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2025年5月27日火曜日

米海軍が「ステルス型ディーゼル潜水艦」を建造する可能性(19fortyfive) — 米国が絶対と思ってきた技術体系が崩れつつあり、こつこつと技術を培ってきた日本に注目が集まるのは必至でしょう

Taigei-Class Submarine. Image Credit: Creative Commons.

たいげい級潜水艦。画像提供:クリエイティブ・コモンズ。

動力潜水艦技術で先駆的かつ長年支配的な地位を占めてきた米海軍が安価なディーゼル電気潜水艦(SSK)を建造する可能性はあるのだろうか。

-この転換は、グローバルな紛争環境の変容により、小型で静かで機動性の高いSSKが、大型で高価な核動力潜水艦より浅海域作戦に適していることため着目されている。

Virginia-class Submarine

建造中の米海軍ヴァージニア級潜水艦

-空気非依存推進システム(AIP)の進展により、従来型潜水艦は原子力潜水艦にしか不可能だった長時間潜水持続能力とステルス性を実現できるようになり、特殊作戦などの任務に適した選択肢となっている

-市販品(COTS)コンポーネントの導入で、ディーゼル電気式潜水艦はコスト効率が高く、任務に特化したオプションとなる可能性がある。

ディーゼル潜水艦は米国海軍の選択肢になるか?

米海軍は原子力潜水艦を世界に先駆けて実用化した。最初の原子力潜水艦は、1954年に就役し、1955年に海上公試した「USSノーティラス(SSN-571)」だ。翌年、同艦は、第二次世界大戦中に使用された対潜戦術が、この新技術を搭載した潜水艦に対して脅威となるかどうかを判断するため試験演習を実施した。

結論として、日本海軍の潜水艦やナチス・ドイツのUボートに対して使用されたあらゆる方法は、原子力潜水艦に対しては無効であることが判明した。原子力潜水艦は浮上する必要がなく、より深く潜航でき、捜索区域を最短時間で掃討することができた。当時、これらに対抗する手段は存在しなかった。

そう考えると、米海軍が今日、小型で航続距離が短いディーゼル潜水艦の設計と建造を検討するのは直感に反する。

ディーゼル潜水艦から脱却し、米国の例に倣った国もあらわれ、それらすべての国は、原子力推進艦の数を維持・拡大し続けている。

閉鎖的なクラブ

原子力潜水艦は伝統的に、真の超大国海軍の象徴と見なされてきた。

ディーゼル動力潜水艦に依存せざるを得なかった国々は、第二級の海軍と見なされてきた。「核クラブ」に属することは、常に最も目立つ軍事的ステータスシンボルだった。

予想通り、原子力潜水艦に最も多く支出している国は米国で、今後10年間で世界シェアの44.1%を占めると予測されている。

潜水艦の最新トレンド

2034年までに世界中で支出される予定の資源を分析すると、2つの傾向が浮き彫りになる:

米国は今後10年間で、次の4カ国を合わせたよりも多くの資金を原子力潜水艦に投入する。長年同様の傾向が続いており、米国は潜水艦戦において他のすべての国に対して明確な優位性を維持している。

2つ目は、米国が自国の艦隊規模を決定する際の基準として常に「ペースメーカー脅威」として位置付ける中華人民共和国(PRC)とロシアにもかかわらず、オーストラリアは、このランキングに含む次の3カ国よりも、新たな三カ国間AUKUS潜水艦プログラムに資金を投入する。

オーストラリア海軍(RAN)はまずヴァージニア級SSNを調達し、その後イギリス海軍の支援を受けAUKUS-SSNの新艦隊を建造する。

では、なぜ米国は超排他的な核保有国クラブの創設メンバーでありながら、ディーゼル潜水艦の建造を検討するのか?

