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2017年7月17日月曜日

中国軍のジブチ基地新設の意味を考える


AP

すでにお知らせしている話題をさらに掘り下げた内容です。ソマリア海賊対策は中国が各国と協調せず単独行動しているのですね。とにかく中国は戦略思考で次の手を打ってきますので対抗するためにはこちらも小手先の対応ではなく戦略思考が必要なのです。将棋に関心が集まっているのは良い兆候かもしれません。

Here's What You Should Know About China's New African Base 中国のアフリカ新基地で知っておくべき事項

Chinese forces in Djibouti are just the latest sign that the country wants to expand its military presence abroad. ジブチの中国軍部隊は中国が軍事プレゼンスの海外拡大を願目指す最新のあらわれ


 BY JOSEPH TREVITHICKJULY 14, 2017

  1. いかに規模が大きくても自国外で長期間活動できない軍事力は国土防衛の域を越えられない。冷戦終結後の中国人民解放軍は世界規模のプレゼンス拡大に向け努力してきた。中国軍はアフリカの角を回り初の恒久的海外基地を手に入れ、アフリカ各地への展開の拠点にしようとしている。
  2. 2017年7月12日国営メディア新華社が同国初の「支援基地」があるジブチに向けた隊員装備の第一陣が出発したと報じた。中国は2015年に構想を発表し翌年から首都ジブチシティで施設建設を始めていた。
  3. 「支援基地は中国部隊によるアデン湾商船護衛任務、人道救難活動他国際責任の執行に役立つ」と新華社は述べ、中国外務省報道官耿爽Geng Shuangの発言内容を伝えた。「さらに同基地はジブチの経済社会的発展を推進し、中国によるアフリカ並びに世界全体での平和安定への貢献の一助となる」
  4. 確かに上記の機能は実現するだろうが、基地をよく見ると国際的な活動強化を進めるPLAの動きに一致する点が見られる。この基地は中東、欧州さらにその先に展開する中国の拠点になるはずだ。
XINHUA
半潜水式輸送艦東海島で中国軍をジブチ新基地に運ぶ。

中国は何を狙っているのか?

  1. 中国は同基地の情報に神経質になっており、基地内の装備配備についてほとんど何もわからない。公式ルートでも耿報道官、PLAN司令官Shen Jinlong沈金龍中将のいずれも追加情報を出していない。以前の報道どおりなら約1,000名の中国軍関係者がジブチに駐留しそうだ。
  2. 公式には同基地の機能は「補給支援」のPLAN部隊への提になっている。中国艦船はアデン湾に2008年以来展開しており、民間商船を海賊他の危険から守っている。中国部隊は多国籍海賊対策部隊には属さず、中国は国連安全保障理事会決議に準拠して独自にミッションを展開している。
  3. 「支援施設は主に中国軍関係者の休養復旧用に使い、アデン湾やソマリア沖での活動さらに国連平和維持活動や人道救難活動を念頭に置く」と中国国防省はニューヨークタイムズに2017年2月に書面で回答している。だが気になるのは「主に」という言葉だ。
  4. フォックスニューズは一般公開の衛星画像を2017年7月に入手し、同基地で大規模工事が続いている様子がわかる。目に付くのは建設中の航空施設でヘリコプターあるいは無人機運用に供されそうだ。少なくとも七つの建築物が格納庫に見え、エプロンがつないでおり、駐機、燃料補給、武装搭載に使うのだろう。さらに中央の建物は管制塔並びに指令所になるのだろう。
Photo published for Satellite images show progress at China's first African base

Satellite images show progress at China's first African base

  1. 2017年7月4日の衛星画像では工事は未完了で航空機の姿は見えない。ただし施設規模から中国製無人機Wing Loong、Wing LoongIIの運用は可能に見える。ほぼMQ-1プレデターに匹敵し武装、偵察装備が可能で、飛行距離が2,400マイルといわれる。無人機でアデン湾、紅海さらにアラビア海、インド洋に武装偵察を行うことが可能となる。また陸上を飛行させ東アフリカに向かわせれば中国軍が国連平和維持部隊の一部として参加している南スーダンも飛行範囲に入る。ヘリコプターで人員物資を輸送し、傷病兵や避難民を艦船に輸送する拠点にもなる。
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Will China deploys UAVs to Djibouti?
  1. 同基地の支援任務に対する期待を見せたのがPLA部隊第一陣の出港式典で071型井崗山Jingangshan揚陸艦と東海島Donghaidaoの二隻が見られた。後者は2015年就役の半潜水式補給艦で排水量およそ2万トンでコンセプトは米海軍の移動式上陸用拠点艦に近い。
  2. 東海島のような特殊艦は大型貨物輸送以外に洋上拠点として揚陸活動等を支援する狙いもある。中国は同艦を以前にも公開しており、南シナ海でエアクッション揚陸艇の母艦としていた。PLANの大洋艦隊化の象徴のような艦だ。

AP

中国が本当に求めるものは何か?

