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2021年2月11日木曜日

ロシアの弱点② 人口構成からロシア軍の現行規模は維持不可能になる。しかし、強大な軍の規模を信じる既存勢力が事実を認めようとしてない。

  

ロシアの弱点②

 

シア財務相が歳出削減のため軍人員10%削減策を提案したがロシア国防省の反対にさらされているとの記事をピーター・スチウがNational Interestに投稿した。

 

Covid-19関連で予算削減は理解できるが、人口構成の問題が存在感をロシア軍で強めている。

 

1991年のソ連崩壊後に生まれたロシア連邦の人口構成は崖っぷち状態だった。出生率は1997年から2001年にかけ1.2まで低下し、死亡率が急上昇した。この人口構成でロシア軍が900千名体制の維持に苦慮しているのは当然といえよう。更にこの問題は今後にかけて存在感を増す。

 

国連人口動向統計で、2020年時点のロシアの20-34歳男性人口は14.25百万人で、2050年の予想中央値は12.91百万人とある。減少率9%で軍の募集活動が大きく影響をうけそうだ。だが真の惨状はもっと早期にあらわれ、同じ年齢層の男性人口は2025年は11.55百万人、2030年は11.26百万人の予測がある。つまり、募集対象人口が2020年代に約20%減る。この問題はコロナウィルスやその結果の予算制約と関係ない。

 

募集対象男性人口の2割縮小がロシア軍戦力にどんな影響が出るのか。20−34歳人口と軍の規模を比較した「軍事化率」を見れば、ロシアの人口問題の深刻さがわかる。2020年のロシア軍事化率は対20-34歳男性人口14.25百万人で6.31%で、正規軍は国際戦略研究所の推定で900千名規模だ。ただ約5%の軍人員は女性で対象外となる。また、18-19歳男性もここに入らない。とはいえ、この数字からロシアの人口構成上の課題が浮かび上がる。

 

 

2030年までの20−34歳男性人口の減少予測を加味すれば、90万名体制を維持するためロシアは軍事化率を2025年に7.79%、2030年には8.01%まで増やす必要がある。実際はロシアはすでに軍事化された社会になっている。各国の数字を見ると、2020年の軍事化率は米国が3.86%、フランス3.62%、トルコ3.58%、イタリア3.52%、日本2.54%、パキスタン2.24%、英国2.21%、中国1.24%、インド0.77%でロシアが突出しているのがわかる。またロシアは周辺国より軍事化率が高く、ウクライナの2020年統計では4.82%、ルーマニア3.80%、ポーランド3.16%をいずれも上回る。

 

で社会が耐えられる「最大軍事化率」を想定すると、ロシアの現実が一番その水準に近い。中長期的にロシアはこれ以上の人員募集に耐えられないはずだ。とはいえ、状況は絶望的とも言えない。給与水準の改善も選択肢のひとつで、軍勤務の魅力を引き上げる策もあるが、スチウ記事では財務省が反対の方向を目指しているのがわかる。

 

別の対策に現行の徴募期間一年を2年に延長することがある。近代戦は高度技術を駆使するので、徴募期間も大部分が訓練に費やされ、実戦対応が整うのは最後の数ヶ月しかない。徴兵制度を温存するのなら、期間延長により戦闘対応度を高めれば、国防省も人材育成への支出資を無駄にすることを防げる。ただし欠点もある。若年層をさらに一年軍に留まらせれば、民間労働市場に一年間加われず、経済成長に悪影響が出る。さらに、徴兵制度は今でも政治的に不人気で、延長すれば国民の抵抗にあうのはほぼ確実で、支持率を重視するプーチン政権に心配のたねとなる。

 

女性活用方針を国防省が変えれば部分的にせよ解決になるかもしれない。前述のとおり、45千名の女性がロシア軍に勤務しているが、身体条件から実戦任務に適さない。国防省は次の三通りで現行方針を変更できる。女性に戦闘任務志願の道を開く。女性の徴募期間を延長するが、戦闘任務は与えない。(これで戦闘任務に投入可能男性を増やす)あるいは、女性を全面的に活用することである。それぞれ可能性は少ないが、国防省は女性のパイロット登用など打開策を模索している。ロシア軍に働く女性の規模は米国より低い。米国では空軍の20%、海軍19%、陸軍15%、海兵隊9%が女性だ。ロシア軍で支援任務に限り登用し女性比率を10%にするだけで男性徴募率の低さを解決できる。

 

