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2021年6月2日水曜日

ヴァージニア級攻撃型原潜の後継艦SSN(X)の概略が浮上。ヴァージニア級からさらに戦力性能がアップする。問題は毎年2隻超の建造能力の実現だろう。目標は2050年度に達成する。

SSN(X) next generation US Navy Submarine

 

海軍は現行のヴァージニア級原子力攻撃型潜水艦(SSN)の後継艦について研究開発を2021年度中に開始する。新型艦はヴァージニア級より全幅が広がりシーウルフ級並みとなり、将来登場する水上、水中の脅威によりよく対応でき、最新の静粛化推進方式を採用し、各種技術を搭載するはずだ。

 

議会調査サービス(CRS)が2021年5月10日発表した文書では米海軍の次世代攻撃型潜水艦SSN(X)の概略に触れている。以下、CRSによるSSN(X)に関する報告書から引用する。

 

「海軍が2020年度にまとめた30年計画(FY2020-FY2049)建艦計画では、SSN(X)一号艦は2031年度調達とあり、同年にはヴァージニア級潜水艦一隻も調達する。2032年度、2033年度にヴァージニア級の最終調達として4隻を調達し、各年2隻を調達する。その後のSSN(X)調達も毎年2隻で2034年度に開始する。30年建艦計画でSSNを毎年2隻調達していくとSSN66隻を調達でき、現行の海軍SSN戦力整備目標は2048年度に達成できる。

 

トランプ政権が2020年12月9日付で公開した海軍建艦計画が2022年度30年建艦案の基礎となっており、SSNでは72隻から78隻を整備目標としている。この目標を達成するのは2040年代後半となり、2035年度から2041年度には毎年3隻、2042年度から2050年度には毎年2.67隻の建造が必要だ。

 

新型SSN(X)でも対潜戦(ASW)を重視し、移動速力とステルス性はヴァージニア級を超える水準とする。さらにSSN(X)は兵装搭載量が増え、搭載ペイロードの種類もヴぁージニア級を超え、敵の高性能艦、無人水中機UUVに対抗しながら、同盟国艦艇との協調性も確保する。

 

CRSのSSN(X)報告書ではさらに「海軍ではSSN(X)の設計で3案を検討し、ヴァージニア級SSNを発展させる案、コロンビア級SSBNを原型とする案、完全新規設計案がある。

 

「産業界にはSSN(X)の艦体直径はヴァージニア級の34フィートより大きく、シーウルフ級SSNおよびコロンビア級SSBN(それぞれ40フィート、43フィート)に近づくとの意見がある。

 

「2021年4月にCBOが2020年12月9日付の30年間海軍建艦案文書に対する検討結果を発表しており、2021年度ドル価値でSSN(X)の平均建造費を海軍は58億ドルとしているが、CBOは62億ドルと試算している。

 

潜水艦に詳しい専門家H.I.サットンはSSN(X)は以下の新技術が搭載されると見る。

 

  • レーザー兵器

  • 一体型艦首ソナー

  • 量子技術

  • 大型兵装庫に各種兵装やUUVを格納する

  • 魚雷発射管数を増やし各種兵装を運用する

  • 超大型艦側面アレイ

  • 静粛化対策済み電動推進

  • X字形状潜舵による操艦機能の向上

  • 巡航ミサイルや極超音速ミサイルを搭載するVLS


記事上部の想像図も参照されたい。■


この記事は以下を再構成し人力翻訳でお送りしています。市況価格より2-3割安い翻訳をご入用の方はaviationbusiness2021@gmailまでご連絡ください。


US Navy Outlines the Next-Generation Attack Submarine SSN(X) Program

Peter Ong  25 May 2021

 


 


2017年7月13日木曜日

マラバール演習2017が始まったが、日本国民が戦略思考できるのはいつ?