  1. 中国がジブチに恒久基地を求める理由は見せかけに過ぎず真意と違うと疑う証拠はない。1990年代以来中国の軍と警察部隊は国連の平和維持活動の重要な一部になっており、2015年時点でおよそ8千名が国際機関の予備部隊に登録され全体の五分の一を占める存在だ。活動の中心はアフリカだで中国はアフリカ連合の平和維持活動へも積極的に得印しており、1億ドルを拠出している。
  2. 2016年12月までに南スーダン以外に中国はコンゴ、リベリア、マリ、ダルフール地方へも国連部隊の一環として介入しており、レバノンにも人員を派遣している。中国は各地の活動で最大の貢献をしており、なにより安全保障理事会常任理事国でもある。
  3. この事とアフリカへの経済連携の強化が完全に一致する。特に資源掘削部門で中国はつながりを強めている。中国陣作業員は各地に展開し、アフリカ連合の新本部ビル建設がエチオピア首都アディス・アベバにはじめると中国は建設費全額2億ドルを拠出し、「アフリカへの中国からの贈り物」として知られるようになった。ソフトパワー外交でアフリカ各国へすりよっているが各国住民には必ずしも歓迎されていない。
AP
ジブチ大統領イスマイル・オマル・ゲレは胡錦涛主席と2012年に北京で会談していた
  1. アフリカで独裁政権をアメリカが支えているとの非難がよく出るが、北京の専制主義政権にとって人権侵害のような話題は関心外であり長年にわたり「他国の内政に干渉せず」と同様に自国へも他国の干渉を排除している。この姿勢のため圧政的な政権に人気が高い。米国はじめ西側世界が協力を拒むスーダン、エリトリアのような政権だ。ジブチでも国際監視団体、人道団体ならびに反対政治勢力は大統領イスマイル・オマル・ゲレ率いる与党人民進歩党が選挙を不正操作いたり反対勢力を弾圧し、でっち上げの罪状で反対派を投獄していると非難の声を上げている。
  2. 政治経済でアフリカへの関与を深める中国は危機発生時をにらんだ軍事対応の拠点づくりが必要だった。2011年にリビアで独裁者ムアマ―ル・カダフィが放逐されると中国は国内の自国民35千名の国外脱出の必要に直面した。2014年にも同様の状況が発生しギリシャなど他国の助けを得て実施している。イエメン内戦では600名と規模は小さいが同様の対応に迫られた。
  3. ソマリア沿岸の海賊を追跡して航行するだけでもPLANの補給活動は困難を極めていた。「中国幹部、乗員向けの糧食燃料の補給が難しくなり、ジブチから数回にわたる支援が提供された」と中国外務省報道官耿爽が2017年7月に謝意を述べている。
AP
南スーダンに向かう中国軍隊員
国際軍事大国としての中国
  1. ただしこうしたミッションよりもっと大きい構図がある。ジブチ施設は域内安全保障を超えて軍事プレゼンスを海外に広げたい中国の熱望を実現する第一歩だ。ジブチの戦略的な位置はスエズ運河に近く、中国艦隊が自由に使える通過地点になる。また中国に必要なエネルギー・鉱物を中東、アフリカから輸送する商船の護衛にも有益だし、PLAの作戦用燃料他補給物資の集積地にもなる。中国が空母打撃群を遠征させる際にも必要だ。基地が完全運用を開始すれば、中国初の空母遼寧および護衛部隊が定期的に寄港するのは確実に思える。
  2. 海外基地獲得はPLAの陸上部隊削減と時期があっている。2015年に30万名が削減されており、今回の第一陣出港の前日にPLAはさらなる陸上兵力削減案を発表し兵力は百万名を下回ることとし、残る兵員をPLAN含む別部門に配分し、海外作戦支援体制を整備するとしている。
  3. 「この改革でロケット軍、海軍、空軍、戦略支援軍(電子戦・通信担当)へ回す資源を増やす。PLAは海外作戦能力を拡充する」と徐光裕Xu Guangyu(政府資金で活動する中国軍事管理軍縮協会China Arms Control and Disarmament Association上級顧問)が環球時報(中国共産党公式新聞)に語っている。「PLAには敵対勢力が12カイリの領海に入る前に数千カイリ先の地点で探知排除する能力が必要だ。中国の海外権益は世界に広がり保護が必要だ。こうなると陸軍の役割を超えた範囲になる」
  4. そこで中国軍がジブチに向かい、これとは別にPLAN艦船三隻が地中海を「親善航行」中でも驚くにはあたらない。これとは別の小戦隊が地中海でロシアと共同演習に向かっている。共同演習2017は黒海で実施される。両国は2005年以来共同海軍演習を7回実施している。昨年は問題の多い南シナ海で行い、「島しょ占拠ミッション」をはじめて展開した。PLANはアフリカ、中東各国との演習を強化するだろう。それ以外に中国は各地への公式訪問が容易になり存在感を増やすはずだ。

