2021年5月31日月曜日

F-15EXをアラスカのノーザンエッジ演習に投入したところ、判明した事実----ステルス性能の欠如は最初から分かっている.....F-15EXならではの性能をどこに見つけるのか

 




空軍は新規生産のF-15EXイーグルIIの受領を今年3月から始めており、アラスカで今月行われた大規模演習に早速投入した。引き渡し済みF-15EXは二機のみで、両機とも演習に参加した。


演習にはノーザンエッジ21の名称がつき、F-15EX各機がF-15Cに加わり、またF-22ラプターやF-35共用打撃戦闘機も投入されたほか、F-15Eストライクイーグルとも飛んだ。F-15EXは同規模同水準のアグレッサー部隊と交戦した。


ノーザンエッジ21演習でアラスカのエルメンドーフ共用基地に集まった第53航空団、第96試験航空団のF-15、ストライクイーグル (U.S. Air Force photo)



第53飛行団のライアン・メッサー大佐は「ノーザンエッジは運用能力を試す重要な機会となった。超大国間の戦闘を想定し、複雑な条件で相互運用能力を運用してテストデータを提供する数少ない機会となった」と述べた。


最新の第四世代機となったF-15EXの実際の性能は空軍から公表されていないが、4月から5月にかけ展開した同演習でF-15EXは敵機を撃墜しつつ、シミュレーションながら撃墜もされたことを認めている。


狙いはF-15EXに空対空交戦を制圧する能力があり、中国を想定した互角の相手側との戦闘に投入できるかを見ることではなかった。つまり、新型F-15の役割は敵の第四世代機だけでなく、ステルス機も相手にすることにあるようだ。


第84試験評価飛行隊のジョン・オリア中佐は「大規模演習で自軍に被害がなければ、敵の脅威に対応できる学習効果が生まれる」と語る。


オリア中佐はF-15EXが撃墜された今回の演習の状況に関し詳細は語っていないが、新型第四世代機で対応できない脅威についてわずかながら輪郭がうかがえる。イーグルIIは相当の長距離からの攻撃で被害を受けたようだ。この原因としてステルス性能の欠如があり、容易な標的になったのだろう。その通りなら、F-15EXだけが脆弱なわけではない。


「このような環境では青軍の『被撃墜』はほとんどが視界外からの攻撃によるものとなる」(オリア中佐)


f-15exF-15EX (U.S Air Force photo by 1st Lt Savanah Bray)


ステルス性の欠如のためF-15EXは視程外から攻撃を受けやすく、レーダー探知されミサイルを先に発射された。ミサイルの速力は機体の飛行速度の五倍程度に達し、正しく反応するのが課題で、ましてや回避行動を取るのは困難だった。この攻撃への脆弱性を見て全機ステルス機材にすべきとする主張が有効に映りかねない。空軍はあえて新規生産F-15EXを採用したのだ。


だが、米国で現在も生産中のステルス戦闘機はF-35のみで、同機の運行経費が非常に高くなるとともに問題が解決できないまま山積しているのが現状だ。このため財政を苦しめつつ、ミッションの多くでは出撃させるのが不適となっている。空軍には負担可能な形で戦力を投入する必要があり、ステルス、非ステルス機を今後も適切な形で運用する。


今日の戦闘機で「多任務」として空対空および空対地対応を両立させた機体には特に秀でる任務を設定している。F-15CとF-15EXをステルスF-22と併用することで制空任務が実現し敵機に対応するが、F-15Eならびに限られた範囲だがF-35はともに地上攻撃を専門とする。


F-35を「空のクォーターバック」と呼ぶパイロットが多いが、戦闘空間の制御で搭載する演算処理能力と大幅に高い状況認識能力を使いその他機材の作戦を調整する機能が期待されている。F-15EXでは国旗ピットディスプレイが改良され、F-15C以上の状況認識機能が実現したとの触れ込みだ。とはいえ、機能上は大差ない。


F-15EXは空軍機材で最新鋭となったが、長く続く血統の流れを引き継いでいる。F-15はこれまで48年間にわたり米国他同盟国で供用されてきた。その間に、ドッグファイトの結果で104対ゼロという記録を作り、一機も撃墜されていない。


