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2025年2月13日木曜日

F-35とSu-57がインドで対決(The War Zone)―と言っても航空ショーで展示されたただけですが改めてインドの戦闘機調達の複雑さが浮き上がってきます

 Russian and American fighter jets join India's biggest air show The Aero India 2025 for the first time in New Delhi, India on February 10, 2025. For the first time in history, the air show is witnessing "the participation of two of the world's most advanced fifth-generation fighter aircraft - the Russian Su-57 and the American F-35 Lightning II," the Indian Defense Ministry said.  

Photo by PJSC United Aircraft Corporation/Anadolu via Getty Images


  シアのSu-57次世代戦闘機が、米国製のステルス戦闘機F-35と駐機場を共有している光景は、実に珍しいものであり、2025年の国際航空ショー「エアロ・インディア」の象徴的なイメージとして急速に広まっている。インド空軍が新型戦闘機を模索し、独自の第5世代戦闘機の配備に向け複雑な道のりを歩む中、ライバル戦闘機両機は、ある程度までは、インドの新たな要件を満たす設計だ。しかし、さまざまな理由により、各最新鋭戦闘機が適合しているかまだ明らかではない。

 週末に開催されたエアロ・インディアで、Su-57とF-35Aが初めて対面した。同航空ショーはインド南西部ベンガルールにあるイェラハンカ空軍基地で開催され、2月10日から14日まで一般公開されている。


A Russian Sukhoi Su-57 fifth-generation fighter aircraft is pictured after it lands during the inaugural day of the 15th edition of 'Aero India 2025', a military aviation exhibition at the Yelahanka Air Force Station in Bengaluru on February 10, 2025. (Photo by Idrees MOHAMMED / AFP) (Photo by IDREES MOHAMMED/AFP via Getty Images)

2025年2月10日、ベンガルールにあるイェラハンカ空軍基地で開催された第15回エアロ・インディア初日の着陸後のSu-57。 写真:Idrees MOHAMMED / AFP IDREES MOHAMMED


ショーの開幕にあたり、インド国防省はライバル戦闘機の存在についてかなり直接的に言及した声明を発表した。「Aero India 2025は、東西の第5世代戦闘機の技術を並べて比較できる貴重な機会となり、防衛アナリスト、軍関係者、航空ファンに各機の能力に関する貴重な洞察を提供します」。

 本日、ロシアの国営武器輸出入会社であるロソボロンエクスポートは、非公開の外国顧客が今年からSu-57の受領を開始すると発表したが、国名については詳細を明らかにしていない。この声明は、ロソボロンエクスポートの最高責任者であるアレクサンダー・ミヘーエフによって、エアロ・インディアの開幕式で発表された。


NEW DELHI, INDIA - FEBRUARY 10: (----EDITORIAL USE ONLY - MANDATORY CREDIT - 'PJSC UNITED AIRCRAFT CORPORATION / HANDOUT' - NO MARKETING NO ADVERTISING CAMPAIGNS - DISTRIBUTED AS A SERVICE TO CLIENTS----) Russian and American fighter jets join India's biggest air show The Aero India 2025 for the first time in New Delhi, India on February 10, 2025. For the first time in history, the air show is witnessing "the participation of two of the world's most advanced fifth-generation fighter aircraft - the Russian Su-57 and the American F-35 Lightning II," the Indian Defense Ministry said. (Photo by PJSC United Aircraft Corporation/Anadolu via Getty Images)

ベンガルールにあるイエラハンカ空軍基地でのエアロ・インディア2025、Su-57のコックピットから撮影。 写真:PJSC United Aircraft Corporation/Anadolu via Getty Images Anadolu


フェロンが最初に提案されて以来、同機は輸出受注を獲得できておらず、インドが同機を調達する計画はこれまでに何度も劇的な展開で頓挫している。

 2003年には、将来型多用途戦闘機(PMF)がSu-57(当時はまだT-50の試作機指定名で知られていた)のインド仕様機として計画されていた。これはインド空軍の第5世代戦闘機(FGFA)プログラムの要件を満たすことを目的としたものだった。

 ロシアとインドは2003年1月にPMFの共同開発に関する覚書に署名し、2007年には関連する政府間協定、2010年には航空機の予備設計に関する別の契約が締結された。

 PMFは、ロシアの標準機と比較して、さまざまな新システムや改良システムを搭載することになっていた。ロシアのN036を改良したN079アクティブ・電子走査アレイ(AESA)レーダーもその一部だった。

 しかし、プロジェクトは遅々として進まず、2014年6月にはモスクワ近郊のジュコフスキーの滑走路で5機目のT-50-5が炎上するなど、恥ずかしい事件もいくつか発生した。この事故はインド代表団の目の前で起こったと伝えられている。

