ラベル 米陸軍 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 米陸軍 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2017年8月16日水曜日

F-35を防空センサー機材として注目する米陸軍


ついにF-35はセンサー機材になってしまうのでしょうか。米海軍は最初からそのつもりですよね。面白いのは米陸軍が注目している点で、まさか陸軍が同機を保有することはないと思いますが、今後の動向に目が離せませんね。

U.S. Army Eyes F-35 As Missile Defense Sensor

米陸軍がF-35をミサイル防衛用センサーとして注目している


Aerospace Daily & Defense ReportAug 8, 2017James Drew | Aerospace Daily & Defense Report


Lockheed Martin
HUNTSVILLE, Alabama—米陸軍がロッキード・マーティンF-35ライトニングIIに関心を深めるねらいは対地攻撃、近接航空支援、ドッグファイトのいずれでもない。
  1. 陸軍はF-35の空中センサー機能を統合防空ミサイル防衛の要にしようというのだ。
  2. 陸軍はF-35で米海軍のノースロップ・グラマンE-2D高性能ホークアイが米海軍と同様に空を飛ぶ脅威の早期探知追尾を期待する。目標情報を陸上の迎撃部隊に提供しペイトリオットミサイルで地上レーダーが探知するより早く撃破する構想だ。
  3. 米陸軍宇宙ミサイル防衛司令部/陸軍戦略司令部(USASMDC/ARSTRAT) の関係者によれば秘密会合でF-35部隊で防空ミサイル防衛ミッションの支援が可能か検討したという。
  4. USASMDC/ARSTRATの将来戦闘センター長リチャード・デ・ファッタによれば共用打撃戦闘機を弾道ミサイル・巡航ミサイルへの対抗策にどう活用するか検討中だという。
  5. 検討にはF-35事業推進室や米空軍など同機の運用側も加わっている。
  6. 米陸軍がF-35に関心を示したのは2016年に海軍が行った実証がきっかけで海兵隊F-35Bがレイセオンのスタンダードミサイル-6の誘導に成功した。テストはホワイトサンズミサイル試射場(ニューメキシコ州)で行われている。
  7. ロッキードによれば標的の質量中心に初回で命中した。テストではF-35とイージス戦闘システムというロッキードの重要装備二種類が使われた。
  8. F-35は標的情報をアクティブ電子スキャンアレイレーダーで得られ、イージスの「砂漠艦船」施設へデータ転送を安全に行った。妨害の可能性が低い多機能高性能データリンク(MADL)を使った。
  9. 海軍の最終目標はF-35やほかの機材の搭載センサーを次世代ネットワークである海軍統合防空火器管制システムに統合することにある。E-2Dと同じ機能はないが低視認性のF-35は飛行速度が速く残存性が高くなる。またステルスにより敵にそれだけ接近することも可能だ。
  10. これまで陸軍は係留気球としてJLensなどで空中の敵探知追尾をめざしてきたが、気球、飛行船、風船は戦闘機と同じ対応は無理であり運航費用が低いものの機能が異なる。■

2017年7月1日土曜日

★電子戦能力整備が今後急成長分野になる。専用電子戦機材開発も検討中



Air Force photo
空軍最後の電子戦専用機材EF-111Aレイヴンは1998年に退役している。
ステルス命だった空軍がやっと現実の厳しさに気付いてこれまでの努力の不在を一気に埋めようと必死になっているのでしょうか。電子戦の技術が相当進展し、装備の小型化も進んでいますが電力、容量を考えると737サイズは必要ではないでしょうか。空軍としては次期主力戦闘機PCAの派生型にして投資効率を高めたいでしょうね。各軍共同研究しても結局はそれぞれの仕様に落ち着くのではないでしょうか。ここでもF-35の悪夢は繰り返したくない思惑があるようです。
電子戦は「成長分野」、各軍共用EW機材開発の検討が進行中