ディーゼル潜水艦の利点

米国海軍が、はるかに安価なディーゼル電気潜水艦の設計と取得を積極的に検討する理由は、非常に現実的なものだ。

2017年から2018年ごろ、米国海軍の一部では、核動力艦隊をディーゼル電気潜水艦で置き換えることの利点を検討していた。地域ごとの安全保障状況の変化と技術進歩が、これらの検討に影響を与えた。

複数地域における紛争の形態と場所の変化が要因の一つだ。沿岸水域で活動し戦闘を行う必要がある場合、原子力潜水艦が常に最適な選択肢とは限らない。短距離・浅海域の戦闘では、過剰な火力は国家にとってコスト面でも負担が大きすぎる可能性がある。

小型で静音性が高く、機動性に優れた対潜戦ディーゼル推進潜水艦(SSK)は、これらの地域での作戦により適している。

浅海域では距離が短いため、原子力潜水艦の高速度は不要だ。

AIPディーゼル潜水艦

もう 1 つの問題は、空気非依存推進 (AIP) システムの能力の向上により、かつては原子力潜水艦しかできなかったような、浮上することなくステルスで活動できる潜水艦が可能になったことだ。 つまり、これまで原子力潜水艦しかできなかった特殊作戦任務に、より小型のディーゼル潜水艦を投入できるようになったということだ。

最後に、他の多くの兵器システムと同様に、コンピュータシステムおよびデータネットワーク技術の開発は、ついに潜水艦のような厳しい設計パラメータを持つシステムでも、市販の部品(COTS)を装備できる段階に達した。

これにより、ディーゼル潜水艦の使用がさらに合理的かつ費用対効果の高いものとなり、任務に合わせカスタマイズも可能になった。将来、小型のプラットフォームが海底戦争でより大きな役割を果たすようになることが期待されている。■

Smart Bombs: Military, Defense and National Security

The U.S. Navy Could Build Powerful ‘Stealth Diesel Submarines’

By

Reuben Johnson

https://www.19fortyfive.com/2025/05/the-u-s-navy-could-build-powerful-stealth-diesel-submarines/?_gl=1*4zwnl6*_ga*MjAyMjA1NDM0NS4xNzQ4MjkxOTU1*_up*MQ..


著者について:

ルーベン・F・ジョンソンは、2022年2月のロシアのウクライナ侵攻の生存者であり、外国軍事問題の専門家として、ワルシャワのFundacja im. カズミェルザ・プワスキ財団の外国軍事問題専門家です。彼は、国防技術と兵器システム設計の分野で、ペンタゴン、複数のNATO加盟国政府、オーストラリア政府のコンサルタントを務めてきました。過去30年間、ロシア、ウクライナ、ポーランド、ブラジル、中華人民共和国、オーストラリアで居住し、報道してきました。



2024年5月1日水曜日

主張 米海軍にはディーゼル潜水艦が必要だ。

 米海軍にディーゼル電気推進型潜水艦が必要だとの主張は何度も繰り返されていますが、超大型空母=原子力潜水艦という「花形」装備の前になかなか聞き入れられていないようです。The National Interestの今回の記事では採択されれば米国内で容易に建造できると主張されていますがどうなんでしょう。また、中国ロシアに近いからこそ、ディーゼル潜水艦の意義があるとして、日米共同運用のアイディアも前に出ていましたね。こうしてみると原子力潜水艦取得を自国ステータスの象徴と考える隣国の姿勢が異様に見えます。


海上自衛隊


空母だけでは不十分: 米海軍にディーゼル攻撃型潜水艦が必要だ

ディーゼルを動力源とする潜水艦は、複雑なA2/ADの時代においても、米海軍の潜水艦戦力が致命的であり続けることを保証する優れた方法である。


米海軍は戦略的・予算的な課題に直面しており、原子力潜水艦や航空母艦のような、、高価なハイテクシステムへの現在の依存を見直す圧力が高まっている。中国のような潜在敵対国が採用する反アクセス/領域拒否(A2/AD)戦略に脆弱なためだ。現在、一部専門家は、米海軍にディーゼル潜水艦が加わることを望んでいる。

-ディーゼル潜水艦を導入することで、より費用対効果の高いアプローチを採用することを求める声が高まっている。これらの潜水艦はコストが低く、アメリカの造船所で迅速に生産できるため、既存の原子力艦隊を補完する現実的な手段となる。

