2018年10月30日火曜日

★中国J-20がF-22・F-35に勝てっこない理由

China's J-20 Is No Match for the F-22 of F-35 中国のJ-20はF-22やF-35の敵たりえない

China’s first fifth-generation aircraft is having a major issue.中国初の第5世代戦闘機には大問題がつきまとう
by Zachary Keck
October 29, 2018  Topic: Security  Region: Asia  Blog Brand: The Buzz  Tags: StealthAir ForceChinaAmericaJ-20F-22F-35MilitaryTechnology


国がJ-20ステルス戦闘機で初期作戦能力を獲得したと中国国防省は2月9日に発表した。中国では西側の独壇場だったステルス機に中国が参入したと大いに宣伝している。「J-20の登場でアジア太平洋の空軍力の構図は変わる。これまで米国及び同盟国の日本だけがステルス機を運用してきたが、中国J-20の登場で独占状態は消えた」と国営通信社が配信した。


確かに中国はJ-20を米国製第5世代機のF-22やF-35に競合する存在と表現してきた。だが新たな報道記事によりこの主張が疑わしくなっている。サウスチャイナ・モーニング・ポストから「中国は初のステルス戦闘機の供用を急ぐあまり、エンジンを間に合わせのものですませた」との報道が出た。同紙によれば「性能が大幅に制限され、操縦性や燃料消費効率のみならず超音速域でステルス性へ影響が出ている」とある。


記事ではJ-20は専用のW-15エンジンを搭載予定だった。しかし2015年のテストでW-15エンジンが爆発し幸い負傷者は出なかったが、中国技術陣は「原因は複雑で単結晶タービンブレードの品質管理で疑問が発生している」と同紙に述べていた。具体的に言えばW-15の単結晶タービンブレードでは高温条件下でJ-20の操縦性を支えられない。


高性能に耐えられるエンジンが第5世代機に不可欠だ。記事ではF-22では搭載するプラットアンドホイットニーF119エンジンはアフターバーナーなしで超音速加速が可能なためステルス性維持にもつながるが、J-20で同様のエンジンが無いと超音速飛行中にステルス性が確保できないとする。


この問題は短期間では解決できそうもない。別の中国軍事筋によると中国技術陣は最高水準の単結晶タービンブレード作成は十分可能だとする。ただし高度技術の量産ができないという。このため西側の経験を活かしたテストを多数実施しながら問題が解決不能のままという。そこでとりあえずWS-10Bエンジンを搭載することにした。同エンジンは第四世代戦闘機のJ-10やJ-11戦闘機が搭載するWS-10の改良型だ。しかしWS-10Bの推力重量比ではJ-20はアフターバーナー無しで超音速飛行が不可能だ。


J-20のエンジン変更は今回がはじめてではない。当初はロシア製AL-31を使ったが、これはWS-10Bよりさらに性能が劣る。中国はロシアに働きかけ高性能エンジン売却を迫ったが中国がリバースエンジニアリングする恐れがあるとしてロシアが拒否した。実際に中国はその他軍事装備品で前科がある。ロシアから拒絶された中国は巨額費用でエンジン国内生産を目指した。「軍内部筋」によれば2010年から2015年にかけ237億ドルを投じて新型航空宇宙エンジン実現を狙ったという。中国国営通信はこうした投資が結果を生んだとし、中国中央電視台はW-15エンジンはプラットのF119に匹敵する性能を実現と喧伝していた。明らかに事実は違う。


今回のサウスチャイナ・モーニング・ポスト記事の前にも報道があった。2016年1月のロイター記事が中国が第5世代戦闘機用エンジンの製作で苦労する様子が伝えられていた。「中国のエンジンメーカー各社は多数の問題に直面している」とシンガポールのS・ラジャラトナム国際問題研究院助教授のマイケル・ラスカの発言を同記事が伝えた。ロイター記事ではJ-20、J-31はともにアフターバナーなしでスーパークルーズができず、ロッキード・マーティンのF-22やF-35に差をつけられているともある。

