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2025年6月19日木曜日

イランはイスラエルに対してどのようなミサイルを発射できるのか(Breaking Defense) — イスラエル空軍はミサイル排除に躍起となっており、その威力は相当削がれていますが、数発は発射されるでしょう



ミサイル・サイトへのイスラエルによる攻撃の効果にもよるが、弾道弾発射がイランの反撃で最も効果的な選択肢であることに変わりはない。


2024年9月21日、イランのテヘラン南部で行われた軍事パレードで、トラックによってイラン国旗の前を運ばれるイラン初の極超音速ミサイル「ファタ」。 (写真:Morteza Nikoubazl/NurPhoto via Getty Images)


編集部注:この分析が発表された直後に、イスラエルの攻撃に対抗しイ

ランが弾道ミサイルを発射したとの報道がなされた。


スラエルがイランの軍幹部や科学者、核・弾道ミサイル能力を標的とした攻撃を相次いで行ったことを受け、テヘランは復讐を誓った。しかし、比較的小規模なドローン作戦以上に、イランがどのように対応するかはまだ正確にはわからない。それは、イスラエルの攻撃がそもそもどの程度効果的であったか、そしてイランの実体のない弾道ミサイル能力のどの部分を残したかによって大きく左右される可能性がある。

 イスラエルの攻撃には、2024年10月にイランがイスラエルを弾道ミサイルで攻撃した際の発射地点のひとつであったタブリーズの標的を攻撃することも含まれていたと伝えられている。イスラエルはまた、イラン軍参謀長モハマド・ホセイン・バゲリとイスラム革命防衛隊(IRGC)のトップであるホセイン・サラミを殺害したと言われている。イスラム革命防衛隊はイランの弾道ミサイル開発を担う組織である。

 今回の攻撃以前は、弾道ミサイルがイスラエルを攻撃するテヘランの最も強力な手段であり、現在もその可能性が高い。 イランからイスラエルに到達するには、中距離弾道ミサイル(MRBM)とも呼ばれる射程1,000キロ(621マイル)以上のミサイルが必要だ。イランは多種多様なミサイルを保有している。その中には、ガドルやホラムシャールのような北朝鮮との協力に基づく液体推進ミサイルだけでなく、先進的な固体推進弾道ミサイルも含まれる。

 ケイバル・シェカンのようなこれらのミサイルの一部は、制御フィンと衛星航法を備えた操縦可能な再突入体を装備し、精度を高め、大気圏内での操縦を可能にしている。イランは、迎撃を困難にする極超音速(非弾道)軌道で大気圏を飛行できる「ファッター」と呼ばれるケイバル・シェカンの改良型を開発したと主張している。


2024年2月11日、テヘラン西部のアザディ(自由)広場で、1979年のイラン・イスラム革命勝利45周年を記念する集会中に展示されたイランの地対地ミサイル「ケイバル」。 (写真:Morteza Nikoubazl/NurPhoto via Getty Images)

 こうしたMRBMに加え、イランは短距離弾道ミサイル(SRBM、射程300~1000km)を大量に保有している。これらのミサイルの一部(ソ連のスカッドがベース)は液体推進剤を使用しているが、ほとんどは固体推進剤を使用しており、制御フィンや衛星航法システムも装備されている。


 「真の約束」作戦と呼ばれるイランの2024年4月のイスラエル攻撃では、110発の弾道ミサイルと無人航空機、巡航ミサイルを併用した。これは、イスラエルがダマスカスのイラン大使館を攻撃した際に、IRGCクッズ部隊の司令官であったモハマド・レザ・ザヘディを暗殺したことに対する報復であった。


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イランの報道とテレビに基づくイランの弾道ミサイル情報。 (ラルフ・サヴェルスバーグ)


 弾道ミサイルのほとんどは、イスラエルのミサイル防衛システム(アロー2およびアロー3迎撃ミサイル)によって迎撃された。これをサポートしたのが、イスラエル沖で活動する、弾道ミサイル迎撃ミサイル「スタンダード・ミサイル3」で武装したアメリカ海軍の駆逐艦だった。   2024年10月、「真の約束II」と呼ばれる2度目の攻撃で、イランは約150発の弾道ミサイルでイスラエルを攻撃した。ここでもほとんどが迎撃されたが、数発がネバティム基地とテルノフ基地、イスラエルの情報本部付近を攻撃した。


