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2021年4月18日日曜日

南シナ海での運用をにらんで水上機飛行艇のリバイバルがやってくる(?) 米海軍が中国新型大型飛行艇AG600を意識。しかし、技術は日本が握っている。

 Coast Guard HU-16E amphibious aircraft

沿岸警備隊のHU-16Eアルバトロス水陸両用機がマサチューセッツ・オーティス空軍基地に配備されていた US Navy


年の3月で米軍から水上機が姿を消し38年になった。沿岸警備隊のHU-16Eアルバトロスが最後の水上機だった。


第二次大戦で水上機は海軍の勝利に大きな役割を演じた。冷戦時初期にも投入構想があったが、優位性は消えていた。ところが中国が大型水上機を開発していることで水上機の有用性に注目が改めて集まっている。


2020年7月に中国はAG600水上機クンロンの海上運用テスト開始を発表した。


AG600は世界最大の水上機で山東省の空港を離陸し、青島沖合に着水し、4分間水上移動した後、離水し無事帰還した。


米軍では水上機を過去の遺物とみなしていたが、同機の登場で一気に関心が集まった。


かつては必須装備だった

Consolidated PBY-5A Catalina flying boat

コンソリデーテッドPBY-5Aカタリナ US Navy



水上機はかつては米海軍で必須装備だった。空母が支配の座に就くより前に、水上機母艦が長距離航空作戦に必要な艦種とされた。水上機母艦は大型クレーンで水上機を吊り上げ、機体の補給整備を行った。米海軍初の空母USSラングレーは元は給炭艦で水上機母艦に改装されてから1920年代末に空母になった。


その後、水上機は艦艇が発進させるようになり、長距離型は対潜戦、捜索救難、海上制圧や偵察任務のような重要な役目に投入された。本艦隊から数百マイル先で敵部隊を探知できる能力が特に重宝された。


その中で最も米国で記憶に残る機体がPBYカタリナ飛行艇だ。コンソリデーテッド航空機が製造し、海軍が1936年に制式採用した同機はミッドウェイで日本艦隊の位置をつきとめ、海上を漂う搭乗員や水平数千名を救助したほか、枢軸国潜水艦20隻以上を沈めた。


英国に供与されたカタリナに米人パイロットが登場し、ドイツ戦艦ビスマルクを発見したのは1941年5月で、米国の参戦7カ月前のことだった。


冷戦時の運用構想

Navy seaplane tender Salisbury Sound Martin P5M-1 Marlin

水上機補給艦USSサリズベリーサウンドがマーティンP5M-1をクレーンで釣り上げている。1957年サンディエゴ。US Navy


水上機の役割は第二次大戦終結を契機に弱体化した。枢軸側潜水艦が姿を消し脅威は減り、太平洋で獲得した各地の基地から米海軍は長距離地上運用機材を飛ばした。しかし、海軍は水上機を直ちに放棄しなかった。冷戦初期には水上機打撃部隊の創設を狙っていた。


コンヴェアR3Yトレイドウィンドは輸送飛行艇で1956年に採用が決まり、航続距離は2千マイルを超え、100名あるいは貨物24トンを運べた。空中給油型ではグラマンF9Fクーガー4機へ同時給油できた。だが、同機にはエンジンで問題があり、1958年には11機全機が退役している。


Convair R3Y-2 Tradewind refueling Grumman F9F-8 Cougar

コンヴェアR3Y-2トレイドウィンドがグラマンF9F-8クーガー四機に同時に給油している。1956年9月. US Navy


同じコンヴェアによるF2Yシーダートは野心的なねらいのデルタ翼水上戦闘機だった。超音速飛行可能で20mm機関砲4門あるいはロケット弾を搭載するシーダートは1953年に初飛行したが、死亡事故の発生で1957年に開発中止となった。


より鮮明な印象を与えたのがマーティンP6Mシーマスターだ。核兵器運用を当初構想された同機は大型ジェット飛行艇で亜音速飛行で1,000マイルを超える航続距離を有していた。


だがポラリス潜水艦発射式弾道ミサイルの開発によりシーマスターには機雷敷設が新たな任務となった。


結局、弾道ミサイル潜水艦と大型空母の登場で水上機打撃部隊構想は意味を失い、シーマスターは1959年に開発中止となった。


AG600の登場

AVIC AG600 Kunlong floatplane

AVIC AG600飛行艇. Xinhua/Li Ziheng/Getty


米国で水上機はすべて姿を消したが、一方で今でも運用している国がある。


ロシアはターボプロップのベリエフBe-12にかわり、ジェット推進式のBe-200ESの導入を進めている。


日本には長期にわたる輝かしい水上機運用の伝統があり、最高峰の性能を有する新明和US-2を供用しており、AG600の登場までは世界最大の飛行艇だった。


AG600は中国航空工業(AVIC)が製造している。中国人民解放軍空軍のステルス機等のメーカーだ。


AVIC AG600 Kunlong floatplane

AVIC AG600飛行艇. Xinhua/Li Ziheng/Getty


AG600開発は2009年に始まり、機体製造は2014年スタートした。存在が公表されたのは2016年で、初飛行は2017年だった。機体開発は2022年までに終了し軍に引き渡すとしている。


同機は全長120フィート翼幅127フィートで、50名を乗せ、最高速度310マイルで航続距離は2,800マイルである。


AG600は多用途機となり、捜索救難、輸送、森林消火に投入を想定する。AG600は南シナ海で特に有益な機体となり、中国が造成した各地の人工島をつなぐ機能が期待される。


水上機のリバイバルが来る?

