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2025年7月17日木曜日

海軍航空:次の50年に備える(USNI Proceedings) — 米海軍の提督によるエッセイですが、F/A-XXの実現が難航し、新型空母建造も遅れ気味の今日は早くもスタートで躓いているようにしか見えないのですが

 The Navy’s newest aircraft carrier, the USS Gerald R. Ford (CVN-78), underway in the Atlantic in November 2024. The Ford and her sister ships are designed to last until 2075 and beyond.

米海軍の最新航空母艦、USSジェラルド・R・フォード(CVN-78)が2024年11月、大西洋で航行中。フォード級航空母艦は2075年以降も運用を継続する設計となっている。米海軍(マックスウェル・オルロスキー)


エッセイコンテスト受賞作


海軍航空:次の50年に備える(USNI Proceedings)



アメリカ海軍ダン・“アンドラ”・チバー中将Vice Admiral Dan “Undra” Cheever, U.S. Navy


2025年7月 プロシーディングス 第151巻/7号、1,469ページ


在、海軍航空には世界中で高い需要があり、今後数十年にわたりその需要は続くでだろう。あらゆる分野での技術進歩により、米海軍の空母打撃群は必要な時と場所で継続して運用されるだろう。実際、現在建造中の航空母艦(将来のUSSジョン・F・ケネディ[CVN-79]、エンタープライズ[CVN-80]、ドリス・ミラー[CVN-81])は2075年以降も運用を継続する設計で、航空母艦とその航空団を運用する技術は、第5世代および第6世代戦闘機や協働戦闘機の導入、有人/無人チームの拡大に伴い、さらに進化を遂げていくだろう。人工知能(AI)、量子計算、指向性エナジー、超音速兵器など新技術は、不可欠で機動性の高い航空基地が、今後数十年にわたり戦闘において抑止し、対応し、勝利を収めることを可能にする。


空母打撃群(CSG)と海軍航空遠征部隊(P-8ポセイドン、MQ-4トライトン、MH-53Eシードラゴン、E-6Bマーキュリー)は、強固で柔軟な抑止力と戦闘力を提供する。CSGは、世界各地で迅速に機動できる主権的な米国領土となる。これが、中国が自国の空母を建造し、我が国の空母を標的とする理由だ。1 この主権は敵対国にジレンマを与え、米国指導部が危機を通じて平和的に対応する能力を提供する。


空母は筆者が最も好む戦闘任務だ。戦闘指揮官に7つの統合戦闘機能をすべて提供できる:移動/機動(高速)、持続(航空団用の大量の燃料に加え、部品と修理)、保護(統合打撃群)、火力(大量の火力)、情報、情報、指揮統制。


海軍の戦略は、即応資産、自律的なチーム編成、海上作戦センターからの戦闘、戦闘員の能力向上を重視している。海軍航空はこれらの目標と一致しており、航空母艦、航空団、遠征部隊は海上支配のための攻撃火力と空中優位性を提供する。


戦闘は常にリスクを伴う任務だが、敵を出し抜き、技術と戦術の向上により戦闘と勝利の条件を創造することが我々の任務だ。多くの人が敵のアクセス拒否/領域拒否脅威を懸念しているが、拡大する武器交戦区域内でますます致命的な脅威と対峙することは新しいことではない。航空と航空母艦の登場以来、単に生存するだけでなく、その範囲内で戦闘に勝つ方法を確立してきた。現在の努力は、新たな課題に迅速に適応しつつ、常に一歩先を行くことを目的としている。海軍航空は決して休まず、決して諦めず、新たな脅威が国家が必要とする時と場所で活動するのを妨げさせない。


An F-35C Lightning II from Strike Fighter Squadron 97 launches from the flight deck of the USS Carl Vinson (CVN-70) during operations in the Central Command area of responsibility earlier this year. 中央軍司令部管轄区域での作戦中、USSカール・ヴィンソン(CVN-70)の飛行甲板から第97戦闘機中隊のF-35CライトニングIIが離陸する。(米国海軍)


