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2025年11月28日金曜日

ウクライナ戦争でロシアは300機以上を喪失か(1945)

 

ロシア軍用機はウクライナでハエのように叩き落されている


カレブ・ラーソン

https://www.19fortyfive.com/2025/11/the-russian-air-force-keeps-dropping-like-flies-in-the-ukraine-war/

Tu-160 Bomber from RussiaTu-160。画像クレジット:クリエイティブ・コモンズ。

要点と概要 

ロシアはウクライナで大規模な航空機損失を被っており、公開情報トラッカーが戦闘機とヘリコプター数百機の撃墜を確認している。

最も壊滅的な打撃は「スパイダーウェブ作戦」で発生した。ウクライナ軍がAI誘導型FPVドローンを民間トラックに隠して使用し、ロシア深部にある航空基地数カ所を攻撃した作戦である。

低コストドローンが爆撃機、給油機、支援機といった数十億ドル規模の航空機を焼き払った。残酷なコスト格差が浮き彫りになった。

現代の空戦はドッグファイトではなく、スタンドオフミサイル攻撃と消耗型ドローンを特徴とする。ウクライナの成功は、安価で消耗可能なシステムが旧式航空戦力に対し戦略的効果を発揮し得ることを示している。

ウクライナの600ドルドローンがロシアの10億ドル爆撃機を壊滅させた

ウクライナで失われたロシア航空機の数は驚異的だ

視覚的に確認された装備損失を追跡するオープンソース機関「オリックス」は、ウクライナ戦争中のロシア航空機損失を353機と推定している。戦闘機、爆撃機、輸送機、ヘリコプターなど全機種を含む。

「リストには、写真や動画による証拠、あるいはパイロットの死亡通知が確認された破壊された航空資産のみが含まれている」とOryxは注記している。「したがって破壊・損傷した航空機の数は、ここに記録されている数よりもはるかに多い可能性が高い」。

ウクライナにおけるロシア軍航空機の大半の損失は、2022年2月のロシアによる全面侵攻後に発生したが、ウクライナ防空部隊は着実にロシア軍航空機を削り取ってきた。一方でウクライナ軍によるロシア空軍基地への大規模攻撃「スパイダーウェブ作戦」は、ロシアの戦略航空部隊に重大な打撃を与えた。

スパイダーウェブ作戦

ロシアの戦闘航空部隊に対する最大の打撃は、6月1日に発生した。ウクライナ軍がロシア領内深くに位置する複数のロシア空軍基地を標的としたのだ。

民間輸送車両に隠した爆発物搭載ドローンを用い、ウクライナ軍はロシアの戦略航空資産を標的にした。長距離爆撃機、給油機、輸送機、そしておそらく早期警戒管制機2機が対象となった。

ウクライナ保安庁(SBU)が公開した攻撃時の映像には、ロシア軍機が炎上する様子が映っており、攻撃時に燃料が満タンだったことを示している。

少なくとも1台のトラックが爆発物を積んだまま炎上したことから、攻撃の規模は発射不調によって縮小された可能性があるが、ロシアは明らかに不意を突かれたようだ。

シンクタンクIISSは推定する。ロシアは12機の航空機を失い、12機が破壊され、2機が損傷した。ウクライナの情報源はさらに7機の損傷を主張するが、IISSはその信憑性を確認できなかった。

ロシアのモバイルネットワークを利用し、SIMカードを搭載したドローンが、それぞれ人間パイロットによって操縦され、ロシア軍機を無抵抗に攻撃した。

攻撃距離が長いため生じる時間差に対処するため、ドローンには人工知能が搭載されていたとウクライナは主張している。これによりドローンはロシア軍航空機を標的として識別し、最も脆弱な部位へ誘導することが可能だったという。

余波

ウクライナの「スパイダーウェブ作戦」は、ウクライナの強み——高度な航法技術と終端標的捕捉技術を備えた無人ドローンによる攻撃能力——を、ロシアの弱点——比較的防護が不十分な長距離戦略航空機——に対して活用した。

ある専門家は、この攻撃のコスト非対称性について次のようにコメントしている。「この作戦は、安価な部品で製造され、ArduPilotのようなオープンソースの自動操縦システムで制御されるFPVドローンが、数十億ドルの価値を持つ戦略航空機を破壊できることを改めて証明した」

600~1000ドルのこれらのドローンは、ロシアがそれぞれKh-101とKh-22ミサイル発射に用いる数十億ドル相当のTu-95MSやTu-22M3爆撃機を成功裏に攻撃した」