米国はF-15調達を二十年ほど前にいったん終了したが、同盟国のサウジアラビアやカタールではその後も新規製造機材を調達し、巨額の費用を投入して機能を向上させた。その結果を利用して米国も高性能版F-15の調達を迅速に実施できるようになり、20年間の技術進歩を同盟国の負担で享受するわけだ。その結果、最高水準の第四世代戦闘機となった。


だが、推力が増え、ペイロード、センサーコックピット内他で向上しているがF-15EXは今回のノーザンエッジ演習では大きく不利な状況に追いやられた。高性能とは言うものの、イーグルIIはステルス性能がなく、長距離攻撃の格好の標的となり、空中、地上の双方から狙われた。今日では新鋭電子戦装備を敵防空体制で供用しており、各機のパイロットには過酷な環境となっている。これは新規製造F-15出も例外ではない。


「ノーザンエッジではF-15EXがジャミング環境で機能するかを試し、GPS、レーダー、リンク16にジャミングをかけた」と第85試験評価飛行隊のアーロン・エシュケナジ少佐が述べている。


「そのほかの目標にはEXが第四世代機第五世代機との共同運用がどこまで可能を確かめることがあった。ノーザンエッジでは連日60機以上が飛び、われわれはイーグルIIが配備された想定でどこまで使えるかを確認した。今までのところ、非常にうまく機能している」■


この記事は以下を再構成し人力翻訳でお送りしています。市況価格より2-3割安い翻訳をご入用の方はaviationbusiness2021@gmailまでご連絡ください。


Air Force's new F-15EX makes dogfighting debut in Alaska war games

Alex Hollings | May 21, 2021


2021年5月30日日曜日

主張 ガザ向け国際援助を横流ししてロケット製造するハマスを援助団体機関は黙認すべきではない

  

ガザ住民を人間の盾につかい、正当な根拠のないまま同地区を支配するハマス等の戦闘集団が国連等の善意を悪用して援助物資を横取りしているとの問題提起です。ことあれば悪いのはイスラエル、パレスチナは被害者だからと一方的な価値観を押し付けているのは誰でしょうか。もっと現実を直視しないといけませんね。

ザへの国際人道援助がミサイル、ロケット弾の追加調達につながってはならない。

イスラエル、ガザ双方から恐ろしい写真が再び流出している。11日間にわたりミサイル、ロケット数千発がガザから発射され、イスラエル国民数百万人が防空壕に避難した。解説者は暴力に満ちたパレスチナとイスラエルの長い抗争の歴史に触れ、人権、国際法にも言及している。外交筋、各国指導層は戦闘終結を求め、「終わりなき暴力の応酬」を終わらせようとしている。

 

だが、こうした動きの裏で見逃している論点がある。世界有数の貧困地区ガザがどうやって30千発ものロケット弾、ミサイルを調達できたのか。ハマス(イスラム抵抗運動)率いるパレスチナ戦闘集団は今回わずか11日で4,350発をどうやってイスラエル都市部に向け発射できたのか、また次回に備え相当数を備蓄しているのか。

 

これだけの装備を集積していたのに誰も気づいていなかったのは不思議だ。ガザ住民を支援していると主張しており、国際連合パレスチナ難民救済事業機関 (UNRWA)、国連人道問題調整事務所 (OCHA)、国連児童基金(UNICEF)が各国から資金数億ドルを集め、米国もジョー・バイデン大統領が拠出を再開し、報告書の洪水を作り、さらなる資金援助を喫緊の課題と強調している。さらに、不思議なのはガザ内の工場多数でロケット弾を製造し民間施設に貯蔵し再充填式発射機も備えているのに、報告書でこうした言及が皆無なことだ。

 

ガザでの武器貯蔵の背景にはイスラエルによる反攻から武器類を守るコンクリート補強構造のトンネル網が人口稠密地帯の地下に張り巡らされていることがある。だがNGO団体、国連機関、各国政府の援助部門は目をつぶっている。各方面は明白な証拠があるのに沈黙を守っている。

 

2001年にパレスチナの「抵抗」ロケット弾がガザ境界各地から初めて発射されて以来、10千発がイスラエルに放たれた。大部分が現地製造でパイプや爆発物を使いイラン等から入手した工作機械て製造している。工作機械は人道援助として各国が寄贈したものだ。弾頭部分の威力と射程距離が延びるに従い、被害も拡大し、死者も増えている。

