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2018年11月26日月曜日

イスラエル、F-15IA採用の最終決定はまだ

IDF: No decision on advanced F-15s as yet 

イスラエル国防軍:高性能版F-15導入は最終決定ではない

Yaakov Lappin, Tel Aviv and Jeremy Binnie - IHS Jane's Defence Weekly
22 November 2018

イスラエルは高性能版F-15の調達を検討中だが、最終決定はまだ下していない
Source: Boeing

スラエルは高性能版ボーイングF-15多任務戦闘機導入を最終決定していないとイスラエル国防軍(IDF)がJane'sに語った。

「あらゆる可能性をIDFはIAF(イスラエル空軍)、国防関連機関と検討中であり、結論は出ていない」とIDFが11月20日に声明を出した。

Ynet ニュースが11月19日にF-15IAの採用をIAFが決めたと報じていた。記事ではイスラエルが高性能F-15IAの調達を決定し同時にロッキード・マーティンF-35の50機購入もすすめるとしていた。

F-15IAとはF-15高性能版イーグルのイスラエル制式名称で、サウジアラビア向けF-15SAは生産中でカタールもF-15QAを発注している。カタール向け機材にはイスラエル企業エルビットの大型ディスプレイが搭載されている点が異なる。

YnetによればイスラエルがF-15IA導入を検討した際に米国が反対し、イスラエルのF-35発注が減るのを恐れたとある。同記事で言及した文書はリーバーマン国防相が決済したとありIAFはF-35三個飛行隊の整備をそのまま進める。一個飛行隊は25機構成だ。■

だそうですが、高性能版イーグル導入は既定の方針といってよいのではないでしょうか。中東でこぞって新型機導入が進む中で旧型機多数を抱え込む日米の空軍は指を加えてながめるしかないのでしょうか。それとも?

2017年5月17日水曜日

★★★破損機材二機からF-15を再生したイスラエル空軍の実力に脱帽



すごい。やはり国家の存続がかかった緊張状態を毎日続けて70年になる国は違いますね。イスラエルを敵に回したくないものです。

Meet the Israel Air Force unit that frankensteined a totaled F-15

F-15二機の使用可能部分をつなぎ合わせて一機再生してしまったイスラエル空軍
By: Barbara Opall-Rome, May 15, 2017 (Photo Credit: Photo by Heidi Levine)

