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2023年7月18日火曜日

「ライトニング空母」を単純に支持できない理由。大型空母との設計構造、運用構想の違いは歴然、とする米海軍協会論文をご紹介。

 ライトニング空母: F-35BライトニングII攻撃機を最大20機搭載するアメリカ級強襲揚陸艦は、人気のあるコンセプトだ。しかし、アメリカ級は大型空母より生存能力が低く、必要な兵器を格納するスペースもない


メリカ級水陸両用強襲揚陸艦が艦隊加わって以来、ライトニング空母または軽空母(CVL)として擁護する記事が数多く出た。実際、『Proceedings』誌に掲載された最近の記事では、アメリカ級は同規模の大戦中のエセックス級空母と同程度の生存能力があると主張し、第二次世界大戦で最悪の爆撃を生き延びたUSSフランクリン(CV-13)を引き合いに出し、2003年のイラク自由作戦に「ハリアー空母」として展開したUSSバターン(LHD-5)をそのコンセプトの証拠として提示している1。

 ただし、この考え方には問題がある。


生存性

米海軍の軍艦はすべて、最も過酷な任務を遂行するため設計されている。強襲揚陸艦の場合、水陸両用強襲を実施するために空母(レベルIII)よりも低い生存性レベル(レベルII)で建造される。


 強襲揚陸艦は、海兵隊のコンセプトである海上からの作戦行動と艦船から目的地への作戦行動を遂行するため設計・建造される。アメリカ級LHAと第二次世界大戦時の改良型エセックス級空母が同じような排水量だからといって、同程度に生存可能というわけではない。

 フランクリン(エセックス級空母)の損害報告書には、1945年3月19日に起きたことが書かれている:

九州と本州の日本列島の目標への空爆を実施中に、フランクリンの格納庫で2発の爆弾による爆発に襲われた。. . . 敵爆弾の爆発による直接的な被害は甚大だったが、その後の火災、爆弾やロケットの爆発、消火に使用された水による甚大な被害と比較すれば、些細に見える。大火災は、飛行甲板、格納庫甲板、ギャラリースペースで約10時間にわたり猛威を振るった。. . . 飛行甲板、格納庫、ギャラリースペースの大部分は大破した。高濃度の煙と熱によりエンジニアリング・スペースが避難を余儀なくされ、全電源が失われた。人的被害は甚大であった。. . . 主推進力は3月20日に回復し、船はウリチに向かい、そこからニューヨークの海軍工廠に向かった2。


さらにこう記している:

しかし、その結果生じた損傷は、それ自体で艦の喪失を招いたわけではないことが適切である。. . . これは主として、格納庫甲板の装甲部分の優れた遮蔽効果に起因する。


フランクリンが生存できたのはなぜか?


格納庫には空間を3分の1に分割する防火カーテンがあり、装甲甲板は全長の5分の4にわたって厚さ2.5インチの特殊処理鋼(STS)で作られていた。装甲甲板は、下部のすべての居住空間を保護し、特に第2甲板(ダメージ・コントロール・デッキ)に8つの修理ロッカーがあり、それぞれ消防士チームが配置されていた。

 魚雷側面保護システム(TSPS)は、空母の艦体を船外燃料タンクで包み、各小部分に空洞を設け、水中攻撃の衝撃を分散させることで重要な内部空間を保護した。TSPSの横隔壁は、重要な反復ブレースを提供した。曲げても壊れない設計の隔壁は、TSPSの4つの縦隔壁に溶接され、全長の3分の2にわたり艦側と平行に走り、発電所スペースと弾倉を取り囲んでいた。実際、三重底を含む構造のほとんどが溶接され、驚異的な強度を発揮した。

 また、艦内の低い位置に横隔壁を配置することで重心を下げ、艦内の高い位置にある分厚い装甲ハンガーデッキに対応していた。

 アメリカ級は、フライト0とフライトIの両方で、これらの構造上の特徴はなく、2020年のUSSボノム・リシャール(LHD-6)の火災は、甲板下の火災にいかに脆弱であるかを実証した。