ただし上記は国防省があくまでも現在の軍の規模を維持する限りついてまわる問題である。財務省の10%削減提案に激しい抵抗が出たのは、現在の軍の規模を維持する願望が強いあらわれだ。ただし、現行の方向性を維持した場合の財政上の重荷を考える必要がある。さらにCovid-19が加わる。ロシア社会では若年層が今後さらに減る。90万名体制維持は今でさえ難題で、今後維持できるはずがない。解決策として、給与水準の改善、徴募期間延長、女性募集の増加、それぞれ何らかの効果があるが、いずれもロシアの人口構成を抜本的に改善せず、ロシア軍の課題解決にもつながらない。ロシア連邦が軍縮小するとしたら、コロナウィルス関連の歳出削減を理由にあげるはずだ。この説明でまちがいとはいえないが、軍の規模縮小はロシアの人口構成上で不可避だ。Covid-19流行は都合の良い理由付けに過ぎない。■

 

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The Russian Military is Facing a Looming Demography Crisis

February 1, 2021  Topic: Russia  Region: Europe  Blog Brand: The Buzz  Tags: Russian MilitaryDraftDemographic DeclineSoviet UnionMilitary

by Ethan Woolley


Ethan Woolley is a student at the European University at St. Petersburg, where he is pursuing an MA in Energy Politics in Eurasia. He graduated from the University of Pennsylvania with a BA in International Relations and Russian and East European Studies.

Image: Reuters.


2021年1月4日月曜日

中国の弱み① 人口減と少子高齢化の波のインパクトが毎年拡大し、経済減速が避けられない。

 

 

国は遠大な構想を有している。だが経済成長と安定した政治で中国をまとめCCPは権力を維持できるのだろうか。大人口のまま高齢化が進めば中国の資源はなくなる。

 

一見とどまるところを知らない中国の成長に障害が現れた。人口構成だ。共産党の進めた一人っ子政策の効果を逆転させようと必死だが、時間切れとの声専門家にが強い。

 

中国政府の研究では人口は2029年の14億人がピークの後は減少に歯止めが聞かず、2050年に13.6億人となり、労働人口は2億人減少する。

 

出産率がこのままでは2065年に11.7億人に減少すると中国社会科学院は予測している。

 

人口増加対を食い止めようと登場した一人っ子政策は罰金、中絶、不妊化手術で成功をおさめ、出生率は1979年の2.9人が1995年に1.6人に下がった。上限は2016年に2人に引き上げられ出産数は一時的に上がったが再び低下した。昨年の新生児は15.2百万だが一部都市圏や地方省で35%減少した例もある。

 

中国の公式出生率は1.6で、人口維持に必要な2.1に届かないが、実際の数字は1.18程度と見る専門家もある。1.3だと80年で人口は半減する。

 

一人っ子政策のため女性の数が不足している。跡継ぎに男児を好む傾向や性別による中絶処置で中国の男性数は女性を34百万人上回っており2020年で結婚相手を見つられない男性は24百万人に及んだ。

 

北京、上海など発展した地域の出生数が青海省など西部地区より低くいは人口移動と関連がある。中国の「ラストベルト」東北部では経済活動が低下している。「結婚観、家族観の伝統」の変化が理由とする向きがある。結婚届は毎年減る一方で離婚が増えている。

 

転換点

北京大エコノミストのYi Fuxianは人口減少は2018年に始まったと指摘している。「2018年が歴史的転換点だった」とニューヨークタイムズにこう語り、「人口減少と急速な高齢化が始まった。経済活力は下がっていく」

 

まず労働人口の減少が悪影響を及ぼす。15歳-64歳人口は2013年のピークを経て、4年連続で減少している。その結果、扶養比率を構成する小児老人は2011年から上昇しており、今後も増加が止まらないと予測される。高齢者は2035年に4億人の大台を突破する政府予測がある。

 

すでに政府予算に影響が出ている。年金支出は6400億元(900億ドル)を2016年に記録し、5年前の140%増だ。今後さらに増加し、2050年には60兆元になる予測もあり、政府支出の20%相当となる。

社会保障が充実していると思われがちな中国だが医療、年金は制約が多く、推定9億人が社会保障の恩恵を受けずに暮らしている。

 

アジア最大の経済規模を誇る同国は十分に豊かになる前に高齢化中と言える。

 

「先進国でも高齢人口は1950年から2015年で倍増した時点で国民一人当たり所得はおよそ41千ドルだった。中国では同じ現象が12年で発生する。だが2025年の国民一人あたり所得は2015年時点のその他先進国水準の3分の1しかない」(Bloomberg Opinionに寄稿したShuli Ren)

 

