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2021年7月10日土曜日

ロッキードのスカンクワークスが手掛けるプロジェクトが判明。DXで航空装備の開発サイクルは劇的に短くなる!

  

スカンクワークス新規施設が2019年12月の起工式を迎えた。スカンクワークス施設内での新規着工は1980年代以降初めてである。Credit: City of Palmdale

 

ッキード・マーティンのスカンクワークス施設で撮影された写真からプロジェクト四点の存在があきらかになった。その一つは最近出た求人広告とつながり、情報集監視偵察(ISR)と無人航空機システム(UAS)と関連がある。

 

同写真と求人広告からスカンクワークスの極秘構想が垣間見え、「デジタル革命」が設計、製造で根付き、従来は十年単位だった新型軍用機開発が数カ月から数年になる時代が来ていることがわかる。

 

偶然流出したと思われるが、ロッキードの高度開発事業部門が複数の新型機あるいはミサイルのプロジェクトを同時に立ち上げているのがうかがわれる。ロッキードは18カ月前に高度製造施設を起工しており、1980年代以降久しぶりの新施設建設となった。

 

ロッキードから新施設の狙いについて言及はないが、その答えとしてNASA航空部門の予算による新型機開発の前後に始まった一連のプロジェクトがあるのだろう。

 

公表された写真に計画表が映っており、NASA向けX-59静かな超音速飛行技術実証機と並行し、これまで知られていなったプロジェクト数点の記載がある。

 

計画表では「デジタルトランスフォメーションへの移行」とあり、スカンクワークスのデジタルエンジニアリング設計をプロジェクト5点で進めるとある。y軸は「成熟度」で、x軸は「時間」とある。

 

開始時期が最も早いプロジェクトには「P-2251」の表記があり、Pとはスカンクワークスの新型機あるいはミサイルのプロジェクトを指す。反対に最新のプロジェクトがy軸で成熟度がもっとも高くなっており、「P-731」とある。

 

NASAのX-59プロジェクトは5年が経過しており、プロジェクト5点のうち成熟度と開始時期が中央部分になっており、「P-727」と「P-95X」にはさまれている。

 

スカンクワークスの写真はジム・グッドールに手渡された。「スカンクワークス75年の歩み」の著者で、SR-71他ロッキードのステルス機についての著作もある。

 

グッドールは7月3日に自身のフェイスブックに同写真を掲載した。カリフォーニア州パームデイルのスカンクワークス施設のVIP見学をした直後のことだ。

 

写真ではグッドールがスカンクワークスの組立建屋内にいるのが映っている。X-59の大型模型と同機の胴体部分用のツーリングジグの間に本人が立っている。

 

また側面に計画表が映っており、スカンクワークスが取り組むプロジェクト5点の記載があり、箇条書きで各プロジェクトの特徴が記載されているが、文字は判読できない。

 

スカンクワークス広報は非公表プロジェクトの詳細に関し言及を避けており、軍が機密指定しなくても社内情報は公開しない同社方針に触れている。

 

2020年8月からロッキードはP-95Xプロジェクトで求人広告を出しており、製造技術者では機密情報取扱いの資格審査があるとしている。別の求人広告から「P95X」事業がスカンクワークスのISR・UAS関連であるとわかる。

 

5月10日付の求人広告では経験豊かな製造管理職を求め、P-727含むプロジェクト4つの担当とある。その他はP-26、P-28、P-47だ。

 

計画表の題名にあるデジタルトランスフォーメーションへの移行とはスカンクワークスがデジタル設計、デジタルエンジニアリングを採用したのを示しているのだろう。同社は StarDriveと総称している。

 

スカンクワークス関係者は StarDrive構想を昨年9月に発表していた。それによると空中発射式UASをスピードレイサーの名称で開発するのに利用されているとある。2月に空軍研究本部がスピードレイサーを軍需産業懇談会で自律運航能力を高めた低価格巡航ミサイルとして取り上げていた。■

 

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New Factory, Mystery Projects Hint At Digital Skunk Works Push


Steve Trimble Tony Osborne July 08, 2021


2021年5月11日火曜日

B-21はデジタル・トランスフォーメーションの効果をフルに活用した初の大型機になった。従来の機体開発とどこが違うのか。

 

Photo: Courtesy of Northrop Grumman



B-21はデジタル開発から生まれた機体だ。開発ではリスク削減を最大目標とした。ノースロップ・グラマンはデジタル技術を全面応用した設計、試作、製造、テストの各段階を展開した。


