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2025年7月12日土曜日

DARPAが貨物水上機プログラムを終了、技術の新用途に注目するというが(Defense News)—やはり途中で中止ですか。今回の研究内容が次の装備につながるか注目です

 


オーロラ・フライト・サイエンシズは、リバティ・リフターに手を加え、フロートを翼端に移動させ、尾翼を調整し後部貨物ドアに対応できるようにしていた...(オーロラ・フライト・サイエンシズ)


防高等研究計画局(DARPA)は、大型貨物用水上飛行機の開発実験を終了した。

 3年近く続いたリバティ・リフター・プログラムは、荒海でも離着陸できる長距離で低コストの水上機を設計・製造するのがねらいだった。 

 DARPAは2023年、M1エイブラムス戦車など170,000ポンド以上の貨物を輸送できるC-17グローブマスターとほぼ同じサイズと能力を持つ飛行機にしたいと述べた。

 DARPAはジェネラル・アトミクスおよびボーイングの子会社オーロラ・フライト・サイエンシズとリバティリフターの開発に取り組んでいた。

 DARPAは、貨物用水上飛行機を開発することで、軍や営利団体が迅速なロジスティクス任務を遂行する新たな機会につながるとともに、大型航空機の製造コストを引き下げる革新的な製造技術や材料の開発を期待していた。

 DARPAはDefense Newsに寄せた声明の中で、6月にリバティー・リフター・プログラムを終了したと明らかにした。 Aviation Weeが最初にリバティリフター計画の終了を報じた。

 「高い海面状態でも離着陸可能な飛行艇を製造できることを学んだ」と、プログラム・マネージャーのクリストファー・ケントは語った。「 物理学の理にかなっており、海上での建造技術と海上での複合材料でそれが可能であることを学びました」。

 しかし、DARPAは、航空機製造に進むことはなく、あくまでもデモンストレーターに過ぎないとしていた。

 「現在より大幅に安く、大幅に多くの場所を飛行できるプラットフォームを構築できるという、当初抱いていた仮説が立証できました」とケントは語った。「はるかに効率的な建設技術で次世代航空機を製造する道を開くものです」。


 オーロラは、本誌に寄せた声明の中で、このプログラムを通じて開発した技術は今後何年にもわたって使用されるだろうと述べた。

 「リバティ・リフター・プログラムを通じて当社は設計の実現性と斬新な製造技術の実現可能性を示すことができました。「当社は、リバティリフターの予備設計で成し遂げた技術的進歩を誇りに思っており、これらの学びを将来のプログラムに応用することを期待しています」。

 DARPAによると、2023年後半にリバティリフタープログラムを再編し、技術的なリスク低減活動を前倒しした。2024年初頭、DARPAはジェネラル・アトミクスをプログラムから外し、オーロラ社提案を継続すると発表した。

 オーロラとDARPAは、水上飛行機の技術的設計を実証するために、水上飛行機用の新工法と新素材の製造と応力テストの例と同様に、縮尺模型のシミュレーションとテストを行った。

 DARPAによると、これらのシミュレーションとテストは、コンセプトが実行可能であることを示した。DARPAは現在、国防総省の産業界や他の関係者と協力し、これらの技術を他の形で迅速に実用化する方法を模索している。

 リバティリフターに総額約9800万ドルを費やしたとDARPAは認めている。■


DARPA ends cargo seaplane program, eyes new uses for tech

By Stephen Losey

 Jul 10, 2025, 01:03 AM

https://www.defensenews.com/air/2025/07/09/darpa-ends-cargo-seaplane-program-eyes-new-uses-for-tech/



スティーブン・ロージーについて

スティーブン・ロージーはDefense Newsの航空戦担当記者である。 以前はAir Force Timesでリーダーシップと人事問題を、Military.comで国防総省、特殊作戦、航空戦を担当していた。 中東に赴き、米空軍の作戦を取材した経験もある。



2025年4月30日水曜日

リバティ・リフター・エクロノプラン デモンストレーター、C-130サイズ荷重の揚力を目指す(The War Zone)

 Aurora Flight Sciences has provided new details about the demonstrator design it is working on for the Defense Advanced Research Projects Agency's (DARPA) Liberty Lifter X-plane program.  

