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2024年10月9日水曜日

朝鮮戦争が再開したら日本はどんな役割を果たすべきか?(War on the Rocks)―日米韓の連携で一番弱い日韓のリンクを強化すべき。政治上無視することは許されない




朝鮮が核能力の向上を続け、長距離ミサイルを保有し、中国が台湾に侵攻する可能性がある中、米国の軍事的対応も含め極東アジアの安全保障に関する議論が盛んに行われている。

 最近、日米韓三国間の安全保障協力枠組みが確立されたが、朝鮮半島と台湾海峡で同時に全面的な紛争が勃発するといった地域有事に対する詳細な行動計画がこの枠組みに盛り込まれているのかという疑問が投げかけられている。

 三国間の安全保障協力枠組みの詳細は機密扱いであり、また、それが東アジア版NATO(アジア太平洋条約機構、1960年代に朴正煕韓国大統領が提唱したが実現には至らなかった)に発展するかどうかについても不透明であるため、米国、日本、韓国というこの地域の主要民主主義3カ国が、このような危機にどのように共同で対応するのかは不明である。

 戦後、極東地域の安全保障は主に2つの二国間防衛同盟によって確保されてきた。すなわち、米韓相互防衛条約と日米安全保障条約である。 前者は北朝鮮の侵略から韓国を守ることを目的としており、後者は日本を外部からの脅威から守ることを目的としている。

 しかし、日本と韓国の間には安全保障条約が存在しないため、三国間の関係における重要なリンクである両国のつながりは、特に国内問題、特に歴史問題の影響を受けやすくなっている。その結果、戦後を通して、日韓両国の政治指導者は、日韓間の安全保障協力の枠組みを絶えず形成し、再形成し続けてきた。

 しかし、筆者の博士論文「1950年から2023年までの日本の韓国への安全保障貢献」で詳述したように、両国は戦後、正式な軍事同盟が存在しないにもかかわらず、かなりのレベルの安全保障協力を行ってきた。

 例えば、朝鮮戦争時には、日本と韓国は正式な国交を持っていなかったにもかかわらず、日本は韓国の安全保障に多大な貢献をした。

 このような背景を踏まえ、筆者は朝鮮半島で全面戦争が勃発した場合における日本の役割について、具体的に検討したい。

 そのような危機的状況において、日本がどのような行動を取ることが可能か、また、日本が韓国に対してどのような安全保障上の支援を提供できるのか。

 これらの問題を検討するために、まず、戦後において朝鮮半島で唯一の全面戦争となった朝鮮戦争における日本の行動について、その歴史的な前例を検証する。

 次に、日本の最近の立法動向を分析し、元防衛副大臣の秋山昌廣、政策研究大学院大学副学長の道下徳成をはじめとする20人以上の日本の安全保障専門家、自衛隊関係者へのインタビューから得た知見を統合する。

 この記事は全体として、2024年に朝鮮半島で全面戦争が勃発した場合に、日本が取ることができ、また取る可能性が高い行動の概要を示している。

 

 

朝鮮戦争における日本

1950年6月25日朝、北朝鮮軍は38度線を越え電撃戦を展開し、韓国軍を半島南東部の釜山まで後退させた。ハリー・S・トルーマン大統領は1950年6月27日、国連決議に基づき米軍が介入することを発表したが、米国は朝鮮半島から地理的に離れていること、および第二次世界大戦後の大幅な軍縮の影響により、困難に直面していた。その結果、米国は地域に軍を展開するための大規模な後方支援基地と前進基地を特定する必要があり、日本が最も適した候補として浮上した。

 国連軍が釜山周辺で活動できる領域が限られていたため、特に戦争初期の段階では、日本から朝鮮半島への軍事装備や非軍事物資の輸送に日本の港湾や交通インフラが不可欠となった。