緊張増加の可能性

  1. PLAが国際舞台で存在感を強めるのを懸念して見つめる国は多い。米国もそのひとつだ。ジブチ基地開設で懸念から緊張が増す。ジブチは小国だがすでに米、仏、英、日の各国軍に拠点を提供している。イランやアラブ首長国連合も外国軍へ基地提供を検討中だ。
  2. 米軍はジブチを東アフリカ、アラビア半島での作戦拠点としており、キャンプ・レモニエおよびチャベリー飛行場は拡張を続けており、無人機攻撃や特殊部隊の拠点としてソマリアやイエメンをにらんでいる。ここ数年で同地区で米軍への脅威が高まっており、イエメン反乱勢力が巡航ミサイルで米艦船を攻撃したり機雷を敷設している。隣国のソマリアでは極秘対テロ作戦が拡大中でジブチの戦略的意義は今後も増えそうだ。
  3. 米軍指揮官層には中国軍と共有する空間で機微性の高い作戦を展開することに特に怯える兆候はない。米軍からは「米軍にとって重要で中国軍には実施してもらいたくない事柄への懸念」をゲレ大統領に伝えているとトーマス・ワルドハウザー海兵隊大将(米アフリカ軍司令官)が議会で2017年3月に述べている。
  4. 「同等の国力のある他国基地はこれまでなかったので、少なくとも今回の用に近接した場所にはなかったので、たくさん経験できることがあり学ぶことも多い」とワルドハウザー大将はBreaking Defenseの取材で語っている。「確かに作戦保安上の懸念は高いですが」
  5. 同大将はいずれの発言でも懸念の内容を直接述べることはなかったが、ここまで近くに中国軍関係者がいることで双方がスパイ活動に走ることになりそうだ。中国には米軍の活動ぶりを観察する絶好の機会となる。北京がゲレ大統領にさらに圧力をかけて米軍への基地提供条件を変更あるいは無効化する可能性も憂慮する向きもあるが可能性は低い。合意内容は数百万ドルの効果を生み、同時に米軍関係者多数にくわえ支援委託業者が駐留することで経済効果も生まれている。現在の戦略的な意義を急いで反故にする必要も双方にはない。
  6. 「バブ・アル-マンデブ海峡(イエメン-ジブチ間)は海上交通の要所でエネルギー、海運、安全保障上から重要です」とジェフリー・グレシュ博士(国防大学校准教授・国際安全保障研究学部)は解説する。博士はGulf Security and the U.S. Military: Regime Survival and the Politics of Basingの著者でもあり、記者にEメイルで「ジブチはアフリカ全体の出入り口で重要な地点」と解説してくれた。
  7. 目的が何であれ中国の基地設置で出入り口がはちょっと混雑しそうだ。■

2017年3月27日月曜日

★中国が台湾侵攻に動く日、侵攻を食い止める方法はあるのか

朝鮮半島やシナ海、台湾と本当にこの地区は面倒な事態が多いですね。と言って目をつぶれば解決するわけではないので、現実に直面して物事を考えていく必要があります。台湾の場合は有効な防衛体制、国民の総意による中国拒否がカギですね。日本としてもゆくゆくは支援を提供する日が来るのでは。

The National Interest

How China Would Invade Taiwan (And How to Stop It)