B-21が冷戦時のB-1/B-2/B-52と共通するといえば、F-35ライトニングIIが第二次大戦時のPライトニングと同じだというのと同じことになる。


B-2スピリットの登場から30年が経過し、B-21はその間の技術進展を取り入れいれた。ノースロップ・グラマンは最新防空装備であるS-400地対空ミサイルや中国のJ-20ステルス戦闘機に遭遇してもB-21が十分生き残れるようにしている。


B-21は最新デジタル技術から生まれた驚異の機体だ。デジタルで設計、製造、支援の水準が向上した。デジタル開発は空軍にとっても新しい形の調達となった。


「デジタルの三位一体はデジタル技術、アジャイル・ソフトウェア開発、オープンアーキテクチャでステルスの正当後継者だ。軍事技術で次のパラダイムになる」と最近まで空軍で調達業務を仕切ってきたウィル・ローパーが “There is No Spoon: The New Digital Acquisition Reality” (このタイトルは映画マトリックスからとったものだ)と題した2020年の報告書で述べていた。


優れた装備品の実現ではなく、より良いシステムをデジタル技術、管理で構築する、とローパーは述べ、より迅速に設計し、そのまま生産に移し、性能改修が簡単になるとした。これまで次の機体製造まで数十年も間隔が開き、防衛産業はどんどん少なくなる契約案件をめぐり競合してきたが、ローパーは「このままだと中国やロシアに負ける」と警句を鳴らしていた。


デジタルで何が変わったのか


しかし、デジタルの導入で空軍は5年前からこの状況を脱していた。その背景にローパーがいた。デジタルが機体ライフサイクルを可視化し、開発から製造、維持まで各段階の姿が明らかになった。


空軍がデジタルを活用する案件はB-21以外に、NGAD次世代航空優勢機材(トップシークレットの第六世代戦闘機)、A-10の主翼交換、B-52で民生エンジン換装事業、地上配備戦略抑止装備事業(GBSD)があり、後者はノースロップ・グラマンが進めるLGM-30ミニットマンIII大陸間弾道ミサイルに代わる新装備になる。


こうした事業で空軍は従来より短いサイクルでかつ導入可能な価格の実現をめざし、脅威対象の進展の速さに対応しようとする。ノースロップ・グラマンはデジタル・トランスフォーメーションで現実の環境に適合させる形で設計、開発、製造の各段階を統合している。


「エンドユーザーとなる第一線部隊に必要な内容で適正化をめざし、より良い製品をより早くより効率的に生み出します」とノースロップ・グラマンの研究開発部門副社長クリス・ドーターズが語る。「最高の設計を3-Dで実現し、製造技術と組み合わせます。さらに次世代技術で費用対効果が高い解決方法を実現します」


急速に進展する環境で今後も主導権を握るためにはデジタル・トランスフォーメーションは不可欠で、ノースロップ・グラマンのGBSDもB-21レイダーが基礎となっている。


デジタル・トランスフォーメーションで工程はどこまで加速化するのか


B-21レイダーでは重要設計審査が完了してからノースロップ・グラマンは実機を二年未満で完成させた。これがデジタル設計の効果でテスト機材二機をそろえ、初飛行は2022年を予定している。


「空軍の迅速性能実現室(DAF RCO)と当社の関係が差別化を実現しました」とノースロップ・グラマン副社長スティーブ・サリバンが語る。「このウェポンシステムを予定通り実現することが共通目標です。このため問題の早期発見、迅速な行動、決定的な解決方法を共同実施し、問題をつぶして事業の勢いを維持しました」


B-21はDAF RCOが統括する初の大型機開発事例


B-21は従来の大型調達事業と根本的に異なる。これにはノースロップ・グラマンが画期的なデジタルツール、ソリューション各種を大幅に投入したことで技術リスクとコストを低減した効果が大きい。特に重要なのが同社が技術製造開発段階(EMD)からこうしたツールを多用したことだ。


ノースロップ・グラマンはデジタル・トランスフォーメーションにより機体や各機能の統合デジタルモデルを作成し、改良策をリアルタイムで見つけ、モデルに仮想的に応用した。こうした高精密なデジタルモデルの数々は設計、構造、熱工学、電気、飛行制御、機体シグネチャー情報を扱う各部門が共有した。


