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2024年8月26日月曜日

太平洋での米海軍の空母展開がゼロに―南シナ海など中国の行動へ警戒が必要だ (Naval News)


240815-N-WV584-1036 シンガポール海峡(2024年8月15日) ニミッツ級空母のエイブラハム・リンカン(USS Abraham Lincoln、CVN 72)とフランク・J・ピーターセン・ジュニア(USS Frank J. Petersen Jr.、DDG 121)がシンガポール海峡を通過した。(米海軍撮影、報道担当海軍伍士ジョーイ・シッター)



エイブラハム・リンカン(CVN 72)が第5艦隊へ配備された。空母が最も必要とされるこの時期に太平洋に空母配備がない状態となった。


海軍は、中東で増強を続ける中、太平洋における空母の不足に直面している。西太平洋に重大な空白が生じている。

 USSエイブラハム・リンカンの出港は、USSロナルド・レーガン(CVN 76)の母港が横須賀からワシントン州ブレマートンに変更された時期と重なっている。ロナルド・レーガンの代替艦USSジョージ・ワシントン(CVN 73)は、現在もサンディエゴに停泊している。

 米海軍の他の太平洋配備空母は、入港中または整備期間中にある。太平洋に配備されている空母6隻のうち、USSカール・ヴィンソンは最近、環太平洋合同演習(RIMPAC 2024)に参加し、USSニミッツは最近、6か月間の計画された段階的な整備期間を完了し、USSロナルド・レーガンは最近、母港をキトサップ海軍基地に移し、USSジョージ・ワシントンはUSSロナルド・レーガンからの乗組員と装備の交換が完了するまでサンディエゴに留まる。


USS セオドア・ローズベルトとUSS アブラハム・リンカンは、中東における地域紛争の可能性が高まっているのを受け、第5艦隊作戦地域に配備されている。ローズベルトは配備から11ヶ月目に入ろうとしている。リンカンは、ロイド・オースティン国防長官が空母を中東に派遣するよう命令したことを受け、第7艦隊での配備を短縮した。

 今後少なくとも3週間は太平洋に米空母が不在となるため、海軍は、今週南シナ海でフィリピン沿岸警備隊の船と中国沿岸警備隊の船が衝突したように、対立や事件が頻繁に起こる地域において、重要な防衛の空白が生じる。

 来月末までに、次期前方展開空母として、USSジョージ・ワシントン(CVN 73)が第7艦隊の一員として横須賀に到着する見込みだ。■


No U.S. Navy Aircraft Carriers Deployed in the Pacific

The deployment of the USS Abraham Lincoln (CVN 72) from 7th Fleet to 5th Fleet has left the United States with no deployed carriers in the Pacific Ocean, at a time when they are needed most.

Carter Johnston  25 Aug 2024

https://www.navalnews.com/naval-news/2024/08/no-u-s-navy-aircraft-carriers-deployed-in-the-pacific/


2024年6月12日水曜日

今年のリムパックで最大の見せ場は実弾で退役艦を攻撃するSINKEXで今回は旧USSタラワが標的となる

 今年のリムパックのクライマックスが退役した強襲揚陸艦旧USSタラワへの実弾射撃で、同艦が海中に没するイベントとなるそうです。しかし、中国が数年前までリムパックに堂々と参加を許されていたことが今となっては異様に思えます。PLANは今回もスパイ活動を展開するでしょうね。The War Zone記事からのご紹介です。




The former US Navy amphibious assault ship USS Tarawa is set to be sunk as part of this year's Rim of the Pacific (RIMPAC) exercise, which is the first time in more than a decade a ship this big will be used as a target.

The ex-USS Tarawa seen in 2013. USN


旧USSタラワを沈めることで、米国と同盟国は、大型艦を攻撃する経験と、艦船が受ける損害に関するデータを得ることができる


海軍の退役した強襲揚陸艦「タラワ」が、2024年の環太平洋合同演習(リムパック)でハワイ沖に沈められることになった。タラワ級艦船が標的として破壊されるのはほぼ20年ぶりのことで、この目的で使用されるのは2例目である。また、米国主導の演習で強襲揚陸艦が沈められるのも10年以上ぶりのことである。そのため、今年のリムパック2024は、このような大型艦に対する各種兵器の有効性や、艦船がどこまでの仕打ちに耐えるのかについてデータを収集する貴重な機会となる。


筆者注:元タラワの正確な処分と計画について、本誌は米海軍に連絡を取り、追加的な説明を求めている。2009年に退役したタラワは現在、ハワイ真珠湾の中心にあるフォード島にある。いわゆる沈没演習(SINKEX)は、2年に1度開催されるリムパックの主要行事であるが、使用される艦船の種類は様々だ