TEL NOF AIR BASE, Israel – ボーイングロッキード・マーティンなど米企業がさじをなげたことをイスラエル空軍第22補給処が普通にやりとげてしまった。
  1. 2011年の事故でボーイングが喪失扱いと断念したF-15Bアローヘッドが飛行再開している。来月で事故から6年になる。事故は離陸直後にペリカンを空気取り入れ口に吸ったことで大火災が発生した。乗員2名は緊急着陸に成功したが、機体後部は完全に焼け落ち修理不可能と判定された。
  2. その後三年余り、機齢35年の同機の処遇で議論が続いていた。機体の前方部は無傷なのでコックピットとエイビオニクスは予備部品にすればよいという声が出た。そこに第22補給処が前方部分と20年間も「機体の墓場」に放置されたままの単座型F-15の後部と接合する提案をしてきた。
  3. 「その案が出たのでボーイングに実施可能か照会したが、答えは返ってきませんでした」と第22補給処の指揮官マキシム・オルガド中佐がDefense Newsに語っている。「再度同社に聞くと、冗談と思って真剣にしなかったと判明したのです」
Arrowhead第22補給処は事故機の前方部分と20年間も「機体の墓場」で放置されていた別の機体の後部を接合した。 Credit: Photo by Heidi Levine
  1. ボーイングは声明文で第22補給処との協力関係は40年続いており、イスラエル空軍F-15の即応体制維持の一助となっている「同部隊のプロ意識や能力の高さには敬意を払っており、教えられることもあり相互に恩恵が生まれている」と述べた。
  2. 第22補給処の航空機技術部門の責任者ハイム・ミルンゴフ中佐は16年間の同部隊勤務を振り返り、大損傷を受けた機体「7機か8機」を現場復帰させているが、すべて同社が全損判定していたという。
  3. 先のアローヘッド機の例で言うと尾翼番号の122は焼け落ちた機体の番号110と機体を再生した同部隊の番号を組み合わせているとミルンゴフ中佐は説明。「複座機をそのまま捨てるのはもったいない」
Arrowhead再生し飛行できるようになった機体 Photo Credit: Israel Air Force
  1. オルガド中佐は総費用は百万ドル未満とし、部品代や人件費もすべて含んでの話だという。「同じ機体を調達すれば40百万ドルではすまないでしょう」
  2. 「他国なら廃棄して当然の機材を再生させる空軍は他にないでしょう。他国なら部品どり用ですよ。でもこれが本部隊の役目です。無駄な支出をする余裕はありません」
  3. 他にも無駄にできないのは時間だ。機体が毎日第22補給処にあれば作戦機材の即応体制が低いことになる。そのため第22補給処はボーイング、ロッキード、ベル他米メーカーとの連絡を欠かさない。
  4. メーカー案が空軍が設定した補修時間を超過すれば同部隊に1,300名ほどいる技術陣、機体構造専門家、ソフトウェア技術者等が解決のための次善策を探る。
  5. 「ロッキード、ボーイング両社とはいつも相談しています。知識の共有は合意事項であり、わが軍将校も米国に駐在しています。世界で機体をここまで過酷に取り扱う国はなく、欠陥が最初に出てくるのがここなんです。メーカーが先に問題を見つける場合を除けば、自分で解決策を見つけなくてはいけません」(オルガド)
  6. 中佐は別の例を出してくれた。2014年のガザ戦役でロッキードF-16のバルクヘッドに亀裂が発生した。「ロッキードは安全情報を出して、亀裂の点検前に燃料をすべて取り出せと伝えてきました。それだと一機に一か月かかります。全機点検すれば何年もかかります」
  7. そこでロッキードの連絡のかわりにオルガド中佐のチームは超音波試験装置で空軍の同型機すべての点検を三週間たらずで完了した。「われわれの解決策では分解作業を省略できました。一日で4機5機が点検できました。全機検査がおわると対応が必要な機材を対応の優先順位づけし、残りの機材はそのまま飛ばせました」
  8. だがそこで終わりではなかった。オルガド中佐によればロッキード・マーティンは亀裂が8ミリ以上見つかったバルクヘッドは交換の必要があると技術情報を改訂した。その場合該当機はバルクヘッド交換だけで18か月にわたり運用できなくなる。
  9. 「たしかにそのような亀裂は一部にありましたが、分解交換はしなかったです。かわりにハイムの部隊が補修方法を確立しました。メーカーは補修は不可能と言っていましたが、ハイム中佐の補修は効果があるだけでなく基地で実施できる点が大きいのです。補給処まで機体を移動する必要はないんです」
  10. 「そこで2014年7月にイスラエル空軍司令官アミール・エシェル処す砲が戦闘中の飛行隊基地を視察すると、即応体制が100パーセントになっていました。司令官は現地からこちらに電話をかけ当部隊の保全補修機能の高さを評価してくれました。もしメーカーの言う通りに補修を待っていたら飛行隊は戦闘に投入できなかったでしょう」
  11. ロッキード・マーティンはこの件について論評を避けている。
  12. イスラエル空軍に導入が始まったロッキードF-35アディール・ステルス戦闘機について、オルガドは第22補給処がここテルノフ基地内に大規模整備施設を建設中だ。一般的な保全活動は砂漠地帯の基地でもできるが、大規模整備は当初予定のイタリアではなくテルアヴィヴ南部のここでおこなうのだ。
  13. 「イタリアにもどこにも行きません。絶対に。各機はイスラエルに残します。いつ必要になるかわかりませんからね」(オルガド中佐)■

2016年7月25日月曜日

★イスラエル空軍の成功の鍵は柔軟な思考形式だ



国家存続を賭けて懸命に国防力整備を図っているイスラエルには日本も大いに参考になる要素が多いです。国際共同開発に道が開けたことでイスラエルとの可能性も増えましたね。やや違和感を覚える同国の行動は目的から考える思考が背景にあるのでしょう。ただその結果として日本もF-22導入をイスラエルとともに断念せざるを得なくなったのは皮肉ですが。

