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2022年9月11日日曜日

米海兵隊がめざす新型軽量偵察車両ARVはアジア太平洋での作戦を睨んで新機能を満載し、発展刷る構想。2030年実戦化を目指し、注目される

 

5月15日、遠征前進基地演習で上陸した軽装甲車を操作する米海兵隊員。40年間海兵隊に貢献してきたLAVが先進偵察車両に交代する (U.S. Marine Corps photo by Sgt. Alexis Flores)



General Dynamics Land SystemsとTextron Systemsの両社は、70億ドル近くをかけた対決をしている



国防総省が全領域統合指揮統制を通じ戦場情報の優位性の重視に傾く中、海兵隊の新しい偵察車両の探求は、従来の戦場情報収集だけでなく、統合軍全体のデータを取り込み処理する能力に重点を置いている。

 現在、海兵隊は5年にわたる技術実証やその他予備的な取り組みを経て、General Dynamics Land SystemsとTextron Systemsの2社から、12月に評価用の最終バージョンの高性能偵察車(ARV)の提供を受ける予定になっている。採択案の発表は来年末の見込みだが、両社は年末の期限に間に合うよう試作品の水中走行試験を行ったと幹部は述べている。

 落札企業には最大68億ドル相当の契約となり、軍上層部からこのプログラムに懐疑的な意見も聞かれる中、Breaking Defenseは両社に、ARVが戦闘に何をもたらすか、またこの新型戦闘車両が国防総省の新たな関心事である、情報戦と無人システムとどう関わるかを理解するため取材した。

 「高度偵察車(ARV)は、海軍海兵隊2030構想の海兵隊要件を実現するため不可欠である」と海兵隊は、議員向け最新の予算要求で書いている。「偵察、監視、目標捕捉システムのポートフォリオの一部として、ARVは、陸上水上で高機動性を持ち、感知、通信、ロボットと自律システム強化チームの有人ハブとして戦う専用戦闘車両システムになる」。


2014年3月13日、ノルウェーのブローシュタットボトンで、演習コールドレスポンス2014の一環として、第2軽装甲偵察大隊の軽装甲車LAVが走行した。 (Photo by Staff Sgt. Steve Cushman)


コマンド&コントロールとUAVに注力

 ARVの中核目的は、1980年代から海兵隊に貢献しているジェネラル・ダイナミクス製軽装甲車Light Armored Vehicleを置き換えることにある。

 LAVプログラムは2030年代半ばに供用を終える。新型ARVが「完全な運用能力」を獲得した直後で、地上車両が完全にテスト実証され戦闘に対応できる軍の自信を示す国防総省の最終取得マイルストーンになる。

 海兵隊は、指揮・制御・通信・コンピュータ-無人航空機システム(C4/UAS)、有機精密射撃搭載、対UAS、30mm自動砲・対戦車誘導弾、兵站、回収の6種類のARVにそれぞれ独自の役割を持たせようとしている。 (これとは別に、海兵隊は別のプログラムである水陸両用契約車両Amphibious Contract Vehicleの主契約者BAE Systemsに、ACVのC4/UASパッケージをARVに装備する方法を研究させる契約を締結している)。

 海兵隊にとっての重要性を示すものとして、ARV競作の勝者は、海兵隊がC4/UASのバリエーションでどちらを選ぶかによって決定される。その後、海兵隊は採択企業と協力して、残る5種類のバリエーションを製造することになる。

 海兵隊は、C4/UASを「戦場のクォーターバック」と呼ぶ。これは、ペンタゴンと海兵隊のネットワークを介して膨大なデータを取り込み、受け取った情報に基づきその場で海兵隊の意思決定を支援できるARVを開発することが目的だ。


ペンタゴンと海外に深い実績を持つ2つのチーム

 ARV入札を担当したジェネラルダイナミクスのフィル・スクータPhil SkutaはARVの前身LAVとARVの違いは、データを取り込む能力とする。

 「LAVについては、基本的に40年前の技術を使っている。ARVでは、戦場での敵の動きを感知し、検知することができるようになる」。

 海兵隊が戦場全体からデータを取り込み、分析し、行動できるようにすることは、国防総省の JADC2 の取り組みの中核であり、より具体的には、通常Project Overmatch と呼ばれる海軍の取り組みだ。

 海軍当局は、Overmatch の具体的な内容については口を閉ざしている(同プログラムの主幹は、沈黙は敵対勢力に推測させるためだと述べている)。この技術の初期のものは、今年後半に空母に搭載される予定だった。


General Dynamics Land Systems幹部は、ARV競合の自社製品はインド太平洋での運用に「最適」と述べた。 (Photo courtesy of General Dynamics.)


