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2025年12月8日月曜日

スペースXのスターシールド通信装置を搭載した初の機材は新型「マリーンワン」となるVH-92となった(Aviation Week)

 VH-92 Credit: U.S. Navy

VH-92

Credit: U.S. Navy


新型「マリーンワン」がスペースXのスターシールドを搭載した初のヘリになった(Aviation Week)


海兵隊は、SpaceXのStarshield(地球低軌道インターネット・システム「Starlink」の軍用版)をシコースキーVH-92大統領専用ヘリコプターに導入し、同システムを搭載した世界初のヘリコプターとなった。

 スターシールドの統合は、海兵隊がVH-92のミッション・コミュニケーション・システム(MCS)の開発に苦労した後に行われた。長期にわたる開発プロセスを経て、MCSは国防総省の運用試験評価局長によって2023年報告書で運用上有効であると宣言された。

 VH-92は2024年8月、ニューヨークで当時のジョー・バイデン大統領を乗せた初の「マリーンワン」ミッションを飛行した。シコースキーは同月、23機目にして最後のVH-92を海兵隊に引き渡したと発表した。

 スターシールドがVH-92に配備されたというニュースは、4月28日の海軍航空システム司令部(NAVAIR)のプレスリリースで発表された。 リリースによれば、スターシールドは "システム性能は目標を366.25%上回り、既存の能力を18,550%向上させた "とある。

 NAVAIRは、F/A-18スーパーホーネットやE-2Dホークアイを含む一連の航空機にStarshieldを展開している。■


New ‘Marine One’ Becomes First Helo With SpaceX Starshield

Brian Everstine April 30, 2025

https://aviationweek.com/defense/aircraft-propulsion/new-marine-one-becomes-first-helo-spacex-starshield


ブライアン・エバースティン

ブライアン・エバースティンは、ワシントンD.C.を拠点とするAviation Week誌のペンタゴン担当編集者である。



2025年2月10日月曜日

VH-92ペイトリオットが当初計画より10年遅れマリーンワン任務を完全に引き継ぐ(The War Zone)

 


The U.S. Marine Corps transition to the VH-92A Patriot as its only helicopter for use in the "Marine One" role shuttling the president, the vice president, their families, and their closest advisors around at home and abroad, is still underway and now we know it won't be done till 2030, at the earliest.  

USMC



大幅に遅れたものの、VH-92はマリーンワンの役割を完全に引き継ぐことになったが、実現は計画より7年遅れることになった

海兵隊は、大統領、副大統領、その家族、そして最も親しいアドバイザーたちを国内外に送り届ける「マリーン・ワン」用ヘリコプターとして、VH-92Aペイトリオットへの移行を進めている。これは、同機の投入開始を目指した最終計画より7年遅い。

 現在使われている老朽化したVH-3Dは、来年には完全退役することになっている。VH-60Nは高温・高高度環境での運用に適しているため、少なくとも2030年までは飛行し続ける。2021年に公表された既存の計画では、海兵隊は2023年までにVH-3DとVH-60Nをすべて廃棄すると宣言していた。

 今日発表された海兵隊の新しい航空計画では、海兵隊第1ヘリコプター飛行隊(HMX-1)に配属されている大統領専用ヘリコプターの新情報が含まれている。


HMX-1に配属されたVH-3D。 USMC


2025年度航空計画には、VH-3DやVH-60Nが現在何機就役しているかは書かれていない。米海兵隊が最後の航空計画を公表した2022年時点では、HMX-1には11機のVH-3Dと8機のVH-60Nが配備されていた。米海軍は海兵隊と協力し、2024年8月に23機目となる最後のVH-92の引き渡しを受け入れた。ジョー・バイデン前大統領は同月、アメリカの国家元首として初めてペイトリオットに搭乗した。

 同上の2025年航空計画によると、海兵隊は2021年12月にVH-92Aの初期運用能力を宣言し、HMX-1はホワイトハウスでの試運転イベントを経て、2022年に運用任務への導入を開始していた。

 「HMX-1には現在10機のVH-92Aが配備されており、任務をサポートしている」。

 23機のVH-92Aのうち2機は試験専用機として知られている。HMX-1が最終的に16機しか運用しないのであれば、残りの5機がどうなるかは不明である。 本誌は海兵隊に問い合わせている。