 

イスラエルが軍部隊と一般市民をガザから一斉撤退させたのが2005年で、その後にミサイル製造は大幅に拡大している。第一次ガザ戦闘は2008年12月28日勃発し、ミサイル、迫撃砲弾750発が境界線に沿う各市町村から発射された。イスラエルの反攻で被害も発生したが、ロケット発射そのものは止まることなく、国際社会は沈黙を決め込んだ。発射が再開するとイスラエルはさらに激しい報復攻撃を加えた。このパターンが2014年の51日戦争で発生し、ガザは4,500発を発射した。この戦闘が終わると、ロケット製造は直ちに再開され、国際援助物資から「調達した」材料を活用したが、各国のドナーはこれを直視せず、今回の悲劇の再発につながった。

 

年を追うごとに死傷者が増えており、イスラエル児童が防空壕に逃げ込み、イスラエル、ガザ双方で破壊された住宅建物の光景の生々しい画像が出回る中で、何ら変化が生まれていない。国連などドナー各国の責任でハマスなどの勢力が援助物資を横取りしている事実は是正できるのか。ガザ再建用の物資でミサイル工場が生産を続け、テロ活動用のトンネルを再建するハマスを止められるのか。

 

このパターンを止めるためにも国際援助物資をガザに送る各方面は和平を尊重する壮言な文言以上の行動が必要だ。人道援助がミサイル、ロケットの増産につながっている事実に目をつぶってはならない。

正しい貢献の効果をめざし、NGO団体、国連機関、ドナー諸国は効果の監視、執行の仕組みを真剣に構築すべきだ。またミサイル製造、強化コンクリート製トンネル建設が続く限りは援助を止めるべきだ。こうした仕組みを構築し実行に移すには多大な資金投入が必要で決して容易な仕事ではない。しかし、引き続き目をつぶれば、ガザが武器貯蔵地となり地下トンネル網がさらに拡充される。解決にさらに多大な資金が必要となる。■

 

この記事は以下を再構成し人力翻訳でお送りしています。市況価格より2-3割安い翻訳をご入用の方はaviationbusiness2021@gmailまでご連絡ください。


International Aid for Gaza Must Not Build Hamas’ Rockets

by Gerald Steinberg

May 29, 2021  Topic: Gaza  Region: Middle East  Blog Brand: The Buzz  Tags: GazaIsraelPalestineHamasRocketsIranMilitary

Karine Jean-Pierre Makes History At White House Briefing

 

Gerald Steinberg is emeritus professor of political science at Bar-Ilan University and heads the Institute for NGO Research in Jerusalem.

Image: Reuters.


再出)空母レーガンを中東へ移動させ、西太平洋で米空母不在状況が発生する。アフガニスタン部隊撤収の支援のため。中東での空母打撃群常時プレゼンス維持は見直しになるのか。

 日本の安全保障は国境線ではなく、利益線で考えるべきとの命題の証明になりそうですね。中東地区への出動は短期とはいえ、西太平洋に空母不在時期が発生すれば中国には好機となるでしょう


USSロナルド・レーガン (CVN-76) が硫黄島の沖合を航行した 

May 22, 2021. US Navy Photo

 

本が母港の米航空母艦が中央軍管轄地区へ派遣され、米軍のアフガニスタン撤収を支援する。

 

USSロナルド・レーガン(CVN-76)は護衛艦艇、第5空母航空団とUSSドワイト・D・アイゼンハワー (CVN-69) 打撃群と交代し、2021年9月11日が期限のアフガニスタン撤収に対応する。

 

日本へ前方配備中の空母を他地区で運用するのは今回が初めてではない。USSキティー・ホーク(退役済み)(CV-63)は2003年のイラク侵攻で初期段階の支援で移動していた。

 

ウォールストリートジャーナルがレーガンのCENTCOM管轄地区への移動を報じていた。

 

アイゼンハワーは北アラビア海で待機し撤収作戦の航空支援を行う任務を解かれると4月末にUSNI Newsは伝えていた。

 

