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2022年2月4日金曜日

2022年2月3日、ISIS指導者強襲作戦の第一報、デルタフォースが投入され、米軍はヘリ一機を喪失。標的対象は自爆し巻き添え死亡が発生。

(メディア関係者へ ヘリコプター名称はMH60ではありません)


MH60 SYRIA RAID BLACK HAWK DOWN

U.S. DEPARTMENT OF DEFENSE/VIA TWITTER

 

シリアのイドリブ地方でISIS首脳殺害作戦に特殊部隊、ヘリコプター、無人機が動員された。

 

軍は2022年2月3日、シリア北部に特殊部隊をヘリコプターで侵入させ、ISSI指導者アブ・イブラヒム・アル-ハシミ・アル・クライシAbu Ibrahim Al Hashimi Al Qurayshiを殺害した。詳細情報はまだ限られているが、ペンタゴンは軍閥が支配するイドリブ地方のアトメAtmeでの教習作戦は「成功」に終わり、米側に損失はなかったと発表したが、特殊作戦仕様のMH-60一機を喪失した。強襲地点は以前のISIS指導者アブ・バカ・アル・バグダディを米軍が襲ったバリシャ村から15マイル離れている。

 

 

以下の声明をペンタゴン報道官ジョン・カービーが発表した。

 

「米特殊作戦軍団がシリア北西部で対テロ作戦を今夜実行した。ミッションは成功した。米側に人的損害はない。詳細は明らかになり次第発表する」

 

ジョー・バイデン大統領もISIS首脳殺害の作戦血行を命じたことを認め、空爆よりも高リスクの特殊作戦を選択したことを明らかにした。近隣一般市民のリスクを減らすためだったという。バイデンからはホワイトハウスからの生放送に先立ち自身で声明文を発表した。

 

「わが軍の技量と勇気によりISIS首領アブ・イブラヒム・アル-ハシミ・アル-クライシを除去した。米軍部隊は全員が無事帰還した」

 

イドリブ地方の目撃談では作戦は二時間ほどで終了した。米関係者はソーシャルメディア上で動員されたのは回転翼機でMH-60は陸軍のエリート部隊160特殊作戦航空連隊所属でAH-64アパッチ攻撃ヘリコプターや無人機も投入されたと明らかにした。報道によると、建物近くにヘリコプター2機あるいは3機が着陸し、拡声器で女子児童に退避を命じた。

 

MH-60の一機を現地投入時に喪失した。残骸の写真がソーシャルメディアに拡散している。ペンタゴンも技術上の問題が発生し、同機は着陸せざるを得ず、その後破壊用に爆発物およびF-16戦闘機からの射撃で機体を破壊したと認めている。ただし、同機の部品の一部は無傷のようだ。

 

SOCOM

第160特殊作戦航空連隊のMH-60M

 

「現地時間午前1時に軍用機、ヘリコプターの騒音で起こされた」と攻撃地点にほど近い場所に暮らすアドナン・アボ・モハマドがウォールストリートジャーナルに語っている。「地上すれすれを飛んでいた。戦闘は午前3時ごろまで続いた」

 

バイデン大統領は強襲作戦実行時点でアル・クライシは自爆ベストを着用し、爆発させて自身と家族を巻き添えに死亡したと述べている。以前のISIS首脳アル・バクダディも自爆で子供二人と死亡した。

 

強襲作戦の標的となったのは3階建屋でアトメ近郊になり、その後AFP通信記者が現地を訪れている。写真で激戦の跡がわかり、吹き飛ばされた窓、崩れた天井、壁に残る血痕、屋根にも崩壊部分が見える。ソーシャルメディア上の記事では米軍部隊と敵の地上戦が交戦したとある。アル・クライシは建屋から出ず、米側は予め情報活動で本人の居場所を把握し、建屋を徹底的に調べていたことがわかる。

 