 とはいえ、「HMX-1はVH-3DとVH-60Nのレガシー機材からVH-92Aへの順次移行を進めている。「VH-3DとVH-60Nの)両機は耐用年数延長プログラムを経ており、VH-92Aへの完全移行まで任務をサポートするのに十分な飛行時間がある。既存機体は、機体稼働時間の限界に達し、VH-92Aが任務を担うようになるに従い退役していく。VH-3Dは2026年まで使用される。VH-60Nは、高温環境下でのユニークな能力により、2030年まで使用されて完全に退役する予定である」。


駐機中のVH-60Nと背後を飛行するVH-92A。 USMC


 一般にヘリコプターは、高温や高高度にで性能が低下する。そのため、特に高温・高高度性能に優れたタイプは、そうでないタイプに比べて、明確な優位性を発揮する。VH-60Nは長年にわたり、アフガニスタン、ソマリア、さらにはスイス・アルプスなど、関連地域への大統領の訪問をサポートする姿が定期的に目撃されている。

 VH-60Nの少なくとも一部が2030年まで保有されるのは、特にそのホット&ハイ性能のためであるが、新型ヘリコプターが現在その必要性を十分に満たせない場合、VH-92がその必要性を十分に満たせるかどうかについては疑問が残る。

 「VH-3DもVH-60Nも、現在のところ大きなアップグレードは予定されていない。「しかし、飛行隊がVH-92Aに完全移行するまでは、残存するレガシー機の運用性を確保するため、通信システムの小規模なアップグレードが必要になるかもしれない」。

 通信システムの問題は、VH-92Aが運用開始までの長い道のりで乗り越えたハードルのひとつだった。シコースキーは2014年、VH-3DとVH-60Nの後継機として再競争を勝ち抜いた。その後、ロッキード・マーチンのVH-71ケストレル(英アグスタ・ウェストランド社(その後レオナルド社に吸収)のAW101の派生型)が、遅延とコスト増のために中止された。ロッキード・マーチンはその後、シコースキーを買収した。

 VH-92Aの運用には、マリーンワンのミッションに不可欠な、極めて信頼性の高い安全な通信以外にも問題があった。特に、ヘリコプターの排気システムがホワイトハウスの芝生を焦がす問題があった。この特別な問題を修正または軽減するために排気システムに変更が加えられたかどうかは不明である。

 先週金曜日に発表された国防総省の運用試験評価局長室(DOT&E)によるVH-92プログラムに関する最新の年次報告書によると、24年度に実施されたVCD(欠陥是正の検証)運用試験では、30点の未解決の欠陥が適切に是正され、1つは標準運用手順の変更によって緩和され、1つはシステム設計に関するWHMO(ホワイトハウス軍事事務所)の方針変更により該当しなくなっていることが判明した。DOT&Eは、対処された欠陥についての具体的な詳細は明らかにしていない。

 そうなるとVH-92Aがマリーンワンの後を継ぐ道はますます明確になってきたようだ。同時に、VH-3Dが来年退役する予定であるのに対し、VH-60Nはホット・アンド・ハイ能力によりあと数年は使える。■


VH-92 Patriot Fully Taking Over Marine One Duties Has Slipped To End Of Decade

After major delays, the VH-92 is stepping into the Marine One role more fully, but total transition will come seven years later than planned.

Joseph Trevithick

https://www.twz.com/air/vh-92-patriot-taking-over-marine-one-duties-full-has-slipped-till-end-of-decade


2024年8月20日火曜日

新型マリーンワンとしてVH-92がついに公式任務についた―8月19日シカゴの民主党大会へ向かうバイデン大統領が搭乗(AP-Military.com)

 


待望の新型ヘリ「マリーンワン」がバイデン大統領の移動で初の就任



A new Marine One awaits President Joe Biden

2024年8月19日月曜日、シカゴのシカゴ・オヘア国際空港でジョー・バイデン大統領を待つ新型機「マリーンワン」。(AP Photo/Stephanie Scarbrough) Associated Press