写真は今回の演習のものではなく、くらま(DD-144)が写っているので以前の共同演習の際のものですね。日本国内でこの演習の意義、インド太平洋の秩序の維持=中国へのメッセージの重要性を理解している人がどのくらいいるのでしょうか。オーストラリアが中国マネーに目がくらみふらついているのは中国にとって奇貨なのでしょうね。しかし海上自衛隊はいつになったら「護衛艦」の名称をやめるのでしょうか。国内向け海外向けでつかいわけるのはダブルスピークのようですね。

US, India and Japan launch joint naval exercises to keep China in check

米、印、日共同海軍演習の狙いは中国へのけん制だ

By: Vivek Raghuvanshi, July 11, 2017 (Photo Credit: MCSN Alonzo M. Archer/US Navy)

NEW DELHI —米国、インド、日本三カ国の海軍がマラバール2017演習をベンガル湾で開始した。
  1. 米海軍USSニミッツ、インドのINSヴィクラマディティア、海上自衛隊からJSいずもの空母三隻が参加し、第21回演習は7月10日から17日の会期で幕を開けた。今回の狙いのひとつがインド洋で存在感を高めつつある中国の動きへの対抗だと専門家はみている。
  2. 米第11打撃群司令ウィリアム・バーン少将はチェンナイに集まった報道陣にマラバール2017の戦略的なメッセージは国名は出さずに「誤解の可能性を排除」することで、「こちらは結束している」と示すことと述べている。
  3. グルプリ―ト・クラナ(インド海軍大佐・国家海洋財団専務理事)は「マラバールの本質はインドと米国の共同演習であり、日本も参加して拡大したが各国の国家戦略をインド太平洋地区で集結させ、海洋軍事協力体制を機能させることにある」と述べる。
  4. 「今年の演習の特色は空母運用、防空、対潜戦(ASW)、水上戦、臨検拿捕(VBSS)、捜索救難、共同操艦、戦術行動」だとインド国防省の公式報道資料にある。
  5. インド海軍の花形は空母INSヴィクラマディティアと搭載航空部隊で、誘導ミサイル駆逐艦ランヴィール、ステルスフリゲート艦カモルタ、ミサイル海防艦コラおよびクリパン、ロシア製シンドゥゴーシュ級(キロ級)潜水艦一隻、給油艦INSジョティ、米国製長距離哨戒機P-8Iが加わる。
  6. 米海軍はニミッツ級空母と艦載機に加え、タイコンデロガ級巡洋艦プリンストン、アーレー・バーク級駆逐艦キッド、ハワード、シャウプ、ロサンジェルス級潜水艦1およびP-8A一機を派遣。
  7. 日本はヘリコプター空母JSいずもにSH-60Kヘリコプターを搭載し、ミサイル駆逐艦JSさざなみと派遣している。
  8. マラバール演習は1992年に米印共同演習として始まり、2015年に日本が加わり三カ国体制となった。
  9. その途中の2007年に日本、オーストラリア、シンガポールが招待され五カ国演習になっている。
  10. だが中国が演習拡大に外交面から反対姿勢を取り、再び米印二カ国演習の形にもどったが2015年に日本が正式に加わった。
  11. 「インド、日本、米国の三カ国に比べるとオーストラリアは戦略上の優先順位を明確にしておらず三カ国に加わり中国の横暴な行動を『緩和』する役目を果たしていない」とクラナは見る。
  12. オーストラリアの参加を実現する条件としてクラナは「インドにとってオーストラリアとの協力はインド洋の秩序維持で極めて重要です。そのためマラバールにはぜひ参加してもらいたいが、中国に対するあいまいな姿勢を直してもらわないといけません」と述べる。
  13. 「マラバール演習の背景にはインド、米国、日本の三カ国が中国海軍の劇的な拡大と活動増強の現実を憂慮していることがあります」とプロバル・ゴッシュ退役インド海軍大佐・国防アナリストは言う。「インドは中国の潜水艦、水上艦、給油補給艦がインド洋に大挙出現していることを懸念しています」■

