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2022年9月7日水曜日

動き始めたAUKUS。豪海軍乗員が新鋭英原潜で訓練。豪州向け原潜建造にむけ、人材養成へ

 

オーストラリア海軍の潜水艦乗員が英海軍に加わる。AUKUSで英豪両国の国防面手のつながりが深まっている象徴だ (Picture UK MoD/LPhot Kevin Walton)



オーストラリア海軍の乗組員が、新鋭艦HMSアンソンはじめ

とするアストゥート級英潜水艦で訓練を行う


 

英国海軍プレスリリースより


国首相は、ベン・ウォレス国防長官とともに、駐在武官リーランド大佐を代表する米国との三国間協力関係(AUKUS)を発展させ、英国=オーストラリア間の国防面での深いつながりの重要性を強調した。

 首相と閣僚は、オーストラリアの新政権発足後初めて英国を公式訪問したリチャード・マールズ副首相Deputy Prime Minister Richard Marlesを迎え、英国海軍アスチュート級潜水艦の5隻目、HMSアンソンの引渡式に出席した。

 海軍力は両国の将来の防衛関係の中心となり、今回の訪問は、統合見直しの優先事項と、インド太平洋地域の安定を促進する英国、米国、オーストラリアを結ぶAUKUSパートナーシップの重要性を補強するものだ。

 英米両国は、すでにオーストラリア海軍の原子力訓練コースに要員を受け入れており、来年はさらに多くが参加する予定だ。この訓練と交流は、AUKUS3カ国による多世代にわたる海軍のパートナーシップの始まりを意味する。

 「本日は、自由民主主義秩序、特にインド洋において増大する脅威に立ち向かうため、英国とオーストラリアの準えで重要な節目となる」。

 ベン・ウォレス国防相は、「我々は防衛計画を進展させただけでなく、マールズ大臣が最新の攻撃型潜水艦の就役式に参加し、今後数年間で両国の共有能力を発展させるため、オーストラリア海軍の潜水艦乗員が乗り込む」と述べた。

 HMSアンソンは、最も高性能な潜水艦で、英国が13億ポンドを投じ建造した。国内外で英国の国益を守るHMSアンソンは、最大38本のスピアフィッシュ魚雷とブロックVトマホーク陸上攻撃ミサイルを搭載し、射程距離1,000マイルまでのの目標に対処する。

 HMSアンソンの完成は、英国産業の強さと世界をリードする原子力技術を実証するもので、米国、英国、オーストラリアの3カ国によるAUKUS防衛・安全保障パートナーシップの実現に活用される。

 11年以上をかけ、BAEシステムズのバロウ・イン・ファーネス工場で建造されたHMSアンソンには、英国内の1万人以上のエンジニア、科学者、技術者等が携わった。ロールス・ロイス製原子炉を搭載し、25年間無補給で運用される。

 全長97メートルのHMSアンソンは、オリンピックプール2個分の長さがあり、バロー・イン・ファーネスからスコットランドのファスレーン基地と同じ240キロメートルのケーブルが張り巡らされている。

 HMSアンソンは今後数週間バローに留まり、原子力潜水艦を構成する数々の複雑なシステムの最終チェックと厳しいテストを受けたあと、ファスレーンのクライド海軍基地へ出航し、海上試運転の準備を行う。■


Australian Submariners To Train On Royal Navy Newly Commissioned HMS Anson

Naval News Staff  05 Sep 2022


https://www.navalnews.com/naval-news/2022/09/australian-submariners-to-train-on-royal-navy-newly-commissioned-hms-anson/


2021年10月1日金曜日

オーストラリア海軍の目指す原子力潜水艦はどう実現するのか。現実的な5案を比較してみた。



 

 

オーストラリアが原子力潜水艦取得をめざしているが、どんな選択肢があるのだろうか。以下五つが浮上している。

 

オーストラリアが原子力推進方式潜水艦建造をめざすと9月15日発表するや、その内容の観測が盛んとなった。AUKUSは18カ月かけを検討する。

 