 第二次世界大戦後、横浜、神戸、北九州などの日本の港は再活性化され、米軍によって兵員、兵器、物資の輸送にフルに活用された。 

 門司や下関などの日本の西側の港は朝鮮半島に近いため、これらの拠点港は不可欠であった。

 特に、1950年9月の仁川上陸作戦や同年10月の元山上陸作戦など、海上輸送は軍事作戦の遂行に不可欠だった。米軍の指揮下で活動する日本人商船乗組員は、大量の軍事物資とともに、米軍および国連軍兵士を輸送した。また、1950年12月のフンナム撤退作戦では、日本船団が国連軍と韓国民間人の退避を担当し、17,500台の車両、105,000人の兵士、91,000人の民間人を無事に移送した。

 日本の工業能力も国連の戦争努力で重要な要素であった。戦争中に韓国のインフラの多くが破壊された後、ロールアップ作戦により、軍事装備の修理、改修、アップグレードの主な拠点となったのは日本であった。1947年に開始されたこの取り組みは、第二次世界大戦後に日本と太平洋地域に残された余剰軍事装備の再生を目的としたものであった。  1950年6月から10月にかけて、日本の工場では、戦争で使用するための汎用車両15,000台、小銃489,000丁、大砲1,418門を再生した。 

 終戦までに、日本は朝鮮半島で使用された軍用車両の65パーセントを修理または再建した。米軍の監督下で日本人労働者が戦車や大砲、その他釜山防衛や初期の戦闘で重要な役割を果たした装備の修理を行った。 日本に持ち込まれたM-4A3シャーマン戦車は改良されて朝鮮半島に送られ、国連軍に北朝鮮軍に対する必要不可欠な火力を提供した。航空機も日本で修理および改良された。三菱重工業や川崎航空機工業などの日本企業は、B-29、F-51、F-80などの米軍爆撃機や戦闘機の修理を行った。朝鮮半島における米軍の航空作戦に不可欠なこれらの航空機には、改良型の燃料システムや武器が搭載された。再生プログラムは、戦争を通じて米国の航空優勢を維持する上で重要な役割を果たした。

 朝鮮戦争における日本の最も重要な貢献のひとつは、機雷除去だった。ソ連の支援を受けた北朝鮮は、国連軍の海上作戦を妨害するために、主要港の周辺に数千個の機雷を敷設した。第二次世界大戦後に米国海軍の機雷除去能力が限られていたため、経験豊富な日本の機雷除去部隊と艦艇は不可欠だった。合計46隻の日本の掃海艇と1,200人以上の旧日本海軍の乗組員が、仁川、元山、群山などの韓国の港湾周辺の航路の安全確保に投入された。こうした努力により、国連軍の船舶の安全な航行が可能となり、1950年9月の仁川上陸作戦のような重要な水陸両用作戦が容易になった。また、機雷除去により、軍隊や物資の輸送が保護され、軍事作戦の成功と国連軍の海上優勢が確保されました。

 さらに、日本国内の米軍基地は、国連軍の航空、海上、地上作戦の離陸地点として広く使用された。板付飛行場や嘉手納飛行場などの基地は、朝鮮戦争における米国の航空優勢にとって不可欠だった。米軍の戦闘機や爆撃機は日本の飛行場から飛び立ち、北朝鮮や中国軍を標的とした作戦を展開した。例えば、戦争の初期段階では、日本から飛び立ったB-29爆撃機が北朝鮮の軍事施設を標的とした爆撃作戦を実施した。

 総括すると、朝鮮戦争における日本の後方支援および作戦面での貢献は、国連軍の成功に不可欠なものだった。

 輸送、装備の修理、機雷除去、訓練などを通じて、日本は単に基地を提供する以上の多面的な役割を果たした。日本は国連軍の旗印の下に正式に軍を派遣することはなかったが、安全保障面での貢献は、朝鮮戦争を直接目撃したマッカーサー元帥、リッジウェイ元帥、バーク提督といった主要人物たちに広く認められていた。


次の朝鮮戦争についてはどうだろうか?

