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2025年11月14日金曜日

ドイツ向けP-8Aポセイドン初号機がベルリンに到着(The Aviationist) ―NATOでは装備、基地も含めた多国籍共同安全保障が当たり前になっていますね。各国共通してロシア潜水艦への睨みを利かすことになるのでしょう

 

ドイツ向けP-8Aポセイドン初号機がベルリンに到着(The Aviationist) ―

First German P-8 in Berlin

ドイツ海軍(Deutsche Marine)初のP-8Aポセイドン海上哨戒・対潜戦機が2025年11月7日、ベルリン・ブランデンブルク空港に着陸した(画像提供:ドイツ連邦軍)

P-8AポセイドンはP-3Cオライオン上回る能力を有し、ドイツがNATO任務で英国やノルウェーと相互運用性を高めることを可能にする。

ドイツが導入するP-8Aポセイドン海上哨戒・対潜戦機8機の最初の機体が、2025年11月7日にベルリン・ブランデンブルク空港に着陸した。機体番号63+01は、11月7日朝にシアトルのキング郡国際空港(通称ボーイング・フィールド)を出発し、米国本土から大西洋を横断して飛行した。

フライト追跡サイトItalimilradarや他のプロフィールによれば、アイスランドのケフラヴィーク空港で途中着陸し、コールサイン「GNY4567」で飛行した。ドイツ連邦軍(Bundeswehr)のプレスリリースでは、ドイツ海軍第3航空団「グラフ・ツェッペリン」所属のドイツ人乗組員が米国から同機を操縦したと付け加えている。

残る7機は2029年までに納入される。NATO内のドイツ公式プロフィールには、ボリス・ピストリウス国防相とドイツ海軍副司令官アクセル・デーツ中将が迎えたP-8A到着時の画像が掲載された。

在米ドイツ大使館によれば、P-8Aのドイツ乗組員・当局者への正式な引き渡し式典は10月2日、シアトルのボーイング・フィールドで行われた。ベルリン到着について「Germany at NATO」は「ドイツの海上偵察能力近代化と海軍の作戦準備態勢強化で画期的な出来事」と評した。

ピストリアス大臣は投稿で「北極圏における抑止力へのドイツの貢献は、この航空機に大きく依存する」と述べた。さらに「ポセイドンにより、ドイツは同盟国との共同訓練、整備、データ統合を通じて、NATO内での相互運用性を強化する」と付け加えた。

ドイツのP-8Aポセイドン

同国は8機のポセイドンを発注しており、ドイツの予算要求やKurs Marine 2025などの最新の海軍構想文書から、ベルリンがさらに4機の導入に関心を持っていることが明らかになっている。これにより、北大西洋、バルト海、ハイノースにおける海上哨戒や対潜水艦戦任務など、同盟国である米国、ノルウェー、英国との協力によるNATO内での強化された任務への対応が可能となる。

P-8Aポセイドンは、2020年6月に近代化計画を完了した旧式機P-3Cオライオンの後継機となる。同機は北東岸近くのノルトホルツにある海軍航空団第3航空団「グラフ・ツェッペリン」に引き渡される。

2023年9月、ドイツは保有するP-3C CUP(能力向上プログラム)オライオン6機を4850万ドルでポルトガルに売却することを承認した。リスボンは2024年2月9日に受領した。報道によれば、ドイツはポセイドンが到着するまで少なくとも2機のP-3Cオライオンを運用状態に維持していた。

ロスシーマス空軍基地も2025年9月16日、退役前の最後の訪問となったドイツのP-3Cオライオン1機の画像を共有した。基地は投稿でこう記している。「本日、退役前の最後の訪問としてロスシーマス空軍基地に立ち寄ったドイツのP-3Cオリオンに、Auf Wiedersehen(また会おう)と手を振った。将来、同盟国が新型P-8機でロスシーに再び訪れる日を楽しみにしている!」

能力の飛躍的向上

ドイツ連邦軍(Bundeswehr)は以前、フロリダ州ジャクソンビル海軍航空基地(NAS Jacksonville)における米海軍VP-8(第8哨戒飛行隊)との共同訓練をプレスリリースで言及していた。その際、P-8AがP-3Cオライオンと比較して、対潜水艦探知、偵察、データ処理、ネットワーク能力において飛躍的な向上をもたらすことを説明していた。