キーウが当初期待したほどの成功ではなかったものの、この攻撃は現代戦争が高価で精巧なプラットフォームから、FPVドローンのような大量生産可能な消耗型プラットフォームへと移行しつつあることを示した

特にこの種の資産は、ウクライナが実証したように、攻撃で使用されたArduPilot自動操縦システムのような航法支援装置との統合に適している。

この事例は現代戦争における傾向を示している:射程や搭載量が限られた大量生産型の消耗可能なシステムでも、創造性と知的な標的選定と組み合わせれば、不釣り合いな戦略的損害を与え得る。

空の戦い

ウクライナで進行中の戦争において、戦闘航空戦力は過去の紛争と全く異なる役割を果たしている。ロシアもウクライナも、自国が支配していない空域では完全な制空権を行使できず、ウクライナ上空での激しい空中戦は発生していない。

ロシア空軍はウクライナ空軍を圧倒している。ウクライナ空軍は西側支援国からF-16戦闘機を一部受領したが、空戦膠着状態を打破するには機数が不足している。

今月初め、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領はパリを訪問し、フランスのエマニュエル・マクロン大統領と最大100機のフランス製ラファールF4第四世代戦闘機の供給契約に調印した。

この契約は当然ながらウクライナとその支援国によって大々的に宣伝されたが、戦闘機の納入は2035年以降で、その実戦効果はウクライナ空軍内での本格的な配備時期と装備される空対空兵器で決まる。

ロシア側では、戦闘機や爆撃機のパイロットが移動式巡航ミサイルの発射プラットフォームとして活用されている。これはロシアがウクライナの都市や町に向けて発射する無人片道攻撃ドローンを補完する役割だ。しかしロシア軍機は安全な距離から滑空爆弾やその他の兵器を発射している。

追記

ウクライナが制空権を掌握できるかは、自国空軍の保有機数と、その目標達成を支援するF-16戦闘機に依存する。フランスがキーウにラファール100機を供給すると約束したことは、表向きはウクライナにとって大きな後押しだ。

しかし、その生産と納入のスケジュールに大きく依存する。そして終戦交渉の噂が流れる中、アメリカのF-16やフランスのラファールは、あまりにも少なく、遅すぎるかもしれない。■

著者について:カレブ・ラーソン

カレブ・ラーソンは、ドイツ・ベルリンを拠点とするアメリカのマルチフォーマットジャーナリストだ。彼の仕事は、紛争と社会の交差点を扱い、アメリカの外交政策と欧州の安全保障に焦点を当てている。ドイツ、ロシア、アメリカから報道してきた。最近ではウクライナ戦争を取材し、ドンバス地方における戦線の変動を詳細に報じるとともに、戦争が民間人や人道に与えた被害について執筆した。以前はPOLITICO Europeの防衛担当記者として活動していた。彼の最新記事はXでフォローできる。


The Russian Air Force Keeps Dropping Like Flies in the Ukraine War


By

Caleb Larson

https://www.19fortyfive.com/2025/11/the-russian-air-force-keeps-dropping-like-flies-in-the-ukraine-war/


2023年9月16日土曜日

黒海上空のロシアの英軍RC-135迎撃は意図的な撃墜につながる可能性があった。英露両国は穏便に済ませていたが、ペンタゴン情報リークで真実が明らかに。ロシア軍に色々な不備があることを露呈。

 

TV ZVEZDA SCREENCAP


2022年の事件に関する最新情報で、ロシアのSu-27は、RC-135を墜落させようと、2発目のミサイルで追撃した模様


 年9月、ロシアのSu-27フランカーのパイロットが、黒海上空でイギリス空軍のRC-135W偵察機の近くにミサイルを発射した事件について、さらなる詳細が明らかになった。このミサイル発射については、当時本誌も報じたが、ロシアは「技術的な誤作動」と説明し、英国防省もこの説明を公式に支持していた。その後、米国防総省からリークされた機密文書によれば、フランカーのパイロットが命令を誤解し、ミサイルは意図的に発射されていたという。英国公共放送BBCは2発のミサイルが発射され、1発目は目標を外したと報じている。


Su-27 Flanker

実弾空対空ミサイルで武装したロシアのSu-27フランカーをRAFタイフーンから撮影。クラウン・コピーライト クラウン・コピーライト


事実であれば、ミサイルが単に標的を外さなかっただけで、このエピソード全体が大きな外交危機と悲劇に近づいていた可能性を示唆している。

 BBCは、この危機一髪の出来事について、"事件を知る3人の西側国防筋の高官 "から詳細を得たとしている。

原文

RAFのRC-135とロシアのSu-27の遭遇は、昨年9月29日に黒海上空で起こった。最初の詳細は、ベン・ウォレス英国国防長官(当時)が10月の下院での演説で明らかにした。