 2018年にはインドがPMFプログラムから離脱した。それでもなお、ロシアはSu-57E輸出バージョンの国際市場への売り込みを続けている。昨年11月、ロソボレネクスポートはSu-57の最初の輸出契約が締結されたと主張したが、ここでも購入者(複数形)は明らかにされていない。

 2018年に初めて発表された際、ロシアはSu-57EバージョンはF-35よりも「大幅に安価」になると主張したが、具体的な数字は提示されなかった。2019年には、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領にロシアのウラジーミル・プーチン大統領が個人的にSu-57を見せた。これはSu-57Eに対するアンカラの関心を確保することが目的であった。

 それ以外では、アナリストらはアルジェリアとエジプトが購入候補国として挙げているが、ウクライナでの戦争の結果、国際社会から孤立したロシアは、国際的な大型兵器販売の可能性をさらに低下させている。

 一方、インドでは、国産の第5世代戦闘機である先進中型戦闘機(AMCA)の開発に焦点が当てているが、これはまだ先の話であり、最新の報告では2036年まで就役の予定はないとされている。ヒンドスタン航空機(HAL)は2010年より公式にAMCAプロジェクトに取り組んでおり、一時は2025年までに飛行可能なプロトタイプを完成させるという目標が掲げられていた。


AMCA次世代戦闘機の模型。FlyingDaggers45SQUADRON/Wikimedia Commons


その一方で、インド空軍は、かつて同軍の主力戦闘機であったソ連製ジェット戦闘機ミグ21フィッシュベッドのような旧式戦闘機の退役により、第一線の戦闘機部隊の戦力が低下している問題に直面している。さらに、外国製戦闘機を暫定装備として購入するプロジェクトが停滞していることも問題を深刻化させている。この状況をインドの防衛ジャーナリストアンガッド・シンは「意思決定の麻痺」と表現している。

 軽戦闘機(LCA)テジャス計画が、ミグ21の後継機として指定されていたにもかかわらず、これほどまでに長期にわたる遅延を被っていなければ、インド空軍はこのような問題に直面することはなかっただろう。現在、インド空軍はLCAテジャスMk1を運用する飛行中隊を2つしか有しておらず、これは多くの点でかなり限定的な戦闘機だ。最終的に購入されるのは40機のみである。


インド空軍のラファールとLCA テジャスMk 1。IAF


それを踏まえ改良型のLCA テジャスMk 1Aの納入がまもなく開始される予定であり、これによりインド空軍はついに最後のMiG-21を処分することになる。LCA テジャス Mk 1よりも高性能で、より高度なレーダー、電子機器、武器を搭載した Mk 1A だが、インド空軍では第4世代型に分類されており、例えば韓国のFA-50やスウェーデンのグリペンとほぼ同等の性能だ。

 現在、83機のテジャスMk 1A戦闘機が契約済みであり、さらに97機が追加され、合計180機のMk 1Aとなる。その後、より野心的なテジャスMk 2が2028年から2035年の間にインド空軍に120機納入される。「第4世代+」戦闘機に分類される戦闘機には、より強力なF414エンジンが搭載され性能が大幅に改善される。計画通りに進めば、テジャスMk2の経験が、2036年に就役する予定の、まったく新しいAMCA第5世代戦闘機の第一号への道筋を整えることになる。現在、AMCAプログラムでは120機の航空機調達が計画されている。

 AMCAは、低レーダー反射設計、内部兵装倉、新世代のAESAレーダー、先進的な電子機器などを特徴とし、当初から無人機と連携して「有人無人」チームとして運用されることを想定している。

 ただしAMCAはずっと先の話であり、これまでの経験から、このプログラムもさらに遅延する可能性が高い。

 そうしたことを念頭に置き、またインド空軍の戦闘機に関するパズルには多くの異なる要素が動いていることを踏まえ、同国は多用途戦闘機(MRFA)のコンペティションも開始した。これは、外国製の既存の戦闘機を選定し、合計114機を調達することを目的としている。調達は、既製品の購入とインド国内でのライセンス生産を組み合わせた形で行われる。

 なぜインドがダッソー・ラファールをもっと購入しないのかと疑問に思う人も多いだろう。しかし、114機調達計画が発表された際には、単発エンジン機に限定されると説明され、フランス製品は除外された。しかし、それ以来、競争はオープンとなり、現在ではF-15EXもインドに提供されており、ラファールやF/A-18E/Fスーパーホーネットも候補に挙がっている。結局、インドが別の単発ジェット戦闘機の調達を決めた場合、F-16のインド仕様であるF-21も有力な候補となる。