日本へ配備中の空母を中東へ移動させると米空母戦力に負担が増える。ただでさえ、海軍は空母の定期修理を先送りしてまで現地司令部の要望に応えている。米中央軍は北アラビア海からオマーン湾に至る狭い海域に空母打撃群一個を常時展開しており、今年早々ごく短期的に不在状態が発生したきりだ。

 

海軍作戦部長マイク・ギルディ大将はペンタゴンはアフガニスタン撤収後に中東地区で空母プレゼンスを減らす検討中と今月初めに明らかにした。

 

「プレゼンスは必要だ。問題は米海軍が維持すべき戦力内容だ。イランと核交渉が続く中で、イランに許容できる形の行動を期待したい。空母打撃群の必要性が減るからだ」(ギルディ作戦部長)

 

2020年の状況を見ると中東には太平洋と同等の頻度で空母が配備されていたことがわかる。

 

2019年からペンタゴンは中東に空母を常時配備しており、空母戦力が不在となるのを避けてきた。

 

ただし、アイゼンハワーは今年二回目の配備となったが予定通りの供用が艦の機構面で不可能となり、7月に中東を離れ本国修理に向かう予定となっている。アフガニスタンでの部隊撤収発表に先立ち、米国は空母の常時プレゼンス維持の方針の変更をほのめかしていた。2月にオースティン長官はUSSニミッツ(CVN-68)打撃群に米国帰還を命じた。同艦は八カ月間の展開を続け、途中でCOVID-19流行のため乗組員は艦内隔離されていた。同艦はワシントン州ブレマートン母港に帰還したが、乗組員は11カ月ぶりに家族と再会できた。

 

USSセオドア・ロウズヴェルト(CVN-71)も長期展開から今週帰港した。

 

レーガンは例年の春季西太平洋哨戒に先立ち横須賀へ先週帰港していた。水曜日時点では修理工事後に空母航空部隊運用の認証作業が完了していない。

 

次に利用可能な空母に西海岸にUSSカール・ヴィンソン(CVN-70)があるが、今年夏遅くまでは出動できず、中央軍管轄地区への移動は秋のはじめ以降になる。■

 

この記事は以下を再構成して人力翻訳でお送りしています。市況価格より2-3割安い翻訳をご入用の方はaviationbusiness2021@gmailへご連絡ください。


Japan-based Carrier USS Ronald Reagan Will Make Rare Middle East Patrol - USNI News

By: Sam LaGrone

May 26, 2021 11:09 AMUpdated: May 26, 2021 2:17 PM



空母レーガンを中東へ移動させ、西太平洋で米空母不在状況が発生する。アフガニスタン部隊撤収の支援のため。中東での空母打撃群常時プレゼンス維持は見直しになるのか。

日本の安全保障は国境線ではなく、利益線で考えるべきとの命題の証明になりそうですね。中東地区への出動は短期とはいえ、西太平洋に空母不在時期が発生すれば中国には好機となるでしょう


USSロナルド・レーガン (CVN-76) が硫黄島の沖合を航行した 

May 22, 2021. US Navy Photo

 

本が母港の米航空母艦が中央軍管轄地区へ派遣され、米軍のアフガニスタン撤収を支援する。

 

USSロナルド・レーガン(CVN-76)は護衛艦艇、第5空母航空団とUSSドワイト・D・アイゼンハワー (CVN-69) 打撃群と交代し、2021年9月11日が期限のアフガニスタン撤収に対応する。

 

日本へ前方配備中の空母を他地区で運用するのは今回が初めてではない。USSキティー・ホーク(退役済み)(CV-63)は2003年のイラク侵攻で初期段階の支援で移動していた。

 

ウォールストリートジャーナルがレーガンのCENTCOM管轄地区への移動を報じていた。

 

アイゼンハワーは北アラビア海で待機し撤収作戦の航空支援を行う任務を解かれると4月末にUSNI Newsは伝えていた。

 

日本へ配備中の空母を中東へ移動させると米空母戦力に負担が増える。ただでさえ、海軍は空母の定期修理を先送りしてまで現地司令部の要望に応えている。米中央軍は北アラビア海からオマーン湾に至る狭い海域に空母打撃群一個を常時展開しており、今年早々ごく短期的に不在状態が発生したきりだ。