ョー・バイデン大統領は8月19日月曜日、マリーンワンとして最新型のVH-92Aヘリコプターに初搭乗した。大統領と副大統領用ヘリコプターの老朽化が進んでいるが、代替機材導入が何年も遅れていた。

  バイデン大統領は、民主党全国大会で月曜日夜に演説を行うシカゴにエアフォースワンで到着した後、シコースキー製ヘリコプターに乗り込んだ。シカゴのソルジャー・フィールドの駐車場までは、しばしばオヘア国際空港からの大統領の移動で着陸地点として使用される。 

 1970年代以来、大統領の移動で使用されてきたベトナム時代のヘリコプターを置き換えるための20年にわたるプロセスの重要なマイルストーンとなった。

 2001年9月11日以降の環境下で通信と任務遂行能力を向上させるため、新しいヘリコプターを購入する最初の取り組みがブッシュ政権によって開始されたが、コスト超過が多発し、バラク・オバマ大統領によって廃止された。 

 新しいプログラムはオバマ政権によって開始され、製造元が「ペイトリオット」と名付けられたヘリコプターは、トランプ政権中に公にデビューした。しかし、大統領が機密の会話を行い、緊急時に軍事的決断を下すために必要な、安全な通信システムの問題や、ホワイトハウス南庭を焦がす傾向があったため、プログラムはさらに遅れることになった。

 海兵隊は昨年、通信問題は解決されたと報告したが、排気システムの修正でホワイトハウスの芝生への脅威が無くなったかどうかは不明だ。 同機を運用する海兵隊ヘリコプター第一飛行隊は、ワシントンD.C.周辺での試験飛行やホワイトハウスのスタッフや警備要員を運ぶなど、VH-92ヘリコプターを数年間にわたり定期的に使用してきた。今月初め、最後のVH-92Aヘリコプターが引き渡され、米海兵隊は21機の運用機と2機の試験機を保有するに至った。

 新型ヘリコプターは、市販のシコルスキーS-92をベースにしており、旧型のVH-3DやVH-60Nより大型で航続距離も長い。 ■


Biden Takes Inaugural Flight in Long-Delayed New 'Marine One' Helicopter

Associated Press | By Aamer Madhani and Zeke Miller

August 19, 2024 at 4:33pm ET


https://www.military.com/daily-news/2024/08/19/biden-takes-inaugural-flight-long-delayed-new-marine-one-helicopter.html



2023年3月19日日曜日

新型大統領専用ヘリVH-92がラスベガス遊説のバックアップ機材として展開した。機種交代がいよいよ近づいてきた

 航空宇宙ビジネス短信T2

次期大統領専用ヘリVH-92がラスベガスへ展開。現行VH-3D、VH-60Nの供用期間で終わりが見えてきた


New VH-92 Presidential Helicopter Deploys To Las Vegas

AP Photo/Manuel Balce Ceneta

国海兵隊は、ジョー・バイデン大統領のラスベガス訪問に先立ち、新型大統領専用ヘリコプターVH-92Aを1機派遣したた。しかし、VH-92Aは大統領専用ヘリコプター「マリーンワン」としての使用は未承認だ。そのため、ラスベガス展開は、あくまで「待機」的な位置づけだ。

海兵隊はVH-92Aを合計23機(うち2機は試験用に確保される)受領する。

「海兵隊ヘリコプター飛行隊1(HMX-1)は最近、予備機材としてVH-92Aを1機ラスベガスに配備した」と海兵隊航空広報担当のジェイ・ヘルナンデスはThe War Zoneに語った。「VH-92Aは、機種転換まで、正式なプラットフォームとして使用されることはない」。

「海兵隊は、ホワイトハウス軍事事務所、(海軍航空システム司令部の)大統領ヘリコプター・プログラム・オフィス(PMA-274)、および海兵ヘリコプター飛行隊1(HMX-1)と協力し、VH-3DおよびVH-60からVH-92Aへの移行の条件を整えている」とヘルナンデスは述べた。

HMX-1は、海兵隊の「ホワイトトップ」大統領専用ヘリコプターを運用し、供用中のVH-3DとVH-60NでVH-92が後継機となる。ヘリコプターは、大統領と家族、最側近の国内外移動時に使用され、一般的にマリンワンと呼ばれる。しかし、このコールサインは、厳密には大統領が搭乗時のみに使用される。

