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2025年5月18日日曜日

中国の「空の長城」: J-36はアメリカのB-21爆撃機を止められるのか?(19fortyfive)

 J-36 Fighter from China

J-36 Fighter from China. Image Credit: Creative Commons.



キーポイント - 2024年12月に公開された中国のJ-36第6世代戦闘機コンセプトは、型破りな3発エンジン設計と非常に大きな翼幅が特徴で、一部アナリストは "空飛ぶガス缶 "と呼んでいる。

-中国の軍事雑誌(「艦載兵器」)によると、J-36は「天空の長城」を作ることを意図しており、アメリカのB-21レイダー爆撃機を迎撃し、潜在的な台湾紛争時に中国の海岸から1000kmまでのアメリカの航空戦力のアクセスを拒否するねらいがある。


J-36 Fighter from X

J-36戦闘機/Xのスクリーンショット。


-しかし、J-36の実際の実行可能性、特にそのサイズと情報源の信頼性を考慮したステルスサバイバビリティについては、かなり懐疑的な見方がある。


J-36戦闘機は「空の長城」になり得るか?

2024年12月に公開されて以来、世界の軍用機アナリストたちは、成都J-36戦闘機がどのような任務のために設計された可能性があるのかを見極めようとしてきた。 機体は単なるテストベッドに過ぎないという推測もある。

 中国の軍事雑誌『Shipborne Weapons』の最新号によると、この巨大な航空機は実際には特定の機能のために作られたという。

J-36「戦闘機」については、これまでの空戦用プラットフォームと比較しても、あまり意味がないように思われる。

 J-36は、この種の航空機で初めて3基のエンジンを搭載しており、70年以上にわたって世界が見てきた戦闘機の姿に反している。 ある戦闘航空アナリストが「空飛ぶガス缶」と形容するほど、J-36は大型だ。

他にも変則的な点があるが、この機体は通常よりはるかに大きな翼幅(最大20メートルと推定)で、190平方メートルを超える表面積を持つ。 これは、他の有名な成都J-20や瀋陽J-35とは異なるプラットフォームとなる。また、このサイズと構成により、生存可能なステルス性を確保できるかどうかも問われる。


ミッション・プロフィールの意味するところ

中国の雑誌によると、J-36の主な役割はいくつかのシナリオのうちの1つである。主なものは、人民解放軍(PLA)が台湾の中華民国(ROC)に侵攻しようとする場合である。

 北京軍の空軍部門であるPLAAFは、この第6世代戦闘機(と説明されている)を使用することで、中国の航空宇宙産業のリーダーたちが長年語り続けてきたが、実現できなかった "天空の長城 "を作り上げると予測している。

 具体的には、中国本土の軍事雑誌によれば、J-36の "万里の長城 "は、「1000km離れたグアムの外国軍基地までの空域を最大2時間封鎖する」という。 その目的は、北京による攻撃の重要な最初の数日間(数時間とは言わないまでも)、アメリカの空軍力が中華民国に介入できなくすることである。

 同じ中国のライターは、J-36の設計の主な目的は、ワシントンの軍隊が中華民国を含む列島を守ろうとしている間、アメリカのB-21レイダー・ステルス爆撃機を阻止できるプラットフォームを持つことだったと述べている。

「これにより、アメリカ海軍と空軍は西太平洋の制空権を維持することが難しくなり、第一列島線内での中国軍による一連の作戦に軍事介入することが難しくなる」と、同誌3月号の分析は述べている。


これは本当の戦略なのか?

本誌がPLAの動きとアメリカの反応に詳しい元情報当局者に話を聞いたところ、2つの点でこのアプローチの実行可能性に懐疑的な見方があることがわかった。

 中国造船工業総公司が所有する出版物『Shipborne Weapons』の記事によれば、第6世代戦闘機が実用化されれば、PLAは第一列島線に侵入しようとするアメリカの戦闘機を迎撃できるようになるという。 同記事は、1時間から2時間の空域封鎖も可能で、グアムの基地の防空を遠くから制圧することもできると主張している。

 同記事によれば、PLAAFと米軍は中国沿岸から600マイル以上離れた空域で交戦する可能性が高いという。 これは、米軍のB-21やその他の航空機が本土の標的に対して空から巡航ミサイルを発射するのを防ぐというPLAの戦略的目的を果たすことになる。