War Is Boring We go to war so you don’t have to

An IAF technician with her F-15 at Hatzerim Air Force Base. IDF photo

How Israel’s Air Force Dominates the Sky

The secret is flexibility

by ROBERT FARLEY
イスラエル国防軍(IDF)の航空部門(IAF)は1960年代から一貫して国防の中心だ。戦場を制圧し一般市民を空爆から守ることで戦力を発揮しイスラエル国防軍に優位性を大きく与えている。同時にIAFは遠距離攻撃能力を遠隔地に実施する能力を実証している。
  1. IAFの今日の姿は効果的な訓練、敵側の弱点、戦力整備と導入の柔軟な対応で実現した。長年に渡りイスラエルは空軍主力機の調達に各種の選択肢を使い、フランス、米国からの調達に加え国産化も希求してきた。結局、米国製機材と国産開発の2つに落ち着いており、これが功を奏している。
Israeli F-16I fighters fly in formation on May 10, 2011. IAF photo
  1. 建国間もないイスラエルは入手可能な武器は手当たり次第に確保していた。このためIDFは古色蒼然たる各種装備を取り混ぜて運用しており、大部分はヨーロッパ製だった。
  2. 1950年代末になるとイスラエルは武器調達の関係を英仏両国とka確立する。フランスとは関係を深め、ミラージュ戦闘機はじめ高性能装備の導入に成功し、核開発でもフランスの技術支援は大きかった。
  3. ミラージュはIAFの主力戦闘機として1967年の6日間戦争の開戦直後の数時間で隣国の空軍部隊を壊滅させている。
  4. ところがフランスが武器禁輸措置を1967年に適用しイスラエルは苦境に立たされた。IDFは戦闘機をもっと必要とし、ミラージュで限界を感じていたのは中距離対地攻撃能力だった。このため、イスラエルは古来からの戦法、必要な物は盗め、を実施しスパイ活動でミラージュの技術を入手する。おそらくフランス当局もある程度これを認めていたのだろう。
  5. ここから戦闘機二種類が生まれた。イスラエル航空宇宙工業(IAI)のネシェルNesher とクフィルKfir だ。後者は強力なアメリカ製エンジンを搭載し、IAFの主力戦闘機になった。
  6. 両機種とも輸出に成功し、ネシェルはアルゼンチンが、クフィルはコロンビア、エクアドル、スリランカが運用した。
A Nesher fighter, an Israeli-made version of the Mirage 5, in Argentina in 2010. Jorge Alberto Leonardi photo via Wikimedia
  1. 両機が国内航空宇宙産業の発展につながり、イスラエル経済全体に波及効果を産んだ。国家財政で軍事技術を開発しても民生技術にイノヴェーション効果が出るとは限らない。
  2. ただしイスラエルの場合は政府投資が民生技術の初期開発段階で大きな後押し効果を産んだ。クフィルの成功によりイスラエルも国内で航空宇宙技術を確立できるとわかり、海外依存を減らせた。
  3. それでもイスラエルは海外調達も大規模に続けた。IDFはF-4ファントムを1960年代末に導入し、1970年代中葉にはF-15イーグルを調達した。後者では最初の機材が安息日に到着したことで政治危機も生んだがその結果、イトザク・ラビン首相が誕生し、国産戦闘機開発に舵を切ったのだ。
  4. 米国やソ連の空軍部隊と同様にIAFもハイ・ローミックスの戦闘機整備を目指した。これがラヴィ Lavi軽量多用途戦闘機の開発につながり、F-15イーグルを補完する存在とされた。
A Lavi B-2 prototype Muzeyon Heyl ha-Avir, Israel. Photo via Wikimedia
  1. ラヴィはF-16ヴァイパーが独占することになる隙間需要に応える存在で、一部は米ライセンスを受け、外観はF-16に酷似しながら主翼構造が異なっている。
  2. だが軍事技術を取り巻く環境は変化して、ラヴィの開発には巨額の国家投資が必要でありながら、F-16をそのまま買ってきたのと比べて得られる優位性は僅かだと判明する。
  3. さらに米国の輸出規制体制はフランスより厳格であり、違反した場合は危険な結果につながるとわかった。
  4. ラヴィも輸出すれば成功するはずと楽観視されていたが、米国技術を多用した戦闘機を堂々と輸出するのを米国が黙認しないのは明らかだった。このためラヴィ商談を進めれば問題はこじれるのは必至だった。
  5. 1987年8月にイスラエル政府がラヴィ事業を終了させると、IAIや関連部門から抗議の嵐が生まれた。同機を復活させる政治工作も失敗し、F-16の大量導入に踏み切る。
  6. その後、ラヴィはF-22ラプター輸出の途も閉ざす結果を産んだ。イスラエルがラヴィ(F-16も含む)の技術を中国に提供したことでJ-10が生まれたので、米議会はF-22輸出を全面的に禁じた。イスラエルも他の数か国同様にラプター取得の可能性がなくなり、同機生産が短命になる結果を産んだ。
Israeli F-16Is in flight. U.S. Air Force photo

