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2016年2月4日木曜日

米海軍の航行の自由作戦を非難する中国の自己矛盾



一方で国際法を順守し、他方で国際法と異なる解釈を堂々と主張する中国の論理構造はどうなっているのでしょうか。中国は既成事実を積み上げれば自分の勝ちと考えているのでしょうか。習金平主席の提唱する中国の夢が中華思想そのもので全部中国のものと勘違いしているとすれば大変な代償が待っているのに認識していないのでしょうか。しかし無害通航では相手国の領海であることを認めてしまうのですが。

China Upset Over ‘Unprofessional’ U.S. South China Sea Freedom of Navigation Operation

By: Sam LaGrone
January 31, 2016 11:48 AMUpdated: February 1, 2016 10:52 AM

USS Curtis Wilbur (DDG-54) in 2012. US Navy Photo
USS Curtis Wilbur (DDG-54) in 2012. US Navy Photo

中国から米海軍による1月末の航行の自由作戦を非難する声明が複数出ている。パラセル諸島のうちトライトン島を実効支配する中国の眼前で米誘導ミサイル駆逐艦が12カイリ以内を通航したためだ。
  1. USSカーティス・ウィルバー(DDG-54) が通過直後に中国国営通信は外務省と国防省の声明を伝えている。.
  2. ウィルバーによるFON作戦は「大人げなく無責任....米国の行為は中国法に違反し、平和、安全保障と秩序を乱した」と国防省報道官楊宇軍Yang Yujunは1月30日に発言している。”
  3. 「これまで米側から艦船航空機の安全通行を保障する方策の提案があったが、繰り返し中国の領海領空に自国艦船・航空機を送り込み、中国の抗議を無視し、両国の海軍空軍部隊の一触即発状況を招いているのは米国だ」
  4. 外務省報道官華春瑩Hua Chunying は声明文で「米軍艦は中国法に違反し、中国領海に許可なく侵入した。中国は同艦を終始監視し音声により警告を発した」としている。
  5. ペンタゴンからはUSNI Newsに1月30日にウェルバーがトライトン島付近を通過したのは無害通航であると伝えてきた。海洋法では軍艦は他国領海内を「領有国の秩序安全を乱さない限りにおいて」通航することが国連海洋法条約第19条で認められている。.
  6. 中国の両報道官とも1992年制定の中国国内法を根拠としており、外国艦船はいかなるばあでも事前許可なく中国領海に侵入することはできないとしている。両名は中国が1996年に該当島嶼部分に基準線を引いており、これで該当部分は中国領土になっていると説明。
  7. 「米側はこの事実を認識しているにもかかわらず中国領海に軍艦を送り込んできた。これは意図的な挑発行為そのものだ」(国防省Yang)
  8. 米側は中国に無害通航に関し事前通告を求める権利はあるとは認めず、中国が領有の根拠とする基準線も認めていない。
  9. 30日にはベトナム外務省報道官 Le Hai Binh がベトナム(パラセル諸島に一部領有権が重複している)は自国領海での無害通航権の行使を認めると発表。
  10. 中国は同様の無害通航を米領土のアリューシャン列島で昨年9月に行っており、米北方軍司令部は「国際法に従っていた」と発表していた。
  11. 米国の航行の自由作戦は1979年に始まっており、米国から見て過剰な領有宣言や国際法に違反する主張に対応するもの。昨年10月にはUSSラッセン(DDG-84)がスプラトリー諸島のスビ環礁上で中国が建設した人工島付近を航行するFON 作戦を実施している。■


2016年1月28日木曜日

航行の自由作戦は今後も継続する 太平洋軍司令官



この問題は中国の論理の罠に入って行く気がするのですが、記事にもあるように無害通航であったとすれば問題の海域は中国領海であると認めたことになってしまうのでは。とはいえ既成事実の積み重ねで強弁する中国は世界で相手にされないはずですが。日本が南シナ海のパトロールに加わることには中国はすでに予防線を張っていますのですぐに実現にならないでしょうが、それまでにややこしい問題は解決しておいてもらいたいものです。問題は文中にある超大型巡視船が尖閣に登場した際にどんな事態が発生するかですね。

US Will Push Harder On Chinese Territorial Claims: PACOM

By Sydney J. Freedberg Jr. on January 27, 2016 at 3:28 PM

The USS Lassen, which sailed through Chinese-claimed waters in October 2015
2015年10月に中国が領海と主張する海域を航行したUSSラッセン