China J-36 Fighter

中国J-36戦闘機。 Xスクリーンショット。


J-36 or JH-XX from China

中国のJ-36またはJH-XX。 中国ソーシャルメディアのスクリーンショット。


 J-36の任務に納得できない人々は、航空機が探知されずにいることは重要な課題であると指摘する。 米軍の衛星やその他のリモートセンシングシステム、それに米軍戦闘機の空中レーダーは、かなり大きなターゲットを探すことになる。

 また、この記事の情報源そのものが疑わしいと指摘する人もいる。 この出版物は中国国家造船工業総公司(CSSIC)によって作成された。 このため、なぜJ-36について、この航空機を論じる論理的な出口であるはずの中国航空工業総公司(AVIC)に関係する情報源によって書かれないのか、という疑問の声が上がっている。

 もう1つのデータは、J-36に関する別の最近の記事で、PLANの空母の1隻に搭載して発艦させるための訓練シミュレーターの開発について論じていることだ。

 「この航空機は、空母運用には大きすぎる。中国がこのような話をしていると、この計画が本当なのか、それとも我々の諜報機関を混乱させようとしているだけなのか疑わしくなる」と彼は言った。■


‘Great Wall in the Sky’: Can China’s J-36 Really Stop US B-21 Bombers?

By

Reuben Johnson


https://www.19fortyfive.com/2025/05/great-wall-in-the-sky-can-chinas-j-36-really-stop-us-b-21-bombers



文/ルーベン・ジョンソン

2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻を生き延び、現在はFundacja im.の対外軍事問題専門家。 現在、ワルシャワのFundacja im. Kazimierza Pułaskiegoの対外軍事問題専門家であり、国防技術および兵器システム設計の分野で、国防総省、複数のNATO政府、オーストラリア政府のコンサルタントを務めている。 過去30年以上にわたり、ロシア、ウクライナ、ポーランド、ブラジル、中華人民共和国、オーストラリアに滞在。

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2021年11月10日水曜日

J-20マイティドラゴンの真の性能を推定する。(一部情報が古くなっています)中国が考える第五世代機は実はドッグファイト能力も想定しているのではないか。

 

 

 

 

2011年のこと、大型で矢じりに似た灰色塗装のジェット機の初飛行で中国は初のステルス機成都J-20「威龙Mighty Dragon」を公表した。六年後にJ-20は人民解放軍空軍(PLAAF)に配備を開始した。

 

同機はレーダー誘導式ミサイルで百マイル単位の距離から敵機を狙うステルス機で厳しい戦闘状況でもパイロットを無事帰還させるといわれる。

 

 

だがJ-20はどこまでの威力があるのか。またどんな任務を想定するのか。つまるところ米国初のステルス戦闘機F-117ナイトホークは実態は戦闘機ではなく、空対空戦闘能力は皆無だった。

 

PLAは装備品の情報を隠し、特に性能面では公表情報は少ない。そのためJ-20の最高速度、航続距離(マッハ2、2,000マイル)はともに推定にすぎない。兵装庫は4-6発の長距離ミサイルあるいは爆弾を搭載するものの大型兵装は搭載しないようだ。

 

各国筋は同機を高速かつ長距離運用可能な機体とみているが、同機には近接交戦で必要となる機敏な機体制御は欠如している。珠海航空ショーの飛行展示でも際立った操縦性を示していない。

 

これを見て観測筋はJ-20を長距離超音速攻撃機あるいは一撃離脱の迎撃機で敵防空網を突破し、脆弱な給油機やAWACS機を攻撃する存在と見ている。

 

だがThe Diplomatのリック・ジョーの主張はこうした推論は同機設計上の特徴に目をつぶり、中国がJ-20を多任務戦闘機で「強力な」ドッグファイト能力があると説明していることに目をつむった集団思考の典型だと指摘している。

 

たとえば、珠海ショー(2018年)で配布された資料ではJ-20は「航空優勢を確立し、中長距離迎撃に対応し、援護および深部進入攻撃」が可能としていた。これは多任務戦闘機だということだ。

 

「よく見られる誤りは中国航空宇宙産業界では第五世代制空戦闘機の製造はできないとし、技術的に低い芸芸機あるいは攻撃機に落ちつくというものだ」とジョーは述べている。

 

大型のJ-20だがロシアのSu-35フランカーEより短い。Su-35は最高性能の機体制御能力を有するといわれるジョーは2001年のSong Wecongによる検討内容を引用しており、Songはステルス機は「スーパークルーズ性能とともにストール後の機体制御などこれまでにない性能が必要だ」としている。SongはJ-20設計主任Yang Weiを指導した技術者だ。

 