 一方、ラファールと同じクラスの「第4世代+」戦闘機を「論争の余地のない」調達に重点を置くMRFA競争では、Su-57やF-35の入る余地はないように思われる。

 そこで、統合攻撃戦闘機(JSF)に話が及ぶ。

 過去には、2018年に米国太平洋軍司令官(当時)がインドへのステルス戦闘機の販売を支持する旨の発言をしたとされるなど、F-35がインドに暫定的に提供されたことがある。

 米国政府は、インドへのF-35の正式な提供をまだ認めていない。しかし、同じことが当てはまるアラブ首長国連邦(UAE)の場合と同様に、前トランプ政権は同国に同機を売り込んでいた。

 また、過去にロッキード・マーチンが、インドが同社のF-21(事実上、改良型のF-16)を選択すれば、同国がF-35プログラムに参加する道が開ける可能性があるとほのめかしていたことも注目に値する。ただし、同社はF-21の公式ウェブページを公開した直後に、その主張を削除た。


インド向けF-21のイメージ図。ロッキード・マーティン

 

しかし、インドにとっては別の問題が立ちはだかる可能性があると、アンガド・シンは本誌に説明している。「米国の政治情勢に関わらず、F-35を巡る我々の状況は、S-400やその他多くのロシア製装備の存在により複雑化しています」。

 トルコがF-35プログラムから排除されたのは、特にS-400防空システムが原因であったことを思い出す価値がある。トルコ空軍向けに最初の航空機が製造され、製造努力に多大な産業的利害関係があったにもかかわらずである。

 つまり、インドがF-35を入手することは不可能ではないが、相当な交渉が必要となり、特にS-400やその他のロシア製ハイエンドシステムを手放すことが必要となる場合は、ニューデリーが同意するとは思えないような保障や保証が必要となる。

 それを踏まえた上で、Su-57がインド空軍の受注を勝ち取るための別のチャンスが得られる可能性はあるだろうか?

 シンは懐疑的だ。「現実的に考えて、フェロンは恐らく最も能力が劣る『第5世代』戦闘機で、最も成熟度が低い。良い組み合わせではない。中国の第5世代開発に対する対抗策としての実用性は見出せない」。

 Su-57と増え続けるステルス戦闘機を装備した中国のはさておき、インド空軍は過去にロシアからの輸入品、特にアフターサービスやメンテナンス性に関して必ずしも良い経験をしてきたわけではない事実もある。これは、ウクライナへの本格侵攻以来、さらに悪化していることだ。「インド空軍にとって最も必要とされているのは、Su-30MKIフランカーのような、何十年も続くデバッグ作業だ」とシ氏は指摘する。

 インド空軍が外国製の新戦闘機を積極的に探している一方で、Su-57もF-35も、同空軍が本当に必要としている戦闘機ではない。同空軍は過去にも、MRFAコンペティションで、そのことを認めている。

 一方、Su-57には、F-35にはないインドにとって明確な利点があるように思われる。それは、Su-30MKIでHALが行ったように、戦闘機の現地ライセンス生産だ。インドにとって、オフセットは主要な防衛装備品の調達において非常に重要な要素であり、技術移転も魅力的である。特に、インド独自の第5世代戦闘機プログラムであるAMCAの開発に取り組んでいるためである。

 ベンガルールでSu-57とF-35が同時に姿を現したことは、確かに観察者にとっては興味深いが、同時にインド空軍が新型戦闘機装備を必要としている緊急性も強調している。インドの各種戦闘機プログラムには遅延が内在しているように見えるため、暫定的な戦闘機装備の必要性はこれまで以上に明白だ。インド空軍はMRFAコンペの結果を早急に決定する必要がある。しかし、現段階ではSu-57とF-35は共に部外者のようだ。■


F-35 And Su-57 Face Off In India

The unprecedented meeting of F-35 and Su-57 comes as the Indian Air Force looks at a range of possible imported combat jets to fulfill pressing needs.

Thomas Newdick

https://www.twz.com/air/f-35-and-su-57-face-off-in-india


2022年12月3日土曜日

Su-57初の実戦部隊編成に向け準備が進むロシア航空宇宙軍。ウクライナではSu-35などが安全な空域からスタンドオフ攻撃を展開中。

 

Uncredited


ロシア極東地区の歴史的な部隊が最初にSu-57を受領する

 

度も延期され、何度も災難に見舞われてきたロシアの新世代戦闘機Su-57フェロンが、前線運用に向かう。ロシア航空宇宙軍(VKS、ロシア語の頭文字)の中で、新型戦闘機を最初に受け取るのは、ロシア極東のコムソモルスク・オン・アムール近郊ディジョムギDzyomgiの第23戦闘航空連隊(Istrebitelnyi Aviatsionnyi Polk、IAP)。しかし、最新鋭機が通常の戦闘任務を遂行できるまでかなりの時間がかかりそうだ。

