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2020年2月23日日曜日

米空軍は太平洋地区で中国にこう対抗する---分散と独立がキーワード

数の力に頼る中国に対し、広大な太平洋地域で、かつ限りのある機材数でどう対応するのか考えて出てきた米空軍の作戦構想です。中央集権に凝り固まった中国ではこうした発想は生まれないでしょう。広大な防空圏を有する日本にも参考になりそうです。なんといっても空港の数は100箇所近くあるのですから。その中でも那覇、石垣、宮古、下地島などが重要ですね。

平洋空軍司令官チャールズ・ブラウン大将は小規模の編隊を域内基地に迅速に移動させ敵陣営を混乱させると述べ、敵陣営つまり中国が米軍通信の妨害に出るのを前提としているとも明らかにした。
「機材の迅速移動方法が問題だ」とブラウン大将は述べ、「有事の際に通常の通信は維持できなくなり条件は厳しい」とした。
ブラウン構想はなんら新しいものではない。空軍、陸軍、海兵隊の情報部門で温められてきた考え方だ。
部隊分散とあわせ独立した指揮命令系統を両立させる構想から見えるのは、大規模基地施設に依存せず柔軟性と復元力を米空軍力にもたせる考えだ。上位司令部が細部に至るまで管理する考えも排したいとの思いも見える。すべては中国軍事力への対抗手段だ。
新発想がF-22の機数不足から生まれたのはなんとも皮肉だ。
アラスカの第3航空団が2013年にF-22の効率的な運用方法を編み出した。ラプターで最新ソフトウェア・兵装を搭載した「戦闘対応可能」機材は全180機中で120機程度しかない。
20機編成の各飛行隊を常時展開する骨の折れる苦労の代わりに、F-22の4機編隊と支援用C-17輸送機一機を太平洋各地に24時間以内に派遣できるよう準備することとした。
第3航空団では構想を「ラピッド・ラプター」と名付け、空軍上層部に売り込んだ。有事には第3航空団はF-22を各地の基地に分散させ、中国の弾道ミサイル攻撃に対応させる。
すぐに最前線にあるF-22部隊の六個飛行隊がラピッド・ラプター構想を採用した。2016年にフロリダの第95戦闘飛行隊がF-22の2機を東欧の事態沈静化に派遣した。当時、ロシアがウクライナ侵攻に踏み切っていた。
2017年3月にC-17一機がF-22の二機を支援しオーストラリアに移動した。地上でF-22はC-17の主翼タンクから給油を受けた。
2017年7月には空軍コマンド部隊が過酷条件基地でF-15の燃料補給、兵装再装備が迅速に実施できるかを英国で試した。空軍特殊部隊がMC-130輸送機で前方基地での再装備、燃料補給をするFARPを試したのはこれが初めてだった。
この際の「ラピッド・イーグル」演習に航空団三個が参加した。英空軍レイケンヒース基地駐留の第48戦闘航空団とRAFミルデンホール基地駐留の第352特殊作戦航空団と第100空中給油飛行団だ。
このうち352SOWのMC-130Jがレイケンヒースに飛び、整備要員、弾薬類を搭載しミルデンホールに戻り、人員貨物を降ろしてから非公表地点に移動しFARPをレイケンヒース基地所属のF-15C4機に行った。
米空軍ではラピッド構想を他機種にも応用するとし、HH-60救難ヘリコプター、F-16戦闘機、KC-46給油機が対象と言われる。2017年にラピッド構想は「敏捷戦闘展開」方針に盛り込まれた。
一方で、空軍は太平洋各地で基地拠点候補を探している。
このうちテニアンでは老朽化した滑走路が再整備され、B-52がオーストラリア・ダーウィンから定期移動を開始した。「想定外の地点や時期に米空軍力を誇示できれば、同盟国協力国に大きな効果が生まれ、潜在敵国勢力への抑止効果につながる」(カーライル大将)
ただし既存の指揮命令系統構想で戦闘機部隊を分散させると衛星通信への依存度が高まる。
中国が衛星を妨害あるいは破壊すれば、ラピッド展開後に通信が孤立する。そのリスク低減のため、空軍は分遣隊司令に独立自運用をさせる。「指示を待たず適正判断できるかが課題」とブラウン大将も認める。
これに対し陸軍、海兵隊が一つの答を提示している。イラクで占領部隊を分散させた海兵隊で「分散作戦」構想が生まれ、100名程度の海兵中隊に独自運用を認めた。指揮命令系統から下される抽象的な指令を下級指揮官が独創力で解釈する力が鍵となった。
米陸軍にも「ミッションコマンド」と独自に呼ぶ構想があり、「命令を実施するに際し、指揮官の意図を守りつつ現場指揮官に権限を与え、陸上作戦を統合実施する」とある。言い換えると大佐から尉官へさらに軍曹へ達成すべき内容を伝え、あとは各自の実施を信頼することだ。
必要に迫られ生まれた構想だが、「中国の脅威増強のペースを見ると、こちらも考え方を変えないと」とブラウン大将は述べた。■

この記事は以下を参考にまとめたものです。

This Is The Air Force's Plan To Take The Fight To China

A plan to make the military less vulnerable.
by David Axe 
February 22, 2020  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: F-22Air ForceChinaMilitaryTechnology