同社ではこのアプローチをMB(x)と呼び、モデルをもとにしたシステム工学を応用し、モデリングで最適化を求めるシミュレーションを利用し、組織各部門との連絡、連携を強める方法をシステムのライフサイクル全般に応用する。


「このアプローチでは既存のデジタルツールを使い、設計製造維持に役立つ画期的な応用方法を見つけ出し、同時にアジャイルソフトウェア開発、クラウドベースのソフトウェア連携を利用した」とサリバンは語る。「ここから生まれた成果で最大のものがスピードで、効率よく実行に移し、コスト、リスクで大幅な軽減効果は設計から始まり、製造面にも表れています」


B-21のリスク軽減策


B-21ではノースロップ・グラマンはリスクをいかに減らすかをあらゆる場面で強調している。設計、製造、試作、テストのサイクルがすべてデジタル化され同時実施で期間短縮とともに最終形の統合作業での余分な作業が減る。これによりB-21は従来より短期間で第一線配備が実現し、空軍力の整備が経済的に行える。


同社のリスク低減策は統合作業、テスト工程に焦点をあてている。


ノースロップ・グラマンは有人航空機設計センター(フロリダ州メルボルン)を拡張し、B-21の各種サブシステムに現実の稼働状況数々を応用して開発、統合、テストの各段階を進めた。その例としてハードウェアとソフトウェアの統合・テストがあり、モデリングやシミュレーションの各種ツールを使い、各種ミッション環境を再現している。


同社のテスト機材でB-21のハードウェア・ソフトウェアの統合効果を測定している。こうした実証の積み重ねで空軍は同機の初飛行への道のりに一層確信を抱くことになる。


「実機を使わなくても同じシステムを使ったフライトテストで統合機能を確かめることができる」と空軍迅速性能実現室の事業統括官ランドール・ウォールデンが語る。「ここ数カ月で別の実証にも成功している。さらにハードウェア・ソフトウェアの成熟化が進み、実際に良好な作動結果を生んでいる」


結語


ノースロップ・グラマンは国防産業でデジタル・トランスフォーメーションの先頭を走っており、ソフトウェアで定義しハードウェアで実現する方式にモジュラー構造のオープンインターフェイスやアーキテクチャを応用する。各種システムは従来より早く実用化でき、ソフトウェアのアップデートを短期間で実現することで敵陣営の先を行ける。デジタルシステムによりハードウェアは多機能を発揮し、各種ドメインで機能可能になる。デジタル・トランスフォーメーションで国防装備はハードウェアの制約から解放されるだけでなく、ソフトウェアのアップグレードによりさらに進化し、脅威の変化に対応できる。各システムが想定外のミッションに対応可能となる。


空軍グローバル打撃軍団の司令ティモシー・レイ大将も空軍協会主催の2021年仮想航空宇宙サイバー会議でこうした姿勢を評価している。「B-2に新型スタンドオフミサイルを搭載するのに何年もかかるが、B-21はオープンミッションシステムを導入しており数カ月でこれが実現できる」と述べている。■



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The B-21 Raider: A Marvel Of Digital Development


By   BARRY ROSENBERG

on May 05, 2021 at 3:30 PM


2021年1月29日金曜日

第6世代戦闘機はもう飛んでいる。早期実現させたデジタルエンジニアリングは装備品開発のパラダイムシフトを引き起こす....デジタル化を進めたローパー博士の強い信念。

 アメリカはデジタル設計で新型装備品をかつてないスピードで完成させている。

https://www.reutersconnect.com/all?id=tag%3Areuters.com%2C2020%3Anewsml_RC2DUG9YN9MU&share=true

 

世代第6世代戦闘機が飛行開始している。一体どうやってこんなに早く機体が完成したのだろうか。

 

また新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)が予想より早く供用開始できるのはなぜか。更にペンタゴンは新型の次世代迎撃ミサイル(NGI)を2020年代末に運用開始する計画だ。驚くべき早さの進展はすべてデジタルエンジニアリングの成果だ。

 

加速するデジタルエンジニアリング技術ではコンピュータシミュレーションと高性能アルゴリズムを駆使し実物と性能仕様を複製する。

 

政権交代で空軍を去る直前に調達トップのウィリアム・ローパーはデジタルエンジニアリングの「三位一体」に触れ、大規模装備開発でどんな違いが現れているか説明してくれた。例として第6世代ステルス戦闘機や新型陸上配備戦略抑止手段をあげた。デジタルエンジニアリング技術は正確かつ効果が高く、技術陣兵装開発部門は現物を使わず、あるいはテスト用試作モデルの政策に何年も費やさずに選択肢を逐一検討できる。

