ラベル CRAFによる民間機材利用 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル CRAFによる民間機材利用 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2021年8月23日月曜日

航空自衛隊機カブールへ派遣。一方、米国は戦後三回目の民間予備機を動員し、避難民などの国外脱出を助ける。カブール空港の状況など現地からの情報をご覧ください。

航空自衛隊はC-2、C-130Hを合計3機派遣することになりました。現地情報が混とんとしており危険なミッションになりそうです。再び空虚な政争の材料とすることなく、現地残留邦人や大使館等で日本に協力した現地人を無事脱出させることができるよう祈りましょう。ただし、大使館員が真っ先に脱出したというのはいかがなものなんでしょうか。


USMC

イラク帰還の米海兵隊員がマーチ航空予備基地(カリフォーニア)に到着した。機体はチャーター機。2004年



米軍がこれまで運用されることが少なかった民間エアライン・チャーター会社の機材利用に踏み出した。各社は機材を提供し、有事の作戦要求にこたえる。アフガニスタン脱出作戦が展開中である。20社程度が民間予備航空機部隊に加わり機材乗員を24時間程度提供するがハミド・カルザイ国際空港へ直行せず、中間地点まで運ばれた避難民を最終目的地へピストン輸送することなる。


ペンタゴン発表ではロイド・オースティン国防長官が米輸送軍団 (TRANSCOM)に命じ民間予備航空機部隊Civil Reserve Air Fleet (CRAF)の第一段階を発令する。動員されるのはアメリカンエアラインズデルタエアラインズアトラスエアオムニエアの各社で各社三機を提供する。さらにユナイテッドエアラインズが4機を提供するほか、ハワイアンエアラインズは2機を出す。米軍関係者は合計18機の型式に触れていない。


国防総省、商務省はCRAFを1951年発足させた。ベルリン空輸作戦の経験がその前にあり、民間機を臨時に活用する制度が生まれた。


エアライン、チャーター会社がCRAFに加入しており、TRANSCOMが契約相手となる。加入は完全自発的とされっるが、加盟会社は英字の米軍人員貨物輸送時に優先利用される。


各社機材は性能により国内専用あるいは国際輸送に割り振られる。「国際部門のCRAFに加わる会社は最低でもCRAF任務達成可能な機材が4割あることが条件」と空軍は述べている。CRAF加盟会社は各機に乗員チーム4組を準備する必要がある。米軍では加盟会社は点検整備や安全運航基準も満たす必要があるとする。


2021年8月時点で24社がCRAFに加わっており、提供機材は450機に上る。このうち413機は国際運行に耐える機材で、残る37機は国内専用となる。機数は毎月変動する。また加盟会社数も変動する。何もなければ機材は通常の民生輸送を続ける。


予備機を今回投入するが三段階に分かれる。第一段階が現在進行中で今回のアフガニスタン脱出支援のように地域内緊急事態に対応する。第二段階では投入機数が増え、大規模な戦闘や国家動員体制に備える。


「通告後に加盟会社がCRAF向け機材提供を24-72時間以内に実現することなっており、時間数は段階ごとに異なる」と空軍は説明している。TRANSCOMは空軍の航空機動軍団(AMC)を通じ提供CRAF機材の運用を統括するが、各エアラインがあくまでも自社機材の運用に責任を有する。


予備機材が投入されたのは過去2回しかない。初回投入は1990年の湾岸戦争時で二回目は2003年の米主導イラク作戦の際だった。だがCRAF機材は演習によく動員されている。


「CRAF動員により国防総省は民間航空機の機動性を利用でき米市民や関係人員の国外脱出を進める国務省を支援できる。特別移民査証を有するもののほかリスクが高い個人を脱出させる」とペンタゴンは公式声明を発表。「CRAF機材はハミド・カルザイ国際空港には乗り入れず、臨時安全地帯からの移動に投入される。CRAF動員により空輸能力は軍本来の能力を超える規模となり、軍用機はカブールでの運用に集中できる」


昨日の報道ではチャーター会社でCRAF加盟企業が「警告命令」を受け取り、機体提供が迫っていることを知らされたとある。チャーター便はすでに米軍のカブール空輸の大きな柱で、17千名(大部分が米国人以外)を週末にカブールから脱出させたという。


ただし、避難民処理の能力不足や補給面、手続き面で障害が発生しており、カタールのアルウデイド航空基地のハンガー内ではアフガン避難民多数がすし詰めになっている。避難民は足止めされ別地点に移送されることになっていた。アルウデイド基地での滞留は先週悪化し、ハミド・カルザイ国際空港の出発便が8時間にわたり停止となる措置が8月19日から20日にかけ発生したほどだ。


米国はドイツのラムステイン航空基地へ避難民を搬送しており、さらにカタール、クウェイトが到着地点に加わった。ラムステイン行のフライトでは妊婦が産気づき米空軍第86救命隊が機内で出産を助けた。C-17Aはアフガニスタン国外脱出のイメージと結びついた。


米政府は各国と協議中で避難民受け入れを一時的にせよ求めている。すでに承諾した国もある。ただし、肝心のフライトがまだ実現していない。


CRAF機材の投入で補給面のストレスが減るかもしれない。米軍機はもっと危険なカブールでの運用に集中できそうだ。またハミド・カルザイ国際空港の混雑度も緩和されよう。ランプが不足し一本しかない滑走路を活用せざるを得ず、機体多数が地上待機を迫られている。