第二次朝鮮戦争への日本の関与は、より広範囲に及ぶ可能性が高い。日本は米国と協力し、ミサイル防衛、海上安全保障、後方支援に重点的に取り組み、重要な支援的役割を担うことになるだろう。

 朝鮮半島での紛争への日本の関与は、政治的な微妙な問題や法的制約により、直接的な戦闘行動は除外される可能性が高い。しかし、さまざまな活動を通じて、重要な作戦および後方支援を提供することになるだろう。

 2015年の日米防衛ガイドラインを超えて、朝鮮有事における日本の潜在的な行動について最も信頼できる洞察は、作戦計画5055に見られる。この計画は機密扱いだが、一部はメディア報道で公表されている。

 2006年の北朝鮮による最初の核実験後に生まれた「概念計画5055」を改良して策定された「作戦計画5055」は、北朝鮮の有事に備えた包括的な日米防衛戦略だ。

 この計画では、シナリオを2つのカテゴリーに分類している。1つは、日本が直接攻撃を受けず支援を提供するケース、もう1つは、特に弾道ミサイルによる攻撃など、日本が直接攻撃を受けるケースである。

 この計画では、状況認識、後方支援、指揮統制、ミサイル防衛などの分野における米軍と自衛隊の協力について詳細に説明している。また、捜索・救助活動、米軍基地や港湾の防護、地方自治体との連携による後方地域支援活動についても言及している。

 後者のシナリオが発生した場合、日本の弾道ミサイル防衛システムは、北朝鮮のミサイル攻撃に対抗する上で重要な役割を果たすことになる。北朝鮮は韓国のみならず、グアムやハワイなど、この地域の米軍の資産や領土を標的としたミサイルを発射する能力を有しているため、日本のイージス艦や陸上迎撃ミサイルは、これらのミサイルを迎撃する上で重要な役割を果たす可能性がある。

 日本の弾道ミサイル防衛能力は、米軍および米軍の資産にさらなる防御層を提供し、朝鮮半島有事の際の作戦遂行能力を確保することになる。これはまた、「核デカップリング」の可能性を軽減することにもつながる。北朝鮮が核攻撃の威嚇によって米軍と韓国・日本軍の間に楔を打ち込み、連合軍の決意を弱める可能性である。

 一方で、そのような状況下では、日本が掃海艇を朝鮮半島海域に派遣する可能性が高い。北朝鮮は、沿岸に数千個の機雷を配備していることが知られている。紛争が勃発した場合、これらの機雷は米韓の海軍作戦に重大な脅威をもたらす。日本の海上自衛隊は、2013年の国際機雷掃海演習で実証されたように、確立された掃海能力を有しており、朝鮮半島とその周辺海域の航路の確保を任務として遂行する可能性が高い。

 この作戦は、米国の増援部隊と物資の安全な輸送を確保するために極めて重要であり、北朝鮮への上陸作戦を支援することにもなる。

 日本の役割は、防空、対潜水艦、対艦戦闘にまで拡大する。北朝鮮の空軍は、比較的旧式ではあるものの、偵察機や輸送機に対する脅威となり得る。日本の戦闘機は、北朝鮮の迎撃機や韓国または日本の領空に侵入しようとする航空機から、米国の航空戦力を守るのに役立つ可能性がある。さらに、北朝鮮の潜水艦部隊は、米軍の兵員や物資の輸送に不可欠な日本と韓国間の海上交通路を遮断しようとする可能性がある。海上自衛隊は、高度な対潜能力を備えており、これらの重要な海上交通路や、その地域で活動する米海軍の艦船に脅威をもたらす北朝鮮の潜水艦を無力化することが任務となる。

 さらに、日本が反撃能力の獲得を進め、2027年までに米国からトマホーク巡航ミサイルを配備する計画であることから、朝鮮半島有事の際には、この新たな能力を北朝鮮のミサイル発射基地やその他の軍事目標への攻撃に活用できる可能性がある。これは、北朝鮮のミサイルの脅威を先制的に無力化することを目的とする韓国の「キルチェーン」と歩調を合わせる。日本の反撃能力はまだ完全に運用可能ではないが、その開発はより積極的な防衛姿勢への転換を意味し、紛争時に北朝鮮の軍事インフラを無力化する米国と韓国の取り組みを大幅に強化する可能性がある。

