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2016年1月16日土曜日

★★ノースロップ>次世代戦闘機はサイバー回復機能を搭載する




今のところ第六世代戦闘機(この用語が正しいのでしょうか)について中身が一番伝わってくるのがノースロップ・グラマンのようです。生き残りをかけて次期戦闘機事業の獲得を狙っているようです。今回の内容からは同社の目指す方向が見えてきます。

Northrop Lays Out Vision for ‘Cyber Resilient’ Next-Gen Fighter

Lara Seligman 12:51 p.m. EST January 15, 2016
http://www.defensenews.com/story/defense/air-space/strike/2016/01/15/northrop-cyber-resilient-next-gen-fighter/78833308/
635884555563533319-NGAD-2.jpg(Photo: Northrop Grumman)
PALMDALE, Calif — ノースロップ・グラマンはF-35共用打撃戦闘機事業に参画しながら、次世代の機体構想を練っている。
  1. ノースロップで航空宇宙部門を統率するトム・ヴァイス社長は長距離無人戦闘機構想を今週発表して、レーザー兵器と高性能「サイバー回復力」“cyber resiliency” を搭載し、今よりネット化が進む2030年代の脅威対象に対抗する構想だという。
  2. ペンタゴンは第六世代戦闘機の初期構想作成にとりかかっており、空軍F-22と海軍のF/A-18の後継機づくりを2030年代の想定で進める。昨年はじめに空軍は将来の航空優越性確保に必要な技術要素の検討作業を開始している。
  3. 産業界も次の競作の準備を開始した。ロッキード・マーティンは第五世代戦闘機F-35で主契約企業だが、次代の戦闘機構想の作成にとりかかったと伝えられ、ボーイングはこっそりとモックアップ案数例を発表している。
  4. ノースロップはF-35で協力企業であり同時に第六世代戦闘機では主契約企業の地位をめざすとヴァイス社長は報道陣に1月14日話している。同社は次世代戦闘機の性能指標の決定を目指した研究を始めていると同社で技術研究と高度設計事業を担当するクリス・ヘルナンデスが述べている。
  5. ヴァイス社長発言は同社が主催したカリフォーニア州の同社施設査察旅行ででたもの。Defense Newsは旅費、宿泊費を同社から受け取っている。
  6. ペンタゴンがこれから解決すべき問題に機体のデータと通信内容の保全がある。これからはサイバーハッキングがあたりまえになる。サイバー攻撃をすべて回避することは不可能だ。かわりに侵入を探知し、被害の発生を防ぐ、とヴァイスは言う。
  7. 「人体は感染を受けやすいが、皮膚表面で感染をすべて食い止めるのは不可能だ。感染した場合に身体が反応する」とヴァイスは言う。「人体には素晴らしい機能があり白血球がウィルスを攻撃し、制御して身体に害が広がるのを防いでいる。2030年には同様のシステムが実用化しているだろう」 次世代の制空戦闘機にはデジタル版の白血球が搭載され、システムがサイバー感染しても広がるのを防げるとヴァイスは見る。
  8. もう一つ業界が考えているのは速度と航続距離の完璧なバランスだ。速度と飛行特性はこれまで戦闘機で最重要視されてきたが、ヘルナンデスによれば将来の機体では速度を犠牲にしても航続距離を重視するという。飛行距離は利用可能な基地が世界各地で減る中でもっと重要になっていくというのだ。 「飛行距離と速度は直交関係にある。亜音速機は超音速機よりずっと飛行時間が長い。次世代戦闘機でも超音速飛行性能はあるだどうが、現在の戦闘機ほどの速さには及ばないだろう。その分航続距離が重視されるからだ」
Northrop Grumman's rendering of a sixth-generationNorthrop Grumman's rendering of a sixth-generation fighter jet (Photo: Northrop Grumman)
  1. 第六世代機の課題には機体での熱制御もある。超音速飛行、指向性エネルギー兵器が排出する熱の処理だ。ここに高出力レーザー兵器が加わると熱制御はもっとむずかしくなるとヴァイスは指摘する。現在の熱制御のレベルは「不十分」と言う。
  2. 「高出力レーザー兵器システムを超音速機に搭載して発熱が発生しないとは誰も期待できない」とヴァイス社長は述べた。「そのため相当の時間をかけて熱の再利用を図る方法を模索していくことになりそうだ」
  3. ペンタゴンと業界はこれとは別に第六世代戦闘機がそもそも有人機になる必要があるのかで答えを模索することになる。答えはそんなに簡単ではないとヴァイスは言う。多分物理的に機内に乗員が入ることはないだろうが、遠隔操作でミッションをこなすのだろう。「ジェット機に人をこれからも乗せるのか、それとも人をミッションにあてておくのか。本当にコックピットに人が乗り込む必要があるのかで答えはそのうち出そうだ」
  4. 未来の飛行隊は有人機と自動飛行機の組合せで無人機を統率する「ミッション指揮官」が隊を指揮するのではないかとヘルナンデスは言う。
  5. だがロボットは頭脳のかわりにはならず、人間にはソフトウェア改訂がなくても最新の情報に適応できるとヴァイスは指摘する。そこでノースロップが取り組んでいるのは自ら学習して進化できるソフトウェアでリアルタイムで意思決定できる機能だという。
  6. この技術は第六世代機には間に合わないかもしれないが、その後の改修で搭載できるかもしれないとヘルナンデスは言う。
  7. 「生身のパイロットに何か新しいことを教えるときにわざわざ脳を取り替える必要はないでしょう。ならば、学習機能のついた機械もできるのでは。進化できる機械が可能ではないでしょうか」(ヴァイス)■