2025年


過去18ヶ月以上、5つの米海軍空母打撃群(CSG)が中央軍司令部管轄区域で展開し戦闘に従事してきた。各CSGは展開期間を延長し、柔軟性と機動力を見せた。各CSGは、フーシ派の弾道ミサイル、巡航ミサイル、無人システムによる攻撃から防衛しつつ、同時にフーシ派の指揮統制能力と対艦能力を攻撃する任務を遂行した。任務遂行中のCSGは必要な際に他の地域で同盟国を支援するため展開を調整してきた。


現在、第17航空団を搭載したUSSニミッツ(CVN-68)がインド太平洋地域に展開中だ。海軍で最古参の現役空母ニミッツは、この展開においてF/A-18ブロックIIIやE-2Dアドバンスト・ホークアイなど、最新鋭の能力の一部を搭載している。


最新鋭の空母USSジェラルド・R・フォード(CVN-79)は、ニミッツ級よりも少ない乗組員でより大きな容量と能力を備えている。さらに、フォード級は第6世代戦闘機、将来の兵器、高度な電子戦・情報戦能力を統合するため、追加のスペース、重量、動力システムを設計段階で組み込んでいる。


数ヶ月前、筆者はヴァージニア州沖でフォード級に離着艦する機会を得て、その性能に感銘を受けた。同艦は既に1回展開しており、次の任務に備えている。ニミッツ級が時代と共に適応してきたように、フォード級も同様の進化を遂げ、数十年にわたり現役を続けるだろう。


航空機と兵器


Sailors maneuver an MQ-25 Stingray unmanned air vehicle on the flight deck of the USS George H. W. Bush (CVN-77). Designed to take on the air wing mission- and recovery-tanker roles with the ability to give 15,000 pounds of fuel 500 nautical miles from the carrier, the Stingray will enter initial flight testing this year.

USSジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77)の飛行甲板で、水兵たちがMQ-25スティンレイ無人航空機を動かしている。スティンレイは、航空団の任務とタンカーの役割を担い、空母から500海里離れた地点で15,000ポンドの燃料を供給する能力を有し、今年中に初飛行試験を開始する。(米国海軍/ブランドン・ロバーソン)


空母が供用期間を通じ適応と改良を重ねるように、航空機と兵器も継続的に改善する必要がある。最初のF/A-18Aが艦隊に配備されてから40年以上が経過している。現在のF/A-18E/F型は初期のホーネットに似ているが、ステルス性能が向上し、航続距離、センサー、状況認識能力、電磁戦能力が強化され、搭載能力が50%増加した。当軍の第5世代攻撃戦闘機F-35Cは現在、3個航空団に配備されており、毎年新たな中隊が追加されている。6世代戦闘機F/A-XXは、2030年代の後半に現在のスーパーホーネットと交代し、今後数十年にわたり、空の優位性と海上通信路の確保に不可欠な役割を果たすだろう。


今年最も重要な新能力は、MQ-25スティングレイ無人給油機だ。空母から500海里の距離でF/A-18とF-35に最大15,000ポンドの燃料を補給できるスティンレイは、今年中に飛行試験を実施するこの機体はスーパーホーネットを給油任務から解放し、将来的には他の任務も担うことになる。


武器面で過去1年間で最も注目されたニュースは、AIM-174B Gunslinger長距離空対空ミサイルの公開だ。Standard Missile-6(SM-6)の空対空発射型であるこの武器は、スーパーホーネットに敵戦闘機を「アウトスティック」し、武器交戦区域内で作戦を行う能力を与える。


人員


水兵は、航空機の操縦、指揮、維持、システムトラブルシューティング、弾薬の搭載など、主要任務に集中する必要がある。彼らはこれらの任務を行うために海軍に入隊し、これらの任務に集中できると、職務満足度と定着率が最も高くなる。このため、リーダーはミッションと職務への集中を妨げる障害、大小を問わず、徹底的に排除する努力を継続する必要がある。私たちは、不要な要素を排除し、訓練を戦闘と準備に集中させている。