 また、米軍の海上機動部隊の防護も、日本にとって重要な役割となる。これらの部隊は、あらかじめ軍需物資や装備を搭載した状態で、グアムや沖縄などの戦略的に重要な場所に配備されている。朝鮮半島有事の初期段階では、これらの物資は米国本土から増援部隊を派遣する正式な決定がなされる前も、迅速に韓国に展開される可能性がある。海上自衛隊は、これらの艦船が韓国へ向かう際の護衛任務を担う可能性が高く、これにより、戦場への重要な軍事資産の迅速な展開が確保されることになる。

 自衛隊による後方支援は、朝鮮半島有事の際の米国の作戦の重要な要素となる。2015年の日本の安全保障関連法に基づき、自衛隊は米軍への後方地域支援を行うことが認められており、補給活動、医療支援、人員輸送のための日本の港湾や飛行場の使用が含まれる可能性がある。サプライチェーンの維持や、米軍の航空機や艦船への給油や整備を含む後方支援を行う日本の役割は、朝鮮半島における米軍の軍事作戦の持続に役立つだろう。さらに、日本国民や場合によっては米国の民間人を含む非戦闘員の韓国からの避難を支援することも可能である。

 戦闘関連の支援に加え、日本が朝鮮有事の際の人道的支援を提供することも可能である。これには、米軍および同盟軍関係者の捜索・救助活動、および北朝鮮に対する国際制裁の順守を確保するための船舶検査などが含まれる。

 ミサイル防衛、機雷除去、後方地域での兵站など、特に能力が強化されたにもかかわらず、日本の地上部隊が韓国国内で活動する可能性は依然として低い。

 韓国は歴史的な問題から、自国領内に日本軍が駐留することに伝統的に反対しており、韓国政府が自衛隊に半島での直接的な戦闘作戦を許可する可能性は低い。筆者がインタビューした韓国軍当局者の何人かは、極端な状況、例えば、戦争の初期段階で米韓連合軍が北朝鮮軍に壊滅的な打撃を受け、さらに南に撤退せざるを得ないような状況では、日本の自衛隊の韓国への展開が不可避になる可能性があると指摘した。しかし、政治的な微妙な問題があるため、このようなシナリオが現実のものとなる可能性は依然として非常に低い。


結論

北朝鮮が現時点で韓国に全面侵攻を仕掛けた場合、ミサイル防衛や海上警備、米軍への後方支援など、日本が多方面から関与することを想定すべきである。特に、2015年の法整備により、反撃能力の取得と集団的自衛権の行使が認められたことを踏まえると、日本の貢献は朝鮮戦争当時の役割を上回る可能性が高い。

 したがって、日本は朝鮮戦争の再開において、米軍に対しこれまでにないレベルの作戦支援を提供することが予想される。北朝鮮の指導部がこのことを十分に理解している場合、米国と韓国、米国と日本の間に亀裂を生じさせるだけでなく、日本と韓国の間に亀裂を生じさせようとする可能性もある。したがって、日米韓の3か国同盟を強化し、最も脆弱なリンクの日韓関係を強化することが極めて重要である。■


Dr. Ju Hyung Kim is a defense analyst at a South Korean defense think tank and is currently in the process of transforming his doctoral dissertation, titled “Japan’s Security Contribution to South Korea, 1950 to 2023,” into a book.

What Would Be Japan’s Role in a New Korean War?