数量の問題

 ここまで大規模な攻撃を撃退することは、イスラエルの防衛に負担をかけることになる。迎撃ミサイルの発射台の数は限られている。さらに、飛来するミサイルをすべて選別し、どこに向かっているのか、どのミサイルにどの迎撃ミサイルを割り当てるべきかを特定することは、レーダー資源だけでなく、指揮統制機構にも負担をかけることになる。

一部のミサイルが通過したのは、イスラエルが特定の標的の防衛を優先させた結果かもしれない。また、一部のミサイルは、建設されていない地域を狙っているように見えたため、最初は交戦しなかったが、その後、標的を攻撃するように操作された可能性もある。

 これらの攻撃によって、イスラエルの迎撃ミサイルの在庫は枯渇した。2023年10月以来、フーシによるイスラエルへの数十発のミサイル攻撃でさらに枯渇している。1回目のイランの攻撃の後、アメリカはイスラエルにTHAADミサイル防衛システムを配備し、ミサイル防衛を強化した。

 本稿執筆時点では、イランの弾道ミサイルインフラがどの程度破壊されたかは不明である。しかし、このような攻撃から身を守るため、イランは何年も前から地下にミサイル施設を建設してきた。

 これらの施設は空爆に対して強固にできているが、入り口は脆弱かもしれない。イランは、このような地下施設からミサイルを発射する映像も公開している。あるいは、トンネルを使ってミサイルを保管・準備し、トラックを使って発射地点にばらまくこともできる。


Iran-Anniversary

2024年2月11日、イラン・テヘランの道路脇で人々に見せるミサイルとUAV。 (写真:HOSSEIN BERIS/Middle East Images/AFP via Getty Images)

 パレードや演習、地下施設での映像によれば、イランはミサイルの輸送、架設、発射に、主に商用トラックや商用トラックが牽引するトレーラーを使用している。トレーラーには、発射装置とミサイルを平らに寝かせた状態で防水シートで覆うことができるフレームが取り付けられていることが多く、事実上、商用車として偽装されている。より小型の短距離ミサイル用の発射車両にも同様のカバーがあるが、発射装置も輸送用コンテナに偽装することができる。

 イスラエルの追撃で残りのミサイルが破壊されるのを防ぐため、イランはミサイル部隊を分散させる可能性がある。いったん輸送機が基地を離れれば、識別も追跡も難しくなる。固体燃料ミサイルはイランの液体燃料ミサイルよりも機動性が高く、発射準備も短時間で済む。

 そのため、発射準備がイスラエル(あるいはアメリカ)に観測されたとしても、ミサイルを地上で破壊する時間はほとんどないだろう。 さらに、その距離とイスラエル国防軍の空対空給油機の数に限りがあることを考えれば、イスラエル軍機がミサイル発射の脅威に対応するためにイラン領空に滞空することはできないだろう。

 しかし、イランにとっては、このような分散した部隊との通信は困難であろうし、また、潜在的な軍事的対応が軍の指揮系統の死によってどの程度妨げられるかも不明である。

 イランの小型短距離弾道ミサイルはイスラエルにとって直接の脅威ではないため、イスラエルはその破壊を優先しなかっただろう。 しかし、この地域の米軍施設には届く。 これは前例がないわけではない。

 2020年、IRGCのカセム・ソレイマニ将軍をイラクで殺害したアメリカの無人機攻撃に対する報復として、イランはイラクのアル・アサド基地のアメリカ施設を攻撃した。同基地はイラン国境から300キロも離れていない。アル・アサド基地が攻撃された当時、基地の唯一のミサイル防衛は、地元の(イランが支援する)民兵が時折基地に向けて発射するロケット弾、大砲、迫撃砲が対象だった。当然ながら、これらはイランから発射されたより長射程の弾道ミサイルには有効ではなかった。第一次トランプ政権は、さらなるエスカレートを避けるため、軍事的対応を取らない選択をした。

 米国の中東作戦の主要拠点であるカタールのアル・ウデイド空軍基地もイランから300km以内にあり、バーレーンやクウェートにも施設がある。この地域での緊張の高まりを受けて、アメリカは最近、短距離弾道ミサイルから基地を防衛するのに適したペイトリオット・ミサイル防衛大隊を中東に配備した。

 しかし、イランが米軍施設に対して大規模な攻撃を仕掛けた場合、防衛力を圧倒され、紛争がさらにエスカレートする可能性がある。■



What missiles does Iran have to launch against Israel, and how far can they go?

Depending on the effectiveness of Israeli strikes on missile sites, Iran’s ballistic capability may still be its most effective option for striking back.