-この戦略は、混成艦隊の歴史的前例に沿うだけでなく、予算を圧迫せず、紛争地域で制海権を維持する海軍の能力を高めることになる。


海軍力の再考:米海軍におけるディーゼル潜水艦のケース

米海軍は、他の米軍と同様、奇妙な存在である。選挙で選ばれた国の指導者たちから贅沢させられることに慣れている。海軍はまた、一般のアメリカ人の間で高い評判を得ることに慣れている。

 今日、悲しいことに、その両方が崩れつつある。

 しかし、国防総省の指導者たちは、国の予算が増大し、全体的な財政危機に陥っていることや、一般市民の間で米軍への不評が高まっていることを痛感しているにもかかわらず、価値よりはるかにコストのかかるシステムに莫大な税金を浪費し続けている。

 したがって必要なのは、健全な制海権戦略(公海上で自由な海軍を望むという複雑な言い方である)を持ち、一般納税者の懸念を尊重する調達システムと結びついた海軍である。

 ディーゼル潜水艦の出番だ。


空母だけでは不十分

海軍とその資金源であるワシントンの議員たちは、大きくて美しい空母を建造し続けている。これらのシステムは現代の技術的驚異である。しかし、今日、空母は簡単に追跡され、比較的安価な敵の対アクセス/領域拒否(A2/AD)システムにより簡単に損傷または撃沈される可能性がある。

 中国は、A2/AD兵器を使って、紛争が始まれば少なくとも2隻の米国のフラットトップを沈めるつもりだ。同様に、ほとんどの水上軍艦は、A2/ADシステムにより破壊されるか、少なくとも人質にされる可能性がある。したがって、海軍の現在の戦力投射能力のかなりの部分は、起こりうる紛争の開始時に、A2/ADを振り回すライバルにより阻害されることになる。

 一方で、潜水艦の重要性はますます高まるだろう。


アメリカは原子力潜水艦だけに頼ることはできない

唯一の問題は、今アメリカが建造する潜水艦が非常に高価だということだ。しかも、アメリカの瀕死の造船所では、この高価で複雑なシステムを意味のあるスケジュールで生産することは容易ではない。何十年も続けてきた持続不可能な行為を繰り返し、別の結果を期待しつつ、その結果真の戦略的弱点を生むのではなく、アメリカは敵から学ぶべき時が来たのだ。

 アメリカの最大のライバル中国やロシアは、高度な技術力を持っている。

 アメリカとは異なり、これらのライバル国はハイテク崇拝に洗脳されるのを拒否している。たしかに、各国は独自の技術システムを開発している。しかし、アメリカの軍隊に対抗するためなら、もっと単純なシステムを数多く、大量に作ることも容易であり、少数の複雑なシステムに大金を費やすことは選択していない。今日、アメリカにとって最大の戦略的敵対勢力である中国が、高価な原子力潜水艦の建造だけでなく、ディーゼル潜水艦の艦隊を嬉々として建造しているのは、このためだ。

 また、中国のような国は、自国が認めている以上に国防費を費やしているものの、アメリカ以上に軍事費を費やしている国はない。にもかかわらず、中国のような新興ライバルの、革新的で費用対効果の高い戦略のおかげで、米軍は戦略的な壁に直面している。


敵国から学ぶ:ディーゼル潜水艦の建造

中国は、入手可能な戦略的目的-手段-兵器プラットフォームを結婚させた。ディーゼル潜水艦は、原子力潜水艦ほど派手ではないかもしれない。しかし、中国の目的、すなわち、インド太平洋への米軍アクセスを拒否しつつ、地域支配を達成するためには、安価でローテクなディーゼル潜水艦艦隊の方が役に立つ。中国との紛争は、アメリカ沿岸近くで起こることはないだろう。戦争は中国の付近で行われるだろう。