 ウォレスは、イギリスのワディントン空軍基地から飛行していた「非武装のRAF RC-135リベット・ジョイント」が、ロシアのSu-27戦闘機2機から「相互作用」を受け、合計約90分間追尾されたと述べた。ロシア戦闘機の1機は、「RAFリベット・ジョイントの近辺で(目視範囲を越えて)ミサイルを放った」。

 英国防長官は、この出来事を「潜在的に危険な交戦」だが「意図的なエスカレーション」ではなかったと表現した。

 英国防長官はミサイルの「発射」についてこう述べた: 「当方の分析では、誤作動であった。ロシア政府関係者も同じ説明をしている」。


ペンタゴンからのリーク

しかし今年4月、米国防総省の機密文書数百件がリークされ、その一部として新たな説明が登場した。

 これらの文書は、Su-27のパイロットが地上管制インターセプト(GCI)のオペレーターから与えられた命令を誤解し、偵察機に向け意図的に空対空ミサイルを発射した可能性を最初に提起した。しかし、同記者は、ミサイルが技術的な故障に見舞われたことに同意している。


 英国防省は、国防総省の機密文書の信頼性にいち早く疑問を呈し、リークされた情報の「深刻なレベルの不正確さ」について警告を発した。国防省はさらに、「読者は、偽情報を広める可能性のある疑惑を額面通りに受け取ることに慎重であるべきだ」と付け加えた。

 しかし、リーク文書の主張は、ニューヨーク・タイムズの取材に応じた2人の無名米国防当局者により裏付けられた。うちの一人は、国際水域で起きたこの事件を「本当に、本当に恐ろしい」と表現している。

 同記事ではさらに、2機のSu-27はRC-135の目視範囲内にはいなかったが、目視範囲を超える空対空ミサイルを装備していたこと、ロシア軍パイロットの1人が英軍機のミサイル・ロックに成功したことなど、詳細が追加されている。記事は、事件はウクライナ戦争ですでに国際的なホットスポットとなっているロシア占領下のクリミア沖で発生したと述べている。


2013年11月、ワディントン空軍に着陸したイギリス初のRC-135Wリベット・ジョイント。


最新の暴露

BBCに語ったとある「西側上級防衛情報筋3名」の評価が正しければ、我々は今、何が起こった可能性が高いかについて、より明確な構図を手に入れたことになる。

 情報筋は、ニューヨーク・タイムズに語った情報筋と同様に、ミッション中にRC-135が傍受したロシア通信に関与していたと語っている。

 傍受された通信は、ロシア軍パイロットの一人がRC-135と交戦する許可を得たと勘違いしたことを示しているという。

 BBCによると、情報筋の一人は、パイロットが”You have the target"という趣旨の言葉を受け取ったという。このあいまいな言葉がパイロットの誤解を招き、意図的なミサイル発射につながった。

突然、事態を察知した2人目のロシア人パイロットは、ミサイルを発射した操縦士を諌めた。その結果、2人の間で罵詈雑言が飛び交う全面的な口論に発展した。最初のミサイルは「発射に成功したが、ターゲットにロックオンできなかった」とBBCは伝えている。「誤作動ではなく、失敗だった」。

 ウイングマンから指摘された後でも、最初のパイロットはRC-135に向け二本目のミサイルを発射した。BBCの説明によれば、同ミサイルは「単に翼から落ちただけで、武器が故障したか、発射が中止されたことを示唆している」という。

 もちろん、イギリス国防省とロシア側が当初主張し、ニューヨーク・タイムズ記事でアメリカ国防当局が繰り返したように、これは「技術的な故障」を起こしたミサイルの可能性もある。

 ウォーゾーンはイギリス国防省に説明を求めたところ、スポークスマンは次のような声明を出した:「昨年9月、黒海上空でRAFのリベット・ジョイント機とロシアのSu-27戦闘機2機が衝突した事件を受けて、前国防長官は透明性と安全性の観点から、事件発生から3週間以内に下院に報告した。

「我々の意図は常に、作戦の安全を守り、不必要なエスカレーションを避け、国民と国際社会に知らせることであった。今回の事件は、プーチンの野蛮なウクライナ侵攻の潜在的な結末を思い知らされるものだ」。