それでも中国はいつの日か高性能航空宇宙エンジンの生産に成功するはずと見ている。ロイター記事では中国が海外技術陣を雇用し、中国空軍関係者が生産を支援するとあるが、ロイターはその裏を取れなかった。また民生防衛双方で使うエンジン開発のため中国は3,000億ドルを今後二十年に投入するとの観測もある。

こうしてみると中国機は米国機材と同等の立場にはない。当面は。■

Zachary Keck ( @ZacharyKeck) is a former managing editor of The National Interest

★日本が空母保有に向かうのは既定方針



Is Japan Destined to Have Aircraft Carriers Armed with F-35s? 日本は空母にF-35を搭載することになるのか

Sorry, but Tokyo calls them "helicopter destroyers."日本政府は「ヘリコプター駆逐艦」と呼称している
October 27, 2018  Topic: Security  Region: Asia  Blog Brand: The Buzz  Tags: MilitaryTechnologyWarWeaponsJapan


衛艦いずもは海上自衛隊最大の艦容を誇り排水量は27千トンもある。全長にわたる航空甲板は248メートルとフットボール競技場二個半に相当する。通常はSH-60Kヘリコプター7機を搭載し、敵潜水艦を探知掃討するのが役目だが、その他捜索救難用ヘリコプター二機も運用する他、最大28機のヘリコプターを搭載できる。


こうしてみるといずもは立派な航空母艦なのに姉妹艦かがとともに「ヘリコプター駆逐艦」として就航しているのだ。


この呼称には怪しい点がある。先立って建造されたひゅうが級には魚雷と中距離対空・対潜ミサイルが搭載されているがいずも級には通常の「駆逐艦」が搭載する長射程兵装がない。唯一の武装は短距離ファランクスとSeaRAMによる自艦防御だけだ。


この区分は日本政府で「空母」とは攻撃兵器であるとの認識から生まれたものであり、攻撃兵器は日本国憲法第九条で自衛隊装備として禁じられているのである。


「攻撃」と「防御」兵器の違いは議論を呼ぶだろう。攻撃を主眼とする国であっても防衛は必要だし、防衛力も抑止効果や反撃のため攻撃手段を必要とすることがある。空母が浮かぶ航空基地として他国攻撃に用いられてきたことは否定できない。


実は日本こそ空母戦力の作戦運用を初めて行った国である。第一次大戦開始とともに日本巡洋艦の一隻が艦載水上機を使い歴史で初めてドイツ巡洋艦を爆撃した。英海軍は1918年に飛行甲板つき空母を初めて作戦投入している。帝国海軍はその後大型空母部隊を1920年代30年代通じ整備し1941年12月の真珠湾奇襲攻撃につながった。最強を誇った日本部隊もミッドウェイ開戦で米海軍空母部隊の前に敗退し、その後空母、パイロットともに消耗していった。


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日本のミサイル防衛装備整備は高額すぎるのか

JMSDF P-1(5512) fly over at Tokushima Air Base September 30, 2017. Wikimedia Commons

日本はこうして中国潜水艦を掃討破壊する

韓国は原子力潜水艦建造に踏み切るべきか



ただし空母の役割は攻撃のみではない。戦闘機を発進させ友軍の水上艦艇や基地を攻撃から守ること、敵艦船や潜水艦を探知紹介することもある。自衛隊は特に遠隔島しょ部の防衛を重要視しており、列島線南西部の尖閣諸島や琉球列島を意識している。こうした島しょ部は本土より数百マイルも離れているため防空とともに奪還作戦を複雑にしかねない。


もちろんヘリコプター空母は対潜戦で極めて高い効果を発揮する。またそのため基本的に防御装備と言えるが、上空援護や地上航空支援は行えない。だが日本がいずも級でジャンプジェットの運用を可能に設計している可能性はある。