March 25, 2017

  1. 中華人民共和国の各種筋を総合すると台湾の民主制度に残された時間がなくなってきたようだ。習近平の言葉を借りれば「忍耐の限界」となっており台湾侵攻が2020年代早々になる可能性が出てきた。圧倒的な量の揚陸作戦を電撃戦で実施するだろう。実施は中国共産党(CCP)創立100周年の2021年7月以前の可能性が高い。
  2. と言うのは簡単だが、実際に中国が台湾を乱暴に侵攻して自らリスクを引き上げることないはずだ。習近平はじめ中国最高指導部が台湾海峡をはさみ神経戦を強化する可能性のほうが高い。その際、虚偽情報他で台湾防衛に対する米国の信認を貶めながら台湾の自信と意思力を低下させ、破壊活動を展開するだろう。
  3. 習近平は時間をかけ台湾政府が圧力に耐えきれず崩壊するのを待ち、高い代償なしで台湾を手に入れようとするだろう。同時に中国軍は「神聖な」任務の遂行にむけ作戦立案と準備を進める。中国に今より優勢な状況が生まれた時が侵攻作戦実施が有望な選択肢になる時だ。
脅威の評価
  1. 台湾海峡をはさみ政治安全保障環境が厳しさを増す中、人民解放軍(PLA)の能力、長所・短所を正確に評価することがますます必要だ。
  2. PLAの強さのほうが耳目に入りやすい。中国軍事力は報道で取り上げられることが多い。疑う余地なく中国の弾道ミサイル、サイバー戦能力や宇宙対抗兵器で中国軍事力を評価せざるを得ない。だがもっと危険なのは諜報活動であり外交政策に影響を与えている。  
  3. それだけではない。海軍大学校の著名な教官アンドリュー・エリクソンは近著で中国艦隊が驚くべきペースで拡大しているものの、台湾侵攻支援はできないと指摘している。海軍に輸送能力が不足しており、防空能力も同様だ。にもかかわらず今の状況のままが続くはずはなく将来は変化しているはずだ。
  4. デニス・ブラスコはCCPの地上軍は海軍同様に侵攻作戦の準備体制は出来ていないと指摘。ヘリコプター、落下傘部隊、特殊作戦部隊、揚陸用機械化師団、海兵隊の拡充が必要という。さらにPLAは下士官階層でも拡充が必要で訓練も改善して現場指揮官とし、権限移譲もすべきだという。すでにこの方向で作業は始まっており、今後10年程度で成果が現れるだろう。
台湾は侵攻作戦にどう対抗するか:
  1. では台湾軍の防衛策はどうなっているのか。また米国はどう支援するのか。
  2. 台湾は全志願制の軍構成への転換の最終段階にある。プロ兵士で構成したエリート部隊の整備は台湾にとってよいことで利点となる。中国の兵員は短期徴兵で構成されているのが普通だ。
  3. 最新のRANDコーポレーション報告書によれば台湾は全志願制部隊をエリート予備役部隊で補強し、中国の侵攻作戦を電子、空、海の各分野で食い止める能力を強化できると指摘。台湾国防軍は新たな訓練機会の恩恵も期待できる。米軍との共同訓練や人道救援訓練は台湾に良い刺激となる。
  4. 近代戦は頭脳戦の様相を強めており、その実施には訓練の進化が必要だ。台湾の目指す防衛目標にPLAによる電撃戦のショックに備えることがある。このため高い意識を持った人員で組織を構成し、訓練し必要な装備を与え敵侵攻に対応し強い抵抗を示すことが必要となる。     
  5. 中国と規模ではかなわないので、防衛側は潜在力をすべて活用して効果を生むべく各方面で強化が必要だ。台湾が想定する全方位防衛策では全国規模の動員、体力面で対応可能な男女全員の動員で対侵攻作戦を支援するとしている。
  6. ロンドン・キングス・カレッジのローレン・ディッキーは台湾国防省(MND)は一貫して中国侵攻を撃退する能力を引き上げようと努力中と指摘する。MNDは毎年恒例の軍事演習を全国・地方両レベルで展開し、防衛作戦内容を点検して敵侵攻に備えている。
  7. 中国侵攻に先立ち台湾には四週間の余裕があるとみられる。中国が戦略的な欺瞞作戦に長じているため、これで安閑とできない。ただしPLAが想定する大規模揚陸作戦では攻撃の意図がまず表に出てくるはずだ。
  8. 兆候には部隊移動、予備役呼集、物資集積、軍事演習、報道内容があり、さらに外交上の発言や台湾を対象にした国内妨害工作があろう。中でも要注意なのが海軍および民間船舶の大量徴用が中国南東部で広く行われることだ。   
  9. こうした動きが出た場合、台湾総統は内閣顧問や準軍組織トップと対応策を協議し、レーダー、衛星、データ収集施設からの情報を重視し中国国内の諜報員からの情報も使うはずだ。まず出てくる選択肢は即応体制引き上げと敵攻撃撃退の体制づくりだろう。
  10. 台湾海峡での機雷敷設は短時間で完了するが、沿岸部の防御強化はすぐには出来ないし、港湾や空港も同様だ。橋梁や発電所など国内重要拠点への人員配置も時間がかかるし、戦闘地区になりそうな場所からの人員疎開も同様だ。ここまで完了するには莫大な人員が必要で予備役を再呼集し契約企業も動員するだろう。このため台湾は軍に2百50万人を動員し、民間防衛従事者百万人を数日以内に集める体制を維持している。
  11. 緊急時動員の実証は毎年恒例で台湾本島以外に澎湖や金門、馬祖の島しょ部でも実施している。これにより一般市民も迅速に部隊要員として緊急配備できる。
  12. 台湾の全面的国防動員案では軍事力の動員だけではない。総統府と配下の各省、内務省、経済省他も民間防衛による本土防衛で重要な役割を果たす想定だ。
今後の展望  
  1. 台湾政府、軍部は一般に知られる以上にたくましい。だが自国だけで実施可能な範囲にも限界がある。ペンタゴンが台湾救援で重要で台湾の継戦能力維持に不可欠だ。米支援がある前提で台湾は防衛支出を展開し、中国の侵攻を食い止める期待が生まれる。
  2. 上記RAND報告書では共同作業部会の発足を提言し、米側は国防次官補クラスをトップにすべきという。台湾軍も米国流の新しい軍事教育や技術訓練の恩恵を期待できる。米教官により台湾の全志願制への移行が円滑に進み、予備役部隊の戦略的な活用にも道が開くだろう。     
  3. 台湾軍へ武器売却を通常の形で確実に提供する必要があるが、不幸にもブッシュ、オバマ両政権はこれを拒否してきた。台湾の視点では米製兵装の作戦能力や戦術効果は疑う余地がない。トランプ政権は日本や韓国に提供するのと同様の実戦能力を台湾に与えるべきで、ステルス戦闘機、ミサイル防衛部隊や駆逐艦が想定される。
  4. さらに米企業も米政府から制約されず自由に動くべきで、台湾の進める国産潜水艦建造へのアクセスを模索すべきだ。ただ火力より重要なのが戦意の維持や向上で人員募集や定着率が高ければ台湾の決意と目的意識を中国に強く示せる。          
  5. 台湾軍は強固な防衛作戦を構想し、プロ意識の高い部隊を育成してきた。だが台湾が侵攻を受ける可能性は増えている。中国の攻撃能力に呼応できる体制の維持は米国が対アジア政策を大幅に変更しない限りきわめて難しいだろう。
  6. 今後を展望すればトランプ政権は米台関係をさらに前進させる新戦略案を求めるべきだ。台湾に十分な自国防衛能力があれば世界最大の火薬庫は点火を免れる。中国を無視するだけでは問題は悪化するだけだ。■  
Ian Easton is a research fellow at the Project 2049 (where this first appeared) Institute and author of the forthcoming book, The Chinese Invasion Threat: Taiwan's Defense and American Strategy in Asia.


2016年8月10日水曜日

★★中国軍事力はどこまで米軍に追いつているのか、 特異な軍事思考は要注意



こういう記事がビジネス誌にも載るのがアメリカらしいところですね。もちろん背景には議会付属の調査機関があることがあるのですが。中国の理解はアメリカにとってもソ連時代とは違う難しさがあるのでしょう。そういうことを言えば日本も他人のことは言えませんが。東シナ海での情勢がまた懸念されるようになってきましたが、改めて中国の軍事思考を理解していく必要がありますね。

Business Insider

How China's Military Stacks Up to the U.S.