発表後に出てきた情報は少ない。当然疑問が残る。オーストラリア海軍(RAN)が取得する原子力潜水艦はどんな型になるのか。

 

まず、同艦が英国あるいは米国設計となるのは確実なようだ。そこで、以下5案が想定される。

 

最初に来るのが米海軍、英海軍の既存設計の流用で、(1)ヴァージニア級 (2)アスチュート級、そのあとに次世代艦として(3)SSN(X)と(4)SSN(R)がある。最後に(5)として英米の既存技術の応用案がある。

 

英米技術の流用を最小限にした国産設計案がより大胆な選択となる。あるいは次世代艦として三国で同時建造する案もある。ただし、ともに現時点では可能性は低い。

 

その他としてフランスやインドの設計案を採用する選択肢もある。中古潜水艦の導入はどうか。あるいは旧型弾道ミサイル潜水艦(SSBNs) を攻撃型潜水艦に転用する構想はどうか。ただ今回の発表内容からはこうした選択肢はかけ離れており、今回はその可能性について言及しないこととする。

 

1. ヴァージニア級 – 信頼性実証済みの米製攻撃型潜水艦

筆頭に来るのが米海軍のヴァージニア級だ。性能面、装備の共通化が大きな利点で、米海軍としても乗員訓練や運航支援で協力を惜しまないはずだ。 Mk.48 ADCAP魚雷など米製装備品はすでにオーストラリア海軍が導入済みだ。

 

また垂直発射管システム(VLS)でトマホーク巡航ミサイルの運用が可能となる。オーストラリアはすでに同ミサイル取得に動いているが、水上艦搭載を想定している。ヴァージニア級への搭載は自然だろう。

 

ヴァージニア級のVLSにトマホークを搭載しないのなら宝の持ち腐れだ。VLSは現行のブロック-IV艦で12本だが、ブロック-Vでは40本に増える。ブロック-IVで十分に見える。ただし、ブロック-Vではその他性能も向上している。

 

ヴァージニア級案の課題はオーストラリア国内建造立ち上げのコストだろう。オーストラリアが米国建造艦をそのまま取得する案も取りざたされているが、共同声明では読み取れない。米国内建造所ではすでにヴァージニア級建造予定が入っており、あらたに建造施設をオーストラリアに準備することになる。

 

2. アスチュート級

 

英海軍アスチュート級は大まかに言ってヴァージニア級に相当する。艦体の大きさや性能が似通っているが、RANに魅力となる側面もある。まず、ヴァージニア級と異なり、建造用の工具類がそろっていることだ。英海軍建造の最終艦HMSアジンコートは数年後に完成する。そうなると製造用工具類はそのままオーストラリアへ搬送すればよく、費用時間面で節約効果が大きい。

 

さらにアスチュート級の運用は少ない乗員で可能だ。現行コリンズ級より大型だが長距離運用が可能となりながら、ヴァージニア級より運航乗員数は減る。(アスチュート級は98-109名、ヴァージニア級は135名程度、コリンズ級は58名)

 

アスチュート級の課題は原子炉だ。現行のPWR2原子炉は生産が終了している。新型PWR3あるいは米製原子炉を搭載できるが、事態が複雑となる。

 

オーストラリアがアスチュート級を採用すればRANのニーズに合わせる改修も必要だ。その内容としてソナーや米製兵装を搭載し、コリンズ級以後の動きにあわせることがあろう。トマホークは魚雷発射管で運用できる。

 

新世代のSSN(R)で新技術の採用が想定され、次の二つの選択肢になる。

 

3 & 4. 次世代攻撃型潜水艦

 

すでに始まっているSSN(X)、 SSN(R)双方の開発にオーストラリアが参画すれば一気に原子力潜水艦最先端の艦運用が可能となる。改良点には推進系、ソナー、ステルス、量子コンピュータ、無人水中機の搭載などがある。

 