日本はジャンプジェット機材を保有していないが、報道では取得に向け前向きであるとある。米海兵隊が運用するF-35BライトニングIIは小型揚陸艦でも運用が可能であり、9月27日にアフガニスタンに投入され初の実戦テストを行ったばかりだ。日本はF-35Bを購入していないが、通常型F-35Aはライセンス生産で42機を整備する。


F-35は優れたステルス性とコンピュータ性能が取り柄だが、飛行性能では第四世代機と比べて見劣りがするのも事実だ。(速力と操縦性)それでも従来のジャンプジェットのハリヤーやYak-38より遥かに高性能だ。ライトニングは一般的な航空優勢戦闘機より速力が劣るものの、強力なセンサー性能と低視認性で速力や操縦性で勝る敵を出し抜くだろう。つまり敵に長距離ミサイルを先にお見舞いしてから探知される前に逃れることだ。


すでに2018年5月にいずも、かがに米海兵隊機材を搭載し日本防衛を図る検討案が日本で公表されている。その前には日本国内紙が政府が航空自衛隊向けにF-35B最大40機の調達を検討中と報道していた。これはF-15Jの後継機とあったがF-35Bはリフトファンがあるので遠隔島しょ部での運用も可能だし、いずも級を改装し最大10機を運用する場合の費用も検討している。

改装では甲板に耐熱塗装が必要となる。F-35Bの垂直上昇で高熱が発生し飛行甲板が損傷するからである。ただし一部筋によれば甲板にはそのことを考慮した工事が実施済みであり、設計時から「ヘリコプター駆逐艦」から空母へ転換する前提だったことになる。ただしいずも級にはスキージャンプ式ランプがあれば垂直離陸による燃料の大量消費や甲板損傷を避けられる。

それでも空母から固定翼機を運用すれば平和主義志向の強い日本で微妙な問題となる。これは中国にも同様だ。中国も空母航空兵力の整備を進めており、PLA海軍は五年間で中型空母二隻保有まで進歩した。2020年代中頃までに4隻追加する構想といわれる。中国からはいずも級の性能について不満が出ており、日本の新鋭艦は軍国主義のあらわれとしている。

日本が空母航空兵力を再整備すれば帝国海軍の戦時中の行いを連想させかねない。だが二隻がジェット戦闘機十数機を搭載しても日本の外交方針が急に強硬になるわけでもあるまい。世界にはブラジルのように空母運用しつつも領土拡張の野心を示さない国もある。豊かな島国の日本で空母数隻を運用して長大な領土防衛にあてることは理解の範囲内だ。

日中間の感情的対立こそがいずも級で建造時から空母運用を想定しつつも「ヘリコプター駆逐艦」との用語をつけざるを得なかった理由だろう。だが日本の保守政権が防衛予算を史上最高額まで拡大して中国の海軍力の拡張に対抗させようとする中でジャンプジェットを空母から運用する構想はこれまでの控えめな姿勢を目で見える形に転換する効果を生みそうだ。■

Sébastien Roblin holds a Master’s Degree in Conflict Resolution from Georgetown University and served as a university instructor for the Peace Corps in China. He has also worked in education, editing, and refugee resettlement in France and the United States. He currently writes on security and military history for War Is Boring .
Image: Wikimedia Commons.

2018年10月29日月曜日

ベルギーがF-35を採択、ヨーロッパで存在感を増す米製装備品

Belgium chooses Lockheed's F-35 over Eurofighter: Belga ベルギーがユーロファイターを敗りロッキードF-35を選定


ルギーがロッキード・マーティンF-35をF-16後継機として選定しユーロファイター・タイフーンを採択しなかった。あらためて米製軍用装備の採用が欧州で進む形になった。
同国は10月29日を期限に34機の調達で機種選定を検討してきた。
国防省報道官は選定結果についてコメントを拒んでいるが、ロッキード・マーティン広報は選定結果について確認していないもののF-35がベルギーに最適な選択だと自信たっぷりだ。「F-35によりベルギー空軍は大きく変身し、世界規模で最先端機の共同運用に加わります」
そのとおりならベルギーはF-35導入で12番目の国となり、ロッキードにとっては今後控えるスイス、フィンランド、ドイツでの採択にはずみがつく効果が生まれる。
今回の選定についてロイターが先に伝えていたが今年7月に開かれたNATOサミットの会場で既に予想されていた。発注すれば2023年の納入となり36億ユーロ(41.4億ドル)規模となる。
米政府はベルギーの要求に応じて10月31日に購入条件を提示しており、選定が遅延すれば価格も変更になると伝えていた。
ロッキードからはベルギ企業にもF-35事業のグローバル展開に参加する機会が生まれると発言が出ていた。