Songの結論は理想的なステルス戦闘機はカナード翼、前縁部根本の延長(ストレーキとも呼ばれる)、S字状の機体下部空気取り入れ口を採用し、ステルス、スピード、操縦性のバランスをとるべきとした。このすべてがJ-20にみられる。

 

J-20搭載のレーダー性能は不明のままだが、一部には探知されにくいAESAレーダーといわれ、電子光学赤外線センサーで全周探知を可能とし、センサー情報を融合しデータリンクで僚機と共有できるともいわれる。これは米F-35の高性能センサーで実現している機能だ。こうした機能はステルス機探知に有効だ。

 

J-20二はヘルメット搭載画像機能もつき、PL-10E熱追尾ミサイルを標的の方向を向けば発射できる。短距離ミサイルは機体側部に搭載し機内で回転させて連続発射できる。

 

こうした新装備が採用されたJ-20は近接交戦も想定しており、あわせて機体兵装庫から長距離極著音速PL-15ミサイルも発射できる。高機動戦闘機との交戦では短距離ミサイルを使い、撃墜させる可能性は80%と推定する専門家もいる。

 

中国設計陣は推力偏向エンジンもJ-20に搭載した。排気口ノズルを操作し小回りをめざすもので、PLAAFは同じく推力偏向エンジンを搭載したSu-35もロシアから導入している。

 

推力偏向エンジンで高機動性能が実現するものの、新鋭機でことごとく採用されていないのは重量増、コスト増に加えレーダー断面積(RCS)の最小化に反するからだ。さらに推力偏向エンジンを戦闘時に多用すると機動エナジーが急減し、機体の動きが緩慢となり敵機の格好の標的となる。ネヴァダ州の空戦演習でこれが実際に見られた。米F-15とインド空軍フランカーの模擬空戦が展開されている。このため、西側で推力偏向エンジンを採用する例は少ないがF-22は例外だ。中国が推力偏向に関心を示すのは機動性をどうとらえているかを示している。

 

J-20をみるとステルス機と交戦となればどうなるのかという疑問が出てくる。両機ともステルス性能が高ければ、50マイル未満でやっと探知できるはずだ。この距離では空戦能力がカギとなる。米ステルス機が中国の想定する主要競合相手で、J-20が対抗する想定が十分考えられる。

 

J-20はF-22に対抗できる可能性が低いが、F-35相手なら危険な相手となる。F-35は視界内交戦に最適化されていないためだ。だが、F-22、F-35ともに全方位RCSはJ-20より低いと思われるものの、J-20はロシアのSu-57を上回るステルス性能を有しているようだ。

 

2011年にオーストラリアの航空部門専門家カーロ・コップが行った分析ではJ-20は前方方向でのステルス機能が高いとしたが側方や後方のRCSは高く、Su-57とも共通する制約条件とした。

 

だが、RCSは機体塗布のレーダー吸収剤により左右される。インド空軍がSu-30でJ-20をレーダー追跡したと公言しているが、ステルス戦闘機は通常の飛行でRCSを拡大するような「ルネバーグレンズ」を放出し、実際の性能を隠すことがあるので、いずれにせよ真の性能を知ることがむずかしい。

 

もうひとつ、分析を混乱させているのがJ-20に高推力WS-15エンジンがまだ搭載されていないことだ。当面はロシア製AL-31Fエンジンとしている。中国の第四世代機ではエンジン欠陥に悩まされている。WS-15はAL-31FNより推力が23%増え、J-20でスーパークルーズが実現する。そうなるとJ-20の最高速度もマッハ2.5を超えることになるが、国産エンジンが真価を発揮した場合の想定だ。

 

PLAAFにJ-20が数十機しかないことから、同機をヒットアンドラン攻撃戦術や特別深部侵攻攻撃用に温存しているのか。前述のDiplomat誌の指摘のように、J-20が今後全方位で活用できる機体に進化する可能性があり、ドッグファイト性能も加わるのではないか。■

 

How Stealthy is China's J-20 Fighter Jet?

November 9, 2021  Topic: J-20 Fighter  Region: Asia  Blog Brand: The Reboot  Tags: Stealth FightersChinaMilitaryStealth TechnologyPLAAFRadar

by Sebastien Roblin

 

Sébastien Roblin holds a master’s degree in conflict resolution from Georgetown University and served as a university instructor for the Peace Corps in China. He has also worked in education, editing, and refugee resettlement in France and the United States. He currently writes on security and military history for War Is Boring.

This article is being republished due to reader interest.