開発を進める英米両国としては開発コスト負担を期待できればメリットがある。もちろん課題は時間枠だ。オーストラリアが必要とする新型艦は2040年代に就役している必要があり、コリンズ級はどう見ても2048年には退役している。SSN(X) 、SSN(R)開発は2030年代に入り本格化する。新型装備品の開発では時間通りに進まないことが多く、ましてや別の国が入り要求内容の追加があればなおさらだ。

 

一つ議題に上がっていないのが極超音速ミサイルだ。米海軍はこの装備導入に向かっており、英海軍も同様だろう。将来装備の運用はどちらの案で可能となるのか。

 

次世代艦は大型化に向かうと予想される。理由の一つに新型推進技術とステルス性能の向上がある。だが、潜水艦建造では大型艦は高くなるのが通常だ。

 

5. オーストラリア国産艦

 

自国設計ならオーストラリアは自国ニーズに対応できる。当然ながら英米の技術を採用する。その結果生まれるのは小型で低価格の艦だがRANは原子力推進の利点を享受できる。

 

もちろん、この選択肢のリスクが最大となる。艦艇設計人材がもともと少ないままで設計を進めることになる。この点は上記の選択肢でも共通するが、完全国産設計案で顕著だ。オーストラリアがSSN(X) や SSN(R)事業の技術陣を引き抜くことが可能だろうか。

 

今後の見通し

いずれにせよ、原子力潜水艦をオーストラリア国内で建造するには長期間の工期が必要だ。その間にコリンズ級は改修し運用を続けるのだろう。

 

RANは米海軍、あるいは英海軍艦のリースも検討するかもしれない。ロサンジェルス級、トラファルガー級艦で今後退役が予定されているものがある。核燃料がまだ残っており数年は運用可能だ。あるいは港湾に係留したまま訓練艦にもできる。あるいは英米艦にRANの潜水艦要員が乗り込む状況が普通になるかもしれない。

 

一歩下がって俯瞰すれば、RANにとって本事業は大規模になる。ただAUKUS協力関係により技術利用が可能となっているのが幸運な面だ。

 

最大の危険は作業工程にある。いずれの艦も優秀で悪い選択にならない。だが優柔不断、あいまいさを残したままだと遅延につながる。

 

RANの動向とは別に原子力潜水艦取得を目指す国が増えるだろう。さらにAUKUS潜水艦整備の狙いである中国はオーストラリアの挑戦を前に手を緩めることはないはずだ。■


The 5 Main Options For Australia's AUKUS Nuclear Submarine Deal

H I Sutton  29 Sep 2021

 

 

2015年8月6日木曜日

オーストラリア>水上艦艇国内建造方針、次期潜水艦調達決定は数ヶ月以内


ここのところオーストラリア向け潜水艦案件はおおきな動きがありませんでしたが、まず水上艦は国内建造になりました。ということは国内での潜水艦建造は断念するのではないでしょうか。背景には複雑な国内事情があることがわかりますね。


Australia To Build New Naval Fleet in $65B Package

Agence France-Presse4:14 p.m. EDT August 4, 2015
SYDNEY — オーストラリアは890億オーストラリアドル(650億ドル)で新型フリゲート艦、巡視船を国内建造することを発表した。なお、次期潜水艦の海外調達先は「数ヶ月以内に」決定するとしている。
  1. 「建造継続」案ではフリゲート艦、巡視船、潜水艦の後継艦を今後20年で整備するとしており、国内で2,500名の雇用を実現する内容でトニー・アボット首相の言では「歴史的な発表」だという。
  2. 「歴代のオーストラリア政権は国内建造を続けると表明してきた」とアボット首相は報道陣に語った。「基本的に艦隊建造は国内で行い、中心は南オーストラリアとする」
  3. ただし首相は進行中の次世代潜水艦の海外調達先については多くを語らなかった。現行のコリンズ級潜水艦の退役は2026年から始まる。
  4. オーストラリア向け潜水艦はフランス、ドイツ、日本が受注を狙い、総額500億ドルとオーストラリアで史上最大の防衛調達事業になる。
  5. ただし、海外建造とした場合は国内産業の保護をめぐり国内で議論を巻き起こしていることもあり、契約交付は一筋縄ではいかない。
  6. 「これまで各国に国内建造にした場合の費用総額、国内国外建造を組み合わせた場合の価格、完全海外建造の価格開示を請求している」(アボット首相)「回答が今後数ヶ月で到着すれば、最終決定に入る」
  7. 今回の建艦事業は「次世代フリゲート」により現行のアンザック級を2020年に交代させるもの。また巡視船はアーミデイル級の後継艦となる。またケビン・アンドリュース国防相によれば「連続建造」を国内で維持することはオーストラリアの将来の海軍力が「わが国の戦略の中心であり、次回国防白書でも中心に取り上げる」ことの反映だという。
  8. 建艦案の発表は南オーストラリアの有権者向メッセージと受け止められている。同地は失業率が8.2%と最も高く同時に国内主要造船産業が集中している。■