HMX-1の象徴的存在だが老朽化が隠せないVH-3D。同隊のVH-60Nとともに、VH-92Aに置き換わる。USN

海兵隊は2022年4月に同型機が初期運用能力に達したと公式宣言したが、重要な注意事項があった。VH-92Aのミッション・コミュニケーション・システム(MCS)の継続的な問題は、同機がマリンワンとして使用されるのを妨げる大きな要因となっている。また、エンジンの排気ガスがホワイトハウスの芝生を焦がす問題が完全に解決されたか不明だが、ラスベガスなど他の場所に配備される場合は問題にはならないだろう。

バイデン大統領は今日、ラスベガスに滞在する予定です。今夜は民主党全国委員会(DNC)の資金集めに出席し、明日はイベントで処方箋薬のコストを下げる計画を話すと伝えられる。

VH-92A含む米軍や他の機関から提供される各種サポートアセットは、事前に配置される。HMX-1の大統領専用ヘリコプターは、通常、使用予定の有無にかかわらず、大統領が旅する先々へ少なくとも2機同行し、空軍のC-17グローブマスターIII貨物機で目的地に空輸される。ヘリコプター1機に対しC-17が1機というのが一般的だ。ヘリコプターは、主要な輸送計画に含まれていない場合、大統領が近くにいるときの不測の事態に備えて、警戒態勢をとって保管されることが多い。そうなると、今回のラスベガス展開でVH-92Aはマリーンワンヘリコプターのバックアップとして機能している可能性がある。

また、VH-92Aは、通常の大統領専用ヘリコプターのペアに加え、ホワイトハウス軍事事務所(WHMO)の承認を得て、緊急事態の追加支援を行うために配備された可能性もある。VH-92とそのクルーが、そう遠くない将来にVH-3DとVH-60Nから主要任務を引き継ぐ準備として、こうした旅に同行することは重要なことかもしれません。

VH-92Aは、より一般的な輸送任務に使用される可能性があり、必要であれば、米国シークレットサービスの即応部隊(Counter Assault TeamまたはCAT)を危機時に搬送できる。しかし、同機は高度に専門的仕様になっておいr、完全装備の武装人員多数の移動用の構成になっていないため、その可能性はかなり低い。HMX-1は、大統領外遊でこのような支援を行うこともあるが、その場合は、大統領以外の空輸部隊、いわゆる「グリーントップ」に所属するMV-22オスプレイ(ティルトローター)を中心に、より適した航空機やヘリを使用する。

VH-92A部隊がいつ最終的にマリン・ワンとして使用が承認されるかも、まだ不明だ。2018年当時、海兵隊は2022年末までにVH-3DとVH-60Nをすべて退役させる想定だった。しかし、少なくとも2022年5月時点では、ヘリコプターの通信装備で修正プログラムがいつ準備され、インストールされるのか、確固たるスケジュールはなかった。当時、海軍関係者は、そもそもこの作業に十分な予算が確保されているのかでも懸念を示していた。昨日発表された海軍の2024年度最新予算案にで、これまで入手できた情報では、VH-92関連の追加資金の必要性が強調されていない。

VH-92に最先端の安全な通信システムを確保することは、マリンワンの任務を日常的に遂行する上で絶対に欠かせない。最重要なのは、大統領と最高顧問が搭乗中に国家司令部と途切れることなくリンクし、それを通じて抑止力を発動できるようにするために、通信機能が必要であるということだ。

いずれにせよ、VH-92Aのラスベガス配備は、海兵隊が新型ヘリコプターを通常の大統領支援活動に組み込むことを進めていることを明らかに示している。■

New VH-92 Presidential Helicopter Deploys To Las Vegas | The Drive

BYJOSEPH TREVITHICK|PUBLISHED MAR 14, 2023 9:24 PM

THE WAR ZONE


©航空宇宙ビジネス短信


2022年5月11日水曜日

次期大統領専用ヘリコプターVH-92はなぜ大統領をまだ乗せられないのか。

 