Image: Wikimedia Commons


2021年3月14日日曜日

中国の弱み 規模こそ巨大だが中国の空軍力にはまだ実力が不足しているのが現状だ。

 


 

ハイライト PLAAF ・PLANAFあわせた戦闘機材の三分の一が旧世代機で戦闘性能に制約がつく。一斉飽和攻撃しか活躍の余地がないといってよい。28%の機材が戦略爆撃機など性能は高いが第3世代設計の旧型機だ。

 

人民解放軍空軍PLAAF、人民解放軍海軍航空隊PLANAFと合計1.700機と相当な規模の戦闘機材を運用している。これを上回るのは3,400機供用する米国だけだ。中国は多様な機種を運用しており、一部は西側も把握できていない。

 

ただし、中国の軍用機は大部分がロシア、米国の設計をもとにしており、出自がわかれば性能の推定も困難ではない。

 

ソ連機のクローン

ソ連と共産中国は1950年代に最良の友好関係にあり、ソ連は戦車、ジェット戦闘機など大量の技術を移転してくれた。中国生産の初期機体にJ-6があり、これは超音速MiG-19のクローンだった。J-6は大量生産され、一部を除き今日でも供用が続いている。同機の派生型南昌Q-5は対地攻撃機で供用中で、精密誘導弾運用の改修を受けている。

 

ところが中ソ関係は1960年ごろから怪しくなった。それでも1962年にソ連は最新のMiG-21戦闘機を友好の証として贈与している。中国は甘い言葉にはつられず機材をリバースエンジニアリングで堅牢かつ重量を増やした成都J-7に変えた。文革の影響で生産開始が遅れたが、1978年から2013年にかけ数千機が生産され、現在も400機近くがPLAAF、PLANAFで供用中。

 

J-7は1950年代設計としては操縦性、速力がすぐれ、F-16並にマッハ2飛行も可能だが、燃料兵装の搭載量が少ない。J-7Gは2004年に登場し、イスラエル性ドップラーレーダー(探知距離37マイル)、改良型ミサイル、視界外対応能力、デジタル「グラスコックピット」を備える。

 

こうした機材では第4世代戦闘機へ対応は苦しいだろう。敵機には遠距離探知能力がある。仮説だが、一度に大量投入し敵を圧倒する攻撃形態を想定しているのだろう。

 

中国のB-52

もうひとつソ連時代のクローン機材が西安H-6双発戦略爆撃機で原型は1950年代初頭のTu-16バジャーだ。米B-52、ロシアTu-95ベアのような大型機と比べれば性能は劣るが、空中給油対応となったH-6Kは今も有効な機体で長距離大型巡航ミサイルを敵の防空圏外から発射できる。ただし、PLAAFはこの想定で同機への期待を捨てたようで、西安航空機では新形H-20戦略爆撃機の開発を進めていると言われる。だが同機の情報は皆無に等しい。

 

国産戦闘機の開発

中国は国産戦闘機開発を1960年代中に開始し、1979年に瀋陽J-8が生まれた。大型双発超音速迎撃機のJ-8は最高速度マッハ2.2を実現し、MiG-21とSu-15の中間の存在となった。ただし、エイビオニクスは旧型で操縦性も劣った。とはいえ、J-8IIではイスラエル製レーダーの導入でエイビオニクスを改良し、大量兵装を運用するところはF-4ファントムを思わせる。現在も150機が活躍している。

 

1992年に供用開始した西安JH-7飛豹は200機以上が第一線にあり、大型複座の海軍用戦闘爆撃機として20千ポンドのミサイル等を搭載し最大速度はマッハ1.75だ。ドッグファイトには不向きだが、対艦ミサイルを長距離発射すれば安全だ。

 

成都J-10猛竜は対照的に中国のF-16で、高度の操縦性能の軽量多任務戦闘機でフライ・バイ・ワイヤのエイビオニクスで空気力学上の不安定さを補正している。エンジンはロシア製AL-31Fターボファンに頼らざるを得ず、J-10B型が21世紀にふさわしいエイビオニクスとして赤外線探知追尾装備やアクティブ電子スキャンアレイ(AESA)レーダーを搭載し、後者はF-16でも一部にしか搭載されていない。250機ほど供用中のJ-10で死亡事故が数件発生しているのはフライ・バイ・ワイヤ関連で問題があるのか。

 

フランカーの導入

ソ連崩壊後のロシアはキャッシュほしさにイデオロギー対立は捨てて、当時最新鋭のスホイSu-27を求める中国の要望を受け入れた。Su-27は双発で高度の操縦性を誇り、F-15イーグルに匹敵する長距離運用とペイロードを実現した。これが運命的な決定になった。今日、Su-27原型の各機が中国の新鋭戦闘機部隊の中心となっている。