 

海軍作戦部長マイク・ギルディ大将はペンタゴンはアフガニスタン撤収後に中東地区で空母プレゼンスを減らす検討中と今月初めに明らかにした。

 

「プレゼンスは必要だ。問題は米海軍が維持すべき戦力内容だ。イランと核交渉が続く中で、イランに許容できる形の行動を期待したい。空母打撃群の必要性が減るからだ」(ギルディ作戦部長)

 

2020年の状況を見ると中東には太平洋と同等の頻度で空母が配備されていたことがわかる。

 

2019年からペンタゴンは中東に空母を常時配備しており、空母戦力が不在となるのを避けてきた。

 

ただし、アイゼンハワーは今年二回目の配備となったが予定通りの供用が艦の機構面で不可能となり、7月に中東を離れ本国修理に向かう予定となっている。アフガニスタンでの部隊撤収発表に先立ち、米国は空母の常時プレゼンス維持の方針の変更をほのめかしていた。2月にオースティン長官はUSSニミッツ(CVN-68)打撃群に米国帰還を命じた。同艦は八カ月間の展開を続け、途中でCOVID-19流行のため乗組員は艦内隔離されていた。同艦はワシントン州ブレマートン母港に帰還したが、乗組員は11カ月ぶりに家族と再会できた。

 

USSセオドア・ロウズヴェルト(CVN-71)も長期展開から今週帰港した。

 

レーガンは例年の春季西太平洋哨戒に先立ち横須賀へ先週帰港していた。水曜日時点では修理工事後に空母航空部隊運用の認証作業が完了していない。

 

次に利用可能な空母に西海岸にUSSカール・ヴィンソン(CVN-70)があるが、今年夏遅くまでは出動できず、中央軍管轄地区への移動は秋のはじめ以降になる。■

 

この記事は以下を再構成して人力翻訳でお送りしています。市況価格より2-3割安い翻訳をご入用の方はaviationbusiness2021@gmailへご連絡ください。


Japan-based Carrier USS Ronald Reagan Will Make Rare Middle East Patrol - USNI News

By: Sam LaGrone

May 26, 2021 11:09 AMUpdated: May 26, 2021 2:17 PM


 

 



 

 


 

2021年5月29日土曜日

バイデン政権初の国防予算案はこれから議会で審議へ。新技術投資とともに旧型装備廃止を提唱。中国重視などの基本姿勢はトランプ政権と共通。そもそも国防安全保障政策が急転換することなどあってはならないのだが....

 政権交代しても基本構造を変えることはできないというのが現実政治の姿であり、民主党左派は不満を表明するでしょうが、既存装備の廃止をめぐり議会共和党も反対姿勢を示しており、政権は板挟み状態になるのではないでしょうか。日本でも政権交代を軽々しく発言する向きがありますが、(支持率10%以下で政権を握れるはずがありません)大事な安全保障政策を変えることなど主張してもらいたくありませんね。

 

 

アンドリュース空軍基地(メリーランド)で大統領専用機から降機し敬礼するジョー・バイデン大統領 May 19, 2021. (Photo by NICHOLAS KAMM/AFP via Getty Images)

 

ョー・バイデン大統領初の国防予算要求は調達を80億ドル削り、旧型装備を廃止し、新技術の開発試験に55億ドルを投入し中国への抑止効果を狙う。

 

2022年度の国防予算要求は7,150億ドルで5月28日に議会へ送られた。110億ドルの増額はインフレーション相殺分だ。ロイド・オースティン国防長官が「史上最大規模」と称する研究開発試験評価予算が大きな比重を占め、ホワイトハウスは1,120億ドルと前年比で5%増とした。

 

その反面、調達予算は6パーセント減で1,336億ドルとなった。うち240億ドルを「国防改革」に投入し、280億ドルを現有装備の処分で捻出し、戦術機材A-10、F-15、F-16および沿海域戦闘艦四隻、巡洋艦二隻を退役させる。

 

予算要求では51億ドルを「太平洋抑止力構想」にあて、49億ドルを統合部隊の戦力アップ、1.5億ドルを各種演習・実験・イノベーション、23百万ドルを戦力構成研究に計上した。装備別ではトマホーク、スタンダードミサイル6、INF条約破棄後の射程500キロ制限を撤廃した陸上配備通常火力、海軍の通常迅速打撃戦力(極超音速兵器)の整備が目を引く。