 これは本当に撃墜に近いものであり、少なくともパイロットの行動に関する限り、意図的なものであった証拠が増えつつある。緊張が高まる戦略的に重要な地域での日常的な作戦におけるロシア人パイロットのプロ意識について、非常に深刻な疑問を投げかけている。

 さらに心配なのは、今回の事態がまったく異常なものではなかったと思われることだ。今年3月の事件では、ロシアのSu-27が黒海上空でアメリカのMQ-9リーパー偵察機を墜落させた。その直後に国防総省が公開したビデオでは、Su-27の1機がドローンのプロペラに衝突したことが確認されている。とはいえ、フランカーのパイロットには勲章が授与された。

 9月29日の遭遇以来、NATO軍とロシア軍機の間の「空対空事件」は他にも報告されている。例えば、10月1日から2月22日の間に、英仏米の航空機が「ロシア航空機が哨戒機に接近した6回の出来事があった」と報告されている。ある事件では、2022年12月30日、2機のタイフーン戦闘機に護衛されたイギリスのRC-135が、100フィート以内に接近したロシア機に迎撃されたようだ。

 タイフーン戦闘機の護衛は、このニアミス以来、黒海上空でのRC-135ミッションの定期的な一部となっている。


 2014年6月、バルト海上空の国際空域でRAFタイフーンから離れるロシアのSu-27フランカー。このロシアの戦闘機は、レーダー誘導と赤外線誘導のR-27と熱探知型R-73空対空ミサイルで武装している。


 一般的に、ロシアのパイロットは国際空域でNATOや同盟国の航空機を攻撃的に迎撃することで知られている。特に国防総省は、ロシアのパイロットがプロ意識に欠けるとして非難するが、このような迎撃のうち、本当に無謀なものがどれだけなのかでは議論の余地がある。

 しかし、9月29日のRC-135とSu-27の遭遇の場合、結果はもっともっと悪くなっていた可能性があったことは間違いない。さまざまな安全策が、引き金をひきやすいパイロットやパニックに陥ったパイロットによって、本質的に上書きされてしまったのだ。結局のところ、国際空域に存在するはずの交戦規則で、このような事態は起こらないはずだった。通常であれば、パイロットが発砲したものが本物の脅威であるか、敵対的な意図を示すものであることを示すために、目視による確認が必要とされるはずだが、今回はそのどちらもなかった。また、何が起こっているかを確認するために、GCIステーションとのさらなる確認が必要だったはずだ。

 実際に敵対的な航空機であることを確認するためのすべてのステップとは別に、パイロットが誤ってトリガーを押してミサイルを放つことを防ぐために、武器のアーミングをめぐり物理的措置があったはずだ。一般的には、マスター・アームとラスト・アームのスイッチ、そしてトリガーそのものだ。

 単純なコミュニケーションの行き違いだけで、他の航空機、特にIDが確認されておらず、明らかに国際空域にいる航空機に発砲するまでに至ってはならない。

 ウォーゾーンは、元英空軍副司令官のグレッグ・バグウェル空軍大将に話を聞いた。彼は、NATOの作戦では、識別可能な簡潔なコードワードが使われていることを指摘した。

 「未確認機や未知の機体に使う単語は他にもたくさんあり、それを基に判断や行動を下し、それが何であるかを確認するために追加情報を加えなければならない」とバグウェルは説明した。コンタクト、ターゲット、ボギー、バンディットなど、私たちが使うような言葉を聞き間違えたとしたら、その男は『よし、発砲許可だ』と言って、文字通りラストアームのスイッチを入れ、引き金を引いて発砲したのかもしれない」。

 バグウェルはまた、Su-27のパイロットがウィングマンと今度の交戦についてクロスチェックしなかったのは異例だと指摘した。例えば、両方のジェット機が同じ時間に同じターゲットに発砲するのを避けるためであり、また単に自分が聞いたと思った命令が本当であったかどうかを確認するためだ。

 バグウェルはまた、自分のミスの大きさに気づいたパイロットが、最初の(レーダー誘導)ミサイルのロックを故意に壊してRC-135へのホーミングを阻止し、2発目のミサイルを投棄した可能性を指摘した。同時に、ロシア航空宇宙軍に存在する老朽化と、時には劣悪なメンテナンス基準が、純粋に2発のミサイルの故障を招いたのかもしれない。ミサイルが戦闘中に本来の性能を発揮できなくなることは、ほとんど新しい現象ではない。