ALEX LOCKIE
Yesterday at 11:34 PM
By Alex Lockie, Business Insider

米議会調査局による最新報告書は中国軍230万名体制のあらましとともに西側軍事分析の誤りに光を当てている。

端的に言えば、報告書は中国の戦争哲学、文化を知らずに中国の国防、外交面での決定に西側が勝手な解釈をすることを戒めている。

中国メディアが国家統制にある点が米国と異なり、必然的に中国の軍事報告には透明性が欠落しているのは報道の自由がないためだ。

また中国の侵略の定義も全く異なっている。中国人からすれば平時と戦時でサイバースパイ活動に違いはなく、米国等から軍事機密を盗むことも能力があるのだから当然と考えている。

報告書をまとめた議会調査局のアジア問題専門家イアン・E・ラインハートは議会と軍上層部に「中国式の戦争の進め方」のを検討するよう求めている。


以下報告書から中国が米軍事力に対抗できるまでに拡充してきた経過を見てみよう。


中国の戦力の全体像

Congressional Research Service

中国の人口は13億人と、米国の四倍以上の規模で、これを背景に中国軍は正規軍230万名、予備役及び武装警察110万名の陣容を誇る。これでも人民解放軍は1992年当時の3百万名規模から縮小している。

これに対し米軍正規軍は140万名で人数は低いが人口比では高い。

一点重要な点は中国の最後の戦闘はヴィエトナム相手の1979年で終わっている点だ。朝鮮戦争移行は長期戦は実施していない。


中国の軍管区構成

Congressional Research Service


上図は中国が再編した軍区を示す。米軍の責任区域は世界規模になっている。米軍全体としては中国より規模が大きく装備も近代化しているものの、各地区を放棄してまで中国だけに集中できない。中国含む太平洋地区で米国が割くことができる兵力は全体の一部だけだ。


中国に専念すれば米国は世界各地を放棄せざるを得ないが、中国は国境線や太平洋内の拠点を全兵力で守れる。


装備近代化の熱望Congressional Research Service


海外調達と国内開発にサイバースパイ活動を加え、PLAは装備近代化を図ってきた。習近平主席の進める腐敗追放運動は習の権力基盤を強め、軍では装備調達や近代化が迅速に進む結果を生んでいる。

量より質を重視

Congressional Research Service

大量生産で知られる中国だが軍事分野では量より質を重視する傾向が強くなっている。PLAAFの例では配備機数は減っているが戦力は数倍に増えている。

かつては主力の座にあった冷戦時の戦闘機は急速にに姿を消し、第四世代機がほぼ半数になってきた。

中国の軍事支出


中国の国防支出はGDP比で約2%で一貫しているがこのまま信じられない理由がある。
1. 「国防支出」の国際定義は存在しない
2. 中国は軍事支出を低く見せる傾向があり、発表数字は裏付けがない
3. 国防支出を他の支出と厳格に区別するのは困難かつ統計精度に疑問があり中国自身も数字に自信がもてない始末だ。

海軍

Reuters

中国海軍が見出しに登ることが増えている。南シナ海で人工島を構築し防衛圏を拡大しているためだ。中国は島しょをめぐる周辺各国との関係で太平洋の深部まで活動範囲を広げている。

ここでも近代化に注目すべきで、特に潜水艦と対艦巡航ミサイルが重要だ。

潜水艦隊は現行の62隻が2020年までに78隻になると米国防総省は見ている。また空母の建造も続けており、現在稼働中の遼寧は航空隊の訓練用途と今後の建造の参考にする。

またミサイルでも米海軍より射程距離が長い装備を数的にも米国より多く展開しようとしている。艦対空ミサイルや対艦巡航ミサイルでは米側と同等あるいは凌駕し、ミサイル発射管数では同等、唯一劣るのは多用途陸上攻撃巡航ミサイルのみだ。
空軍

DoDはPLA空軍(PLAAF)が「急速に全般的に戦力差を埋めつつある」と伝え、中国が「国土防衛体制から防空と攻撃の両立に移行しつつある」と評していた。

中国が米国から航空優勢の座を2030年までに奪うとの報道があるが、米空軍ローリー・J・ロビンソン大将によれば米空軍のパイロット養成と支援の体制が中国に対して「信じがたいほど大きな」優位性を生んでいるという。

だが中国も訓練を拡充しており、以前より実戦を意識した演習内容になっており、これまでの筋書きどおりの実施からその場に応じた対応を重視している。

また第五世代戦闘機のJ-20やJ-31を開発中で米軍のF-35に匹敵する性能があるといわれている。

地上兵力

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中国の地上兵力は世界最大規模だが機動性の不足が悩みの種だ。輸送ヘリコプターが不足し、現在も鉄道輸送に依存している。地上部隊の大きな役割は国境地帯での紛争を未然に防ぐことにあり、2020年を機械化整備の目標年としている。

弾道ミサイル・核ミサイル



DoDはPLAを「新型ミサイル数種類を開発試験中で、極超音速滑空体も含み、新型ミサイルを追加し旧型装備より性能を引き上げ、また対弾道ミサイル防衛技術も開発中」と評する。

各種国産技術の中でも弾道ミサイルは中国に有望な分野だ。すでに大陸間弾道ミサイルを配備し核弾頭を搭載しているが、通常弾頭付きの単距離弾道ミサイル各種もそろえている。