2017年7月1日土曜日

★電子戦能力整備が今後急成長分野になる。専用電子戦機材開発も検討中



Air Force photo
空軍最後の電子戦専用機材EF-111Aレイヴンは1998年に退役している。
ステルス命だった空軍がやっと現実の厳しさに気付いてこれまでの努力の不在を一気に埋めようと必死になっているのでしょうか。電子戦の技術が相当進展し、装備の小型化も進んでいますが電力、容量を考えると737サイズは必要ではないでしょうか。空軍としては次期主力戦闘機PCAの派生型にして投資効率を高めたいでしょうね。各軍共同研究しても結局はそれぞれの仕様に落ち着くのではないでしょうか。ここでもF-35の悪夢は繰り返したくない思惑があるようです。
電子戦は「成長分野」、各軍共用EW機材開発の検討が進行中

By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on June 23, 2017 at 3:22 PM
ARLINGTON: 二十年間も放置されたままだった電子戦での対応がゆっくりだが良い方向に向かっているとEW担当国防副長官が評している。予算増に加え、(非公表の)新戦略案が国防長官官房で準備されており、各軍トップから一様に関心が高まる中、将来のジャミング機材で共同検討が続いている。
  1. ウィリアム・コンレイは「一か月、二か月いただければ」もう少し詳しくお話しできると現在進行中の統合空中電子攻撃の代替策検討について空軍協会で語っている。
Sydney J. Freedberg Jr.
William Conley
  1. この件の背景に触れよう。電子戦とは敵の無線周波数(RF)を探知し、欺瞞し、妨害する科学技術と言える。また無線通信網からレーダーまですべてがRFを使っていることからEWは近代戦の成否を握っているといえよう。冷戦終結後のロシアがソ連時代のEW機材を確保したままだったのに対し米陸軍と空軍は装備を大幅に減らした。特に空軍は最後の高性能ジャミング機EF-111レイヴンを1998年に用途廃止した。EC-130Hが少数残っているが、EWは海軍に任せている。空軍はステルス機のF-22とF-35を重視し、探知されないので海軍のEW機材の手助けは不要だとまで四つ星将官が記者に2014年に語っていた。
  2. 敵側が電子面の実力を整備する中、空軍はPEA侵攻型電子攻撃と呼ぶ構想を検討中だ。PEAには専用の有人機を想定しており、かつてのEF-111を思わせる。今後登場するPCA侵攻型制空戦闘機を原型の専用機材にするか、無人機にするか、あるいは各種機材に機能を分散させるのかを検討する。情報の多くは非公開だ。
  1. 既存のEA-18GやEC-130Hは敵装備を相当の距離からジャミングできるがステルスF-22やF-35の電子戦能力は近距離に限られる。
  2. 空軍が明確に示しているのが「スタンドイン」ジャマー機材で敵の強固な防空網を突破する狙いがある。この代替策がスタンドオフ方式のジャマー機でミッションを比較的安全な距離から行うもので、海軍のEA-18Gグラウラーがその例だ。
  3. だがコンリーはスタンドオフとスタンドインの違いが誇張される傾向があるとみる。「個人的には『これはスタンドインだ、これはスタンドオフだ』と区別することは避けたい」とし、細かく分類するよりそれぞれの機能をよく理解するべきで、そのあとで実戦部隊が両方を柔軟に使い新しい効果を生むべきだという。
  4. そこで各軍ばらばらに対応するのではなく、ペンタゴンが共用(各軍の壁を壊して)代替策検討を電子戦機材で開始しているのだ。その結果生まれるのは単一巨大事業による各軍共通の電子戦機ではなく共通戦闘機を作ろうとしたF-35事例とは違うとコンレイは強調している。
米陸軍NERO事業では海軍のジャマー装備を改修し、グレイイーグル無人機に搭載している。
  1. コンレイは明確に述べていないが、もし空軍が独自仕様の侵攻型電子攻撃機を作りたければ作れることになる。海軍、海兵隊、陸軍とともに共通の全軍対応アプローチの一部になっていればよいことになる。
  2. PEAは2030年代以降の供用開始になるが、空軍が関心を示していること自体が大きな転換点だ。コンレイは各軍トップが電子戦の位置づけを重要視するようになったという。「電子戦能力のおかげで部隊が生き残れることに感謝している」
  3. いいかえると軍上層部はネットワーク、センサー、通信の防衛含む電子戦能力なしでは残存はままならないと理解している。
CSBA graphic
中国の武器の有効範囲 (CSBA graphic)
電子環境での戦闘
  1. スマート兵器は一時はアメリカが独占していた。今やロシア、中国、イラン、北朝鮮等が精密誘導ミサイル、標的へ誘導するセンサー、指令を与えるネットワークを運用している。
  2. ペンタゴンが使う新しい形の脅威の呼称は「接近組織領域拒否」A2/ADだが、一言で言えば多層構造の防衛体制で陸上配備ミサイル、高性能航空機、潜水艦、機雷他で米軍を近づけず介入させないことだ。だがA2/ADはすべてセンサーに依存し、探知、通信、調整を行って攻撃が可能となる。そこでセンサーや通信機能はすべて無線周波数を利用しており、電子戦の格好の標的になるとコンレイは強調する。
  3. 「A2/ADとは基本的に電子電磁の世界での戦闘です。A2/ADのバブルをいかに出し抜くか、いかに小さくできるでしょうか」とコンレイは続ける。ステルス機は一つの手段だ。「探知されないように特徴をなるべく多く取り除く手です。逆にノイズを上げても同じ効果が生まれて探知されにくくなります。意味のないデータを大量に送って分別分類に時間がかかるようにする手もあります」
今日の米軍の戦闘方法は無線ネットワークに依存している。各装備をネットワークで結ぶのは実は簡単ではないとコンレイは強調し、ネットワークが攻撃を受ければ一層困難になる。
  1. 未来の戦闘構想のひとつにマルチドメイン作戦があり、電子戦への依存度は一層高まる。「マルチドメイン」とはあらゆる環境で作戦中の米軍をネットワークで結ぶことを意味する。陸上、海上、空、宇宙、そしてサイバー空間だ。そして各作戦をシームレスに調整し敵をすべての方面からの攻撃で圧倒することだ。この実施には無線周波数のネットワークが不可欠だ。
  2. 「マルチドメイン戦には信頼性の高い通信が必要です」とコンレイは言う。ハッキング、ジャミングの能力がある敵のためこちら側で使えなくなる帯域が出るかもしれないが、目標は必要なデータを確実に送信し、必要とされる相手に時間通りかつ改ざんされずに届けることだ。
  3. その目標に到達するためには資金時間両方が必要だ。2017年度予算には50億ドルが国防総省全体で準備され「さらに増えますよ」とコンレイは言う。(省内の電子戦執行委員会がこの動向を指導している)
  4. さらにEW予算から大規模な影響が生まれるとコンレイは主張する。まず民生部門からの流用で高機能構成部品が安価に利用できるようになっており、軍専用仕様の高価な開発の必要がなくなってきた。次に小規模で安価なEW機能改修が航空機、艦船、地上車両で可能となり、システム全体の残存性が高まる。「数百万ドルの投資が数十億ドル数兆ドル単位の投資に大きな影響を生んでくれる」(コンレイ)
  5. 道のりは長いとコンレイは説明する。「電子戦に関しては25年間放置状態でした。これからの25年間しっかり育てていく出発点にいま立っていうるのです」■