WASHINGTON: 中国の南シナ海を巡る主張に米国は今後も挑戦していく、と「航行の自由作戦」は回数を増やし、より複雑かつ範囲を広げると米太平洋軍司令官ハリー・ハリス大将が発言した。さらに昨年秋に2012年以来久しぶりに実施した航行の自由作戦は実がないと批判されたが実は違うと主張。
  1. 「航行の自由作戦は継続するだけでなく、回数が増え、中身も複雑になり、範囲が広がることがわかるはず」と、記者が安全保障国際問題研究所での講演で質問をした際に回答している。「一般論だが、航行の自由作戦は南シナ海のみならず世界各地で実施していく」
  2. 海軍もFONOPS(航行の自由作戦)の実施が3年間なかったことを認め、昨年9月に航海、飛行、軍事活動の展開を南シナ海で中国が一方的に主張する地帯ふくめ実施する権利を有しているとした。その後にラッセンが同地区へ派遣され、中国(およびベトナム、フィリピン、台湾)が領有を主張する地点から12カイリ以内を航行させた。米国はいずれの国にもUSSラッセンの通行を事前通告していないが、中国の神経を逆なでした。
  3. だが同艦は12カイリ水域を軍事活動せずに航行したので、国際法上では「無害通航」扱いで領海を通過したことになる。対照的に軍艦は他国の12カイリ領海内では軍事作戦を実施できない。ラッセンがレーダー訓練をしていれば米国が問題地点を中国領海とみなしていないことになっていただろう。だがペンタゴンも認めたように「無害通航」させたことでは中国の主張に真っ向から立ち向かったことにならず、人工島を取り巻く海域が領海だったことになる。
  4. ハリス大将はラッセンはそれでも重要な役割を国際法上で果たしたと主張する。「ラッセン作戦は中国の主張に対して一定の反論になった」とし、「例として無害通航に先立つ通告を求めている点だ」
  5. 中国が独自の国際法解釈をしていることに留意すべきだ。中国の在フィリピン大使 Zhao Jianhuaは「軍艦、軍用機の無害通航は認められない」と昨年8月に発言した。P-8哨戒機がCNN取材陣を載せて中国人工島付近を昨年5月に飛行した際に、中国側は空域からの退去を求めてきた。P-8並びにP-3が海南島を偵察飛行しているが、中国戦闘機が毎回スクランブルをし、危険なほど接近したことがあった。その意味でラッセンが「無害通航」を敢行した事自体は議論の余地があるものの実績となった。
  6. 「中国側は領有権、資源の利用で全く妥協する気配がない」とハリス大将は述べた。昨年秋に中国を訪問した際のことで、「こちらの考え方は個人の観点も含めはっきりさせた。つまり問題の各島は中国の帰属ではなく、埋立工事は域内緊張を増やすもので中国の行動は挑発的だと告げ、この点で激しく意見をぶつけあった」
  7. ハリス大将は緊張が和らぐとは見ていない。たしかに人民解放軍との堅調緩和に努力している。たしかに中国も海賊対策など国際問題に積極的に貢献している。また現時点で中国は南シナ海での土地造成を中断している。
  8. だが中国沿岸警備隊はマンモスサイズの「警備艇」として排水量12,500トンを建造中で、これは米海軍のアーレイ・バーク級駆逐艦より大きい。艦首は強化され他艦への衝突を前提にしている。紛争中地帯でで中国沿岸警備隊は同じ警官でも悪いおまわりさんの役で、人民解放軍海軍は善良な警官の役になっているが、これだけの威容を誇る艦を建造することはフィリピン、ベトナム、日本の各沿岸警備隊が相当厳しい対応を迫られることになる。
  9. 米国は日本防衛という条約義務を尖閣諸島が攻撃を受けたれば履行すると具体的に述べているとハリス大将はセミナー来場者に想起させた。(米国は該当諸島の領有国を特定していないが、日本は数十年に渡り実効支配中) また米国は域内諸国との関係強化につとめており、フィリピンとは新規防衛取り決めで国内基地施設を米軍が利用できるようになった。海兵隊部隊と将来的には空軍がオーストラリアから作戦展開できるようになり、インドとは共同演習と軍装備売却が進んでいる。ハリス大将としては日本と韓国が根深い敵対感情を乗り越えて米国含む「三国間」共同体制を樹立することを期待したいところだ。
  10. 中国が急速に軍備を進め技術面も拡充してきているが、ハリス大将はそれでも米国には「一方的な」優位性があるいう。そのひとに米国にはアジア太平洋に友好国が数々あるが、中国には皆無だとする。■