安全は戦闘と人員の準備の重要な原則であり、海軍航空部隊は最近、事故率50%削減の安全目標を設定した。この目標を達成することで、人員の負傷と航空機の損傷を減少させ、準備態勢を向上させます。また、不要なコストを削減し、プラットフォームの準備態勢を改善する。


訓練


高度な戦闘任務への準備には、絶え間ない努力が必要だ。TOPGUNは、規律ある準備が不可欠な要素であることを教えてくれた。過去20年間にわたり武器戦術教官(WTI)プログラムを、すべての機種/モデル/シリーズを網羅するよう拡大してきた。1968年にTOPGUNで始まった戦術的卓越性は、現在、Growler、Sea Strike、海上哨戒部隊において同様の成果を上げている。各コミュニティには独自のWTIプログラムと武器学校があり、次世代の戦術専門家を育成し、現在の戦術を磨き続け、未来の戦術を創造している。


現在、ファロン・レンジ・トレーニング・コンプレックスでは、実戦、仮想、構築型訓練を組み合わせ、最も致命的な脅威に対する高度な戦闘任務に備えている。空母航空団は、連合軍や同盟軍と統合され、優位性を維持・拡大するための訓練を実施している。


筆者は1996年にミラマーからファロンに移り、海軍ストライクと航空戦センター(NSAWC)の一員としてTOPGUNが移転した際にファロンに赴任した。現在、フォールンにはNSAWCの後継機関である海軍航空戦開発センター(NAWDC)、TOPGUNの親組織であるSTRIKE、空母AEW武器学校、シーホーク武器学校、海上ISR学校、および合同終末航空管制学校が所在している。ここが、航空団がチームとして結集する前に中隊に高度な訓練を提供する専門家となるWTIが訓練を受ける場所だ。彼らの訓練と人間関係は、海軍航空の戦闘能力の要だ。WTIはシステム、プラットフォーム、武器、領域、目標を深く理解し、それらを統合する。この文化は、才能があり情熱と個性を持つ戦士を育みつつ、謙虚で親しみやすく、信頼できる人物を育てる。


NAWDCは、開発と運用テストチームと協力して、艦隊に新たな能力を導入しつつ、学習が迅速かつ共有されるように努めている。NAWDCとメリーランド州パタクセント・リバーの海軍航空システム司令部は、複雑な新問題をリアルタイムで解決するため協力している。例えば、昨年、IKE打撃群が紅海での戦闘作戦でF/A-18スーパーホーネットにAIM-9Xをさらに搭載する必要が生じた際、NAWDCとNAVAIRは迅速に連携し、実現可能性を評価、実射試験を含む「マーダー・ホーネット」構成のテストを実施し、空母運用承認を2週間以内に取得した。


筆者はファロンで3度の勤務を経験した:若手士官、指揮官/艦長、そしてNAWDC司令官として。その文化は、最悪の状況でも適応し、状況を把握し、適切な判断を下せる意思決定者を育成する。これはCSGが紅海で示したように、実戦で能力を証明している。


Recent carrier strike group operations against the Houthis in the Red Sea have proven the ability to project combat power from within an adversary’s weapons engagement zone. Here, elements of the IKE Strike Group and two Italian Navy ships sail in the Red Sea in June 2024.

紅海でのフーシ派に対する空母打撃群の最近の作戦は、敵の武器射程圏内から戦闘力を投射する能力を証明した。2024年6月、紅海を航行するIKE打撃群の部隊とイタリア海軍の2隻の艦船。(米国海軍)


2050年


2050年までに、状況は大きく変化するだろう。敵の武器の射程、速度、効果は継続的に向上するが、敗北できないシステムは存在しない。キルチェーンの早期段階で敵を撃破するほど、効果は高まる。米海軍と統合部隊の統合航空・ミサイル防衛システムは世界最高水準だ。空母打撃群は過去1年半で、フーシ派のドローン、巡航ミサイル、弾道ミサイル数百発に対し圧倒的な戦果を挙げている。フーシ派は中国ほど能力はないが、海軍航空部隊は数ヶ月間にわたり、彼らの武器交戦区域と紅海の狭い海域で戦闘を繰り広げ、機動力と適応性を示した。