連隊副司令官のイリヤ・シゾフ中佐Lt. Col. Ilya Sizovは11月、東部軍管区紙「スヴォロフスキー・ナティスク」に、同隊のパイロットは現在、リペツクLipetskの乗員転換センターでSu-57の理論訓練中、と述べた。リペツクの第4航空要員準備・軍事評価センターは、戦術戦闘機の初期ロットの軍事評価を行い、パイロットに航空機の戦闘応用を訓練し、戦術を開発するのが任務だ。

シゾフ中佐は、スヴォロフスキー・ナティスクの取材に、パイロットの理論的な訓練(実践的と異なる)を言及している。23人のIAPパイロットの第一陣が、フェロンを完全に使いこなすまで長時間がかかることを示唆している。

2022年5月、リペツクに向かうSu-57二機がノボシビルスクから出発。 NSKPlanes

ディジョムギ飛行場は、23IAPとスホーイ・コムソモルスク・オン・アムール航空工場(KnAAZ)が共同使用している。かつてSu-27戦闘機を生産していたが、現在はSu-35とSu-57を生産していギる。製造工場が併設されていることで、新機種の運用サポートに適しており、製造工場から専門家が応援に駆けつけてくれる。そのため、1985年にSu-27戦闘機を、2014年にSu-35Sを、そして2023年にはSu-57をディジョムギ連隊が最初に受領している。

ディジョムギ飛行場は、23IAPとコムソモリスク・オン・アムール航空工場が使用している。 Google Earth

Su-57は何機あるのか?

2010年から2017年にかけ生産されたSu-57(旧名T-50)の試験10機を経て、2018年8月22日、スホイはVKSから量産前機体を、2019年と2020年に2機受注した。うちの1機は、2019年12月24日の引き渡し飛行中に、飛行制御システムの不具合で墜落した。1年後の2020年12月、尾翼番号「01」の2号機は、ロシア軍に正式に引き渡された最初のSu-57となり、アクチュビンスクのロシア国防省第929国家飛行試験センターに配備された。

コムソモルスク・オン・アムールからアクチュビンスクへのデリバリーフライトのために準備されるSu-57。 Russia 1 TV

Su-57の大口受注は2019年6月27日、国防省が2021年から2027年にかけ納入予定の76機の契約を締結したことによる。スケジュールでは、2021年と2022年に各4機、その後2023年と2024年に毎年7機、そして2025年、2026年、2027年に各18機の生産の予定だった。最初の4機はリペツクの乗員転換センターに引き渡され、24機ずつの3つの作戦連隊が完成する予定であった。

Su-57プログラムの多くと同様に、計画の実施もまた遅れた。2021年生産の最初の2機(「02」と「52」)は同年2月に、残りの2機(「53」と「54」)は2022年5月に引き渡された。つまり、軍は現在5機を保有しており、「01」「02」はアクチュビンスクに、「52」「53」「54」はリペツクにある。2022年に計画され、ディジョムギの連隊のために用意される4機は、おそらく2023年の初めに用意されることになるだろう。

 

初期シリーズのSu-57「01」、2021年1月、アクチュビンスクにて。 Russian Ministry of Defense

シリーズ生産と並行し、機体改良も行われている。2022年10月21日、Su-57「511」(T-50-11)が近代化後の飛行試験を開始した(原型は2017年8月6日に初飛行した)。公式発表によると、「機能拡張、知的乗員支援、幅広い新型兵器の使用可能性を備えた搭載機器一式がテストされた。また、第2段エンジンの搭載も可能である」とある。全体として、近代化の範囲はあまり野心的なものではなさそうだ。特に、提案の完全近代化型Su-57M用の新型エンジン「イズデリー30」は、量産機搭載はおろか、試験運用を開始する準備すら整っていない。

Su-57の大口受注は2019年6月27日、国防省が2021年から2027年の間に納入を予定する76機の戦闘機を受注した。スケジュールでは、2021年と2022年にそれぞれ4機、その後2023年と2024年にそれぞれ7機、そして2025年、2026年、2027年にそれぞれ18機の生産が予定されていた。最初の4機はリペツクの乗員転換センターに引き渡され、残りの1機で24機ずつの3つの作戦連隊が完成する予定であった。