By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on June 23, 2017 at 3:22 PM
ARLINGTON: 二十年間も放置されたままだった電子戦での対応がゆっくりだが良い方向に向かっているとEW担当国防副長官が評している。予算増に加え、(非公表の)新戦略案が国防長官官房で準備されており、各軍トップから一様に関心が高まる中、将来のジャミング機材で共同検討が続いている。
  1. ウィリアム・コンレイは「一か月、二か月いただければ」もう少し詳しくお話しできると現在進行中の統合空中電子攻撃の代替策検討について空軍協会で語っている。
Sydney J. Freedberg Jr.
William Conley
  1. この件の背景に触れよう。電子戦とは敵の無線周波数(RF)を探知し、欺瞞し、妨害する科学技術と言える。また無線通信網からレーダーまですべてがRFを使っていることからEWは近代戦の成否を握っているといえよう。冷戦終結後のロシアがソ連時代のEW機材を確保したままだったのに対し米陸軍と空軍は装備を大幅に減らした。特に空軍は最後の高性能ジャミング機EF-111レイヴンを1998年に用途廃止した。EC-130Hが少数残っているが、EWは海軍に任せている。空軍はステルス機のF-22とF-35を重視し、探知されないので海軍のEW機材の手助けは不要だとまで四つ星将官が記者に2014年に語っていた。
  2. 敵側が電子面の実力を整備する中、空軍はPEA侵攻型電子攻撃と呼ぶ構想を検討中だ。PEAには専用の有人機を想定しており、かつてのEF-111を思わせる。今後登場するPCA侵攻型制空戦闘機を原型の専用機材にするか、無人機にするか、あるいは各種機材に機能を分散させるのかを検討する。情報の多くは非公開だ。
  1. 既存のEA-18GやEC-130Hは敵装備を相当の距離からジャミングできるがステルスF-22やF-35の電子戦能力は近距離に限られる。
  2. 空軍が明確に示しているのが「スタンドイン」ジャマー機材で敵の強固な防空網を突破する狙いがある。この代替策がスタンドオフ方式のジャマー機でミッションを比較的安全な距離から行うもので、海軍のEA-18Gグラウラーがその例だ。
  3. だがコンリーはスタンドオフとスタンドインの違いが誇張される傾向があるとみる。「個人的には『これはスタンドインだ、これはスタンドオフだ』と区別することは避けたい」とし、細かく分類するよりそれぞれの機能をよく理解するべきで、そのあとで実戦部隊が両方を柔軟に使い新しい効果を生むべきだという。
  4. そこで各軍ばらばらに対応するのではなく、ペンタゴンが共用(各軍の壁を壊して)代替策検討を電子戦機材で開始しているのだ。その結果生まれるのは単一巨大事業による各軍共通の電子戦機ではなく共通戦闘機を作ろうとしたF-35事例とは違うとコンレイは強調している。
米陸軍NERO事業では海軍のジャマー装備を改修し、グレイイーグル無人機に搭載している。
  1. コンレイは明確に述べていないが、もし空軍が独自仕様の侵攻型電子攻撃機を作りたければ作れることになる。海軍、海兵隊、陸軍とともに共通の全軍対応アプローチの一部になっていればよいことになる。
  2. PEAは2030年代以降の供用開始になるが、空軍が関心を示していること自体が大きな転換点だ。コンレイは各軍トップが電子戦の位置づけを重要視するようになったという。「電子戦能力のおかげで部隊が生き残れることに感謝している」
  3. いいかえると軍上層部はネットワーク、センサー、通信の防衛含む電子戦能力なしでは残存はままならないと理解している。
CSBA graphic
中国の武器の有効範囲 (CSBA graphic)
電子環境での戦闘
  1. スマート兵器は一時はアメリカが独占していた。今やロシア、中国、イラン、北朝鮮等が精密誘導ミサイル、標的へ誘導するセンサー、指令を与えるネットワークを運用している。
  2. ペンタゴンが使う新しい形の脅威の呼称は「接近組織領域拒否」A2/ADだが、一言で言えば多層構造の防衛体制で陸上配備ミサイル、高性能航空機、潜水艦、機雷他で米軍を近づけず介入させないことだ。だがA2/ADはすべてセンサーに依存し、探知、通信、調整を行って攻撃が可能となる。そこでセンサーや通信機能はすべて無線周波数を利用しており、電子戦の格好の標的になるとコンレイは強調する。
  3. 「A2/ADとは基本的に電子電磁の世界での戦闘です。A2/ADのバブルをいかに出し抜くか、いかに小さくできるでしょうか」とコンレイは続ける。ステルス機は一つの手段だ。「探知されないように特徴をなるべく多く取り除く手です。逆にノイズを上げても同じ効果が生まれて探知されにくくなります。意味のないデータを大量に送って分別分類に時間がかかるようにする手もあります」
今日の米軍の戦闘方法は無線ネットワークに依存している。各装備をネットワークで結ぶのは実は簡単ではないとコンレイは強調し、ネットワークが攻撃を受ければ一層困難になる。
  1. 未来の戦闘構想のひとつにマルチドメイン作戦があり、電子戦への依存度は一層高まる。「マルチドメイン」とはあらゆる環境で作戦中の米軍をネットワークで結ぶことを意味する。陸上、海上、空、宇宙、そしてサイバー空間だ。そして各作戦をシームレスに調整し敵をすべての方面からの攻撃で圧倒することだ。この実施には無線周波数のネットワークが不可欠だ。
  2. 「マルチドメイン戦には信頼性の高い通信が必要です」とコンレイは言う。ハッキング、ジャミングの能力がある敵のためこちら側で使えなくなる帯域が出るかもしれないが、目標は必要なデータを確実に送信し、必要とされる相手に時間通りかつ改ざんされずに届けることだ。
  3. その目標に到達するためには資金時間両方が必要だ。2017年度予算には50億ドルが国防総省全体で準備され「さらに増えますよ」とコンレイは言う。(省内の電子戦執行委員会がこの動向を指導している)
  4. さらにEW予算から大規模な影響が生まれるとコンレイは主張する。まず民生部門からの流用で高機能構成部品が安価に利用できるようになっており、軍専用仕様の高価な開発の必要がなくなってきた。次に小規模で安価なEW機能改修が航空機、艦船、地上車両で可能となり、システム全体の残存性が高まる。「数百万ドルの投資が数十億ドル数兆ドル単位の投資に大きな影響を生んでくれる」(コンレイ)
  5. 道のりは長いとコンレイは説明する。「電子戦に関しては25年間放置状態でした。これからの25年間しっかり育てていく出発点にいま立っていうるのです」■