規制緩和

危機を意識して中国政府は家族計画を更に緩和する動きに出ている。罰金を廃止し出産制限そのものも全廃するとある。中国の全国健康委員会はその他省庁とともに「税制、雇用、社会保障、住宅問題の改善及び検討をすすめ、全国的な子どもふたり政策の実施を進めようとしている」とChina Dailyが伝えている。

 

対策の一つに現行の定年55歳を女性で60歳、男性は65歳に引き上げ国際水準並みにする提案がある。地方政府も補助金で対応し出産休暇などの優遇策を講じている。ただしその他先進国同様に下がった出産率を逆転するのは極度に困難で極端な優遇策でも難しい。

 

エコノミストのライマン・ストーンは北欧並の寛大な支援策でも長期的な出生率改善には効果が薄いと研究でわかったという。また先進国でおしなべて出生率が低下している現象はかつてない規模だ。

 

経済の減速で二桁成長のGDPが一桁になり、債務残高は2018年末時点でGDP比254パーセントになった。海外から労働力を受け入れる、あるいは労働生産性を上げる、この2つで労働人口縮小に対応する。ただしハーヴァードビジネスレビューに寄稿したJ・スチュワート・ブラックおよびアレン・J・モリソンは生産の伸びが低下し、海外への開放度が低い中国企業の動向など阻害要因が多いと見ている。「日本企業同様に中国企業もグローバル500リストの圏外に落ちるだろう」とし、人口ボーナスと無尽蔵の低賃金労働を利用する経済モデルは勢いを失った。

 

JPモーガンアナリストの両著者は中国の経済成長率は現行6.5パーセントが2025年に5.5パーセントに低下し、さらに2030年までに4.5パーセントまで低下し、米国から世界最大の経済大国の座を奪う中国の夢は困難となる見ている。「中国は第予想より長く二位のまま残る」という。

 

人口減でGDP成長率も低下すると、一帯一路構想のような海外への野心を支える財務力も落ちる。経済停滞と格差拡大から共産党体制も批判を受けそうだ。

 

他方でインド、インドネシア、米国の労働力は今後も伸び、少なくとも2060年までこの勢いを持続しそうだ。米国は出生率が高く流入人口も多いので2017年に3.24億人、2050年に3.9億人になる予測で、インドは2027年に中国の人口を上回る。

 

人口構成が示すとおりなら、中国はいまだかつてない課題に直面しながら解決策が視野にない状況に苦しむことになる。

 

この記事は以下を再構成したものです。なお、記事は人力翻訳でおこなっています。コロナ禍で米国経済が停滞する間に中国が順調に伸び世界一の地位に予想より早くつくとの脳天気な予測が出ていますが、情報操作の一環でしょう。台頭が早いぶんだけ退潮も早い中国は世界にお騒がせな存在になるでしょう。一方で、国力があるうちに軍事冒険主義に走る可能性も高くなるのでは、警戒が必要です。マスクスより怖いのはマルサスです。

 

1.4 Billion by 2019 and Aging Fast: Can China Manage Such Rapid Change?

December 21, 2020  Topic: Economics  Region: Asia  Blog Brand: The Reboot  Tags: ChinaDemographicsOne Child LawSocial SecurityCCP

by Anthony Fensom

 

Anthony Fensom is an Australia-based freelance writer and consultant with more than a decade of experience in Asia-Pacific financial/media industries. This article appeared last year and is being republished due to reader interest. 

Image: Reuters


2017年8月8日火曜日

人口減少社会の日本は防衛力を今後も維持できるのか



マルクスを笑ってもマルサスを笑えません。人口統計は時限爆弾であり将来の姿を示し、レトリックで変えられない事実です。21世紀の日本がこのままだと将来は暗いと言わざるを得ません。防衛体制も現状維持ができなくなればチャンス到来と虎視眈々と準備する野蛮な国があらわれそうです。変化を受け入れるのが下手で先を見ることが不得手な日本人ですがここは再び国家百年の計で100年=3世代と決して予測不可能ではない範囲で考え、行動する=子どもを増やす必要があるのではないでしょうか。あるいは移民?これは抵抗が強いでしょう。
http://en.kremlin.ru/events/president/news/55008/photos/49342

 

Japan's Demographic Crisis Will Only Get Worse. Here's Why That's Bad News for America

日本の人口構成の危機は悪化の一途。米国にも悪い予測が立ちふさがる

The Japan of the future will have fewer resources, both in men and money, to devote to its defense and economy.未来の日本で防衛に投入できる人的資源、資金は減る一方になる。
July 19, 2017