今後数十年間で多くの脅威—そしてより高度な脅威—が現れるだろう。根本的な質問は、2050年に航空母艦が高性能な戦闘で生存できるかだ。その答えを「はい」とするためには、戦術的・技術的な継続的なイノベーションが不可欠だ。


2050年の宇宙とサイバー領域に関し2つの大きな質問がある:これらの領域では攻撃か防御のどちらがより強力になるだろうか?航空母艦は、宇宙とサイバー領域と完全に接続し、その中で戦う空間、動力、冷却能力を備えている。筆者は、2050年代半ばまでに航空母艦で最も画期的な新能力の一部が、宇宙とサイバー領域で実現されると予測している。


25年後、航空母艦の主要な戦力は、第4世代、第5世代、第6世代の攻撃戦闘機の混合編成であり、有人/無人チームングによって強化される。今後数年間は、連携型戦闘機の可能性が明らかになり、航空母艦からのMQ-25の展開は学習とイノベーションのペースを加速させるだろう。将来の航空機のうち、有人と無人機の割合を予測するのは困難だが、有人航空機は一定レベルで必要とされるだろう。特に平時や危機対応で不可欠だ。適切なバランスを見つけるためには、技術成熟度、確実な通信接続、指揮官の信頼が鍵となる。


ロシアのウクライナ侵攻は、小型無人航空システム(UAS)の脅威がますます深刻化し、射程が拡大する可能性を示している。ただし、小型UASは射程が限られ、航空母艦が活動する領域に到達することは一般に不可能だ。しかし、より大きな搭載量と長射程を有する無人システムは増加し、広く普及しつつある。したがって、これらの脅威を撃破する方法を開発し、自ら配備する必要がある。

 

2050年の戦闘に備え、海軍が若き戦士を訓練する方法でも加速が不可欠だ。現在の水兵や若手士官は賢く、学習が速い。彼らは世界水準の教育を求めており、挑戦的で迅速に熟練できるプログラムを望んでいる。拡張現実ゴーグルなど新技術が既に訓練を加速させており、2050年までにさらに成熟していくだろう。


アディティブ・マニュファクチャリング(3Dプリンティング)は、修理コストの削減と物流チェーンの短縮に不可欠な技術だ。現在、ポリマー製部品の製造には適しているが、海軍は金属部品、特に飛行安全に不可欠な部品を海上での製造と追加テストなしで飛行可能な3Dプリンターを必要としている。これが前線での持続可能性を実現する。

 

海軍航空隊は人工知能(AI)を活用し、ばらつきを排除し、より忠実でタイムクリティカルな情報をリーダーに提供することで、意思決定を後押しする予測分析を実現しようとしている。初期のアプリケーションはすでに実用化されており、このようなツールを拡大することで、即応性と致死性を高め、コストを削減することができる。 AIは意思決定の補助を提供し、膨大なデータを理解し、十分な情報に基づいた意思決定を行うのに役立つ。 人間が生死に関わる重要な決断を下すことは今後も変わらないが、超音速や極超音速の脅威に対しては、機械のスピードに補強された人間の意思決定が必要となる。


2075年


50年先の未来を予測することは、暗い夜に10マイル後方から空母を見ようとするようなものだ。未知の要素と可能性が数多く存在し、良いものも悪いものもある。しかし、一つだけ確信していることがある:海洋は、必要に応じて抑止力、危機対応、戦闘力を提供するため、依然として巡回監視が必要だ。海軍は、強さを通じて平和を確保するために海に出る必要がある。同盟国と協力して行動する必要がある。そして、航空母艦は、広大な海洋上空での制空権を確保するための主要なプラットフォームであり続けるだろう。   


2075年まで現在の傾向が続けば、中国は自国の航空母艦を保有し、その数は米国海軍と肩を並べる可能性もある。中国人民解放軍海軍は、航空母艦、潜水艦、高性能水上戦闘艦での運用経験を急速に蓄積している。一方、中国人民解放軍ロケット軍と空軍は新たな対艦ミサイルを配備している。50年後の脅威は海底から宇宙まで広がり、米国統合軍全体がより複雑な問題に直面することになる。私たちの任務は、その挑戦に対応し、先手を打つことで、この偉大な国家を守ることだ。