2017年5月28日日曜日

★★米陸軍が韓国から事前集積装備を米本国に送付するのはなぜか



一見すると韓国の防衛を放棄するような話ですが、よく見ると米陸軍が即応体制の高い部隊を交代で各地に派遣する体制づくりに投入されるのですね。朝鮮半島の危機はまだ続くと思うのですが、もっと大きな視野で運用を考えているようです。

Pre-positioned US stock leaving South Korea to create armored brigade 前方配備装備品を韓国から米本土に送り装甲旅団編成に投入する米陸軍

By: Jen Judson, May 26, 2017 (Photo Credit: Capt. Jonathan Camire/U.S. Army)

WASHINGTON — 米陸軍は韓国国内に集積した事前装備を米本土に呼び戻し装甲旅団戦闘集団(ACBT)の編成にあてる検討中と米陸軍参謀総長マーク・ミレー大将が明かした。
  1. この動きは旅団戦闘チームで軽装備歩兵中心から強力重装備の装甲旅団戦闘チームに再編成する意味がある。米陸軍は歩兵旅団戦闘チームを第15装甲旅団戦闘チームに再編成し、第16旅団用には韓国内の事前配備装備を活用する。
  2. 陸軍の事前集積装備はAPSと呼ばれ、各戦闘司令部下で迅速即応が必要な事態で緊急作戦用に使う想定だ。ただし陸軍は装備品セットを訓練で消費した分の補充に振り向け、さらに必要に応じ部隊規模を拡大する。このため事前配備装備を払い出し以前よりも頻度が高くなっている演習に投入する。
  3. 参謀総長の発言では従来の中心が対テロ作戦や国内治安確保作戦がイラク、アフガニスタンにあったが、部隊戦力を再構築し再び大国を相手にした本格戦闘に備える必要を実感しているのだという。
  4. 議会公聴会ではテッド・クルーズ上院議員(共、テキサス)がミレー参謀総長に韓国内装備を米本国に送還する必要について問いただした。参謀総長は装備品の本国送付で編成する第16ABCTは交替配備で後日韓国に展開され、陸軍の戦略方針の一環となるとし「リスクもたしかにあるが、許容範囲のリスクだ」と答えた。
  5. 韓国内にABCTを順繰りに配備するのは陸軍が進める交代方式の部隊配置方針と合致し従来のような継続前方配備はとらない。さらに陸軍は交代部隊は完全装備状態にさせる。
  6. 1月に交代配備による初のABCTを欧州に派遣したが、ドイツのブレーマーハーヴェン港到着からわずか14日でポーランドで装備品すべてを運用可能になっている。
  7. 米陸軍の迅速交代部隊派遣戦略では長年保管したままの装備品も使い作戦能力を誇示する。
  8. 前方配備部隊に装甲旅団規模の重装備を常時配備すべきかで論争があるが、ミレー大将は迅速な部隊派遣体制を維持するほうが良いと見る。「戦闘能力を高いままで、全部隊を恒久配備した際の固定費が不要になる」からだという。
  9. また同大将は下院軍事委員会委員長マック・ソーンベリー議員(共、テキサス)から欧州の前方配備ABCTの見直しを交代派遣の費用との比較で進めるよう求めがあったと述べている。
  10. ただミレー大将は「当方の提言として交代派遣をこのまま続け、...一国から別の国への移動を続けるべきと考えるのは部隊を一か所に貼り付けておくわけにいかないため」と述べた。さらに旅団を恒久的に駐留させると購買部や学校まで含めた体制の維持につながり、軍属家族を戦闘発生の可能性ある地帯に送ることになると述べている。
  11. 交代で配備する旅団は「戦闘を視野に入れた訓練体制を維持し、訓練内容も意味のあるもになる」と付け加えている。■

2017年5月22日月曜日

★★米海軍レイルガン開発の最新状況



レイルガンは砲弾自体の運動エネルギーで標的を破壊する構想ですが、莫大な電力が必要となるのがネックですね。海軍艦艇で対応が可能な艦が限られます。一方で並行して開発がすすむ新型砲弾HVPは既存火砲での運用も可能で効果が期待できます。

Navy Railgun Ramps Up in Test Shots はずみがつく海軍のレイルガン発射実験

By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on May 19, 2017 at 4:00 AM