  1. 先進国の将来の姿を知りたければ日本に注目すべきである。完全雇用がありながら日本の賃金水準は伸びず、GDP成長は最小限、低金利のまま政府の借金は高水準のままだ。一見すると矛盾に見えるこういった要素はどんな結果を生むのか。日本特有の問題なのかそれとも各国にも共通の症状になるのだろうか。
  2. 日本の場合は人口構成が大きな要素だ。日本は前例のない人口メルトダウンに直面しており2010年の128百万人でピークだったが、現在は126百万人で今後も減少する。現在の年率0.4パーセント減が2040年代には1.0パーセント減になると2050年の総人口は現在から23パーセント減となる。中世の伝染病による猛威を除くとここまで大きな人口減はだれも体験していない。さらに今世紀末には総人口は50百万人と最高時の4割になる。
  3. 65歳以上の人口は増えるが伸びが落ち着いていることが関心を呼ぶ。75歳以上人口は2020年代までは伸びる。最大の影響を受けそうなのが14歳未満および15歳から65歳のグループで後者は労働人口とされる。2017年から2050年までで14歳未満人口群は4割減になる。労働人口は同時期に34パーセント減となる。そうなると総人口の減少以上に労働人口の減少が加速する。
  4. GDP成長に労働人口減が足かせになる。生産性が伸びても労働人口減が相殺する。2050年のGDPは現状水準を超えないだろう。労働生産性は今後も年率1.4パーセントを維持するだろう。これ自体は問題ではない。だが労働者数が1.2パーセント減を続ける予測で2050年ごろにはさらに減少度を加速する。効率よく労働しても労働人口自体の減少で相殺されてしまうのが問題だ。
  5. そうなると日本のGDPは今後も停滞しそうだ。GDP減少は景気循環と別物で人口構成自体が原因になる。今後注目すべきは労働人口一人当たりGDP統計で日本経済の状態をGDP総額より正確に伝えてくれるはずだ。
  6. 日本には隠れた予備資源がある。高齢人口の雇用もその例で、GDP成長を後押ししそうだ。雇用率はわずかに伸びるが現状でもOECD標準で相当高い状態にある。ともにGDP成長予測を引き上げる効果があるが伸びは限定的だ。
  7. 人口構成が与える次の影響は国家予算だ。日本の国家債務はこの25年間でかなり増加している。労働人口ピークは1990年代で以後は減少中のためGDP成長は減少し、国内金利水準は低いままだ。一方で高齢人口が増え労働人口が減り、退職者が増え、低金利がさらに続く中で日本政府は容易に債務を増やせた。
  8. 日本の財政赤字が目立ち始めたのは1995年で今日まで続いている。債務総額がGDP比200パーセントを超えており、2025年に225パーセントとピークになる見込みだ。IMFでは債務÷GDP比60パーセントを堅実財政の上限と見ているが、日本はこの基準を20年前に超過したままで国家運営を続けてきた。だがいつまで続けられるのか。
  9. GDP成長がさして見込めないまま、日本は経済成長を続けつつ絶対的、相対的いずれでも債務水準を減らす財源が期待できない。.
  10. だが当方の分析では日本はこの難局を乗り越えられる。家計支出水準が実質的に伸びないのであれば国民は増税を受けいれ、国内外に大きなショックがなけれあば日本はなんとか立ち回るだろう。債務・GDP比は200パーセントあたりで落ち着き、それ以下にはならないはずだ。
  11. これでは納税者、政府資金の受益側双方によい結果にならない。日本政府がいかなる政策を講じても結果は変わらない。このシナリオでは実質税負担は80パーセント上昇しつつ経済成長はない。さらに政府支出は35年間全く増えず、想定外の事態が発生すればもっと長期になるかもしれない。今でさえ重税に苦しむ日本の納税者がさらに15パーセントの増税に耐えられるか。また受益者側も数十年にわたり現在の水準のまま我慢できるだろうか。日本国民が我慢強いといっても数年しか耐えられないはずで、これが数十年も続けばどうなるか。
  12. さらに労働人口減少で労働者あたり公的債務水準は2000年の50千ドルから今年は128千ドルになる。さらに2050年に208千ドルとなるが経済規模は一定のまま停滞する。比較すると米国連邦政府の労働人口一人あたり債務は75千ドルほどである。ただし米国の国民一人当たりGDP規模は日本より大きい。
  13. 最良のシナリオでも日本政府は国民に非常に多大な忍耐と辛抱を求めることになる。それでも政権が生き残れば納税者、受益者双方が反乱を起こさないか。
  14. 社会全体で「メイカー」「テイカー」ともに受け入れられないとなると大衆人気にあやかる指導者が登場し債務支払い停止や紙幣増刷他一見魅力があるが実は破壊的効果を生む解決策を提唱するかもしれない。関税引き上げもその例だ。