Ju Hyung Kim

October 3, 2024

Commentary


https://warontherocks.com/2024/10/what-would-be-japans-role-in-a-new-korean-war/

 

2019年2月6日水曜日

次回トランプ金会談で韓国の行方が決まる 日本も安閑としていられない交渉の鍵は在韓米軍の行方だ

A Strategic Disaster Looms at the 2nd Trump-Kim Summit

第二回トランプ金首脳会談が戦略的失敗に終わる可能性

President Donald Trump meets with North Korean leader Kim Jong Un on Sentosa Island, Tuesday, June 12, 2018, in Singapore.
JANUARY 30, 2019

年1月始め、韓国はマイク・ポンペイオ国務長官の発言に震撼した。平壌は祝杯をあげただろうが、長官はフォックニュースで米国本土の安全が最優先であり、このため米国は北朝鮮非核化をめざすと語ったのだ。長官が否定しなかった想定が危険をはらむ。トランプ政権が北朝鮮との交渉を優先し韓国との同盟関係を取引材料にするのではないか。 

米政府が米国の安全を第一に置くのは当然であり、そうしなければ無責任のそしりを逃れない。遠隔地で戦火が開くのを阻止することが本国の安全にどうつながっているかを米国民は理解していない。指導層が認識すべきは朝鮮半島や北東アジアの有事で米本土の安全や経済活動にどんな影響が生まれるかだ。仮に北朝鮮が米本土を狙うミサイルを廃止しても、在韓米軍を撤退させればアメリカに害が返ってくる。地域内の武力衝突の可能性が高まり米国民や同盟国が血と富を犠牲にすることになる。

ドナルド・トランプと金正恩は今月末に二回目の直接会談に臨む。首脳会談でトランプ政権にとって最大の外交成果が生まれる可能性もあるが、米国と韓国にとり戦略的失敗の序曲となる可能性もある。
.会談が近づく中、米韓両国の同盟関係を破綻させかねない3つの問題を克服し、両国の安全保障で破滅的影響が出ないよう努力すべきだ。まず、在韓米軍の経費負担で韓国が拒否していること、二番目にホワイトハウスが米本土防衛を最優先しているが韓国にどんな意味があるのか、三番目にトランプが同盟関係を軽視していることだ。

韓国は金正恩が北朝鮮ICBM開発終了の見返りに在韓米軍の撤退をトランプに求めるのではと懸念している。金正恩は韓国が米軍経費負担に合意していない状況を知っており、韓国のために米軍を危険に犯す必要はないと主張してくるのではないか。

仮にそんな合意が生まれれば、トランプではなく金正恩が史上最大の取引成約者となり、核武装した北、世界第四位規模の軍組織と南の吸収合併を当然視するイデオロギー存続を米大統領に認めさせたことになる。トランプは韓国と北東アジアを喪失した大統領として記憶されるだろう。

金正恩にとって在韓米軍は大きな脅威であり、核兵器を米国に向けているのはそのせいだ。だが在韓米軍の存在は北朝鮮の南進を阻止する抑止力だ。米軍が去れば金正恩には分割統治戦略を実現する好機が生まれ、韓国併合に向かうだろう。米軍が朝鮮半島を去れば武力衝突の発生は必至だ。

だがトランプが最大の外交上の成果を手に入れたようにまず映るはずだ。ワシントンは行き詰まった韓国との在韓米軍経費負担交渉の継続は断念し、米韓関係は最低水準にまで下がる。米側は「心理マジノ線」と呼ばれる年間一兆ウォン(12億ドル)の負担水準の突破を韓国に求めているが、韓国政府は承服できないとしている。金正恩はここでナポレオンの法則を使うだろう。「敵が過ちを冒している際には決して手を出してはならない」

もちろんこうした意見衝突を超えた意味が同盟関係にある。ただいトランプは同盟関係を軽視してやまず先回のシンガポール会談では韓国から米軍を呼び戻したいとさえ発言している。シリアやアフガニスタンでも同様の発言があり、実際に両国から部隊撤退を命じているので今回も大統領の発言内容を真剣に受け止めるべきだろう。
負担分担を巡る堂々巡りに北朝鮮のICBM戦力解体が加われば大統領は撤退を命じてしまうかも知れない。金正恩が自国ICBMと核弾頭を中国に譲渡する可能性が浮上している。