2017年6月26日月曜日

アイオワ級戦艦の現役復帰は実現可能性なし


保存中の退役空母再就役の話がありましたが、戦艦はどうでしょう。米国には戦艦の最終進化形アイオワ級四隻が残っています。ホームズ教授がウィスコンシン勤務だったとは知りませんでした。記事の出稿が前後しましたが、文末の現代の艦船の脆弱性のくだりはフィッツジェラルド事件であらわになりましたね。

 


Why America's Battleships Will Never Make a Comeback

米戦艦の現役復帰が不可能な理由

June 17, 2017

  1. 戦艦には神秘的な要素がある。ワシントン内外で米海軍増強の話題が出ると必ずアイオワ級巨大戦艦の現役復帰を強く主張する向きが現れるのは毎度お約束だ。第二次大戦時の戦艦を呼び戻すのは突飛な話題ではない。1914年建造のUSSテキサスに超兵器を搭載しソ連を吹っ飛ばそうというのではない。日本帝国海軍のスーパー戦艦大和を引き上げ宇宙空間で使おうというのでもなく、宇宙人の侵略からUSSミズーリでハワイ諸島を守るものでもない。
  2. 第二次大戦時に日本との一騎打ちを想定して建造された戦艦は朝鮮戦争、ベトナム戦争、冷戦時に現役復帰している。最後の作戦行動は1988年だ。アイオワ級は朝鮮戦争後ほぼ30年間モスボール保存されていた。(ベトナム戦争時に短期間復帰したUSSニュージャージー除く)冷戦後もモスボール状態だ。事例では戦艦の復帰は可能と示されている。ただし現役復帰させてもコスト、労力、人的資源の投入に見合う効果があるか疑問だ。
  3. 数字に騙されてはいけない。レーガン時代の海軍大増強で戦艦四隻の現役復帰に1988年価格で17億ドルかかった。2017年価格にすると一隻8.78億ドルだ。この数字から海軍はアーレイ・バーク級駆逐艦一隻の価格で強烈な砲火力を有する艦二隻を復帰できるとした。バーク級駆逐艦の最新建造単価は19億ドルと議会予算局はまとめている。一隻分の予算で二隻が手に入るのは魅力だ。沿海戦闘艦三隻分の予算で戦艦二隻を復帰できる。沿海戦闘艦は今日の砲艦といった存在だ。いかにもお得な策に聞こえる。
  4. 数字はもっともらしく見えるが巨大戦艦を低費用で復帰させるのは実際には困難だ。まず各艦はもはや米海軍所属ではなく博物館だ。ニュージャージーとミズーリは1990年代に除籍されれた。アイオワとウィスコンシンはかなりの間「再復帰可能」状態を維持し、理論上は復帰可能だった。だが両艦とも2006年にやはり除籍された。国家緊急事態なら政府は各艦を現役復帰できようが、平時には法的手続きだけで相当の時間と費用が必要になる。
  5. 次に経年変化の問題がある。戦艦愛好家はアイオワ級は走行距離の少ない旧型車と同じと主張する。一見これも説得力がある。筆者が勤務したUSSウィスコンシンは第二次大戦、朝鮮戦争、砂漠の嵐作戦に投入され総稼働期間はわずか14年だ。米海軍が空母は50年、巡洋艦駆逐艦が40年間供用になる中で戦艦は長期間稼働に耐えるように見える。
  6. これは正しい見方だ。頑丈な戦艦の艦体は海上の厳しい環境に十分耐える。だが内部はどうか。機械関係の様子を見れば全体がわかる。アイオワ級が連続稼働され定期修理やオーバーホールを受けていたら、数十年間航海していたはずだ。第二次大戦中の空母USSレキシントン(CV-16)は1991年まで供用されアイオワ級と同年に退役している。だが各戦艦はその間にしかるべき営繕を受けていない。そのため各戦艦は25年前の時点でも維持管理が難しかった。もっと古い艦齢の戦艦から部品を取り1930年代1940年代製の老朽部品の代わりを特製していた。