なるほど、人工知能、マンマシンインターフェース、自律飛行、排熱の再利用技術など新しい次元の課題がそこまできているということですね。ノースロップが費用負担した報道陣向けツアーであることをちゃんと記するのは良いことだと思います。


2015年12月17日木曜日

★★★ノースロップの考える第六世代戦闘機はここが違う



お伝えしたようにF-35は日本国内生産も始まり、これから各国向けに普及が始まる段階ですが、一方で技術陣はその次の「第六世代」機の検討を始めています。ビーム兵器やおそらく電子戦装備でこれまでとはちがう性能を発揮することが期待されているのでしょう。また中露の数で勝る装備に対してこれらハイテクで技術的に優位に立つ第三相殺戦略の重要な一部となるはずです。今回はそのうちノースロップ・グラマンの最新動向をお伝えしましょう。

Northrop Grumman Studies Technologies for F-22, F/A-18 Replacement

Dec 12, 2015 Guy Norris and Jen DiMascio | Aerospace Daily & Defense Report

http://aviationweek.com/defense/northrop-grumman-studies-technologies-f-22-fa-18-replacement


Northrop Grumman

PALMDALE -- 米空軍、米海軍が第六世代戦闘航空機材へ関心を高める中、ノースロップ・グラマンは指向性エネルギー兵器と熱管理を将来の中核技術として研究を加速中。