2014年9月10日水曜日

オーストラリアへのそうりゅう型潜水艦導入で200億ドル商談が現実に近づく


記事通りなら大きな商談になりますね。海上自衛隊が計画中の建造隻数と同等の規模になると建造ドックが明らかに不足してしまいますがどうなのでしょう。訓練、運用でも日豪のつながりが強くなりそうです。一方、現地では造船所労働者が猛烈な反対をしていくでしょうね。今年中は目が離せないニュースになりそうです。






Report: Australia Moving Ahead With $20 Billion Japanese Sub Buy

By: Sam LaGrone
Published: September 9, 2014 12:02 PM
Updated: September 9, 2014 12:02 PM
Undated photo of Japanese Maritime Self Defense Force submarine Soryu (SS-501)
海上自衛隊の潜水艦そうりゅう(SS-501) 

オーストラリアがそうりゅう級潜水艦を日本から導入し、老朽化すすむコリンズ級に代替させる検討をしていることが現地報道news.com.au. で明らかになった。導入すれば10隻から12隻、200億オーストラリアドル(約2兆円)相当になる。

  1. 匿名政府筋を引用として同記事ではアボット政権は今年末までにディーゼル電気推進攻撃型潜水艦 (SSKs) 導入商談を発表するとしている。国産コリンズ級各艦は2026年までに退役させる。

  1. 「政府としては潜水艦建造能力のギャップをコリンズ級解体が現実のものとなる2026年以降放置できない」と同上国防筋は発言している。
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  1. これは7月の日豪両政府で決まった海洋流体工学分野での協力合意に基づくものであり、集団的安全保障に道を開く日本の憲法解釈見直しも踏まえたもの。協力関係から一気にオーストラリアによる潜水艦購入に展開する形だ。

  1. そうりゅう型SSK輸出が実現すれば、日本の海外軍事販売 foreign military sales (FMS) では大きな一歩となるが、オーストラリア国内の造船産業には打撃となる。

  1. アボット政権は以前はコリンズ級後継艦を国内建造するとしていたが、官営のASC Pty Ltd.(旧オーストラリア潜水艦会社)によるオーストラリア海軍向けホバート級駆逐艦建造で示した納期遅延、予算超過の実態からそうりゅう級購入に踏み切ることにしたもの。
Royal Australian Navy Collins-class submarine HMAS Sheean (SSG-77) near the Sydney Opera House. RAN Photo
    HMAS シーアン Sheean (SSG-77)、 写真オーストラリア海軍
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  1. その場合ASCは日本製潜水艦の保守契約を担当する見込み。

  1. そうりゅう型は三菱重工と川崎重工が交互に建造しており、通常型攻撃潜水艦としては世界トップクラスといわれる。潜水時排水量4,200トンの同艦はスウェーデン製スターリング式 V4-275R 大気非依存型推進(AIP)四基を搭載している。
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  1. 輸出の実現可能性は高いが、オーストラリア、日本双方の政府関係者から同記事へのコメントは出ていない。■