ユーロファイターへ打撃

ベルギー首相シャルル・ミシェルからはF-16後継機選定は5月総選挙前に済ませたいとの発言が出ていた。また国防相も年末の退任前に本件を決着させたいと述べていた。
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ロッキードが受注すれば英国、ドイツ、イタリア、スペイン四カ国が参画するユーロファイター事業は黒星とな李、これまでの強力なロビー活動が無駄になる。
またダッソー・ラファールを競合に参加させていないフランスにとっても不満を覚える結果になりそうだ。同国はベルギーに対してこれ以上F-35を欧州で採択させないため密接な強力を申し出ていたためだ。
その他F-35導入を決めた欧州各国として英国、オランダ、デンマーク、イタリア、トルコ、ノルウェーがある。■

ドイツも米製装備の採択に向かうなどここに来て欧州で米国製品の存在が強まっています。欧州のプライドだけでは有事に役立たたないということですね。防衛産業基盤の弱体化にもつながりかねず、安全保障地図の変化が生まれそうです。そういう日本も企業マインドとしては防衛産業に魅力を感じなくなってきているはずなのでのんびりしたことは言えませんが。

2018年10月28日日曜日

歴史に残る機体19 MiG-25フォックスバット

The Soviet MiG-25 Spooked the U.S. Military

The Americans hurried to develop the F-15

歴史に残る機体19 ソ連のMiG-25に震え上がった米軍はF-15開発を急いだ


WIB AIR October 23, 2018 Robert Farley


MiG-25フォックスバットほど威力を持ちつつも誤解された冷戦期の機体はない。米軍の超音速爆撃機や高高度を飛ぶスパイ機の迎撃用に設計されたフォックスバットには高速飛行性能を活かし偵察機としての用途もあったが戦闘爆撃機としての性能は限定的だった。
.フォックスバットは10数カ国の空軍に配備され、レバノン、シリア内戦、エジプト、イラン-イラク戦、湾岸戦争、リビア内戦で実戦投入された。
多くの点でMiG-25は特筆すべき機体だった。最高速度マッハ3で高高度を飛んだ。試作機は1965年に初飛行するや速力、上昇性能、飛行高度で世界記録を書き換えている。
ずば抜けた性能とは裏腹に問題があった。低高度で操縦性が欠如していたのだ。機体重量が大きくなったのは耐久性を保証する素材技術がソ連になく、ニッケル-鋼合金を機体全面に使ったためだ。
双発エンジンでマッハ3.2を出したがこの速力ではエンジン自体が損傷し、実用上はマッハ2.8が最高だった。初期モデルには機体下を監視照準するレーダーがなく米爆撃機を狩る迎撃機として致命的な欠点だった。
フォックスバットの実態が表面に出たのはソ連パイロットが日本に機体を着陸させた1976年9月の亡命事件だ。日本は機体を米側に引き渡し、米国が機体を分解点検した。調査からフォックスバットは迎撃機であり航空優勢戦闘機ではないことが判明した。また実際の性能が想定より低いこともわかった。
ソ連情報機関が米国の爆撃機運用思想を正確に把握していれば、MiG-25を多数配備する予算を安価な多用途戦闘機整備に回せたはずだ。その場合は戦闘用航空機の歴史も変わっていたはずだ。
ソ連はフォックスバットを1,000機以上量産し、うち8割から9割がソ連空軍で供用された。フォックスバットが実現しなかったらソ連はその他の戦闘機、戦闘爆撃機を迎撃や偵察任務に投入しただろう。
MiG-21やMiG-23、Su-17が偵察用途の選択肢だったはずだ。フォックスバットと並び迎撃任務についていたTu-28は大型長距離機だったがMiG-25並の高速性能はないものの一定の条件下で任務をこなしていた。
フォックスバットが実用上で性能を最大に発揮したのが偵察任務で高速高高度飛行のため敵防空網は捕捉できなかった。
The Soviet MiG-25 Spooked the U.S. Military
写真上)1976年に亡命したソ連MiG-25は日米両国により機体を見聞された。写真下)アルジェリア空軍のMiG-25機材、2018年撮影。Google Maps photo