トランプがそんな提案を目の前にしたら可能性はふたつだ。まず受け入れれば朝鮮は米防衛線の外側とした1950年の過ち以上の規模で戦略的誤謬となる。1950年にはそれを聞いて金日成が南侵攻を開始した。

二番目は金正恩と全力で対決した指導者としてトランプが歴史本に名を刻むことだ。金正恩がICBMを断念すると認めるとすれば実はICBM戦力を大規模に保有していないためであり、金王朝でも最高水準の交渉戦術を使ってい代償なしで結果を得ることになる。トランプに本国防衛へ集中させながら韓国を放棄させれば朝鮮半島内の戦闘をまきおこさせることになる。

米軍が半島から本国に戻れば金正恩は安全を感じ満足するだろうか。2018年4月の板門店宣言およびシンガポール首脳会談声明の双方で朝鮮半島全土の非核化が金正恩の目的と述べている。この意味を理解するためには米国は1991年以来朝鮮半島内に戦術核兵器を持ち込んでいない事実を理解する必要がある。ただし金正恩は在韓米軍の存在、戦略装備の展開、抑止力の拡大は韓国を「核化」するのと同じと考えているのである。金正恩が「非核化」を口にする際は「在韓米軍」のことを指す。

金正恩は米国と自国の関係改善への前向きな姿勢も話題にしている。また米国の「敵対政策」の終了も口にしている。だが北朝鮮指導者の真意はここでも米軍部隊の撤退なのだ。

同様に金正恩が安全保障上の保証を求めていることに混乱する向きがある。金正恩の視点では公式文書や署名は保証として不十分である。そこで物理的な保証を求め、ここでも米軍撤退を意味し、同盟関係の終了、抑止力整備の中止、韓国と日本への核の傘提供の終了を求めている。

米本土への脅威を除去すべく「大安売り」すれば米国の対北朝鮮取引も不成功に終わる。トランプにとって唯一の実質的な勝利は南北統一朝鮮国家の出現まで朝鮮半島での戦闘事態勃発を防止することだ。非核化と米国本土や同盟各国への脅威を除去するには他に手段がない。■

David Maxwell, a 30-year veteran of the United States Army and retired Special Forces colonel, is a senior fellow at the Foundation for Defense of Democracies.