USSタラワは、1976年に海軍に就役した同級の1番艦である。1970年代から1980年代にかけて、同艦と米海兵隊は主に西太平洋で定期巡航を行った。また、1983年にはレバノンでの国際平和維持活動を支援するなど、展開することもあった。

 より大規模な水陸両用部隊の一部として、タラワは1990年、第一次湾岸戦争直前のデザート・シールド作戦の一環として海兵隊をサウジアラビアに派遣した。その後、他の揚陸艦とともに西太平洋で追加巡航を行い、中東にも何度も戻っており、2003年の米国主導のイラク侵攻に伴うイラクでの作戦参加も含まれていた。タラワの最後の派遣は、イラクとアフガニスタンで進行中の米国の任務を支援することであった。



米海軍は、少なくとも2022年以降、大規模演習でタラワ級を標的として使用することを計画してきた同級のもう1隻、元USSペリリューも、将来のある時点でSINKEXに使用される。

 すでに述べたように、タラワ級がリムパックで標的として使われるのは今回が初めてではない。元USSベロー・ウッドは2006年のリムパックで撃沈された。タラワ級の前に就役していた7隻の硫黄島級水陸両用強襲揚陸艦のうち5隻は、別のリムパックSINKEXでも使用された(残りの2隻はスクラップされた)。元USSニューオーリンズは、2010年の反復訓練で太平洋の底に送られた。


The ex-USS <em>Belleau Wood</em> seen on its side during the 2006 RIMPAC SINKEX. <em>Ste Elmore via Wikimedia</em>

The ex-USS Belleau Wood seen on its side during the 2006 RIMPAC SINKEX. Ste Elmore via Wikimedia


Smoke billows from the former USS <em>New Orleans</em> during RIMPAC 2010's SINKEX. <em>USN</em>

Smoke billows from the former USS New Orleans during RIMPAC 2010's SINKEX. USN


しかし、タラワに差し迫った運命は重大である。海軍がリムパックSINKEXのためにあらゆる種類の強襲揚陸艦を使用するのは非常に久しぶりであるだけでなく、10年以上にわたって投入されてきた艦艇の中で最大である。就役当時は満載4万トン近い排水量を誇った。リムパック2020で沈没したチャールストン級揚陸艦で、近年SINKEXに使用された中で最大級だった元USSダーラムは、満載時の排水量が18,322トンだった。過去数回のリムパックでは、退役したオリバー・ハザード・ペリー級フリゲート艦や小型艦が使用されてきた。


強襲揚陸艦は価値の高い資産であり、中核構造物までしっかりと保護される設計で、冗長性をもたせた機能のおかげで損傷にも強い。また、タラワ級は過去に沈没したイオー・ジマ級よりも近代設計となっている。

 さらに米海軍には、タラワ級水陸両用強襲揚陸艦より大型で同程度の防御力を持つ艦に対して実弾演習や破壊実験を行う現実的な選択肢がない。海軍が第二次世界大戦後の超大型空母を意図的に撃沈したのは、2005年に退役したキティ・ホーク級USSアメリカによる試験で一度だけだ。海軍は、現在の空母がすべて原子力空母であることを考えると、環境その他の要因により、再び行うことはできないかもしれない。海軍の最後の通常動力型空母は現在スクラップ処理中であり、海軍初の原子力空母である元USSエンタープライズもスクラップ処理中である。


The only picture known to be publicly available of ex-USS <em>America</em> sinking as a result of the testing in 2005. <em>USN/Public Domain</em>

The only picture known to be publicly available of ex-USS America sinking as a result of the testing in 2005. USN/Public Domain


このようなことを考慮すると、元USSタラワの沈没は、海軍にとって兵器の有効性と、特に大型で防御力の高い軍艦のさまざまな種類の脅威に対する回復力に関するデータを収集する貴重な機会となる。高度なモデリングやシミュレーション、さらに限定的な破壊試験も非常に有益な情報を提供するが、実物大の軍艦が砲撃されてどうなるかを実際に見ることができることには代えられない。

 2024年リムパックのSINKEXでどのような兵器が使われるかは不明だが、このような実弾射撃イベントでは通常、潜水艦発射の重量魚雷が最後の一撃として使われる。改良された対艦兵器や、日進月歩の戦術、技術、手順が、過去のリムパックで実演されてきた。また、必ずしも対軍艦用として設計されていない兵器の使用方法を探る場にもなっている。