ボーイング737を基に開発されたP-8Aは、レイセオン社製AN/APY-10多目標表面レーダー、AN/APS-128合成開口レーダー、AN/ALR-73受動探知システムを搭載している。機体側面のAN/ALQ-240(V)1 ESM(電子支援措置)アレイは、基本的なELINT/EW(電子情報/電子戦)能力を提供する。

P-8はMk-50魚雷、Mk-57およびMk-101対潜爆雷、Mk-55およびMk-56機雷、AGM-84ハープーンミサイルを装備可能である。

ディーツ海軍中将は新型機の納入を「海軍航空隊員にとって偉大な日だ」と称した。さらに「約20年ぶりに、海軍はP-8Aポセイドンで再びジェット推進航空機を受け取る」と強調した。

ドイツ連邦軍は、P-8Aが米国製魚雷と対潜爆雷を装備し、「後日」対艦ミサイルも装備すると説明した。これにはAGM-84ハープンや、AGM-158C LRASM(長距離対艦ミサイル)が含まれる可能性がある。ドイツのポセイドンは「中期的には」英製スティングレイ魚雷を使用する。

NATO・大西洋における役割と相互運用性

在米ドイツ大使館は、P-8A到着に際してベルリンで行われたピストリウス演説の動画も公開した。その中で大臣は「ロシアの原子力潜水艦」の追跡を同機の主要任務と明言している。「重要なのは、彼らがどこにいて何をしているかだ。P-8ポセイドンならそれが可能だ。8機配備すれば、国と連合地域の安全保障が強化される」とピストリウスは述べた。

さらに「ノルウェー、カナダ、米国、英国との相互運用性」を強調し、乗組員・兵站・整備の混成運用と最新データ・情報共有が可能だと説明した。ボーイング、P-8Aがドイツの「海上監視能力と対潜戦能力を強化する」と述べた。これにより「ドイツ海軍は北極圏とバルト海での哨戒能力を高め、国家及び同盟国の利益を守り、NATOパートナーと共同作戦を展開できる」という。

DWは2025年5月16日の報道で、ドイツと英国が北海及び北大西洋における対潜戦(ASW)と海上偵察の共同作戦を将来計画していると伝えた。「ドイツのP-8Aポセイドン海上哨戒機はスコットランドから展開される。英国は既に運用中であり、ドイツの乗組員は現地で訓練可能だ」と報道は述べた。

同機は戦略的なNATO海域、補給・海上重要インフラ区域(グリーンランド-英国-アイスランド間のG-I-UKギャップを含む)ならびに北海・バルト海に展開される。Hartpunktによれば、連邦装備・情報技術・運用支援庁(BAAINBw)は現在、最終品質検査と受入試験を実施中であり、その後ドイツ海軍第3航空団へ正式引き渡される予定だ。

海軍監察官のヤン・クリスティアン・カック中将は「P-8Aポセイドンの納入により、ドイツ海軍は新たな『空の守護者』を獲得した。航空部隊近代化におけるこの決定的な一歩は、新型兵器システムの航続距離、センサー性能、作戦持続時間における飛躍的向上に基づくものであり、海軍の戦略的方向性に完全に合致している」と述べた。

Der Spiegelはまた、ドイツが共同訓練・運用可能なパートナー国としてオーストラリアを挙げ、「これにより海軍航空部隊の効率性と作戦準備態勢が大幅に向上する」と報じた。■

パース・サタム

パース・サタムのキャリアは、二つの日刊紙と二つの防衛専門誌で15年に及ぶ。彼は戦争という人間の活動には、どのミサイルやジェット機が最速かといった次元を超えた原因と結果があると信じている。そのため、外交政策、経済、技術、社会、歴史との交差点で軍事問題を分析することを好む。彼の著作は防衛航空宇宙、戦術、軍事教義と理論、人事問題、西アジア・ユーラシア情勢、エナジー分野、宇宙開発に至るまで幅広い。