 したがって、中国にとってディーゼル潜水艦は当然のシステムなのだ。

 しかし同時に、アメリカは第二次世界大戦で、広大な距離を航行するディーゼル潜水艦を使用したパイオニアでもある。さらに、複数の国がディーゼル潜水艦を主要な、かつ唯一の潜水艦プラットフォームとして運用している。

 それは戦略の問題だ。米国造船所なら、おそらく既存の原子力潜水艦の米海軍艦隊を容易に増強できるだけのディーゼル攻撃型潜水艦を大量生産できるだろう。


これまでも混成艦隊はあった

 通常動力と原子力推進が混在する艦隊は、米海軍に目新しいものではない。

 1950年代から60年代初頭にかけて、海軍は混合空母部隊を運用していた。当時、海軍は全原子力空母に移行しつつあった。フォレスタル級スーパーキャリア、キティホーク級、そして原子力空母エンタープライズ級があった。

 通常動力型空母から原子力空母への移行は、長くゆっくりとした道のりだった。しかし当時、この混合戦力で武力的潜在力が不足していると正直に言う者はほとんどいなかっただろう。

 同様に、米軍は兵器プラットフォームの構築方法を完全に見直す必要がある。また、将来の仮想的な戦争に勝つことに執着するのをやめ、今ここにある危機に集中する必要がある。海軍の世界的任務である制海権を維持しつつ、より安価で代替が容易なシステムを設計・配備することがカギとなる。

 ディーゼル潜水艦は、複雑なA2/ADの時代であっても、海軍の潜水艦戦力が致命的であり続けることを保証する優れた方法であろう。■

Aircraft Carriers Aren't Enough: The U.S. Navy Needs Diesel Attack Submarines | The National Interest


by Brandon J. Weichert

April 27, 2024  Topic: Security  Region: Americas  Blog Brand: The Buzz  Tags: U.S. NavyNavyMilitaryDefenseDiesel SubmarinesAircraft Carriers


著者について

ナショナル・インタレストの国家安全保障アナリストであるブランドン・J・ワイヒャートは、ワシントン・タイムズ紙、アジア・タイムズ紙、ザ・パイプライン紙に寄稿している元米議会スタッフであり、地政学アナリストである。著書に『Winning Space』: How America Remains a Superpower』、『Biohacked: 著書に『Winning Space: How America Remains the Superpower』、『Biohacked: China's Race to Control Life』、『The Shadow War: Iran's Quest for Supremacy』などがある。次作『A Disaster of Our Own Making: How the West Lost Ukraine』はEncounter Booksより10月22日発売予定。


2017年3月19日日曜日

★★中国対抗策で米海軍ディーゼル潜水艦を日本配備し日米合同部隊を創設したら



原子力潜水艦は米国が、ディーゼル推進潜水艦は日本設計を標準にして日米が共同作戦体制を組み、かつ米潜水艦(日本他が建造すればいいですね)を日本に配備する。横須賀、佐世保は当然ミサイル攻撃を受けるので、補給拠点をたくさんある日本の国内島しょ部に臨時に設ければよい、との米海軍大ホームズ教授の主張です。しかし米海軍はかつての大艦巨砲主義ではないですが、原子力潜水艦に偏重した思考になっていますね。大丈夫でしょうか。