 リムパックSINKEXは一般に、米国の同盟国やパートナーにも、そうでなければ利用できない実戦の機会を提供している。今年の演習には、米国のほか、オーストラリア、ベルギー、ブラジル、ブルネイ、カナダ、チリ、コロンビア、デンマーク、エクアドル、フランス、ドイツ、インド、インドネシア、イスラエル、イタリア、日本、マレーシア、メキシコ、オランダ、ニュージーランド、ペルー、大韓民国、フィリピン共和国、シンガポール、スリランカ、タイ、トンガ、英国の部隊が参加する。海軍によれば、合計40隻の水上艦艇、3隻の潜水艦、150機以上の航空機、全体で25,000人以上の人員(14カ国の陸上部隊を含む)が参加する予定である。

 リムパック2024のテーマは「パートナー: 統合と備え」である。自由で開かれたインド太平洋を促進するため、リムパック演習は、世界クラスの海上訓練環境を活用し、維持する、最高の合同・統合海上演習である」と、演習を主導する海軍太平洋艦隊が5月に発表したプレスリリースにある。「リムパックは、その中核をなす包括性により、多国間の協力と信頼を育み、相互運用性を活用し、統合され、準備された、連合パートナーを強化するために、それぞれの国家目標を達成する」。

 リムパック2024と元タラワの沈没計画は、米国(その同盟国やパートナーを巻き込む可能性がある)と中国の間で、太平洋地域で大規模な紛争が発生する可能性に対する懸念が着実に高まっているのを背景にしている。人民解放軍(PLA)は、敵艦船と交戦可能な新しい巡航ミサイルや弾道ミサイルを含む対艦兵器庫の規模と範囲を大幅に拡大し、この点でその能力を進化させ続けている。揚陸強襲艦は、このような将来のハイエンド戦において、優先順位の高いターゲットとなるだろう。

 余談だが、中国軍が過去のリムパックに参加していたことは興味深いことで、過去10年ほどの間に地政学的環境がいかに大きく変化したかを浮き彫りにしている。

 近年、海軍の艦艇維持能力や戦闘で損傷した艦艇の修理能力に関する議論が高まり、懸念が高まっている。2020年にワスプ級水陸両用強襲揚陸艦USSボノム・リシャールが桟橋側で大規模火災に見舞われ、鎮火に4日間を要したことは、実際の戦闘シナリオにおいて、大型で十分に防御された艦でさえ何が起こるかわからないとの不安を増大させた。


同時に、中国人民解放軍海軍(PLAN)は、米軍の最重要ターゲットとなる水強襲揚陸艦部隊の規模を大幅に拡大している。PLANは3隻の075型を就役させ、4隻目を建造中である。075型は、米海軍のワスプ級や退役したタラワ級と、大きさなど多くの点で似ている。


また、中国は現在、非常に大きな飛行甲板を備えた、実質的に大型の水陸両用強襲揚陸艦の最初の艦を建造中だ。この船には少なくとも1基の電磁カタパルトと、未搭乗戦闘航空機(UCAV)やその他の固定翼ドローンを含む航空団を支援するための着艦装置が搭載される見込みだ。076型として知られている同艦は、世界で現在就役している各艦とは異なるものになりそうだ。


今年のリムパックでタラワが沈没すれば、海軍最大の軍艦でさえ、将来の大規模紛争で失われる可能性があるという現実的な可能性が浮き彫りになる。大規模戦闘の間、そのような艦船に乗船している何千人もの乗組員やその他の人員こそが、短期間で本当にかけがえのないものとなる。


総じて、リムパック2024におけるSINKEXは、ここ数年で最大の重要なイベントになる。■


Flattop Amphibious Assault Ship Looks Set To Be Pummeled With Weapons In RIMPAC Wargames

BYJOSEPH TREVITHICK|PUBLISHED JUN 10, 2024 5:50 PM EDT


2023年9月30日土曜日

主張 インド太平洋条約機構の創設を真剣に考える時が来た

 

 国はインド太平洋全域で防衛と安全保障の同盟関係を断固としたペースで強化している。中国の挑発行為がこの取り組みの大きなきっかけとなっているようだ。実際、こうした挑発行為は、インド、日本、台湾、フィリピン、マレーシア、ベトナムなどの国境内に領土を想定した中国の新しい国家地図に反映されている。中国は、独裁的なソ連やロシアのやり方を踏襲し、近隣諸国の領土の領有権を主張している。

インド太平洋の集団防衛体制は、北京の覇権主義的な意図に対する最も効果的な抑止力である。今こそ、インド太平洋条約機構Indo-Pacific Treaty Organizationを真剣に考える時である。このIPTOは、NATOの教訓を生かすものだ。NATOは、その実効性を更新し、フィンランドにスウェーデンが間もなく加わる。 

インド太平洋における正式取り決め

インド太平洋の数カ国は、自国の安全保障と領土保全の保証者として、明示的または黙認的に米国に依存している。多くの国々は、米国の安全保障と米国が強制する航行の自由が、中国の経済的威圧から自国を守っていることを痛感している。一方、過去半世紀にわたる米国の国内政治は、貿易同盟に焦点を当てるよりも、インド太平洋における防衛・安全保障パートナーシップの拡大に従順であるように見える。その結果、同じ考え方がインド太平洋全体にも広がりつつある。

