亜音速とする戦略爆撃機が高度10千メートルで飛ぶ場合、Tu-160が最高速度マッハ2.05を使うのは全行程の1%未満だろう。最高速度モードを使うのは敵戦闘機の追尾を振り切るときだけのはずだ」

北極越え攻撃も楽ではない

ではロシアはTu-160の核攻撃ミッションをどんな想定なのか。ゴルバチェフスキは大西洋上空を西方へ向かうのは非実用的とする。NATOの監視体制や米沿岸をカバーするレーダー網のためだ。太平洋方面に飛ばせば、運用基地の選択の幅が狭いが、同時に出発地点近くに米軍基地が多数ある。

ヨーロッパでの通常兵器爆撃ミッションはどうか。これも実行不能とゴルバチェフスキは見る。「NATOレーダー網と迎撃戦闘機が充実しておりTu-160で侵入可能となるのは自軍戦闘機多数が援護する場合に限られ、かつ長距離防空体制が未整備の地点に限られる」

そうなると最も成功の可能性が高いのは北極圏越えルートだ。ただし、アラスカからカナダへ2,300マイルの中距離レーダー網がある。ゴルバチェフスキ記事ではDEWライン(遠距離早期警戒の意味)とあるが現在はNWS(北方警戒しシステム)に改称されている。

北方警戒システム

 

NWSを構成するのは強力なAN/FPS-117フェイズドアレイレーダー15か所(有効範囲287マイル、高度100千フィート)で、その他AN/FPS-124レーダー(39か所、70マイル、49千フィート)がAN/FPS-117の隙間を補完している。

ゴルバチェフスキはこう述べている。「Tu-160でこの警戒網を探知されずに突破するのは高高度でも低高度でも不可能だ。DEWラインのレーダー数か所を破壊しその隙間から侵入しても、防衛側は迎撃戦闘機を即座に発進させる。同様に電子戦装備で各レーダーを制圧しても同じだ。そのため、Tu-160は巡航ミサイルをDEWライン手前100から400マイルで発射して、探知されずに基地に戻るだろう」

ワシントンDCはNWSから4,000キロ離れている。Kh-102巡航ミサイルの有効射程5,000キロでTu-160の探知問題を回避できるのだろうか。

ゴルバチェフスキはそううまくいかないとする。たしかにKh-102超低空巡航ミサイルのレーダー断面積は1平方メートルにすぎず、20-40キロに接近して初めて探知可能となる。だがこれだけでは十分ではない。

「地形を利用して巡航ミサイルがDEWラインをすり抜けたとしよう。ミサイル一本二本程度でもAWACS機が離陸し、戦闘機を誘導すれば残りのミサイルも見つかってしまう。さらに巡航ミサイルには中央、南方にも早期警戒レーダー網が待ち構える」

E-3セントリーAWACSは低空飛行する巡航ミサイルの探知も100キロ離れていても可能だとゴルバチェフスキは指摘する。

さらにE-3が誘導する米防空機材にはF-16C/Dがあろ。APG-83SABRレーダーを搭載し巡航ミサイル探知能力を強化している。またF-15C/F-15EXにはさらに強力なAPG-63(V)3 AESAレーダーがつき、400キロ先で爆撃機を探知できる。ゴルバチェフスキはカナダ北方の防衛にはF-15C二機編隊5あれば十分」とみている。

そこでゴルバチェフスキは「米国領土に接近すれば、さらにAWACSが離陸し、北方防空ラインを突破した巡航ミサイルも迎撃される。このため標的に到達するミサイルは数本に減る。ということで巡航ミサイルによる核攻撃には期待できない。多数が目標到達できず撃破されるだろう」

そこでICBMがロシアの核攻撃手段として優れている。米国のミサイル防衛能力は限定的で5ないし6発の迎撃しかできないとゴルバチェフスキは試算している。

とはいえ、米国筋は巡航ミサイルをここまでうまく迎撃できるか自信が持てない。米空軍はステルス性能が劣るB-52でAGM-86B核搭載巡航ミサイルを運用し、射程が「わずか」2,400キロしかなくても十分と自信を示しており、スタンドオフ攻撃は有効に実施できると見ている点を指摘しておこう。しかもロシアの防空体制に対空ミサイル多数と超高速MiG-31迎撃機が展開する中での話だ。

地理条件と性能が自信の裏付けだ。まずNWSレーダーがアラスカからカナダに広がり、米本土攻撃にバッファーとなっている。ロシア爆撃機は春か遠方で攻撃兵器発射を迫られる。さらに米空軍は航空優勢の確保は可能で、非ステルス爆撃機の攻撃は排除できると考えている。さらに米国も核搭載ステルス巡航ミサイルLRSOを開発中でロシア防空体制突破を狙っている。