  1. 純国産戦闘機開発の代わりにイスラエルは米国機材の大幅改造が好みのようだ。F-15I「雷鳴」とF-15I「暴風」は大幅改修を受けイスラエル用に特化した機材になっている。
  2. 両機種とも航続距離が伸び、エイビオニクス性能が引き上げられ、IDFは本国から遠く離れた地点でも十分に戦果をあげられる。
  3. このうちF-15IはF-15Eストライクイーグルの派生型で、IAFの長距離攻撃機の中心だ。F-35も同様にイスラエル仕様に改造しており、ソフトウェアの高性能化がそのひとつだ。
  4. IAIは多大な成功をとげてきたが、戦闘機事業は例外だ。IAIの成功は国内外向けに航空機部品を開発し販売することで達成しており、弾薬類、エイビオニクスが代表例だ。
  5. IAIはUAV市場にも参入しており、国内外で大きな業績をあげている。ラヴィで失敗したがイスラエルのハイテク国防産業分野は概ね良好な業績で、民生分野へも波及効果がある。
  6. イスラエルの国家産業政策の目標はハイテク・イノヴェーションに資金投入し国防と経済成長を同時に進めることだ。
  7. 現在のイスラエル航空宇宙戦略では米国との良好な関係の維持が欠かせない。これは機材の面でも技術共同開発にもあてはまる。
  8. イスラエルに幸運なことに米イスラエル同盟関係が当面は安泰だ。F-22は機密情報保全の懸念で導入できなくなったが、それで両国関係全体が危機になったわけではない。
  9. 今後想定外の事態が発生して、あるいはイスラエルが米国以外の相手先を探す必要が生まれても、イスラエル産業の実力は相当のもので部品やシステム開発能力があり相手先が見つからない事態は想像しにくい。■


2013年6月28日金曜日

一足先に受領するイスラエル向けF-35Iの概要とイスラエル空軍の期待

   
   
   

Israel Will Be First Partner Nation To Fly F-35s

By David Eshel
Source: AWIN First
aviationweek.com June 26, 2013
Credit: Lockheed Martin

F-35統合打撃戦闘機購入契約こそ遅れたがイスラエルは導入を決定したほかの8カ国に先駆け同機運用を実施する。

「イスラエルが米国以外では初のF-35運用国になります」とロッキード・マーティンでF-35総合調整・営業開発を担当するスティーブ・オブライエンSteve O’Bryan 副社長はパリ航空ショーで明らかにした。最初の飛行隊は2018年に初期作戦能力を獲得する予定。
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「F-35導入各国向けにそれぞれ異なる機種となりますが、後日最新版にアップデートできます、ただし利用可能となった後で」とオブライエンは言うが、つまり各国用に製作して引き渡すということだ。

「各 国別に特定の性能を開発中で発注国の同意があればその内容をその他国にも公開できます。たとえばノルウェー向けの対艦ミサイル運用ソフトウェアはノル ウェー専用になっていますが、ノルウェーが該当ミサイルを海外販売しようとすれば公開可能となります。同じように高性能の電子戦装備、データリンクや個別 のソフトウェアをイスラエル空軍向けに開発していますが、現状ではイスラエル専用の仕様になっています」

イスラエルの要求機能は機体性能に完全統合され、ステルス特性を犠牲にせずに同国仕様にあわせてあるという。

イスラエル空軍パイロットがエグリン空軍基地でF-35A訓練を開始するのは2016年初頭の予定だ。一号機がイスラエル空軍に納入されるのは2017年になるという。

イ スラエル空軍向け19機は低率初期生産(LRIP)のロット8から10で生産する。同空軍の発注は5ヵ年で27.5億ドル。追加発注が2018年に次の 5ヵ年計画として期待される。本格生産に入れば生産量が増えて単価も85百万ドル(その時点のドル価値で)を下回る期待がある。

追 加発注の支払いをめぐり米政府と交渉が始まっている。イスラエルは米国から支払保証の合意を取り付け、一部はイスラエル向けに確保済みの海外軍事販売予算 を活用したいと考えている。仮にイスラエルの希望通りの内容が承認されれば、イスラエルは金利分だけの負担で追加発注を確保でき、二番目の戦闘機小隊を迅 速に編成できるようになる。