ジョー・バイデン米大統領は、台湾が中国に侵略された場合、米国は台湾を支援すると何度も明言している。バイデン政権は、オーストラリアやイギリスと原子力潜水艦および防衛協定を結んでいる: AUKUSである。日米安全保障同盟を強化し、防衛予算をGDPの2%に増額し、反撃能力を開発するという日本の新たな安全保障・防衛戦略を歓迎した。

米印防衛パートナーシップは着実に進展している。その目標は、インドをインド太平洋地域における防衛ロジスティクス、修理、メンテナンスの主要拠点とし、両国が共同で防衛システムを開発・生産することにある。

米国はフィリピンとの1951年相互防衛条約を再確認し、その範囲を拡大し、台湾とスプラトリー諸島に近接する基地四地点へのアクセス権を追加した。米国はまた、パプアニューギニアと防衛協力協定を結び、同国の治安部隊の整備と近代化を支援している。

8月のキャンプ・デービッド首脳会談で、韓国、日本、米国は、情報共有や弾道ミサイルに関する調整を含む集団的自衛権と経済安全保障の取り決めを制度化すると約束した。

バイデンが9月にベトナムを訪問する際、両国は防衛・安全保障協力の改善を含む「包括的戦略パートナーシップ」を締結する見込みである。

適切な抑止力

一方、中国とロシアも結束を固めるのに忙しい。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と中国の習近平国家主席は、ロシアがウクライナに侵攻する前の2022年に「無制限」と呼ばれるパートナーシップを結んだ。両国は軍事協力を強化し、時には北朝鮮やイランを含む軍事演習も行っている。中国は、ウクライナ戦争が始まって以来、ロシアにとって欠かせない物資と資金の供給源となっている。ウクライナでは、米国が支援するNATOと中国が支援するロシアが、地政学的に大きな影響を及ぼす争いを繰り広げている。ウクライナが防衛に成功すれば、台湾の独立にも良い影響を与えるだろう。          

このような世界情勢の進展の中で、インド太平洋における集団安全保障の取り決めは、領土侵犯を抑止する二国間防衛協定以上の役割を果たすだろう。地域の安全保障を確保するための米軍資産の配備において、より大きな効果をもたらす。加盟国の防衛システム間の相互運用性を高めることを奨励する。また、自由で開かれたインド太平洋を維持するため、地域のアクターがより大きなコミットメントを果たすことも求めている。

米国は、自由で開かれたインド太平洋の不可欠な守護者であることに変わりはないが、米国だけが重荷を背負う必要はない。NATOに加盟する11カ国以上の欧州諸国は、ウクライナを支援するために、米国よりも多くのGDPを割り当てている。自由で開かれたインド太平洋には、現地の主体による同様のコミットメントが必要である。         

米国内には、NATOや欧州の利益を犠牲にしてでもインド太平洋に軍事的な重点を置くべきだという声がある。だが一方を空洞化させて他方を補強するのではなく、両方を強化することが米国の利益になる。NATOは世界で最重要の防衛同盟であり、第二次世界大戦以降続いてきた地域的・世界的な平和と繁栄に大きな責任を負っている。プラグマティズムと思慮深さは、NATOの特徴を、アメリカの主要な関心事であるもう一つの地域、インド太平洋に適応させることを主張している。韓国の軍備はウクライナの防衛に不可欠である。欧州の軍備は、インド太平洋における将来の紛争で投入されるかもしれない。

話し合いの時

インド太平洋諸国の大半は、米国の安全保障保証を望んでいるが、地域的な集団安全保障体制への飛躍には至っていない。そこに至るまでのプロセスは有機的であるべきだが、米国は現実的な運用上のメリットで各国を関与させ始めるべきである。

最終的にインド太平洋条約機構が形成されるかどうかの主な決定要因は、中国の行動だ。習近平の発言から予想されるように、北京が好戦的な態度をとり続けるのであれば、IPTOの集団的保証の魅力は確実に高まる。IPTOは必要不可欠な明確な目的、戦略、協調を提供するだろう。それは、中国の独裁者の覇権主義的な意図を抑止するのに十分な弾力性を持つ、自由で開かれたインド太平洋を制度化するものである。米国が北大西洋とインド太平洋に軍を展開する際、より効率的なものとなるだろう。重要なのは、より大きな関与を通じて地域の安全保障を強化することである。 

インド太平洋条約機構の創設を話し合う時が来た。■

Time for an Asian NATO: Meet the Indo-Pacific Treaty Organization - 19FortyFive

By

Kaush Arha


About the Author 

Kaush Arha is president of the Free & Open Indo-Pacific Forum and a senior fellow at the Atlantic Council and the Krach Institute for Tech Diplomacy at Purdue.