議会調査局報告ではPLAロケット軍の存在が米軍の兵力投射や航行の自由作戦の前に立ちふさがる中心的存在だと指摘し、域内主要国にもPLAの航空優勢や海上支配の打破で障害となる存在だとする。

さらにロシア製高性能S-400防空ミサイルの導入を中国がもくろんでおり、防空体制をさらに強化する効果を生むだろう。

宇宙対抗装備


中国は相当数の宇宙配備装備を運用中で、軍用衛星は70機で航法、通信、気象観測、電子信号情報収集に用いている。

中国は米軍がGPS技術で宇宙配備装備に依存していることを弱点ととらえ、対衛星攻撃手段として衛星妨害手段や衛星攻撃ミサイルを開発している。

サイバー戦


専門家の間で中国のサイバー戦能力で評価が分かれるが次のことはわかっている。
中国にはサイバー部隊が三種類あり、1)PLA内部の特殊軍事ネントワーク戦部隊、2)PLA認可のもと政府内部に点在するネットワーク戦専門チーム 3)非政府組織だが動員可能な部隊 だ。

中国は各国のネットワークに侵入し逆に各国のネットワークを使用不能にする能力があると見られる。サイバースパイ活動でべ一句から軍事機密を盗み取っている。

中国の弱点とは


中国の弱い面では訓練、各軍同士の協力関係、運営、人材、戦力整備、ロジスティックスがあると自らも認めている。

共産党の下にある中国軍には率直な自己評価を避ける傾向があり、かわりにおおげさに長所を宣伝しており、軍部隊には実戦経験がないままだ。

報告書では「中国軍の分析評価はまだ複雑な作戦を海外で実施する能力あるいは『情報化環境での局地戦』を勝ち抜く能力はないとしている」とまとめている。

中国の目指す軍事目標とは


議会調査局報告書は中国を米国の価値観で見ることの危険性を訴えており、米国流の価値観や信条が共有できると信じれば中国の意図を正確に理解できなくなると警告している。

言い換えれば中国が軍の近代化を進める方向は米国とは違うということだ。

そして米中で最も大きな軍事思想の争点は中国の信じる「能動的防衛」の概念だ。報告書によれば、

PLAの軍事戦略で高い重要性が与えられていることに富軍事衝突の主導権をつかむことだ。中国お気に入りの評価はサイバーと宇宙空間を現代戦の「高地」ととらえ、敵の情報ネットワークをまずたたくことだ、と表現。

あるアメリカ人学者によれば中国が「先制攻撃を好むのは、その後の戦闘の展開を支配し、攻撃を仕掛けた側が有利になる」と信じているからだという。

中国がサイバー戦で米国を攻撃すればこの思想が一番よくあらわれてくる。すでに軍事機密を盗んだり、公務員人事記録のハッキングをしており、米国に戦争を仕掛けているといえる。

報告書では結論として中国は従来型の戦争に加え、メディア活用やプロパガンダ、法律闘争、心理戦で敵を攻撃してくると見ている。このうちメディアを使って米国による航行の自由作戦を非難し、南シナ海で進める人工島の正当性を訴える戦術が見られる。

結論


中国は国力増強のためあらゆる手段を行使してきた。プロパガンダ、通貨操作からサイバースパイ活動や軍事改革まですべて実施している。

米国への中国脅威は現実であり疑う余地がないが、利害が絡むのは特定地域に限られる。中国が世界大で覇権を狙うのか、自分で考えた大国として台頭しようとしているだけなのかは研究で議論となるだろう。だが技術面での強敵として米国も中国から多くを学ぶことができるはずだ。

当面の米国は戦力で若干ながら優位性を維持しているが、ちゅごくは前例のないサイバー戦や宇宙空間での交戦能力の実現に成功している。

ロシアや中国のような専制主義国家の台頭で米外交政策も修正を迫られており、メディア、技術、そして軍事力により他国を巻き込む必要がこれまでにまして必要になっている。■


2016年7月2日土曜日

★★警戒すべき中国軍の五大装備



中国の兵器体系がどの位正確に機能を発揮するかよりもその配備を進める背景に運用をためらわない意思があること、旧式装備でも数にものを言わせる飽和攻撃をする姿勢、さらに潤沢な資金で着実に新型装備が増えていることに注意が必要です。

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5 Chinese Weapons the US Should Fear

KYLE MIZOKAMI
Yesterday at 12:44 AM


  1. この二十年で中国は世界規模の軍事大国として台頭してきた。三十年前の人民解放軍は時代遅れの装備で人力を豊富に投入する「人民闘争」を主眼としていた。その間に海軍は沿岸部隊から大洋部隊に変身し、空軍は第五世代戦闘機を開発するに至った。陸軍も大幅に近代化している
  2. 多数の新型兵器が中国で開発中で、一部装備は要注意だ。
  3. 周辺国や米国は中国の武力増強に懸念を覚えている。中国は軍事力投射で東シナ海、南シナ海の紛糾を解決しようとする姿勢が顕著だ。装備整備で自信をつけた中国が自国主張を通すため躊躇せず兵力を動員すれば事態は域内危機にエスカレートし、あるいは深刻に拡大し米政府の介入を招きかねない。
  4. 中国も対米戦の可能性を意識して、米軍を照準に入れた兵器体系開発に注力しているが、戦闘は中国本土近辺にとどめたいとの意向がある。この発想が「接近阻止領域拒否(A2/AD)の整備につながり、中国が想定する一番本国寄りの防衛線いわゆる第一列島線の内側に米軍を侵入させまいとする。千島列島から日本、台湾、フィリピン、ボルネオを結ぶ線だ。
  5. 米中戦争の可能性は少なく、双方が戦闘を望んでいないのも確かだが、国益が衝突すれば戦闘になる可能性もある。この事を念頭に米国が最も警戒すべき中国の軍事装備トップ5は以下の通りだ。