 

「今回の予算案では厳しい決断を迫られた。今日の強力な脅威の前に有効性を失った、あるいは維持費用が高くなった装備システムには頼れなくなっている」と国防副長官キャスリーン・ヒックスが同日述べている。「厳しい目で資源を再配分し、マイクロエレクトロニクス含む高度技術の研究開発用予算を確保した。これで必要な戦力の実用化の基礎固めを進める。例として極超音速ミサイル、人工知能、5Gがある」

 

各軍別では陸軍が1,740億ドル(21年度比で15億ドル減)、海軍へ2,070億ドル(46億ドル増)、空軍へは2,040億ドル(88億ドル増)となる。空軍の数字には宇宙軍が内数で、前年の154億ドルを175億ドルにする。

 

国防関係者から中国重視で海軍、空軍が増額となったとの発言が出ているが、オースティン長官は統合参謀本部議長マーク・ミリー大将と同席し陸軍予算を減らして多軍向け予算を捻出したのではないと説明した。両名は陸軍が求める近代化優先事業6個にはフル予算をつけ、将来の戦闘に向けた戦力へ配慮していると述べた。

 

大統領府による予算案は議会が修正して成立させることが通例で、供用中の装備品を廃止する案に不満を表明する議員が出ている。共和党議員重鎮からは中国の軍事力整備に対抗するべくインフレ率を3-5パーセント上回る増額が必要との意見が出ており、修正を求める構えだ。

 

「バイデン大統領の国防予算要求は全体として不十分だ。軍で必要となる予算、装備、訓練の各水準を満たしていない」と上院軍事委員会の有力議員ジム・インホフェ(共、オクラホマ)と下院軍事委員会のマイク・ロジャース(共、アラスカ)が共同声明を発表した。「この規模の要求を増額と呼ぶのは適当ではない。インフレ率に達しておらず実質減ではないか」

 

予算関連書類では「高機能を実現する手段」としてマイクロエレクトロニクス(23億ドル)、人工知能(8.74億ドル)、5Gネットワーク(3.98億ドル)とあわせ、極超音速兵器(38億ドル)を対象にしている。極超音速関連では陸軍の長距離極超音速砲、DDG1000級駆逐艦への海軍通常型迅速打撃装備の追加搭載、空軍の高性能迅速反応兵器を含む。

 

中国、ロシアとの開発競争では極超音速兵器が中核となっている。両国が先行といわれる。ペンタゴンは極超音速兵器二型式の実用化を急ぐ。まず極超音速滑空兵器でロケットで打ち上げる。もう一つが戦闘機や爆撃機から発射する巡航ミサイルだ。

 

核三本柱のそれぞれでフル予算をつけ、核兵器体系に277億ドルを投じる。コロンビア級潜水艦、B-21爆撃機、長距離スタンドオフ兵器、次世代大陸間弾道ミサイル(地上配備戦略抑止力)である。

 

今回の予算要求で姿が見えないのが将来年度国防事業への予算で、これは新政権がグローバル防衛体制を見直し中で、その先の国防戦略改訂を待つためだ。

 

中国重視、旧式装備削減、将来への展望、核兵器体系への手厚い支出、というのはドナルド・トランプ政権による最後の2021年度予算の継承だ。

 

またトランプ政権の予算優先順位と同様にバイデン政権初の要求でも戦時予算勘定OCOを含めた予算構造にしている。これまでOCOには削減対象とすべきとの批判があった。

 

OCOは複雑な構造になっており、予算提案では「直接戦闘要求」に56億ドル減で143億ドル、「基地関連OCO」および「継続的」関連は217億ドル減で要求している。

 

節約分は本来なら他事業に使えるのだが、国防関係者によれば政権はアフガニスタンのテロ制圧能力整備に使い、イランへの抑止効果をねらっているという。■

 

この記事は以下を再構成し人力翻訳でお送りしています。市況価格より2-3割安い翻訳をご入用の方はaviationbusiness2021@gmailまでご連絡ください。