開発がなかなか終わらない次期大統領選用ヘリコプターVH-92は通信装備の不具合のため、いまだに大統領他政府高官を載せ飛行できない。

兵隊は新型VH-92A大統領専用ヘリコプターを運用可能と宣言し、"マリーンワン "として米国の国家元首を乗せる飛行隊に統合するプロセスを始めた。しかし、同機が搭載する重要な安全通信システムに問題があり、修正に予算が回らないと、完全就航が遅れる可能性がある。


シコースキーVH-92の初期運用能力は12月28日に宣言されたが、ホワイトハウス軍事局(WHMO)は、任務通信システム(MCS)の信頼性が高まるまでは、同機を使ったジョー・バイデン大統領、カマラ・ハリス副大統領、その他高官、その家族、高官の輸送を海兵隊へ許可しない方針だ。

VH-92Aには各種アンテナ、衛星通信用の膨らみが機体後部からテイルブームにかけ多数ついているのがわかる。 Blend Qatipi

海兵隊報道官のジェイ・ヘルナンデス少佐Maj. Jay Hernandezは、IOCは「イベント上の目標」だったと述べている。「海兵隊は、ホワイトハウス軍事事務所、大統領ヘリコプター・プログラム・オフィス(PMA-274)、海兵隊ヘリコプター飛行隊1(HMX-1)と協力し、運用中のVH-3DおよびVH-60からVH-92Aへの移行条件を整備している」。

ヘルナンデス少佐はさらに、VH-92プログラムは「議会で承認ずみの予算コストとスケジュールの範囲内で推移している」と述べている。計画では、今年10月1日からの2023会計年度に、23機のVH-92を海兵隊に配備する。海軍の2023会計年度予算要求では、そのうち21機は次期会計年度にソフトウェアやハードウェアの改修が可能になる見込みで、利用可能機体が50%増加する。海兵隊予算は海軍の予算に組み込まれており、海軍航空システム本部(NAVAIR)がVH-92プログラムを監督している。

海軍の調達担当トップであるジェイ・ステファニーJay Stefanyは今月初め、下院で 「同ヘリコプターでホワイトハウスでの試運転を始めている」と語った。

IOCは2021年7月に設定していたが、そもそも当初2020年半ばの就役開始予定から遅れていた。

海軍はまた、2023年度予算において、VIP乗客が搭乗中に政府機関と安全に通話できるためのMCSでみつかった欠陥に対処する予算が確保されない場合、完全な運用能力実現が遅れる可能性があると指摘している。これはエアフォース・ワンが搭載するシステムと同じ目的で、大統領やその他高官が世界のどことでも途切れることなく超高速かつ暗号化通信を可能とするもの。特に、核抑止力を支える国家司令部との通信を可能とする。大統領専用機には不可欠であるため、VH-92導入の前提とされている。

MCSとは、独立したシステム2系統からなる広帯域の見通し線通信リンクで、ハイドラライトとクライシスマネジメントの2つで構成される。海軍予算書によると、ハイドラライトは無線機、アンテナ、アンプで構成し、Phoenix Air-to-Ground Communications Network(PAGCN)を利用してVoice over IP(VoIP)通話を可能にする。クライシスマネジメントは、防衛情報システム局の安全なネットワークに接続するためのルーター、コールマネージャー、高保証インターネットプロトコル暗号化装置(HAIPE)で構成する。

 

海兵隊第一ヘリコプター飛行隊(HMX-1)が新型VH-92Aの運行テストをホワイトハウスで2018年に行った (U.S. Marine Corps photo by Sgt. Hunter Helis)

VH-92が2023会計年度から交代するHMX-1所属のVH-3DとVH-60N両ヘリコプターには、同様のシステムが搭載済みだ。海軍予算書によると、海兵隊は2016年に新型無線機、アンテナ、付属品、運用飛行プログラムを導入している。ただし、現行機材は老朽化しており、VH-92が完全に配備されるまで現役でいられるように、運用寿命を4000時間延ばす耐用年数延長を行う。

海軍の予算要求では52.30百万ドルのうち16百万万ドルはMCSバージョン4.0とMCS5.0の組み込み、インストールツール、不備の修正の検証、陳腐化への対応に必要とある。海軍によると、その予算が得られないと、完全な運用能力は延期される。