「機 体とともにAIM-9X短距離空対空ミサイル、レイセオンのAIM-120AMRAAM視程外発射可能対空ミサイルBeyond Visual Range (BVR) AAM をイスラエルは受領する予定です。」とオブライエンは加える。F-35はレイセオンAIM-9Xを主翼下に搭載し、ステルス性を犠牲にしているが、それは 現行のブロック1ミサイルが機体内に搭載できないからだ。この欠点はブロックIIで改善予定だ。
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に もかかわらずF-35の搭載兵装で理想的なのはAMRAAMミサイルで「最初に探知、最初に発射、最初に撃墜」戦略効果を最大限にする選択だ。次世代の BVR-AAMではアクティブ、パッシブ双方の探知方式が使えるので、迎撃範囲は100 kmを超える。このためラファエルのパイソンVミサイルは同機に搭載しなくてもよいとの意見が生まれている。次世代モデルのパイソンVIは最初から同機搭 載の設計だが、イスラエル空軍によるとスタナー Stunner 改良型あるいは新型AAM搭載の可否を決めるという。

F- 35は航空戦闘を「ネットワーク形成」で全情報を全機と共有して実施する仕様だ。さらにハリス製の多機能高性能データリンク Multi-Function Advanced Data-Link (MADL) の端末装置を支援機に搭載し、情報共有をさらに広げ、F-35各機が利用できるデータを最新にできる。また、F-35はリンク-16仕様の接続能力がある が、衛星リンクも加えて、安全かつ探知されにくい通信を長距離で行うことができるはずだ。
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ロッ キード・マーティンは2012年8月に海軍航空システムズ本部から206百万ドルの契約を受けており、イスラエル製システムをF-35Aに利用する技術開 発を行っている。これとは別にロッキード・マーティンは450百万ドルで電子戦 (EW) 装備の高性能化およびイスラエル開発のシステムをF-35に統合する作業を2016年に開始する。

「イ スラエル空軍にとってF-35の利点は単なる高性能や特定の兵装の運用ではなく、戦闘空間の状況把握能力であり、長距離から目標を識別、補足する能力であ り、先制攻撃で敵を無力化できることです」と説明するのはイスラエル空軍参謀総長ハジ・トポランスキ准将Brig. Gen. Hagi Topolansk だ。「この性能は新鋭戦闘機や高性能SAMを相手に効果を見せます。F-35には性能上の制約がありますが、現時点で想定されるいかなる脅威にも対応して 勝利を収めることが可能です。戦闘空間の状況把握は単機でも可能でスタンドオフ距離から目標を攻撃できますので、いかなる敵に対しても質的優位性を当面は 保持できるでしょう」

イスラエル向けF-35Iでは調達交渉中から同国から数々の要求事項があり、基本形F-35Aのすべてのシステムにイスラエル空軍の想定する運用条件への適合を求めてきた。このため追加作業が必要となっている。

「F- 35Iにはわが国独自のネットワーク機能、兵装および電子戦装備をつけ、スパイスSpice 自律型EO誘導兵器もここに含みます。同時にAIM-9X2空対空ミサイルを搭載する初のイスラエル空軍機となります。さらに将来型の空対空ミサイル開発 を進めます。F-35の性能で航空戦は新しい次元に入ります」(トポランスキ准将)
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F-35の性能上の利点は長距離ミッションが機体内搭載兵装で実施できることで、現有のF-16やF-15よりも加速性能がよく、高速飛行を維持できることであり、この点で敵の各機種よりも有利だ。

ロッキード・マーティンはさらに航続距離を伸ばすためイスラエルの画期的なアイデイアを検討中だ。着脱式燃料タンクの利用があり、エルビットシステムズサイクロン Elbit Systems Cyclone が開発中。発想としてはF-22向けの着脱式燃料タンクと似ており、各425ガロンを搭載し、主翼から分離するパイロンを使い、落下後は完全なステルス性 を回復できる。合計900ガロンの燃料追加でF-35Iの作戦半径は大幅に延長でき、イスラエル空軍は空中給油なしで同機を通常作戦半径の外に送り出すこ とができる。■

2013年6月4日火曜日

ロシア製高性能ミサイルS-300がシリアに引き渡されたらどうなるか

 なかなか見えてこないシリア情勢ですが、関係各国の動きのなかでもロシアには要注意です。今回取り上げる高性能対空ミサイルは単体では機能せず、システムで考えるべきものですが、意外に大きな影響を同地域に与えそうです。その中でも現実を厳しく見つめるイスラエルの考え方には日本ももう少し注意して追いかけていく必要があるのではないでしょうか。


Potential S-300 Sale To Syria Catches Israel’s Attention

By David Eshel, Jen DiMascio
Source: Aviation Week & Space Technology

June 03, 2013
Credit: ITAR-TASS/Landov File Photo
David Eshel Tel Aviv and Jen DiMascio Washington