フォックスバットの大問題は供用開始にっの時点で想定していたミッションがなくなったことだ。米国はソ連の地対空ミサイルの威力を恐れB-70ヴァルキリー戦略爆撃機開発を断念し、超音速B-58ハスラーも早期退役させてしまっていた。
高高度高速飛行ではなく米爆撃機はソ連領空に低高度から低速侵入することとなり、フォックスバットでは対応がほとんど不可能になった。だが米爆撃機の大量侵入を撃退する事態が生まれなかったためフォックスバットの長所短所は実践で試されていない。
ソ連ではフォックスバットの実戦投入はまれだったが冷戦期、ポスト冷戦期のその他地域の紛争に投入された。イラン-イラク戦争でフォックスバットは制空任務をかなりうまくこなしたものの、イランのF-14の前に損害を受けている。
湾岸戦争ではMiG-25が空対空戦で米戦闘機F/A-18を最後に撃墜した。2002年にはプレデターを撃墜しているが高速飛行性能を活かした形だった。偵察任務ではインド空軍がパキスタンとの紛争時に優秀な成績を残している。だが戦術機材としてのMiG-25に目立った功績はない。
フォックスバットの登場で空の戦闘が質的に変わるとの恐れから米国で戦闘機開発が加速され、フォックスバットの情報評価から現行の西側戦闘機が対応不可能とわかったが真の欠陥はほとんど理解されないままだった。
その結果、米国はF-X事業の評価を見直しF-15イーグルが生まれた。イーグルは世界最強の航空優勢戦闘機を目指し、ソ連機に勝つのが目的だったが肝心の強力なソ連機は情報機関の頭の中にしかなかった。
フォックスバットが実現していなかった場合、F-15は凡庸で戦力もほどほどの機体になっていたはずでこれだけ長く供用可能な機体ではなかったはずだ。
最後にフォックスバットからMiG-31フォックスバウンドが生まれているが、レーダーと機体材料を改良し高性能迎撃機になった。フォックスバウンドは現在もロシア航空宇宙軍で供用中だ。フォックスバットが生まれていなければかわりにSu-27の派生型が防空任務についていただろう。Su-27は高性能機だが迎撃機としては一流とは言えない。
今日でもMiG-25を運用するのはアルジェリア空軍のみだ。リビア、シリアにも機材があったが性能を十分活用できなかった。対照的にMiG-21、MiG-23は現在も多数が世界各地で飛行している。
だがフォックスバットの正統進化形のMiG-31は現在もロシアで当初の設計思想通り哨戒、迎撃ミッションをこなしている。またF-15は世界の空戦史に残る実績を上げている。F-15は誤解から生まれたがその誤解が幸運な結果を生んだと言えよう。■

Image: Creative Commons.

