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2023年8月18日金曜日

台湾が非公表だった巡航ミサイルの存在を明らかにした理由。中国大陸に対する抑止力を公に認める段階に来たのか。

 A Taiwanese newspaper has published imagery that is says shows an HF-2E land-attack cruise missile for the first time publicly.

UDN capture

台湾の対地巡航ミサイルHF-2Eは、10年以上前から運用中と言われるが、これまで公開されていなかった

 湾の新聞が、陸上攻撃巡航ミサイル「HF-2E」の初公開となる写真とビデオクリップを掲載した。同ミサイルは10年以上前から台湾軍に配備されているが、これまで公開されていない。同ミサイルは、大陸を標的にすることで、中国の軍事介入を抑止し、台湾軍が秘密裏に保有中とされる反撃能力のひとつである。

台湾のUnited Daily News (UDN)の報道によると、画像は台湾南端屏東県の九鵬軍事基地から最近夜間に発射された際に撮影されたものという。UDNの報道によれば、雄風Hsiung Feng雄風 IIE (HF-2E)ミサイルはその後「何時間も」飛行したと「理解されている」。

台湾の半公式機関である中央通信社(CNA)の別の報道によれば、ある「軍」関係者は、九鵬で現在行われている3日間の実弾射撃訓練の一環で、「空軍は水曜日に機密ミサイルを発射した」と語ったという。CNAによれば、情報筋は、問題のミサイルがHF-2Eであるかについて肯定も否定もしなかったという。

HF-2Eが本当に九鵬から発射されたかは未確認だが、同基地はミサイル実験施設として知られている。また、国立中山科学技術研究所(NCSIST)の拠点でもあり、HF-2Eの開発を担ったとされる台湾軍トップの研究・試験機関でもある。

本日のUDN記事には、HF-2Eについて重要な新情報はない。同ミサイルは、地上発射型の陸上攻撃巡航ミサイルで、形状と機能において米国のトマホークを彷彿とさせるデザインと理解されている。

UDNが捉えた画像には、長い円筒形のミサイルで、比較的鈍い機首、尾翼、胴体後部の飛び出した翼のようなものが写っている。これは、トマホークだけでなく、ハープーン対艦ミサイルの派生型である米国のAGM-84H/Kスタンドオフ・ランド・アタック・ミサイル・エキスパンデッド・レスポンス(SLAM-ER)と外見上の類似点があることを示している。

これは、HF-2Eの設計と能力について以前に報告されたことと一致している。HF-2の開発は、少なくとも2000年代初頭までさかのぼるといわれる。本格的な生産は2011年に開始と伝えられているが、いつ正式に就役したのかは不明だ。

現在、HF-2Eには、ベースライン型と射程延長型の少なくとも2種類があるとされている。両タイプの最大射程については、情報源により大きく異なる。ベースライン型は300~600キロ(186~372マイル)先の目標に到達できるとされ、改良型は1,000~1,500キロ(621~932マイル)先の目標に到達できるとされている。

射程距離の違いは、HF-2Eの弾頭オプションの違いと、より小さな設計上の微調整の産物かもしれない。弾頭には、1,000ポンド級と440ポンド級の単体高爆薬型があり、少なくともそのうちの1つは、ハードターゲット貫通型/バンカーバスター型とされている。過去には、クラスター弾の弾頭も開発された可能性があるとの報告もある。

HF-2Eの派生型は、GPS支援慣性航法システム誘導に地形コンターマッチング(TERCOM)機能を追加したものを使用すると伝えられている。TERCOM機能は、トマホークや他の陸上攻撃型巡航ミサイルにも搭載されているもので、精密なナビゲーションを向上させ、低空飛行する。一部報告によると、さらに精度を高めるため画像赤外線シーカーも搭載しており、これも米国のAGM-158統合空対地スタンドオフ・ミサイル(JASSM)やストームシャドウ、新型トマホークなど他の陸上攻撃巡航ミサイルに見られる機能だ。

また、HF-2Eの呼称は偽装であり、対艦巡航ミサイル「雄風II(HF-2)」と関係があることを示すものはないとされている。

ミサイルの正確な性能がどうであれ、そうでないにせよ、HF-2Eが初公開される可能性があるのは、今後数年のうちに台湾海峡を越えて中国が軍事介入する可能性で懸念が高まっている時である。特に米軍関係者は、人民解放軍は、早ければ2027年までに、台湾海峡を越えた軍事介入を成功させる自信をつけるだろうと述べている。