サイズ

1980年の海軍シーシステムズ本部の調査によれば、アメリカ級の45,000トンの排水量は、世界で最も戦術的に重要な4海域で45%以上の時間、航空機を運用するには軽すぎる。図1は、軍事的に重要な5つの海域で、船舶から航空機を離陸させることができる時間をプロットした。南シナ海の緑色の "シーライン "に注目してほしい。このラインは、排水量65,000トン、航行可能時間54パーセントから始まっている。この緑色の線を排水量45,000トンまで延長すれば、航行可能時間は45%を大きく下回ることになる。実際、5海域のうち4つ(地中海を除く)では、海域線を排水量45,000トンまで延長すると、航空機の運航可能時間はすべて50%を下回ることになる3。


しかし、バターンがハリアー空母のコンセプトを証明したのではないだろうか?ただし、それはUSSキティホーク(CV-63)、コンステレーション(CV-64)、エイブラハム・リンカン(CVN-72)の航空機の傘の下で行われたのである。

 さらに、バターン揚陸準備集団は、弾薬艦から弾薬を受け取るため大胆だが独創的な解決策を即興で考案した。2004年のProceedings記事で説明されているように、シャトルシップであるUSSパールハーバー(LSD-52)が飛行甲板で兵器を受け取った後、ウェルデッキに移しエアクッションに積み込んだ。「ウェルデッキを通した搬入は飛行作戦に影響を与えないため、LCACによる兵器供給はハリアー空母に最大の作戦柔軟性をもたらした」4。

 バターンはアラビア湾の穏やかな海域で打撃任務を十分にこなし、半分以上の時間で航空機を運用できたが、海軍はウェルデッキを持たないアメリカ級のフライト0艦で「ライトニング空母のデモンストレーション」を続けている。アメリカ(LHA-6)とトリポリ(LHA-7)は垂直補給を行わなければならず、飛行作戦の妨げになる。

 また、アメリカ級がより多くの攻撃機を搭載すれば、兵器の供給量も増やさなければならない。なぜか?アメリカ大陸の兵器庫のサイズは、水陸両用強襲揚陸艦USSマキン・アイランド(LHD-8)の設計に基づく。一方、ジェラルド・R・フォード級やニミッツ級空母の弾薬倉は、2週間60機の打撃戦闘機を支援するため23倍以上も大きい。20機のF-35B戦闘機では、アメリカの兵器在庫はすぐに使い果たしてしまう: 余分な兵器はどこに収納するのか?格納庫や車両格納庫に収納すればまずい。格納スペースがない場合、垂直補給はどれくらいの頻度で行われるのか?それにどれくらいの時間がかかるのか?補給頻度を満たすだけの兵站補給艦はあるのか?


アメリカ級水陸両用強襲揚陸艦は、空母より低い生存性レベルで建造されており、後部が開いているため、砲火に脆弱である。また、ライトニング空母の実証実験は、十分な補給と安全な兵装の収納に取り組んでいない。世界のほとんどの海で、アメリカ級は信頼でき生存可能な攻撃プラットフォームとみなされる水準に達していない。■


The Lightning Carrier Isn’t Either | Proceedings

By Captain Talbot Manvel, U.S. Navy (Retired)

July 2023 Proceedings Vol. 149/7/1,445



1. CAPT Pete Pagano, USN (Ret.), “The CVL’s Time Has Come,” U.S. Naval Institute Proceedings 147, no. 9 (September 2021).

2. “USS Franklin (CV-13) War Damage Report No. 56, 16 September 1946,” Naval History and Heritage Command.

3. Edward N. Comstock, Susan L. Bales, and Dana M. Gentile, “Seakeeping Performance Comparison of Air Capable Ships,” Naval Engineers Journal 94, no. 2 (April 1982): 101.

4. LCDR Cindy Rodriguez, USN, Maj Michael Manzer Jr, USMC, and CDRs Shawn Lobree and John Dachos, USN, “Harrier Carriers Perform in Iraqi Freedom,” U.S. Naval Institute Proceedings 130, no. 2 (February 2004).