  15. 日本経済は外部ショックや世界規模の信用状態の前に脆弱だ。世界不況や天候不順、地震、世界金利水準の上昇への対応に苦労するだろう。金利が1パーセント高くなると日本政府はGDP2パーセントの支出増になる(すべての債務を借り換えた場合)で世界経済の成長が日本にとってクッションとなるのであり、増税や支出削減による調整を迅速に迫られるだろう。
  16. 日本は国際情勢の変化にもぜい弱差を示すかもしれない。小規模武力衝突の影響も大きく、国内有権者は対外勢力が日本国内の政治体制の不安定化を狙い支援する大衆扇動タイプの政治家の甘言を受け入れてしまうかもしれない。
  17. 他方ですべてが悪い方向ばかりではない。失業は一貫して最低水準のままで給与水準は堅実に伸びる。不動産価格は毎年下がり、雇用人口の購買力は上がる。さらに高齢化社会は革命的な公約には動かない。感受性の強い失業中青少年そのものが姿を消し、日本社会は過激思想や海外からの操作に影響を受けにくい安定した社会になるのではないか。
  18. 予測だが、中国経済の大恐慌が2025年ごろに発生すれば日本は不況に入るのではないか。中国の債務状況は日本以上に深刻であり、メルトダウンは遅かれ早かれ避けられない。日本もこの危機の影響を避けられず、1998年通貨危機の再来でアジア投資を大々的に引き上げることになろう。
  19. 米国へ多様な影響が出る。日本の国内政治はここ数年間不安定になり、一層人気取り政策の傾向を示している。さらに日本政府は再度財政危機に直面するかもしれない。人口減少で労働力と資金が減ると国防面で影響が出る。そうなると米国との集団安全保障に対する姿勢も内向きになり、日本は米国の関与を強く求めることになりそうだ。
  20. 人口構成で不利になるのは日本だけではない。日本の出生率1.4はOECD平均1.5よりわずかに低いだけだ。日本の場合はタイミングと規模が独特で日本がかたくなに移民を拒んでいるのが理由だ。OECD加盟国の大部分は人口が増えない状態で韓国は日本より深刻でドイツも同様だ。日本は先進国にとって炭鉱内のカナリアのような存在で、時間のちがいがあるだけだ。
  21. 米国とて例外ではない。経済は好況だが日本同様に米国も構造赤字前提で国家運営中で債務水準は予想より高くなりそうで米国65歳以上人口は2025年に1.5倍に増加する見込みだ。オバマケアの廃止代替策案の模索を巡る葛藤はこれを反映している。「温情ある保守層」は国民全員対象の健康保険構想を支持するが財源はない。米国民向け社会保障のしくみは転換点にあるといってよく、債務増の中で問題解決を迫られている。インフレ率や金利が低いままならもっと借金していいのではないか。それを行ったのが日本で、アメリカも労働人口減少と経済成長鈍化の中で非現実的に期待してしまう罠に陥りそうだ。この現象はイリノイ、ニュージャージー、コネチカット各州ですでに発生しており、年金支払いの公約が実現できなくなっている。あと十年で同じ現象が全国規模に広がりそうだ。
  22. 高齢者が受け取る年金がこれから生まれる国民の負担に依存する状態が1980年から続いている。長寿命で健康かつ繁栄する状態で教育費用が高くなり、こどもの数が減っている。どこかでこの傾向がかわるかもしれず変わらないかもしれない。人口自然増を可能とする水準まで出生率が回復しないと増税なしでは社会保障費用が賄えなくなる。社会支出を年長者から若年層さらに将来の世代に振り向けることが必要だ。現時点で50歳代の年齢層が80歳になるころ、はるかに厳しい環境に直面しているだろう。
  23. 米国の出生率は昨年史上最低記録を更新した。社会は今あるストックを食いつぶすことになり、まさしく日本と同じ人口構成の途をたどることになる。日本は2050年だが米国では2100年が転換点になりそうだ。
  24. 日本の経済活動の低迷を失われた二十年といわれてきた。人口統計をみればそれだけではすまないとわかる。日本は一世紀まるまる失いつつある。
  25. 苦悩する先進国は日本だけにとどまらないだろう。■
Steven R. Kopits is the President of Princeton Energy Advisors. He writes about oil markets and related geopolitics.
Image: Japanese prime minister Shinzo Abe meets with Russian president Vladimir Putin at the G20 Summit in Hamburg, Germany, July 2017.