 

 

ローパーは「デジタル三位一体」について「新しいデジタル調達の実際』と題した文章でソフトウェア開発、コンピュータモデリング、共通技術標準の3つで構成すると解説している。

 

「『デジタル三位一体』のデジタルエンジニアリングおよび管理、アジャイルソフトウェア、オープンアーキテクチャがこれからやってくる次の大きなパラダイムシフトだ。単に優秀な装備を実現するのではなく、より良いシステムを構築する。これまでより早い設計、一気通貫の製造、アップグレードを簡単に行う。早くして悪いことはなにもない」

 

コンピュータモデリングで細部に至る評価を行い、実戦の各種状況を想定し、各種条件を変えつつ装備品の設計を検討できるというのは驚くべきことだ。

 

「デジタルエンジニアリングにより、利用者はデータの出どころを一つに絞ってアクセスできます。究極の透明性が開発中システムに生まれるわけです。NGIの例では開発工程が早まり、問題点やリスクをすばやく早くできました」とレイセオン・ミサイル&ディフェンスのメリッサ・モリソン−エリス部長がNational Interestに語っていた。

 

GBSDの開発元ノースロップ・グラマンはレイセオンと共同でNGIをミサイル防衛庁(MDA)に提示し、デジタルエンジニアリングを多用し、新型ICBMの製造、試験、改良に成功し、NGIでも同じ方法を採用した。

 

「MDAからは産業界にはミサイルは現実になってこそ意味がある、技術の裏付けの取れた性能を実現してほしいとの要望が伝えられました。エンジニアリングソフトウェアを使い、デザインサイクルを加速しました」とノースロップ・グラマン副社長(NGI担当)のテリー・フィーハンも述べている。

 

「デジタル調達でデジタルライフサイクルが実体のライフサイクル並になると、はるかに現実に近くなってくる。eシステムを構築し、『プリント』して検討する日が来るだろう」(ローパー)

 

この戦略が重要となる例は新型迎撃ミサイルNGIで、MDAが開発企業二社に契約交付すれば、数週間で次の段階に入れる。MDAは増大する新世代ICBMの迎撃性能の実現を急いでおり、この意味は重大だ。敵陣営は核兵器運搬手段を単に数の上で増強するにとどまらず、ミサイル誘導方式を大改良し、信頼性、標的捕捉能力、おとり装備の導入、対抗手段の採用で迎撃ミサイルを無効にしてくるはずで、NGIは大きな課題をかかえている。■

 

この記事は以下を再構成したものです。

 

How America's New Sixth-Generation Stealth Fighter Was Born

January 28, 2021  Topic: Security  Region: Americas  Blog Brand: The Buzz  Tags: MilitaryNGIGBSDICBMU.S. MilitaryStealth

by Kris Osborn

 

Kris Osborn is the defense editor for the National Interest. Osborn previously served at the Pentagon as a Highly Qualified Expert with the Office of the Assistant Secretary of the Army—Acquisition, Logistics & Technology. Osborn has also worked as an anchor and on-air military specialist at national TV networks. He has appeared as a guest military expert on Fox News, MSNBC, The Military Channel, and The History Channel. He also has a Masters Degree in Comparative Literature from Columbia University.

 


2021年1月18日月曜日

F-35のライフサイクルコストは負担不可能なのでNGADに期待せざるを得ない、と退任(?)間際のローパー空軍次官が見解を示した。その他、デジタルエンジニアリング、ABMS、空軍の価値観を語る。

 



F-35


F-35のライフサイクルコストが法外な水準なままのため、空軍は必要とする機数の調達ができない、このため次世代制空機(NGAD)が重要になると空軍で調達を仕切ってきたウィル・ローパー次官が退任を前に報道陣に語った。


「F-35事業は持続不可能だ。大量調達可能な価格水準からも遠い」


「このため次世代制空機が重要となる。戦闘に必要な装備を揃えた次世代戦闘機になるだけではない。調達の仕組みを根本から変えるだけではない。F-35より維持が容易な機体を実現する機会となり、現実にF-35の飛行時間あたりコストが下がっていない」


