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2023年9月23日土曜日

クリミアでドック入りしていたロシア・キロ級潜水艦はウクライナの攻撃でここまでの損傷を受けていた----

 



Russian Submarine struck crimea damage

CIT via X



クリミアでドック入り中のロシア潜水艦が攻撃され、甚大な被害を受けた


 週、ウクライナの巡航ミサイルによる攻撃を受けたロシア海軍のキロ級ディーゼル電気攻撃潜水艦が受けた大きな損害を示すとされる写真が、ソーシャルメディアに出回り始めた。キロ級は、ロプチャ級揚陸艦とともに、ロシア占領下のクリミアのセヴァストポリ港で乾ドックに入っていたが、9月13日未明に攻撃を受けた。


改良型キロ級潜水艦の損傷を写した2枚の写真のうちの1枚は、

Conflict Intelligence Teamが最初に公開したものらしい。CIT via X


独立調査機関CIT(Conflict Intelligence Team)が最初に公開したらしいこの写真には、艦首に直撃らしき跡があり、ぽっかりと穴が開いている。セイルの後方、右舷側にも大きな衝撃があり、おそらく二次爆発の結果、船体の一部が吹き飛ばされたようだ。もうひとつ考えられるのは、今回の攻撃で使用されたと広く報じられているストームシャドウやスカルプEG巡航ミサイルが搭載している二重の「BROACH」弾頭の爆発である。

 英国国防省を含む複数ソースによれば、問題の潜水艦はロストフ・オン・ドン(B-237)で、プロジェクト636.3クラスの改良型キロ艦、ウクライナの標的に対して広く使用されているタイプのカリブル陸上攻撃巡航ミサイルを発射できる。同艦は2014年に就役した黒海艦隊配備4隻のうちの1隻である。

 ともあれ、この潜水艦が受けたダメージの程度を見る限り、完全に放棄せざるを得ないだろう。最良のシナリオでも、可能な限りの部品を回収して再建する必要があり、何年も使用できなくなる。さらに、そのような修理はほぼ間違いなく黒海の外で行わなければならず、それ自体が深刻な物流上の努力となるだろう。

 潜水艦戦で権威あるアナリストのH・I・サットンと元米海軍潜水艦乗りのアーロン・アミック両名が本日、キロ級改良型潜水艦は修復不可能なほど損傷していると考えているとツイートした。

 確かに、この写真は、潜水艦は(揚陸艦とともに)修理され、活動に復帰するというロシア公式発表に重大な疑問を投げかけるものだ。ウクライナ側は"修復対象にならない可能性が高い "と主張していた。

 攻撃直後から、セヴァストポリからの衛星画像でも、潜水艦と揚陸艦に加えられた非常に深刻な被害が明らかになり始めていた。潜水艦と揚陸艦は部分的に焼失しているように見えただけでなく、それらが置かれていた乾ドック全体の存続も危ぶまれた。

 ロシア国防省は、この攻撃に10発のミサイルと3隻の無人水上艇(USV)が関与し、うち7発を撃墜したと主張していた。使用されたミサイルは、ウクライナ空軍のSu-24フェンサー攻撃/偵察機で発射可能なストームシャドウおよび/またはSCALP-EGスタンドオフミサイルとの主張がある。


ウクライナのSu-24ジェット機の主翼の下にあるフランスから供与されたSCALP-EG巡航ミサイル。ウクライナ国防省のスクリーンショット


攻撃直後のツイートで、ウクライナ空軍のミコラ・オレシュチュク長官は、パイロットの「優れた戦闘行為」を挙げ、彼らの関与の可能性を再び指摘した。

 以前も指摘したように、クレムリンが本格的なウクライナ侵攻を開始して以来、ウクライナが繰り返し標的にしてきたセヴァストポリ港への今回の攻撃の程度は、深刻な影響を及ぼす可能性がある。おそらく、黒海艦隊の一部を移転させるか、同港の施設の利用を減らすよう促す可能性さえある。

 少なくとも、潜水艦と揚陸艦を収容するセヴモルザヴォド施設のドライドックが通常使用に戻るまでは、セヴァストポリが黒海艦隊の艦艇のメンテナンスや修理を行うことができるかどうかという問題がある。

ラジオ・フリー・ヨーロッパ/ラジオ・リバティの報道によれば、「黒海の海軍能力は、当面の間、深刻な縮小を余儀なくされる可能性が高い」。


2022年2月13日、黒海に向かう途中、ボスポラス海峡を航行するロシア海軍の改良型キロ級潜水艦「ロストフ・オン・ドン」。写真:OZAN KOSE/AFP via Getty Images


さらに東、ロシア本土沿岸にあるノヴォロシースク港でさえ、潜水艦の整備の施設はない。クリミアの他の場所には浮きドックがあるが、そこもより大規模な修理作業には対応できない。

 ワシントンに拠点を置くシンクタンク、海軍分析センターのドミトリー・ゴレンブルグは、ラジオ・フリー・ヨーロッパ/ラジオ・リバティーに対し、「具体的な攻撃は(黒海艦隊の)作戦に影響を与えるだろうが、より大きな影響が累積する」と語った。