Su-57プログラムの多くと同様に、これらの計画の実施もまた遅れた。2021年生産の最初の2機(「02」と「52」)は同年2月に、残りの2機(「53」と「54」)は2022年5月に引き渡された。つまり、軍は現在5機を保有しており、「01」「02」はアクチュビンスクに、「52」「53」「54」はリペツクにある。2022年に計画され、ディジョムギの連隊向けの4機は、おそらく2023年初めに用意されることになるだろう。

2022年10月21日、アップグレード後の初飛行の準備が整った試験機T-50-11。同機は装備を近代化し、将来的に新型のイズデリイ30エンジンを搭載することが可能。ユナイテッド・エアクラフト社

ロシア国営メディアは、ウクライナ戦争でSu-57を使用すると何度か報じており、10月には、ロシア侵攻作戦の総指揮官セルゲイ・スロヴィキン大将 Gen. Sergey Surovikinが、Su-57について「幅広い兵器を持ち、出撃ごとに空と地上目標の破壊で多面的なタスクを解決する」と発言している。ただしSu-57がウクライナ上空を飛行していないのはほぼ確実だ。ロシアがそのようなリスクを冒す理由はない。もしフェロンが使われたのであれば、ロシア国内奥深くから長距離ミサイルを発射したことになる。

全体として、Su-57の生産と開発の予測は難しい。2022年2月24日のウクライナ侵攻以来、ロシアはまったく新しい政治的・経済的状況に置かれていることに気づかされている。しかし、さらなる遅れが戦闘機に影響を与えることは間違いない。一方、Su-57E輸出版が成功を収める可能性はさらに低くなった。この機体の売り込みは、2018年以来、失敗に終わったままだ。

由緒ある戦闘機部隊

ディジョムギ戦闘機連隊(名前は地元のナナイ語で「白樺の林」を意味する)は、1939年8月に60IAPとして結成された。最初はI-16、次にYak-9(1945年~)、MiG-15(1951年)、MiG-17とYak-25(1955~56年)、Su-15(1969年)、そして1985年からSu-27戦闘機が使用された。2000年には、数ヶ月前に解散したオルロフカの404IAPの人員とSu-27機が、ディジョムギの第60連隊に組み込まれ、同時に部隊名称も23IAPに改められた。

2009年7月、ディジョムギでの第一世代Su-27フランカーB。Vladimir Galkin/Wikimedia Commons

現在、第23連隊はSu-35S単座戦闘機の2個飛行隊(ロシアにおける戦闘機飛行隊は12機で構成)と少数のSu-30SM複座戦闘機の訓練用を保有している。第23連隊はディジョムギ基地に加えて、戦略的に重要な千島列島のイトゥルップ(エトロフ)島にあるヤスニ飛行場にも分遣隊(通常3機のSu-35S戦闘機)を維持している。

ウクライナ戦争における第23次IAP

23 IAPにとって、対ウクライナ作戦への関与は侵攻1カ月前に始まった。2022年1月の末日、Su-35S12機とSu-30SM数機が、ベラルーシのバラナヴィチー空軍基地に到着した。Su-35S戦闘機はツェントラルナヤ・ウグロバヤの22IAPとディジョムギの23IAPから、Su-30SM戦闘機はドムナの第120独立戦闘航空連隊から、3部隊ともロシア極東の空軍・航空防衛第11軍に属している。

戦闘機は、2月10日から20日まで行われた「連合決起2022(Soyuznaja Reshimost)」と呼ばれるロシアとベラルーシの合同軍事演習への参加を口実で、ベラルーシに到着した。ベラルーシ到着後のフランカーは、混成航空団に編成され、その司令官は23IAP司令官のアレクサンダー・ロビンツェフ大佐であった。

2022年2月、ベラルーシのバラナヴィチを離陸するSu-35Sは、可視距離を超えるR-77-1と近接戦闘用のR-73 AAMを装備している。戦闘地域で活動するすべてのフランカー派生機は、翼端にキビニー・ジャミング・ポッドを搭載している。 Russian Ministry of Defense

各機は演習後もベラルーシに留まり、初日から侵攻作戦に参加した。春、キエフ地方での作戦が失敗に終わり、ロシア軍が撤退した後、バラナヴィチのSu-35SとSu-30SM戦闘機はロシアのボロネジ、Su-34フルバック攻撃機を飛ばす第47爆撃機航空連隊の飛行場へ移動した。同地に駐留し、ウクライナ東部国境に近づいた。

Su-35S戦闘機が、ウクライナ軍の支配地域上空を飛ぶことは非常に稀である。例えば、バラナヴィーチーで作戦行動中に、ロシアの戦闘機はA-50メインステイ空中早期警戒機が示したウクライナ機にミサイルを発射したが、一貫してベラルーシ領空内にいた。