 海兵隊は、周囲の状況のデータをARVに提供するため、車両から30マイルまで離れて展開可能な無人航空機システムの実用化を想定している。今回の競作での焦点は、無人機をARVにどう統合されるかを明確に把握することだと、幹部たちは言っている。

 「無人航空機がどのように飛行するのかを理解し、そのデータをARVに戻し、データを偵察やその他の判断に役立つ情報に変えることが、無人航空機の能力を統合する意味だ」と、スクータは述べている。

 ジェネラル・ダイナミクス社が有利なのは、このプログラムにおける同社のじっせきだ 。同社はLAVのメーカーとして2019年以降、技術実証に参加してきた。また、同社は最近、機動保護火力車で11億4000万ドルの陸軍の別契約を獲得している。

 「ARVは 複数地域で、特に海兵隊がインド太平洋地域に将来を賭けているように、沿岸地域(および)海岸線で動作できる小型、モバイル、生存可能なプラットフォームでなければなりません」とスクータは述べている。「当社の車両は、このような戦術領域での活動に最適だと考えています」。

 このような実績があるにもかかわらず、スクータは、同社のARV候補は「クリーンシート」デザイン、つまりゼロから作ったと言っている。

 同様に、Textron陸海空システム担当上級役員デイビッド・フィリップスDavid Phillipsは、Breaking Defenseに対し、コットンマウスCottonmouthと呼ぶ同社提案は、同社では陸軍と別契約もあるにもかかわらず、「クリーンシート」デザインだと語っている。


Textronの「Cottonmouth」車両は、海兵隊の先進偵察車プログラムに提出される。 (Photo provided by Textron Systems)


 インタビューの中でフィリップスは、コットンマウスは、米陸軍や海外顧客が購入している同社のM117装甲警備車や、M117の亜種であるコマンドーと異なると強調した。

 また、C4と無人システムの統合が、ARVの最初のバリエーションを特に複雑なものにしていると述べた。しかし、当然ながら、海兵隊のニーズを考慮して入札するという。

 「Textron Systemsは、地上戦闘車両の開発・製造だけでなく、有人・無人システム含む各種領域のシステムインテグレーションで、他社にない実績があり、この設計が海兵隊に大きな価値をもたらすと考えています」。

 M117とコマンドーに加え、Textronは国防総省で使用されているShadowとAerosonde無人航空機システム、海兵隊の新しい船舶海岸接続装備(海兵隊とその装備を外洋の輸送艦から浅海を通り、最終的に陸地に運ぶ中型船舶)を担当している。新型ARVの重要要件は、1隻の船舶海岸接続装備で4台を輸送可能な重量とサイズであるため、後者に精通していることは重要だ。

 「当社は、耐久性と信頼性の観点で、頑丈な車両を作ろうとと考えていました。また、サイズと輸送性の観点から、1つの船舶海岸接続装備に4台を搭載することを念頭に置いていました。海兵隊にとって、沿岸から陸上への輸送がいかに重要であるか、当社はよくわかっています」。

 艦と海岸を結ぶ接続船の性能に精通していることと、同社の無人システム統合の幅広いポートフォリオが相まって、最終入札で有利に働くことは間違いない。


トップが語る、このプログラムへの懐疑的な眼差し

12月に両社が入札し、2023年秋ごろに落札者が発表される予定だ。すべてが計画通りに進めば(ペンタゴン調達の世界では、確実なことはない)、次期高性能偵察車両は2030年頃に実戦投入可能となる。

 海軍の2023年度予算の説明文書によると、海軍はARVを「海兵隊の偵察能力の近代化で重要」とみなしている。しかし、国防総省のその他の大規模調達と同様に、全員が完全に納得しているわけではない。この場合、懐疑的なのは海兵隊上層部だ。