2022年6月13日月曜日

Know Your Enemy: シャングリラ対話で中国国防相は驚くべき発言をしていた。

  

   

China's Defence Minister Wei Fenghe speaks at the Shangri-La Dialogue summit in Singapore on June 12, 2022. Photo: AFP

2022年6月12日、シンガポールで開催されたシャングリラ対話サミットで講演する中国の魏鳳和国防相。  Photo: AFP

 

 ご注意 以下の記事はCCPの息がかかった環球時報英語版からのご紹介で、文中の意見等は当ブログのものではありません。赤字部分等は当ブログがつけたものです。

 

 

国軍は、中国から台湾を分断しようとする勢力と最後まで戦うと、中国の国防部長は日曜日にシャングリラ対話でスピーチした。中国アナリストからは、これは中国が米国に送った最も強い警告との声が出ている。米国はたびたび台湾問題を利用し中国を挑発し、台湾の分離主義当局を刺激し地域内の安全保障状況を悪化させてきたからだ。

 

 

中国国務委員兼国防相の魏鳳和Wei Fenghe は日曜日、シンガポールで開催された第19回シャングリラ対話で、地域秩序に関する中国のビジョンについて演説した。台湾問題について、ウェイは、台湾は中国の一部であり、台湾問題は中国の内政問題であると述べた。「中国は必ずや統一を実現する」。

 

トランプ政権からバイデン政権まで、米国は台湾問題を一貫して利用し、台湾分離主義当局を扇動し、外交的プレゼンスを獲得ずみで世界が認めた一国主義に挑戦し、武器売却を増やし、軍艦を送り近海に入り、統一プロセスを妨害するなど、中国封じ込め戦略に利用している。一方、米国の一部議員や高官、下院議長までもが同島を訪問あるいは訪問を計画しており、分離主義者に誤ったシグナルを送り、中米関係の政治的基盤に挑戦している。

 

これらのことから、中国は明確な警告を米国に送る必要があると考え、米国が警告を無視し危険な動きを続ける、あるいはレッドラインを超えても、台湾問題を明確に解決する用意があり、プロセスが平和的であろうと武力的であろうと構わないと言うのが中国の態度だと専門家は指摘している。

 

中国大陸は、台湾海峡両岸の人民のため、平和的統一を求める努力を最大限続けているが、米国と台湾当局が平和的統一の希望を完全に破壊した場合、中国は力による問題解決を躊躇しないと分析されている。  

 

ウェイは、敵対勢力に警告を発した以外に、アジア太平洋の平和を持続的かつ断ち切れないものにする方法について、中国側の見解を紹介した。「未来を共有するアジア太平洋共同体の構築」は、アジア諸国のブロック間軍事対立を扇動する米国のインド太平洋戦略に対抗するイニシアチブだ。アナリストによれば、米国には中国を取り巻く戦略的環境を形成する能力はないが、中国には地域を統合し、共に発展させる能力がある

 

シャングリラ対話の中国軍代表団のメンバーでもある人民解放軍軍事科学院元副院長の何磊He Leiは、環球時報に対し、「ウェイ部長の発言は、重要問題に対する原則的かつ確固たる中国の姿勢と態度を示し、米国と西側同盟国からの非難と中傷にも応えた」と指摘した。

 

「発言はまた、地域諸国の懸念や質問に効果的に応えた」と述べ、Weiがスピーチを終えたとき、聴衆は暖かい拍手を送ったが、土曜日にロイド・オースティン国防長官のスピーチが終わったとき、聴衆は礼儀上わずかな拍手で応えただけだったと指摘した。

 

「中国国防相の演説へ聴衆が高い認知度を示している」と指摘した。 

 

統一は間違いない

 

統一は中華民族の大義であり、誰にもいかなる力にも止められない歴史の流れだ。「平和的統一は中国国民の最大の願いであり、最大限の誠意を持って、そのため最大の努力をする。今も平和的統一を実現するために最大の誠意を持って努力している」とウェイは述べた。

 

ご注意 この記事は環球時報の報道をそのままお伝えしています。記事内の意見、評価はブログオーナーのものではありません。

 

中国を分裂させようと「台湾独立」を追求する者には、良い結果とならない。民進党は、大陸と台湾がともに中国だという現状を変えようとし、1992年コンセンサスを認めず、「独立」を段階的に追求し、反中の海外団体の手先として行動しているのであり、主人に利用され捨てられるだけだとウェイは指摘した。

 