  1. 同社はかつてYF-23で制空戦闘機参入しようとしたが、ロッキード・マーティンのF-22の前に敗れた。今回、同社は高性能戦術戦闘機案として任意有人操縦可能な無尾翼機の構想図を発表し、ラプターやボーイングF/A-18E/Fの後継機を目指す。次世代制空戦闘機next generation air dominance (NGAD)では不明な点が多々あると同社も認めつつ、熱負荷対策技術がカギになるという。
  2. 熱負荷は搭載兵装の高性能化とくに機内搭載レーザーや強力な電子装置、センサー類、推進系から発生する。この問題はF-35の初期テスト段階でも認識されており、今後登場するNGAD案ではもっと深刻な課題になると見られている。ノースロップはNGADとして空軍向けF-X(今やF-22に加え、F-15Cの後継機との位置づけ)、海軍向けF/A-XXの双方を開発する意向。
  3. これまでの制空戦闘機と根本的にちがうのは指向性エネルギー兵器の搭載だ。「NGADでは機体と兵装を一体化し、これまでにない形になる」とトム・ヴァイス(ノースロップ・グラマン航空宇宙システムズ社長)は言う。レーザー技術で小型化が進み、大掛かりな化学反応装置が半導体電子レーザーに代わりつつあるが、ヴァイスは熱管理が依然としてカギであるという。
  4. 「現在最高性能のレーザーでも効率は33%にすぎない。もし100kW級のレーザーで200kW級に匹敵する性能を発揮させたらとてつもない熱が発生する。これが2メガワットならどうなるか。機体が発光するのを防げるだろうか」とし、この課題を解決できるものがNGADで勝ち残れるという。「熱力学が勝敗を決定するでしょう」
  5. 熱管理の課題への答えの一つが米空軍の統合機体エネルギー技術Integrated Vehicle Energy Technology (Invent) でボーイングが開発中の適応型スマート機内発電システムだ。ノースロップの研究技術高度設計部門の上級副社長クリス・ヘルナンデスは「ある会社の研究内容は業界で共有できる。その機会を待っている」と語る。
  6. だがノースロップも自社で独自の熱制御技術を開発中だ。「待っている余裕がありません」とヘルナンデスは言う。「当社にはレーザー関係の研究に必要な設備がすべて使える実験室があります」
  7. ヴァイスもこう述べる。「他社に依存していられないので、自社で新しい発明をめざし、厖大な発熱への対応策を考えている」 ヴァイスは詳細を語らないが、Inventで構想する蓄電装置とは違うという。
  8. 「蓄熱してもある段階で放出する必要があります。だが『発射』も必要となります」とし、レーザーの発射回数について述べている。「当社の考え方はレーザーを搭載する場合、無制限の発射回数を確保するため、連射間隔、有効射程で制約があってはならないでしょう。そこで熱力学の問題に戻ると『こっちの蓄熱装置はいっぱいだから熱を放出しなくちゃ』と次の発射が可能となるまで敵にこちらに来ないでとは言えないでしょう。蓄熱装置だと思考が制約されてしまう。、わが社は自由に創造思考したい」
  9. 兵装類や電子装置が放出する熱は熱交換器を適応型エンジンの「第三の風流」内に設置して排出できる。このエンジンも空軍研究所が取り組んでいる。「エンジン技術はVaate(多用途低価格高性能タービンエンジン)事業により性能が向上するが、まだエンジンの姿は見えてこない」とヘルナンデスも言う。「Vaateで進歩するエンジン技術はこれから必要となる技術の核として応用可能だろう」
  10. ヘルナンデスによればNGAD設計では相当の空間を確保している。「今の段階で判明している技術とこれから出てくる技術があり、航続距離、速度、兵装類、残存性、操縦性の要求水準はまだ不明ですからね」
  11. その答えの代わりにノースロップの高度技術設計部門はScaled Composites社の元トップ、ケヴィン・ミッキーが率いており、「モデリングとシミュレーションを強化し、同じ問題に異なる解決方法を試している」という。
  12. ただし、一機で需要すべてをこなそうとしたF-35の経験は各軍や業界でまだ鮮明で、今の中心は価格にも置かれている。「なんでもうまくやろうとすると高くなる。そこで重点を技術、設計、性能で解を求めるが、すべからく費用と相談することとしている」とヘルナンデスは言う。
  13. 航続距離も設計で重要な要素だが、今回はいささか理由が違っている。「将来は海外基地が減るだろう」とヘルナンデスは見る。「飛行距離が重要なら搭載兵装量は少なくなる。また敵側は防空体制を強化していることが分かっている。そのため残存性が極めて重要になる。そのため機体の形状はB-2を小型化したように見えるでしょう。ノースロップの強みなんですよ」という。■