The National Interest


One Way the U.S. Navy Could Take on China: Diesel Submarines

March 17, 2017

  1. 米海軍潜水艦が原子力推進だけで構成されている中、ディーゼル潜水艦を追加する提案が採択される余地はあるだろうか。
  2. きわめて少ない。3月の下院シーパワー兵力投射小委員会の公聴会でこの話題が取り上げられ、「将来の海軍戦力構成」を検討した三機関がそれぞれの持論を展開した。海軍幕僚部、戦略予算評価センター、MITREコーポレーションがそれぞれ検討した内容を艦艇総数、艦種、有人艦無人艦の運用まであらゆる点に言及して陳述した。
  3. 海軍上層部は各研究成果を比較評価する。その結果から海軍は兵力構成の解説文書を作成し、議会が艦船、航空機、装備にどれだけ予算を計上するか審議する。ただし現時点でも各論者に共通の認識が生まれている。つまり海軍はこれからの任務遂行に355隻必要としており、およそ30パーセントの増加をすべきという点だ。
  4. 隻数をこれだけ増やすとなれば低コストでも威力のある艦艇を多数導入することになる。ディーゼル電気推進潜水艦がここに入る。世界最高性能といわれる海上自衛隊のそうりゅう級建造費は540百万ドルだ。議論ではこの金額を標準にする。他方でヴァージニア級原子力攻撃潜水艦は2,688百万ドルで建造している。差額が5倍あり、540百万ドルは相当低いといわざるをえない。
ディーゼル潜水艦を拒絶する米海軍の価値観
  1. MITREがまとめたハイブリッド構成の原子力・通常型潜水艦部隊構想について海軍作戦部長官房の評価部次長チャールズ・ワーチェイドが「厳しく批判した」とUSNI Newsのミガン・エクスタインが伝えている。
  2. 「当方が中国なら、ディーゼル艦を多数調達する。なぜなら戦闘が本国近辺で展開されるとわかっているからだ。一方、我が方は展開する必要があり、そのため燃料が必要だ。ヴァージニア級を就役させれば耐用年数分の燃料がついてくる。ディーゼル潜水艦に偏見はないが、母港から200マイル離れた地点で戦闘するのだろうか。結局、給油艦が余分に必要になる。給油中は脆弱になる。シュノーケルも脆弱要因だ。グローバルな海軍をめざすなら検討の対象にならない」(ワーチェイド)
ディーゼル艦は本当にに無力なのか
  1. こうしてディーゼル艦を地理、兵站、戦闘能力の各要因で排除しているが、順番に反論をしていきたい。まず、地理条件ではディーゼル潜水艦は黄海や東シナ海から離れた場所に配置されてこそ効果を上げる。またディーゼル艦では巡航距離にも制約がある。だがこの点だけを取り上げたくない。部隊を巧妙に配置すれば距離は克服できるからだ。
  2. ディーゼル潜水艦は北東アジアで広範に使用されており、第二次大戦中は米海軍が日本を相手に潜水艦戦を展開した歴史もある。戦後に海上自衛隊が創設されて60年余だが日本の潜水艦部隊は日本列島含む第一列島線の東西南北をうまく押さえている。事実、冷戦中の潜水艦活動は日本の大きな貢献であった。ソ連潜水艦を追尾し日本海、オホーツク海から太平洋への通行を監視していたため、ソ連潜水艦は大胆な動きを取れなかった。
米日合同潜水艦司令部ができれば
  1. うまく配置すれば米海軍は技術上の不利を戦略面政治面で優位点に転換できる。こういうことだ。ディーゼル艦多数を極東地区に常時配備し、戦闘場面になりそうな地区近くに置く。また米日合同潜水艦部隊とする。これが利点を生む。前方配備で航続距離の問題は克服可能だ。そうりゅう級は6,100カイリの航続距離があり、北東アジア各地を見張るのに十分だ。米日合同潜水艦部隊はそうりゅう級のような共通の艦を運用すれば相当の威力を発揮するはずだ。
  2. 列島線防衛が連合軍海洋戦略で意味を盛り返してきた中でこのアプローチは理想的だ。尖閣諸島を奪取しする等中国の不穏な動きどう封じ込めるか。北京が大事にするものを脅かせばよい。つまり西太平洋へのアクセスだ。北東アジアに潜水艦を多数配備し、第一列島線の各海峡の封鎖能力を実証すれば、中国もうかつな行動は取れなくなる。中国が接近阻止領域拒否でディーゼル艦を調達し近海で運用すれば米日両国には絶好の状況が生まれ、中国が切望するアクセスを拒否する機会になる。