Germany’s First P-8A Poseidon Lands in Berlin

Published on: November 8, 2025 at 7:57 PM


 Parth Satam

https://theaviationist.com/2025/11/08/germany-first-p-8a-poseidon-lands-in-berlin/


2023年2月26日日曜日

米海軍戦闘機が対潜任務に投入される? 深刻なASW能力低下に対する解決策になるのか。前例が存在していたとはいえ、必要なのはASW専用機材ではないのか。

 

U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist Seaman Jonathan Berlier

冷戦時代の潜水艦ハンターが、海軍戦闘機で海中脅威に対抗した思いもよらない取り組みを語っている

ントロールできなくても、単にコントロール不能になったにせよ、直面する問題の解決では、かつて存在した選択肢を思い出させてくれる。今日、米海軍の対潜水艦戦(ASW)に疑問符がつき、コントロールできなくなくなってきた事情から、米海兵隊と海軍が、1970年代初頭の選択肢、戦術ジェット機を潜水艦狩りに転用することを呼びかけている。

筆者はThe War Zoneに寄稿した、ソノブイを投下して音響データを中継し対潜活動を支援する海軍の戦術機(TACAIR)の実験的使用について調べる際、F-35やF/A-18にそれをさせるべしとの声が上がるとは思いもよらなかった。しかし、それはまさに米海兵隊のウォーカー・ミルズ大尉と米海軍のコリン・フォックス、ディラン・フィリップス=レバイン、トレバー・フィリップス=レバイン両中佐が、米海軍協会『Proceedings』2021年10月号掲載の論文「ASWに新たな技術を活用せよ」で提案していることなのだ。

冷戦時代の艦載対潜機

1960年代半ば、老朽化し、扱いにくく、ピストンエンジンのS-2トラッカーは、ソ連海軍の原子力攻撃型潜水艦(SSN)や各種対艦巡航ミサイル(ASCM)搭載潜水艦(SSG/SSGN)についていけなくなった。しかし、トラッカー後継機が空母艦隊に加わり始めたのは1974年だった。ツインターボファンのS-3バイキングは、より速い速度、より長い航続距離と滞空時間、高度な音響プロセッサ、より多くのソノブイを搭載し、あらゆる潜水艦の脅威をはるかに効果的に捜索、位置確認、追跡できた。

ASWで一つの時代の終わりと、次の時代が始まった。S-2トラッカーと後継機のS-3A。 U.S. Navy

海軍は空母戦闘群(CVBG)のASW能力強化で応急処置として、TACAIRの使用を決定した。投下されたソノブイが発する音響データを別ポッドで中継し、空母や他のASW能力保有艦に解析させることも可能だった。もちろん、A-7コルセアIIやA-6イントルーダーは、潜望鏡深度や水面に潜水艦が姿を現せば、弾薬を大量投下することも可能だった。

しかし、今日、残念ながら、同じ能力を有する機材はない。P-8ポセイドンやMH-60Rシーホーク・ヘリコプターを補完し緩和できる奇跡などない。

え、F-35とホーネットをASWに投入するの

「海軍は、中国のステルスで強力な長距離脅威から防衛するため、新しく革新的な対潜水艦戦プラットフォームを必要としている」と、Proceedings論文の共著者は主張している。バイキングのような航空機が海軍にないことを知っているので、50年前に戻り、ASWミッションにTACAIRを使用する概念を復活させるよう海軍に推奨している。高速移動可能な航空機は、空母打撃群(CSG)と遠征打撃群(ESG)の脆弱な中・外郭防御域をカバーできる。

TACAIRクルーがブイ投下や中継任務でASWの暗黒技術に手を染めていた以前とは異なり、共著者は一歩踏み込んだ提案をしている。

「ASW設定のF/A-18やF-35は、退役ずみS-3バイキングの役割を担い、有機的で高速かつ長距離のASWを空母航空団に復活できる。空中ASW パトロールは、IRST(赤外線捜索・追跡)で標的の位置を正確に把握し、空対空ミサイルで飛来するミサイルを撃退しつつ、標的地域に迅速移動し緊急攻撃を行い、後続部隊用に各種センサーを展開できる。海軍は、S-3B後継機を新しい機体で再登場させるのではなく、F/A-18とF-35を使用して、より高性能なセンサー、無人技術(ウイングマンとしてのMQ-25を含む)、および遠方の潜水艦を攻撃する新兵器を活用すべきなのである。しかし、S-3のような長い滞空時間がないため、新しい作戦コンセプトを可能にするためには、長時間移動センサーと水平線超え中継で新しいツールキットが必要になろう」。