By   Ralph Savelsberg

on June 13, 2025 at 2:46 PM

https://breakingdefense.com/2025/06/how-iran-could-use-its-ballistic-missile-capability-to-strike-back-at-israel-analysis/

Breaking Defense Board of Contributorsのメンバーであるラルフ・サヴェルスバーグは、デンヘルダーにあるオランダ国防アカデミーの准教授で、ミサイル防衛が専門である。



2016年3月4日金曜日

極超音速技術の開発で軍事優位性を狙う米国は中ロの追随を振り切れるか



Hypersonics could help Air Force thwart enemy anti-air defenses

By Phillip Swarts, Air Force Times2:38 p.m. EST March 1, 2016

X-51-Illustration.jpg(Photo: Air Force)
音速の五倍で飛ぶ極超音速ミサイルで米空軍は敵の高度防空体制を突破できると一部議員と専門家が3月1日に述べている。
  1. 「極超音速はバック・ロジャースの未来世界SFの話ではなくなった」と空軍研究所長を務めたカーティス・ベドゥケ退役少将は語る。「極超音速兵器はこちら側が開発すべきなのはもちろんですが、別の勢力も当然開発に乗り出してくるでしょう。真剣に対応が必要していかないとこちらが出遅れてしまいます」
  2. 超高速ミサイルが実現すれば米国は敵地奥深くを標的にし、高性能防空体制を克服できる。とくにロシアや中国に対し超高速ミサイルで防空網を突破し、脆弱な内陸目標を狙えれば有人機を敵地に侵攻させパイロットの生命を危険にさらさなくてもよくなる。
  3. 「敵の反応より一歩早く敵地に届けば勝ちだ」とスティーブ・ナイト下院議員(共、カリフォーニア)は語る。
  4. 米国は過去にも極超音速技術に投資している。直近では2013年にX-51ウェイブライダーがあり、テストでは三分間にわたり時速3,500 mph に近づいた。この成果はおおむね成功と受け止められたが、次のテストは2019年まで実施されないとベドゥケは述べる。
  5. それまでにロシアや中国が米国を追い越して極超音速技術の開発に成功するのを専門家は恐れる。防空ミサイルに応用されれば第四世代戦闘機は実質的に全機安全に飛行できなくなる。
  6. 「極超音速兵器は敵の防空体制に対応するため必要だ」とオリン・ハッチ上院議員(共、ユタ)は語る。「ロシアが危険な各国に武器を拡散させ、中国は技術開発で驚くべき成果を示している。中長期的には米軍は高性能装備を相手にせざるを得なくなる。そこで優位性を実現してくれる装備、つまり極超音速が必要だ」
  7. ハッチ議員は同僚議員に極超音速技術開発に予算を認めるよう要請しているものの予算環境は厳しい。
  8. ベドゥケと米空軍協会のミッチェル航空宇宙研究所は3月1日に報告書を公表し、極高音速ミサイルの意義を説いている。報告書は各議員、議員スタッフ、民間に配布され、議論を活性化させるのが目的だ。
  9. 「これからの道のりは決して予測不能でもなく、巨額予算にもならない」とベドゥケは述べ、「機会を無駄にしたのをくりかえすべきではない」と付け加えた。
  10. 「機会逸失」には極超音速技術は1960年代から存在したにもかかわらず真剣に試すまで30年を無駄にしたことがあるという。
  11. ナイト議員の実父ウィリアム・ナイトは60年代にX-15極超音速実験機のパイロットで、マッハ6.7の世界記録を保持している。
  12. 下院議員はその後極超音速の実績でほとんど進展がないと嘆く。「記録がずっと前に破られていて当然だ。父が生きていたらやはり同じことを言うだろう。先に進むつもりがあるのなら、新技術を手がけなければ、そうすれば技術を実用化できるのだ」■

2015年7月20日月曜日

★中国への備え、離島防衛>陸上自衛隊が米陸軍の先行事例になる

防衛を中心に整備をしてきた陸上自衛隊が米陸軍のモデルになる、という指摘ですが、米陸軍が皮肉にも日本(あるいは台湾?)から装備を供与受けることになるかもしれないという予測です。攻撃にまわってなんぼという米戦略で防衛だけに専念することは難しく、かつドクトリンの変更が必要になるのでしょうね
「breaking defense」の画像検索結果

Japan Blazes Trail For US Army: Coastal Defense Vs. China

By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on July 15, 2015 at 2:58 PM

