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2019年9月19日木曜日

今回の襲撃を阻止できなかった防空システムは新時代に対応できていない


Did U.S. Missile Defenses Fail During Saudi Oil Attack?

サウジ石油施設への攻撃は米ミサイル防衛の失策か

by David Axe 
September 17, 2019  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: OilSaudiArabiaIranMilitaryTechnology

2019年9月14日、サウジアラビアの主要原油施設に大被害を与えたミサイル攻撃の実態は一般には謎のままだ。
イエメンのフーシ反乱勢力はサウジと首長国の連合軍と2015年以来交戦中で、今回の攻撃を実施したと名乗り出た。サウジのアラムコの施設二箇所が攻撃を受けたがフーシが単独で長距離精密誘導攻撃を実施できるのか明確な答えがみつかっていない。
攻撃に長距離無人機が投入され、小火器や誘導弾を発射した可能性は残る。アラムコ施設はサウジとイエメンの国境線から約800マイルの距離だ。イラン強硬派の革命防衛隊がフーシに兵器を供与していることが判明しており、無人機や弾道ミサイル部品も含まれている。
一つ明確なことがある。高性能とされてきたサウジアラビアの防空体制が限界を示したことである。サウジは巨額予算を投入し米製ペイトリオット地対空ミサイル部隊六個とレーダー装備を整備してきた。ペイトリオットは今回の襲撃の前に何ら機能していない。
サウジアラビアのペイトリオットが迎撃に失敗したのは今回が初めてではない。2018年3月25日に首都リヤドを狙ったロケットには、少なくとも5発のペイトリオットが迎撃に失敗、作動不良あるいはその他の原因で故障している。
フーシはサウジアラビアへ7発のロケットを発射した。サウジ軍はペイトリオット性能向上版PAC-2を発射し、フーシのロケットを空中で破壊しようとした。サウジ軍発表ではペイトリオット7発が迎撃に成功したとある。
だがアマチュア映像がウェブ上で公開され、ペイトリオットの多くが空中で爆発するか、コースを外れる様子が暴露された。ここから1991年の湾岸戦争で米軍が発射したペイトリオットや2003年のイラク侵攻の記憶を呼び起こされたものも多い
サウジアラビア政府もミサイル防衛の改良に気づいているようだ。「サウジアラビアがS-400高性能防空装備の取得を交渉している。トルコがロシアから調達したのと同じ装備だ」とマーク・チャンピオンがブルームバーグに以下寄稿している
ロシア製装備は実戦で効果をほとんど証明していないものの技術上は米ペイトリオットより優れている。射程は400キロで、ペイトリオットの160キロより長い。ペイトリオットの二倍以上の飛行速度で飛ぶ標的を捕捉し再装填は5分で足りるが、ペイトリオット部隊では一時間が必要だ。
ロシアはS-400に一回り小型のパンツィールS1を組み合わせで低空を飛翔する短距離ミサイルへの対応を中心とし、大型弾道ミサイルは視野に入れていない。ロシアはシリア北西部にS-400を展開し、無人機にはパンツィールで対応している。
「理想的にはサウジは多層防衛体制が必要で、短距離局地防衛装備としてドイツのスカイヒエルドあるいはロシアのパンツィールで小型脅威に迅速対応すればよい。ペイトリオットで対応するのは費用対効果で意味がない」とジャスティン・ブロンク英王立合同軍研究所主任研究員が述べている。
従来型の防空体制が各所で小型かつ安価な無人機がさらに安価になってきた精密兵器を発射する現実への対応に苦慮している。
「防空の実際を理解できている人が皆無に近いのが冷酷な現実で、防衛部門の専門家とて例外でない、航空分野の進展がどこまでで、技術統合がどこまで深化しているかは事実であり魔法ではないのだ」とタイラー・ロゴウェイがThe War Zoneに寄稿している。「地上のセンサーに主に依存する考え方が大きな制約となっている」
我々は誰もが地球上のほぼ全地点の高解像度衛星画像を見られる時代に生きている。冷戦終結後にここまで進展するとは考えにくかった。一個人が手にするスマートフォンやラップトップコンピュータで一国の情報機関の有する情報すべて見ることができる時代であり、しかも無料で手に入る。
GPSはもっと革命的な機能だ。正確な位置がわかることからホビーとしての無人機業界が爆発的な成長を遂げ、今やGPSを使う無人機操縦があたりまえとなり、世界各地で手に入る。邪悪な考えを持つ勢力が情報を得て、精密攻撃を企てるのは無理もない。従来に比べればただ同然の負担で手に入る。
今回発生したような襲撃はどこからでも実施できるのであり、精密誘導攻撃や無人機への考え方を切り替える必要がある。さらに今回のような事件から非常に高価な軍事装備を近くに配備すべきと短絡的に考えてはならない。世界各国で歩調を合わせ、規制を整備しながら情報を大量に共有すべきだ。今後、こうした攻撃を皆無にする最善の策は発生の前に手を打つことだ」

David Axe serves as Defense Editor of the National Interest. He is the author of the graphic novels  War Fix, War Is Boring and Machete Squad.