  7. さらに25年が経過したことで問題は悪化している。海軍が保存艦艇の維持管理を中止して十年以上になる。この課題を克服するには相当の費用がかかる。ヨット仲間のジョークではないが穴の開いたボートにオーナーが大金をつぎ込むようなものだ。戦艦の場合の穴はもっと大きく、納税者のお金を大量に必要とする。米海軍がアイオワ級の復帰工事を安く完了できても運用維持巨額になるだろう。このため各艦は1990年代に閉鎖され、時の経過は無慈悲な状況を一層深刻にしている。
  8. 次にアイオワ級の巨大な主砲だ。フォルクスワーゲン・ビートルほどの重量の砲弾を20マイル飛ばす海軍砲をどうするか。戦艦の象徴であり、現在の海軍艦艇でこれに匹敵する砲はない。火力がこれだけあれば再就役させ維持する費用が正当化できそうに見える。だが時間経過で砲身は劣化している。16インチ50口径主砲の製造は数十年行われておらず予備部品は廃棄されたか博物館に寄贈済みだ。ここが不足すれば実戦時の使い勝手に制約が生まれる。
  9. さらに巨砲用の弾薬がどこにあるのか。1950年代の16インチ砲弾と火薬を1980年代、1990年代に消費した。在庫は60年以上前のもので米海軍は廃棄中だ。少量の砲弾、発射火薬を製造するのは防衛産業に魅力のない仕事だろう。USSズムワルトの高性能主砲用の砲弾調達が最近取り消しになったのは価格急騰で一発800千ドルになったためだ。わずか三隻の新型艦で限定発注した場合でこうだ。アイオワ級を再就役しようとすれば同じ苦境に直面するのではないか。
  10. とどめは16インチ主砲砲塔やM型バブコック&ウィルコックス製ボイラーを扱う技能を持つ人材で、海軍はどこで確保できるのか。こういった装備の取扱い訓練を受けた人員は1991年以降存いない。運用し維持できる技能員は老齢化し腕が錆びついているのだ。海軍が電気推進、ガスタービン、ディーゼルエンジンに向かう中で蒸気を扱える人員は不足気味である。旧型ヘリコプター揚陸ドック艦(LHD)は蒸気動力だったが新型LHDはガスタービンを採用し旧型艦の退役が近づいている。
  11. 蒸気動力が完全に消えるわけではないがもはや過去の技術で16インチ主砲のような存在だ。戦艦を再就役させれば大量の技能員が必要となるが現実には減少傾向だ。筆者自身は戦艦勤務の経験を持つ最後の世代だが現役を離れ26年たつ筆者を米海軍が徴用し機関や兵装の技能を再度覚えさせる事態は考えにくい。つまり時間がたつとモノと同時に人的資源も再稼働しにくくなり、戦艦再就役で人的側面が致命的な成約になる。
  12. 戦艦の復帰で艦隊戦力が大きく充実する。単に水上戦闘艦が追加されるだけではない。アルフレッド・セイヤー・マハンは主力艦の定義を大攻撃力を実現しつつ敵攻撃に耐える艦と定義した。今日の水上艦は攻撃力は十分だが、被弾しても残存する能力は軽い装甲では無理な話だ。海軍艦艇の建造技術陣は戦艦の歴史をたどり、設計思想を学び真の意味の主力艦を再発見してもいいのではないか。米海軍はよい結果を得られるはずだ。
  13. 過去から学ぼう。ただし、戦艦再就役はサイエンスフィクションの世界にとどめておこう。■