ローパーは1,763機のF-35調達構想を縮小すべきかの議論には与しない。「だがそれだけの規模の機材を維持できる価格水準でないことは確かだ。今後数年間がF-35事業の運命を決めるだろう」


NGADの実現を早め、実戦に耐える戦闘機部隊を整備すべきと言おうとしているようだ。


「(NGADの)今後には大きな期待があるが、最悪の事態想定で仕事したくない。空軍にTacAirポートフォリオを提供し選択肢を与えており、ボールは空軍にある」


ローパーの説明では空軍戦闘機は開戦当日から制空権確保の役目があり、「初日に勝利できないとその他の軍部隊が戦闘に入れなくなる」からだという。このためF-35では投入可能機材の規模が問題になり、同時に性能水準も重要要素だと指摘する。


「水準についてはF-35は問題ないと評価は一致しているが、次のステップとなるブロック4機体に注目している。機体数は飛行時間あたりコストが本当に下がるかで変わるが、このコストが機体取得価格より重要で空軍の調達数そのものが問われかねない」


主契約企業ロッキード・マーティンはブロック4改修でコンピュータ処理速度を引き上げ、ミサイル搭載数を増やし、コックピットディスプレイを拡張し、航続距離を伸ばし、無人機との連携機能を実現するとしている。だが政府会計監査局はブロック4改修費用は15億ドル増加し今や121億ドルになると把握している。改修が何度も遅延していることがあり、監査局は質面に注目している。「F-35は現場で信頼性、整備性の目標を満たしておらず、事業が期待する品質の機体を納入できていないことが露呈している」と報告書にある。


「ブロック4改修は今も続いており、ソフトウェアのアップグレードを参考にアジャイル開発手法を採用したことで性能は向上し、継続改善と従来機と性能の差の拡大が続きます」とロッキード・マーティン社広報は述べている。


維持可能な価格が実現するかという核心部分についてローパーは「その他の戦術機投入の選択肢に訴求力があり、混合編成案など空軍には選択肢が複数あり、各社の競合、外部圧力が業界にかかり、向上を迫れている中で、唯一の事業ではなくなっている」と語る。


ロッキード・マーティンは「F-35の価格水準の重要性は生産、維持両面で理解しており、他では実現不可能な機能を従来型機材並み価格で提供しようと努力中」と広報は言う。「現在納入中のF-35の機体価格は性能が劣る第4世代機を下回り、維持費用もこの5年で4割下げました」


ローパーはF-35の際限ない問題発生により空軍のソフトウェア開発チーム、共用事業推進室、ロッキード・マーティンが「全員同じ方向に走り、同じペースなのに違う結果を出している」と評した。空軍のソフトウェア開発拠点の頂点、通称ケッセルランが「システム維持に全力を投入している」とし、ロッキード・マーティンが導入したトラブル続きの自動補給支援情報システム(ALIS)に代わるシステムをODIN(運用統合データネットワーク)として開発中だと述べた。「この事業には通常の枠を無視し空軍各所の組織を動員している」。


航空業界のアナリストとして経験豊富なリチャード・アブラフィアは「1,763機というUSAF向けF-35Aの数字が国防調達で虚構の存在として君臨してきた」と評し、空軍がそれだけの規模の調達予算をどうやっても工面できない反面で、NGADが代替策になるとも早々に言えないためとする。


「他事業との兼ね合いもあり単年度で購入可能なのは50機でしょう。これが20年25年続いても1,000機1,200機にしかならない」とアブラフィアはいう。「変動要因として次世代戦闘航空機が調達段階に入れば大きい。NGAD試作機が飛行すれば影響が現実になります。同機が完成し生産開始し、運用開始するまでの期間を検討する必要があります。ただし、F-35調達を縮小し、予算をデジタルセンチュリーシリーズに流用する構想には欠陥があるように聞こえます」


NGAD とデジタルエンジニアリング


Lockheed Martin Skunk Works concept art of a sixth-generation fighter

ロッキード・マーティンのスカンクワークスによる第6世代戦闘機の構想図



ローパーに成功を最も期待している事業はなにか尋ねると、本人はNGADとデジタルセンチュリーシリーズのモデルと答えた。


「具体的に言うとデジタルエンジニアリングをフル活用して次世代制空機を実現したい。というのは次世代戦術機の製造以上の意味があるからだ」と述べた。NGADではデジタルの限界、空軍・宇宙軍の限界にも挑戦する。ローパーは宇宙軍参謀総長レイモンド大将にもデジタル作業の全体像を説明しており、宇宙軍は衛星にデジタル作業を応用している。


