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2019年3月10日日曜日

米空軍の第六世代戦闘機はこれまでの発想とどこが違うのか、調達トップが説明しています


内容が禅問答みたいですが、頭のいい人の考えている内容はぶっ飛んでいますね。F-35が我々が慣れ親しんでいる戦闘機開発モデルの最後の事例になるかも知れません。根本から考え直し、工程を組み直すことを考えているのでしょうか。同時にコスト負担 cost impositionではソ連を崩壊に導いたスターウォーズの事例も頭の何処かにあるのでしょうか。

Aviation Week & Space Technology

USAF Acquisition Head Urges Radical Shift For Next-Gen Fighter Program 

USAF調達トップは次世代戦闘機開発方法に大幅な変更を切望


Mar 5, 2019Steve Trimble | Aviation Week & Space Technology

2030年以降の想定脅威へ対抗する米空軍新型戦闘機構想として次世代制空戦闘機構想(NGAD)の姿が一般に思い浮かぶだろう。米空軍は第六世代戦闘機としてロッキード・マーティンF-22の延長線上に未来的な形態で無尾翼のスーパードッグファイターの想像図を公開してきた。
だがこのNGAD像は実現しないかもしれない。
2月28日開催されたシンポジウムで空軍調達部門のトップが全く新しい構想を紹介し、これまでの航空機開発の歴史から大きく外れた革新的な姿が浮かび上る。
相手陣営の負担増につながる要求性能
2030年以降の不確実性により単独解決策での対応は困難
これから10年もの期間を費やし新型制空戦闘機一種類を開発するのではなくNGAD新型機数種類の開発、調達、配備をめざす可能性が浮上しており、新型機が二年ごとに登場するかもしれない。すべての要求性能を単一機材に盛り込むのではなく、空軍は今後の技術開発のリスクを分散し、敵勢力が想定できない機能を登場させ驚かせることができる。
この新構想を紹介したのがウィル・ローパー空軍次官補(調達・技術・ロジスティクス担当)でオックスフォードで学んだ理論物理学者だ。
ペンタゴン、空軍の立案部門は将来の制空戦闘機技術の綿密な検討を2015年以来進めているが、ローパーによればNGADは内部検討の域をでていないという。航空優勢2030体制能力協力チーム(ECCT)による二年間の検討作業、さらに二年間で代替手段検討をしてきたが、ローパーは空軍が正しい戦略方向にむかっていると見ていない。
「従来と同じ方向の事業に落ち着いてはいけないと強く信じています」とローパーは空軍協会主催のシンポジウムで記者団に語った。
ローパーが引き継いだ調達手順では高度かつ詳細な分析で作戦環境の検討からはじまる。NGADの場合では少なくとも10年先の世界だ。軍の作戦立案部門が将来の兵装システムの要求性能を分析結果をもとにまとめる。だがローパーにいわせればこの方法は「生ぬるい」という。


空軍調達トップは次世代航空優勢機材事業の進め方はこれまでの手法とは別にしたいと考えている。ボーイングが想像図を出した無尾翼超音速戦闘機コンセプトは従来型の発想だ。Credit: Boeing


「2030年代の脅威の想定そのものが不可能と言う事実を受け入れるべき」とし、「脅威を想定してからシステム設計を始めるのでは冷戦時代の調達方法のままだ。」
将来の脅威では変動要因が多すぎ、不確実すぎ意味ある要求性能を定められず機体設計に反映できないというのだ。そこで将来世界の問題への回答としてローパーは空軍の歴史から学べるという。
「昔の空軍を思い出してもらいたい。『センチュリーシリーズ』の戦闘機各種がありましたね」ローパーは第2世代超音速戦闘機各型に触れ、F-100、F-101、F-102、F-104、F-105が1950年代に登場し、実験と革新の連続だった時代に言及した。ローパーはNGADモデルとしてセンチュリーシリーズを想定している。
「新型機や新型衛星が3-4年ごとに登場したら相当のインパクトになると思いませんか。二年おきだったらどうでしょう」「必要性からでなく、コスト負担でこれを実行すれば敵の想定は根本から狂うことになりませんか」
コスト負担はローパーがよく話題にする用語で、本人が空軍に来たのはわずか一年前のことだ。これまで10年間で本人は学究生活から軍組織の最上位に上り詰めた。2010年にミサイル防衛庁で立案責任者代行として仕事を始め、当時の国防長官で同じく物理学者のアシュトン・カーターから戦略能力整備室(SCO)の初代室長に2012年任命され、5年間をここで過ごした。
「SCOの大きな課題はコスト負担だった」「敵勢力の考え方を変えさせる材料を見せるとする。相手はもっと資金を投入する。これまでは10-1が普通だった。1ドル使って敵に10ドル使わせる。これを空軍で始めたい。次世代航空優勢で敵にコスト負担させて敗退させる」
20年の調達開発工程で高性能装備を装備してきた手法を変えるのは今回がはじめてではないが、予想外の戦闘航空機各種を配備すれば整備補給面で難易度が高くなりそうだ。
ローパーもこうした懸念を認め解決策はあるという。
NGADのモデルにミサイル防衛庁のシステム設計が使えると本人は見ている。MDAでの二年間でローパーは空軍のNGADや高度戦闘管理システムにも適用可能なモデルを作り上げた。「着想から生まれたが実際に上手く行った」という。
ミサイル防衛のシステムはセンサー、迎撃ミサイル、攻撃手段の要素で構成した。
「すべて共同作動しないとミサイル迎撃できないが、全て別々のプログラムで作動する」「どうしたらキルチェーンにできるか。レーダーを見てみよう。設計通り全機能を発揮させる。迎撃ミサイルも攻撃部分も同じだ。だが産業界では現実問題が発生する。想定どおりに行かないことや要求内容の実現に何かを犠牲にすることもある。また予想以上の機能が生まれることも逆に想定以下の結果しか得られない要素も出てくる」
戦闘航空機各種の維持負担の問題から新たな問題が生まれるが解決策はある。デジタル設計手法で各種機材に共通性をもたせれば維持経費を管理できるとローバーは見る。単なる観測に聞こえるというと次のように述べた。
「これが正しいか証明できませんが、デジタル技術を見ると本当になりそうだ」とローバーは詳細に触れず語った。「正しければ、今後の見通しが着き、問題でなくなり、開発用に少数生産が可能となる」
だがこのNGAD像は空軍内部の議論の一つに過ぎないのは明らかだ。ローパーは代替策二案を紹介しそれぞれの欠点を説明した。
「ハイテク試作機多数の製造が正しい選択でしょうか」「競走馬たくさんを走らせゴールに一頭入ればいいと言うのでは量産型が生まれません。あるいは一番馬に賭けますか。使える資金に限りがありますから好きなようにできません」
F-35Aは初期作戦能力獲得を2016年達成したが、契約交付から15年かかった。空軍にはNGADの配備まで11年未満しか残されていない。この緊急性は現実のものだ。2017年 “War on the Rocks” ブログがECCT検討主幹アレックス・グリンケビッチ准将(当時)の2030年以降の航空優勢の確保に関する論文を掲載したが、F-22やF-35でも敵防衛網の内側で活躍できなくなる事態が生まれるという。後継機種が必要だがローパーは拙速の決定は禁物とする。

「選択肢はありますが未来が不確かなですのでヘッジがきく幅広い選択肢があれば安心できます」「ヘッジとは不確かな将来への対策だけでなく相手勢力に余分な負担をかけさせ対応させることでもあり、こちらの動きに対応せざるを得なくなるよう追い込むことも想定します」■