米空母を狙えるか

Tu-160の二次的任務にKh-15対艦弾道ミサイル(射程187マイル、マッハ5)を最大24発搭載し長距離洋上攻撃がある。だが、ゴルバチェフスキはKh-15でなく、低速低空対艦巡航ミサイルの使用を想定している。

ここでもTu-160では米空母任務群の攻撃が成功する可能性は高くないと見ている。防空体制が多層構造になっており、スーパーホーネット戦闘機、E-2Dホークアイ早期警戒機さらに護衛に当たるアーレイ・バーク級駆逐艦が対空ミサイルを発射し、強力なレーダーで接近を拒むためだ。

ホークアイを前方に配備すれば、Tu-160は500マイル先で探知されるとゴルバチェフスキは試算し、一方でTu-160が空母を探知可能となるのは250マイル地点でこれはスーパーホーネット戦闘機の戦闘航空哨戒半径(CAP)内に入る。

CAPがない場合でも護衛艦艇の電子攻撃のためTu-160はもっと前進しないと標的のロックができず、空母がミサイルシーカーの「キルボックス」外へ出てしまう可能性もある。

ゴルバチェフスキは改修してもTu-160M2の生存性は大きく変わっておらず、ステルス性能を大きく変えておらず、エンジン空気取り入れ口にも手を加えておらず、レーダー波吸収剤を施してもレーダー断面積は大きく減っていないと見る。

さらにその後出た反論記事でゴルバチェフスキはロシアはステルス爆撃機(PAK-DA)を開発する、あるいは既存戦略爆撃機の廃止を主張している。新造のTu-160については「第三次世界大戦に参戦可能な機体は平時や局地戦で有効な機体と異なるはずだ」と述べている。■

Russia's Tu-160 Bomber: Can It Strike America or Sink an Aircraft Carrier? - 19FortyFive

BySebastian RoblinPublished2 days ago

WRITTEN BYSebastian Roblin

Sébastien Roblin writes on the technical, historical, and political aspects of international security and conflict for publications including the 19FortyFive, The National Interest, NBC News, Forbes.com, and War is Boring. He holds a Master’s degree from Georgetown University and served with the Peace Corps in China.  


2018年1月9日火曜日

Tu-160M2の初飛行は今月中(ロシア副首相)

First test flight of upgraded Tu-160M2 bomber scheduled for January, says deputy PM

改修型Tu-160M2爆撃機の初飛行は1月中に実施、ロシア副首相

The Russian Defense Ministry reported earlier that the serial production of Tu-160M2 bombers should begin in 2023

ロシア国防省はTu-160M2爆撃機は2023年量産開始と述べる
 January 05, 22:06UTC+3



MOSCOW, January 5. /TASS/ ロシアの性能向上型ツボレフTu-160M2戦略爆撃機は2018年1月に予定より早く初飛行に臨む。ドミトリ・ロゴジン Dmitry Rogozin 副首相が1月5日に述べた。
「ツポレフ設計局が同機飛行開始を早期に実現できると約束し、1月末だという」と副首相はフェイスブックで述べていた。
11月にウラジミール・プーチン大統領との打ち合わせでロゴジンは初飛行を二月予定と述べていた。
ロシア国防省はTu-160M2爆撃機の量産は2023年に開始と述べていた。ロシア航空宇宙軍は50機未満の調達に終わる見込みだ。

Tu-160はソ連時代に生まれた戦略ミサイル母機で巡航ミサイルに核弾頭を装着する。Tu-95MSもミサイル母機として減益だが、Tu-160を併用して地上配備ミサイル、潜水艦とともにロシア戦略核部隊を構成する。■

2017年11月19日日曜日

Tu-160新型M2がロールアウト、ただし調達はスムーズに進まない模様


Russia Rolls Out New Tu-160M2, But Are Moscow's Bomber Ambitions Realistic?

ロシアがTu-160M2をロースアウトしたが戦略爆撃機整備計画は現実に即しているのか

Despite budget cuts and other issues, the Kremlin remains optimistic that flight testing will begin within months. 