今回の作戦は米中央軍が統括し、2019年のアル・バグダディ殺害作戦以降で最大規模だったらしい。

 

シリア人権監視団(英国に拠点を構える情報団体)からはアル・クライシを標的とした作戦で死亡したのは少なくとも13名に登り、うち4名は子供、3名は一般市民女性だったとする。シリアの民間防衛団体ホワイトヘルメッツは子供6名、女性4名としている。

 

イドリブ地方では複雑な関係の場所で別々の戦闘員集団が活動し、バシャ・アル・アサドの中央政府に対抗する地盤ともいわれる。同地ではベイ特殊部隊の作戦がここ数ヶ月続いており、明らかに別の重要人物を狙っておいr、アルカイダの上級指導者アブドゥル・ハミド・アル-マターは昨年10月に無人機で殺害された。

 

名目上はトルコがイドリブを実効支配中だが、地上を支配するのはハヤト・タヒル・アル-シャムHayat Tahrir Al Sham(HTS)で元アルカイダ構成員の指揮下にある。

 

HTSはアルカイダとつながる急進先頭集団への抗争を展開し、ISISとも対抗している。米政府はシリアのアルカイダ(AQ-S)の名称をフラス・アル-ディンに使っている。HTS、フラス・アル-ディンともに米空爆の標的で、投入されているAGM-114R9Xミサイルは鋭い刃が6枚飛び出す構造で現地で悪名高い。

 

これまでHTSが実は米無人機によるアルカイダ工作員殺害を支援しているとの情報があり、米国と各種戦闘集団との関係が複雑になっていた。今回の作戦では米関係者はHTS戦闘員から地上で反撃を受けたと述べており、HTSが攻撃の対象になったと勘違いして条件反射した可能性もある。

 

シリア政府軍ならびにロシア軍による作戦も繰り返し実施されているものの、イドリブは依然として戦闘員を各種集団に供給しており、安全に作戦を立案実行可能な場所となっている。状況は流動的だが、ロシアとトルコが仕切った休戦が公式には有効とされる。

 

アトメは戦闘員集団に安全な隠れ家となっており、離散家族の収容地もあり、一般市民に紛れ込んでいる。

 

今回の強襲作戦についてバイデン大統領はアル-クライシがシリア北部で最近発生したISISによる刑務所脱獄を主導したと述べている。この事件は先月のことでISIS戦闘員がクルド族が管理するグワイラン刑務所(ハサカ市)に収容される同僚を脱獄させようと激しい銃撃戦を展開した。状況は直ちにエスカレートし、米軍にクルド勢力支援のための空爆要請が出た。

 

AP PHOTO/BADERKHAN AHMAD

グワイラン刑務所脱獄事件後に米軍とシリア民主軍部隊がシリア・ハサカでISIS戦闘員を捜索した。 on January 29, after the attack on Ghwayran prison.

 

脱獄後に戦闘員数百名は再確保されたが、一部はそのまま逃げ、ISISの脅威がまだ残ることをあらためて教えてくれた。ISISは2019年に自ら宣言したカリフ制が崩壊した。

 

「(アル-クライシ殺害の)影響はISISに痛手となろう」と政府高官はCNNに述べ、同指導者は多くの作戦に関わっていたとした。

 

 

Update 2:10 PM EST:

 

新情報で米陸軍のエリート部隊デルタフォースが今回の強襲作戦を主導したとわかった。デルタフォースはこれまで8年に渡り同地で重要人物狩りを展開しており、対ISIS戦を支援してきた。2019年のアブ・バカ・アル-バグダディ殺害もそのひとつだ。米軍の6x6パンダー走行車両別名走行地上移動装備(AGMS)が少なくとも一両グワイラン刑務所脱獄事件後に視認されている。AGMSsはデルタフォース専用なので、同部隊が現地に展開しているのがわかる。

 