台湾の長距離陸上攻撃能力は、PLAがそのような作戦を行うことを抑止しようとする上で重要な要素だ。HF-2Eに加え、台湾軍は「雲風」と呼ばれる超音速陸上攻撃巡航ミサイルを保有しており、北京に届く十分な射程がある。

また、空中発射する陸上攻撃巡航ミサイル「ワン・チエン」萬劍もあるが、こちらはHF-2Eや雲風よりも最大射程が短いとされている。

台湾軍がこれらのミサイルをどれだけ保有しているかは不明である。これらの在庫は、PLAが将来台湾海峡を挟んだ大規模な紛争に持ち込む可能性のある、空、海、地上発射の陸上攻撃巡航ミサイル、通常武装弾道ミサイル、そして現在の極超音速ミサイルの総数よりはるかに少ないはずだ。中国軍は、空海軍で台湾を包囲する能力と能力をますます発揮しており、一度に複数ベクトルで攻撃することも容易になっている。

それでも、HF-2Eのような台湾の兵器が存在することは、介入に対して中国本土に犠牲を強いることになるため、一定の抑止力にはなる。HF-2Eのような台湾製兵器が存在することで、中国本土が介入した場合、一定の抑止力を発揮することができる。政府高官(場合によっては首都北京も含む)や重要なインフラなど、知名度の高い戦略レベルの目標に対する攻撃は、双方に大きな心理的影響やその他の影響を与える可能性がある。

同時に、PLAは非常に広大な地域に分布する大規模な部隊であり、硬化した指揮統制ノードを含む総施設数も相当数に上ることに留意する必要がある。HF-2Eのような台湾の反撃兵器は、大陸からの侵略を完全に阻止するには十分ではない。

台湾が直面しているこのような脅威の現実から、特に米国では、台湾軍の能力を大幅に強化し、将来的な介入に抵抗するための全体的な能力を強化するよう求めている。先月、ジョー・バイデン米大統領は、台湾に対して最大3億4500万ドルのいわゆる「ドローダウン」軍事援助を承認したと発表した。これは、特定の状況下において、すでに米軍の在庫となっている物資をアメリカの同盟国やパートナーに譲渡できる仕組みを指す。

アメリカ政府は台湾を独立国として公式に承認していないが、台湾当局を支援する権利を留保しており、台湾軍への従来型の武器売却を定期的に承認している。

近年の地政学的状況を踏まえ、台湾自身も新型潜水艦やその他の艦艇、ドローン、浮遊弾、対ドローン、その他の防空・ミサイルシステムなど、重要能力の開発・取得を推進している。HF-2E関連報道のように、機密領域でも作業が進む。米国の防衛請負業者は、台湾の軍事的努力を支援してきた長い歴史もある。

UDNが捉えた画像が本当にHF-2Eだったかは別として、台湾の反撃兵器に新たな光があたった格好だ。■


Secretive Taiwanese Cruise Missile Able To Strike Deep In China May Have Broken Coverr

BYJOSEPH TREVITHICK|PUBLISHED AUG 16, 2023 2:15 PM EDT

THE WAR ZONE


2018年1月16日火曜日

B-52H編隊がグアムに移動し、USAF爆撃機三機種がそろい踏みへ

B-52s Are Headed Toward Guam Where B-1Bs And B-2As Are Already Forward Deployed

B-52がグアムに移動中、B-1BとB-2Aがすでに展開中

If the bombers do touch down at Andersen AFB in Guam it'll be the first time all three USAF heavy bombers will be there at once since August of 2016.

アンダーセンAFBに着陸するとUSAF重爆撃機各型がそろうのは2016年8月以降はじめてとなる。


Rim of the Pacific exerciseSTAFF SGT. KAMAILE O. LONG—1 CTCS
 BY TYLER ROGOWAYJANUARY 15, 2018

B-52Hストラトフォートレス戦略爆撃機少なくとも2機がコールサインMYTEE 51で太平洋を移動中で、ハワイを超えると到着地がアンダーセンAFBとなるのは確実だ。同地でB-1B、B-2Aに合流すれば三機種の同時配備は2016年8月以降のこととなる。
B-2はグアムに突如展開した際に米太平洋軍は爆撃機展開と抑止ミッションにあたると発表。緊張高まる中でこれには核兵器の運用も含むが、B-1Bにその能力はなく、B-2とB-52Hなら実施が可能だ。
B-52のグアム配備がいつまでかは不明だ。ごく短期間で重爆撃機をグアムに展開する訓練は随時行われているが2016年8月同様に三機種が当面そのまま残り同時訓練にあたる可能性もある。
2017年はほぼ通年でB-1Bがグアムから「力の誇示」ミッションを朝鮮半島付近で行っている間に米朝間の緊張が高まった。米側には残る手はあまりない中で戦略爆撃機を北朝鮮近くで飛ばす選択肢は残る。あるいは三機種を同時に飛ばし大規模な力の誇示を行うかもしれない。まるで航空ショーだが米国は同盟国とともにこれまでもこれを実施している。
冬季五輪が近づいているが、今回は世界有数の緊張地帯での開催となる。同時に南北朝鮮で会談が進行中だ。