INF条約脱退の真意を取り違えるな

日本でもINF条約脱退はトランプの誤った政策であり、軍拡競争を招く愚策、みたいな報道が目立つと思いますが、地政学の見識がないとこうなるのでしょうね。一方で中間選挙ではロシア、中国が選挙結果を操作しようとするはずですが、それだけトランプが目障りであることの証左であり、逆に言えばトランプ政権の方向が自由世界に望ましいと言えるのでは。少なくとも旧政権よりは望ましいでしょう。

Why America Leaving the INF Treaty is China's New Nightmare 米国のINF条約脱退が中国の悪夢になる理由

It would allow Washington to finally compete with Beijing in building similar weapons previously banned under the treaty.米国は以前禁止されていた兵器開発が可能となり中国と同等の兵力を整備できる。
国が10月20日に1987年締結の中距離核兵力(INF)条約脱退の意思を示し、ドナルド・トランプ大統領はロシアが「長年に渡り同条約を違反してきた」とし「このまま核合意違反を続けこちらが保有できない兵器の整備に向かうのは看過できない」と述べた。
だがロシアの違反事例(2008年初めにロシアは禁止対象の巡航ミサイルの飛翔テストを開始していた)への批判とは別に、米国がINF条約から脱退する理由はロシアではなく、かつ核兵器が理由でもない。戦略的な競争構造が新しくなっている今日、米国の動きはアジア太平洋での中国を睨んだものなのだ。
中国はINF条約に調印しておらず、核・非核の地上発射弾道ミサイル・巡航ミサイルで射程500キロから5,500キロの兵器開発・配備を禁止した条約と無縁だ。このため中国は通常型接近阻止領域拒否(A2/AD) 兵器多数を開発し、中にはDF-21「空母キラー」(射程1,500キロ)もある。米国はこうした各種兵器を開発配備できない。
このため米国は緊張が高まる西太平洋で海上空中での「射程距離競争」に大きく取り残されている。ハイエンド武力衝突が発生の場合、米海軍水上艦艇は不利な状況に気付かされ、旧式スタンドオフミサイルのトマホークや対地攻撃ミサイルしか使えず、脆弱な空母配備航空兵力は強力なA2/AD兵器が中国内陸部から発射されても手も足も出ない。
CIAで中国問題の主任分析官を勤めたクリストファー・ジョンソンはThe Economistで「いかなる有事でも最初の数日は米軍は相当の威力を発揮する」が「その後に全部隊は日本へ退避させる必要があり、中国本土への攻撃を十分行えなくなる」と述べている。また中国国内の対艦兵器を攻撃できないまま中国沿岸へ空母が接近すれば甘受できない規模の危険が生まれる」
ただしINF条約脱退で米国はこれまでの流れを逆転し中国にとって悪夢のシナリオが実現する。
新規整備の米軍の通常兵器の皮切りは地上発射型トマホークになり、最終的にはDF-21やDF-26に匹敵する弾道ミサイルが生まれ、不沈空母たる日本、グアムや南部フィリピン、あるいはオーストラリア北部に配備されるだろう。
こうした新型装備は西太平洋での新たな米軍事戦略の屋台骨になる可能性がある。新戦略とは米国もA2/AD装備で中国を「第一列島線」内部に閉じ込めることで、マイケル・スウェインはじめ識者が有事に「占拠できない島」をつくることだとしている。この戦略をアンドリュー・クレピネビッチは「列島線防衛」と呼び、米軍の機体、艦艇に多大なリスクを発生させず中国の軍事侵攻を阻止・封じ込めることとする。それだけではなくこの戦略には著しく高価な(かつ多数の人員が乗る)空母戦闘部隊を投入するよりはるかに安価に制海権を維持できる可能性がある。
中国はこうしたシナリオが現実になることを以前から警戒しており、米国・同盟国の防衛体制で中国海軍が第一列島線を突破することが困難になれば中国は海洋兵力を遠距離に投射できなくなってしまう。
一方で軍備管理専門家の間に米国がINF条約を脱退すれば新たな「ミサイル競争」が始まるとの警告を出す動きがあり、ロシア政治家アレクセイ・プシュコフは脱退は「世界の戦略的安定に大きな打撃となる」とまで述べている。しかし、米中両国の範囲で見れば、脱退に戦略的安定度は以前より高まる。以下2つの理由を述べる。
第一に、米国が列島防衛戦略構想を現実に移せば、「喪失が耐えられないほど重要な装備」の空母を有事に中国兵器射程内に移動させる必要が消える。空母を喪失すれば米国への打撃はあまりに大きく(空母一隻で6千名が搭乗している)、米指導部もそのまま引き下がれなくなり状況は一気にエスカレートの危険がある。逆に、安価で無人の長距離攻撃兵器が空母の代わりを務めればエスカレートの可能性が減る。
第二に、米水上艦を中国に接近させる必要が減れば、中国国内のミサイル陣地攻撃を実施する必要も減る。この意味は大きく、ケイトリン・タルマッジがForeign Affairsに寄稿したように中国の核兵器は通常ミサイル部隊に混合配備されており、米軍が通常兵器へ攻撃を加えれば中国の核抑止力の破壊を避けることがほぼ不可能となる。そのため中国指導層は核兵器投入をためらわず事態は「一気に核戦争に向かう」と指摘している。
報道では大部分がロシアの対応や欧州各国の反応に注意を払っているが、米国のINF条約脱退はアジアで真の意味を示すことになる。■
Nathan Levine is a U.S.-China fellow at the Asia Society Policy Institute and an associate of Harvard's Belfer Center for Science and International Affairs.
Image: Wikimedia Commons