 

Su-27を輸入した中国は国内生産ライセンスを購入し、瀋陽J-11が生まれたが、ロシアにとって悲報は中国がより高性能のJ-11B型、D型を勝手に製造したことだった。

 

ロシアは怒りつつ、さらに76機の新型対地攻撃仕様のSu-30MKK、海軍仕様のSu-30MK2を売却した。問題は中国がSu-30からも独自の派生型を瀋陽J-16紅鷲としてAESAレーダー搭載、空母運用用の瀋陽J-15飛鮫を製造したことだ。後者はウクライナから調達したSu-33が原型で約20機を001型空母遼寧で運用中。さらにJ-16Dはジャミングポッドを搭載した電子戦用機材で米海軍のEA-18グラウラーに匹敵する。

 

中国のスホイ派生型各機は理論上は第4世代機のF-15やF-16に対抗可能のはずだが国産WS-10ターボファンエンジンが整備性の悪さ、推力の性能不足で足を引っ張っている。ジェットエンジン技術が中国軍用機で大きな制約条件となっている。2016年に高性能版フランカーSu-35の24機を購入したのは、AL-41Fターボファンエンジン取得が目的だったのだろう。

 

ステルス戦闘機

驚くべき短期間で中国はステルス戦闘機2型式を開発した。成都J-20は20機がPLAAFで2017年から供用されている。J-20はF-22、F-35のいずれとも異なり大型双発の機体でスピードと航続距離、大量兵装を運用する狙いで操縦性は二の次にしている。

 

J-20は対地対艦の奇襲攻撃に最適だろう。ただし、機体後部のレーダー断面積の大きさが問題になりそうだ。あるいは敵陣営に忍び込み、脆弱な支援機材の給油機やAWACSレーダー機を狩るねらいがあるのか。任務特定型のステルス戦闘機として高度な作戦内容の実行を始めたばかりの中国には意味のある機体になりそうだ。

 

他方で、小型の瀋陽J-31シロハヤブサ(別名FC-31)はF-35ライトニングを双発にしたような機体だ。ロッキード社のコンピュータに侵入して得たデータを流用している可能性が高い。中国は垂直離着陸用の構造など空気力学を洗練させているが、ライトニング並みの高性能センサーやデータ融合機能は搭載していないはずだ。

 

J-31は今後登場する002型空母に搭載をするようだ。また輸出用にはF-35より相当低価格に設定されるだろう。ただし、同機もロシア製エンジンを搭載しており、中国製WS-13エンジンが信頼性十分になるまで本格生産はお預けのようだ。

 

展望

PLAAF・PLANAFの戦闘機材のほぼ三分の一が第2世代戦闘機や戦闘能力に限定がつく機材で、一斉攻撃に投入するしか使いみちがないはずだ。28%が戦略爆撃機など一定の性能はあるものの第3世代機だ。第4世代機は38%でF-15やF-16に対決可能な機材で、ステルス戦闘機は1%相当だ。

 

だが、機体の性能だけがすべてではない。同様に重要性を持ってくるのが訓練であり、組織の運用思想であり、支援体制だ。

 

中国にも情報収集機材があり、空母攻撃用のミサイルや機材があるのは事実だ。だが、各機材を一体運用しキルチェーンを構成するのは簡単ではない。2016年のRAND研究所レポートでは中国の訓練方法には現実的な状況設定が欠如し、地上海上部隊と一体化した運用経験は未確立とある。

 

いずれにせよ、中国に旧型機の更新を急ぐ様子はない。国内航空産業が実力をつけるまで大規模な新型機調達事業は待つという考えなのだろう。■

 

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Size Isn’t Everything: Why China’s Huge Air Force Is Not That Scary


March 10, 2021  Topic: China Air Force  Region: Asia  Blog Brand: The Reboot  Tags: ChinaMilitaryTechnologyWorldAir ForceJ-20J-10

Size Isn’t Everything: Why China’s Huge Air Force Is Not That Scary

by Sebastien Roblin

 

Sébastien Roblin holds a Master’s Degree in Conflict Resolution from Georgetown University and served as a university instructor for the Peace Corps in China. He has also worked in education, editing, and refugee resettlement in France and the United States. He currently writes on security and military history for War Is Boring. (This first appeared several years ago.)