PENTAGON: 重量35ポンドの金属の塊がマッハ5.8で飛翔すると想像してほしい。毎分10回発射でき、砲身が使えなくなるまで1,000回発射できる。これが米海軍が進めるレイルガンで二年間以内に実用化する構想の進捗は順調だ。
  1. 「大きな技術進歩に向かいつつあります」と海軍研究部門のトム・バウチャー部長は述べる。バウチャーのチームが記者にペンタゴンで背景説明をしてくれた。省内での科学技術の展示会の席上だ。
  2. 三年前、当時の海軍作戦部長ジョナサン・グリナート大将がレイルガン開発を発表した。火薬を使わない電磁パルス効果の発射手段で海上試射をすると述べた。それ以降海軍は開発の方向性を変え、高速輸送艦(JHSVあるいはEFPと呼ばれる)に臨時配備するより陸上の恒久施設でのテストが費用対効果が高いと判断した。昨年11月17日にポトマック川を望む海軍水上戦センター(ヴァージニア州ダールグレン)にBAEシステムズが32メガジュールのレイルガンを設置し、初の射撃に成功した。(その時の様子はhttps://youtu.be/Pi-BDIu_umo を参照されたい)さらにレイルガン二基目が陸軍のホワイトサンズミサイル試射場(ニューメキシコ州)に搬入中で射撃用の空間が十分とれることから100カイリ以上という最大射程をためす。
  3. ホワイトサンズが長距離射撃性能を試す一方でダールグレンは兵装装備の確認が目的だ。これまでのテストでは中世さながらに砲撃を一日数回行っているだけだ。ダールグレンはバグ修正で毎時数回の発射をしようとしており、今年末までに毎分10回という目標の実現をめざす。比較すれば標準的な5インチ艦砲は毎分20発発射が可能だが、一分間で弾倉が空になる。戦艦の16インチ主砲は毎分二回だった。
  4. 毎分10回発射が可能となれば、ダールグレンは次に研究課題の中心を砲身寿命に移す。10年前の研究段階のレイルガンは発射一回で摩耗していた。莫大な圧力に耐える新素材で砲身の実現を目指すが現時点の試験用兵器では発射100回で砲身交換となる。目標は1,000回発射に耐える砲身の実現だ。
  5. 次の課題は出力だ。現在のレイルガンは 16 kg 弾を秒速2千メートル(マッハ5.8)で発射すると32メガジュールを毎回消費する。10回発射すれば20メガワット電力が必要だ。これだけの電力を供給できるのは原子力空母11隻とズムワルト級駆逐艦の3隻しかない。
  6. レイルガン発射には付帯設備が必要だ。一つのモデルがダールグレンにあり、海軍は20フィートコンテナー複数にバッテリーを満載し50回発射を可能とした。元海軍の戦略思考家ブライアン・クラークはレイルガンをEFP改装の輸送艦に搭載し、電源を貨物スペースに入れミサイル迎撃手段に転用できると述べている。
  7. レイルガン技術は現行の火砲にも応用できるので陸軍も欲しいはずだ。ペンタゴン戦略戦力整備室の支援を受けて、陸海軍は超高速発射弾Hyper-Veolocity Projectilesをレイルガンで実験しており、既存の5インチ海軍砲から155ミリ榴弾砲への応用も想定している。(HVPとしては共通だが異なる送弾筒sabotで包んでいる) 電磁インパルスの代わりに火薬を使うと初速は低くなるが5インチ砲でHVPを発射すると30カイリと通常の二倍程度の射撃が可能となる。
  8. HVPは火薬で発射できるがあらゆる点でレイルガンには匹敵しない。電磁発射式兵器は長距離に加え命中時の打撃効果が大きく、高性能火薬弾頭は不要となる。ただし巡航ミサイル迎撃のような重要任務の際はHVPを発射する火砲が30カイリ程度の範囲で第二防衛ラインを形成する。100マイルまでの長射程では大型レイルガンが対応することになる。■

2017年5月8日月曜日

★★大規模戦に備える米陸軍の切り札は内部シンクタンクだ



DoD photo
リトアニアで演習する米陸軍とハンガリー軍。

16年も対ゲリラ戦に費やしてきてロシア等の脅威から大規模交戦に対応する体制ができていないのに気付き愕然としているのが米陸軍の現状でしょう。予算が厳しい際に節約ののりしろにされてはたまらないというのが陸軍の立場でしょう。国防とはバランスをとった戦力整備が必要なはずで、その意味で米陸軍が自ら「考える」課程を重視し始めたのは心強いことで数年後に大きな成果が出そうです。変化に適応できる組織になれるかが問われています。考えることがなければ行動は変わりません。では陸上自衛隊は?

Army Chief’s Thinktank Studies Major War 陸軍参謀総長のシンクタンクで次の大規模戦闘に備える米陸軍

By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on May 01, 2017 at 2:16 PM
ARMY WAR COLLEGE: 米陸軍参謀総長が何を考えているのかを知りたければ、ペンタゴンに尋ねても無駄だ。ワシントンDCから数時間北へ移動し、ペンシルバニア郊外に入りゲティスバーグ古戦場を経由して陸軍大学校へ行くべきだ。静かなカーライルにある。
  1. ここ数年同大学校の影響は衰退していたが、現在はマーク・A・ミリー大将の個人用シンクタンクになり、陸軍の中で異例の予算増をうけ大国間の本格戦争の研究という緊急課題に取り組んでいる。直近の図上演習では国名を伏せた「ほぼ同格の戦力を持つ国」との戦闘を想定し、別の研究では陸軍予備役、州軍も動員した全面戦を想定している。陸軍大学校では6月にも同様の大国想定の図上演習をミリー参謀総長出席の下で行う。
Army photoMaj. Gen. William Rapp