これとは別にハミド・カルザイ国際空港へたどり着くのは難問だ。空港を一歩出ると状況は混とんとしており、死の影もあり、保安上の懸念は日一日と増えている。昨日も米国務省から米国民に不特定の保安上の脅威のため空港へ近寄らないよう通達があり、米政府から連絡がある場合に限り空港へ移動してよいとある。その後の報道でISISの一派がアフガニスタンにおり、避難作戦を標的とするテロ攻撃を準備中とある。


こうした状況でフランス・英国の部隊はカブール市内で外国人および高リスクのアフガニスタン国民を空港へ誘導している。ドイツ軍もヘリコプターで同様の支援を提供すると発表した。米軍もカブールで同様の作戦を一例実施した。ペンタゴンは引き続き部隊増派の予定はないとしている。


こうしてみると予定した撤収作戦を米軍が実施可能となるのはまだ数週間先のようだ。とはいえ、この段階でCRAFの投入のみを決めた理由が理解できない。カブールが陥落すれば米政府のため働いていたアフガン国民数千名がタリバンの報復の対象となり、国外脱出が必要となることは以前から想定できていた。8月31日のデッドラインで撤収を完了させる必要があり、CRAF動員が遅れたことは理解に苦しむ。


同時に各国国民をハミド・カルザイ国際空港から妨害なく脱出させられるかはタリバン次第だ。タリバンは権力掌握をねらっているが、国内に武装抵抗の動きも出てきた。米軍は反タリバン勢力を空爆で支援するか明言を避けている。

 

今回のCRAF機材動員はアフガニスタン脱出を迅速かつ円滑に進めるための選択であることは明らかだが、今なぜこれを必要なのかは今後説明が必要だろう。■

 

What The Civil Reserve Air Fleet Is And Why It's Been Activated For The Third Time In 70 Years

 

The fleet can dramatically bolster the Pentagon's own air transport capabilities and that is what it will do for the evacuation of Afghanistan.

BY JOSEPH TREVITHICK AUGUST 22, 2021

 

 

Contact the author: joe@thedrive.com



 

2017年8月17日木曜日

米エアライン機材が緊急時に軍事輸送に供用される仕組み


(T1,T2共通記事) 朝鮮戦争2.0が湾岸戦争規模の全面戦となれば民間機利用も視野に入ります。米系エアラインが機材を使えなくなればその他国のエアラインが漁夫の利でシェアを伸ばすのでしょうか。いえ、そもそも西太平洋の有事となれば需要そのものが大幅に減退するはずですね。ところで日本では有事に自衛隊の空輸能力不足を補う手当はしてあるのでしょうか。韓国には5万名超の邦人がおり、エアライン機の利用はまずこの朝鮮半島有事の場合でしょうか。

This is the Pentagon's not-so-secret civilian 'ghost' aircraft fleet

これがペンタゴンの「幽霊」輸送機部隊だ
  • http://www.wearethemighty.com/articles/this-is-the-pentagons-not-so-secret-civilian-ghost-aircraft-fleet
Pan Am 747 used for military
CRAFが1986年に行った演習でパンナムのボーイング747が傷病兵輸送用に投入された。 US Air Force
  1. 第二次大戦時に米政府は民間航空機多数を徴用し人員貨物輸送に投入した。
  2. この制度は民間予備航空機部隊 Civil Reserve Air Fleet と呼ばれ現在民間旅客機・貨物機数百機が登録され、ジェットブルーUPSユナイテッドエアラインズなどが国防総省の求めに応じて随時提供することになっている。
  3. CRAFの正式発足は1951年12月のことで国防総省と商務省間の合意で民間機の軍用利用方法が整理され軍で輸送能力が不足する緊急事態、危機状況または戦争への投入に道が開いた。
  4. 必要とされればCRAF契約加入の民間エアライン、貨物航空各社は機材、乗員を米輸送軍団USTRANSCOMに提供し、兵員や貨物の輸送から傷病兵の搬送まで各種輸送ミッションに投入される。
  5. 現時点で全米の大手民間航空会社ほぼ全社がCRAFに加盟しており、USTRANSCOMは必要に応じ機材を利用できる。加盟企業には短距離専門エアラインから長距離路線運航エアラインまで含まれ貨物機は機内に手を加え装備人員輸送にあたる。
  6. FedExアメリカンエアラインズデルタエアラインズ等により運航中の長距離機のボーイング747,777、エアバスA330、マクダネルダグラスMD-11の相当数がされているがこうした機材はCRAFの基本方針によれば空軍のC-17グローブマスターIIIやC-5Mギャラクシーを補完する長距離輸送機能が期待される。
  7. 小型機のボーイング737やエアバスA320各機もUSTRANSCOMがCRAF機材に想定する。こうした機材は航続距離や輸送力が劣るので国内移動に投入される。
civilian Boeing 747 offloading troops in Saudi Arabia during Operation Desert Shield
CRAF制度で民間747がサウジアラビアに到着し砂漠の嵐作戦に参加する兵員が到着した。.US Air Force
  1. CRAFが発動されたのは第一次湾岸戦争が最後で当時は砂漠の嵐作戦で兵員装備多数を中東へ運んだ。
  2. パンナム、ユナイテッド、TWAの各社が大型機を提供し米本土からサウジアラビア等まで人員多数を輸送しイラク軍への攻撃に備えた。
  3. この事件以降米軍が自前輸送機で需要が賄えない事態は発生していない。だが、必要となれば軍は契約をもとにオムニエアインターナショナルはじめ民間チャーター専門会社を利用する。
  4. 民間エアライン各社はCRAF脱退はいつでも可能だが、そうしない企業が多いのは有事の際の軍要員輸送で契約民間会社に有利な契約条件が生まれるからだ。■