B-52ミッションが明らかになれば記事をアップデートしたい。■

2017年12月6日水曜日

★よくわからない長距離巡航ミサイル導入構想(日本)

Govt considers long-range cruise missile


Mitsubishi F-15 (1)
By 航空自衛隊 [GJSTUv1], via Wikimedia Commons
http://alert5.com/2017/12/05/japan-mulls-strike-variant-of-f-15j-to-be-armed-with-jassm-er/#KLlitrjLAjWz8WKq.99 で詳細を読む8:25 pm, December 05, 2017

The Yomiuri Shimbun
府が空対地、空対艦長距離巡航ミサイルの導入を検討中だ。
新型ミサイル導入の主目的は有事に敵艦船を戦闘機で撃破することだと消息筋が伝えている。
同時に北朝鮮を意識し日本の抑止力を高める狙いがあるとみられ関連費用を来年度予算要求に盛り込む。
検討対象のミサイルは米開発のJASSM-MRで航空自衛隊のF-15など現行機種で運用できないので改修とシステム搭載が必要だ。
防衛省は平成30年度予算に関連経費を計上していないが、政府筋によれば同省は「機体改修の研究費を平成30年度内導入を前提で計上する最終調整中」だという。
JASSM-ERの射程は900キロ以上と言われる。つまり北朝鮮に接近せず日本海上空から同国各地を攻撃できる。
ただし専守防衛の立場で政府は敵基地攻撃能力を保有しないとしている。憲法上はこの能力の整備は可能だ。
政府は2018年末の新防衛大綱の準備として敵基地攻撃能力を検討する。
防衛省は対艦ミサイル研究を平成30年に開始するが対地攻撃能力も同ミサイルに付与する予定だ。2022年に試作品を完成させ数年で実戦化する。JASSM-ERはその前に導入する予定だ。■

2017年10月27日金曜日

★主張 日本が長距離攻撃能力を整備するのは当然のことだ



選挙が終わり「反対党」勢力の考えが国民に受け入れられないことが証明されました。一方、北朝鮮は不気味な沈黙を保っており、制裁が効果を上げているのか、「敵失」を待っているのか不明ですが、安全保障が争点になった今回の選挙を経て新政権は現実的な対応をしていくでしょう。今回ご紹介するのはランド研究所研究員の主張ですがこういう考え方を米国人から聞かねばならないのは妙な話であり、本来は国内から出て当然と思います。自衛隊の英訳はSelf-Defenceですが、英語感覚では犯人に向かい銃を使い犯罪を未然に防ぐ市民の言い分がself defenseですね。つまり海外からすればなぜ自衛隊が「専守防衛」の域を出ないのか不思議なのでは。日本の安全を真剣に考える風潮の中でSelf Defenseとして敵を先に攻撃する能力の整備(使う、使わないは別の問題)で抑止力を高めるのは至極健全な動きだと思いますが、みなさんはいかがでしょうか。