James Holmes is Professor of Strategy at the Naval War College and coauthor of Red Star over the Pacific. The views voiced here are his alone.
Image: Battleship USS Wisconsin. Wikimedia Commons/U.S. Navy

2017年6月11日日曜日

★★空母キティ・ホーク、ペリー級フリゲート艦の現役復帰案が浮上中



うーんこれはどうなんでしょう。モスボール係留中の劣化を克服し、新装備を搭載しても乗員が旧式艦の装備に習熟するのに時間がかかりその間にも供用期間が減ります。数合わせにしかならないのでは。ペリー級フリゲートは使い勝手はよさそうですが、VLS搭載の必要はないのでは。低水準の脅威環境なら十分現状でも対応できそうですね。LCS沿海域戦闘艦支持派にはフリゲート艦復帰は都合悪いでしょう。日本にはモスボール保存がないのでわかりませんが、たしかに米海軍はベトナム戦争、湾岸戦争にアイオワ級戦艦を復帰させていましたね。独特の技術水準を維持しているようです。


Last Stop for USS Kitty HawkMC3 KYLE D. GAHLAU—U.S. NAVY

US Navy Looking At Bringing Retired Carrier USS Kitty Hawk Out Of Mothballs

米海軍が退役空母USSキティー・ホークの現役復帰を検討か

Bringing back its last operational conventionally powered supercarrier would help the Navy make its 12 carrier fleet goal a reality.

