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2025年12月12日金曜日

次の10年を予測する:2035年の米空軍で主力機は?希望通りの調達が実現する?米空軍は航空優勢をグローバル規模で確保できるか(19fortyfive)

 

2035年の米空軍の姿とは(19fortyfive)

ブレント・M・イーストウッド

B-21

B-21 Raider. Image Credit: U.S. Air Force.


要点と概要

 – 本稿は、F-47次世代航空防衛システム(NGAD)とB-21レイダーを中心に据えた空軍の野心的な10年計画を分析する。これには「スーパー」F-22、「フェラーリ」F-35、改良型B-52Jも含まれる。

 – 筆者ブレント・イーストウッド博士は、これらの計画が中国やイランに対する比類なき先制攻撃力と追撃能力を空軍にもたらしうるが、それは政治と予算が協力した場合に限られると主張する。

 – 筆者は総額2000億ドル超の概算費用を示し、議会が全機種を大規模調達する可能性は低いと予測。完全な「夢のフリート」ではなく、約100機のNGADと100機のB-21が配備されると見る。

 – それでも米空軍は、パイロットの質・訓練体制・現行の第五世代戦闘機により強大な戦力を維持すると結論づける。真の争点は戦略と財政のバランスにあると指摘する。

米空軍にとって10年先は2機種で要約できる:NGADとB-21だ

今後の10年は米空軍にとって重大な局面だ。

主要装備はF-47次世代攻撃機(NGAD)とB-21レイダーで、ホワイトハウスは両機種の調達を全面的に支持している

この二機は米国の敵対勢力に壊滅的な一撃を放ち、中国による武力衝突を招く侵略行為への空軍対応において決定的な役割を果たすだろう。

既存のF-22とF-35は2030年代の戦いに備え改良される見込みだ。「スーパー」F-22計画と「フェラーリ」F-35計画(いずれも新型機ではなくアップグレードパッケージ)により、旧式機から生まれ変わる無敵の戦闘機群として構築される。

B-52Jには新型レーダーとエンジンパッケージが搭載される予定だが、開発は遅れており、ようやく2030年に完成する見込みだ。

では、2035年頃の空軍はどんな姿になっているだろうか?

「スーパー」F-22と「フェラーリ」F-35

スーパーF-22は、同クラスの全機が提案されたアップグレードを受ければ、大きな可能性を秘めている

F-22 Retirement2008年10月3日、サンディエゴの海兵隊ミラマー航空基地で開催された海兵隊コミュニティサービス主催の年次航空ショーで、F-22ラプター機が高速バンク旋回を行う。(米海兵隊写真:ランス・コーポラル・ダン・T・レ/公開)

F-22のベースソフトウェアには人工知能と機械学習が組み込まれる見込。スーパーは共同戦闘機(CCA)を運用し、地上攻撃能力と状況認識能力が向上する。

F-22スーパーは超音速兵器運用を強化し、CCAとの無人連携を「司令塔」として統率する能力も備える。これにより優れた電子戦能力も発揮する。

「フェラーリ」と呼ばれるF-35は、改良型ステルスコーティングとCCA統制能力により「準」第六世代戦闘機となる見込みだ。

フェラーリはセンサーと目標捕捉機構を強化する。F-35は「空飛ぶスーパーコンピューター」となり、コックピット内でAI、さらには量子コンピューティングさえ活用するだろう。

予算内で実現するか?

しかし厄介なコスト問題と、新型機遅延によるスケジュール変更のリスクが存在する。

F-47 NGADは今後2年以内に飛行可能だが、2028年初飛行の目標は楽観的すぎるかもしれない。B-21計画は現時点で予定通り、かつ予算内だ。レイダーの2機は既に飛行中である。

これらの高性能ステルス機は、空軍の将来戦術で欠かせない要素となる。初動段階で敵の防空網を無力化し、地上駐機中の航空機を破壊し、その他の軍事インフラを爆撃できる戦力である。

戦闘の第二段階では改良型F-22やF-35が投入され、B-52Jによる壊滅的な爆撃・ミサイル発射作戦も展開される可能性がある。

大変な作業になるだろう

しかし、アメリカの防衛調達システムは、広大なサプライヤーのネットワーク、議会からの十分な資金、大統領の支持、そして「力による平和」の価値を理解する有権者に依存する。

国内の政治的圧力が空軍の支配力強化計画に悪影響を及ぼす可能性がある。ドナルド・トランプ大統領は、強力な防衛政策と空軍の増強を支持しているかもしれないが、2029年には新たな最高司令官が誕生する。

この人物は、別の優先事項を持っているかもしれない。2026年の中間選挙後、下院と上院の構成は確実に変化するだろう。有権者は、防衛や外交政策ではなく、インフレと物価対策を主な問題として重視するはずだ。

トランプが国際的な平和の成果や戦争終結の努力に焦点を当てている一方で、アメリカ国民は、大幅な軍事力増強よりも、生活問題に関心を寄せる傾向が強い。新大統領は 2029 年に何を支持するのだろうか?

空軍の敵は誰なのか?

机上の戦略家たちは、次の紛争は中国との対決になると予想しているが、それが実現しなかったらどうなるだろう?