Why Japan Needs Long-Range Strike Capabilities
なぜ日本は長距離攻撃能力を整備すべきなのか



October 23, 2017



  1. 平和憲法があれば安全保障上の脅威は乗り切れると考える日本国民の頭の中を表現することばとして「平和ボケ」heiwa-bokeがある。北朝鮮がミサイル性能を引き上げ日本を核爆弾で沈没させると脅かす中での平和ボケは他国にはできない贅沢である。日本が存続すため何が必要なのか国内議論でも結論が出ていない。
  2. 日本がミサイル脅威に対応するには二段の弾道ミサイル防衛BMD体制が必要だ。海上配備は駆逐艦で中間軌道ミサイルを大気圏で狙う。陸上装備はペイトリオットで最終段階を迎撃する。総じて日本のBMDは高性能であるが対応には限界があるPAC-3として日本が配備中のペイトリオットの射程は12.5マイル程度しかなく、標的地に配備しない限り意味がない。駆逐艦のイージス戦闘システムは日本全土を有効範囲におさめるが正しい位置で正しい時間に艦がいなければ無意味だ。北朝鮮ミサイルが高速ロフテッド軌道をとるのが日米の想定する最悪の可能性でBMDで対応不能だ。
  3. 日本はイージスアショア導入をすすめ、陸上海上で高性能迎撃ミサイルを配備し、有効射程、高度、精度をあげるはずだ。ただし北朝鮮がミサイルを同時多数発射し複数再突入体で攻撃してきたら127百万人の防御は不可能だが今よりは迎撃効果があるだろう。
  4. 日本の選択肢は法律で狭められている。2015年に通過させた法案で集団防衛演習への自衛隊参加に道が開いたが安倍晋三首相は実際の運用に厳く制約を課している。必要最小限の軍事力行使が許され、しかも国家存続が危うくなった場合に限られ、日本自体が攻撃を受けるか、日本と緊密な関係を持つ他国が攻撃を受ける場合のみの想定しかなく、侵略勢力の撃退手段は他にない。
  5. 北朝鮮ミサイルの脅威は集団安全保障の行使の難易度が高いことを日本にあらためて示した。発射数秒で予想軌道を割り出さねばならない。標的が日本ではなく別の場所と判明すれば日本の政治指導層は集団的安全保障要件を満たすか協議する必要がある。だがミサイル迎撃の決断で話が迅速にまとまるだろうか。仮にそうであっても集団的安全保障の名のもと他国に先駆け日本が単独でミサイルを撃破できるだろうか。
  6. 抑止力整備で日本は積極策を検討すべきだ。長距離攻撃力を取得すべきだ。敵が攻撃準備する中、座して待ち死を覚悟するのか。鳩山一郎首相は1956年に敵ミサイル基地への攻撃は日本国憲法の自衛権の範囲内と答弁している。この解釈で日本はミサイル発射前に敵地を攻撃できる。歴代の内閣はこの解釈を継承し、長距離攻撃能力を保有することは憲法上許されるとしながら政策上はその整備に向かったことはないが、現実世界は法理論をこえたところにきているのだ。
  7. 日本が長距離攻撃能力を取得し、あくまでも防衛姿勢を保ち、日本政府も先制攻撃すると明言しないとする。そう、技術面では今と何も変わらない。法的解釈も同じだろう。「先制」だと攻撃に写るがミサイル着弾前に日本が行動したら「防衛」なのか証明が極めて困難だ。絶対の自信をもってミサイル発射が近づいており発射後に日本へ向かうと証明の上、これ以外に選択肢はないと説明する必要がある。言うのは簡単だが、行動は別だ。
  8. 安倍首相が攻撃能力取得に向かうだろうか。政治面で困難だ。平和憲法を踏みにじると批判されかねない。国内反対勢力は長距離ミサイルは憲法が禁じる「戦力」だと批判するだろう。また中国はじめとする近隣諸国は再軍備化だと安倍首相を批判するのは想像に難くない。
  9. だが政府には国民の生命財産を守る責任がり、北朝鮮のような国家は日本の脅威であり、政治指導層は日本の存在そのものを守る必要がある。現行BMDシステムで対応不能の空白があるならば補強策は当然歓迎されるはずだ。北朝鮮からの脅威が高まる中で新対応が検討されるのは当然と言える。
  10. 70年にわたる期間ほとんど通じ日本は平和国家で許される範囲内で防衛政策を向上させてきた。冷戦中はソ連の技術体系が迅速に向上せず対応は容易だった。冷戦後も日本の防衛政策は変化を続けているが速度がいかにも遅い。北朝鮮が迅速に軍事力を増強させる中で以前のような安閑とした対応を続ける余裕は日本にない。日本は攻撃能力の整備を政策上の最優先課題とすべきである。■

Based in Washington, Jeffrey Hornung is a political scientist at the nonprofit, nonpartisan RAND Corporation. He specializes in Japanese security and foreign policies, East Asian security issues, maritime security, and U.S. foreign and defense policies in the Asia-Pacific region, including its security alliance.