 一方、乾ドック自体の被害の実際の程度を測るのは難しい。潜水艦と揚陸艦の撤去が主な作業となり、その後は軽微な修理で済むかもしれない。しかし、それさえも長期化する可能性があり、ひいては黒海艦隊の大型艦の稼働率全体に影響を与えるだろう。これは乾ドックが再び被災しないことが前提だ。

 短期的には、9月13日の攻撃の影響の一つとして、港周辺の地上防空を強化し、USV対策を強化することが考えられる。ウクライナは同様の長距離攻撃で半島にあるロシアのハイエンドな防空機能を低下させているため、これは想像以上に難しいことになるかもしれない。これらの攻撃は、巡航ミサイルやドローンが接近する際に、早期警戒や交戦の機会を目くらましし、全体的な生存能力を高めることを目的としているようだ。また、ウクライナのSu-24が黒海北西部上空でSCALP-EGやストームシャドウを発射するために半島に接近することもできる。

 明らかに、ウクライナはセヴァストポリへのさらなる攻撃を期待している。その攻撃には、国産対艦ミサイル「ネプチューン」の陸上攻撃バージョンも含まれる可能性がある。

 「無人機が増え、攻撃が増え、ロシアの艦船は減る。それは確かだ」と、ウクライナのデジタル変革大臣Mykhaylo Fedorovは先週ロイターに語った。

 どのような形で攻撃が行われるかは不明だが、ロシア軍艦がセヴァストポリ港に停泊しているだけで脆弱であることは間違いない。セヴァストポリにある整備・修理施設は当分の間使用できないため、艦船にこれ以上の被害が出れば、ロシア海軍の問題はさらに深刻化するだろう。■


Russian Submarine Shows Massive Damage After Ukrainian Strike

f.

BYTHOMAS NEWDICK|PUBLISHED SEP 18, 2023 12:56 PM EDT

THE WAR ZONE


2022年3月1日火曜日

ウクライナ侵攻の海上戦闘はどうなっているのか。 ロシア黒海艦隊を中心にこの数日の動きをまとめた記事をご紹介。

 

Russian Naval Activity in the vicinity of Snake Island (H I Sutton image)

 

ロシア-ウクライナ間の戦闘が4日目に入り、一向に衰える気配がない。「戦闘の霧」のため、全体像が見えてこない。世間の関心が市街地戦に向かいがちだが、これまで黒海で何が発生したか見てみることに意味がある。


シア軍はウクライナ戦に備え準備していた。国境地帯やベラルーシでの部隊増強が関心を呼んでいたが、重要だったのが黒海艦隊(BSF)の増強で、バルト海、北海、太平洋から艦艇が移動し、BSF配備中の艦艇も地中海に展開した。


報道でなかなか取り上げられない黒海に焦点をあててみよう。



黒海艦隊の役割


陸上空中に比べ、海上の緊張度は低い。2014年のクリミア半島侵攻でウクライナは海軍戦力の大部分を喪失したためだ。


侵攻一週間前にBSFがNOTAMを出し、ケルチ海峡Kerch Straitならびにクリミア半島南部西部の封鎖作戦の予行演習が展開された。その時点でBSFが黒海北部を統制下においたと言っても過言ではない。


2月24日、ロシアはウクライナ主要都市に大規模攻撃を開始した。ロシア国防省は投入したミサイルの種類を明らかにしていないが、BSF艦艇もカリブルミサイルを発射したと思われる。BSFのブヤン-M級海防艦、アドミラル・グロゴロヴィッチ級フリゲート艦、改キロ級潜水艦、プロジェクト22160哨戒艇が同ミサイルを搭載している。


スネーク島で何があったのか


ルーマニア国境付近のウクライナ領の小島「スネーク島」(ウクライナ語でズミイニ島)が海上戦闘で最も目立つ舞台となった。BSF旗艦スラバ級巡洋艦RFSモスクバ、プロジェクト22160哨戒艇が艦砲射撃した。なお、同島はオデッサの南方50カイリ。


守備隊13名は降伏を拒み、ロシア砲火により絶命した。同隊隊員は「ズミイニの英雄」と呼ばれている。ロシア艦艇は同島を占拠し、付近海域を哨戒している。


同島陥落の詳細が不明ながら、その位置がNATO加盟国ルーマニアに極めて近いことが重要で、ロシアのBAL/バスティオンP沿岸防衛ミサイルを配備されればA2/AD効果が増加する点も同様に重要だ。オデッサへの上陸作戦が実施されえれば、同島が補給拠点になる。


黒海での航行の自由

MILLENNIUM SPIRIT on fireMILLENNIUM SPIRIT on fire. Ukrained MoD picture.