DF-21D 対艦弾道ミサイル

  1. アジア太平洋に展開する米軍部隊にとって一番危険なのは東風-21D対艦弾道ミサイル(ASBM)である。DF-21Dは米空母攻撃用に設計され極超音速で米海軍の防衛網を突破する想定だ。
  2. DF-21Dは地上発射式で推定有効射程は1,500 km以上。本体から切り離される再突入体はマッハ10から12で飛翔する。その速度と運動エネルギー、さらに再突入体の弾頭部分が加わり、米海軍最大の空母でも相当の被害は免れない。確実ではないがDF-21Dの直撃を受ければ空母は戦闘能力を喪失するか沈没するといわれる。

  1. 車両式発射台に乗るDF-21Dは道路移動するので発射前の位置探知は極度に困難だ。再突入体の極超音速飛翔速度は迎撃が困難だが不可能ではない。
  2. DF-21Dのアキレスけんはいわゆる「キラーチェーン」のセンサー、中継局、指揮命令所で空母を探知、識別の上追跡するため必要な一連の装備だ。DF-21Dの打ち上げを成功させるためには多くのリンクが必要で、そのうち一つを切れば全体が機能しなくなる。
  3. 空母を沈めようとすれば中国は偵察機材多数を投入する必要があり、海上偵察は中国の得意分野ではない。陸上配備の水平線越えレーダーでは精度が落ち、海上監視機、UAV、潜水艦は空母航空隊の格好の餌食だ。唯一衛星群が空母追跡データを得られるが、妨害やその他機能を停止させる手段はある。
  4. DF-21Dの試射は013年早々に行われたようでゴビ砂漠に描いた空母形状の輪郭内にクレーター二個が見つかっている
  5. DF-21Dは実戦化されているようだが、キルチェーンの完成はまだで、システム全体が機能し始めるにはまだ数年かかりそうだ。それでも5,600名の命、艦載機70機を一度に抹消し、米兵力投射の主柱を奪いかねない最悪の事態をあらかじめ熟考しておく必要がある。

成都J-20戦闘機
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  1. 中国初の第五世代戦闘機J-20は大型双発機でまだ開発段階だ。その任務は不明だが設計上の特徴から各種任務が可能なようだ。長距離高速移動し低視認性の特徴を生かすのだろう。試作用3機が生産されており、2020年ごろの就役と見られる。
  2. デルタ型主翼に前方カナードが加わり双尾翼のJ-20は中国でもっとも野心的な設計だ。AESAフェイズドアレイレーダーや電子光学式目標捕捉システムを搭載すると思われる。機内大型兵装庫は二つあり、空対空、地上攻撃用、対艦の各ミサイルを格納できる。.
  3. J-20で想定する任務の中では航空優勢戦闘機としての役目が一番だ。長距離飛行性能が意味するのは中国沿岸部からさらに遠方に展開して米戦闘爆撃機やB-1、B-2といった爆撃機の迎撃だ。また長距離性能を生かして防空識別圏を設定した地域のパトロールも可能だ。

  1. また米支援機材を狙うことが可能だ。E-3セントリーやE-2CホークアイAWACSやKC-135、KC-130給油機は米軍の長距離作戦実施に不可欠な機材だ。長距離空対空ミサイルを搭載したJ-20は支援機を撃墜し、米軍同盟国軍の作戦能力を低下させるだろう。
  2. もう一つの可能性が米艦船や基地の攻撃だ。レーダー探知を逃れるJ-20に対地攻撃ミサイルを発射させ通常型弾頭付き弾道ミサイル攻撃に先立ち米側の地対空ミサイル陣地を破壊する他、レーダー施設、指揮命令所を攻撃する。この攻撃で米側防衛体制を制圧し続く弾道ミサイル攻撃の道を開くのだ。
  3. 時が来ればJ-20がどの方向に投入されるかわかるはずだ。J-20の使用用途が不明のままというのは戦闘機で20年のリードがあるとはいえこちら側世界では不安を招くため好ましからぬ事態だ。

衛星攻撃手段

  1. 長年にわたり米軍に大きな優位性を与えているのが宇宙配備軍用衛星群だ。アジア太平洋では米大陸部から距離が相当あることからその価値は大きい。
  2. 中国には少なくとも一種類の実用衛星攻撃兵器SC-19がある。DF-21の派生型でKT-2(運動破壊手段)を弾頭に装着して発射し、KT-2は赤外線誘導される。KT-2弾薬を積まず敵衛星に衝突させて破壊する。
  3. 2007年に軌道上の中国旧式衛星に衝突破壊したのがKT-2で、2013年には中国が「観測ロケット」と称し高高度実験装置を搭載したロケットを打ち上げているが、これが実はSC-19/KT-2運用テストだったと米情報機関筋は見ており、SC-19は中地球軌道まで到達可能と見られる。この高度の軌道に米GPS航法衛星群があり危険が生まれる。