2016年8月29日月曜日

★★北朝鮮ミサイルはレイルガンで一気に無力となる

レイルガン技術がどこまで進んでいるかはちっともわからないのですが、第三相殺戦略に怯えるのは北朝鮮だけではありません。これまでの投資がパーになるので必死にプロパガンダ攻勢をかけてくるのはTHAADの比ではありません。韓国国内でも当然同調する動きが出るでしょうが、レイルガンは艦艇に搭載できるので(電力に余裕があるズムワルト級がまず第一候補)国防部長官が6時間も住民により移動を封じられるような醜態は避けられるのではないでしょうか。ともかく技術の進歩に注意が必要で、北朝鮮の大言壮語が一晩にして無意味となればそれは愉快なことですね。


The National Interest



How the Third Offset (Think Railguns) Could Nullify North Korea's Missiles

August 26, 2016


  1. 金正恩が核弾頭つきミサイル配備を急いでいる。移動式ミサイルを陸上海中双方で実用化しようとしている。短距離ミサイルも入れればほぼ毎週発射している状況で、短距離スカッド、中距離ノドン、中間ムスダン、大陸間テポドンの各種がある。
  2. だが今週水曜日の潜水艦発射式弾道ミサイル(SLBM)は日本に向け300キロ飛翔し、あらためて金がミサイル各種の整備に尽力しているのを示した。SLBM発射を「最大の成功事例」と述べたのは誇張ではない。北朝鮮のミサイル技術の進展は想定以上の速さだ。
  3. だが成功は失敗への一歩かもしれない。金が危険な妄想でミサイル王になると悲惨な結末になる。一度上がったものは下がらざるをえない。外交態度を変えないと金は悪夢の未来2つにつきすすむ。
  4. まずミサイル多数配備に勇気づいた金が危険な一線を超え、挑発行為のつもりが誤算あるいは偶発で紛争に火をつけ自らの破滅を招く可能性がある。あるいは貧しい国家財政をすべてミサイルにつぎ込んだあげく、韓国と米国がさらに先に行っている事実に直面する可能性がある。
  5. 米韓同盟は技術面で先を進み、ミサイル防衛の多重構造をさらに強化しつつある。韓国には韓防空ミサイル防衛(KAMD)システムがあり、多国間で展開中の装備にはTHAAD終末高度広範囲防空システムがある。日本の潜水艦部隊は北朝鮮潜水艦が出港しミサイルを発射する前に全艦を追跡撃破する能力がある。
  6. だが将来に目を向ければ金がミサイルで世界を恫喝する可能性より北のミサイル装備が米韓の革新的技術で一気に陳腐化される可能性のほうが高い。金一族も一気に無力となる。
  7. ミサイルや物理的質量に立ちふさがるのがエネルギー兵器で電磁レイルガンはその一種だ。米国で研究で弾みがついており、最先端技術により米国の兵力投射能力は温存されそうだ。
  8. 国防副長官ロバート・ワークは技術優勢を模索する動きを「第三相殺」と名付けた。この名称は第二次大戦後の米国が技術力で脅威の高まりに対応したことの延長だ。ソ連通常兵力がヨーロッパで示した脅威に核兵器で対応したのが第一の相殺で、ソ連が核兵器で同等の兵力を装備すれば、米国は長距離精密誘導通常兵器でリードを維持したのが第二の相殺だ。
  9. ワークが以前理事長を務めた新アメリカ安全保障センター(CNAS)は著者がまとめた報告書を今秋発刊し、第三相殺に関与する米韓専門家の寄稿も含める。7月上旬に同じテーマで会合を開催し、北朝鮮外務省の関心を呼んだ。これまで北朝鮮のミサイル実験で失敗が続いた印象を打ち消そうと言うのか、北朝鮮は「米国の戦略を明らかな破綻に向かわせ、『第三戦略』などたわごとにすぎない』との声明を発表した。
  10. 北朝鮮は大言壮語そのものでプロパガンダ詩人を動員し、技術的な知識が不足し平壌がすすめる極秘事業を知らせないまま情報戦を国内外でしかけている。その結果、技術的に遅れているのを実感させられるのは北朝鮮の方だ。
  11. 著者の若き同僚Seongwon LeeがCNASでの六ヶ月研究員生活を韓国国際交流財団の支援でこのたび終了するが、電磁レイルガン研究をしてきた。この装備開発だけで北朝鮮のミサイル装備整備は破綻する。
  12. Leeの説明するようにレイルガンは弾頭を電磁反発力で発射するもので、化学爆発力は使わない。その速度により弾頭自体が通常ミサイル以上の威力を発揮する。弾頭に爆発物を装備する必要が無いためレイルガン技術は安全面、射程距離、費用面で大きな優位性を発揮する
  13. 長期的に見ればこの新技術により韓国の抑止力は北朝鮮核兵器に対して3つの側面で威力を発揮する。先制攻撃機能による抑止効果、迎撃効果および報復攻撃だ。
  14. まずレイルガン発射体の速度により誘導ミサイルが緊急発進したF-15から発射されるよりも迅速なタイミングを実現する。同時に高速攻撃手段が現状のキルチェーンに加わる。
  15. 二番目にミサイルとレイルガンの費用比較は逆転する。KAMDの一部となればレイルガンのコスト効果は現行ペイトリオットやTHAADより高くなる。そうなるとレイルガンはミサイルから王座を奪うだろう。
  16. 三番目に、レイルガンの有効射程は水上艦主砲の比ではなく、威力が増加し報復攻撃に新たな選択肢を加える。
  17. 単一技術で歴史が革命的変化することはそんなにあるものではないが、第三相殺には多くの技術が含まれレイルガンのように新技術開発で劇的な変化が生まれる。自動3DコピーやAIによる迅速な探知技術と並びレイルガンは予想外に早く出現するだろう。
  18. 一旦実用化されれば北朝鮮のミサイル装備の没落は明らかとなる。金は外交的解決の機会を棒に振ったことを後悔するだろうがすでに時遅しとなる。■
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著者パトリック・M・クローニン博士は新アメリカ安全保障センター(CNAS)(ワシントンDC)でアジア太平洋安全保障問題の上級顧問兼上級統括職を務める。