2016年5月31日火曜日

★ISIS空爆が想定を超える規模で世界各地から爆弾をかき集める米軍





The US is Raiding its Global Bomb Stockpiles to Fight ISIS

MAY 26, 2016 BY MARCUS WEISGERBER

反ISIS連合は爆弾41,500発以上を投下し、ペンタゴンは他地域の備蓄弾薬を使い始めている

  1. 米軍はスマート爆弾の備蓄を世界各地から確保して二年目に入ったISIS空爆に投入しているとペンタゴン関係者が明らかにした。
  2. 空爆作戦を統括するチャールズ・ブラウン空軍少将は「他地域でどんなリスクが生まれるかを注視していきます」とカタールのアルウデイド空軍基地からビデオ会議で述べている。「どこかから爆弾を引き出した場合、緊急事態が発生したらどう対応できるかが問題です」
  3. 連合軍の空爆は2014年8月から延べ12,453回を数えている。このうちイラクで8,500回、シリアが4,000回近くで米軍が9,495回を実施している。投下爆弾数は合計41,697発で米軍は同盟各国へ爆弾を提供している。
  4. このため爆弾不足が生まれているがペンタゴンの方針でクラスター爆弾の処理が必要となっていることで状況がさらに深刻になっている。
  5. 米軍は弾薬備蓄をヨーロッパ、中東、アジア太平洋で維持しているが、旧型弾薬が多くなっているとシンクタンク指摘がある。本当は新型爆弾に切り替えたいが予算管理法により思うに任せないのが現実だ。
  6. アシュ・カーター国防長官は二月にペンタゴンは議会に18億ドル超で新規製造爆弾45,000発の調達を要求した。米国内弾薬メーカーはこの要望に応えるべく増産体制を整えている。
  7. 爆弾不足になったのは需要をあらかじめ予想していなかったためだ。当時はイラクに米軍は駐留しておらず軍はアフガニスタンからも撤退しようとしていた。だがこれは実現せず、アフガニスタンには米軍は数千名が駐留中で、さらにイラクに数千名が戻り現地軍の訓練助言にあたっている。ブラウン少将は同盟軍が投下する爆弾の大部分は米国製誘導スマート爆弾と指摘する。「空軍が次年度予算で調達を増やす動きに出ていますが、実際に使用可能になるのはあと2年後でしょう」
  8. 爆弾不足は米中央軍以外にも広がっている。太平洋軍司令官ハリー・ハリス海軍大将は議会に対して爆弾備蓄を食いつぶす事態を憂慮していると発言。
  9. ハリス大将は2月23日の上院軍事委員会公聴会で「重要弾薬の不足が最重要事項であり懸念材料」との声明文を準備した。「米太平洋軍USPACOMは今後も着実に予算を付け、追加調達し、性能向上につながる弾薬技術を開発して侵略を抑止し、撃退するよう進言する」
  10. ハリス大将はまたPACOMは「弾薬技術の改良、生産増強、事前配備を求めるが財政圧力がリスク要因」とも指摘している。
  11. 3月10日付下院軍事委員会マック・ソーンベリー委員長(共、テキサス)宛書簡でハリス大将は弾薬追加調達を優先事項上位3項目の一つとし、AIM-9X、AIM-120D空対空ミサイル、SM-6対空ミサイル、MK-48魚雷を列挙したがすべてレイセオンが製造している。
  12. 3月22日の下院軍事委員会公聴会ではジョセフ・ダンフォード統合参謀本部議長から「全方面での即応体制が完成し、消耗分の重要精密兵器の補充が完了するまで数年かかる」との見解が出た。
  13. 2月にはカーティス・スカパロッティ大将(当時在韓米軍司令官)からクラスター爆弾がなくなり太平洋における米軍の備蓄が消耗されるとの警告が出ている。
  14. 同大将は「重要弾薬は適度の備蓄を維持し朝鮮半島での開戦初頭で優位性を確保すべきだ」と下院軍医委員会公聴会で陳述している。
  15. また「問題を複雑化しているのは『備蓄分期限切れと使用禁止によりクラスター爆弾が使えなくなっていることだ」とも述べている。
  16. 2008年に当時の国防長官ロバート・ゲイツがクラスター爆弾の備蓄と使用双方で制限を加えたが、米国はクラスター爆弾制限条約を批准していない。
  17. ゲイツ長官の方針は2019年まで有効で、「クラスター爆弾は今後の装備から外し、使用しない」としている。スカパロッティ大将は2月23日の上院軍事委員会公聴会で「クラスター爆弾には多大な作戦効果をを期待しており、半島で危機状態が発生した場合に使用したい」「クラスター爆弾に替わる装備がないこと、同様の効果を生む通常弾が存在しないことを懸念している」と語っている。
  18. 上院による2017年度国防予算認可法案では国防総省に対して国防長官からクラスター兵器取り扱い方針を議会に説明あるまではクラスター爆弾の処分を禁じている。この文言を追加したのはトム・コットン議員(共、アーカンソー)だった。
  19. 同法案では同時にペンタゴンに別途10億ドル勘定を設定し「同盟各国軍が将来の緊急作戦で使用し米国支援に当てる精密誘導弾薬類の予見できる消費量」の調達備蓄を求めている。コットン議員は上院軍事委員会のジョン・マケイン委員長(共、アリゾナ)と協議しこの文言を盛り込んだ。

AUTHOR

Marcus Weisgerber is the global business editor for Defense One, where he writes about the intersection of business and national security. He has been covering defense and national security issues for nearly a decade, previously as Pentagon correspondent for Defense News and chief editor of Inside ... Full Bio