産業界との連携


これからの数十年が新たな脅威をもたらす中、産業界のパートナーが我々の成功の鍵となる。我々は競争を促進し、納税者が提供してくれた資金を賢く使わなければならないが、海軍が透明性を提供し、政府のみの会議を最小限に抑え、産業界と真実を共有することが極めて重要である。最も差し迫った問題を解決するには、強い関係と信頼に基づいた海軍と産業界のチームが必要だ。 産業界は、すぐにすべてを解決することはできないが、私たちの要求に応え、復旧スケジュールを実行してくれる。しかし、「パフォーム・トゥ・プラン」や「海軍維持システム-航空」などの問題解決に向けた取り組みによって、私たちは即応性を向上させ、すべての型式/機種/シリーズにわたって戦闘急行対応可能な戦力を構築してきた。


米海軍航空は第二次世界大戦以来、戦場でその価値を証明してきたが、油断は禁物だ。技術的、戦術的、運用的なイノベーションを継続し、世界一能力が高く致命的な存在であり続ける必要がある。■


1. ジム・ファネル大佐(退役)、米国海軍、「中国人民解放軍海軍の成熟:大型艦艇とそれ以上」、米国海軍研究所紀要、15


Naval Aviation: Preparing for the Next 50 Years

By Vice Admiral Dan “Undra” Cheever, U.S. Navy

July 2025 Proceedings Vol. 151/7/1,469

https://www.usni.org/magazines/proceedings/2025/july/naval-aviation-preparing-next-50-years



2016年12月10日土曜日

★機体喪失連続で露呈したロシア海軍の航空運用面の弱点



ロシア海軍のレベルが相当低いということですね。一隻しかない空母で象徴的な意味があるのですが、事故が立て続けに発生しロシアのプライドはガタガタですね。米海軍に張り合うのは無理ということですね。中国もこの事例を観察しているはず。沿海部限定で運用するのなら米国流の運用は必要ないのですが、遠洋航海させれば建造中の新型空母も同じ問題に直面するのではないでしょうか。


We go to war so you don’t have to
The Russian carrier ‘Admiral Kuznetsov’ escorted by the British Type 45 destroyer HMS ‘Dragon’ in 2014. Royal Navy photo