  1. 「参謀総長の要求は厳しいですね。同等戦力を持つ大国との図上演習は能力面でのギャップ解消の必要があるためでギャップを陸軍上層部に認識してもらいます」とイラク、アフガニスタンで戦歴を残し2014年から大学校校長を務めるウィリアム・ラップ少将が述べる。「対ゲリラ戦は学生全員が熟知しているが90年代当時は大国相手の本格戦を想定して部隊を繰り返しNTC(陸軍演習センター)に送っていた」
  2. 「ミリー将軍は陸軍大学校の検討で面倒な問題の解決を期待している」とラップ少将は記者に語った。「現在のところ、陸軍は検討作業の大部はシンクタンクにを外部委託している。当校は陸軍内部に思考力を参謀総長や陸軍全体に提供する」
  3. ミリー参謀総長は陸軍大学校にプロジェクト8つを命じている。①大国同士の戦闘 ②第三相殺戦略によるハイテク戦闘 ③戦略リスク評価 ④国防総省改革 ⑤戦略立案 ⑥グローバルプレゼンスと危機対応 ⑦アジア太平洋再バランス ⑧アフリカにおける協力国づくり である。このうち第三相殺戦略だけで学生14名を投入し、全員が経験豊かな将校で論文執筆、ブリーフィング、著作により2035年から2050年を展望した陸軍の作戦、組織、指揮統制、倫理規範をまとめる。学生、教官ともに陸軍俸給で動くためRAND研究所の陸軍研究センターの十分の一の費用で済むとラップ少将は説明している。
  4. 陸軍の現実課題に取り組むのは陸軍大学校の学生たる大佐級将校には良い教育機会となる。ほぼ全員が戦術面で経験豊かだが戦略立案の経験が限られるとラップ少将が説明してくれた。「参謀総長には重要で深刻な問題に学生が取り組んでいます」
Center for Strategic & Budgetary Assessmentsロシアのミサイル攻撃に対するバルト海地域・ポーランドの防衛構想 (CSBA graphic)
  1. 陸軍大学校はいつもここまで活発ではない。目まぐるしい軍務とは別の眠ったような場所と言われてきた。将官昇進を控えた大佐連にとって時間つぶしで休みをとる場所ともいう。大学校は参謀総長直属だったが、2003年に教導司令部(TRADOC)の指揮下に入り、10年後に再びミリーの前任者により参謀総長の下に戻された。
  2. 現時点の大学校はTADOCとは別だが、共同作業は密接に行っている。ラップ少将はTRADOC隷下の陸軍大学副総長も兼ねる。大学校がTRADOCの「下請け」もたびたび行っている。契約企業が行っていた作業を大学校学生が行い、指揮官、参謀総長他高官の役をシミュレーションで行っている。今年の演習はやはり国名なしだがロシアを思い起こす互角の相手にした大規模戦を想定する。
  3. 陸軍大学校では「動員演習」も始め、陸軍予備役、州軍の隊員を迅速動員して大規模長期戦闘に備える体制を試した。「第二次大戦終結後、完全動員体制は一度もない」とラップ少将は説明。「1942年と同様に奇跡を起こせるだろうか。率直に言って無理です」演習でわかったのは集結地点、動員手順、鉄道輸送能力などいろいろな問題点で、今後の検討と予算手当が必要だ。しかもこれは「完全動員」であって「総動員体制」であれば徴兵となり「一層困難な課題」だという。

Army photo
PACMAN-I 実験(ハワイ)でパニッシャー無人車について歩く兵士。
  1. 陸軍大学校は仮定問題だけ検討しているわけではない。世界各地の実戦部隊の司令部に補佐官を派遣しており、太平洋軍の例では作戦案起草を助け、ナイジェリアでは国軍の幕僚学校立ち上げを支援している。「教官陣には現実の戦闘司令部の感触を維持させ、司令部には代償なしで優秀な思考力を提供している」(ラップ少将)
  2. 生徒となる有望な大佐連に加えて、昨年から大学校は将官向けに継続学習の長期課程を提供している。「とても良い発想で高い価値があるものの時間がかかるのが欠点」とラップ少将は述べ、将官にどうしても不足しがちな部分だと指摘。
  3. 「重複部分をそぎ落としました。将官向けに必要な教育内容を再構成して単なる教養課程ではありません。教室にこもって一日中議論することを一週間続けるわけではありません」とラップ少将は述べ、将官も事例研究に格闘し、論文を書き、記者も招かれたように報道陣の面前で持論を守り通す課程もある。(記者は手ぐすねしなかった)
  4. 「狭い枠組みから抜け出さないといけない」とラップ少将は述べ、15年にもわたり内乱鎮圧作戦に忙殺されてきた米陸軍を言及している。将官、大佐級は「これまでより厳しく創造的に自らの使命を考え直す必要があります」「知的好奇心をなくしたまま自分の考えが絶対と信じれば現実世界に落胆させられるだけです」■

2016年6月13日月曜日

米陸軍でのレーザー兵器開発の最新状況 半導体レーザーで陸軍の姿は変わるか


Visit Warrior Army Lasers Will Soon Destroy Enemy Mortars, Artillery, Drones and Cruise Missiles