Aurora Flight Sciences capture


DARPAは、リバティ・リフター X-planeの初飛行を2028~2029年に目指し、ここから大型量産機の開発につながる可能性がある

オーロラ・フライト・サイエンシズが詳細を公開

ーロラ・フライト・サイエンシズは、国防高等研究計画局(DARPA)のリバティリフターLiberty Lifter X-planeプログラム向けに開発中のデモ機設計に関し新たな詳細を明らかにした。

 リバティ・リフターの主要な目標は、翼地面効果(WIG)原理を採用した新しいエクラノプラン型輸送機の設計を実証することにある。この実証機を基にした将来の機体は、米軍に滑走路を必要とせず長距離で大量の貨物と人員を輸送する新たな手段を提供できる可能性を生む。

 オーロラの製造部門ビジネス開発ディレクター、リチャード・クーチャーヴィは、本日開催された「モダン・デイ・マリン」展示会で、本誌のハワード・アルトマンに対し、リバティ・リフターの最新状況を伝えた。2023年、オーロラ・フライト・サイエンシズとジェネラル・アトミクスは、リバティ・リフターの初期開発を行う契約を獲得しました。昨年、DARPAはボーイングの完全子会社オーロラ・フライト・サイエンシズを、飛行デモ機開発を単独で継続する企業に選定した。

 オーロラによる最新コンセプトアートでは、V字型の船体を持つ飛行艇スタイルの配置が特徴で、大型の直線型主翼と翼端フロートを備え、8基の翼搭載ターボプロップエンジンで駆動される。また、水平安定板で上部に接続された双垂直尾翼も備える。貨物(軽装甲両用車両を含む)は、大型の後部ランプから荷下ろしされる。

 ジェネラル・アトミクスは、より革新的な双胴設計を提案している。


 「当社は、目標機体の約80%スケールのデモ機を設計しています」とクーチャーヴィは説明した。このスケールは「目標機体をフルスケールで建造しなくても有益な教訓を抽出できます」。

 「現在、C-130輸送機に近いサイズ、25トン(積載量)の機体を検討しています」と彼は続け、デモ機は翼幅約216フィートとなる見込みだと付け加えた。また、米国政府が供給するエンジンを使用する。

 DARPAは以前、リバティリフターの最終形は、C-17AグローブマスターIII貨物機と同等の積載容量を持つと述べていた。C-17の公称最大積載重量は約82トンだが、実際の飛行では60トン以下の貨物と乗員を積載して飛行するのが通常だ。


C-130(手前)とC-17(後方)。米空軍

 DARPAが過去に公開したリバティリフターの要件には、海況4までの条件下で水面離着陸が可能であり、海況5までの「持続的な水上運用」が可能なことも含まれている。この海況は、風速11~16ノットと17~21ノット、波高3~5フィートと6~8フィートで特徴付けられる。

 「当社は非加圧コクピットを備えたデモ機を建造しています。なぜなら、この機体は主に地面効果飛行を目的としているため、数百フィートの範囲内と水面から非常に近い高度を飛行することになるからです」とオーロラのクーチャーヴィは説明しました。「そのため海況が少しでも悪化しても、航空機が長距離にわたって地面効果を維持できる技術が必要です。特に、激しい波が予想される状況でもです。これがプログラムの技術的課題の一つです」

オーロラ・フライト・サイエンス/DARPA


 翼地効果(WIG)原理を活用した飛行プラットフォームの概念は新しいものではないが、このような設計が成功を収めた実績は少なく、特に軍事用途では顕著だ。ソビエト連邦は軍事用WIG設計の最も著名な運用国であり、ロシア語で「エクラノプラン」と呼ばれる機体は、現在ではWIG設計の総称として広く使用されているが、その運用は限定的だった。近年、ロシアで軍事用エクラノプランの復活を試みる努力は、現在まで運用可能なタイプを生み出していない。