試験中のスーパーホーネットのセンターラインタンクに組み込まれたIRST21ポッド。米海軍. U.S. Navy

2021年8月、E-2DホークアイによるMQ-25スティングレイの空中給油能力の評価。 Boeing

戦時・平時を問わず、ASWの多くで対潜水艦部隊が潜水艦の存在を最初に知るのは、守るべき輸送船団や高価値部隊が魚雷(または迷惑な緑の照明弾)で攻撃された時点の「火炎放射器」方式で実施されてきた。

論文の共著者が提案するのは、TACAIRを使用しASCM発射を探知し、それを撃破し、その後、発射した潜水艦を追撃するという驚くべきものである。

海戦におけるミサイルの黎明期以来、ずっと待ちのゲームだった。ミサイルがレーダー探知範囲に入るのを待ち、失敗の余地が許されない非常に危険な距離で、ミサイルを破壊する。さらに、ミサイルを発射する前の潜水艦の位置をASWが特定していないと、戦争の霧と混乱の中で、重要なASWプラットフォームが損傷または破壊されると、攻撃目標を発見し報復する機会が急速に、または完全に減少するのは確実だった。


環太平洋演習(RIMPAC)の実弾射撃で、退役した元USSダーラム(LKA-114)を撃沈した 2020年8月 U.S. Navy

海軍のASW能力を強化するアイデアはどんなものでも今日の海軍の怠慢な状況のため、真剣に受け止められなければならない。MH-60Rが、CSG と ESG で対潜水艦の唯一の戦力であることを忘れてはならない。皮肉なことに、当時のS-2トラッカー同様に、シーホークも「潜水艦が発射するASCMから艦隊を守るためには、航続距離、速度、積載量が不足している」と共著者は述べている。ASWの守備範囲内のどこかにいる潜水艦を見つけ、位置を特定し、そして殺すことは、全員の努力が必要だ。

バハマの大西洋海底試験評価センターで撮影されたディッピングソナー搭載のMH-60Rシーホーク。2005年2月、U.S. Navy

 脅威対象の潜水艦を沈め、殺傷し、抑止することに関しては、1960年代の無人ヘリコプターQH-50Cドローン対潜ヘリコプター(DASH)が探知した潜水艦に軽量のASW魚雷を投下できたのなら、今日のF/A-18やF-35がMk54魚雷、特に高高度対潜水艦戦兵器能力(HAAWC)を搭載できないわけがないのである。超軽量魚雷(VLT)であれば、戦闘機でも数本搭載可能だ。フォークランド紛争が21世紀の米海軍に何らかの教訓を与えるとすれば、それは次の海戦でASW兵器がどれだけの使えるかであろう。

 Proceedings記事が掲載されると、ソーシャル・メディアの「海軍関係者」からの批判に気づいた。しかし、コルセアIIからソノブイを投下したA-7パイロットが、ASW任務のためのTACAIRの現代的な使用を支持しているのを見て、筆者は嬉しい驚きを覚えた。

ズニロケットポッドでソノブイを発射していた

海軍歴30年、海軍大学校(NWC)名誉教授のロバート・"バーニー"・ルーベル退役大佐は、USSインディペンデンス(CVA-62)からA-7を飛ばした経験をもつ。Proceedings記事について、こう書いている。

「USSインディペンデンスは、75-76クルーズでCVAとして展開した...ズニポッドを改造し、ソノブイを後部から飛び出させ(ポッドあたり8個)、ドロップタンクに無線リレーを装備する改造をした。リレーポッドをタンカーに搭載し、ソノブイポッドをSSSC(Surface, Subsurface, Surveillance, and Control missions)を行うA-6とA-7に搭載した」。