「資金が増えないと、重大欠陥の修正と緊急サービス通信の強化が遅れるか実施できず、運用能力の完全実現は遅れる」と海軍予算書は述べている。「機体の即応性は、グローバルな通信能力と生存性への悪影響とともに、マイナスの影響を受ける。これで、全体的な機体性能とミッションの有効性が低下するだろう」。

「マリーンワン」の代名詞とも言えるVH-3Dは、最高司令官用の強力な指揮統制プラットフォームにもなる。NAVAIR

就航すれば、シコースキーの商用機S-92をベースにしたVH-92は、最も洗練された大統領専用ヘリコプターとなる。韓国の次期大統領のように、同型機を飛ばす国家元首は他にもいるが、各機は商用ヘリを改造したものだ。これに対しVH-92はアメリカの大統領や政府高官を運ぶため専用に製造されたもので、シコースキーがニューヨーク州オーゴで政府に代わり取り付ける、高度かつ機密の防御装備、生存能力、エイビオニクス、通信機器が満載だ。

海軍と海兵隊はVH-92の開発と統合に強気であったが、試験と評価の報告書で問題が指摘されてきた。MCSはともかく、2,500軸馬力のジェネラル・エレクトリックCT7-8Aエンジンは、テスト中にホワイトハウスの芝生を何度も焦がした。この問題を解消するためエンジン排気を改良する必要があり、トランプ政権時代に修正されたが、トランプは最高司令官として同機に搭乗できなかった。

VH-92Aが、ホワイトハウスとエアフォースワンが駐機するアンドリュース空軍基地、メリーランド州のキャンプ・デイビッド間のワシントンDC周辺を頻繁に移動する大統領を運ぶ準備ができたとWHMOが判断するのはいつになるかは不明だ。しかし、IOC宣言をしても、すべての通信機器が正常に作動する完全な運用能力がなければ、同機の運用には意味がない。海外訪問の際には、大統領が降り立つ場所には2機のヘリコプターが同行する。上空では、少なくとも2機で「シェルゲーム」とし、大統領を標的にする者を困難にする。

VH-92は訓練飛行で、ポトマック川沿いを飛行し、ホワイトハウスに着陸する姿が何度か目撃されている。2019年3月には2機が編隊飛行しているのが目撃され、その写真からは、機体に点在するさまざまな通信機器やアンテナを確認できた。

2021年8月にさかのぼるが、NAVAIRで航空対潜戦、強襲、特殊任務プログラムのプログラム執行を務める海兵隊グレッグ・マシエロ少将は、HMX-1は「今日から準備完了となった」と述べていた。つまり、使用には十分な機体がそろい。パイロットの訓練も十分で支援機材もある。

VH-92の初期能力を考えると、HMX-1に欠けているのは、WHMOが海兵隊に大統領搭乗を認める最重要のシステムだ。HMX-1は、重要でない他の人たちを輸送できても、コールサイン"マリーンワン"はまだつけられない。■

 

VH-92 Closer To Being 'Marine One' But Comms System Could Still Cause Delays

BY

DAN PARSONS

MAY 2, 2022 3:15 PM

THE WAR ZONE


2021年11月24日水曜日

いまだに大統領を乗せて飛行できない新型マリーンワン、VH-92Aは何が問題なのか。

 次期大統領専用ヘリコプターとして実機は完成しているものの、供用が遅れているVH-92Aは国家緊急時への投入がまだできない状態にあるとして、いまだに供用開始時期が決まらない。The Warzoneが以下伝えています。60年代から稼働中のVH-3の退役も待ったなしの中、どうするのでしょうか。



AP

 

 

ョー・バイデン大統領が新型大統領専用ヘリコプター、シコースキーVH-92Aに搭乗する機会は当面発生しない。同機事業はさらに遅延し、「ホワイトトップ」塗装のマリーンワンとしての要求事項を満たしていない。中でも国家の存亡にかかわる緊急対応時フライトを十分な信頼性をもって実施できないとの指摘がある。

 