 ソビエト連邦が完成させた唯一のプロジェクト903ルン級エクラノプラン(巡航ミサイル搭載)が、2020年にカスピ海で展示目的の移動試験を実施している。


 エクラノプランは、通常の船舶設計に伴う抵抗を受けないため高速移動が可能であり、翼が生み出す揚力も利用できる高効率な水上機となる。一方で、高速での海面すれすれ飛行には課題があり、オーロラのクーチャーヴィが指摘するように、水面上の物体や高い波との衝突リスクなどがある。

 これらの課題を克服するため、DARPAの「リバティ・リフター」プログラムは、必要に応じて伝統的な飛行艇のように動作可能なハイブリッド設計を提案している。この設計は「平均海面高度10,000フィートまで飛行可能だが、その場合航続距離を犠牲とする」仕様となっている。

 「航空機の設計初期段階では、予備設計段階で航空機の外形がほぼ決定され、構成を理解していますが、詳細設計段階に進むとまだ設計作業が残っています」とオーロラのクーチャーヴィは述べました。「そのため、詳細設計段階に進み、航空機の建造を開始できることを楽しみにしています」。

 DARPAは、今夏にリバティリフターの次段階への進捗判断を行う見込みだがクーチャーヴィによると、実証機を実際に建造する場所については「まだ未定」だ。

 「このプログラムの目的の一つは、航空宇宙建造に限定せず、可能な限り海洋製造プロセスを最大限活用することです」とクーチャーヴィは説明。「したがって、航空機は海洋船舶建造プロセスと航空機建造プロセスの組み合わせで建造されます」。

 これは『海洋分野の熟練した人材を擁する立地』を探していることを意味し、海洋建造側で航空機の建造と組み立てを支援できる『造船所やその他のパートナー』が近くにあることが必要だ。「その後、航空機を水上に浮かべる必要があります」と彼は続けた。「この航空機には着陸装置は搭載されません。デモ機は陸上ベースの航空機ではありません。そのため、製造後間もなく、製造プロセスの一環として浮かせられ、その生涯の大部分を水上で過ごすことになります」。


オーロラ・フライト・サイエンシズ/DARPA

 海軍建築と海洋工学の企業ギブス・アンド・コックス(Leidosの傘下企業)がオーロラのリバティリフターチームに当初から参画している。

 オーロラの設計における海洋への焦点は、DARPAがリバティ・リフターで実証を目指す広範な目標を反映したものだ。

 「リバティ・リフタープログラムは現在、国防総省(DOD)と商業分野の高速物流ミッションを変革する可能性のある、手頃な価格の革新的な水上飛行機を設計し、建造、浮上、飛行させることを目指しています」と、DARPAのウェブページで説明されている。「リバティリフターの革新的な製造技術と材料は、既存インフラを活用して低コストで迅速に構築できる能力を提供し、戦場での戦闘員の効率性を向上させるための防衛産業基盤の強化に貢献します。リバティリフターは、船舶の規模で海上捜索救助や災害対応を、航空輸送の速度で実現する可能性もあります」。

 DARPAによると、リバティリフターは従来型貨物機への代替案を提供するだけでなく、「既存の海上輸送プラットフォームをはるかに上回る速度で大型荷物を効率的に輸送する新たなツール」となる可能性がある。

 既存の貨物船より高速で、滑走路に依存しない海上物流能力は、太平洋での将来の紛争で特に価値あるものとなる可能性がある。特に中国との高強度な戦闘において、地域内の米軍部隊は攻撃への脆弱性を軽減するため、インフラが未整備の遠隔地を含む広範な地域に分散配置されるだろう。既存の空輸・海上輸送資産は、分散した作戦を支援するため、過重な任務を負わされかねない。