 


2017年10月12日木曜日

中国軍の装備開発状況をまとめた米調査委員会報告の抜粋


タイトルが内容とかい離していますが、米議会の調査部門はいい仕事をしていますね。議員がばらばらに調べるよりもプロのアナリスト部隊を抱えた方が効率がいいに決まっています。中国については米国も経験のしたことのない事態(ハイテク、サイバー、宇宙等)での対立を想定せねばならず決して楽しい仕事ではないのですが、避けて通れないでしょうね。一方で冷戦時の映画Red Dawn(ソ連が米国占領)のリメークをPLAを悪役にしたところ「自主的に」北朝鮮が米国を占領したとのプロットに変えた事例もあり、米国の自由を活用する中国の動きにはこれまで以上に厳しい目が寄せられていくでしょう。

 


World War III Deathmatch: China vs. America's Military (Who Wins?)


October 9, 2017


米中経済安全保障検討委員会U.S.-China Economic and Security Review Commissionが中国の高性能兵器開発に関する報告書をまとめている。
報告書は公開型式でオープンソースを使った評価を中国の特定兵器システムや技術分野に行うのが目的で、以下を重視しているようだ。
1.極超音速滑空体や超音速燃料ラムジェット搭載機も含む制御可能再突入体
2.高出力高周波兵器、高出力レーザー、粒子ビームによる衛星妨害を含む指向性エネルギー兵器
3.電磁レイルガン
4.対衛星兵器に加え宇宙空間での電子戦能力
5.無人装備、人工知能搭載兵器