2015年9月4日金曜日

軍事パレードの裏でPLAN艦艇がアリューシャン列島を「無害通航」していた


北京のパレードに耳目を集める間にPLAN艦船がアッツ島まで足を伸ばしていたようです。国際法を盾にした行動ですが、一方で国際法を堂々と無視する行動は矛盾していませんか。でもそれが中国の実態なのでしょう。軍事パレードよりもこちらのほうが戦略的に重要な意味を有しているかもしれません。

 Chinese Warships Made ‘Innocent Passage’ Through U.S. Territorial Waters off Alaska

By: Sam LaGrone
September 3, 2015 5:37 PM

中国海軍艦船5隻が米領海内を横断してベーリング海から南下するという海洋法で認められた軍艦の他国領海航行をしたと米国防関係者が USNI News に3日伝えてきた。
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  1. 人民解放軍海軍(PLAN)の小戦隊は「無害通航」でアリューシャン列島の12カイリ以内を通過したという。

  1. 「PLAN所属艦艇5隻はアリューシャン列島海域を迅速かつ慎重に国際法に準拠し通過した」と米北方軍がUSNI Newsに声明文を送ってきた。

  1. 北方軍司令部は通過時間を伝えていないが、3日早朝あるいは2日深夜の通過可能性が高い。USNI News が把握した中国戦隊の位置はアッツ島南方300カイリ地点であるためだ。

  1. 艦船部隊は国際水域からベーリング海に入り、ロシアのカムチャツカ半島と米アッツ島の間を通過したと国防関係者が USNI News に伝えてきた。PLAN艦船がベーリング海に入るのは初めてで部隊はアッツ島東を通過し、アリューシャン列島を通過し、北太平洋へ移動した。

  1. 無害通航には事前通告は不要で海洋法上の権利として国連海洋法条約が認めている。国際法規約では軍艦は沿岸国の領海を「当該国の安寧秩序を乱さない限り」航行できる。(UNLOSC第19条)

  1. 具体的には無害通航をする軍艦は航空機の発艦着艦、軍事情報収集、宣伝活動、小舟艇の発進、火砲の使用、魚類捕獲等航行と無関係のいかなる行動も当該国沿岸を通航中は許されていない。

  1. 無害通航はジブラルタル海峡やホルムズ海峡のように国際的に認知された通行領域を軍艦が航行するのとは意味が違う。軍艦は通過領域を通っても無害通航とはされない。

  1. 今回のPLAN小戦隊は水上戦闘艦3隻、揚陸艦1隻および給油艦1隻の構成で中国がロシアと実施した共同海軍演習でロシア太平洋地区と日本海に派遣した7隻の一部だ。

  1. 中国配信の記事によればPLANが派遣したのはタイプ051C旅州級誘導ミサイル駆逐艦 瀋陽(115)、ロシア建造のソヴレメンヌイ級誘導ミサイル駆逐艦 台州(泰州?)(138)、タイプ54A江凱II型フリゲート艦 臨浙(547)および衡陽(568)、タイプ071強襲揚陸艦 長白山,タイプ072A戦車揚陸艦 云雲山、タイプ093給油艦 太湖だ。

  1. 海洋法専門家によれば無害通航を中国が実施したのは米国および国際社会へメッセージを伝える意味があるという。

  1. ベーリング海進入は中国が第二次大戦終結70周年を大々的に祝うのと同じタイミングで、今月末には習近平主席が訪米する。

  1. 「一石三鳥ですね」とジェイムズ・クラスカ(海軍大学校で国際法の教鞭をとる)がUSNI Newsにコメントしている。

  1. アリューシャン列島をPLAN艦船が通過したのは合法的だが、米海軍の駆逐艦が中国本土と海南島間の海峡を通過するのと同じだとクラスカが見る。

  1. 自らの本土近くではしつようなまでに自国海域の境界線を守る中国は無害通航をしようとする外国艦船に事前通告を求めることが多々あり、中国自体は国際海域と理解される地帯でも自国航空機や艦船を航行させて国際社会に挑戦している。米軍艦船・航空機は航行の自由を守るためのミッションを南シナ海で定期的に実施しており、PLAは対抗して戦闘機を飛ばしたり、威嚇的な非難を加えている。

  1. 米国は南シナ海では無害通航の権利を行使しておらず、この点でオバマ政権とペンタゴンの間で意見が衝突している。

  1. クラスカによれば中国は米国にとってのベーリング海は中国にとっての南シナ海と同じなので、今回のPLAN遠征は挑発的と受け止められかねないと考えているという。

  1. 「米国に大きなメッセージを送ったつもりなのでしょうが、米側がきわめて冷静に対応したことにに驚いているかもしれません」■