 「私は、全領域偵察と対偵察が将来の有事における重要要素であると繰り返し述べてきたが、車輪と有人装甲を備えた地上偵察部隊の整備が、インド太平洋地域における最善かつ唯一の答えになる確信がない」と、海兵隊総監デヴィッド・バーガー大将は述べている。「既存の能力を拡張する前に、あるいは数十億ドルの調達資金を新型偵察車両(ARV)の購入に振り向ける前に、この結論を支持する証拠を第三段階でもっと見る必要がある」。

 同大将はその後、2022年5月のForce Design構想の更新で、海兵隊にARVに関する「すべての仮定を見直し、検証する」よう指示した。つまり、ペンタゴンの風向きが変わることを考慮し、このプログラムが2030年に戦うに値する製品を生み出せると確認するよう、バーガーは求めているのだ。

 バーガーのコメントにもかかわらず、ARVプログラムは進行中で、競作の勝者にとっては、海兵隊の将来の地上車両ポートフォリオでの地位を確固たるものにする機会となる。■



What is the Marine Corps’ Advanced Reconnaissance Vehicle?


By   JUSTIN KATZ

on September 06, 2022 at 11:15 AM


2013年9月23日月曜日

テキストロンが製作中のスコーピオンは既成概念を破る機体になる予感

Textron Unveils Scorpion Light Attack, Recce Jet

By Amy Butler
Source: Aviation Week & Space Technology
 
aviationweek.com September 16, 2013
Credit: Textron

ペンタゴンに対して民間会社から国防総省が要求していない性能をまったくの新規機体として提案するのは相当の勇気が必要だろう。ましてや国防予算そのものが大幅な削減を受けつつある中では。
  1. だがこれこそ新しく生まれた共同事業体としてテキストロンと新興企業エアランドエンタープライジスAirLand Enterprisesが行おうとしていることなのだ。テキストロンはセスナビジネス機で知られる企業であり、ベルヘリコプター事業も長年にわたる回転翼機の経験がある。そして提携先エアランドは投資家数名によりできた企業で退役国防関係者も巻き込み軽量攻撃機の新しいコンセプトを実現するべく発足した。
  2. 予算状況が厳しい中で同事業体は新しい機材、複座双発のスコーピオン構想の有効性を示す必要がある。自己資金による同機は9月16日の空軍協会年次総会で発表され、このたびAviation Weekは関係者から詳しい内容を独自に知らされた。
  3. スコーピオン実証機は米空軍が求める低価格低運行コスト機材の要望に応えるもので5時間にわたり情報収集監視偵察(ISR)任務や兵装を搭載しつつ飛行して、空軍が想定するローエンド任務(米国からの阻止行動、自然災害への緊急対応、領空パトロール)に対応する。目標は飛行時間あたり運航コストを3,000ドル以下に抑えることだ。ただし同社は機体価格の目標水準は明らかにしていない。ペンタゴンからは類似ミッションの多くをこなすF-16の時間当たり運用コストは24,899ドルと公表している。
  4. アフガニスタンとイラクではF-15、F-16、A-10]が引き続き近接航空支援に投入されており、まったく制空権で心配のない環境で作戦が実施中だ。これでは過剰投入との声が出ている。また各機の高速度飛行性能、高G機動操縦性もこれらの戦場では使い道がなく、単に爆弾を投下するか地上部隊に上空監視を提供するだけだ。
  5. 「軍はハイエンドに関心を集中させています」とF-35調達で既存機種の多くを代替させようとする米空軍の動向を表現するのがテキストロンCEOスコット・ドネリー Scott Donnelly は語り、「だから需要があるのであり、国防総省の予算がこれから削減されることがわかっており、だからこそ今がチャンスなのです」
  6. スコーピオンの運用コストがそのとおりとするとペンタゴンは一年で燃料費だけで10億ドルの節約になる、と元空軍長官のF・ホイッテン・ピータースF. Whitten Petersはじめとする退役軍関係者は試算しており、彼らがエアランドを創設し、スコーピオン構想を数年前に提唱したのだ。テキストロンと提携を2012年に結んで勢いが増してきた。