報告書では中国の高性能兵器が米国にどんな意味を持つかさらに検討すべく、米国も対抗策や兵器開発の重要分野における対抗策で優位性を維持できるかを検討すべきとする。
米中軍事力整備競争
作業は議会関係者や政策立案部門に対し急速に進展中の中国の軍事近代化の内容を伝えることを使命とし、中国の次世代兵器体系整備の進展度に米国が懸念をいだいていることの裏返しでもある。一部報道では中国が極超音速兵器を開発中といわれ、実現すれば脅威の定義をひっくり返す効果が米水上艦艇など多方面に現れる。
中国が極超音速兵器の実験を行っていることは知られている。米空軍主任科学者ジェフリー・ザカリアス US Air Force Chief Scientist, Geoffrey ZachariasはScout Warriorに米国が極超音速兵器開発を加速化する必要について語っているのは中国の進展とペースを合わせる必要があると認識しているからだ。ザカリアスの説明では米側の努力は「階段を一段ずつ昇る」ようなもので極超音速飛行を実現してから極超音速兵器、極超音速無人機、最終的に再利用可能な極超音速機の開発を目指していると述べる。米国の目標は極超音速兵器の実用化を2020年代中頃、極超音速無人機を2030年代、再利用可能極超音速無人機は2040年代と目標を置いている。
さらに中国が対衛星兵器ASATのテストをしているへ国際社会の関心が高まっており、ペンタゴンや米空軍に衛星防護の戦略作りを急がせる圧力が増えて、センサー機能の冗長性やサイバー被害に対する強靭度を高めた指揮統制機能などで機能の維持が求められている。
中国の無人機開発、サイバー侵入行動さらに空母国産建造も米議会がこの報告書に関心を寄せざるを得ない背景理由だ。
さらに新型駆逐艦、揚陸艦、ステルス戦闘機、長距離兵器で中国の開発が進むのも米国には脅威と映るし、世界規模の作戦展開能力を整備しているのも同様だと同委員会はこれまでの報告書を通じ指摘している。
2016年版の委員会指摘内容は
2016年度版の米中経済安全保障検討委員会報告では中国が兵力投射能力を世界各地に展開する演習を行っていると指摘している。
報告書では中国が活発な軍事行動を示した例を列挙している。
- 2016年5月、人民解放軍空軍戦闘機編隊が危険な迎撃飛行を米軍EP-3にしかけてきたためEP-3は急降下し空中衝突を避けた
-  2013年、PLA海軍艦船が米誘導ミサイル巡洋艦カウペンスの進行方向を横切る操艦をしあっため巡洋艦は慌てて進路変更で衝突を避けた
- 2009年米海軍所属インペッカブルが海上民兵の小舟艇多数に南シナ海でいやがらせをうけた
- 2001年、PLA海軍戦闘機が米海軍EP-3偵察機と南シナ海上空で空中衝突した
さらに南シナ海の島しょ部に地対空ミサイルや戦闘機を配備したことと「航空排他圏」を一方的に宣言しているのも中国の挑発の近年の例だ。これに対し米軍はB-52爆撃機に上空飛行させ誇示したが、改めて中国の強硬な態度を浮き上がらせた。また中国の「陸地造成」と領有権主張が南シナ海で進み、米国も「航行の自由演習」で中国の主張に対抗している。
地球規模で兵力を展開することで中国が影響力を行使することに対して議会報告書は世界各地での中国演習の実施状況をまとめている。
- 2012年、中国は初の国連平和維持部隊として実戦部隊を南スーダンに送りPLA工兵隊医務部隊を護衛した。
- インド洋での展開として2014年初頭に中国水上艦艇が遠征訓練を行い、途中南シナ海を通過し、インド洋東端に到着してフィリピン海経由で帰国した。23日間の展開でPLA海軍は対潜、対空、電子の各戦闘訓練とともに補給活動を試した。
- アデン湾で海賊対策を続ける一方で中国は情報収集艦をインド洋に2012年派遣し、潜水艦四型式(原子力、通常動力双方)もインド洋に展開した。
2016年度版報告には中国の軍事近代化をとくに述べた章があり、艦船、兵器、航空機の改良や新造に頁を割いている。
米軍の世界的展開力に匹敵するだけの実力を中国が手に入れるには今後数年にわたる努力を怠れないとの指摘もある。
「各種作戦の支援、継続、防御のためPLAには大型揚陸艦、大型輸送機、兵站支援能力の整備に加え指揮統制能力の向上が欠かせない」
中国海軍
中国海軍の技術水準は米艦船より劣るものの、今後数十年以内に差は埋まるとみられる。中国が次世代ハイテク艦船や兵器等海軍装備の整備に向かっているためだ。
中国海軍の戦闘艦は2020年に351隻にする計画があり、地球規模での攻撃能力の整備を目指している、というのが報告書の指摘だ。
2014年度版報告では議会への提言として米海軍が建艦数を増やし太平洋地区でのプレゼンスを確保するのが望ましいとしたが、米海軍はすでにこの方向で作業を開始している。
ただしこの戦略への反対者は米海軍に空母11隻があるが中国の唯一の空母は空母運用航空戦力が劣ると指摘していている。それでも中国は国産空母の連続建造を開始しているが。
今後を展望すると2016年度版報告では「将来の中国空母は米空母と同様の艦容となりPLA海軍は艦載機に重装備を積み対艦、対地攻撃を行うだろう。DODは中国は15年以内に空母を5隻建造し、全6隻体制にするとみている」
委員会では中国が開発中の艦および兵装システムで米空母・水上部隊の活動で戦略構図が変わるとしている。
そこに加わるのが旅洋III級新型駆逐艦で今年就航するとみられる。同級は垂直発射式長距離対艦巡航ミサイルを運用し、HHQ-9対艦ミサイルは長距離射程が特徴だと委員会は指摘している。
同級は多用途駆逐艦として空母護衛にあたると見られ、米海軍が空母打撃群に駆逐艦を随行させているのと同じだ。
「排水量8千トンの旅洋III級はフェイズドアレイレーダーと長距離SAMで地域大の防空能力を実現する」と2016年度版報告が指摘する。