ズニポッドを搭載したA-7コルセアII。 Courtesy of the A-7 Corsair II Association

筆者の調査では、TACAIRによるASW実験に使用された空母はUSSサラトガ(CV-60)だけであった。

興味深いのは、S-3が供用開始した後も、ソノブイ投下にA-7やA-6を使う選択肢があったことだ。ルーベル大佐は著者のメール問い合わせに対し親切にプロセスを詳しく教えてくれた。

「ブイに関しては、ウェポンテーションとマスターアームを選択し、ピックルスイッチを押して、ズニポッド後部から2つ放出させるだけでした。ASWモジュール担当者がブイの設置方法を指示し、私たちは慣性航法システムを使い指定場所にブイを設置した。ASW任務では、通常ポッド2つに合計16個のブイを搭載していました」。

TACAIRのパイロットは、実際にソ連潜水艦の捜索に参加した。地中海のイオニア海で、NATO演習を盗み見ようとしたジュリエット級SSGが発見されたことを、ルベルは説明してくれた。コルセアIIとイントルーダーは、ブイ投下任務をこなし、見事に同潜水艦を 「追い払った」。

ミサイルランチャーの1つを上げた状態で航行中のソビエトのジュリエット級巡航ミサイル潜水艦 DVIDS and NARA

ASWの地味な性質を知る筆者は、ルーベル大佐に、彼と仲間のA-7パイロットがこの種の任務についてどう感じていたのか尋ねた。「文句を言う者は一人もいなかった。私たちは通常、E-2(ホークアイ)が見つけた遠方のレーダーコンタクトを確認するため、SSSC任務にあたっていた」。

TACAIRパイロットがSSSCとASWの任務をなぜ平気でできていたのか、ルーベル大佐の指摘は刺激的だ。「73年末にソ連のメッド・エスカドラと遭遇し、我々には海上戦が全てであり、ASWはまさにうってつけだった」。大佐はNWCの記事 "The Tale of Two Fleets" に詳しく書かれている、ヨム・キプール戦争中の米第六艦隊とソ連海軍地中海戦隊(エスカドラ)のにらみ合いを指していた。

そして、驚きの連続であった。TWZのコメンテーターの一人である「N-Drive」は、AV-8ハリアーもソノブイポッドで武装していたと指摘してくれた。

ハリアーのパイロットでもできる

米海兵隊がAV-8A(英国製ハリアーの米国版)の運用を開始したのは、海軍が制海権艦(SCS)建造を本格検討していた時期だ。SCSコンセプトは、輸送船団や補給艦、水陸両用軍団など重要部隊を航空およびASWで支援する護衛艦となる小型甲板の空母だった。ハリアーは主に攻撃と防空に使用され、ASW任務にあたるSH-3シーキングを保護・支援するとされた。

1974年の地中海派遣で、暫定的にSCSとして活動していたUSSグアム(LPH-9)に搭乗していたマイケル・スミアレック中佐が書いた論文には、小型空母がジブラルタル海峡の内側にソノブイ・バリアを展開する任務が与えられたと書かれている。同海峡は、潜水艦にとって悪名高いチョークポイントであった。ソノブイ敷設は、ソ連SSNが到着するのを見越してのことだった。「ソノブイの大部分はSH-3Gヘリコプターや時にはハリアーから様々なパターンで投下された」。VMA-513 "Flying Nightmares" はHS-15の "Red Lions" からシーキングと一緒に飛んでいた海兵隊分遣隊だった。

1972年1月、アメリカ海軍の水陸両用強襲揚陸艦USSグアム(LPH-9)に搭載されたVMA-531のAV-8AハリアーとHS-15のSH-3Aシーキング。 U.S. Navy

USSグアムは、最高速度23ノットと比較的遅い水陸両用空母であった。ソ連のSSNはもっと速く、同艦を簡単に追い越すことができた。追跡中の潜水艦が空母やSH-3の有効射程から離れ始めると、「...ハリアーを出撃させグアムから50~100マイル離れた潜水艦が向かったと思われる方向にソノブイを投下していたかもしれない」という。

海兵隊にとってASWは、前例のない任務ではない。第二次世界大戦中、海兵隊がカリブ海と太平洋でドイツと日本の潜水艦を相手に対潜哨戒を行ったのを覚えている人は少ないだろう。21世紀に海兵隊が行う任務が騒がれる中、MV-22オスプレイやヘリコプターが、潜水艦を倒す海軍を支援するためブイ投下することが増えている。USSグアムからのハリアー作戦と同様に、F-35BがASW活動を支援するのは非常に興味深い。