2015年8月7日金曜日

核兵器の廃絶は逆に危険を招く。核抑止力の整備は今後も必要だ


平和は祈りさえすれば実現するものではありません。一方で戦争は天然災害とは違い、その気になれば防止できます。現実世界では核兵器があまりにも恐ろしい結果を生むために大規模戦闘の抑止力になってきたのが大国間の歴史です。これに対し核兵器全廃を主張する向きは独自の世界観を持っているようですが、逆に核兵器を全廃した場合の世界をどう考えるのでしょうか。また超大国による核兵器の応酬というこれまでの世界大戦観より非国家勢力による衝動的な核の使用があれば大変なことになります。広島の原爆記念日に日本では受けいられることのない主張ですが、あえて掲載することにします。

The Lessons of Hiroshima: We Still Need Nuclear Weapons

By BLAKE MCMAHON and ADAM LOWTHER on August 05, 2015 at 4:29 AM
米国が広島に原子爆弾を投下した70年前から戦争の形態は新時代に入った。8月6日の地上に出現した地獄は人類未経験の惨禍だった。
  1. 推定で広島の当時の人口38万人のうち最低9万人が爆発とともに死亡している。その後さらに数万人が放射線被曝で死亡している。東京大空襲ではもっと多くの死亡者が発生しているが、広島のように一度に死亡しているわけではない。
  2. 「リトルボーイ」爆弾が広島で、「ファットマン」が長崎で投下され、原子兵器の威力を見せつけた。ただし各爆弾の威力は15キロトン程度と今日の核兵器より相当小さい。
  3. 人道の見地から可能な手段を全て講じ今後の戦闘で核兵器が絶対に使われないようせねばならない。使用された場合の結果はあまりにも悲惨だ。
  4. 広島70回目の記念日を迎える中、核兵器全廃を主張する向きがある。「グローバルゼロ」運動などで、広島の惨状を伝え、核兵器削減・廃絶を訴えている。核兵器がなくなれば、使う可能性もなくなるというのがその主張だ。
  5. ただしその主張は過去の経験を正しく理解していない。
  6. 歴史、経験則そして論理から核兵器備蓄量を減らせば逆効果が生まれるといえる。核攻撃に踏み切ろうとする敵は想像を絶する反撃を覚悟せねばならないからだ。もしわが方の二次攻撃が敵に多大な損害を与えられないと、広島や長崎の例が示すように抑止力にならない。
  7. 冷戦が熱い戦闘にならなかったのは単に運の問題ではない。冷戦期に米国とソ連は危機状態のエスカレーションを多大な努力で回避してきた。自制できたのは核兵器の破壊効果が理解していた両陣営が慎重になっていたからだ。
  8. ソ連の崩壊で核兵器が不要になったわけではない。核廃絶論者の主張と反対に米国・同盟国の核兵器はより大きな役割を今後も果たすだろう。通常兵力の力不足を核兵器で補うべく、使用をためらわない敵が相手だからだ。もし米国が核抑止力の整備を怠れば通常戦は一気に核戦争に推移する。対照的に米国がグローバルゼロの先頭に立ち自国の兵器庫を空っぽにすれば悲惨な結果を招く。
  9. 世界各国に核兵力の放棄を説得すれば製造がなくなると考える空想の世界でさえも、歴史の教訓から平和な世界が到来するとは言えない。大国間の大規模戦闘を20世紀後半において核兵器が防止してきたのは事実だ。敵対する二大勢力が共に核兵器を保有すれば、核兵器応酬にエスカレートするのは必至なのでお互いに侵略行為はとれなくなる。
  10. 核兵器が破壊力の点ですざましい威力を持っているのは疑う余地がない。文明を完全に破壊する力がある。また放射線の効果はその後も続く。恐ろしい兵器であるからこそ今後も保有を続けなければならない。自制してきたからこそ人類は生き残ってきたことに疑いはない。
  11. 核兵器がすべての侵略行為を抑止するわけではない。だがもともとそのための存在ではない。核兵器の存在意義は敵の侵略行為を食い止め、米国・同盟国を守ることにある。脅威を発生させないことに価値がある。核兵器があるからこそ世界は安全で平和に保たれるのだ。
ブレイク・マクマホンは空軍研究所の研究員兼教授。アダム・ロウサーは空軍が新設した高等核抑止力研究スクールの所長。同スクールは戦略思考のエリートを養成することが目的。なお、本記事で表明した意見は原著者のものであり、米国空軍、国防総省、あるいは米国政府の公式見解を反映するものではない。■