  3. そこで戦略的な論理が両面から出てくる。潜水艦配備を同盟国との関係の視点から見てみよう。中国は同盟関係を切り崩したいと考え自国に有利なな状況を作り、米国を西太平洋から排除したいと考える。東京は超大国がいなくなれば不安に感じるはずだ。米国がフラフラしないことの象徴として潜水艦部隊を日本に前方配備で常駐させ運用を多国間指揮命令系統に置く以上の選択肢はない。これで米国はアジアに残ることが示される。
台湾にも共通仕様潜水艦を
  1. 東京とワシントン双方が中国の外交攻勢をものともせず、台湾にも共通仕様の潜水艦数隻を調達させるかもしれない。実は16年前にジョージ・W・ブッシュ政権が台湾にディーゼル潜水艦を8隻提供する話があった。米造船業はディーゼル潜水艦建造は数十年行っておらず、外国政府も手を貸す体制になかったため(北京の怒りを恐れたため)案件は成立しなかった。
  2. 今こそ構想を実現すべきだろう。潜水艦を提供し台湾を自衛させる。台湾には1980年代製の旧式オランダ建造潜水艦が二隻ある他、驚くべきことに第二次大戦時の艦もある。そこで各国が台湾と共同作戦をする政治上の勇気があれば台湾は米日ディーゼル潜水艦部隊作戦を連携しておこなえる。
狙われる横須賀、佐世保
  1. 次に兵站補給活動がある。米海軍に戦闘兵站部隊を拡充する必要があるのは疑う余地が無いが、これは通常型潜水艦の導入だけが理由ではない。前方配備の米潜水艦は日本の補給活動方式を採用し、哨戒活動後は母港に戻り燃料補給して海域に戻ればよい。同盟各国で陸上補給機能を強化できるが、戦時に中国は横須賀、佐世保の港湾基地も当然攻撃対象にする。そうなれば中国は戦闘を有利に展開できる。ミサイル攻撃が確実に来る前提で陸上施設が被害を受け機能を失う事態の想定で海軍部隊は貴重な燃料や補給を失うことになる。
  2. この事態に対処するため、同盟各国は太平洋戦の戦訓を紐解く必要がある。太平洋を西に進出する米海軍は燃料運搬船、補給艦、工作館を島しょ部臨時基地に配備した。日本には島しょ・入江がたくさんあり、十分活用できるはずだ。つまるところ通常動力の水上艦艇への燃料補給に加え原子力推進艦も燃料以外の補給が必要だ。(ジェット燃料がなくなれば空母の航空機運用は不可能になる) ディーゼル潜水艦向けの兵站補給もこの一環で実施できる。
海上自衛隊の潜水艦運用をモデルに
  1. そして三番目にディーゼル潜水艦の弱点を忘れてはならない。ディーゼル潜水艦は定期的に浮上するかシュノーケルで空気を取り入れエンジンで充電する必要がある。シュノーケルレーダー探知されやすい。ただしそうりゅう級は「大気非依存推進」を搭載し、最大二週間潜行したままでいられる。海上自衛隊と日本政府はこの方式の妥当性を正しく評価している。一方で海自潜水艦部隊は戦術配備方式を完全にマスターして相当の時間にわたり北東アジアで哨戒、待機して母港に戻る活動を繰り返している。
  2. ここに米艦が加われば部隊規模は拡大し、哨戒出動可能な艦の確保が楽になる。ローテーション投入できる潜水艦が増えれば、航海日数を短縮化できる。結論として、母港が危険地域となる出動海域から近くなれば兵站補給活動も充実し多様化できる。そうなれば敵対勢力を怯えさせるが同盟側へは安心材料となる。
  3. その意味でMITRE提案は耳を傾ける価値があり、非難対象ではない。ディーゼル潜水艦は米海軍の未来の選択肢である。その選択肢を実行に移すきかが議会と海軍が真剣に考えるべき課題だ。■
James Holmes is Professor of Strategy at the Naval War College and coauthor of Red Star over the Pacific (second edition forthcoming 2018). The views voiced here are his alone.