2020年3月10日火曜日

フォード級の後の米空母像を探る検討作業が始まった---超大型原子力空母か通常型軽空母か

軍は超大型原子力空母の次の姿を調査研究二案件で模索している。
 ともにさらに大型の原子力空母を求める声で共通している。だがペンタゴンがこれまでの流れを否定し、通常型で小型の「軽空母」へ向かう可能性もある。
2020年初頭に海軍は航空母艦の要求性能について正式検討を開始し、フォード級超大型空母5隻の後継艦の姿を模索しはじめた。フォードは就役ずみで、第五号最終建造艦の就役は2032年ごろになる。
これが「次世代空母2030タスクフォース」による検討で、これとつながるのが国防長官官房が行っている空母検討作業で、2020年夏にまとまる。海軍が内部検討結果を公表するかは不明だ。
双方の作業から海軍の長期建造計画、議会による歳出へ提言が行われ、今後の軍事力構造が形成される。
海軍の予算環境に不確実性が増しており、直近でも艦艇建造計画の最新版の発表を遅らせざるをえなかったほどだ。 
海軍の選択肢としては①単価130億ドルでフォード級建造を継続する ②新型艦を開発し、単価40億ドルとする ③アメリカ級強襲揚陸艦を追加建造し軽空母として配備する、の三つと言ってよい。
現有の超大型空母11隻で退役艦が発生しても後継艦建造しない選択肢もあるが、この可能性は最も低い。議会から空母12隻体制の堅持を求めらており、海軍は11隻運用での猶予を何度も要請している。
予算が伸び悩んでいるのも検討に影響を与えそうだ。現在の艦艇数294隻を2030年代のうちに355隻に拡大する構想に海軍が後ろ向きなのも当然と言える。
海軍上層部は艦隊規模拡大に巨額予算が必要なこと、無人艦艇技術が進展してることを指摘している。海軍の試算では有人艦艇60隻を追加すると2049年まで毎年250億ドルが必要となる。この金額は海軍のこれまでの支出規模のほぼ二倍に相当する。
小型無人艦艇は有人艦艇より安価だが現状の枠組みでは無人艦は「戦闘部隊」艦艇に計上できない。
「355隻体制が実現できるか。現状の財政状況から見れば305から310隻しか適正に人員配備、装備搭載、保守管理し、稼働させられない」とロバート・バーク大将(海軍作戦副部長)が2019年10月に述べていた。
予算面で悲観的な見方が続き、海軍の2021年度予算要求では戦闘艦艇建造は8隻予定と、これまでより減っている。
だが海軍長官代行トーマス・モドリーは小型有人無人艦艇を急いで調達し艦隊規模は435隻に拡大できると主張しており、さらに想定予算内で実現都まで言い切っている。モドリーの大胆な構想がいつ消えてもおかしくない。本人は代行で上院が次期長官を正式承認すれば退くからだ。
結果として海軍の第一線艦艇はより現実的に355隻未満となる可能性が高い。問題はこの中に空母が何隻となり、その戦力はどうなるかだ。
2065年ごろにニミッツ級、フォード級あわせて12隻を運用するためにはフォード級建造は10隻以上が必要というのが現在の計画だ。
ここに疑問をぶつけるのがマーク・エスパー国防長官だ。「ゼロか12隻かと二者択一議論になっている。まず、本当にそうだろうか。空母は極めて重要だ。米国の国力を示威する手段だ。抑止効果も高い。大きな戦力となる」
エスパー長官が言おうとしているのは、戦力編成に小型軽空母を加えることだ。海軍にはワスプ級、アメリカ級の強襲揚陸艦10隻があり、F-35Bを搭載し軽空母として機能している。
軽空母は確かに安価だが超大型空母の戦力には及ばない。小型空母で搭載できるF-35は多くても20機だろう。これに対して超大型空母では軽く40機搭載できる。
軽空母で一日に実施可能なソーティーは40どまりと海兵隊が試算している。新型フォード級超大型空母では160となる。.
原子力推進超大型空母なら通常型強襲揚陸艦で不可能な長期間運用が可能だし、電子戦機材や給油機も運用できるが、軽空母では大型機は搭載できない。
そうなると解決策として超大型空母は微減とし、強襲揚陸艦の建造を増やし、軽空母としてF-35搭載数を増やしながら運用する選択肢が浮上する。
「強襲揚陸艦で正規空母のかわりにならないが、工夫して補完的に使える」と海兵隊はまとめている。■

この記事は以下を再構成したものです

What Comes After the Nuclear-Powered Aircraft Carrier?

by David Axe 
March 7, 2020  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: F-35Aircraft CarrierMilitaryTechnologyWorld