2014年7月31日木曜日

米空軍のこれからの30年戦略案(総論)が発表されました。



総論としてコンパクトなつくりのようですが、議会との関係改善などお題目だけに終わっている感じですね。技術開発については空軍のこれからの動きに要注目です。ISRを抑止力でとらえる、指向性エネルギー兵器の開発などさらに注意が必要な表現もあるようです。なにかと話題が乏しい米空軍ですが、先を見越した戦略で盛り返しを見せるのか、それとも絵に描いた餅でおわってしまうのか、今後が大事ですね



New US Air Force Strategy Emphasizes Closer Ties With Industry, Congress

Jul. 30, 2014 - 01:03PM   |  
By AARON MEHTA   |  
House Armed Services Committee Holds FY2015 Air Fo
空軍参謀総長マーク・ウェルシュ大将と空軍長官デボラ・リー・ジェイムズが下院軍事委員会で3月に証言している。新戦略案では議会との関係改善を重要視している。(Chip Somodevilla/Getty Images)

WASHINGTON —米空軍は今後30年間を展望した新戦略を7月30日に発表し、産業界とは密接に協力し、議会とはよりよい関係を築き、人材と装備では柔軟性を高めたいとする。
報告書は「アメリカの航空戦力:未来に向けた選択」“America’s Air Force: A Call to the Future”の表題で参謀総長マーク・ウェルシュ大将が求めた広範な戦略検討作業の成果物である。ウェルシュ大将は従来より長期間をにらんだ作業を求めていた。
文書は22ページで大目標の設定にあてられている。これとは別に20年の視野で「戦略マスタープラン」 “Strategic Master Plan” を2014年末までに完成させ、より具体的な目標と目的を明らかにする予定。

【ロードマップの要約】
今回の30年文書ではウェルシュ大将とデボラ・リー・ジェイムズ空軍長官Air Force Secretary Deborah Lee James の考える空軍の未来へのロードマップが示されている。その特徴は以下の四点。
■ 「新技術による急速なブレイクスルー」が今後も続き、空軍は技術優位性を確保するため柔軟な対応が必要。
■ 地政学的不安定度は今後も続き、「現時点での地政学的現実だけで脅威へ準備するのは不適当」
■ 空軍が対応を迫られる「広範囲な作戦環境」に敵対的、非敵対的双方の環境で運用できる装備とともに人道救難活動でも苛酷環境に対応した装備が必要。
■ 空、サイバー、宇宙の各空間で「グローバル防衛」の必要性。
この4分野の取り扱いには「戦略的機動性」 “strategic agility” が必要で、空軍は柔軟かつ状況適合的に脅威対象に対応する必要がある。
「戦略的機動性の実現ではじめて20世紀の産業社会のパラダイムの現状から「脱する」ことが可能となる。

【人材活用と組織改編】
この機動力の源泉はいくつか考えられている。空軍人員には空軍を離れ現実世界で経験を積ませてから復帰できる制度を構築することだとし、本人の経歴に汚点とならないようにする。
「勤務中断」として常勤から非常勤に切り替えても本人の経歴上不利にならないようにする。さらに空軍外で得る経験を好意的に評価する」(同報告書より)「同様に各人の職歴開発モデルを真剣に考え、専門分野での経験機会とともに昇給昇進の機会を空軍
同報告書では同時に「個性を重視した広範な価値観」を空軍内部で認めるべきと重視しており、その目標を空軍本体、州軍、予備役の一体化におく。