予算削減他にもかかわらずクレムリンはフライトテスト開始は数か月以内と楽観的

UAC
BY JOSEPH TREVITHICKNOVEMBER 16, 2017

ロシア合同航空機企業(UAC)が同社カザン工場で改良型Tu-160M2試作1号機をロールアウトした。ロシア空軍は同機をTu-95MSと並ぶ戦略核攻撃力の柱と見るが、予算不足、産業基盤の弱体化他で装備近代化は簡単にいかないだろう。
  • 2017年11月16日、ロールアウトと同時にロシアの副首相ドミトリ・ロゴジン Dmitry Rogozin は2018年にフライトテストを開始、低率初期生産はその翌年に開始し、2023年から連続引き渡しすると発表。その時点でUACは年間2-3機を引き渡す。クレムリンは2015年にブラックジャック生産ライン再開を発表していた。
  • Tu-160Mと比べてTu-160M2の改良内容の全体像がわからないが、ロシア関係者はM2は従来型Tu-160と部品点数ほぼ6割が共通と説明していた。
  • M2が完全新規製造機なのかも不明だ。UACでは試作機は既存機を改装したものと認めるが、ロシア軍は最低50機調達したいとしており、Tu-160Mの生産機数はわずか16機だ。
  • UAC公表の試作一号機の写真を見ると機体大部分は大きな違いはないようだ。ソ連時代のTu-160はロシア愛称がBeliy Lebed (白鳥)であり、1970年代に開発開始し、初飛行は1981年だった。2015年まで実戦投入されなかったが、同年にシリア国内に向け巡航ミサイルを発射している。
  • M2はエンジンをNK-32 02シリーズに一新したと伝えられる。NK-32原型は最高強力な低バイパス比ターボファンエンジンであり、アフターバーナーで55千ポンドの推力を出す。これに対してB-1爆撃機のジェネラルエレクトリックF101の推力はアフターバーナーを作動させて31千ポンドだ。ただしTu-160は機体サイズがB-1より大きい。
  • エンジンメーカー合同エンジン企業(UEC)によれば02シリーズでは大幅に効率が改良されTu-160M2は燃料比率が向上しており、航続距離は600マイルも伸びた。同じエンジンはロシアのステルス戦闘機PAK-DAにも使われている。エンジンテストは2017年10月に始まったばかりだがM2試作一号機に同エンジンが搭載されているかは不明だ。
  • さらにロシアによればTu-160Mからエイビオニクスを刷新している。M型でも改良があったが、UACは完全デジタル「グラスコックピット」だとほのめかしている。
ALEX BELTYUKOV VIA WIKIMEDIA
Tu-160ブラックジャック原型のコックピット
  • 2017年6月に無線電子技術集団(ロシア名KRET)の第一副CEOウラジミール・ミヘイエフ Vladimir MikheyevがTu-160M2に新型電子装備が搭載されるとTASS通信に伝えていた。国営企業の同社は無線、航法、レーダー、情報収集機器を軍民双方に提供している。
  • ミヘイエフによれば新型ブラックジャックには慣性航法装置と天測航法装置が搭載されるという。注目したいのは後者でGPSに相当するGLONASS衛星航法が攻撃を受けたり機能しない場合の予備となる点だ。ロシア軍はGPS衛星の攻撃妨害手段を開発中で自軍への損害も想定している。
  • ロシア報道によればTu-160M2には電子スキャンアレイレーダー(AESA)も搭載される。乗員は危険となる脅威対象を長距離で正確に探知できるようになる。
UAC
UACカザン工場でのTu-160M2
  • もっと重要なのは白鳥が強力な防御手段を搭載することで、KRET幹部は「あらゆる形式のミサイルから防御」すると言っている。ミヘイエフもTASSも共にこの点について語っていないが可能性はある。
VLADIMIR RODIONOV/AFP/GETTY IMAGES
プーチン大統領が2005年にTu-160に搭乗したことは広く宣伝された。 白鳥はロシアの誇りの象徴として見られている。
  • 防御装備の詳細は不明だが、Tu-160M2がどこかの段階で「ハードキル」と呼ぶミサイルを物理的に破壊する手段を搭載するといわれる。2017年6月にノースロップ・グラマンがそのような装備の特許を申請している。新型の白鳥には各種防御装備を共通センサーを中心に搭載し、爆撃機の防御を多層構造で実現するのだろう。
  • Tu-160M2は旧型Tu-160M同様の戦略核・通常ミッションを実施するとロシア関係者は述べている。ただしM2は低視認性がないため、長距離空中発射式Kh-101、核弾頭付きKh-102巡航ミサイルでスタンドオフ攻撃し、敵の統合防空体制を回避するはずだ。
  • クレムリンは最低50機調達したいと言っているが、ここに試作機、旧型からの転換機が含まれるか不明だ。UACに未完成機が何機あるか不明で保管中の機体状況も不明だ。
  • ソ連時代にツボレフ(現UAC傘下)がTu-160を35機生産し、うち19機がソ連崩壊でウクライナに残った。このうち8機が2000年代にウクライナの債務支払い分としてロシアが回収したがスクラップ処分されたようだ。現在作戦行動可能なのは16機で、稼働していなかった8機がTu-160M2仕様に改装用に使える。
  • ただしUACが新規製造の再開を避けるのであれば26機を集めなければならないことになる。生産再開となれば非常に高価になる。いずれにせよ同社が言うように2023年以降に年間2-3機を納入するのであれば全機がロシア空軍にそろうのに10年以上かかることになる。
  • ロシアでは原油価格低迷により国防事業削減が続いており、ウクライナ、シリア関連で制裁措置の効果が加わっている。
  • クレムリンはTu-160M2の実現でPAK DAステルス爆撃機開発の「再計画」つまり遅延させてもよいと決定している。後者についてUACから構想決定案は出ていない。
  • M2関連は既存Tu-160M16機の保守管理と並行し資源を取り合う状況になっている。そロシア石油大富豪の希望で白鳥の一機を超高速プライベートジェットに転用する余裕などない。
MAKSIM BOGODVID/SPUTNIK VIA AP
UACカザン工場で16機残るTu-160Mの一機が大修理に入っている。
  • Tu-160M2の新規生産が開始されればPAK DAの実現が遠のく。新規製造にせよ改装にせよ新仕様の白鳥はロシア戦略兵力が完全新型機のステルス爆撃機を製造するより近道なのは明らかだ。
  • M2改修化がすでに遅延しているのは明らかで2016年にロシア空軍トップのヴィクトル・ボンダレフ上級大将Colonel General Viktor BondarevがRIAノーボスチ通信に本格生産は2021年開始と述べており、現在の2023年見通しと食い違っている。
PHOTO BY MARINA LYSTSEVA\TASS VIA GETTY IMAGES
  • 2017年11月にロゴジン副首相はプーチン大統領にTu-160M2フライトテストが2018年2月開始と報告していたが、本人はTASS通信には「見込み」と語っていた。
  • ただしブラックジャック50機を運用する際の総経費は意識されていないようだ。現在のロシア空軍のTu-160機数が三倍になるわけで、白鳥のうち何機が常時作戦可能状態になるのか不明だ。
  • ロシア当局は戦略爆撃機の近代化改修を高優先国防事業にしているが、それだけで機体が予定通り実現して期待通りの性能が全部実現するわけではない。■
Contact the author: jtrevithickpr@gmail.com