専門家によれば、中国の国防部長は、情勢悪化の責任は誰にあるのか、数十年にわたり両岸交流と地域の平和を保証してきた政治的合意を放棄し、現状を振り出しにもどしたのは誰なのか国際社会に伝えようとしているのだという。

 

中国のアナリストは、台湾海峡の状況悪化で中国を非難する勢力は、盲目あるいは盲目のふりをして、大陸を挑発する分離主義者の民進党当局を容認または支持し、中国の主権を守ろうとする大陸の努力を一方的に批判しているだけだと指摘した。

 

「誰かが台湾を中国から引き離そうとするならば、躊躇なく戦う。どんな犠牲を払ってでも戦う。最後の最後まで戦う。これが中国にとって唯一の選択だ」とウェイは言った。外国の干渉は失敗に終わる運命、とウェイは警告した。

 

「『台湾独立』を求める人たちとその背後にいる勢力に、ここにはっきりと言いたい。台湾独立の追求は行き止まりであり、妄想だ。外国の支援を求めてもうまくいかないし、絶対に考えてはいけない!」。

 

歴史の歯車は回っている。誰も中国統一への道を止められない。主権と領土を守る中国軍の強い決意、確固たる意志、強力な能力を過小評価してはならないとウェイは述べた。

 

厦門大学台湾研究所の李飛教授は、「米国とその傀儡民進党当局、および日本など一部の同盟国は、今回の警告発言だけで台湾海峡の状況への干渉をやめることはないだろうし、緊張は続く」「台湾問題で中国と最終対決すれば、結果は明らかであるのを知らせることが重要である」と指摘した。

 

「多少の代償は払うが必要なら武力で統一する、最終的に台湾問題は徹底的に解決できる。中国が現在出しているシグナルは、統一は不可避であり、米国が負ける運命にある中国との対決を避けるため正しい選択をするよう米国に知らせることだ」(李)。

 

環境を整える

 

中国国防部長は、敵対勢力への警告に加え、持続可能な平和と発展を地域で実現する中国の考えと計画についても説明した。

 

ウェイは、世界は歴史上稀に見る危機に直面しており、進むべき道は多国間主義を堅持・実践し、未来を共有する共同体を構築することだと述べた。

 

「中国の発展は止められない。中国の発展は他国にとって脅威ではない。それどころか、世界の平和と発展に大きく寄与している」。

 

アナリストによれば、地域における中国の最大の利点はその発展で、それにより中国は近隣諸国や地域のほとんどの国、たとえ中国と紛争を抱える国々と利益を共有でき、地域諸国は中国を敵視する外部勢力の要求に応えたがらない、それは各国の具体的利益に反するからだ、という。

 

米国は多くを約束するが、ほとんどリップサービスであり、プロパガンダマシンで「中国脅威論」を広めている。しかし、米国にとって最大の問題は、アジア太平洋諸国の発展を助ける便宜を提供する能力がないことだと、北京在住の国際関係の上級専門家は匿名条件で述べた。

 

「米国が得意なのは、小国を嘘で脅し、地域紛争や摩擦を利用し緊張を煽り、米国製武器を小国に買わせ、強大な隣国相手に無意味で高価で愚かな対立をさせ、最悪なのは損失分をワシントンが払わないことだ」と述べた。「フィリピンなど多くの国はとっくの昔に教訓を学んでおり、この手口は通用しなくなる」。

 

アジア太平洋地域は世界で最も活気に満ち有望な経済原動力であると指摘した上で、ウェイは、永続的な平和を享受し、すべての人々に安全を提供する、未来を共有するアジア太平洋共同体の構築という明るい展望に努力するよう各国に促した。

 

中国社会科学院で国際関係と米国研究の専門家Lü Xiangは「十分なパワーと強さ、域内諸国から最大の支持を有する国のみが、地域の戦略的環境を形成できる」が「アジア太平洋地域では、米国はその任にあらず、中国こそこれが可能な国だ」と述べた。■

 

Chinese defense chief sends 'strongest warning' to US on Taiwan question; 'Indo-Pacific strategy will fail to divide region' - Global Times

By Yang Sheng and Liu Xuanzun

Published: Jun 12, 2022 11:29 PM

 

コメント 中国、ロシア、北朝鮮他を専用に扱うKnow Your Enemy(仮題)を近日中に別ブログとして立ち上げますのでご期待ください。


2021年9月25日土曜日

海上自衛隊「しらぬい」が南太平洋でフランスと共同演習「オグリ・ヴェルニー」を実施。インド太平洋でのフランスの存在感に注目すべき。

 

JMSDF picture

 

上自衛隊 (JMSDF) のあさひ級駆逐艦JSしらぬいが防空演習をフランス海軍と共同で先週展開した場所は南太平洋のフランス領ニューカレドニアだった。

 