開発と企画化の迅速化は同時に調達業務を軽減する一方、民間産業界との連携を一層必要とする。
「将来の調達では今以上に価格妥当性が重要要素になるので、民間産業の知見を利用すべきだ。民間では利益が動機とない競争が発生している。この競争と調達方法ならびに開発過程の改革で生き残りを目指したビジネスモデルができている」
ジェイムズ長官もこの競争機動力をファーンボロ医国際航空ショー会場でのスピーチに盛り込んでいる。
「手続き、作業の両面が硬直化したままになっている....仕事の完了にあまりにも時間がかかりすぎている。もっとお互いに自由に話し合って学びあうことが必要だ」(ジェイムズ)
報告書でもう一つ重要な強調点は「協調」で、シンクタンク、業界そして議会との関係強化である。
この数年にわたり議会と空軍の関係はぎくしゃくしてきた。このことを報告書も認め、改善を公言している。A-10などの装備退役と言う空軍の掲げる目標に対し、議会が法令審査面で妨害をとってきたが、一言に改善と言っても簡単には実現しない。.

【技術開発】
技術面では機動性の意味は科学技術分野との仕事の緊密化により新技術の開発育成をすすめることだとする。
「有望な科学技術上のブレイクスルー結果を利用することで将来の作戦能力の拡大の可能性が高まる。これとともに性能要求の定義と調達制度の中に『見直し』の機会を増やすことで内容の変更あるいは中止を途中で行えるようにする。また試作品開発を迅速化し、装備の実用化までの経費を節減する」としている。
モジュラー化で技術の実用化を加速するほか、世界で活動する各部隊に選択肢の幅がひろげられるとする。
報告書の中で特に細かく記載があるのが「根本を一変させる」“game-changing” 技術開発が進行中であり今後の空軍の方向性にも大いに関係があると説明しているくだりだ。
五つの分野を取り上げている。極超音速兵器、ナノテクノロジー、指向性エネルギー、無人機、自律技術だ。
各分野は開発中であり報告書はこれですべてではないと特記しているが、各技術は空軍研究部門だけでなく産業界トップで新規投資を決断する必要のある層にとっても重要なロードマップを示すものだと説明。
マーク・ホステジ空軍大将Gen. Mike Hostag(空中戦闘司令部司令官)は指向性エネルギーの実用化を期待しており、弾倉大の大きさにしてF-22やF-35に搭載するのが目標だとする。「指向性エネルギー兵器を開発中の各種研究施設を訪問してきた。驚くべき成果があらわれつつある」
ホステジはあわせて業界と空軍が今以上に協力して新技術開発にあたることを期待していると発言。航空戦闘軍団は研究部門、運用部門と産業界を一緒にするための「革新会議」“innovation conferences” tを開催していると説明している。「目標は民間企業に対して当方の研究結果への関心を持たせ、この技術で空軍と協力したい、と言わせることだ」
「産業界の提携先各社へはIRAD(空軍自由研究開発)資金を提供しており、各社にとって不可欠なものとなっている」とホステジは発言している。「そこから将来の利益を生む製品が生まれる。IRADから戦闘に必要な技術が生まれる。その意味で科学技術への投資で研究成果が生まれるように維持するのは大切だ。しかし同時に民間企業が同じ技術を取り入れた製品を実際に作ることが重要だ」

【抑止力】
報告書では抑止力の近代化についても触れている。「21世紀においても確実な核抑止力は絶対的に必要な存在だ」とし、
小規模な脅威(例、アルカイダのようなテロリスト)の阻止は核兵器では不可能だが、現実的にはイランのような国が合衆国にサイバー攻撃をしかけたら核による対応策の可能性が出てくる。
そうではなく新抑止政策として経済的かつ即応性の高い技術を基盤とする手段が必要だ。サイバーはここでおおきなやくわりがあるが、高性能ISR機材も忘れてはいけない。
「巨額の予算で敵を一網打尽に圧倒するのではなく、革新的かつ低価格な選択肢が必要だ。それを行使した場合敵に高額の対応が必要となる選択肢だ」と報告書は述べる。「わが方によるミサイル防衛コストが敵のミサイル製造・運用コストを大幅に下回れば、戦略上の方程式が大きく変化することになる」■