2018年10月27日土曜日

低価格でT-X契約をもぎ取ったボーイングの勝算....

Aerospace Daily & Defense Report

Details Emerge On Costs, Rewards Of Boeing Low-Cost T-X Bid ボーイングがT-Xで提案した低コスト、見返り内容が判明

Oct 24, 2018Steve Trimble | Aerospace Daily & Defense Report


Boeing


空軍T-X練習機契約獲得で決め手となったボーイングの低価格構造の詳細が新たに明らかになった。コストを重視しハイリスクながら報酬も手に入れる可能性がある。
「T-Xは総計2,600機の市場を開き、サポート支援でも需要がある」とボーイングCEOデニス・ムイレンバーグが第三四半期営業報告(10月24日)で見通しを語った。
ボーイングT-X事業の最大のパートナーかつサプライヤーのSaabからその前日に市場需要見通しでより詳細な情報が開示されていた。
米国だけでも高等ジェット練習機及び軽攻撃機として1.000機の需要があるとSaabCEOハカン・ブシュケが発言。最低でも同程度の需要がその他国全体であるとも述べた。
ボーイングとSaabの見通しが正しければT-Xはロッキード・マーティンにF-35契約が交付された事案以降では最大規模の事業になる可能性がある。
ムイレンバーグは「この事業が有望投資案件だとおわかりだと思う」と述べた。
ボーイングのT-X事業では低価格提示によるコスト超過のリスクが高いことを最初から見込んでいるようだ。同社はT-Xで米空軍がオプションすべて行使すれば合計475機を92億ドルで提供するとした。ただし空軍の要求は依然として351機のままだ。
ボーイングは8月末からたてつづけに大型契約三件を獲得しており、MQ-25(米海軍)、MH-139(米空軍)につづくものとなった。
市場アナリストを前にロッキード・マーティンCEOマリリン・ヒューソンは9月23日にボーイング提示価格で実施すれば事業赤字50億ドルになると説明していた。
ボーイングは6.91億ドルを第三四半期だけでT-X、MQ-25両契約の欠損分として計上と伝えられている。だがムイレンバーグは長期的に見ればその支出を上回る見返りがあるとの説明。
「現時点の契約内容を超えた製造規模になると見ており、今回の投資で2020年代はじめに生産開始となりその後数十年間に渡る生産となる」と述べた。
ボーイングは2011年にKC-46給油機契約を今回同様の状況で獲得し、エアバスを40億ドル下回る価格を提示した。米空軍は契約を固定価格制とした。同社は767生産でそれまで数十年の経験がありながらKC-46Aでは赤字が重なり35億ドル程度になっている。さらに1.77億ドルがここに加わるとの第三四半期発表が出た。
T-Xではリスク低減策として試作機は二機としたとムイレンバーグが述べ、2017年から試作機は合計71回のフライトを実施したと說明。