2019年3月19日火曜日

★★世界いかなる場所にも24時間以内に展開する「ラピッド・ラプター」構想の持つ意味とは

F-22を制空戦闘機としてのみ見ているとこの記事の趣旨が理解できないと思います。たしかにシリア戦線で戦闘デビューしたラプターは当初こそ何ができるんだと揶揄されても仕方ない存在でしたが、戦術の改良と訓練により対地攻撃能力も開花させたのでしょうね。配備機数が少ないこともあり大量投入は不可能なので、初回に効果の高いパンチを敵にお見舞いすると言う構想のようです。



"Rapid Raptor": The Air Force Can Attack Anywhere with a Stealth F-22 in 24 Hours 米空軍は「ラピッド・ラプター」構想でF-22を24時間以内に世界の任意の場所へ派遣し攻撃する

March 13, 2019  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: F-22RaptorF-22 RaptorMilitaryTechnologyWorld


空軍は「ラピッド・ラプター」でF-22の四機編隊の迅速派遣をめざす。文字通り世界いかなる場所にも24時間以内到達を目標とし、急速に展開する世界情勢に対応する。
構想自体は数年前から存在し、F-22の4機、乗員、C-17による支援、燃料、整備、兵装を迅速に世界各地に派遣し、高速攻撃、第一撃を実施するのが狙いと空軍関係者が述べる。
F-22の即応体制はひとえに新ソフトウェアの実現にかかっており、ソフトウェアを順次連続改良する「パイプライン」方式を目指している。
「ソフトウェアに古臭いルールを適用する余地はない。これまで違う形のソフトウェア開発が必要だ。F-22では従来型の調達方法を引き渡しまで継続する流れとして再編した」とウィリアム・ローパー空軍次官補(調達技術補給担当)が空軍協会主催のシンポジウムで語っている。
「迅速調達」でソフトウェアに重点を置く空軍はF-22で新型兵器二点を有効化した。機体、兵装、搭載方法やセンサーといったハードウェアすべてをソフトウェアで性能向上するのがF-22の基本設計思想だ。
2つの新兵器は既成装備の高性能版でAIM-9X空対空ミサイルとAIM 120-Dだ。
速いペースでソフトウェアを中心とする戦略の狙いは「ラピッド・ラプター」を強化し配備中のF-22部隊で最適の威力が発揮できるよう維持することにある。
F-22を「第一撃」兵器にする
第一攻撃手段にF-22ラプターを使う意義は大きいと専門家は見ており、ステルスと空対空戦闘技術で強固に防衛された敵領空で攻撃を仕掛けることが可能だからだ。
空からの攻撃が必要となる緊急事態の大部分でF-22が第一陣として攻撃力を発揮する想定で、敵空軍力の脅威を排除しステルスを生かし敵防空体制の破壊が期待される。これで「空の回廊」を作りその他機材に道を開く。F-22は高高度ステルス爆撃任務の想定はないが敵戦闘機さらに防空体制の破壊には最適である。
ラプターは第四世代機のF-15やF-18と運用する設計思想で空爆部隊に道を開くのみでなく搭載する長距離センサーで標的探知し第四世代機の攻撃を誘導する役目もある。
ラピッド・ラプター構想は空軍太平洋司令部がまず提唱し航空戦闘軍団(ACC)が世界規模に拡大したと空軍は説明している。
「ACCのラピッド・ラプター構想はPACAFの原案が戦域範囲だったのを世界規模に拡大したものだ」とACC広報係が昨年Warrior Mavenに伝えてきた。
ラピッド・ラプター構想の一環でACCがF-22をヨーロッパに前方配備したのは2015年と2016年のことだった。ヨーロッパでのラピッド・ラプターはペンタゴンのめざす拡大ヨーロッパ政策の一環として抑止力に重点をおく部隊を各地に配備しつつ同盟国間の「団結」「共同作戦体制」にむけ各種演習を展開するDoDとNATOの狙いと軌を一つにする。
ロシアの動向に対応する部隊として誇示する以外にこうした演習で「機動性」と迅速な展開配備を見せる戦略的な意味がある。
空軍関係者がラピッド・ラプターで特定国を狙う意図はないと慎重に説明するが、ヨーロッパ展開にはロシアとの緊張が厳として存在する以上、対抗措置として大きな意義がある。
また大国同士の大規模武力衝突に24時間以内に対応する以外にラピッド・ラプターには想定外の遠隔地や「厳しい」標的への対地攻撃の想定もある。
世界の任意の場所で攻撃の必要が突如発生すれば、F-22の小規模編隊が現地に向かう。ここで大事なのは近年の世界規模の戦闘環境を考えるとF-22による対地攻撃あるいは近接航空支援が重要度を増している点だ。
これまでF-22は速力、操縦性、ドッグファイトでの優位性から制空戦闘機として見られることが多かったが、イラク、アフガニスタンでの空対地攻撃の実績から同機の対地攻撃能力が強く認識されている。
F-22は近接航空支援でA-10にはなれないが、搭載20mm機関砲で対ISIS攻撃に投入されたと関係者が述べている。アフガニスタンでもタリバン施設の攻撃で実績をあげたという。
こうしたミッションを実行すべく、F-22は対地攻撃専門の共用直接攻撃爆弾GBU 32やGBU 39、小口径爆弾の運用も可能となっている。
Osborn previously served at the Pentagon as a Highly Qualified Expert with the Office of the Assistant Secretary of the Army - Acquisition, Logistics & Technology. Osborn has also worked as an anchor and on-air military specialist at national TV networks. He also has a Masters Degree in Comparative Literature from Columbia University.
Some background portions of this story first appeared last year.

This first appeared in Warrior Maven here.