WASHINGTON: 脅威度を上げてきた中国を抑止し敗退させるためには海軍・空軍だけで十分とはいえない。陸上自衛隊の現状は煮え切らない態度の米陸軍に参考になりそうだ。
  1. 「陸自は待ちの姿勢になっていませんね」とアンドリュー・クレピネヴィッチAndrew Krepinevich(戦略予算評価センター理事長)がアジア歴訪の直後に記者に語ってくれた。「日本は『第一列島線』の北方部分の防衛への関与を望んでいます。琉球諸島で施設拡充を進め、中国の侵攻を食い止めようというのは非常にすばらしいことです」
  2. 陸上自衛隊はクレピネヴィッチがForeign Affairs 2月号に寄稿した「列島防衛」構想と同じ方向を向いている。
Andrew KrepinevichAndrew Krepinevich
  1. クレピネヴィッチは「中国人民解放軍の防衛体制の中に海軍艦船を送り込むのではなく、米国及び同盟国は地上兵力を第一列島線上に配備し、移動式ミサイル発射装置に対艦巡航ミサイルを装備することで対応が可能だ」と著述している。対空ミサイルやミサイル防衛体制の整備も同時に可能だ。クレピネヴィッチ構想では海軍艦艇と空軍長距離爆撃機は移動予備兵力で陸上防衛線の背後に配置し、被攻撃地点の補強にあたり、中国軍の突破を防ぐ。艦隊は中国の支配部分から遠い地点にとどまる。
  2. クレピネヴィッチはさらに「西太平洋では我が方に大きな利点がある。これまでは兵力投射をしてきたが、今回は同盟各国の防衛にあたる。進出してくるのは中国の側だ」と語る。
  3. つまり敵国への侵攻や敵軍の壊滅は想定しない。逆に相手側に侵攻させる。米艦船や航空機を中国本土のミサイル射程内に送り込めば、損失は甚大なものにる。
  4. これは米軍にとって気持ちのよい話ではない。冷戦以後、防御一辺倒に回った事例はなく、ソ連軍事力が崩壊すると米軍は兵力投射に中心を移し、航空母艦、戦闘攻撃機、迅速展開部隊を重視してきた。敵国の領土に侵攻し、目標破壊につとめる、というのが現在の標準だ。米陸軍はアフガニスタン後の現実では急速展開能力を重視し、島嶼防衛は二の次だとしている。
  5. だが島嶼防衛は日本の自衛隊には違和感がない。硫黄島の激戦が証明している。また専守防衛が日本の防衛政策で大きな柱である。
  6. クレピネヴィッチはForeign Affairs論文で琉球諸島への対艦ミサイル配備構想に着目している。実際に日本を訪問し、実態が先行しているのを目の当たりにした。「西部方面隊の司令部へ招待されたのですが、地上兵力を中心に取り上げてた私の論文に司令官は大変興奮していましたね」
  7. 防空ミサイルとミサイル防衛装備が琉球諸島に配備され、中国の侵攻に備える。また沿岸に対艦ミサイルが配備される。さらに機雷敷設の訓練もしている。米海兵隊の協力を得て、揚陸作戦連隊の創設を目指し、島嶼の確保能力を確立する。
  8. ただしクレピネヴィッチは揚陸部隊を予備機動部隊とすることに懐疑的で、「接近阻止領域拒否(A2/AD)環境で精密攻撃ミサイルがある中で兵力を展開するのは困難。展開するのは我が方も敵も支配していない地帯だろう」としている。
  9. 一番頼りになる援軍は長距離ミサイルとクレプネヴィッチは言う。西太平洋地区の地理条件から、防衛地点の島が敵の飽和攻撃を受けても、残りの島々が同じ防衛線上にあれば長距離兵器を発射して防衛できる。
  10. ではミサイルはどこまで届くのか。「INF(中距離核兵器)条約の制約があり300マイル、つまり500キロが限度でしょう」とクレプネヴィッチは語る。「300マイルあれば相当の効果があげられ、地上兵力の投入は不要になります」
  11. 長距離ミサイルがあっても日本は単独で長距離にひろがる脅威対象地区すべての防衛は不可能だ。「日本側が分担を考えていることがわかりました。第一列島線の北部は日本が一義的に担当し、米側は南部を担当します」 日本、韓国、台湾の北方部分各国が北方の守りを固めて、南方にあるフィリピンなど各国はそれほど豊かでなく米軍の援助がないと防衛しきれない。
  12. ただし米陸軍にはここで想定される装備すべてが導入されておらず、とくに対艦ミサイルがない。だが日本から購入できるし、日本以外の同盟国が供給することも可能だ。もし、米陸軍が導入を決意すれば。
  13. だが米陸軍はそこまで踏み込んでいない。「予算削減で最大の犠牲を求められていることもあり、陸軍は大きなプレッシャーに直面しています」とクレプネヴィッチは言う。米陸軍は西太平洋以外に中東やヨーロッパでも義務がある。上下両院の軍事委員会から陸軍に対して沿岸配備の対艦ミサイル導入を求めてきたが、「国防総省の上層部は陸軍が第一列島線防衛に寄与できるか把握しきれていません」
  14. 「陸軍の価値観を揺るがす話題になり、列島部分の防衛は旅団単位の戦闘部隊では不可能です」とクレプネヴィッチは言う。日本は普通科地上部隊を縮小させ装備資源を新設の沿岸防衛部隊に振り向けようとしている。予算が限られる前提で米陸軍も同じ選択に迫られよう。米陸軍は予算削減の影響を直接受ける最中であり、新規の予算を確保することは困難だ。■