中国は空母運用に新型戦闘機をJ-15の名称で開発中だ。
揚陸強襲艦として中国は玉昭YUZHAO級LPDの建造を続けており、各艦800名ヘリコプター4機さらに装甲車両20台までを運送できる。
「玉昭級はエアクッション揚陸艇4隻も運用でき兵員を長距離展開できることからDODは中国海軍がこれまでより遠距離へ作戦展開する能力が実現したことに注目している」
さらに野心的な次世代揚陸強襲艦の建造を狙っている。「玉昭級を上回る規模の揚陸強襲艦の建造を目指し、飛行甲板でヘリコプター運用を狙う。081型は4隻から6隻の建造となり、兵員500名をヘリコプターで運ぶ強襲作戦用だ」とあるが米海軍の最新鋭ハイテク艦アメリカ級揚陸強襲艦の実力には及ばないと見る向きもある。
055型巡洋艦は対地攻撃ミサイル、レーザー、レイルガンを搭載すると報告書は指摘。
水上艦艇を補完するのが少なくとも60隻あるといわれるHOBEI紅稗型誘導ミサイル艇であり今後就役するJIANGDAO江島級軽フリゲート艦だ。
委員会は中国の軍事近代化で攻撃型潜水艦、核ミサイル潜水艦SSBNにも注意を喚起している。中国のSSBNはJL-2核ミサイルを搭載した哨戒に出ており、射程は4,500カイリに及ぶ。さらに長距離のJL-3の搭載をめざしていると報告書は指摘。
委員会が中国の軍事支出の総額を把握するのは困難と認めているが、2014年時点で1,310億ドルと見られ、対前年比12.2%増だった。この規模は米国防予算のほぼ六分の一だ。中国国防予算は1989年以来二けた増を続けており、2008年比で二倍になっている。
米議会には前下院軍事委員会シーパワー・兵力投射小委員会委員長だったランディ・フォーブス議員(共、ヴァージニア)のように米海軍拡張とともに中国に厳しい態度に出るべきと主張する向きがある。
中国空軍
米空軍の中国に対する航空優勢は急速に減少しており、中国の空軍力の近代化がそれだけ早いことを意味する。戦闘機、ミサイル、空対空装備、輸送機、ステルス機が目立つとペンタゴンはじめ関係者が見ている。
2014年版報告書の提言は外部審議会を設け米中軍事バランスの評価とともに米軍事構想と予算規模に関する提言を募れというものだった。2014年の時点であるが、報告書は詳細かつ洞察力に富んだ指摘を中国空軍の技術水準、進展、開発ぶりにあてていた。
委員会は報告書作成にあたり各種証言、他の報告書、分析内容の他各種オープンソース情報を活用した。
報告書によれば人民解放軍に配備されている作戦機は2,200機でうち600機が新鋭機材とされる。
「1990年代初頭の中国にはPLA空軍を短距離防空専用の存在から多用途部隊として兵力投射用の航空戦力に変貌させる構想があった」と報告書は述べている。
ステルス機について報告書はJ-20試作機の飛行について述べ、同機はアジア太平洋地区でずば抜けた高性能機と評している。中国はJ-31のテストも続けているが、その用途は依然不明だとしている。
瀋陽J-31ステルス戦闘機が珠海航空ショーに展示されたのは2014年であるが、同機が米F-35に匹敵する性能を秘めていると断言できる専門家は多い。
それでも米技術の優位性は急速に失われつつあると指摘し例として報告書では米中の戦闘機を比較した専門家の所見を引用し、20年前と今日を比較している。
1995年のハイテク米戦闘機F-15、F-16やF/A-18の優位性は中国のJ-6に対して圧倒的だった。しかし今日ではJ-10やJ-11はほぼF-15に匹敵する実力があると報告書は指摘。
しかもJ-10、J-11にとどまらず、中国にはロシア製Su-27やSu-35があり、さらに新型Su-35もロシアから購入する一歩手前だとする。
「Su-35は強力で高性能機で航続距離、燃料消費で大きな進歩を遂げている。これで中国は台湾海峡での航空優勢を確保しながらリバースエンジニアリングで同機の部品装備を自分のものにするだろう。とくに高性能レーダーとエンジンがねらいのはずで、今後の中国国産機に流用するはずだ」
ステルス技術、ハイテク機、高性能エイビオニクスに加え中国は空対空ミサイル技術でもこの15年で飛躍的な進歩を遂げたと報告書は指摘。
「2000年時点で中国戦闘機はすべて有視界範囲でしかミサイル運用できなかった。それが15年で高性能短距離中距離空対空ミサイルを実用化し、精密誘導弾は全天候衛星誘導方式で放射線追尾型ミサイルもあり、レーザー誘導爆弾も加わった。さらに長距離高性能航空機発射式対地攻撃巡航ミサイル、対艦巡航ミサイルもある」
報告書が注目するのはY-20新型戦略輸送機だ。テスト中だが米空軍のC-130の三倍の空輸能力を誇る。空中給油機に改装すれば空軍機の活動範囲が飛躍的に伸び、空中兵力投射能力がさらに遠距離で実現する。
現時点での中国には近代的な給油機はそろっておらず、機材も空中給油能力を前提にしていないものが多い。到達距離に限定が生まれている。
「PLA海軍の初の空母航空戦力が実戦化するまでに空中給油機で中国本土から離れた地点での運用能力確保が必要だ。現在は給油機として1950年代のH-6U給油機が12機あるに過ぎない。これでは作戦支援の継続は無理だ」
報告書ではロシア報道を引用しロシアが新型S-400地対空ミサイルの中国向け売却を承認したと指摘している。
「売却交渉は2012年以降続いていた。S-400で中国の防空範囲は現行の125から250マイルが倍増し、台湾全土もカバーできるほか、尖閣諸島や南シナ海一部も同様だ」
報告書ではカタログ情報だが中国の核兵器、長距離大陸間弾道ミサイルで運用中のDF-31、DF-31Aに加えDF-41の開発が始まっていると指摘。
道路移動式ICBMも運用中だが、DF-41は再突入体を10個搭載すると専門家はみている。■
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