演習は「オグリ・ヴェルニー」の名称で、フランス海軍はダッソー・ファルコン200ガーディアン海上監視機を飛行させた。

 

フランス海軍発表は今回の演習の目的は以下の通りとしている。

  • 戦術レベルの共同作戦体制の向上

  • 二国間協力体制の強化

  • 仏日両国が進める自由で安全なインド太平洋で課題への共通認識を深める

JMSDF Asahi-class Destroyer in Air Defense Drill with French Navy 2French Navy picture

 

演習後にJSしらぬいはニューカレドニア最大の都市ヌーメアに入港した。同地には「FANC」つまりニューカレドニア駐留フランス軍が拠点を置き、フロレアル級フリゲート艦一隻、ダントルカストー級多用途艦一隻、P400型哨戒艇が常置されている。タヒチ配備の艦艇とともにフランス太平洋艦隊を構成し、ジャン・マチュー・レイ中将がタヒチに司令部を置き、ファルコン200を2機、ヘリコプター数機をニューカレドニアで運用する。

 

JSしらぬいは9月17日にフランス海軍航空機とニューカレドニア付近で演習を展開し、その後フランス領ニューカレドニアのヌーメアに18日から19日にかけ寄港した。

 

フランスはインド洋から太平洋にかけ海外領を保有しており、自由で開かれた太平洋の価値観を共有する。フランス海軍との演習により、防衛協力関係を深めた。

 

自衛隊艦艇は海軍戦力の機動性、柔軟性を生かして自由で開かれたインド太平洋の実現を目標に友邦国との協力関係を強化しつつインド太平洋の安定をめざす。

 

 

JSしらぬいはあさひ級駆逐艦二号艦(かつ最終艦)で2019年2月に就役した。あさひ級はあきづき級の発展形だが対潜戦に重点を置いている。

 

 

フランスの海外領土にはマヨット、レユニオン、南方南極領、ニューカレドニア、ウォリス・フツナ、フランス領ポリネシア、クリッパートン等があり、排他的経済水域の93%がインド洋太平洋に分布する。各地合わせて150万人のフランス人が居住し、フランス軍8千名を配備する。さらにフランス本国から艦艇等が派遣される。直近ではルビ級SSNエムロードが南シナ海で哨戒している。■

 

JMSDF Asahi-class Destroyer in Air Defense Drill with French Navy

 

Xavier Vavasseur  23 Sep 2021


2020年12月12日土曜日

インド洋への中国海軍進出にインドは非対称戦略で対抗せよとのCNASレポートを読んで

 この記事を読めば、なぜインド太平洋という呼称が使われているかがわかりますね。シンクタンクの理屈がデリーの政治家にどれだけアピールするかわかりませんが、要は中国に追随した大海軍整備に走るのは愚策ということですね。今後は日本としても国境線の地図から国益の地図に切り替えて思考していく必要があると思います。安保法制の審議時に見られた政府の足を引っ張るような議論ではなく、納得できる国益の議論が必要な時が来ていると思います。


 

 

れまで長きにわたりインド洋はインド海軍が支配し、さらにアジアでも数少ない空母航空戦力を有しているのがインドだ。

 

ただし、シンクタンク新アメリカ安全保障センター(CNAS)のレポートによれば、中国軍事力の増強がここ二十年余り続いた結果、インドの軍事力近代化並びに増強の影が薄くなっており、特に海洋面で顕著だという。1962年の中国との国境紛争をひきずるインドには痛い指摘だ。

 

人民解放軍海軍(PLAN)の中心は太平洋にあるが、最近になり中国はバングラデシュ、ミャンマー、パキスタン、スリランカと次々に港湾施設の使用権を獲得しており、海軍基地建設も始めた。すべてあわせ「真珠の首飾り」を構成しインドを包囲するねらいだ。PLANはインド洋への艦艇派遣が増えており、インドの弾道ミサイル潜水艦に脅威を与える可能性が出てきた。

 

 

 

インドは数の上ではインド洋で優位を維持しているものの、中国は着々と基礎固めをし同地区でのプレゼンスを強めてきた。

 

ここ二十年にわたり、米国はインドと事実上の同盟関係を強化し中国の台頭に対抗してきた。ただし、CNASレポートにあるように予算面の制約と調達の欠陥によりインドがPLANの艦艇、航空機双方に対抗できるとは期待できない。

 

ヒマラヤ山岳地帯での国境線確保については別稿が扱うので、本稿ではCNASレポート提言を検討し、インド海軍・空軍が無理せずインド洋で中国の台頭があっても優位性を確保する方法を見てみよう。

 