2011年11月23日水曜日

指向性エネルギー兵器搭載ミサイル誕生

                             

First Look: Electronic Warfare Missile

aviationweek.com Nov 18, 2011
   
米国は指向性エネルギー兵器を搭載するための専用ミサイルをすでに製作し、発射実験に成功している。実戦運用はまもなくと思われるが、使用されれば敵の電力網を撹乱、停止、あるいは損害をあたえることができるが、この全貌はほとんど不明のままだった。
  1. た だし各種の情報を総合するとこの新型ミサイルの運用コンセプト(conops)が浮上してきた。プロジェクト名は対電子装置高出力マイクロ波発達型ミサイ ルプロジェクトCounter-electronics High-power Microwave Advanced Missile Project (Champ)だ。
  2. ボーイング発表の想像図ではB-52から投下される空中発射型の設計のようだ。ただし、指向性エネルギー高出力マイクロ波(HPM)を発生するペイロードは陸上、海上、に加えて空中出の運用が可能な柔軟性を持つ。
  3. 対電子装置能力では無線周波数帯の全域が標的になるとボーイングは明らかにしており、その効果は目標の周波数ならびに実行性放射出力effective radiated power (ERP)に依存するという。
  4. 空 軍製作のビデオクリップ2本でconopsと効果が示されている。巡航ミサイルが低高度出飛行しながら高層オフィスビルに向けてHPMビームを側面及び下 方から発射している後継がアニメーションで示されている。ビルの照明が消える。実写では室内のデスクトップコンピュータの場面が真っ暗になる光景が写って いる。
  5. ただ2つの疑問が残る。Champはステルス性があり、再使用が可能なのか。ボーイングの図を見ると機体は小型で発射後に主翼が伸長する。ボーイングの図は実際のミサイルと一致しない可能性があるが、同社制作の空中発射型巡航ミサイルと類似している。
  6. Champの初発射は5月17日にユタ試射訓練場(ヒル空軍基地内)で行われており、目標群への照準は成功し正確な照射により付随的損害を最小限あるいは皆無にできると確認されている。
  7. 巡 航ミサイルはレーダー断面積が小さく、小型でレーダー波吸収あるいは反射塗料を施す事が可能だ。このため、開戦初日に巡航ミサイルで敵の防空網を突破する 手段となる。Champの仕様でも同じ運用能力とステルス性がうたわれている。ただしHPMペイロードはChampだけに搭載されるわけではない。無人機 への搭載も可能だ。
  8. 関 係者はChampが空軍による長距離攻撃兵器(LRS)と関連があるのかについては口を閉ざしている。指向性エネルギー兵器と電子攻撃能力がLRSに搭載 され無人機で運用すると空軍、業界関係者が発言している。HPM兵器はもっと小型の機体にも大型の機体にも搭載できるという。
  9. 小型であれば敵目標に探知されずに接近することが可能な一方、開口部が大きいほど高出力となるので大型装置も必要になるだろう。
  10. ミサイルの機体部分を製作したのはボーイングのファントムワークスで誘導システムも製造した。その際に巡航ミサイル、無人攻撃機等の知見を空軍研究所と連携して応用した。
  11. レ イセオンがこの度買収したKtech部門がHPM弾頭部を製作した。今後のテスト飛行で機体部と弾頭部分の整合性が2012年7月までにかけて研究される 予定だ。レイセオンはHPMによりレーザーは重要性を失い、指向性エネルギー兵器が次世代の戦闘作戦の中心となるとみる。ボーイングは同社製無人機に再使 用可能な複数回発射可能なHPM兵器搭載を検討している。