KRIS OSBORN
12:25 AM

米陸軍はレーザー兵器で前線作戦基地(FOB)を防御し、敵の無人機、砲弾、迫撃砲弾、巡航ミサイルを瞬時に焼くと関係者が ScoutWarriorに明らかにした。

  1. 前線配備部隊ではアフガニスタンのように迫撃砲弾、ロケット弾、銃器の攻撃にさらされているが将来の敵は無人機、巡航ミサイル、重火器他をFOBに向けてくる可能性がある。
  2. そこでレーザーを加え、センサー装備や火器管制レーダーと統合すれば米軍は秒単位で敵の攻撃手段を破壊し、兵員の安全が保てると陸軍上層部は考える。
  3. レーザー兵器を陸軍は長年にわたり開発中だとメアリー・ミラー国防副次官補(技術研究担当)はScout Warrior取材に答えてくれた。
U.S. Army

  1. 「UAV対応に効果があることはすでに実証ずみだ。今度は迫撃砲弾やミサイルにさらに巡航ミサイルに対応できるかが課題だ」
  2. 今後登場する兵器は間接火力防護能力Indirect Fire Protection Capability(IFPC Increment 2)と呼ばれ陸軍は2023年までに前方基地防御手段としてセンサー装備と組み合わせて投入する。
  3. 前方作戦基地の現行防衛装備ははロケット弾・火砲・迫撃砲弾対応C-RAMと呼ばれ飛来する敵の砲弾等を撃破する。C-RAMの構成はセンサー装備、垂直搭載20mmファランクス近接対応兵装で毎分4.500発を発射する機関銃だ。一帯を大量の小口径飛翔体で包み込み飛来する敵の砲弾等を迎え撃つ考え方だ。
  4. レーザーでは迅速に敵標的の広い面積を焼き尽くしながら費用は最小限にできるとミラー次官補は説明してくれた。
  5. 「破壊一回ごとのレーザー発射コストは数百万ドルもする迎撃ミサイルと比較にならないくらい安い」
  6. ボーイングのアヴェンジャーレーザー兵装システムは2008年にホワイトサンズ射爆場で無人機の破壊に成功し、陸軍の兵器開発部門が実験を視察した。
  7. 陸軍では移動式高エネルギー半導体レーザーを高エネルギー移動式レーザー実証機HEL MDの名称で開発中で、10キロワットレーザーをトラックの上に搭載する。HEL MDのレーザー照射装置はトラックの上で360度回転する。出力を100キロワット級に引き上げると陸軍関係者が述べている。

  1. このサポートにあたるのが熱・電力関連のサブシステムで、出力を上げた半導体レーザーに対応させる。出力が増え、レーザー有効射程も拡大する一方で、目標への照射時間は減ると陸軍は発表している。
  2. 2013年11月に米陸軍の宇宙ミサイル防衛本部は戦略司令部と合同で迫撃砲弾90発以上、無人機数機を連続して対応する実証実験にHEL MDで成功している。
  3. 「車両にレーザーとともにビーム導波器を車両に搭載したフル装備で初めてのHEL MDの実証となり代理レーダー(高性能多モードレーダー)がレーザー照射の順番を管理した」と陸軍文書は解説している。ミラー次官補からはこの成果を元に陸軍はレーザー兵器でより大型の標的を遠距離から破壊する手段を開発すると発言があった。またレーザー兵器開発はこれまで数十年にわたり続いているとの説明もあった。
  4. 「まず1960年代にレーザーの兵器利用を決定し、90年代になり破壊効果を発生させる出力の目途が付いて、長い時間をかけてシステム開発を続けています」(ミラー)■


2016年3月2日水曜日

米陸軍の次期中型垂直離陸機材調達事業

事業名が垂直航空機なのはヘリコプターになるかティルトローターになるか未定のためですね。ともあれ大型調達案件がスタートしそうです。今後も動向に要注目ですね。
--------------------------------------------------------------------------------