2016年10月10日月曜日

★★ロシアがF-22撃墜は可能と公言、ステルス機はどこまで有効なのか



シリア情勢が混沌としてきましたが、無慈悲な空爆を続けるシリア政権=ロシア側に西側勢力がこのまま黙っているとは思えません。そうなると好むと好まざるを問わず、米ステルス機が有効性を実証する(あるいは限界を露呈する)機会が早晩発生するのではと思えます。現状のロシア製ハードウェアではまだ米ステルス機に有効な対策は打てないと思えるものの、どうなりますやら。

War Is BoringWe go to war so you don’t have to
The F-22 Raptor. Airwolfhound photo via Flickr

Could Russia Shoot Down an F-22 Stealth Fighter Over Syria?

The Kremlin deploys advanced anti-aircraft missiles

by DAVE MAJUMDAR
  1. 米ロ間で緊張が高まる中、ロシア軍にシリアでステルス機に標的を合わせる能力があると米国へ警告してきた。アルマースアンチェイ製S-400に加えS-300V4対空ミサイルの追加配備が完了している。
  2. 西側防衛専門家にもF-22とF-35はロシア製装備に対抗できる設計になっていないと見る向きがある。
  3. 「ロシアのS-300、S-400防空ミサイルがシリアのフメイミム、タルトゥス両基地に配備されており、飛行目標をどこでも捕捉できる有効射程がある」とロシア国防省報道官イゴール・コナシェンコフ少将がロシア国営報道機関スプートニクで話している。
  4. 「ロシア製防空装備の運用要員には空爆を実施中の機体の所属を確認する時間余裕はなく、直ちに対応する。『見えない』などど妄想があるようだが現実は落胆を生むだけだ」
  5. S-400およびS-300V4がステルスに対抗できるとロシアが堂々と語る一方、ロシア製低周波探査照準レーダーが戦術戦闘機の大きさでも探知できても、火器管制レーダーはC、X、Kuの各帯域で運用すればF-22やF-35は極めて近距離でないと探知できないはずだ。
  6. ステルスとは全く見えなくなるわけではなく、探知が大幅に遅れたままで戦闘機ないし爆撃機が目標に到達し、敵の対応の前に現場を立ち去るのが基本だ。
B-2 Spirit bombers at Andersen Air Force Base, Guam. U.S. Air Force photo
  1. 戦術戦闘機の機体サイズはC、X、Kuの高周波帯域に対抗できるように最適化している。単純な物理法則だ。ただし低周波では対応できず特定の閾値で共鳴現象が発生する。
  2. 共鳴現象が発生するのは機体の一部が特定の周波数波長の8倍の大きさを下回るときだ。
  3. 戦闘機サイズの戦術航空機には機体表面のレーダー吸収剤の厚みを2フィート以上にする余裕がないので、特定周波数に最適化する妥協策が施されている。
  4. つまり低周波レーダーのSやLバンドを運用すればステルス機でも探知追跡できるということだ。
  5. 突き止めれば低周波レーダー対抗策には大型のフライングウィング型機材のノースロップ・グラマンB-2や今後登場するB-21レイダーが必要だ。共鳴現象を引き起こす要因がないためだ。
  6. だがUHF、VHF帯域の波長では設計者がいくら頑張っても機体を隠すことができない。反対に技術陣はレーダー断面積を低周波レーダーのノイズにまぎれこませようとする。
  7. 低周波レーダーで火器管制レーダーに「合図」を送ることは可能だ。米国の敵対勢力は低周波照準レーダー開発に乗り出している。だが低周波火器管制レーダーはまだ理論でしか存在せず配備は相当先だろう。
  8. 「ステルスとは探知を遅らせる効果があるが遅延は縮まってきている。レーダー周波数が低周波帯に移っており米ステルス機の有効性が減ってくる」とマーク・ギャモン(ボーイング、F/A-18E/F ・EA-18G主管)が語ってくれた。「早期警戒レーダーはVHF帯域でステルス性能が低下する。このレーダーをSAMレーダーとネットワーク接続すればSAMレーダーが照準を得ようとする」
  9. しかし、低周波レーダーでは「実戦レベル」の追尾はできず、ミサイル誘導が不可能だ。そこで低周波レーダーをこの用途に使う案が出ているが、今のところ実用化のめどはない。
  10. 米空軍大佐マイケル・ピエトルチャがこの解決策を記者がAviation Week & Space Technologyで数年前に執筆した記事で述べていた。だが空軍関係者は同技術に無関心だ。
  11. 「技術的に可能といって戦術的に投入可能とは言えない」とステルス機の経験豊かな空軍関係者が説明している。
  12. 一方で現役のラプターのパイロットから記者は「SAM対抗戦術の詳細は極秘情報」と聞いているが、F-22は現行のロシア製地対空ミサイル装備には十分対抗できる。
  13. シリア上空の実戦でラプターが効果を証明する機会が生まれないよう望むばかりだ。紛争が急速に手におえないほど拡大するのは歴史が証明ずみだ。■