Two Big Reasons Why Russia’s Aircraft Carrier Is Having So Many Problems

Inadequate training and poor procedures

by DAVE MAJUMDAR
ロシア海軍はアドミラル・クズネツォフ艦上で艦載機二機を数週間のうちに連続喪失している。同艦はロシア唯一の空母だ。
  1. 両案件ともクズネツォフの機体回収拘束装置の不良が原因で、MiG-29KUBRフルクラムDとスホイSu-33フランカーDの喪失という高い代償になった。
  2. 確かに同艦の各種装置は旧式化しているがもっと大きな問題はロシア海軍の航空運用経験が浅く、洋上での航空機運用の技術が不十分なことだ。
  3. 先に発生したMiG-29KUBRの事故は11月14日のことで燃料切れで地中海に墜落した。同機は甲板要員が拘束ケーブルが切断したのを治そうとする間、上空で待機していた。
  4. ケーブルは別のMiG-29KRが先に着艦した際に切れた。
  5. 二回目の事故は12月5日に発生し、今度はSu-33だったがやはりケーブル切断が原因だった。
An Su-33 on ‘Admiral Kuznetsov’s’ deck in 1996. U.S. Navy photo
  1. 海軍航空部隊の運用では危険がつきものだが、ロシアの場合は経験不足に加え、運用技術が未成熟な点が問題だ。クズネツォフの構造にも原因があるが、安全運行の手順を整備してこなかったことが責められよう。
  2. クズネツォフは1990年12月就役の古い艦だが艦齢は問題ではない。米海軍の空母にはもっと長く供用されながら完璧に機能している艦が多数ある。ニミッツ、アイゼンハワー、カール・ビンソン、セオドア・ロウズヴェルト、リンカンはクズネツォフより前に就役している。
  3. さらにUSSエンタープライズは50年間も供用されたが、1962年の運用開始初日から航空機運用が可能だった。
  4. 米海軍が半世紀も空母運用できるのは各艦の状況を維持管理できるだけでなく乗員を効率的に訓練しているからだ。
  5. これに対しロシア海軍はソ連崩壊後の25年間もクズネツォフの維持管理ができていない。また乗組員も安全な洋上運用の技術習得ができていない。
  6. 米海軍の超大型空母でもケーブル切断は発生する。
  7. 記者の知己もUSSキティ・ホークで2005年にケーブル切断で危うく一命を落とすところだった。乗機F/A-18Fスーパーホーネットは海上に落下している。一方、艦上では切断ケーブルがのたうち回り大混乱となり、機体損傷と人員負傷が発生した。ケーブル切断で実被害が発生することは米海軍空母艦上ではまれなことだ。
  8. クズネツォフで三週間未満に事故二件が発生したのは重大な問題があることを示唆している。
  9. 「ケーブルの分離切断が発生すると負傷、死亡事故に至ることがある。ケーブルはどうしても切れるものでその場合は切断したケーブルを取り外し本数を減らしたまま運用する。きわめてまれな事故だが予防可能であり、一旦発生してしまえば重大な事態になる」と経験豊かな海軍パイロットが教えてくれた。
‘Admiral Kuznetsov’ with the British destroyer HMS ‘York’ in the background in 2011. U.K. Ministry of Defense photo
  1. 先に発生したMiG-29KUBRの喪失事故ではロシア指揮官の判断がまずかった。本来なら機体をシリア陸上基地に誘導すべきだった。
  2. 米海軍が沿岸近くで空母を運行する場合は緊急時の代替飛行場を先に指定し艦上回収ができない場合に備える。
  3. また給油用スーパーホーネットを滞空させて僚機の着艦用の燃料を確保している。クズネツォフには給油機がなく、給油用改装を施した機体もない。ロシアは代替飛行場を緊急用に確保しておくべきだった。
  4. 「空母が航空部隊の初回運用時は戦闘作戦能力(COE)評価に合格するまで代替戦力扱いのままだ。また空母でトラブルが発生すると代替戦力に分類される。たとえば原子炉が一基しか作動しない場合」と別の米海軍パイロットが教えてくれた。
  5. 「艦に問題があると固定翼機の着艦は危険になるので、代替運用に切り替え、200カイリぐらい以内なら別の飛行場に着陸させる」
  6. 米軍事力を世界各地に投射する有効な手段として米海軍は空母運用を安全に行える各種手順を準備して、陸上基地から遠くはなれた大洋の真っ只中で可能にした。
  7. そうなると米海軍を世界規模で作戦可能にしているのはハードウェアとしての艦の状態や艦齢だけではなさそうだ。乗組員への訓練の効果であり標準作業の中身が重要だ。ロシアが米海軍の水準に肩を並べるまでにはまだ相当の時間がかかるだろう。■


2016年8月1日月曜日

★★★米海軍の次世代戦闘機構想を妨害しているのはパイロット集団の閉鎖的思考だ

UCLASSなど革新的な無人機構想をことごとく廃案にしてきたのは海軍航空士官をトップとする組織内圧力団体であると判明しました。今回の記事の情報源はそのヒエラルキーに煮え湯を飲まされている向きなので多少割り引く必要がありますが、海軍の次期主力戦闘機がスーパーホーネットの焼き直しとなっては意味がありません。米海軍からステルス性重視はもうしないとの姿勢が示されていた背景にはこんな考えもあったのですね。そうなるとF-35Cを継子扱いするのもうなづけるところです。米空軍との共同開発など全く可能性がありません。


The National Interest



US Navy's Sixth-Generation F/A-XX Fighter: Just a 'Super' Super Hornet?