Eyeing China, Biden defense budget boosts research and cuts procurement

By: Joe Gould


2021年5月28日金曜日

(再出)主張 日本の南西島しょ部分防衛方針は中国の侵攻に対応できない。南西部を城壁にし、中国の水上進出を阻むべきだ

  

Japan Military Strategy

陸上自衛隊の88式対艦ミサイル Japan GSDF

 

 

本の南西諸島防衛が問題に直面しそうだ。

 

サウスチャイナモーニングポストに菅義偉首相率いる日本政府が防衛支出増額に向かうとの記事が出た。第二次大戦終結後の日本は非公式ながら防衛支出をGDP1パーセント上限に押さえ、軍国主義の再登場を懸念するアジア周辺国をなだめてきた。

 

ところが中国の軍事力増強と東シナ海での横暴な行動から日本もついに平和主義を脱し防衛費増額に向かいだしたわけだ。尖閣諸島含む南西部の防衛が日本の大きな懸念事項だ。岸信夫防衛相は「自衛隊に対応できない地点があってはならない。島しょ部分への部隊派遣は極めて重要」と述べている。

 

これを受けて陸上自衛隊は水陸機動団ARDBを発足させた。番匠幸一郎陸将はRANDでこの誕生を以下説明している。山本朋広防衛副大臣はARDBの主目的を「揚陸作戦を全面的に展開し、遠隔部が不法に占拠された場合に短時間で上陸、奪還、確保すること」と述べた。

 

番匠元陸将発言から「南西部城壁戦略」が見えてくる。島しょ線を日本の主権下に保ち、中国の海洋移動を阻もうというものだ。これ自体は良好に聞こえる。ただし、奪還となると話は別で問題となる用語だ。日本政府の考える戦略方針をそのまま反映している。自衛隊には相手の動きを待って反応させるが、先行した動きは認めない。また作戦はあくまでも第一列島線を舞台とする。日本は攻撃が加えられるまで待つのか。中国の人民解放軍PLAが地上を制圧するのを待ってから自衛隊が動き、奪還するというのだ。

 

これでは受け身の姿勢だ。逆に日本はPLAの攻撃前に島しょ部に部隊を急派し守りを固めるべきではないのか。守備隊が撤退しては敵の攻撃の前に城壁もそのまま守れない。南西島しょ部の壁も同じだ。プロシア陸軍のヘルムート・フォン・モルトケ元帥なら敵攻撃により陥落した島しょ部奪回作戦を聞いて興奮するはずだ。クラウゼビッツ流にモルトケは軍事史上で最高の作戦家にしてドイツ統一の立役者のモルトケは戦時には「戦術的防衛が有利」であり、戦略的攻勢が「より効率が高い方法であり、目標達成の唯一の方法」と述べている。言い換えれば、敵地を占拠あるいは占領してから戦術的に有効な防衛体制をとれば、戦略的な勝利につながるということだ。敵は莫大な犠牲と危険を覚悟で占領地の奪回を迫られる。戦場も実生活と同じだが、いったん手に入れれば我が物、ということだ。

 

海洋戦略も同様だ。前世紀の海洋歴史家ジュリアン・S・コーベットがモルトケの知見を沿海部に応用した。コーベットは戦略的攻勢に戦術的防衛を組み合わせれば限定戦で大効果が出ると主張した。戦闘艦艇は戦わずして敵に現実を受け入れさせることができる。あらゆる点で太平洋での戦闘は限定戦になる。核の時代に戦争を最終段階に持っていこうとするものは皆無だからだ。

 

戦術的防衛を戦略的攻勢と組み合わせることについてコーベットは「即応体制、機動力があること、あるいは有利な状況が該当地区にあり、敵が阻止してくる前にこれを実現することが前提」と述べている。敵が「撃退せんと動いてくれば、こちらの望ましい形で対応し、敵の反抗を遠隔地に限定させ、もって敵を消耗させるべし」としている。

 