テヘランの新たな核兵器開発を阻止するために、イランに新たな爆撃が行われるかもしれない。

それは、「新たな姿」の空軍が不可欠であることを意味する。しかし、ホワイトハウスが発表したばかりの国家安全保障戦略計画は西半球における軍事力の強化を強調している。

これは米海軍と海兵隊の任務だ。特にトランプがヴェネズエラ攻撃やニコラス・マドゥロ大統領に対する秘密裏の政権転覆工作を検討している現状ではなおさらである。ロシアが10年以内にNATO加盟国を武力攻撃する可能性もある。そうなれば欧州で空軍が任務を担うことになる。

各軍に疑いの余地を与え、国内政治や変化する脅威環境の重要性を軽視しよう。全ての「新世代」航空機は2035年までに完成可能だ。これは米軍にとって巨大な偉業であり、模範的な政治指導力と公約を果たす「アメリカ第一」防衛戦略があれば実現可能な結果だ。

F-47 NGADとB-21は2030年代初頭に量産に入り、2035年までに完全配備される予測だ。これに対し「スーパー」F-22や「フェラーリ」F-35はF-47やB-21までの重要度はない。

既存のラプターとライトニングIIは更新が必要だが、これらの第五世代戦闘機は今でも優れている。B-52Jが2035年の戦闘で支配的役割を果たすとは考えにくい。

コスト上昇が空軍の希望リストを縮小させる可能性

ここで簡単なコスト分析をしよう。これは単純な「ざっとした」計算だ。費用見積もりには端数を切り捨てた数値を用いる。

  • F-437 NGADとB-21にはそれぞれ1000億ドルずつかかる見込みだ(条件が同じなら)。

  • F-22とF-35のスーパー・フェラーリ級アップグレードは約5億ドル、B-52の更新にはさらに5000万ドルかかるだろう。

B-52J Bomber U.S. Air Force

B-52J爆撃機(米空軍)。画像クレジット:クリエイティブ・コモンズ。

  • 総額は約2005億5000万ドルとなる。これは調達費用のみで、維持費・研究開発費・試験評価費は含まない。

総ライフサイクル投資ではなく初期費用で計算すれば、この金額は年間国防予算の約5分の1に相当する。

米国は空軍だけにそこまでの巨額を投じる覚悟があるのか?

空軍が要望リストの全てを手にすることはまずないだろう。

だからこそ、空軍が獲得するのはB-21とF-47次世代航空戦力(NGAD)が各100機程度に留まると筆者は見ている。それ以外の装備の価格があまりにも高すぎるのだ。

これだとF-35とF-22が陳腐化するリスクはあるが、空軍はそれを受け入れるしかない。F-47NGADとB-21が空軍の今後10年計画の一部となるのは許容できるが、両機種だけで今後10年以内に起こるかもしれない戦争に十分対応できるだろうか?

F-47 Fighter from Boeing

ボーイング製F-47戦闘機。画像提供:米空軍スクリーンショット。

今後の展開:NGADとB-21レイダーは実現するのか?

慌てる必要はない。米軍のパイロットは世界最高峰だ。これほど現実的な訓練、高度な指導、戦闘経験を備えた空軍は他にない。

既に配備されている航空機は、機会さえ与えられれば制空権を掌握できる。しかし空軍は予算制約に縛られたままで、費用対効果が最も高い未来を選択せざるを得ない。

F-47NGAD、B-21レイダー、F-22スーパー、F-35フェラーリに加えB-52Jを揃えれば、圧倒的な航空戦力となるが、全てを調達するのは現実離れしている。全体的な戦力構成は維持されていることを肝に銘じよう。米軍は相変わらず強力であり、空軍は依然として米国防衛戦略の実行に大きく貢献している。必要な投資額は膨大で、コスト増大により各計画が遅延する可能性もあることを忘れてはならない。

グローバル大国の台頭に対応する野心的な要望リストを掲げた空軍の姿勢は評価すべきだが、国内の政治的圧力や予算問題のため、計画の一部が縮小あるいは中止される可能性にも注目すべきだ。「新たな姿」の空軍が完全に保証されているわけではないが、新型航空機やアップグレードの数が限られても、これまでと同様に強大な存在であり続けるだろう。■

著者について:ブレント・M・イーストウッド

防衛問題に関する3,000 本以上の記事を執筆しているブレント・M・イーストウッド博士は、著書世界に背を向けないで:保守的な外交政策』および『人間、機械、データ:戦争の将来動向 のほか、さらに 2 冊の著書を執筆している。ブレントは、人工知能を用いて世界情勢を予測するテクノロジー企業の創設者兼最高経営責任者であった。米国上院議員ティム・スコットの立法担当フェローを務め、国防および外交政策問題について上院議員に助言を行った。アメリカン大学、ジョージ・ワシントン大学、ジョージ・メイソン大学で教鞭をとった。ブレントは元米国陸軍歩兵将校である。X @BMEastwoodでフォローできる。


The U.S. Air Force’s 2035 Problem

By

Brent M. Eastwood

https://www.19fortyfive.com/2025/12/the-u-s-air-forces-2035-problem/