2021年7月、カリフォルニア州サンクレメンテで行われたサマーフューリー21演習で、米海軍の潜水艦の上を飛ぶ第3海兵航空団第16海兵航空機群、海兵軽攻撃ヘリコプター隊267の米海兵隊AH-1ZヘリコプターとUH-1Yヘリコプター。U.S. Marine Corps

UH-1Yもこの能力を実験しており、ESGに搭載する際や遠征前進基地作戦(EABO)で付加価値を生む可能性がある。UH-1Yの攻撃型AH-1Zも、対潜水艦キルチェーンのキネティックエンドで潜在的な役割を果たす可能性がある。新しい対艦作戦のコンセプトと、リンク16データリンク機能を含むアップグレードで、UH-1Yと並ぶユニークなポジションを得られる。海軍の無人機MQ-8ファイアースカウトも、ASW任務を担うことができるプラットフォームだ。しかし、各機はヘリコプターで、固定翼対潜機の速度と範囲に劣る。

Q-9リーパーファミリーは、ソノブイを投下しデータを信頼する能力も開発した。リーパーは空母搭載機ではないが、この点でも役立つ可能性があり、空母搭載コンセプトが描かれているようだ。

米海軍は問題を抱えたままだ

将軍と同様、提督は常に最後の戦争で次の戦闘に備える。過去 30 年間に ASW 能力を衰退させただけでなく、来るべき海中戦に備えることなく、数十年を無駄に 過ごしてきた。したがって、ソ連海軍と戦うため設計されたプラットフォームやコンセプトで仕事をせざるを得ない若い士官が、1971年当時で革新的だったアイデアを再検討しなければならないとしても、驚くにはあたらない。

残念ながら、共著者が主張するように、ASW設定のF-35やF/A-18が「S-3バイキングの役割を担う」という考えには根拠がない。対潜水艦戦の複雑性のため、中・外側のASWゾーンをカバーする航続距離、耐久力、センサー・武器搭載量を備えた空母ベースの専用固定翼機が必要だ。F/A-18、F-35B/C、MQ-25は、これにあたらない。

現実には、空母搭載TACAIRには、ASWよりもはるかに重要な任務がある。中国海軍の台頭、新型のディーゼル電気潜水艦の普及、そして復活したロシア海軍の挑戦を前に、米海軍はS-3Bバイキングの後継機に焦点を当てるべきであったのだ。CMV-22 オスプレイや改良型 E-2Dは、CSG で最適なプラットフォームが設計・開発されるまでの暫定的なオプションとして使用できるだろう。

当面はASWの負担を想像的、効果的、現実的な方法で艦隊全体に分散させる方法を検討し、手遅れになる前に達成しなければならない。したがって、この二機種の戦闘機が、CSG/ESGの対潜任務で重要な一部となるはずだ。■


Reviving The Use Of Navy Tactical Jets As Submarine-Hunters

BYKEVIN NOONAN|PUBLISHED FEB 23, 2023 4:14 PM

THE WAR ZONE

Kevin Noonan served in the US Navy from 1984–94 as a sensor operator (SENSO), briefly, in the P-3B Orion with VP-94 and for the remainder of his service as a SENSO in the S-3A/B with VS-41, VS-24, and VS-27.


2022年11月27日日曜日

HAAWC:主翼を付けた魚雷でP-8は高高度からの対潜戦が可能となった。

Navy P-8 Poseidon Can Now Drop Winged Torpedoes In Combat

Boeing

 

 

新型主翼キットで、高高度飛行中のP-8AがMk54魚雷をスタンドオフ距離から発射できるようになった 

 

 

海軍のP-8Aポセイドン哨戒機に、高高度対潜水艦戦兵器能力(HAAWC)という新兵器が搭載された。HAAWCは、空中投下式のMk54軽量対潜魚雷を長距離・短距離のスタンドオフ兵器に変え、このたび初期運用能力(IOC)を獲得した。