同じ状況が東部で続いている。Su-35Sは、ウクライナ戦闘機が使用するR-27(AA-10アラモ)ミサイルに対し、R-77-1(AA-12アダー)、特に124マイル射程のR-37M(AA-13アックスヘッド)空対空ミサイルの優れた能力を活用している。

Su-35Sの翼下にある射程124マイルの空対空ミサイルR-37M。 Fighterbomber Telegram channel

非常に厳しい防空環境で活動することが多いロシアのSu-25フロッグフット攻撃機やSu-34の損失が多いのに比べ、Su-35S戦闘機の損失が少ないことがこれで説明できそうだ。ウクライナ上空でのSu-35Sの損失は1機のみだ。同機はベソベツの159IAPの機体で、2022年4月3日にイジュム付近で撃墜された。

11月1日、ズベズダTVZvezda TV(ロシア国防省系チャンネル)は、パイロットが「長距離ミサイルでウクライナ軍機を撃墜した」と説明する映像を、兵器を特定せず放映した。背景には、エンジン間にR-37Mミサイルを2発タンデムに、エアインテーク下にR-77-1を2発、翼下に短距離用R-73(AA-11アーチャー)を2発、翼下にKh-31PM(AS-17クリプトン)対放射線ミサイルを1発装備したSu-35S戦闘機が映っていた。

自衛のために使用されるKh-31P/PM対射ミサイルは、ウクライナ作戦に投入中のSu-35S戦闘機で一般的な武器だ。通常、Su-35Sは標準装備の空対空ミサイルに加え、地上からの対空脅威に備えKh-31PまたはPMを1発搭載している。パイロットは危険地帯に入る前に、ミサイルのパッシブレーダーシーカーを作動させる。そして、シーカーが敵の地上防空システムの火器管制レーダーを検知すると、Kh-31P/PMミサイルが自動発射される。ロシア国防省が公開したビデオでは、Kh-31の使用方法について、パイロットが「ミサイルは敵の防空システムの放射を検知し、ターゲットを認識・捕捉した後に発射する」と語っている。パイロットは続ける。「ミサイルは素早く信号を捕らえ、距離を計算する。捕捉から発射まで数秒です」。

Su-35S戦闘機がウクライナのターゲットに対して大型の滑空弾を使用している。ボロネジ基地のビデオでは、Su-35Sの1機が3,300ポンドの大型UPAB-1500B爆弾を2発搭載し、別の1機は1,000ポンドの小さいKAB-500M爆弾を4個搭載している姿が映っている。UPAB-1500B爆弾は、飛び出す翼のおかげで、最大31マイルの射程距離を持ち、KAB-500M爆弾は最大25マイルのターゲットを攻撃する。両爆弾とも衛星補正付き慣性航法で誘導され、現在のバージョンではターミナル・ホーミングはない。KAB-500M爆弾とUPAB-1500B爆弾は2019年ごろから生産されている。

ウクライナ侵攻への参加により、23IAPは最近、ロシアで軍部隊で最高の栄誉を受けた。11月17日、ウラジーミル・プーチン大統領は同連隊に衛兵の称号を授与した。また、連隊のパイロットであるヴィクトール・ドゥディン中佐とイリヤ・シゾフ中佐は、ロシア連邦英雄というロシアで最高の個人栄誉を受けた。

23IAPがウクライナ空戦で主導的な役割を果たし続け、航空機と搭乗員は需要がある限り戦闘地域にローテーションされるという兆候はあるが、同部隊がSu-57をいつ本格運用に移すかを予測するのははるかに困難だ。

パイロット第一陣はまだ新世代戦闘機の飛行を開始していないようで、ディジョムギがロシアの最新戦闘機の運用を宣言するまでには、まだかなりの時間がかかると思われる。一方で、ウクライナ戦争の影響で、制裁によるハイテク部品の生産・輸入の制限や、ロシア航空宇宙軍でより緊急な要件にリソースを割り当てる必要性など、Su-57プログラムがこれまで直面してきた困難は、さらに深刻になる可能性がある。■

 

Su-57 Felon To Enter Service With Elite Russian Air Force Unit

BYPIOTR BUTOWSKI|PUBLISHED DEC 1, 2022 2:07 PM

THE WAR ZONE


2019年3月3日日曜日

中国がSu-57を検討して出した結論とは....異様な中国のステルス戦闘機運用思想

米ロが似通った設計思想を持っているのに対し中国が異質なのか、そもそも戦闘シナリオが違うのか、米空軍が機種を絞り込もうとする中で、中国はむしろ特化した機体をたくさん揃える傾向があると思います。Su-57は中国からすれば魅力がないのでしょうか。

China Is Studying Russia's Deadly Su-57 Stealth Fighter: Here's Why They Think 中国がロシアのSu-57を研究してわかったこと