「この動きで空軍にメリットが生まれ、機材全般にも良い結果が生まれ、宇宙軍では衛星打ち上げロケットの性能向上を期待している。うまいたとえがないが、大きな機会であることは確かだ」


「デジタルエンジニアリングはここ8年間での最大の変化」と強調し、「このため24時間デジタルエンジニアリングの最新動向を学び、空軍と話についていけなくならないよう努力している。これで来週にも幹部をひと押しする。その後は実際の作業で結果が出てくるだろう」


ABMS


空軍がトップ優先事項とする高性能戦闘管理システムAdvanced Battle Management System (ABMS)で最初の成果が出てくることをローパーは退任予定の1月19日以前に期待している。


「大統領就任式を控え、リリースワン取得戦略を承認するのが最後の仕事になる。あくまでも普通の形で普通の事業としてテスト日程を組み、全て通常通りにすすめる」とし、「調達としては目立つところはないが、最初となるとやり方も変えないといけない」


「リリースワン」とはABMSパッケージの最初の成果で「16-17種類」の「製品」で構成し、例としてクラウドワン、プラットフォームワンがABMS事業の「実地」試験でテスト済みであり、すべて「軍事装備システムの小型版インターネット」になるとローパーは述べている。


「クラウドがあり、デバイスを接続し、大規模アナリティクスもある。宇宙他各方面の運搬手段があり、モノのインターネットを利用できる。携帯電話中継塔に匹敵する手段で各帯域で各種デバイスにデータを中継する。空軍ではデバイスが各種業務をこなす手段になっており、敵に対抗していく」


中でも航空機動軍団の給油機が「空中中継塔の機能となっており、各種帯域をつなぎ、データを戦術機材に送信し、通信妨害や位置測定、航法、計時できない環境でも対応している」という。給油機にはデータ処理作成用ソフトウェアが搭載され、「事態の進展に合わせ適宜アクションを取れる」というが、ローパーはABMS機能を搭載した給油機の種類に言及していない。ボーイングKC-46は通信情報収集センサーを搭載しており、ABMS機能としてゲイトウェイワン含む装備がつくとの報道もある。


ウィル・ローパー次官、左から二番目


ローパーはABMSを始めた時点で軍用モノのインターネット構想につながる基盤は皆無だったと言う。「二年前には軍用インターネットの基礎はどこにもなかったのでプロジェクト別に構築を迫られた。重要なことはインターネットのような存在は使わないことで、読者にはぜひこれを伝えてもらいたい」


読者は2021年度支出法案で空軍のABMS要求は半額に減額され、159百万ドルになったことを承知されているだろう。議会報告書では「正当化が難しい内容」と評している。


遺産と未来


誇るべき業績について尋ねると、空軍を「イノベーション重視」価値観に向かわせたことと答えた。この価値観はソフトウエア制作拠点の新設、代替調達方法を強力に追求したこと、新規企業中心に民間活力を利用する仕組みを構築したことなど各種手段で根付いたもので「空軍内部に構築するのは難しかった」と振り返る。「非常に硬いスポンジに水をかけるようなもので、表面と裏面こそ濡れるが、内部まで水分を通すには大量の水が必要で特に上層部には多大な労力を投入した。間違った印象を与えれば即座に否定される、とくに上層部には。今後の動向に期待している分野だ」


ローパーはバイデン政権のペンタゴンで仕事を続けるつもりがあるのかは明らかにしていない、また次の仕事についても言及していないが、これまでの業績に満足し引退生活を楽しむ素振りは皆無だ。次期政権でも本人の存在が必要だと訴えそうな気配がある。


「現時点ではわからない。政権交代はすでに一回乗り切っている。オバマ政権下の仕事のほうが現政権より長い。自分は政治家ではない。政治には関わりたくないし、自分なりの強い政治観もある。毎日こうやって仕事場に出てくるのは自分の技術知識や変革を率いる力で政府の変化やイノベーションを実現したいからで、さらに中国がある。中国は今後長期に渡り注視すべき対象で一政権だけの話ではない」


「中国はこちらを打倒する構想をねっており、このため国防分野に奉職している。またこのため懸命に働いてきた。これから先のことはわからないが、米国の優位性を取り戻す一環でいたいし、政権内部あるいは外部でもこれは可能だ」■


この記事は以下を再構成し、人力翻訳したものです。


Roper Hints NGAD Could Replace F-35; Why? Life-Cycle Costs

By   THERESA HITCHENS

on January 14, 2021 at 4:14 PM


2020年11月15日日曜日

第六世代ステルス戦闘機は米国で完成している。予想より10年も早く飛行できた理由とは....