ブルームバーグの本日の記事では米政府関係者が匿名を条件にバイデン政権がVH-92Aが第一海兵ヘリコプター飛行隊 (HMX-1)での運用で安全性を確認できていないとある

 

ブルームバーグは米海軍航空システムズ本部(NAVAIR)の9月28日付内部評価を入手し、VH-92Aを「信頼性、稼働率、整備性のいずれでも最低限の要求水準を満たしていない」との内容を伝えている。

 

同書類ではVH-92Aを「運用に適している」とは評価しておらず、政府機能の継続を緊急時に確実にする点で懸念を呼ぶとしている。大きな危機が発生した場合に大統領を移動させる手段としては致命的欠陥となる。

 

VH-92Aで安心して重要な運航ができない理由としてブルームバーグ記事ではミッション通信装備(MCS)の問題を取り上げているが、全体像は不明だ。試験評価部門の総括によれば、MCSは「緊急時ミッション開始時に重要な通信で遅延が生じ、適時かつ連続した安全な交信が確立できなかった」とある。

 

このMCS問題が発生したものの、整備陣に診断能力がなく、修理が必要な部分へのアクセスに時間がかかりすぎたという。

 

MCS問題は2020年度に出た運用テスト評価部門長 (DOT&E) によるレポートで登場したもので、MCSバージョン3.0のテストを2020年1月に開始している。同バージョンはDOT&EによるVH-92A運用評価OT-B1レポート(2019年5月28日付)の提言を採用し、評価作業中に発覚した欠陥事項に対応している」

 

BLEND QATIPI

VH-92Aが首都上空を編隊飛行した 

 

MCS 3.0についてDOT&Eレポートでは「ハードウェア設計の変更、とくに機内通信システムのコードを変更し、機内各座席間の交信機能を向上すべき」と記載がある。

 

また同じDまた同じレポートではMCS3.1ソフトウェアもテストしたとあり、NAVAIRの設計陣が「改良にとりくんでいる」とし、MCS3.2テストが2021年1月に始まるとある。

 

危機緊急時に大統領を迅速かつ安全に移動させる際に信頼できる通信の確立が最高重要事項になるのは言うまでもない。通信系統で欠陥があれば大統領が最高司令官として機能できなくなる。また米国の核抑止力の信頼性、実効性にも影響が出る。さらに信頼できる通信の維持が大統領による危機時の指揮統制で絶対必要条件となる。


AP

マリーンワンVH-3Dから空軍将校が「フットボール」と呼ばれるブリーフケースを携行している。中には核兵器使用に使う遠隔指揮装置が入っている。

 

ブルームバーグが入手したテスト内容ではさらに「不安定かつ客室内装に欠陥があり、点検頻度の増加、後部エアステア部品」の組み合わせで点検作業に時間がかかり、結果として機体稼働性が低下しているとある。

 

ヘリコプター特有の問題も未解決だ。2018年9月時点でVH-92Aのエンジン排気とローターによりホワイトハウスでマリーンワンが離発着するサウスローンに損傷が発生しているのが見つかっていた。テスト結果総括ではこの問題は未解決とあり、その後も同じ問題が何度も指摘されている。

 

「エンジン排気とともに液体漏出により離着陸地点で損傷が発生しており、利用可能な離着陸地点が限定されている」とあり、さらに海兵隊に「エンジン排気および液体漏出の影響を抑える工夫を継続する」よう求めている。ただし、この点が実行されているかは明らかではない。

 

U.S. MARINE CORPS/SGT. HUNTER HELIS

ホワイトハウスのサウスローンにVH-92Aが2018年9月に初めて着陸した。

 

このためか、ホワイトハウス軍事事務局はVH-92Aでの大統領移動実施を承認していない。

 

VH-92Aは長年稼働しているVH-3Dの後継機として7月に初期作戦能力を獲得のはずだったが、いまだこれは実現していない。ブラックホーク原型のVH-60Nの交代も2023年に迫り、新型ヘリコプター23機を調達する構想だった。IOCは2020年6月の当初予定が今年1月に先送りになっていた。

 

ただし、VH-92Aにも朗報がある。同上のテストレポートでは同機が通常の政府向けミッションに適合していると評価している。例としてキャンプデイヴィッドへの往復移動やエアフォースワン大統領専用機が待機するワシントン郊外アンドリュース共用基地への大統領移動がある。