 ミサイルは標的に到達しなかったが、英国とロシアの両国防省は、エスカレートを避けるため、"技術的な故障"というストーリーを押し通した。

 これは理想的な状況とは言い難い。特に、黒海上空では非常に定期的に監視飛行が行われており、ウクライナ戦争の結果、ロシアと西側諸国との間に緊張が高まっている背景がある。冷戦時代には、偵察機がソ連戦闘機と交戦した例が数多くある。その時代とは比較にならないが、9月29日の事件に関する最新の疑惑は、この種の空中戦に関わる高いリスクと、各方面における冷静な判断の必要性について、教訓を与えてくれる。■


Russian Su-27’s Missile Missed RC-135 Spy Plane After Deliberate Launch: Report

BYTHOMAS NEWDICK|PUBLISHED SEP 14, 2023 2:28 PM EDT

THE WAR ZONE


2022年11月11日金曜日

ロシア空軍の戦績不調はISRを織り込んだ作戦、統合作戦に程遠い現状のためか ウクライナ戦

 

2020年10月5日、米中央軍責任地域上空で空中給油を終えた米空軍E-8C統合監視目標攻撃レーダーシステムが米空軍KC-135ストラトタンカーから遠ざかろうとしている。E-8CジョイントSTARSは、空中戦管理、指揮統制、情報、監視、偵察のプラットフォーム。 (U.S. Air Force photo by Senior Airman Duncan C. Bevan)



ウクライナで航空優勢を確保したいロシアだが、ISR支援をうけるべき攻撃で大きく失敗している



NATO高官がロシア航空戦力に厳しい判断を下しており、モスクワは同盟国に比べISR主導の攻撃能力が大幅に劣っており、情報データを活用する標的プロセスが不十分であると主張している。

 NATO連合航空軍副司令官を務める英空軍のジョニー・ストリンガー空軍中将Air Marshal Johnny Stringerは、英国の防衛・安全保障シンクタンク王立連合サービス研究所主催の11月3日講演で、ウクライナ戦争を評価した。

 2月に始まったロシアの不法な侵攻では、モスクワが一貫して航空優勢を達成できず、ウクライナの新たな抵抗がプーチン大統領に懸念を抱かせる兆候が強まり、消耗戦に移行している。

 イランのうろつき弾への新たな依存や、30万人の予備兵を徴兵し、訓練を受けないままの民間人を戦争に参加させる決定は、すべてプーチン側の絶望と軍事戦略の失敗の例として一般に見られている。

 また、オープンソース報告書やソーシャルメディア上で広く共有されているビデオには、ロシアのヘリコプターが至近距離や低高度で撃墜される様子が数々記録されており、ソ連時代の航空機は最新の防御装置を備えておらず、戦闘作戦には適さないことが示唆されている。

 ロシアのヘリコプターやミサイルが撃墜される映像に大衆が魅了されているにもかかわらず、ストリンガー中将はロシアのISR機材の性能不足に焦点を当て、標的の追尾捕捉の問題がここまでの侵攻で最も重要な側面の1つだと示している。

 「過去50年間の米国とNATO航空戦力の変革は、VKS(ロシア空軍)に匹敵するものがなく、ロシアはNATO空軍のISR主導の攻撃能力も、それを活用するためのターゲティングプロセスも持っていない」と述べた。

 さらに、NATOの資産のマルチドメイン統合が「我々の戦い方を支え続ける」とし、ウクライナ支援で同盟国による情報共有が「前例がない」レベルに達していることを示唆した。

 「プーチン軍が(ウクライナの)国境を越えて1時間以内に、NATOの東側フランクを保護し、保証するために、戦闘航空パトロールの計画的展開が送られた」とストリンガー中将は述べている。

 それ以来、NATOの抑止態勢を維持するため、航空パトロールが「調整」されていることを確認した。

 同盟と欧州空軍が考慮すべきその他の「教訓」に話を移すと、中将は、「500ドルの兵器付きドローン」から極超音速滑空機まで、これまでの紛争よりも幅広い「範囲」の脅威から防衛する必要があると話した。

 ストリンガー中将は、「脅威対象には、高性能の戦闘機、地対空ミサイルシステム、地上のレーダー、電子戦能力がある」と説明した。「20年にわたる対反乱戦を通じて、空と宇宙は争いのない安全環境と見なされていた。一時的とはいえ、歓迎すべき状態だったが、もはやそうではない」。

 また、武器がウクライナ軍の手に渡り、ロシアの標的を攻撃するために使用されるまでのスピードが異常に速いことも語った。

 この点について、ストリンガー中将は、米国のAGM-88高速放射線ミサイルがウクライナ空軍のMiG-29およびSu-27戦闘機への搭載を「8週間」で完了したという期間に特に言及した。

 またストリンガー中将は、イーロン・マスクの衛星サービス「スターリンク」の利用や、アプリによるC2およびISR能力を構築する「中小・大技術」の統合など、「集中イノベーション」アプローチが、ロシアに対抗するウクライナ軍の成功に大きく貢献していると述べた。■


Russia's air campaign hampered by poor ISR based strikes and target processing: NATO official - Breaking Defense

By   TIM MARTIN

on November 04, 2022


2022年7月25日月曜日

ウクライナ戦争の空戦で今のところ判明している教訓とは

 

Su-35 over Ukraine. Image Credit: TASS/Russian state media.