国際社会がシリア内戦に介入すべきかを議論する中、イスラエルはシリアがロシア製S-300ミサイルを導入し防空網を強化していることに懸念を増大させている。
  1. イスラエルにとって.シリアの防空能力増強は潜在敵国と突如開戦になった場合に危険度が上がる意味があるとイスラエル空軍アミル・エシェル少将Maj. Gen. Amir Eshelは解説する。
  2. 「アサド政権は多額の予算で防空体制を整備しています」としSA-17、SA-22、SA-24の購入に加え、以前のイスラエル空爆の教訓から状況認識能力の向上を図っているという。
  3. 先 週になりロシアの外務副大臣セルゲイ・リャブコフ Sergei Ryabkovがモスクワの記者団にロシアはS-300引渡しを決定し、外国によるシリア干渉への対抗を支援すると発言している。この声明は欧州連合が武 器禁輸を緩和し、英仏両国が武装抵抗勢力への武器供与を検討中とする中で出てきたもの。もし、S-300が導入されれば地域紛争の危険性が増大するとエ シェル少将は見ている。
  4. そもそもS-300は100 km 超の範囲で弾道ミサイルや航空機の迎撃を想定し、S-300PMU2 ファヴォリFavorit だと6発同時発射で高高度と低高度の双方で同時に目標12個と交戦が可能。このS-300PMU2には対抗できる戦闘機は存在しない。
  5. 「ロ シアがS-300をシリアに販売すると勢力図が塗り替えられるでしょうね」と見るのは戦略国際研究所Center for Strategic and International Studiesのアンソニー・コーズマンAnthony Cordesmanだ。「引渡しが実現すれば米ロ交渉は無意味になし、同じような取引がイラン向けに起こることへの警戒感を呼び、イスラエルはシリア内戦 に引きずり込まれ、米国および同盟国の航空優勢能力を下げることになるでしょう」
  6. 一見するとS-300はS-200から大きく変化ないように見えるとコーズマンは語るが、実際はS-300は低空能力を大幅に改善し、ジャミングに強く探知が困難という。
  7. ただしS-300をシステムでみると未知数が多いという。レーダーとの組み合わせはどうなのか、発信所の機能水準でも不明な点があり、シリアの防空体制全般の向上にどこまで貢献するか見えてこないという。.
  8. ま たS-300がシリア防空網に統合化するには時間がかかるのではとの見方もイスラエルにある。ロシアが現地で技術支援しないと実用化できないとする見方 だ。統合化にはシステムを熟知し使いこなすための長期間の投資として、運用のみならず整備のための施設作り、運用部隊の訓練が必要だ。シリア軍の現状から 見てそれだけの人員と予算をこのために確保できるか疑問だというのだ。さらに国内武装反乱勢力から機材を守れるかも疑わしい。
  9. 低い確率とはいえ、バシャル・アル・アサド大統領Bashar al Assad が同システムをレバノンのヒズボラ勢力に引き渡す可能性もあり、イスラエルの視点ではこれが実現したら極度に深刻な事態となり報復攻撃は必至だという。
  10. 地 政学の観点でイスラエルに直接影響が出てくる。シリアが「もし明日崩壊したら、大量の兵器が分散し、各方向から自分たちに銃口が向けられる」とエシェル少 将は見ている。「奇襲攻撃の方法は多様化しています。ひとつの事件がエスカレートして数時間で対応を準備せざるを得ない対応が想定されます。つまり、イス ラエル空軍のもつ力を総動員することになります」
  11. シリアがロケットやミサイル数千発のをイスラエルに発射する事態をイスラエルは想定している、という。
  12. 高性能兵器がヒズボラのような敵性勢力に引き渡される、あるいは化学兵器の移転はわが国にとってまったく受入れられません」
  13. シ リア軍がヒズボラと共同でシリア北西の都市アルカサイルAl-Qusayrを強襲したとの報道をイスラエル空軍は注視している。同市はシリアからレバノン への交通の要所で占拠はシリア・レバノン間の移動路を確保する戦略的勝利。高性能の防空体制があれば兵器移送の阻止攻撃は高リスクになる。
  14. イ スラエル国防軍司令官ベニー・ガンツ中将Lt. Gen. Benny Gantz は「多方面で同時に戦闘状態が発生する可能性はかなりあります」と記者会見で発言しており、「地域不安定度を考慮すれば、わが軍は多方面対応の可能性に直 面しており、国防作戦の様相を書き直すような新しい現実の中におかれています」と発言している。■