Aerospace Daily & Defense Report

U.S. Army Seeks Ideas On Medium-Lift, Scout/Attack FVL

Feb 24, 2016 Graham Warwick | Aerospace Daily & Defense Report

Boeing/Sikorsky

意表を突く形で米陸軍が高速軽量偵察・多用途および中型攻撃輸送用の回転翼機を検討中。国防総省の進める次世代垂直飛行機(FVL)の「ファミリー整備」構想によるもの。
  1. 米陸軍は2月22日に情報提供要請(RFI)をFVL性能セット1(CS1)とともにFVL中型と呼ぶセット3(CS3)で発出した。まずシコースキーUH-60ブラックホーク後継機を2030年代中ごろに作り、その後ボーイングAH-64アパッチ後継機種づくりをめざす。
  2. 中型FVLの前に位置づけられる共用多用途機(JMR)技術の実証事業でベルヘリコプターとボーイング/シコースキーがそれぞれ輸送用途の高速回転翼機を製作中で2017年末に初飛行の予定だ。
  3. RFIによればCS1は「一番機体が小さいが機動力が最高の機体」というのがFVLファミリーでの位置づけで、使用用途は「偵察、軽攻撃、軽襲撃撤収作戦用」としている。陸軍は「民生用、民生機の転用、軍事用あるいは概念上の機体技術」を広く求める。
  4. 性能要求原案には「地形追随あるいは地形回避で飛行速度200ノット超」で無給油で229カイリの飛行半径としている。この速度要求では通常型のヘリコプターは対応不能だがシコースキーの同軸リジッドローター方式S-97レイダー複合機はここに入る。
  5. S-97の設計速度は220ノットで陸軍の求める武装航空偵察機材の要求に合致し、現行のベルOH-58Dカイオワウォーリアーの後継機になるが、調達は先送りされており、退役が進むOH-58Dの代わりはAH-64Eアパッチ攻撃ヘリを用途追加して対応する。
  6. レイダー試作機は自社費用で二機が作られおり、一機目は2015年5月初飛行のあと性能限界の確認用に投入されている。二号機は顧客向け実証に使う。シコースキーはロッキードの傘下に入りミッションシステム技術の開発に入っている。
  7. もう一方のCS1は6名乗りで機動性に優れ、高度 6,000 ft. 温度95F  ( これを6k/95条件と呼ぶ)で地上ホバリング効果を発揮でき、偵察攻撃ミッションで滞空時間2時間で170カイリを移動し、強襲ミッションでは30分で229カイリとする。空中給油能力と艦載運用も求める。
  8. ただしRFIでは「情報の取得はCS1が調達段階に進むことを保証するものではない」と断っている。「現時点ではCS1をどう進めるかの決定はない」
  9. CS3ではUH-60、HH-60、MH-60、AH-64の各機種が実施中のミッションを想定する。RFIによればCS3では「多方面で活躍できる中型垂直離陸機」をめざし、強襲、攻撃、戦闘捜索救難などを想定任務に挙げる。
  10. CS3のRFIでは2030年供用開始の想定で技術内容を求め、巡航速度は230から310ノットとし既存ヘリコプターで対応不可能だ。ベルのV-280ヴァラーJMR実証機が280ノットのティルトローター機で、ボーイング/シコースキーのSB-1ディファイアントは230ノット同軸リジッドローター複合機の設定だ。
  11. その他の性能想定には無給油飛行半径が229から450カイリ、機動性、6k/95でのホバリング性能、機内に3,500-4,000-lb.または機外に6,000-8,000-lbのペイロード、空中給油能力と艦載運用がある。
  12. CS3のRFIは市場調査の意味もあり、機材開発決定 (MDD) に先立つ位置づけだ。陸軍の2017年度予算要求にはFVL中型機調達予算が計上されている。
  13. 予算案では10.4百万ドルで代替案検討(AOA)を始める。AoAは2018年度まで継続し、マイルストーンA決定で技術開発を開始すべきかを決め、2019年度に提案提出を求める。機体製造の契約交付は2021年度に想定している。■

2015年6月26日金曜日

★ ベルは新型ティルトローターV-280 ヴァラーを製造中 次世代多用途垂直離陸機需要を狙う



ここにきてヘリコプターの技術革新が具現化を始めています。これまでのヘリコプターの限界が破られる一方で膨大な数の既存機種の更新需要は大規模です。ただしいったんは競作に敗れた各社にも研究資金が回されているのはまだ次代の主流技術を絞り込めていないことのあらわれでしょう。