July 26, 2016


  1. 米海軍には2030年代以降の脅威環境の中で空母搭載戦闘機を運用構想で一貫した考えが欠乏しているようだ。National Interestが各種筋に聞いたところ海軍のF/A-XXでは接近阻止領域拒否A2/ADや新世代の敵側軍用機がいる中では対応できないことが判明した。その一方で海軍はF-35Cの効果には懐疑的なままだが、同機が時代の要求内容のほとんどに応える唯一の機体となる。
  2. 「将来の空に高性能地対空ミサイルのS-300やS-400が登場する予想の中で海軍航空兵力でこれまでの流れに固まった思考の先へ進む必要があるでしょう」と新アメリカ安全保障センターの国防戦略評価事業をまとめるジェリー・ヘンドリックスは述べている。
  3. 脅威は確かにあるが米海軍はロッキード・マーティンF-35C共用打撃戦闘機の空母配備は少数に留めて2030年代を迎える。海軍に近い筋の話では単発の同機の性能には海軍はもはや不安を感じていないが、ペンタゴンのN98航空戦部は海軍航空システムズ本部(NAVAIR)とともに同機の価格に高い懸念を示しているという。「あまりにも短絡的な見方だと思いますよ。価格水準が期待通りに下がっていないので気にしているのです」とその筋は語る。「新型機一個飛行隊は10機構成でホーネット飛行隊12機より少なくなるのは予算が足りないからだと言っています」
  4. ヘンドリックスによれば問題は単純だ。空母の予算項目が残っていても新型機が非常に高価になれば機体は多数導入できなくなる。「予算が増えない状況で追加の財源もないと機数を減らすしかないでしょう」
  5. F-35Cの機体価格が高いため、海軍もできることなら共用打撃戦闘機開発から抜けたいところだと消息筋も認める。理想的なのはF-35Cは避けて直接F/A-XX実用化を目指すことだ。「F-35Cが遅れればニーズに合わせて作れるF/A-XXが手に入ると海軍は考えている」と消息筋は語る。「だが今のところF/A-XXは絵に描いた餅で、しかもDOD(国防総省)上層部から却下されたのです」
  6. 外部専門家にはF/A-XXを超音速巡航、ブロードバンド全方位ステルスの第六世代戦闘機あるいは新型長距離無人ステルス爆撃機になるとの意見が多いが、海軍の考えるF/A-XXはもっと平凡だ。海軍はF/A-XXを有人機想定としてだけでなく、F/A-18E/Fと比べてもレーダー断面積、航続距離を除けば大きな性能差は想定していない。「海軍が目指すのはF/A-18そっくりの機体で若干きれいに近代化した機体です。スーパー・スーパーホーネットですね。S-300やS-400の配備地点では運用不可能です。RCSが対応していませんからね」
  7. この妙なF/A-XXコンセプトの背景にスーパーホーネットのパイロット、ウェポンズシステムズ士官の一団がF/A-18ロビー団体になっていることがある。「スーパーホーネット・ロビーは海軍航空隊の伝統を体現しているのです」と前の消息筋は語る。「ボーイングにも近く、結局ボーイング好みの設計に戻してしまうのです」
  8. 海軍の航空部門がDOD上層部のみならず海軍長官レイ・メイバスからも圧力を受けている理由に F/A-XX設計を極度に保守的に考えており、F-35Cより相当低い性能で想定している点があると消息筋は語る。国防総省特にロバート・ワーク副長官はメイバスとともに高性能の長距離ステルス爆撃機を想定していたのだが、スーパーホーネット・グループはこれが気に入らない。
  9. 同じ消息筋によればスーパーホーネット・グループはまず無人空母発進偵察攻撃機(UCLASS)構想を葬り去ったが消息筋は敵地奥深くまで侵攻できる無人機が出現すれば戦闘攻撃機部隊の地位が脅かされるためと解説した。「要は自分たちの地位を正当化しているのです」
  10. だが国防総省と海軍長官は繰り返し長距離攻撃能力整備の方向性えを示し、スティングレイ空母搭載自律給油機という隠れ蓑で結局実現することになった。「海軍航空部門は少なくとも二回、主張を拒絶されている。しかも同じ内容を提案して」と消息筋は語る。「F/A-XXはまるでスーパー・スーパーホーネットにしか見えません」