「予め投資することでリスクを減らしており、給油機案件とは大きく異なる」とムイレンバーグは說明。■

2018年10月25日木曜日

納入不調で渦中のKC-46が日本まで飛んできた

Boeing's Troubled New KC-46 Pegasus Tanker Just Flew Across The Pacific Ocean To Japan トラブル続きのボーイングの新型給油機KC-46ペガサスが太平洋を横断し日本まで飛行していた

Just as yet another target delivery date may be emerging, the KC-46 has hopped across the Pacific to visit its first export customer. またもや予定通りの納入ができなくなったKC-46が太平洋をひとっ飛びし、同機初の海外発注元を訪問した

BY TYLER ROGOWAYOCTOBER 23, 2018
JOHN D. PARKER/BOEING
ーイングKC-46ペガサス給油機がで開発にここま手間取っているとは驚くばかりだ。予算超過と日程遅延に加え納入延期を繰り返したあげく直近では本来なら今月にUSAFのマッコーネル空軍基地に納入されるはずだったのが実現に程遠い。そのさなかにボーイングがKC-46テスト飛行ミッションでカリフォーニア州南部のエドワーズAFBを出発しハワイのヒッカム空軍基地へ、さらに東京郊外の横田航空基地まで飛ばしていたと判明した。つまり太平洋横断飛行したことになる。著者の知る限りKC-46で最長飛行となった。北アメリカを出たのもこれが初めてではないか。
日本は米国の主要同盟国で米軍要員数千名が駐留し、作戦機材数百機が配備されているだけでなくKC-46を発注している同盟国であることは事実だ。今年はじめに日本はKC-46一機分の発注を確定し、これまでKC-767を運用している。KC-767はKC-46A以上に民生767からの改装度が高い機体だ。
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Boeing KC-46A N464KC BOE464 departed Hickam AFB at 2132Z for Yokota AB, Japan. ETA Yokota 0600Z!!
これを念頭に見ると今回の移動は一石二鳥のようなものだ。つまりKC-46初の太平洋横断飛行であり、日本も初めて実機を自国で目にすることができたわけだ。
Boeing464(KC-46A N464KC) wkg Fuji control on 325.8
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Boeing464(KC-46A N464KC) is approaching to Yokota AB Japan. pic.twitter.com/2aSG7uayP0
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だが大きな疑問が残ったままだ。KC-46AはいつUSAFへ納入されるのか。航空関連報メディアで観測が乱れ飛んでいるがマッコーネルAFBに11月16日納入との最新報道が正しければ納入がいよいよ近づいたことになる
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Finding news in odd places: Looks like the @usairforce is expecting the KC-46 to be delivered to McConnell AFB KS by Nov. 16, per this fresh @FedBizOpps solicitation for "latrine+trash support:"  https://www.fbo.gov/index?s=opportunity&mode=form&id=82fe57796302a5d939d951f295b658c5&tab=core&_cview=0 …
遅延を繰り返してきたボーイングはKC-46第一陣は今月中にUSAFへ引き渡すと熱っぽく約束してきた。だがFAA型式証明の最終発行のほか技術面で不良現象が残ったままだ。9月17日に追加不良点が見つかり、今回も予定通り納入の可能性が消えたのだった。
BOEING
今回の問題をUSAFが見てみぬふりをして機体を受領しボーイングの技術解決を期待する可能性もあるが、そのとおりになるかわからない
それでも太平洋横断飛行をKC-46にさせたことで同機への信頼性が高まり、とかく意欲を下げる報道の方向が変わる効果が生まれたのは確かだろう。
Update: 12:30am PDT—
Photos of the KC-46's historic arrival:
Boeing464 reported to Yokota Command post ‘Fuji control’ about maintenance code A2 by No.1 Fuel tank quantity indicator out.🤔
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also adding that the enthusiasts were excited at the Pegasus’s first visit to Japan.😁😁😁 pic.twitter.com/NwckqAodSp
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