 

シアによるウクライナ侵攻から5カ月になるが、空の戦闘から得られる教訓とは?

 

 

SEADは難易度が高い

 

アナリストにとって、戦争開始数週間で最も驚くべき展開となったのは、ロシア空軍がウクライナ全域で航空優勢を確立できず、自由に活動できなかったことだ。

 イラク、アフガニスタン、リビアでのアメリカやNATOの戦争で、西側航空機が敵機の上空や敵の防御ミサイルを素早く掃射した経験から想定されていた。

 ウクライナ上空でのロシア軍機はウクライナの防衛システムを識別し、破壊するのに苦労している。ウクライナのSAMシステムへのロシアの攻撃は、空からではなく、陸上で成功したものが多い。

 また、ジャスティン・ブロンが指摘しているように、露・ウクライナ戦争で明らかになったSEADの問題は、西側諸国にとって将来の困難を予見させるものかもしれない。

 現時点では、敵のSAMネットワークに対抗できる自信があるのは米国だけだ。実際、現代の防空網を効果的に使えば、最近の紛争では米国でも許容できない程度の航空部隊の消耗が生まれるようである。

 

制空権の確立は難しい

 

現在でもロシアはウクライナで制空権を確立できていない。ベトナムのように政治的なものではなく、ウクライナの奥地にある飛行場や中継地などを攻撃することに何の抵抗もないのにロシアは問題に直面している。

 しかも、安全かつ効果的に攻撃する手段がない。ウクライナの戦闘機は、防御的なミサイル網の中や自国基地の近くで、ロシアに数的優位があっても、ロシアに対して自分たちで対処できている。

 ウクライナのパイロットは不利な状況で戦闘を避けることができ(実際避けている)、ロシアは長距離攻撃で交戦を求めている。つまり、数的優位がないにもかかわらず、ウクライナ空軍は飛行を続け、ウクライナの陸と海の目標を支援する作戦に携わることができるのだ。

 

人的資本と産業資本

 

航空兵力の増強は簡単にいかない。ロシアもウクライナも、航空兵力のストックとフローに苦労している。ウクライナ側では、新型機や旧型機の新機種でパイロットや整備士を養成する必要があるため、キーウに既製の空軍機材を供給する構想は急速に崩れ去った。

 また、スペアパーツや整備施設の不足から、ウクライナの保有する航空機を使い続けることは困難であったが、東欧から航空機の輸入が開始され、この問題は少し緩和されている。現在の航空機は、1960年代のジェット機と比較しても、複雑さが十分に際立っており、有能なパイロットが操縦できるまでのリードタイムは、従来の数ヶ月が数年に延びている。このため、ウクライナに新型機を納入する戦略には、制度的にも産業的にも相当の努力が必要となる。

 これは、ロシアの戦略にも影響を及ぼしている。既存の航空機材を相当数保有しているにもかかわらず、ロシアは消耗の激しい攻撃に航空機を投入する余裕がない。ロシアの産業界は航空機を代替できず、ロシアの訓練インフラはパイロットを代替できない。ロシアはこの戦争で既存機材を消耗したくなく、この決定が航空戦力の使用範囲を限定している。

 

無人機の貢献

 

ウクライナの無人偵察機は、紛争初期の無謀なロシアの攻勢を鈍らせ、最終的には崩壊させるのに貢献した。安価で、消耗品扱いのこれらの各機は、絶望的な時に重要な役割を果たした。戦争が進むにつれ、無人機の主な貢献はTB2による派手な攻撃より、歩兵や砲兵隊が運用する多様なUAVファミリーによる短距離偵察になったようだ。

 しかし、ここでも反撃がある。ロシアは電子対策を飛躍的に向上させており、ウクライナのUAV制御を混乱させ、破壊を容易にしている。ドンバス地方にロシア軍が密集しているため、対空兵器各種を投入でき、各高度の無人機に対処している。全体として、今回の戦闘で無人機はこれまで偵察機や軽攻撃機が果たした役割と非常によく似ているが、より大型で高速の固定翼機の貢献を完全に置き換えるまでにはなっていない。