 

これにより「運用上の効果」はある程度認められるものの、50億ドルを投じたVH-92でペンタゴンがホワイトハウスが想定した内容には到底届かない。

 

また、同機事業の詳細の公表がここまで遅れた理由も不明だ。DOT&Eによるテストは今年4月に終了しており、5月初めに海兵隊のグレッグ・マシエロ少将Major General Greg MasielloがNAVAIR特殊ミッション事業の責任者として「同飛行隊及び同機事業は本日任務実行の準備が整った」と述べていた。

 

ブルームバーグはテスト担当部門に接触し、三カ月に及ぶ試用期間の結果を求めたが、結果は「公開情報ながら統制下にある」との回答を得ただけだった。テスト部門の報道官かはらVH-92Aが「大統領、副大統領、閣僚、国家機関の長の移動任務実施を効果的かつ適度に行えるかを評価した」との回答を得た。

 

他方で海兵隊航空部門報道官はブルームバーグに同報告書では提示された問題点が解決していないとの指摘事項は記載されていないと伝えてきた。ただし、同報道官はVH-92Aが大統領を乗せてのフライトミッションをいつ開始できるか見通しを述べていない。

 

VH-92A製造にあたるロッキードのシコースキー航空機部門の広報は「弊社顧客と同機が運用上の要求内容を達成できるよう努力している」と述べた。

 

そのため、VH-92Aがマリーンワンとして投入されるのがいつになるのか見通しがつかない。海軍がVH-92A合計23機分として15億ドルを支出ずみだが、各種問題を解決しないと同機はミッションの完全実施ができない。VH-3DおよびVH-60Nの後継機種が必要な中、これ以上の遅延は望ましくない。■



Future Marine One Helicopter Is Struggling To Meet Requirements For Emergency Missions: Report

 

BY THOMAS NEWDICK NOVEMBER 23, 2021

https://www.thedrive.com/the-war-zone/43260/future-marine-one-helicopter-is-struggling-to-meet-requirements-for-emergency-missions


2018年11月23日金曜日

次期大統領選用ヘリコプターVH-92のテストは順調に進んでいる模様

Next Presidential Helicopter Passes First Test Landing at White House 次期大統領専用ヘリコプターがホワイトハウス着陸テストに合格

November 20, 2018 1:41 PM

シコースキーVH-92Aが2018年9月22日にホワイトハウスに着陸した。同機は次期大統領専用ヘリコプターとなり旧式化したVH-3DやVH-60Nと交代する。Naval Air Systems Command photo.


期大統領専用ヘリコプターのシコースキーVH-92Aがホワイトハウスへの着陸テストに成功したと海軍航空システムズ本部がUSNI Newsに伝えてきた。
 

9月22日、VH-92はナショナル・モール上空から進入しホワイトハウスの芝生に初めて着陸した。大統領専用ヘリコプター更新事業としてシコースキーは2014年に12億ドル契約を交付され、まず6機を製造し、オプションで別に17機を海軍が購入できる。ロッキード・マーティンがその後シコースキーを買収している。
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10年以上前の2005年にロッキード・マーティンは当時のライバルたるシコースキーを破り次世代大統領専用ヘリコプター調達の契約を獲得していた。しかし、遅延と予算超過のためVH-71事業は中止となり、あらたな候補探しが始まったのだった。

ワシントン記念塔を背景にホワイトハウスに着陸するシコースキーVH-92A。9月のテスト中に撮影。Naval Air Systems Command photo.


第二回目調達でシコースキーのVH-92A案が採用された。S-92が原型で、11カ国で国家元首輸送に用いられる実績が物を言った格好だ。VH-92導入で同じくシコースキー製のVH-3D、VH-60Nが更新される。運用は海兵隊が担当する。

今回着陸したのはNAVAIRに納入された初号機で、初期作戦能力獲得は2020年末となるが、機体製造は2023年までに完了するとNAVAIRが述べている。

VH-92Aテストの模様はVertiflite Magazine 11月/12月合併号が真っ先に伝えているので参照されたい。■