 さらに、リバティ・リフターは潜水艦や対艦ミサイルなどの海上脅威を回避できる。非常に低い高度での飛行プロファイルは、特にレーダー探知を回避することで、航空機の生存性を全体的に向上させる。

 これらの点を踏まえ、滑走路に依存しない航空能力、または滑走路への依存度が低い航空能力が米軍にますます注目されている。米特殊作戦司令部(SOCOM)は、MC-130JコマンドII特殊作戦給油/輸送機のフロート機バージョンを開発していたが、昨年、予算問題のためプロジェクトを中止した。日本の新明和US-2水上機も、この種の能力を実現する別の可能性として議論対象になっている。

 一方、国営の中国航空工業集団(AVIC)は昨年、2000年代後半から開発を進めてきた大型水上機AG600の量産開始を発表した。本誌は過去、AG600が中国が南シナ海で維持する遠隔の島嶼基地を支援するのに特に適している点を指摘してきた。

 DARPAがリバティリフターを継続するか、オーロラの計画中のデモ機が実際に初飛行を行う時期は未定だ。同プログラムは現在、飛行試験の開始時期を2028~2029年に延期する可能性を検討している。これは当初の2027~2028年スケジュールからの変更だ。DARPAのX-planeプログラムは必ずしも実現するとは限らず、オーロラは2018年に中止されたハイブリッド電気式垂直離着陸ドローン「XV-24LightningStrike」でその経験がある。

 「DARPAは今年、今夏に、予備設計審査を実施し、詳細設計段階と実証機製造を開始するかどうかを決定する必要があります」とクーチャーヴィは認めた。「当社はDARPAが判断を下すために必要なものを提供する準備は万全です。この機会を楽しみにしています」.。

 現時点でオーロラの設計は、米軍向けの新たなエクラノプラン輸送機の基盤となる可能性のあるものとして具体化しつつあるといえよう。■

Liberty Lifter Ekronoplan Demonstrator Aims To Lift C-130-Sized Payloads

DARPA is eyeing a first flight for the Liberty Lifter X-plane in 2028-2029, which could lead to a much heavier-lifting production aircraft.

Joseph Trevithick

Published Apr 29, 2025 1:42 PM EDT

https://www.twz.com/air/liberty-lifter-ekronoplan-demonstrator-aims-to-lift-c-130-sized-payloads


2023年7月31日月曜日

大型機リバティリフター、C-130水上機型改装、UAVはてはカタリナ飛行艇のリバイバルまで米国は既存基地が破壊される前提で対中戦の輸送機能確保を真剣に考えている

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米国防総省のX-プレーン・プロジェクトに参加する2社は、重量物運搬用水上機を開発し、その製造段階に向けて前進している



ジェネラル・アトミクス・エイビエーションシステムズアウロラ・フライト・サイエンスは7月27日、リバティ・リフター(90トン(20万ポンド)以上の貨物を運ぶことを目的とした、水面効果翼機wing-in-ground-effectの水上飛行機)の開発継続資金として、それぞれ約2000万ドル相当の契約を締結した。

 国防総省の秘密技術インキュベーターである国防高等研究計画局(DARPA)が競作を監督する。「計画中のリバティーリフター実証機は、(ボーイングの)C-17グローブマスターIII輸送機と同様のサイズと能力を持つ大型飛行艇になる」とDARPAは言う。

 DARPAは2022年5月にリバティリフターの取り組みを発表した。目標は、滑走路がなくても着陸・離陸が可能なヘビーリフトの実証機の製造すだ。国防総省は、地上効果を利用して離陸し、高度10,000ftに到達できる、航空機を望んでいる。

 ボーイングの子会社であるアウロラとUAVメーカーのジェネラル・アトミクスは、2月にDARPAによりプログラムの最終参加者に選ばれた。両社はこれまでにそれぞれ560万ドルと790万ドルの契約を獲得し、設計とエンジニアリング作業を開始していた。