 

結語


ウクライナでの空戦は、我々が通常使うどのような意味で決定的な結果が生まれていない。ロシアもウクライナも決定的な勝利を主張できない。前者が後者を撃破したわけではなく、後者が前者から領空を隔離したわけでもない。同時に、航空戦力の失敗を論じるのは誤りだ。航空戦力の任務(長距離攻撃から近接航空支援、偵察、輸送まで)の成功は、戦争全体とまではいかなくとも、局地的な勝利(キーウ攻勢の頓挫、ドンバスでのロシアの攻勢の成功)に欠かせないものだった。

 今後数カ月、ウクライナが西側戦力を活用して航空優勢(あるいは少なくとも同等)を勝ち取れるかどうかが、戦争の行方に劇的な影響を与えそうだ。■

 

The Air War over Ukraine: Why Can't Russia or Ukraine Claim Victory? - 19FortyFive

ByRobert Farley

 

WRITTEN BYRobert Farley

Dr. Robert Farley has taught security and diplomacy courses at the Patterson School since 2005. He received his BS from the University of Oregon in 1997, and his Ph.D. from the University of Washington in 2004. Dr. Farley is the author of Grounded: The Case for Abolishing the United States Air Force (University Press of Kentucky, 2014), the Battleship Book (Wildside, 2016), and Patents for Power: Intellectual Property Law and the Diffusion of Military Technology (University of Chicago, 2020). He has contributed extensively to a number of journals and magazines, including the National Interest, the Diplomat: APAC, World Politics Review, and the American Prospect. Dr. Farley is also a founder and senior editor of Lawyers, Guns and Money.


2022年3月28日月曜日

ロシア空軍が航空優勢を確保できない理由に、西側と全く異なる空軍用兵思想があった。今回の失敗から進化する可能性は?

 





シアのウクライナ侵攻開始から1カ月経過したが、ウクライナ防衛軍は不可能を可能にしたかのように、各地でロシア地上軍を阻止し、ロシアの圧倒的な数の優位にもめげず、空域を確保している。

 ロシア空軍は米国に次ぐ世界第2位の規模だが、運用は米空軍と全く異なる。ロシア軍は確かに苦しんでおり、ウクライナ上空の失敗は、ロシアの戦争へのアプローチそのものの問題だ。



米国の考える戦闘と航空戦力の意義

 米国では、戦闘作戦を6つの想定段階に分け、各段階で、中間目標に向け部隊間が協力し合う。指揮官と幕僚が大規模戦闘作戦を視覚化し、要件を考慮した作戦立案が基本となっている。2009年まで、米国のドクトリンは4段階だったが、対テロ戦争の教訓から劇的に変化した。

 6段階とは、形成、抑止、主導権の獲得、支配、安定化、文民権力の実現、形成への回帰だ。

 この段階的アプローチでは、指揮官は次の作戦段階の前に、各中間目標を完了するため十分な人員、資源、装備、時間を部隊へ確保する。IRIS Independent Research の社長レベッカ・グラント博士Dr. Rebecca Grantが 13 年前に Air Force Magazine で指摘していたが、米国の戦闘ドクトリンでは航空戦力はあらゆる局面で役割を果たし、かつ最重要局面で重要な役割を担う。

 情報、監視、偵察(ISR)、武装哨戒などの航空戦力は、抑止力として不可欠だ。また、米軍機は主導権を握り、空爆を行い、ISRを提供する上で極めて重要な役割を果たす。制圧段階では、米軍機が制空権を握り、敵機や防空網を排除・軽減した上で、地上軍に近接航空支援とISRを提供する。安定化と民政移管の段階では、偵察から武力支援まで、新政権を正統化するため再び航空戦力が頼りにされる。

 大規模で圧倒的な航空戦力が、アメリカの戦争ドクトリンでは主導権を握る段階と支配する段階の両方で不可欠である。航空機は、敵の空中脅威を迅速に無力化し、その後の空爆と地上部隊の支援を同盟国航空機の危険なしで実施可能とする手段だ。

 現実に、米国の戦争アプローチは航空戦力中心に構築されており、地上部隊は目標達成のため航空機や長距離兵器システムと組み合わせて使用される。地上部隊の重要性を軽視しているのではなく、米国式戦闘方法は航空優勢の確保を強調している。