 第六世代ステルス戦闘機は米国が各国に先駆け飛行を開始させたようです。F-35で20年以上たっても完成しない間に技術は一気に次の段階に進んだのでしょうか。また数年で完成したのはなぜでしょうか。今回の記事はその片鱗に触れていますが、はいそうですか、と簡単に納得できない点もあります。ただし、航空機製造の技術体系が大きく変わるパラダイムシフトが米国で実現したのは事実のようですね。

 

USAF

 

国の謎に包まれた第六世代ステルス戦闘機は想定より5ないし10年も早く飛行を開始した。空軍の次世代制空戦闘機(NGAD)構想が始まり数年経過しているが、実機登場は2030年以降と見られていた。

この背景になにがあったのだろうか。考えられるのがデジタルエンジニアリングで試作機、設計図面、技術詳細を仮想再現し、テストや解析を「金属切り出し」より先に完了してしまうことだ。この作業で第六世代ステルス戦闘機は完成したのだろう。

空軍調達トップのウィリアム・ローパー博士がデジタルエンジニアリングを大々的に提唱している。ローパーがデジタルエンジニアリングの論文 “There is No Spoon: The New Digital Acquisition Reality”を発表している。 

「『デジタル三本柱』とはデジタルエンジニアリング・マネジメント、アジャイルソフトウェア、オープンアーキテクチャアであり、これがステルスに貢献する。次のパラダイムシフトは軍用分野でこの三技術で優位を確保することだ。より良いシステムを構築するのではなく、システムをよりよく構築することで、設計が短縮され、機体組立がスムーズになり、アップグレードが容易になる」

仮想シミュレーションや高度コンピュータ技術で設計が迅速化された以外に試作機多数の製造が不要となりコストが下がった効果が大きい。歴史を眺めるとペンタゴンで新型機というと、短くても10年かけ設計審査、各種調達段階を経たのちに試験開発にさらに数年をかけてきた。

ではどうやって第六世代機特有の技術詳細を試作機の飛行前に実現できたのだろうか。ここに高度デジタルエンジニアリングやコンピュータモデリングの妙義があり魔法がある。仕様が多数あってもシミュレートし仮想評価できる。ローパー論文ではデジタルエンジニアリングでは想像、直観といった人間特集の認知力を使い新装備品システムの開発を進めるとある。

大気の状態、空力学の諸現象、熱特徴、機体外部の構成、エンジン性能のすべてが正確に高度アルゴリズムで再現できる。完璧な際限が不可能な要素もあるが、デジタルエンジニアリングの効果は実証ずみだ。こうした効果からローパーがいうようにデジタルエンジニアリングが重要な検討の「水準を上げる」効果を示し、設計陣も可能性の幅を広げた。■

この記事は以下を再構成したものです。

Why An Air Force 6th-Gen Stealth Fighter is Here Almost 10 Years Early

by Kris Osborn - Warrior Maven

-- Kris Osborn is the Managing Editor of Warrior Maven and The Defense Editor of The National Interest --

Kris Osborn is defense editor for the National Interest*. Osborn previously served at the Pentagon as a Highly Qualified Expert with the Office of the Assistant Secretary of the Army—Acquisition, Logistics & Technology. Osborn has also worked as an anchor and on-air military specialist at national TV networks. He has appeared as a guest military expert on Fox News, MSNBC, The Military Channel, and The History Channel. He also has a Masters Degree in Comparative Literature from Columbia University.* 


2020年9月26日土曜日

NGAD試作機のメーカーはどこなのか?