February 26, 2019  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: ChinaRussiaMilitaryTechnologyWorldSu-57J-20F-22F-35
国人専門家はロシアのSu-57ステルス戦闘機に複雑な見方をしていると中国国営メディアが伝えている。Su-57には欠点も多いが「ユニークな」機体というのがWang Yongqingの結論だと環球時報にある。
WangはJ-31を開発した瀋陽航空設計研究所の主任設計者だ。中国海軍が同機の採用を検討中と伝えられる。
トラブル続きのSu-57を詳しく検討したWangは中国にも参考となるはずの教訓を見逃しているようだ。
Su-57が大量にロシアで供用される可能性はないようだが、同機の設計に欠陥があったわけではなく、むしろ非常に洗練されよく考慮されている。一番の問題は同機に機関銃が搭載されているが中国のJ-20は搭載していないことだ。
.だが機関銃問題はWangには重要でないようだ。
「中国観測筋はSu-57の性能を低く見ているが、軍用機設計者のひとりにはSu-57はとてもユニークに映るようだ」と環球時報の2019年1月24日付けが伝えている。
Su-57は大型双発戦闘機で大型主翼があり、2010年に初飛行した。ロシア空軍は10機ほどを取得しテストしてきた。スホイはSu-57全機を手作業で生産したといわれるが、出来具合がいかにも雑だ。
Su-57には戦闘装備がないといわれる。2機はシリアに2018年2月に展開したが、ロシアは根拠を示さずに空爆に投入したと発表している。
クレムリンは2018年8月に生産型機材10機ほどを発注し、2019年に初の実戦飛行隊の編成を目指した。だが国防予算が減少する中で同機の大量調達はしないとの決定が出た。
ロシア政府はSu-57の調達削減方針を正当化してきた。「Su-57は現時点出世界最高の機体ですよ」とユーリ・ボリソフは2018年テレビで語っている。「そのため同機の量産を急ぐのは理にかないません」
人民解放軍空軍はJ-20ステルス戦闘機で遥かに高い成功を実現してきた。2011年初飛行し、2018年初頭にPLAAFは同機初の飛行部隊が作戦可能となったと宣言している。
中国は少なくとも三種類のステルス軍用機を開発しており、戦闘爆撃機、爆撃機、そしてJ-31があり、後者は中国空母への搭載になる可能性がある。
PLAは米国に次ぐ世界第二位のステルス機運用をめざするがWangはSu-57開発から学ぶところがあるという。
.Su-57の性能は全体としては「まったく悪いものではない」とのWang発言を環球時報が引用している。
Wangの分析ではSu-57は「革新的空力特性の機体設計で推力偏向制御が可能なSu-57では超音速巡航飛行能力があるところが重要で操縦性もずばぬけている」とある。
Su-57の設計を検討しWangはロシアと米F-22、F-35ステルス戦闘機の作戦思想を比較している。
「米側の次世代航空戦闘の概念では視界外戦闘を重視していますが、その場合にミサイルは相当の距離を飛翔するわけでSu-57では操縦性を極限まで高めて回避する必要があります」「ロシア戦闘機は特殊レーダーを搭載しミサイルの飛来方向を正確に探知します」
「超射程ミサイルは別にすると最終的な対決は近接距離で発生するでしょう。そうなるとステルスや極限までの操縦性は意味を失います」と環球時報は伝えている。Su-57には30ミリ機関砲を近接戦に備え搭載する。
Wangの評価から米・露・中のステルス戦闘機での方向性が見えてくる。Su-57設計がF-22やF-35との近接航空戦を想定するのに対し、米戦闘機両型も機関銃を搭載していることに要注意だ。米空軍はステルス機も超接近戦に備える必要があると考えている。
対照的に中国のJ-20には機銃がなく、中国がステルス機の作戦想定を全く違う形にしているのはあきらかだ。「USAFや業界はJ-20は機敏な操縦性を想定せず速度とステルスを前面に押し出した機体と見ている。陸上目標あるいは給油機やISR機材への奇襲攻撃を想定しているのだろう」とAir Force誌は結論を出していた。
.言い換えればJ-20は防空網を高速突破してミサイルを発射する機材だ。近接航空戦闘は想定していないのがあきらかだ。
「空力特性上の成約とミサイルの運用条件を考えると将来の戦闘でも銃は不可欠だろう」とスチュアート・ニコルス少佐は1998年に空軍大学校で論文を書いていた。
「機銃は単純ながら運用維持が楽だ」とし、「敵の電子対抗手段やフレアでミサイルの性能は下がるが機銃は無関係だ。追う一つ銃の大きな特徴は搭載レーダーの機能と独立していることで、レーダーが敵の対抗措置に脆弱であることが重要だ」
.Su-57,F-22、F-35を比較することでWangは中国のステルス戦闘機部隊に有益な知識を得たと主張する。おそらくその中心は設計思想こそ違うがロシア、米国ともにステルス戦闘機に機銃を搭載していることだ。■
David Axe serves as the new Defense Editor of the National Interest. He is the author of the graphic novels  War Fix, War Is Boring  and Machete Squad.