  11. 国防総省の反対意見を受けて海軍省は海軍航空戦力の将来像の決定をクリントンあるいはトランプ政権誕生後まで意図的に先送りしている。「現政権の任期が終われば予算割り当て増を期待し、F/A-XXを差し出すか、F-35の購入を終了して本当に海軍が欲しいものを手に入れるのではないか」と消息筋は述べる。
  12. その反面、空母航空隊主力は2030年代中盤まで第四世代のボーイングF/A-18E/Fスーパーホーネットのままだ。スーパーホーネットで2030年代の脅威環境に対応できるのかとの問いに海軍航空システムズ本部は「NAVAIRによる分析とNAWCが2030年代のA2/AD想定環境での課題、制約、作戦能力要求を定義しようといています。さらにOPNAVでは将来必要となる性能を優先順位付けしています」との声明文を送ってきた。「海軍は今後も空母航空部隊各機で必要な性能とともに敵装備の性能も併せて検討してロードマップ並びにフライトプランを作成し技術成熟化、導入、展開を目指し有効な戦力を2030年代でも確保します。NAVAIRはOPNAVと連携して機種別の将来投資計画を作成します。F/A-18、EA-18G、E-2C/D、JSFなどが対象です」
  13. ブライアン・マグラスはフェリーブリッジ・グループ海事コンサルタンシーの経営幹部で、空母航空隊は2030年でも現在と大差ない陣容にと述べており、少数のF-35Cが高度防空体制空域で飛行するのが違いと見る。「スーパーホーネットは今と大差ない任務についているでしょう。厳しい環境ではステルス攻撃機F-35Cの出番となり、航空隊はシステムとして機能する必要がありますので、グラウラー隊がジャミングでスーパーホーネット隊に活躍の機会を作るでしょう」「今後15年で精密長距離攻撃兵器が標準となるはずです。スーパーホーネットはスタンドオフ攻撃機になります」
  14. ブライアン・クラークは戦略予算評価センター(CSBA)の主任研究員で海軍統合火器管制対空(NIFC-CA)システムが2030年代以降の空母航空作戦でカギになると見ている。オプションの一つとして「F-35CあるいはBをステルスISR機材として投入しパッシブで敵目標を探り、安全なデータリンクでF/A-18E/Fの『ミサイルトラック』がスタンドオフ地点に待機しているところへ連絡する」ことがあるという。ただ「今日と同様にF/A-18E/FがE/A-18Gの保護の下にスタンドオフ兵器攻撃を行うこともあるが、F-35Cもジャミング機材として使えるだろう」と述べる。
  15. さらに海軍はMQ-21スティングレイ無人給油機を「ISR機材として標的情報を安全にデータリンクでF-35Cへ送り、F-35CはC2センターとして攻撃対象を各機に割り振ることもできるはず」とクラークは言う。もし海軍がF/A-XXをF/A-18E/F退役後の穴を埋める機材として見ているのであれば、スーパースーパーホーネットがNIFC-CAの仕様に適合した形になっていてはじめて意味が出てくる。NIFC-CAではE-2D高性能ホークアイからイージス巡洋艦駆逐艦まですべてを結ぶ。
  16. それでも問題は海軍が将来の空母航空部隊がA2/AD環境でどう戦うべきかの明確な答えをまだ準備していないことだと消息筋はいう。「海軍航空部門は長期的な視野で考えることを拒否し、脅威環境も同様に考えていないのです」と消息筋は述べ、「もう将来の脅威環境ではないですよ。現在の脅威環境です。もしロシアがA2/ADのバブルをシリアに広げたら、もしS-400をシリアに投入したら、F/A-18ホーネットでは対抗できなくなります。つまり海軍は東地中海から締め出されることになりますね」■


Dave Majumdar is the defense editor of The National Interest. You can follow him on Twitter @DaveMajumdar.