Japan amphibious aircraft seaplane Iwakuni

海上自衛隊の水陸両用機US-1Aが岩国基地へ着水の準備に入った。2013年1月。US Marine Corps/Cpl. Vanessa Jimenez


中国がAG600開発を進める中、米国もインド太平洋を重視し、多数の島しょがあることから水上機のメリットに再度注目している。


水上機なら陸上基地や滑走路が破壊されても何ら心配ないからだ。


飛行艇は大量の兵員さらに一定の軽車両なら直接沿岸に送ることができる。これは島しょ部への展開や増派の際に効果を発揮する。


空中給油機に転用すれば、水上機により空母艦載機の運用範囲がひろがり、空母搭載の給油機を廃し、その分多くの攻撃機材を搭載できる。水上機自体も艦艇や潜水艦から給油を受ければ、運用範囲を拡大できる。


ただし、よい話ばかりではない。水上機はどうしても陸上機や艦載機の飛行性能には追い付かない。また水上機の供用期間は陸上機より短くなる。さらに水上機の性能をフルに活用するには水上機母艦が必要となるが、現時点で海軍にはこの用途の艦艇は皆無だ。


インド太平洋での作戦運用という課題に関心が集まる中、中国が改めて飛行艇を重視する姿勢を示していることで、水上機運用の戦術面での意義の検討が重要になってきたといえよう。■


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Flying Boats Get New Attention Amid Competition With China in Pacific

The US ditched its last flying boats 38 years ago, but they could still help fill the gaps against China in the Pacific

Benjamin Brimelow 18 hours ago


2018年10月22日月曜日

中国の水陸両用機AG600が初の離着水テストに成功

China-made large amphibious aircraft completes first water takeoff 中国開発の大型水陸両用機が初の水面離陸に成功

Source
Editor
Li Jiayao
Time
2018-10-20


AG600,が湖北省荊門市の貯水池で滑走中。AG600は荊門市で初の水面テイクオフに10月20日に成功した。 (Xinhua/Cheng Min)


国の国産開発大型水陸両用機AG600が10月20日午前、中国内陸部の湖北省荊門市Jingmenで初の離着水に成功した。
恐竜のニックネームが付くAG600は世界最大の水陸両用機だ。初飛行は2017年12月だった。
同日午前8時51分、機体は荊門の貯水池を離水し、14分後になめらかに着水した。
AG600は大型特殊用途民生機で森林消火や海上救難の用途を想定しており、中国の「大型機ファミリー」として大型輸送機Y-20、大型旅客機C919に次ぐ三番目の機体となる。
中国航空工業が開発し、国産開発ターボプロップエンジン4基を搭載した同機の機体サイズはボーイング737にほぼ等しい。最大離陸重量は53.5トンだ。
同機は陸上、水上の双方で運用可能で、機体下部はV字形となっており、耐波性を向上している。
森林火災に投入した場合は水12トンを一度に運び火災箇所に繰り返し向かうことができる。

海上救難任務では波高2メートルまでの離着水に耐える。海上捜索救難任務では50名を運ぶ。中国の海洋監視安全パトロール任務の支援も可能だ。■

なんでも大きいのが好きなのは米国と似ていますね。森林火災用などとは誰も信じておらず、南シナ海の人工島支援に投入されるのは時間の問題でしょう。2メートルの波までなら対応可能とありますが、US-2は公称3メートルまで対応できるので、性能が必ずしも優れいているわけではないようです。ただ南シナ海やインド洋での荒天状況が太平洋より少ないことは想像に難くないのでむしろペイロードと航続距離が気になります。しかしそんなに大きな貯水池なのでしょうか。てっきり沿岸の海面からのテスト飛行だと思っていました。


2017年12月26日火曜日

中国の大型水陸両用機AG600が初飛行に成功、今後の動向に注意

China's AG600 Amphibious Flying Boat Takes To The Skies On Its Maiden Flight 

中国のAG600水陸両用機が初飛行


It is the largest amphibious aircraft currently being produced and it's tailored to support China's extra-territorial claims.  