Image: Creative Commons.

2017年10月24日火曜日

ロシアとの第五世代戦闘機開発の継続に消極的なインド空軍


ロシアはインドの資金提供を期待していたはずなのにこれでは目論見が外れます。Su-57(PAK-FA T-50)の今後に暗雲ということでしょうか。あるいはロシア機の性能内容に今後の成長の可能性がないとみているからでしょうか。インドが米国製機材採用に大きな方向変更を取る可能性が出てきたと言えないでしょうか。


Indian Air Force wants out of fighter program with Russia

インド空軍がロシアとの戦闘機共同開発の継続に消極的に

Su-57 の試作機 T-50 がMAKS 2011航空ショーで飛行展示された。 (Alex Beltyukov via WIkipedia Commons)


NEW DELHI – 100億ドルで第五世代戦闘機(FGFA)を共同開発・生産しようという野心的なインド-ロシア構想は新たな難関に直面している。インド空軍が事業中止を求めているからだ。
インド空軍高官が国防省に不安を訴え、FGFAのロシアとの共同事業では米F-35戦闘機並みの性能は実現できないと事業継続に消極姿勢を見せている。
FGFA事業の内容ではステルス性能でレーダー断面積がF-35より劣ると空軍関係者は述べ、構造面で抜本的な改良が必要でロシア試作機では実現は無理だという。
FGFAにはエンジンのモジュラー構想はなく、整備と保守性が高価格となりトラブルも増える。
ロシア側はモジュラー式ではないエンジンを提供し、保守点検等はエンジンメーカーが担当するとしている。
これに対し国防アナリストのインド空軍出身のバジンダ・タクールVaijinder K Thakurは、空軍の評価に賛同していない。FGFA原型機のSu-57のエンジンはAL-41F1だがFGFA生産型にはプロダクト30型が搭載され、重量が3割軽減され、推力向上と燃料消費改良に加え稼働部品数が減る。このため信頼性が上がり、ライフサイクルコストが3割下がるという。
インド空軍は米製機材の運用経験がなく、長期運用経費をロシア、米国の戦闘機で比較する立場にないというのがタクールの言い分だ。■

2017年8月12日土曜日

★★PAK-FA(T-50)の制式名称がSu-57に、エンジン換装で本格生産は2020年以降




PAK-FAの意味がやっと分かりましたが、エンジン換装、各種改修をうけ本格生産が2020年以降開始というのは思ったよりゆっくりしていますね。おそらく機体価格が高くロシア軍に予算が足りないのでしょう。Su-35などの方がコスパがいいとみているのかもしれません。しかしいきなり50番台ということは第五世代だからでしょうか。Su-37があるのでその続き?よくわかりません。 

Russia's Fifth-Generation PAK FA Fighter Jet Officially Named Su-57

ロシア第五世代戦闘機PAK FAの制式名称がSu-57になった
© Sputnik/ Alexei Druzhinin
14:55 11.08.2017(updated 15:02 11.08.2017)

  1. MOSCOW (Sputnik) — ロシアの第五世代戦闘機はPAK FAあるいはスホイT-50と呼ばれてきたが制式名称がSu-57になったとロシア航空宇宙軍総司令官ヴィクトル・ボンダレフ上席大将が8月11日発表した。
  2. Su-57は単座双発エンジンの多用途ステルス戦闘機で航空優勢の確保と攻撃任務に投入する前提で設計されている。高性能エイビオニクスとアクティブフェイズドアレイレーダーを搭載する。
  3. 初飛行は2010年だった。合同航空機企業体社長のユーリ・スリュサールはSu-57の就役を2019年と語っている。
  4. T-50はPAK-FA(Prospective Airborne Complex of Frontline Aviation第一線航空運用の将来機材複合体構想)の一環としてエイビオニクス、ステルス、武装の改修を受けている。8月9日に設計主任セルゲイ・コロコフが同機用次世代エンジン製作に取り組んでいると認め、推力増と燃料効率改善、さらに製造単価の削減と信頼性がいずれも現状機材より向上するという。
  5. 来年には6機がロシア航空宇宙防衛軍に引き渡される予定で2020年までに55機納入し、その後本格生産になる。■