 空軍向け次期戦闘機で実証機の存在が公表されたが、製造企業は謎だ。

空軍調達を仕切るウィル・ローパーは新型機について多くを語らず、すでに飛行しており、一部システムは飛行テスト中で、デジタルエンジニアリングで作成したとだけ述べている。

では謎解きの手がかりを見てみよう。まず試作機は次世代制空戦闘機(NGAD)事業の一部のようだ。

2015年1月、下院軍事委員会で当時の調達、技術、補給活動担当国防次官補フランク・ケンドールは新型機各種をエンジン技術とあわせ空軍、海軍向けにDARPA主導のプロジェクトで開発中と述べていた。

「ねらいは次世代の制空能力を有する機材の試作機を開発することで、Xプレーンと呼んでよい」とケンドールは述べていた。航空宇宙技術革新構想Aerospace Innovation Initiativeと呼ばれ、「技術開発とともに関連リスクを解消し、F-35に続く機体さらに高性能航空機材を実現するのがねらいだ」

「NGAD試作機メーカーの候補にボーイングロッキード・マーティンノースロップ・グラマンがあり、そのほかジェネラルアトミックスも設計した可能性があるが可能性は低い」とキャピタルアルファパートナーズのアナリスト、バイロン・キャランが記している。「テクストロンがスコーピオンで新設計案も一年で飛行させることが可能と証明したが、戦闘用機材にこの技術が応用できるようになったとは思えない」

エンジンはGEあるいはレイセオンテクノロジーズ傘下のプラット&ホイットニー製とキャランはみている。

ではNGAD戦闘機の製造元として可能性のある各社を見ていこう。

ボーイング

シカゴに本社を置く航空宇宙大手の同社はデジタルエンジニアリングに詳しく、スウェーデンのSaabと共同でT-7A訓練機の設計製造を一年未満で完了した実績がある。T-7Aのミッションコンピュータはサードパーティ製ソフトウェア、アプリが実行でき、アップグレードは容易だ。また設計は組立工程の簡易化もねらい、胴体前後部の組立ては15分で完了する。F/A-18スーパーホーネットの胴体組立は24時間かかるとボーイングディフェンスCEOリーアン・カレットが述べている。

 

ノースロップ・グラマン

ノースロップがスケイルド・コンポジッツ Scaled Compositesを子会社にしているのを知る向きは少ない。これは初の民間宇宙船スペースシップワンの設計を担当しXプライズ受賞の企業だ。米空軍向け練習機競作で同社も新型機を組立てたが、参加を見合わせた。

ノースロップはペンタゴンの極秘事業で受注が増えている。B-21ステルス爆撃機事業にキャッシュを相当投じていると思われるが、秘密資金がNGAD試験機にも流れている可能性が十分ある。

同社は地上配備戦略抑止力事業にも参加しており、新型大陸間弾道ミサイルとして冷戦時のミニットマンIIIの置き換えを狙う。ここでもデジタルデザインテクノロジーを使っているとローパーが述べている。

ロッキード・マーティン

同社の高性能技術開発事業(ADP)部門はスカンクワークスの名称のほうが知名度が高いが、ここがこれまで米軍向け超性能極秘機材を数々開発してきた。U-2、SR-71、F-117対地攻撃機があり、同社はF-22ラプター、F-35共用打撃戦闘機も製造してきた。

「ADPは各種事業で多忙だ....デジタルセンチュリーシリーズのほか、第六世代機さらに次世代機がある」とロッキード・マーティンエアロノーティクスおよび傘下のスカンクワークスを率いるミシェル・エヴァンスが述べている。

エヴァンスは民生技術や民間手法を防衛用途に流用するロッキードの試みスタードライブ Stardriveについて以下述べている。「モデルをもとにしたシステムのエンジニアリングをソフトウェアのアジャイル開発やデータ分析やAIにどう応用するかを考えている」「こうした技術から想定外の機会が生まれ今後の装備品の開発期間を大幅短縮するでしょう」

その他企業Someone else

興味深い可能性として新型機は一社のみの製品とならないことがある。デジタルデザインツールの長所として新興企業でもこれまではひとつかみの既成企業のみが独占してきた市場に参入可能となるとローパーが力説している。その例として7月に空軍が有人機に随行可能な無人機開発をもとめたところ18社が応募してきた。

「大手企業の関心度は高いのは予想通りだが、小規模企業からも同様の藩王がある」と空軍物資本部を率いるアーノルド・バンチ大将が記者向けリモート会見で明らかにしている。「デジタルキャンペーンでデジタルエンジニアリングを進めればこれまでより広範囲の企業に門戸が開き、これまで不可能だった企業も参加できるようになるはずだ」■

 

この記事は以下を再構成したものです。

Who is Secretly Building the USAF’s New Fighter?

Officials are mum, so here’s a roundup of clues.

 

BY MARCUS WEISGERBER

GLOBAL BUSINESS EDITOR

SEPTEMBER 16, 2020