2016年8月6日土曜日

★★生産再開するTu-160M2ブラックジャックのここに注目



The National Interest

What Makes Russia’s New Tu-160M2 Blackjack Supersonic Bomber Special

August 4, 2016


ロシアの新型ツボレフTu-160M2ブラックジャック超音速戦略爆撃機が2018年末に初飛行する見込みで、本格生産が2021年に始まる。原型たるブラックジャックは少数生産のままソ連崩壊の1991年で生産終了していた。
  1. Tu-160M2初号機は2018年末に初飛行し本生産は2021年開始の見込み』とヴィクトール・ボンダレフ上級大将が国営通信RIAノーヴォスティで語っている
  2. 今回の大日程はこれまでのロシア政府発表と微妙に異なり、以前は初飛行2019年、本生産開始は2023年としていた。現下の経済情勢でロシア政府が予算を確保したことから同機がロシア戦略爆撃機の中核とみなされていることがわかる。
  3. Tu-160M2は全く別の機体と言ってよい。新型機のミッションシステムは更新されエンジンはクズネツォフNK-32アフターバーナー付きターボファンの性能改修型だ。ロシアは同型機をおよそ50機調達するとしているが、原型のTu-160が16機あり、これも改修を受けるかは不明。
  4. ロシア空軍の用兵思想は米空軍と異なり、敵防空網突破を大々的に行うことは想定していない。Tu-160はマッハ2でスタンドオフ兵器の発射地点へ急行する。ステルス性は重視されていない。
  5. だがTu-160M2は長く供用中のTu-95ベアを更新機体にならないようだ。両機種は今後も併用される。「B-52HとB-1Bのように共存するでしょう」とマイケル・カフマン(CNAコーポレーション、ロシア軍事問題研究員)は述べる。「それぞれ代替できない機種で、Tu-160がTu-95の後継機種という説には納得できませんね」
  6. そうなるとB-52同様にTu-95も今後も長く供用されそうだ。「Tu-95の完全退役は20年ほど先でしょう。パイロン改修でKh-101/102ミサイルの運用能力が生まれたのは今後も供用する意向を示しています」(コフマン)
  7. ロシア空軍には同機のペイロードに意味がある。ステルスミサイルのKh-101はシリアで実証ずみで、核弾頭付きKh-102はともに防空体制の整備された敵領空に進入する能力があり、爆撃機は遠隔地で発射すればよい。両ミサイルの射程は1,800マイル以上でロシア戦略爆撃隊の主要装備になるだろう。
  8. ツボレフには新型PAK-DAステルス爆撃機もあるが、機体が姿を表わすのはまだ先のことだ。「ロシアは新型機の公表を好みますが、実現しなくても希望的観測でしかも財政的に厳しい時でも公表するようですね」とコフマンは先に語っていた。
Dave Majumdar is the defense editor for the National Interest. You can follow him on Twitter: @davemajumdar.

Image: Creative Commons.