ロシアの軍事ドクトリンでの空軍力の意義

 これに対し、ロシアの軍事ドクトリンでは、戦争へのアプローチが大きく異なり、紛争の前段階と初期段階(グレーゾーン作戦)ではロシアが新世代戦争(NGW)と呼ぶものを重視し、紛争では慎重かつ予算重視の武力行使を行うとある。ロシアでは、安価な手段が実行不可能な場合のみ、高価な資産を使用する。これは、圧倒的技術力を持つアメリカのアプローチと全く対照的である。

 ロシアの軍事ドクトリンが、航空戦力を背景とするアメリカと異なり、航空戦力を地上軍に従属させる存在として捉えていることが重要である。フォーブスのデビッド・アックスDavid Axeによれば、ロシア空軍は空の火砲として使用されている。これは、NATOの巨大な航空戦力と大規模衝突した場合に航空優勢を失う可能性があることをロシアが理解しているためと考えられる。ロシアのドクトリンは、負け戦に勝つことよりも、戦闘空域を支配できない可能性を甘受している。

 ロシア軍事ドクトリンには、敵制空権を迅速に完全制圧すること、敵防空網を迅速に排除するとはともに書かれていない。アメリカのワイルド・ウィーゼルF-16のような敵防空制圧任務(SEAD)の特化機材がロシアにはない。ただし、ロシア機は、防空システムを攻撃する対レーダーミサイルを使用することができるし、実際に使用している。

 その代わり、ロシアは長距離射撃を重視し、自軍上空を支配するために航空機に任務を与えるよりも、自国の統合防空システムの使用が優先されている。

 ロシアの戦争方式は、長距離攻撃で敵の防空・航空機の効果を下げ、大量の砲撃、ロケット、ミサイルで火力優勢を獲得し活用するものだ。航空機は、戦域支配の手段ではなく、地上軍を支援する。アメリカの軍事ドクトリンのバックボーンが航空戦力ならば、ロシアのは大型戦車部隊と大砲である。

 ロシアの戦争への考え方は、戦闘初期段階で敵を懲らしめ、ロシアに有利な形で紛争を迅速解決するというものだ。米国議会調査局が指摘するように、敵対国の領域アクセスを拒否することはロシアの目標ではない。

 ロシアの狙いは、司令部やインフラなど重要施設を狙い、機能を低下させて、有利な条件を相手に受け入れさせることにある。そのため、ロシアの戦略は、全国的な制空権の確保は前提としていない。ロシアが航空機と統合防空システムで空域を支配することはない、と主張しているのではない。ロシアはそうするだろうし、そうしているのは確かである。しかし、ロシアは、目的の達成に制空権の確立が不可欠とは考えていない。

 ロシア軍は、混沌とした戦場環境で敵機味方機の識別が難しいようで、ロシア軍上空でロシア航空機はリスクが高いように思われる。

そのため、ロシア軍機は砲兵隊同様の扱いで、地上軍支援の空爆に従事している。


ウクライナの現実からロシア航空戦力ドクトリンも変化するはず

 ロシアは火力優勢の補完手段で航空戦力を使用しているが、ウクライナでは、ロシアが長年主張してきた統合防空システムも効果がないことも証明されている。ウクライナ空軍は損失を被っているものの、開戦から1カ月以上経過した現在も連日出撃している。

 ウクライナ戦闘機は、主に夜間に出撃し、防衛部隊に航空支援を提供し続け、ウクライナのドローンは各地でロシアに大打撃を与えている。一方、ロシア軍機は1日に数百回の出撃を続け、ロシア領内からウクライナ国内目標に長距離攻撃を実施し、停滞している地上軍に長距離砲として機能している。

 ロシアがウクライナの空を支配できないのは、航空機を長距離砲やロケット弾の延長として使用しているためで、ロシアのドクトリンは明らかに机上の想定通り機能していない。

 ロシアがウクライナでの航空優勢確保に苦労している理由で、おそらく最も重要な理由は、ロシアの戦争へのアプローチが航空優勢の重要性を著しく過小評価していることだろう。ウクライナ戦争がどのような結末を迎えるにせよ、ロシアの航空戦力に関する考え方は、今後数年で大きく変化する可能性があるように思われる。■


How Russia's warfare doctrine is failing in Ukraine - Sandboxx

Alex Hollings | March 23, 2022

Alex Hollings is a writer, dad, and Marine veteran who specializes in foreign policy and defense technology analysis. He holds a master’s degree in Communications from Southern New Hampshire University, as well as a bachelor’s degree in Corporate and Organizational Communications from Framingham State University.