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2023年4月18日火曜日

兵力投射の新しい手段、トルコ海軍の「ドローン空母」はコスパに優れた戦闘艦になれば追随する動きが各国に現れそうだ

 Turkey’s ‘Drone Carrier’ Amphibious Assault Ship Enters Service

Photo by Serhat Cagdas/Anadolu Agency via Getty Images


トルコ海軍に引き渡された水陸両用強襲揚陸艦TCG Anadoluは、同国最大の艦艇で艦隊旗艦となる



ルコ海軍は4月10日月曜日、同国最大の新しい旗艦、TCG Anadoluの就役を祝い、スケジュールの都合で実際の引き渡しから約3ヶ月後となった就役式を祝った。「アナドル」は水陸両用強襲揚陸艦に分類されるが、トルコ関係者によると、各種武装ドローン空母として使用する計画もあるという。

 スペインの水陸両用強襲艦「フアン・カルロス1世」の設計に基づき、アナドルは2018年からイスタンブール市内のセデフ造船所で建造された。わずか1年後で進水し、2022年に予備試験が完了した。セデフでの引き渡し式で、レジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は、武器、戦闘システム、レーダー、赤外線捜索・追跡能力、電子戦スイートなど、アナドルの70%がトルコ製部品とコンポーネントを使用し建造されたことに言及した。

「この艦は、必要なときに世界のあらゆる場所で軍事・人道活動を行うことを可能にする」とエルドアンは述べた。「この艦を、トルコの地域指導的地位を強固にするシンボルと見ている」。

 アナドルは、上部に大きな飛行甲板、後部にウェルデッキを備えた典型的な上陸用ヘリコプタードック(LHD)構成となっている。ヘリコプターや上陸用舟艇、軽装甲車や重装甲車を使い、水陸両用攻撃で戦力を投入することが目的だ。エルドアンは、指揮統制、医療支援、人道支援など、アナドルが提供できる追加能力についても語った。


2023年4月10日、イスタンブールのトゥズラで開催されたTCG Anadolu。Photo by Ozan Guzelce/via Getty Images


エルドアンはまた、トルコが以前から構想していたコンセプトとして、各種武装ドローンを搭載・展開できるアナドルの能力も大きくアピールした。2015年の発注以来、アナドルは無人航空機の運用もできるユニークな多目的艦へと進化を遂げた。従来の有人回転翼機運用を超えて、戦闘用ドローンの軽空母として機能するはずだ。

 すべての能力がミックスされることで、同艦は非常に高い柔軟性を持つことになる。

 今年2月、アナドルの航空部門への移行を実現するため、ドローン運用をよりよくサポートするためインフラを小規模改修すると報告された。内容は、長距離接続用の衛星端末を備えたドローンコントロールステーションの導入、無人航空機の発進を助ける船首の「ローラーシステム」の設置、無人戦闘機(UCAV)の着陸を容易にするデッキのアレスティングギアシステムの追加、小型ドローン回収用の安全ネットの設置などだ。

 トルコ国防省発表の数値によると、アナドルは全長758フィート、幅約105フィート、排気量27,436トン。航続距離は9,000海里で、最大90日間、海上活動できる.。同省のプレスリリースによると、乗組員約400人に加え、一個大隊1,400人を運べる。

 搭載車両については、プレスリリースによると、「戦車13両、水陸両用襲撃車27両、装甲兵員輸送車6台、(各種)軽重装甲車33台の、トレーラー15台のが車両デッキで輸送できる」とある。また、アナドルはウェルドックに様々なタイプの上陸用舟艇を6隻まで搭載でき、前述の地上車両や兵員を展開する重要な役割を果たす。


式典後、TCG Anadoluの格納庫で見られる装甲水陸両用強襲車。クレジット:Photo by Serhat Cagdas/Anadolu Agency via Getty Images

アナドルの航空団に関する議論が最も注目されている。Daily Sabahの記事によると、58,600平方メートルの飛行甲板を持ち、 スキージャンプ形式で、中量輸送、突撃、または汎用ヘリコプター用の着陸地点6つと、大型輸送タイプ用に2つの追加スポットがある。


トルコの新旗艦の後姿。(tolgaozbekcom/ウィキコモンズ)