製造中の両用機では世界最大で中国の領土主張の一助となるよう設計されている

China's Homemade Amphibious Aircraft AG600 Makes Maiden Flight In ZhuhaiVCG—VCG VIA GETTY IMAGES
 BY TYLER ROGOWAY DECEMBER 24, 2017

国の野心的なAG600水陸両用機プロジェクトについては以前もお知らせしているが昨日同機が初飛行に成功したので改めてお伝えする。
ほぼ737並みの機体は珠海空港(広東州)から離陸した。初飛行には派手さがないが中国メディア、ソーシャルメディアが取り上げている。
ロイターは同機を新華社が「海洋島しょ環礁の守り神」と表現していると伝えた。その表現は事実とそんなに離れているわけではない。AG600は他機がまねできない機能を実現し中国本土から遠く離れた島しょ部の領有権主張を支える手段となる。特に南シナ海で構築された人工島の支援に投入されるはずだ。
VCG/VCG VIA GETTY IMAGES
The AG600's aircrew deplanes after a successful first flight.
2016年7月にWar Zoneは以下お伝えしていた。
「中国による公式説明では同機は消火任務・救難任務に投入するとあるが同時に広範囲な海洋哨戒飛行を南シナ海で行うだろう。
中国の巨大「沿岸警備」艦と同様にAG600は漁船やエネルギー採掘船の捕捉、監視、追尾に使うのではないか。権益がぶつかる海域で他国の動向も監視するはずだ。
AG600で中国は南シナ海各地の人工島とくに滑走路がない地点へのアクセスが手に入る。ハブアンドスポーク方式でフィアリークロス礁にできた滑走路からAG600は人員、燃料、その他補給品を別の島に送る。長距離飛行能力で本土にも飛び、輸送能力が強まる。人工島の戦略的価値や有用性が高まる。
AG600は新型両用機として多様な任務に投入され遠からぬ将来に同機を原型に別の機体が登場するだろう。
AG600の武装化も容易にできるはずだ。レドームに戦闘機並みの小型レーダーを搭載すればリアルタイムで敵艦船の位置を味方ミサイル部隊に伝えることができる。主翼下にハードポイントが将来追加されるかが注目される。その場合、AG600は強力な制海用両用機材や対潜機に変わる
VCG/VCG VIA GETTY IMAGES
AG600は最大の水陸両用機で中国政府は17機を発注中で、今後この原型から専用型が登場すれば生産数は大はばに増えるだろう。
新型機をゼロから開発するのは大変な作業だ。中国もこれを意識してAG600輸出の可能性を模索している。350mphで飛行時間12時間との性能が本当なら有益な機体に見る国も出よう。AG600が消火機になる、あるいは乗客50名と貨物を遠隔地に運ぶのであれば需要は少ないが訴求力を感じる顧客があるはずだ。
まもなくフライトテストを開始する同機には今後も注視する必要があるが、中国が航空宇宙産業を世界規模にで成長させようとする中で同機は機微性の高い軍用装備を搭載していないため中国報道機関が同機の将来の活躍をあれこれ書き連ねるのは確実だろう。■

Contact the author: Tyler@thedrive.com

2016年7月27日水曜日

★中国が新型水陸両用機の生産を開始。気になるUS-2との比較は?



中国が新型飛行艇の生産を開始した模様です。
まずDefense Newsの伝え方です。


China Kicks Off Production of New Amphibious Aircraft

Wendell Minnick, Defense News8:40 a.m. EDT July 26, 2016

636051190754469037-P1140414.JPG(Photo: Wendell Minnick)
TAIPEI —  中国がAG600水陸両用機を珠海生産開始した同機は生産中機体では世界最大の水陸両用機と中国メディアが伝えている
報道によればメーカーの中航通用飛機有限責任公司China Aviation Industry General Aircraft Co. (CAIGA)は同時に小型のH660の製造も手がけている。両機種は2014年の中国国際航空宇宙展(珠海航空ショー)で模型が公開されている。
AG600はショーで配布された資料によれば消火、捜索救難、貨物輸送、海上哨戒の4つの任務を実施できる。乗客50名を搭載し、毎時350マイル(約560キロ)で3,400マイル(約5,400キロ)まで飛行できる。
その性能だと海南島から南シナ海で中国軍が占拠するウッディ島までが実用行動範囲に入る。■

次にJane'sです。数字が一部違うのはご容赦ください。

China rolls-out indigenous flying boat

Gareth Jennings, London - IHS Jane's Defence Weekly
26 July 2016

  
The Aviation Industry Corporation of China (AVIC) AG600 amphibious aircraft was rolled out on 23 July. Source: Xinhua
中国が新型水陸両用機を中国航空工業(AVIC)の珠海工場で生産開始した国営通信が伝えている。
翼幅38.8メートル、全長37メートル、ターボプロップ4発のAG600は中国が製造する飛行艇として最大規模だ。
新華社通信によれば同機の最大離陸重量は53.5トン、最大巡航速度500キロで4,500キロの飛行距離を有し、飛行時間は最大12時間だ。離水には1,500メートル長、幅200メートル、深度2.5メートルの水域が必要だ。
新華社伝ではAG600は消火任務と海上救難任務に投入すると伝えている。■
参考 US-2の諸元 (Wikipediaより)
  • 全長 - 33.25m
  • 全幅 - 33.15m
  • 最大離着陸重量 - 47.7t
  • 巡航速度 - 260kt=M0.38(約470km/h)
  • 航続距離 - 4,700km(約2,500海里
  • 離水滑走距離 - 280m(43t時)

なるほどAG600はやや大きな機体ですが、離水能力は低いようですね。大きなモノ好きの中国らしくとにかく大型機を作ったということでしょうか。この機体が南シナ海でどう運用されるのかが注目ですね。