また未確認情報だがMH-60ヘリコプターの喪失は地上銃火を浴びたことと機構面の問題のためだとの報道がある。残骸の写真から動悸のレーダーやセンサータレットが機首から除去されているのがわかる。地上の米軍隊員が予め除去してから機体を爆破したのか、現地の別のものが回収したのかは不明だ。

 

国防長官ロイド・オースティンの声明では米軍攻撃で一般市民も巻き添え殺害された可能性を残している。米軍全体としてここ数ヶ月にわたり一般市民の犠牲を発生させていることに批判が集まっており、調査が進行中だ。

 

「この機会に国防総省が民間人死傷を回避することを真剣にとらえていることをあらためて明らかにしたい。今回の作戦は特別に企画され実施され、民間人の被害を最小限とした」「アル-クライシ他は現地で女性児童を巻き添えで死亡させた。だがミッションの複雑さを考えると、我が方の行動も一般市民に損害を与えた可能性は残る)(オースティン長官の声明文)

 

Update 2:20 PM EST:

 

中央軍司令官フランク・マッケンジー米海兵隊大将から今回の強襲作戦の追加情報が出ている。中東研究所シンクタンク主催のヴァーチャル対談の席上で。それによると作戦の目的はISIS主導者の捕獲で、長距離ヘリコプター強襲であったとし、米側から先に出ている内容を繰り返している。同大将からは米支援を受けるシリア内のクルド中心の部隊が今回の作戦成功に貢献下との発言があったが、米軍と共同行動したかについては発言がなかった。

 

ただし、アル-クライシ住居3階での爆発について、米側は本人が自爆ベストを爆発させたものとしており、同大将は「予想を超えた威力」があったとした。ただし、その詳細については語っていない。

 

また地上要員が不時着を余儀なくされたMH-60を意図的に破壊したとし、同機には航空機からも射撃を加え、「機微装備がシリアに残らないよう」にしたという。同機搭載のレーダーやセンサータレットなどの装備品がどうなったかについては語っていない。こうした部品は意図的に除去されていたようだ。

 

米軍による一般市民の死傷者について「今の時点で大きな問題ではないようだ」としたが、調査は展開中だとした。同大将は強襲作戦中に発生した民間人の損害はISISが全て責任があると糾弾している。■

 


Night Stalker MH-60 Black Hawk Lost In Successful 

Raid That Killed ISIS Leader In Syria (Updated)

 

Special operators, helicopters, airstrikes, and drones were all involved in the mission that targeted the head of ISIS in Syria’s Idlib province.

BY THOMAS NEWDICK FEBRUARY 3, 2022

 



2019年5月19日日曜日

いざというときに頼りになるデルタフォースはこうして生まれた

The U.S. Army's Delta Force: How This Secret Group of Deadly Soldiers Came to Be 米陸軍デルタフォースはこうして生まれた