コーベットもモルトケも地形や地理上の距離さらに防衛側の主体的な動きで反攻は困難になると主張している。このまま海洋面に応用できるかは疑問もある。コーベットは「目標地周囲が海の場合、敵は海洋全周の支配ができない」とし、守備側が占拠を維持できる可能性をほのめかしている。島しょ部は周囲が海だ。海洋戦略でこの海を壁にし、敵の動きを戦術的防衛で困難にさせればよい。日本はもっと攻撃的な姿勢になるべきだし、こうした過去の戦略大家の言葉を咀嚼すべきだ。ただし、何でもそうだが、すべてが想定通りに進まない。PLA部隊が自衛隊部隊より先に上陸する可能性もある。そうなると自衛隊の水陸両用機動団は敵の銃火の下で奪回を迫られる。南西部島しょ部で日本の主権を守る作戦としてこれは最も難易度が高い。日本ではなく中国が戦術的防衛の優位性を享受する。こうした想定が日本の外交政策や防衛当局に共有されれば、水陸機動団に出撃命令は出せなくなる。したがって積極策を考えるべきだ。

 

城壁に人員を配置するべきだ。しかも早期に。

 

そこで日本はモルトケやコーベットもほめるような攻撃的な思考ができるようになる。そうなればよい。また、番匠元陸将が説明したように、陸上自衛隊は「水陸機動団発足」のプレスリリースの中で「日本の遠隔島しょ部へのいかなる攻撃も撃退する」「統合能力」は十分にあると公言している。これは中国の揚陸作戦を阻止すると聞こえる。だが同時に水陸機動団の主目的は襲撃を受けた遠隔島しょ部で「上陸し、迅速に再奪回し占拠する」こととしている。

 

そこで再奪回ということばだ。

 

ここに中国と日本の考える戦略の違いが見え隠れする。日本の2017年版防衛白書では「中国は東シナ海南シナ海の現状変更を狙い、国際法による現状の秩序では受け入れられない形の主張をしており、日本含む域内諸国のみならず国際社会で懸念を生んでいる」と論じていた。言い換えれば、中国は現状を変えるべく攻勢をかけようとしている。

 

たしかに中国は常に積極的防衛手段をためらわないと公言しており、戦略的目的のためには攻撃作戦や戦術を取るとしている。中国の侵攻による犠牲者が中国の侵攻を生むと非難している。だがこれまで続いてきた域内秩序をひっくり返せば戦略的防衛につながるのは必至だ。実際に中国共産党は戦略的攻勢を主張し、実際に攻撃手段を実行している。党に従属するPLAが非武装あるいは紛糾する地点の占拠を選択する、あるいは他国の奪還を許さないと決定する事態が考えられる。このパターンはすでに南シナ海からヒマラヤまで展開しているではないか。モルトケ=コーベットならこの事態を見て即座に軍事対応につながるものと認識するだろう。

 

では日本はどうか。戦略的防衛に徹するが、国のトップは戦術の選択で悩んでいるように見える。日本に一番正しい道はモルトケだ。水陸機動団は中国部隊が防備を固める前に島しょ部へ移動する必要がある。戦術防衛策の優位性を証明することになろう。

 

そうなると菅首相以下の日本政府はモルトケ、コーベットに学び、南西部城壁を有効にする方法を採択すべきだろう。中国の攻勢に対し、日本にはスパルタ王レオニダスが劣勢な軍を巧みに活用したテルモピュレ峠の事例(紀元前480年)というモデルもある。ペルシア王クセルクセスの使者が剣を下ろせと要求すると、レオニダスはできるもんならやってみろ、と回答した。二千年以上前のこの姿勢が今日にも通じる。■

 

この記事は以下を再構成し人力翻訳でお送りしています。市況価格より2-3割安い翻訳をご入用の方はaviationbusiness2021@gmailまでご連絡ください。


Japan’s Backwards Island Defense Strategy Against China Is a Mistake

DR. JAMES HOLMES: THE NAVAL DIPLOMAT

ByJames Holmes

 

 

James Holmes holds the J. C. Wylie Chair of Maritime Strategy at the Naval War College and served on the faculty of the University of Georgia School of Public and International Affairs. A former U.S. Navy surface-warfare officer, he was the last gunnery officer in history to fire a battleship’s big guns in anger, during the first Gulf War in 1991. He earned the Naval War College Foundation Award in 1994, signifying the top graduate in his class. His books include Red Star over the Pacific, an Atlantic Monthly Best Book of 2010 and a fixture on the Navy Professional Reading List. General James Mattis deems him “troublesome.”