  7. テキストロンにとって今回の提携は想定外の案件であった。同社は戦闘用の固定翼機を製造した事例がない。傘下のベルヘリコプターはH-1およびV-22ファミリーで軍用機を生産し、テキストロンシステムズは軍用車両や無人機製造でペンタゴンと密接な関係にある。だがテキストロンは米空軍の契約実績トップ企業には入っていない。だがエアランドの退役将官から空軍に本案件の紹介があり、相当の営業活動があったらしい。.
  8. ピーターズの空軍長官在任時にハイローミックスとして双発F-22と単発F-35の組み合わせが構想された。両機種ともロッキード・マーティンが契約会社で両機種ともに技術問題と遅延で価格が大幅に上昇している。その結果、空軍の調達機数はF-22が187機となり、F-35は今のところ1,763機になりそうだ。同時に両機種ともに低視認性性能を持つことで運用コストは高くなる。
  9. クリストファー・ボグデン空軍中将(F-35計画主査) Air Force Lt. Gen. Christopher Bogdan, F-35 program executive officer によればF-35Aの機体単価は生産がピークに入れば80ないし90百万ドルになるというが現時点での単価は124百万ドルで、ここにエンジンおよびテストで判明した必要な供用後改修の費用を含む。
  10. そこでスコーピオンは空軍で大部分を占める上空監視ミッションを担うローエンド機材となる。そしてはるかに経済的にそのミッションを実施できるとピータースは語る。
  11. ただし空軍からはそのような機材が必要との声は出ていない。調達は通常は長い工程を経て、提案競争により決定される。これに対しテキストロンはジェネラルアトミックスの例を期待するだろう。同社のプレデター、リーパーは空軍の要求を待たずに納入することができた。その理由として議会の一枚岩の支援があったからだ。
  12. スコーピオンはタンデム構成の複座機だがパイロット単独でも運用可能だ。設計では 3,000 lb.の兵装あるいは情報収集機材を機内搭載するほか、ハードポイント6箇所を準備する。エンジンはハネウェルTF731双発で十分な推力のほかISR機材の冷却に必要な出力も得る。
  13. コックピットにはコバム Cobham を選定し、フラットパネルディスプレイを多用する。スコーピオンはフライバイワイヤ機構を選択せず、コストを下げ、構造を簡略化している。同機の無人機版が将来実現する可能性があるとドネリーは認めている。
  14. エアランドは複合材料性機体で経験のあるものをビジネスジェット機分野やF-22から集め、機体を設計した。機体製造はテキストロンのウィチタ工場で行われ、今後の国際市場での需要規模を考えると複合材料の採用で機体寿命は相当の長さになると見られ、太平洋諸国や中東市場で苛酷環境に耐えるものとして注目をあびるだろうとドネリーは見ている。
  15. 両社は空軍が購入を決めるまで座って待つつもりはなく、海外向けに営業を開始する構えだ。ただしドネリーは空軍による調達決定は海外販売の可能性を引き上げる可能性があると認めている。
  16. またスコーピオンで両社は当初の目標ミッションである軽攻撃,高速ISRがすきま需要であることで営業に拍車をかけるだろう。現状は双発ターボプロップ機としてMC-12プロジェクトリバティがこなしているミッション、T-38後継機、ハイエンドステルス戦闘機のすき間になるという認識だ。
  17. 同盟各国でターボプロップ武装攻撃機を導入する動きがあり、ペンタゴンはエンブラエルA-29スーパートゥカーノをアフガニスタン作戦用に調達する。また練習機を軽攻撃ミッションに転用する傾向も各国で見られる。
  18. これに対しスコーピオンは双発ターボプロップ各機より速度ですぐれ、練習機より機構が簡略化される。練習機はF-22やF-35パイロット養成用に高G対応の設計となるからだ。またプレデター、リーパーといったUAVを国境監視用に使用しようとする国が今後出てくるが、国内航空交通領域の大部分で無人機は締め出されテイルのが現状だ。
  19. スコーピオンの機体組立は最終段階に入っており、初飛行は今年末までに実施が予定されている。■