黒海で航行の自由を妨げる事件が発生した。


ウクライナ国防省は2月25日発表で民間商船2隻がロシア軍の攻撃を受け、場所はオデッサ近郊とした。パナマ船籍のばら積み船NAMURA QUEEN (IMO: 9841299)とモルドバ船籍タンカーMILLENNIUM SPIRITでともにミサイル攻撃を受けたという。ウクライナ沿岸警備隊初め救難にあたった。モルドバ当局はミサイルをどちらが発射したか不明としたが、ウクライナ防衛省は両船ともロシア軍の行為と非難した。


2月26日、トルコの船舶追跡愛好家からロシア海軍がVHF16チャンネルを使い、「テロ対策作戦」を展開中のためオデッサおよびダニューブ付近の全船舶に直ちにポスポラスへの移動を求めたのを傍受したとツイッター投稿があった。


ウクライナは海峡封鎖をトルコに要請


Marmara Sea map showing the traffic routes to the Black Sea (Prepared by Tayfun Ozberk)



トルコではウクライナ大使が海峡封鎖によりBSFの増強を図るロシア艦艇の移動を止めるよう要請した。トルコはモントルー条約によりボスポラス海峡、ダルダネレス海峡の双方で民間商船、海軍艦艇の通行を管制している。トルコ外相メヴルト・キャブソグルMevlut Cavusogluからトルコは母港に戻るロシア艦艇の移動を差し止めることができないと声明が出た。


2月26日にウクライナ大統領ゼレンスキーがツイッターで再びトルコに要請し、「黒海に向かうロシア艦艇の移動を封じることでウクライナの軍事活動並びに人道支援に大きな効果が生まれるので極めて重要な課題だ」と述べた。トルコ側から返答がない。


マリウポル付近で揚陸作戦か


USNI Newsによればロシアはアゾフ海経由でウクライナへの揚陸作戦をマリウポル付近で実行した。ペンタゴン報道官ジョン・カービーは記者団に同作戦の実態は完全に把握できていないことを認め、ロシア上陸部隊の規模に触れなかった。


英国防省が情報開示でこの点に触れ、2月26日ツイッターでロシアはウクライナ南部メリトポルとマリウポルの間で揚陸作戦を実行したようだと伝えている。


だがマリウポル沿岸での上陸部隊の画像映像が皆無で、ウクライナ当局も情報開示していない。


揚陸作戦はあったのか、ウクライナ新型対艦ミサイルはどこに


ロシアBSFは開戦前予想どおりの動きを示した。BSFはウクライナへの海路、主要港への動きを抑え、援助物資の流れを差し止めながら、海上からのミサイル攻撃を戦略目標に向けた。揚陸作戦が合ったと観測されているが、無用なリスクを生むだけと見ている。BSFは何ら抵抗を同海域でうけていないためだ。


USNI記事はペンタゴン発表をもととし、アゾフ海沿岸での上陸作戦を伝えた。揚陸作戦は水上艦、航空機、特殊部隊等が加わる複雑な作戦となるのが一般だ。だがこうした展開があった、また部隊が衝突した証拠がない。記事が正しいとすれば、これだけ狭い地点に上陸しながら損害が皆無というのは実に驚くべきことだ。沿岸守備部隊の抵抗がない楽な展開だったのか。今後情報が入れば、実態がわかる。


最新情報ではオデッサ付近でも揚陸作戦が実行された可能性があるという。ロシアは揚陸作戦を一定の損失を覚悟の上で実施したはずだ。ロシア軍は開戦3日目に進軍が減速した。このためオデッサ付近の揚陸作戦が南方での新たな展開になりそうだ。


BSFの揚陸作戦能力、装備品を搭載するサヴァストポリからの距離を考慮すれば、ウクライナへの揚陸作戦はBSFに壊滅的結果を招きかねない。まず、セバストポリからオデッサは150カイリの距離で揚陸舟艇の往復に24-30時間を要する。その間にオデッサ上陸に成功したロシア部隊は増援なしで戦闘を迫られる。艦艇の援護射撃や空挺部隊の支援が必要だ。


もうひとつ驚くのはウクライナ軍沿岸配備部隊がネプチューン対艦ミサイルを使っていない点だ。同ミサイルの射程は300キロメートル近くあり、BSFの接近を阻止できるはずだ。ネプチューンミサイルがロシア艦艇の対空装備で撃破されたのか、部隊そのものがロシア空爆で壊滅したのか情報がない。とはいえ、同ミサイルが使用されていないことから運用可能な状態だったのか疑問が生まれる。ウクライナ報道では同ミサイル取得開始は2021年3月とあるのだが。


ネプチューンミサイルでウクライナがロシア艦艇を攻撃し無力化できれば、ロシア海軍の戦闘意欲にも影響が生まれる。艦艇喪失はその他装備の喪失と意味が違う。このため、同ミサイルを沿岸防備に投入することが大きな意味を有している。


フランス海軍の昨日発表では空母シャルル・ド・ゴールをNATO支援に提供し、艦載機が黒海を哨戒する。■



Russia-Ukraine conflict: What happened in the Black Sea so far? - Naval News

Tayfun Ozberk  27 Feb 2022

 

Tayfun Ozberk is a former naval officer who is expert in Above Water Warfare especially in Littoral Waters. He has a Bachelor Degree in Computer Science. After serving the Turkish Navy for 16 years, he started writing articles for several media. Tayfun also offers analysis services on global naval strategies. He's based in Mersin, Turkey.