 HAAWCの製造元ボーイングは、プレスリリースで、海軍がこのシステムのIOCを宣言したと発表した。海軍は8月にボーイングにHAAWCキットの本格生産契約を発注し、すべてのオプションが行使されると総額は最大で約121百万ドルとなる。

 

HAAWC搭載のMk54魚雷の想像図。. Boeing

 

 

ボーイングのHAAWCプログラム・マネージャー、Dewayne Donleyは、「初期運用能力のマイルストーンは、海軍と国際パートナーにHAWCを導入する準備ができていることを示します」と声明で述べた。「長距離から高高度からの発射により、柔軟性と能力を向上できることに興奮しています」。

 HAAWCは、ボーイングがALA(Air Launch Accessory)と呼ぶ、Mk54軽量魚雷用の主翼キットで構成されてる。発射後、2枚の翼が展開し、GPSを利用した誘導システムで、指定した目標地点まで滑空する。(GPSが使えない環境でも慣性航法のみで運用可能)。目標地点に到達後、ALAは魚雷を放出し、尾部パラシュートで降下を減速し、着水時の損傷を防ぎ、水中落下させる。

 

HAAWCがどのように採用されているかを示した図. Boeing

 

 

翼はボーイングのAGM-84H/Kスタンドオフ陸上攻撃ミサイル(SLAM-ER)巡航ミサイルを、誘導パッケージは統合直接攻撃弾(JDAM)精密誘導爆弾をベースとしている。

 HAAWCを搭載したMk54の正確な最大射程は不明。過去に海軍は、少なくとも20マイルのスタンドオフレンジを望んでいると述べた。ボーイングは、500ポンドクラスのJDAM爆弾用に開発した翼キットにより、最大40マイル離れた目標まで滑空できると発表していた。もちろん、この射程距離は、投下する航空機の速度や高度に大きく依存する。

 HAAWCキットにはデータリンクも含まれ、飛行中に再ターゲッティングできる。これは、一般的にシステムの柔軟性を高める貴重な機能だが、海中の脅威の検出と追跡には固有の複雑さがあるため、対潜水艦戦では特に有用だ。翼つき魚雷が目標海域に向かう間に、通信が途絶しても、別の方向で通信を再取得したり、同海域に別の脅威が突然出現し優先されたりする可能性は、非常に現実的だ。また、魚雷が目標地点に向かう間、コース修正できれば、魚雷の精度がが上がる。

 

HAAWC搭載のMk54魚雷がどのように狙われ、その後再狙撃されるか(あるいは作戦を完全に中止する決定がなされた場合、目標地域から完全に振り落とされるか)を、非常に基本的なレベルで示した図Public Domain

 

また、対潜魚雷の空中投下は、通常、水面から100フィート程度の低高度で、目標に比較的接近し行っている。HAAWCでP-8A乗組員は長距離からMk 54魚雷を使用でき、地域の敵防空網への潜在的な脆弱性を軽減する。例えば、将来、太平洋で中国とハイエンド紛争が発生した場合、本土から離れた場所でも、防空能力の高い最新の軍艦や人工島のネットワークに設置された地対空ミサイルなど、各種接近阻止エリア拒否能力が潜水艦ハンターの課題を与えるになる可能性がある。

 また、飛行計画から大きく外れる必要がないため、水面捜索レーダーや情報収集など、他の任務も同時にこなせる可能性がある。

 これらから、P-8Aがより広い作戦区域で対潜水艦戦のの魚雷「トラック」としての役割を果たす可能性があることを意味している。この役割では、実際の目標に近い他の飛行機、ヘリコプター、艦艇(無人飛行機や水上艦を含む)が追跡する複数場所での脅威に対して、HAWCを搭載したMk54を発射できる。戦闘機含む他の航空機は、機外の照準データを使い、同様に分散した方法でこれらの兵器を使用できる可能性がある。

 ただし、HAAWCが本当にその可能性を最大限に発揮できるかについて疑問の声もある。

 「海軍は、一定の高度以下での性能制限のため、HAWC放出を一時的な閾値(高度)に制限し、HAWCの最低高度要件での評価を妨げた」。と2021会計年度のプロジェクト作業を網羅したペンタゴン試験評価局長室(DOT&E)の年次報告書にある。