2016年12月3日土曜日

歴史のIF ② フォークランド戦争でアルゼンチン潜水艦の魚雷が機能していたら


ASWが困難であることに改めて驚かされます。もっとも英海軍はフォークランドでは対潜哨戒機を運用できず能力で限定があったのでしょうが、ディーゼル潜水艦とは言え大きな脅威になることを示していますね。

The National Interest


How the Falklands War (Thanks to a Stealthy Submarine) Could Have Gone Very Differently

November 27, 2016

1982年に発生した短期間ながら熾烈なフォークランド諸島(アルゼンチン名マルヴィナス)をめぐる戦闘は英国海軍力による勝利と受け止められている。英海軍任務部隊は激しい航空攻撃をものともせず南大西洋でアルゼンチンから領土を奪還した。

  1. 戦いの殆どでアルゼンチン海軍のディーゼル動力潜水艦サンルイが英海軍に立向かっていた。同艦へほぼ200発の対潜兵器が向けられたが無傷で帰港している。同艦は対潜フリゲート艦に2回も攻撃するチャンスがあり、兵装が正常に作動していれば英国の勝利は大きな代償を求められていただろう。
  2. アルゼンチン軍事政権はフォークランド諸島を占拠し、国内政治で点数稼ぎを狙った。実際に開戦になるとは考えなかった軍事政権は判断を誤り、英国首相マーガレット・サッチャーが事態をエスカレートし軍部隊を迅速に動員するとは予期していなかった。
  3. 作戦立案の不備を如実に語るのはアルゼンチン海軍の潜水艦部隊だ。機関不調で潜行できず、修理に入っている艦もあった。旧式のサンタフェがフロッグマン部隊を送り、4月2日の侵攻当日を支援したが、その時点で最新鋭のサンルイはその翌日に出港しマルヴィナス周辺で戦闘哨戒を実施する命令を受けた。
  4. サンルイはドイツの209型ディーゼル潜水艦で小型かつ費用対効果の高い潜水艦で大量に建造された途上国向けの艦だ。排水量は1,200トンで36名が乗り組む同艦はマーク37対潜魚雷14発とドイツ製SST-4有線誘導式対水上艦魚雷10初を搭載。潜行時に42キロ、浮上時に21キロの速度を誇り、500メートルまで潜行可能だ。
  5. 同艦乗員の技量が逸話になってているが、フォークランド戦争の時点でアルゼンチン海軍の最良の乗員はドイツにいた。かわりにサンルイには経験の浅い乗員が乗っていた。艦長フェルナンド・アズグエタ中佐は潜水艦のベテランだったが209型の経験は浅かった。
  6. さらにサンルイの艦の状態はひどいもので中途半端な修理を拙速で受けていた。シュノーケルは漏れ、排水ポンプは作動不良で4基あるディーゼルエンジンの一つは故障していた。潜水夫がほぼ一週間かけて艦体とプロペラからフジツボを除去しないと速度と静粛性が確保できなかった。
  7. 同艦は4月11日に出港し、政治状況が悪化する中、指定地点で待機に入った。最初から不具合にあう。火器管制装置は魚雷3本を同時に発射してしまう。出港後8日目で故障して、乗員は修理方法もわからない。手動有線誘導で一本の魚雷を発射するのがやっとだったが、サンルイはそのまま任務を続けた。
  8. 一方、サンタフェは第二次大戦中の旧米海軍潜水艦バラオ級で4月17日に海兵隊員及び技術要員をサウスジョージア島へ移送すべく派遣された。同島はアルゼンチンが占拠しており、同艦は4月25日に隊員を下船させていたが出港が遅れ、午前9時に英ウェセックスヘリコプターのレーダーで探知され、ただちにワスプ、リンクスのヘリコプター部隊が飛来した。サンタフェには二発の爆弾が命中し損傷したが、AS-12対艦ミサイルも命中した他、機関銃掃射を浴びてしまう。同艦は座礁したあと、英軍が捕獲した。サンタフェへの攻撃が英軍攻撃の幕開けとなった。
  9. 翌日サンルイは哨戒を命じられ、4月29日に英艦攻撃許可が出た。
  10. ただし英海軍はサンルイの通信内容を傍受しており、同艦を狩るヘリコプターとフリゲート部隊を準備した。英艦隊には対潜任務用のフリゲート、駆逐艦とヘリコプター空母一隻があり、潜水艦6隻も待機していた。