PLANの全体規模はインド海軍を上回るが、インドには域内海域の確保に役立つ利点がある。中国国内のPLAN艦艇はインド洋への移動にマラッカ海峡を通過する必要がある。スンダ海峡の利用も可能だ。

 

CNASレポートはインド海軍が12隻から18隻の短距離ディーゼル電気推進方式潜水艦部隊を両海峡に配備するよう提言。さらに大気非依存型推進潜水艦建造を提言しており、リチウムイオン電池の採用も有望とする。

 

さらに海軍原子力潜水艦による長期間作戦を太平洋で展開してPLAN艦艇の航行を妨害、遅延、寸断する提言をしている。

 

潜水艦建造を加速するため、同レポートでは計画中の原子力推進空母三号艦の中止を提言している。空母は弱小国へは兵力投射の有効な手段となるが、PLANの対艦ミサイルによる破壊を逃れるのは困難だ。

 

海洋面でのISR強化を

 

インド海軍には近隣海域を通行する艦船、潜水艦の追跡能力の強化が必要だ。情報収集監視偵察(ISR)能力の拡充が必要で、インドはP-8Iポセイドンの供用を開始しているので期待できる。

 

インド海軍は偵察機材の拡充のため、衛星、長時間滞空無人機としてMQ-4Cトライトンあるいは同等の国内開発機材の調達に走るだろう。

 

情報共有を米国と、あるいはフランスと行えばインドの海洋面の状況認識機能が高まるだろう。

 

有事となればインドISR機材に防御の必要があり、同時に電子攻撃、サイバーあるいは宇宙装備で敵のISR機材を妨害し、インド洋上の監視偵察能力を低下させる必要が生まれる。インドには関連民生部門で多彩な人材がそろっているのでCNASレポートは必要な能力を無理なく実現できると見ている。

 

非対称戦に備えるべき

 

CNASではディーゼル電気推進潜水艦以外に安価な対艦攻撃手段の整備を提言し、PLANの055型大型駆逐艦に対抗し高価な大型水上戦闘艦艇を建造し、21世紀のユトランド海戦を想定すべきではないとする。

 

安価で消耗品扱いながら重装備のステルス無人戦闘艦艇(USVs) や長距離陸上配備対艦ミサイルのブラーモス巡航ミサイルをP-8哨戒機に搭載すれば、多大な予算をかけずに残存性高く、消耗前提で対艦攻撃能力が実現するとし、反対に大型高価格水上艦艇を整備してもレーダー探知から逃れられない。

 

同盟関係の強化

 

ジャワラリアル・ネール首相が非同盟運動を冷戦時に展開したことでインドは歴史的に同盟関係に距離を置いてきた。米国との関わり方でも米国の標準では限定的にとどまっており、直近の問題を除きインドは中国との直接対決も避けてきた。

 

ただし、中国を挑発することなくインドは協力関係の深化で多くを得られる。毎年行われる多国間演習に加われば、インド軍の実力、共同作戦体制の強化を他国と深められる。

 

インドと米国は2016年取り決めで相互に軍事施設を利用することになっており、これを実現すればよい。インドのP-8Iをアンダマン諸島、ニコバル諸島にあり、米海軍がP-8をディエゴガルシア島にあるので相互に基地を交換すれば、パトロール効果が増強されよう。

 

レユニオン、マヨッテの領有でフランスはインド洋で海上情報収集能力を有する。フランスとインド両国は情報共有で恩恵を享受できる。

 

その他にも今後強化すべき相手にオーストラリア、日本、フィリピン、ヴィエトナムがある。インドから比較的近い地域の同盟国と協力することで真珠の首飾りの拡大に対抗できる。

 

インド政府の決断は?


CNASレポートの結論は防衛戦略ならびに非対称能力の整備に集中すればインド海軍は海洋面の優位性を大型艦艇建造に走ることなく確保できるとする。ただし、この選択だと核弾道ミサイル潜水艦部隊の拡充に向かい、空母部隊も増強を狙うインドの現行の政策と逆行する。

 

もちろん、インド海軍がどんな選択をして自国権益の確保に向かうか

最終決定はインドの政治家の手にあり、ワシントンの軍事アナリストではない。■

 

この記事は以下を再構成したものです。


China Is Expanding Into the Indian Ocean. What Can the Indian Navy Do About It?

December 11, 2020  Topic: Security  Region: Asia  Blog Brand: The Reboot  Tags: ChinaIndiaMilitaryIndian NavyWar

by Sebastien Roblin


 

Sébastien Roblin writes on the technical, historical and political aspects of international security and conflict for publications including The National Interest, NBC News, Forbes.com and War is Boring. He holds a Master’s degree from Georgetown University and served with the Peace Corps in China. You can follow his articles on Twitter.

This article first appeared earlier this year.

Image: Reuters