 それでも、「海軍は意図された放出高度の全範囲からHAWCを採用することはできないものの、利用可能な放出高度の範囲は、運用能力の向上を提供する」と報告書は強調している。

 「全天候型HAAWC は、ボーイング P-8A ポセイドンの巡航高度付近またはそれ以下で MK 54 魚雷を運用することを可能にする」とボーイングのプレスリリースは述べている。P-8Aの絶対最大高度は41,000フィートだが、巡航高度は約33,000フィートに近いという。

 

 

標準的なMk54魚雷を投下する海軍のP-8A。

米海軍

 

この情報は、IOC宣言された現在でも正確であり、HAAWCに関する現在の制限を反映しているのかとの質問に対し、ボーイング広報は海軍に判断を委ねた。The War Zoneは、プログラムを管理するNaval Sea Systems Command(NAVSEA)にも追加情報を求めている。

 海軍はすでに、開発中の改良型Mk 54 Mod 1魚雷をこのキットに組み合わせることで、HAAWCの能力が拡大すると期待している。DOT&Eによると、Mk 54のMod 1バージョンは、「海中環境内で標的をより明確に把握する」アップグレードされたソナーアレイとサポートソフトウェアを備えている。

 しかし、HAWCキットは、現在開発中の、より大型で高性能なMk 54 Mod 2や、水上艦のMk 41垂直発射システム(VLS)から発射可能な垂直発射対潜ロケット(VL-ARSOCまたはVLA)システムと併用するMk 54と互換性がない。

 いずれにせよ、P-8Aは、少なくとも巡航高度付近でHAAWC搭載のMk54魚雷を使用できるようになり、対潜戦能力と総合的な生存能力が大幅に向上した。■

 

Navy P-8 Poseidon Can Now Drop Winged Torpedoes In Combat

BYJOSEPH TREVITHICK|PUBLISHED NOV 22, 2022 1:52 PM

THE WAR ZONE

2022年8月23日火曜日

ボーイングが新型対潜兵器HAAWCの量産契約を米海軍から交付

HAAWC High Altitude Anti-Submarine Warfare Weapon Capability. Boeing image.

米海軍が高高度対潜水艦戦用兵器(HAAWC)の量産契約をボーイングに交付した。 

以下ボーイング社プレスリリースより。

米海軍は、ボーイングに対し、高高度対潜水艦兵器能力High Altitude Anti-Submarine Warfare Weapon Capability(HAAWC)の量産契約を締結し、数ヶ月以内に作業を開始する予定を明らかにした。

HAAWCは、ボーイングP-8Aポセイドンの巡航高度以下でもMK54魚雷の発射を可能にする全天候型アドオンキットだ。

契約には、海軍と海外顧客向けに、HAAWCの ALA (Air Launched Accessory)キットとコンテナ生産が含まれる。また、ボーイングは、設計研究、試験、試作、生産関連問題の分析などのエンジニアリングを提供する規定となっている。修理サービス条項には、政府所有の HAAWC ALAと関連ハードウェアおよび機器のハードウェア修理および保守サービスが含まれる。また、海軍は本プログラムをサポートする予備ハードウェアを調達することができる。

ボーイングHAWCは、マーク54魚雷に取り付けるALA(Air Launch Accessory)キットで構成され、精密誘導式滑空兵器に変身させる。ALAの分離地点でスタビライザーを展開し、意図したとおりに入水する。 (Boeing illustration)

この最新兵器システムをP-8A多用途海上哨戒機に搭載するのは、高高度かつ長距離から対潜戦を行う海軍の作戦上の必要性を満たすためだ。MK 54が、GPSが有効な環境でも無効な環境でも、精密な滑空兵器に変身する。P-8Aの全飛行範囲で対潜水艦作戦が可能となる。

世界各地で運用されているP-8は、現在までに45万時間以上の無故障飛行を達成してる。同機は長距離対潜戦、対地戦、情報、監視、偵察機として、広域、海上、沿岸での作戦が可能で、世界各地で人道的、捜索救助活動も行っている。■

Boeing receives HAAWC full rate-production contract from U.S. Navy - Naval News

Naval News Staff  20 Aug 2022