陸軍デルタフォースは創設以来30年以上がたち、その間にハリウッド映画数本が製作されたが、今でも一般大衆の眼が届かない最上級の特殊部隊である。ペンタゴンは同部隊の詳細はごくわずかしかあかしておらず、組織の全体像はともかく隊員総数も不明のままだ。
正式には第一特殊部隊作戦分遣隊Dとして陸軍の一部となっており役所仕事のしがらみから脱せず過去の活動記録の一部は公開されている。
米陸軍は当初デルタフォースを「世界各地に展開可能な部隊で国際テロ活動含む重要局面で適切に対応が取れる部隊」として想定していたのが陸軍戦史センター所蔵の1977年の提案説明でわかる。
同センターには陸軍各部隊の出自記録も保存されており、戦史とともに戦功もわかる。これまでの地上戦全てで動員され活躍した部隊を把握している。
だがデルタフォースと海軍のSEALチームシックスの出自を探ると1970年代の政治的波乱状況にたどり着く。当時のワシントンはテロ活動が欧州や中東で激しくなる状況を目の当たりにしていた。
1972年にパレスチナ戦闘員が世界を驚かせた。イスラエルのオリンピック選手をミュンヘンで襲撃したのだ。急進派小集団やバスク民族分離主義派が爆弾テロや暗殺をヨーロッパ各地で繰り広げていた。
そんな中一人の陸軍士官が上部を動かしデルタを創設した。その人の名前はチャーリー・ベックウィズ大佐である。
1960年代にベックウィズは英国の22特殊空挺任務(SAS)連隊に加わりマレーシアにいた。ベックウィズはデルタのヒントをSASから得た。
「今回提案の組織は高度に専門化された部隊として相当の職位の組織として小規模チーム構成で高度訓練を受け、心理的に対応準備ができた隊員で現場判断を下せるものとする」と創設前の資料にある。
こうした目標設定は多分にベックウィズがSAS隊員を参考にまとめたものだ。特に隊員選定方法に好印象を受けた。
「(SAS)連隊とは結局個々人の隊員で構成し、単独になることを楽しめる隊員で自らで考え行動できるものとして強い精神と決意を有するもので構成している」とベックウィズは自叙伝デルタフォースに記したが本人は1994年に死去している。
分析には組織構成案もつき、組織装備表(TOE)とある。陸軍ではこの資料を出発点に配備人員数を決定したり装備品を選定するのが常だ。
デルタフォースも例外ではない。1978年7月時点で正式なTOEがついており将校21名下士官151名とある。
提案の組織は2つにわかれ、事務手続きを担当する部門と実際に作戦投入される部隊だった。状況により医官、情報官、無線通信担当を事務部門から派遣しミッションを実施する。
作戦部門はE分遣隊と呼ばれ20名単位のチーム四個で構成するF分遣隊も指揮下においた。
この呼称は特殊部隊をABCの各分遣隊とする基本構造にならったものだった。12名体制の作戦分遣隊は通常は「Aチーム」と呼び、陸軍のエリート部隊の単位だ。
チームの規模拡大でデルタへ配属される将校が増え、通常の特殊作戦部隊より高位の者が配属された。現在の陸軍歩兵中隊は隊員130名以上が配属で将校は5名に過ぎない。
「作戦の性質上秘匿性が高度で必要とされる特殊技能訓練も高度になるためこの構造が許される」と検討案にある。「必要な能力水準は新兵や任官まもない中尉レベルでは得られにくい」
デルタの将校に大尉未満はいない。下士官では最低でも2等軍曹だ。
F分遣隊の下士官が中心の「実行者」となると検討案は記述。F分遣隊は20名規模のチームであらゆる任務をこなす。
英陸軍のエリート部隊と同様にこうした「組織内戦闘員」は「単独工作員」の行動を求められると検討案は見ていた。
ベックウィズと違い陸軍は特殊部隊隊員は訓練に長時間を使い外国では友軍と共同作戦すべきと考え、強襲作戦の単独実施は想定しなかった。現在でも陸軍特殊部隊は米同盟国と共同作戦体制維持に相当の時間を費やしている。
デルタが当初の組織でいつまで維持されていたかは不明だ。公式戦史は1979年以降の更新がない。
その翌年に同部隊はテヘランでイラン革命以後人質になっていたアメリカ市民の救出作戦に失敗した。強襲作戦は中止され特殊部隊隊員8名が死亡している。
現在の同部隊は高度に訓練を受けた隊員千名程度の構成だろうとNot a Good Day to Die: The Untold Story of Operation Anacondaの著者ショーン・ネイラーが記している。
最近の事例では2014年7月にシリアのイスラム国戦闘員に拉致された米ジャーナリストのジェイムズ・フォーレイ他人質を同部隊が奪還している。ただし翌月にスンニ派過激主義集団がフォーレイを殺害した。

デルタの構成がどうであれ、ベックウィズの遺産が今も影響を与えているのは明らかだ。■