  1. 中国のASAT兵器体系は米衛星のうち情報集衛星、通信衛星、航法衛星を狙う。こうした衛星が使用できなくなると中国を上空から監視偵察するのが困難となり、各種航法の精度が落ち、通信効率が低下するほか、GPS誘導兵器が作動しなくなる。
  2. 中国はSC-19を自走車両に搭載し、移動発射させるようだ。中国の舗装道路延長は1.86百万キロで、移動式ASATの捕捉撃破は極めて難しいだろう。
  3. ASATを紛争に投入すれば国際非難が中国へ向くのは避けられないが、米軍が衛星に依存しているため第一撃を宇宙に向ける誘惑は抑えられないはずだ。

071型揚陸艦
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  1. 兵力投射の重要性は中国で増大している。とくに東シナ海、南シナ海で部隊揚陸能力が整備され、尖閣諸島、パラセル、スプラトリーで中国指導部が実施の意を強くしている。
  2. 071型揚陸強襲艦は三隻、長白山、崑崙山、井岡山が就航中だ。各艦は西側が中国版の「ゲイター部隊」として海兵隊を輸送揚陸させ敵前上陸が狙いだとする。さらに三隻の建造が見込まれ、米ワスプ級に匹敵する全通型飛行甲板を有する揚陸艦6隻が続く。
  3. 建造元は上海の滬東中華造船で071型は排水量2万トン、全長700フィートの艦容を誇る。海兵一個大隊400名から800名と装甲車両18台を搭載する。
  4. 飛行甲板でW-9兵員輸送ヘリを二機同時運用し、格納庫にさらに4機を収納できる。ドック型格納庫に揚陸艇とともにLCACと同等の兵員輸送ホーバークラフト4隻も搭載できる。


  1. 071型揚陸輸送艦は南海艦隊に配備され台湾侵攻も狙うが中国海軍は即座に用途を転用することが得意だ。各艦は指揮統制用、災害救難人道援助用にも使える。四隻のうち長白山は現在インド洋に展開中でマレーシア航空370便の機体回収任務についている。
  2. 長白山一隻なら脅威にならないが、遠征展開能力が中国に整備されてきたことから島しょを巡る対立が深刻事態に発展する可能性が出てきた。

サイバー攻撃作戦

  1. 人民解放軍は「電子優位性」を開戦直後に確立すれば勝利につながると考えている。今回取り上げた五つの兵器体系のうち、サイバー作戦が最も謎に包まれた攻撃能力だ。
  2. サイバー攻撃の手段は多様で、心理作戦から敵装備・インフラの攻撃まである。中国の電子部隊は優位性を確保すべく通信を支配したり、有害ソフトウェアを送り、あるいはオンラインで偽情報を発信してくるだろう。サイバー攻撃は典型的な軍事作戦と一緒に実施すると効果が最大化でき戦線の追加につながる。サイバー作戦で敵のコンピュータネットワークを使用不能にしたり、通信妨害が先行すれば次に航空機やミサイル攻撃が続くと考えてよい。
  3. 通常の軍事作戦では有効範囲が制約条件となるがサイバー攻撃では地理と関係なく敵攻撃が軍民間問わず可能だ。また今回取り上げた兵器体系で唯一米本土の攻撃が可能なのがサイバー攻撃だ。
  4. 中国でサイバー部隊の中心は参謀本部第三部のようで米国家安全保障局に匹敵する。第三部の人員は130千名規模と見られ、各軍、各作戦局、研究機関に分散配置されている。また米国内の作戦を担当する31398部隊の存在が判明している。
  5. Project 2049によれば参謀本部第四部門が通常の電子戦情報収集にあたる一方でサイバー攻撃にも関与しているようだ人民解放軍の「統合電子戦ネットワーク」の概念では敵コンピュータの妨害と戦場電子装備のジャミングを想定しているのが明らかだ中国ではサイバーを通常の電子戦と一体で考えるが米国にはこの発想はない
  6. これだけの人員を投入しながら、中国のサイバー能力はまだ低いようだ。例えばスタックスネットのようなサイバー攻撃手の運用能力があるとの証拠はない。中国指導部もこれを意識し「先制攻撃戦略」で洗練されないものの効果的に敵を開戦直後に攻撃する発想と見る専門家もいる。
  7. インターネットやネットワーク技術で米国は最先端だが、開発の速度が速く状況は変化していく。サイバーと電子戦は米軍と米国内に入り込み、将来の戦闘では敵はサイバーを活用するだろう。

結語

  1. 米中開戦の可能性は当時の米ソ開戦よりも低いといってよい。冷戦時よりも超大国間の戦争は発生しないはずで特に米中両国は相互経済依存を高めている。その中国が今回取り上げた兵器体系を開発しているのは偶然ではない。中国の観点では米国戦に今から備えておくのは論理的な選択肢だ。
  2. 今回取り合げた兵器体系五つは戦争の可能性を引き上げる。一方で中国に周辺各国および米国との協調を進めさせるる自信の裏付けとなる。各国は中国が主張を取り下げるよう期待するが、反対に新たな火種が生まれるかもしれない。今やボールは中国側に握られているのだ。■


カイル・ミゾカミはサンフランシスコを本拠に活動する記者でDiplomat,、Foreign Policy War is Boring The Daily Beastに寄稿している。2009年に自身でJapan Security Watchブログを立ち上げた今回はNational Interestで初寄稿となった