  11. 5月1日にサンルイのパッシブソナーが対潜フリゲートのHMSブリリアンとヤーマス二隻を探知した。アズクエタ艦長はSST-4魚雷一発を9キロ地点から発射したが直後に誘導線が切れた。艦長は急速潜航し海底で隠れようとした。ブリリアントが攻撃に気づき、フリゲート艦二隻はヘリコプターとソナー探知の正体を突き止めようとした。爆雷30発、魚雷数発を発射した英艦はクジラ数頭を殺しただけだった。
  12. その翌日、英潜水艦コンカラーがアルゼンチン巡洋艦へネラル・ベルグラーノを撃沈し乗員323名が犠牲になった。アルゼンチン水上艦はすべて本国近海に逃げ、英侵攻部隊に立ち向かうのはサンルイのみとなった。英部隊は各所でソナー探知と潜望鏡を目視したとし、サンルイがいない海域で魚雷発射していた。
  13. 一方でサンルイの乗員は5月8日に英潜水艦からの魚雷攻撃を受けたと思い込、回避行動をとり、マーク37魚雷を海中の探知目標に発射し、魚雷は爆発して目標は消えた。これもクジラと思われる。
  14. その二日後にサンルイはタイプ21対潜フリゲート艦HMSアローおよびアラクリティをフォークランド海峡の北方で探知した。高速走行するフリゲート艦が立てるノイズに隠れてサンルイはアラクリティから5キロ地点まで接近し、SST-4魚雷一発を発射し、次発の準備に入った。
  15. だが再びSST-4の誘導線が発射直後に切断してしまう。ただし、一部の説明ではこの魚雷はHMSアローの曳航していたおとりに命中したものの爆発しなかったとある。アズクエタ艦長は二発目発射を諦め、反撃を受けないうちに離脱を命じた。
  16. 英艦はそのまま航行を続け、攻撃に気づいていない。アラクリティ艦長に至っては終戦後になって初めて知ったということである。
  17. 落胆したアズクエタ艦長は本国に向けて魚雷が役立たずだと打電すると帰港許可の通信が入ったため5月19日に基地に戻った。アルゼンチン占領部隊が降伏したのは6月14日でサンルイは結局再度戦場に出動できなかった。15年後にサンルイは退役した。
  18. サンルイの魚雷で何が問題だったのだろうか。説明は多々あり、乗員のミスや技術上の不良がいわれる。メーカーのAEGからは魚雷発射が遠すぎたとの説明があったし、アルゼンチン乗員が誤ってジャイロの極性を反対にしてしまったとの説もある。このため魚雷が制御できなくなったという。ただし、魚雷の爆発部が活性化されず深度を維持できなかった証拠がある。そのせいか、AEGはフォークランド紛争後に同社魚雷の改良を数次に渡り実施している。
  19. サンルイは高性能潜水艦ではなく、乗員も卓越した技能はなかった。それでも有能な艦長の指揮下で通常戦術を駆使しながら対潜フリゲート艦から逃げ回ることができた。しかもフリゲート艦は世界有数の海軍国の所属だった。魚雷が予定通り作動していれば逆に数隻を撃沈していたかもしれない。
  20. 英海軍は高価な対潜兵器とヘリコプターを2,253ソーティ送り出して実際に存在しない探知目標を狩ろうとし、サンルイは結局探知できていない。
  21. 第二次大戦後の潜水艦戦は幸いにもきわめて事例が少ない。フォークランド戦争の教訓から安価なディーゼル潜水艦でも乗員が有能で装備がよく整備されていれば侮れない敵になることがわかったのである。■
Sébastien Roblin holds a Master’s Degree in Conflict Resolution from Georgetown University and served as a university instructor for the Peace Corps in China. He has also worked in education, editing, and refugee resettlement in France and the United States. He currently writes on security and military history for War Is Boring.
Image: South African Type 209 naval submarine SAS Charlotte Maxeke. Wikimedia Commons/LA(Phot) Caroline Davies/MOD