V-280 Valor: Bell Starts Building Joint Multi-Role Prototype

By RICHARD WHITTLE on June 19, 2015 at 4:00 AM
陸軍航空兵力の未来を形に示すメーカーfあらわれた。ベル・ヘリコプターの契約企業スピリット・エアロシステムズ(本社カンザス州ウィチタ)がV-280ヴァラーの試作1号機の複合材機体の組立作業を開始した。ヴァラーはベルの新型ティルトローター機だ。
  1. ヴァラーは洗練された形状で小型かつベル・ボーイングV-22オスプレイより陸軍用途に適合した設計になっている。両機種ともティルトローター機構を採用している。
  2. ヴァラーは技術実証機の役割を担うが、同社による提案であり生産が決定した事業ではない。ただしペンタゴンが従来型ヘリコプターの速度や航空機の滑走路長の壁を崩そうと補助を出して開発を進める技術事業のひとつである。V-280ともう一社の競合作はUH-60ブラックホークやAH-64アパッチの後継機種となり、機体重量3万ポンドほどで230ノット以上の速度で飛行して従来型より100ノットも高速になる。またハチドリのようにホバリングし、陸軍以外の部隊も欲しがる機体になろう。
  3. もう一つの実証機がシコルスキー・エアクラフトボーイングが共同開発したSB>1ディファイアントで、名称のSB>1とは「シコルスキーとボーイングの和は1より大」との意味だ。この実証機の原型はコリヤ-杯を受賞したX2テクノロジー実証機とその派生型S-97レイダーだ。ディファイアントはまだ設計段階でアクティブ振動制御、硬性同軸ローターと可変回転数式推進プロペラにより従来のヘリコプターの速度限界を打ち破ろうというものだ。
SB1 Sikorsky Boeing JMR Behind rocks_CURRENT_IMAGE_042715SB>1ディファイアントの想像図
  1. ヴァラー、ディファイアントはともに費用は陸軍主導の共用多用途技術実証機(JMRTD)事業が一部負担し、将来型垂直輸送機 (FVLの実現につなげようとする。FVLの目指すのは「垂直輸送機部隊を次世代の水準にもっていく」ことだと事業主管のダン・ベイリーがアメリカヘリコプター国際学会(AHS)で先月語っている。
  2. AHISのロビー活動にも助けられ、ベイリーは議会から14百万ドルの予算を獲得した。だがその半分は昨年の競作に敗れた企業に回っている。AVXエアクラフト(本社テキサス)は3.4百万ドルを得て同軸ヘリコプターに推進用ダクテッドファンをつける構想の研究を続けている。カレムエアクラフト(本社カリフォーニア)も4.1百万ドルを得てカレムが特許を所有する最適速度ティルトローター技術の熟成を続けている。同社の創設者エイブラハム・カレムはプレデター無人機を作った人。
  3. ベルおよびシコルスキー/ボーイングの実証機はともに2017年に初飛行するが、成功しても採用され生産に移る保証はない。ただし現状ではあまりに多くの機体が老朽化の一途にあることから後継機需要は相当あるといってよい。
  4. 「技術実証機は次世代軍用回転翼機を占う重要な存在で、今世紀通じ大きな存在となるだろう」とAHIS専務理事マイケル・ヒルシュバーグMichael Hirschbergは語る。
  5. JMRTDはFVLが目指す新型軍用機の4大目標の一歩にすぎない。4つとは、軽量、中型、大型、超大型の4つであり、どこからでも離発着でき、 高速飛行し、遠くに飛ぶ機体だ。
V280 fuselage assembly June 2015V-280 機体組立中
  1. それでもV-280の機体製造が進むと、回転翼機の歴史に新しい一ページが加わるる。ペンタゴンが前回純粋な垂直離着陸機の実証機に資金投入したのは1973年のことで、陸軍とNASAのエイムズ研究所がベルに契約交付し、小型ティルトローター機XV-15の製造をさせたときだ。
  2. V-280とSB>1の両機が飛行を開始すれば、ベル、シコルスキー/ボーイングは歴史の再来を期待するだろう。XV-15は1981年のパリ航空ショーで飛行展示しており、海軍長官(当時)ジョン・リーマンは海兵隊にCH-46シーナイト後継機種に選ばれていたヘリコプターを中止させ、ティルトローター機の開発を命じた。これがV-22になった。当初は嘲笑の的だったティルトローターは熟成し海兵隊、空軍特殊作戦軍団が使用中で、ここにまもなく海軍が加わる。V-22採用を見送った陸軍だけが純粋なヘリコプターのみを運用する部隊になる。新型機でこの状況を打破することが期待される。■


2014年8月13日水曜日

JMR実証にベル、シコルスキー/ボーイング二案が採択



Bell, Sikorsky/Boeing To Build Army JMR Rotorcraft Demonstrators

Aug 12, 2014Amy Butler and Graham Warwick | AWIN First
Boeing/Sikorsky
.
ベル・ヘリコプターシコルスキー/ボーイングの二社が米陸軍向け高速飛行回転翼機技術実証機の生産に当たることになった。ニ社の機体は2017年に初飛行する。
  1. ベルは280ノットのV-280ヴァラー Valor ティルトローターを、シコルスキー/ボーイングは230ノットのSB.1ディファイアント Valor 硬式同軸ローター複合ヘリを共用多用途技術実証機(JMR TD)のフェーズ1として217百万ドルで生産する。
  2. JMR TDは米陸軍が構想する次世代垂直中型輸送機 Future Vertical Lift Medium (FVL-M) の原型機となりシコルスキーUH-60ブラックホークを2030年代から更改していく。その後攻撃能力を付与した型がボーイングAH-64アパッチの後継機となる他、海軍用にMH-60も更改する構想だ。
  3. 選にもれたAVXカマンは陸軍から限定的な技術開発契約を認められると見られる。AVXは230ノットの同軸複合機、カマンは可変式ティルトローター機案を提案していた。
  4. FVL-Mの大量受注を期待して業界は陸軍の予算をはるかに上回る投資をしていると業界筋は見ているが、JMRは政府と業界が費用分担をする考えで進めており、AVXとカマンにどれだけの予算が回せるかは不明だ。
  5. ディファイアントとヴァラーの両機は高速ヘリコプター技術を実証し、FVL-Mに道を開くものとなるが、陸軍が最終的にUH-60後継機種として高速ヘリを選択するかは不明だ。
  6. ディファイアントは硬式同軸ローター複数、推進用プロペラ、高性能フライバイワイヤと「実証済みX2技術を使いこれまでの設計上の制約に挑戦する」ものとシコルスキー社長ミック・マウラーは語る。同機にはハネウェルT55ターボシャフト2基が搭載される。
  7. ベルV-280はジェネラル・エレクトリックT67ターボシャフト2基を翼端に搭載し、現行ヘリと比較して航続距離、最高速度それぞれ二倍をめざす。ベルのねらいは機体重量の軽量化とともに機体構造を単純化した「第三世代」ティルトローターの実現だ。ベル陣営にはロッキード・マーティンがミッションシステム構築に、スピリットエアロシステムズが複合材機体構造、GKN V-tailとMoogがフライバイワイヤ飛行制御でそれぞれ参加する。■