対応する回転翼機には、T129 ATAKやAH-1Wスーパーコブラ攻撃ヘリコプター、SH-60B対潜水艦戦ヘリコプターなどがある。AS532クーガー、S-70/UH-60ブラックホーク、CH-47Fチヌークで中・重戦術をサポートする。エルドアンは、固定翼のTAI Hürjet練習機/軽戦闘機も、アナドルで離着陸できるようになると付け加えた。この検討とシミュレーションもされているようですが、トルコ海軍が実現しようとしているコンセプトなのかどうかはわからない。とはいえ興味深い話であることは間違いない。


同省プレスリリースによると、アナドルは「航空機輸送能力の範囲内で、実施する作戦に応じ12機の有人・無人戦闘機、21種類のヘリコプター、UCAVを配備できる」という。

 現時点では、トルコのドローンメーカー、バイカルBaykarの折りたたみ翼TB3が、アナドルの主要武装ドローンとして期待されている。TB3は、同社の戦闘用ドローンTB2を海軍用に進化させたもので、ウクライナ紛争が続く中、人気が高まり、注目されている。TB3は、滑走路の短い空母や水陸両用攻撃艦の離着艦に特 化した設計だ。


 

TCG AnadoluのデッキでBayraktar TB3ドローンの後ろに立つトルコ政府関係者。クレジット:Photo by Murat Kula/Anadolu Agency via Getty Images


 バイカルは今年3月下旬にTB3の画像を初めて公開し、4月27日から5月1日にイスタンブールのアタテュルク空港で開催されるトルコのTEKNOFEST 2023で同機を正式発表する。TB3は今年中に飛行テストを開始する予定と同社は述べている。

 同社のジェットドローン「キジレルマKizilelma」も、同様に短距離離陸を想定しており、アナドル航空団の一部にするねらいがある。同機は昨年12月に初飛行したばかりで、開発は初期段階だが、同社は同機をトルコ初の戦闘UCAVと位置づけている。

同社によれば、キジレルマの飛行時間は5~6時間、戦闘半径は500海里、運用上限高度は35,000フィート、最大速度はマッハ1に近い。また、バイカルは、このドローンの最大離陸重量を13,228ポンド、積載重量を3,000ポンドと公表している。

 着艦にはアレスティングギアシステムが必要となり、発艦におそらく飛行甲板全体を使う高速ジェット機ドローンが加わると、甲板スペースが限られた同艦が、現実の状況下でどのように異機種を運用できるかは興味深いところだ。

 ただし、アナドルをドローン母艦にすることは、当初はF-35BやAV-8Bが重要な役割を果たすと想定されていたため、開発の主眼ではなっていなかった。2019年、トルコがロシア製S-400防空システムを購入したことを受け、米国はトルコをF-35プログラムから追い出した。トルコはすでにF-35プログラムに約14億ドル投資しており、トルコ企業数社がステルスジェット用の部品何百点も作っていた。

 トルコは、米海兵隊の余剰ハリアーの取得も議論していた。しかし、前進しているという話は聞いていない。ハリアーの中古品購入の可能性は別として、F-35計画から追放されたトルコは、新型艦に搭載する空母対応の短距離離陸・垂直着陸(STOVL)戦闘機F-35Bを持てなくなった。さらに、国産無人戦闘機の性能が急速に向上していることもあり、トルコは艦船の空白を埋めるために、最終的に自国の無人機産業に目を向けた。これら無人航空機は、米国やその他の外国の部品サプライヤーに依存することもない。


ヘリコプターやUCAVを搭載したTCGアナドルの飛行甲板。クレジット:Photo by Serhat Cagdas/Anadolu Agency via Getty Images


アナドルは、地域を超えグローバルに兵力投射する能力を高めるトルコの野望を強調している。今年2月にトルコを襲った大地震の後、アナドルが提供する人道的救済能力も期待される。

 アナドルがトルコ海軍に正式に加わった今、この艦が複数種類のドローン機に非常に大きく依存するマルチロール作戦コンセプトをどのように実現するのか、確かに興味深いところだ。世界各国の軍が無人航空機を作戦に組み込む動きを強める中、トルコが道を切り開くことになるかもしれない。特に、戦闘機のようなドローンを、有人機よりはるかに低いコストで効果を提供しながら運用することが実現できれば、なおさらだ。■


Turkey's 'Drone Carrier’ Amphibious Assault Ship Enters Service


BYEMMA HELFRICH|PUBLISHED APR 11, 2023 4:05 PM EDT

THE WAR ZONE