 7月27日の契約発表により、DARPAはリバティリフター・プロジェクトに対するコミットメントを大幅に引き上げ、両社の初期提案に対するオプションを行使する。ジェネラルアトミックスは追加作業資金として2150万ドルを受け取るが、アウロラの追加分は1950万ドルである。

 DARPAは、2024年半ばにプログラムの次の段階の開始を望んでおり、実物大のリバティリフター機の詳細設計、製造、飛行実証が含まれる。

 DARPAのリバティリフタープログラム・マネージャーであるクリストファー・ケントは2月、「両チームは、フェーズ1の間、比較的広い設計空間を探索することを可能にする、明確に異なる設計アプローチをとっている」と指摘した。

 DARPAは、ジェネラル・アトミクスのチームが水上安定性と耐航性を最適化し、双胴の中翼設計を選択したことを明らかにした。

DARPAはジェネラル・アトミクスのデザインについて、「12基のターボシャフトエンジンを使った分散推進を採用している」と述べている。

 アウロラのコンセプトは、「単胴体、高翼、主推進用の8発ターボプロップで、伝統的な飛行艇により近い」とDARPAは述べている。

米国防総省がインド太平洋地域での潜在的な紛争に備えて軍備の再編成を図っているため、米軍内では水上戦闘機への関心が高まっている。

 リバティーリフターに加え、DARPAは船舶や小島から垂直離着陸が可能な自律型UAVを開発するコンペティションにも資金を提供している。この取り組みにはメーカー9社が参加している。

 米特殊作戦司令部もまた、ロッキード・マーチンのC-130ターボプロップ輸送機の水上機型の開発の可能性を探っている。同司令部は日本と提携し、新明和US-2水蒸気を運用した経験を日本から学ぼうとしている。

 フロリダに本社を置くカタリナ・エアクラフトは7月25日、海上機動機への関心に後押しされ、コンソリデーテッド飛行艇PBYカタリナの生産を再開すると発表した。同機は、第二次世界大戦中に軍用および民間旅客機として使用された。

 米国とカナダでPBYの型式証明を保有するカタリナ・エアクラフトは、エンジンとエイビオニクス更新を含む、この由緒ある飛行艇の近代化バージョンを計画している。

 もうひとつの新興企業、ロードアイランド州に拠点を置くリージェント・クラフトは、インド太平洋の海洋環境における高速ロジスティクスの潜在的なソリューションとして、国防総省に地上効果のある「シーグライダー」を売り込んでいる。リージェントはロッキード・マーチンのベンチャー・キャピタル・ファンドの資金援助を受けている。■


DARPA advances ‘Liberty Lifter’ seaplane competitors with another $40m in funding | News | Flight Global

By Ryan Finnerty29 July 2023


2022年6月6日月曜日

第二次太平洋戦争を想定し、大型水上機が復権する:DARPAのリバティリフター構想について

Japanese US-2 seaplane

二次世界大戦の太平洋で水上機が多くの命を救った。米軍のPBY-4カタリナは、海上に墜落した飛行士を拾い上げ、敵艦の捜索任務や潜水艦を狩る任務をこなした。飛行場が点在し、空中給油の発明前、広大な太平洋では水上発着可能な水上機は欠かせない存在であった。

 しかし、水上機は陸上機や艦載機に比べ、重く、扱いにくく、性能も劣りがちだった。冷戦時代にソ連が水陸両用哨戒機Be-12を飛ばしたのを除けば、水上機の軍事利用はほぼ行われなくなった。

 しかし、水上機が復権しつつある。第二次太平洋戦争が勃発すれば、今回は中国と戦うことになるが、飛行場のない広い海域で戦うことになる。さらに悪いことに、中国の長距離兵器で飛行場が破壊されたり、損傷を受ける可能性もある。日本はUS-2水陸両用機で実績をあげており、航空機乗務員の水上救助などの任務に役立てている。

 米軍も水上機がほしいところだ。しかも、装甲車両を運べる大型水上機だ。巨大な水上輸送機がもたらすメリットは非常に大きい。飛行場がないところ、あるいは敵の砲撃で飛行場が破壊されたところに、兵員や装備を運べる。また、水陸両用装甲車を遠隔地に空輸し、奇襲攻撃ができる。

リバティリフター構想



 国防総省の研究機関DARPAがつけた「リバティ・リフター」という名前からして、第二次世界大戦を連想させるようなプロジェクトである。しかし、DARPAが実際に想定するのは、あくまでも近代的な航空機だ。

 問題は、米軍が大量輸送とロジスティクスを海上輸送に頼っていることである。

「大量のペイロードを運ぶには非常に効率的だが、従来型の海上輸送は脅威に弱く、機能する港湾を必要とし、輸送時間が長くなる」とDARPAの公募要項にある。

 「従来型の航空輸送は、桁違いに速いが、高価で、海上作戦への支援能力が限られる。さらに、航空機は長い滑走路を必要とし、垂直離着陸機(VTOL)やその他の海上航空機は積載量で制限を受ける」。

  解決策としてDARPAが求めるのは、水面近くを飛行する際に翼が生み出す揚力を利用する、地面効果を利用した設計だ。最も有名な例は、対艦ミサイルを搭載した300トン、全長242フィートの巨大な地面効果機で、飛行機というより船だったエクラノプラン(別名「カスピ海の怪物」)だ。

 しかし、エクラノプランを真似るものではない。

 「これらの機体は高速(250ノット以上)で滑走路に依存しないが、対地効果飛行の制御性は穏やかな海域(例えばカスピ海)での運用に限られる」とDARPAは説明。「さらに、地面効果での高速運転は、混雑した環境で衝突の可能性を増加させる」。

 DARPAは、水上飛行機と地面効果機を組み合わせた、ハイブリッド設計を目指しているようだ。最終的な形状は不明だが、大型機になるだろう。DARPA仕様では、米海兵隊の水陸両用戦闘車2台、または20フィートコンテナ6個を搭載できることがある。つまり、C-17輸送機に近い機体サイズになる。

 リバティリフターではその他のスペックにも目を見張るものがある。貨物積載量は90トンとC-17並み、航続距離は45トン積載時で4000海里以上、フェリー航続距離は6500海里以上、さらに高度1万フィート以上で運用が可能とある。

 また、海面状況4(中程度の海面状態)での離着水、海面状況5(中程度の荒海面)までの対地効果飛行が求められている。さらに「悪天候や障害物の回避、一部の地形上の飛行、運用の柔軟性を可能にするため、持続的な非加圧飛行」を行うものとある。

 興味深いことに、DARPAによれば、リバティリフターは「最大46週間の海上運用」が可能でなければならないとある。飛行場のない遠隔地で活動し、特殊作戦部隊や諜報任務の海上基地として機能する航空機/ボートを示唆している。

水上機を武装したら

 DARPAがリバティリフターの武装について言及していないことが重要だ。おそらく、第二次世界大戦における水上機の戦闘実績を反映しているのだろう。カタリナ含む水上機は、対潜哨戒や無防備商船への攻撃には有効だった。しかし、浮体構造の重量が戦闘能力を低下させた。日本が開発したA6M2零戦の水上機型は、ドッグファイターとしてはお粗末なものであった。

 しかし、アメリカ空軍は、C-130などの貨物機に巡航ミサイルを搭載する計画を進めている。輸送機は軍需物資を大量搭載でき、また、スタンドオフ兵器により、敵の防空圏外に安全にとどまることができる。ミサイルを搭載したリバティリフターは強力な武器となる。とはいえ非武装の輸送機としても、装甲車両を遠隔地に運ぶ水上機は、非常に意味のある装備となる。

Giant seaplanes may make a return as great-power competition in the Pacific heats up - Sandboxx

Michael Peck | June 3, 2022

Michael Peck is a contributing writer for Forbes. His work has appeared in The National Interest, 1945, Foreign Policy Magazine, Defense News and other publications. He can be found on Twitter and Linkedin.