最後の通常動力大型空母の復帰は海軍が求める空母12隻体制の実現の近道になるか

 BY TYLER ROGOWAY JUNE 8, 2017



  1. 米海軍が目標とする355隻体制の実現に向かう中で(現状は275隻)一つの方策は現役艦船の耐用年数を延長することである。さらにモスボール保存中の艦船を現役復帰させる案も検討している。その中で可能性が高いのが最後の通常動力大型空母USSキティー・ホーク(CV-63)だ。
  2. 海軍の海上システムズ司令部を率いるトーマス・ムーア中将は保存中艦船は大部分が復帰もままならない状態であるが、USSキティー・ホークは違うと述べている。「保存中の空母でキティー・ホークは真剣に検討対象となる艦だ。エンタープライズ退役の際は艦体が老朽化していた」
  3. たしかに空母一隻を現役復帰させるのは「空母ギャップ」を埋める有効な解決方法であり、トランプ大統領が求めるスーパー空母12隻体制実現への近道のように映る。現在の米海軍はスーパー空母10隻を運航中で、USSジェラルド・フォード(CVN-78)が就役に一番近い位置にあるとはいえ、目標の隻数にするには数年かかる見込みだ。
  4. キティー・ホーク現役復帰案はフロリダ州メイポート関係者には心地よく聞こえるかもしれない。同地はスーパー空母の同地配備再開を米海軍に長年求めてきた。同地施設は原子力空母の支援用に改修を受けておらず、USSジョン・F・ケネディ(CV-67)が2007年に退役後は常駐のスーパー空母がないままで地元経済にも打撃となっており、戦略的な穴にもなっていた。キティー・ホークが配備されれば大幅施設改修も必要なく理想的な母港になる。
  5. その他にも現役復帰の対象になる艦がある。まずタイコンデロガ級巡洋艦の初期建造5隻がデラウェア河に係留されたままだ。各艦はマーク41垂直発射管を搭載せず、二本式のマーク26ミサイル発射装置が搭載されている。だがこのまま予備艦艇としておくのは水上戦闘力を有効活用していないとよく言われる。ただしムーア中将は別の理由があると見ている。
  6. 各艦は現役の同級他艦と比べると旧式化が目立ち、艦隊で活躍中の各艦に近い実力に整備するには多額の予算が必要だ。それ以外に艦内の部品は流用のため撤去されている。「戦闘力の観点からするとこれらの艦は陳腐化著しい。現役復帰は多分ないだろう。ここ数年は部品取りに使われているのが現状だ」
BIGBIRD78/WIKICOMMONS
USSタイコンデロガ(CG-47)はフィラデルフィア海軍工廠で悲惨な状態で保管中だ。
  1. 旧式艦の再生では復帰コストと提供可能となる戦力をよく比較する必要がある。また機能がどこまで劣化しているのかを現役の最新艦と比較せざるを得ない。また仮に再復帰に予算を投じても果たしてあと何年供用可能かを見極める必要がある。
  2. そうなるとキティー・ホーク以外の復帰艦候補は下位の任務をこなす艦であり、巨額の技術投資が不要な艦となる。海軍にはモスボール保存中の補給支援艦の他にオリヴァー・ハザード・ペリー級誘導ミサイルフリゲート(FFG)がある。早すぎる退役が悔やまれた艦であり、各国に供与され大幅に受けた改修を同じく応用できるはずだ。例えばマーク41垂直発射装備の搭載やセンサー類、戦闘指揮システムのアップグレードが考えられる。
USN
ペルシア湾をパトロールするオリヴァー・ハザード・ペリー級フリゲート艦USSサッチ。2009年
  1. FFGでは有効に使える可能性を検討し、戦闘支援艦でも有効活用の可能性を見る。全体として保存艦艇の活用は限られるが、個別の艦の状況を見て決めていくという。
  2. ドナルド・トランプ大統領がこの構想を支持する可能性は十分ある。トランプには旧式でも改装を加えた機体を活用してきた経歴もある。選挙運動中にトランプはアイオワ級戦艦の復帰さえ言及していた。ただしこの案は以下に政治的に後押しがあっても実現は極めて可能性が低い。■
Contact the author: Tyler@thedrive.com



2017年6月9日金曜日

ミッドウェイ海戦75周年、中国軍事戦略家は戦史から何を得ているか


今年はミッドウェイ海戦から75周年の節目です。戦史から何を学ぶのか。日本では失敗の代名詞として細かい点にこだわる傾向があるようですが、中国は本質の戦略論で同じ事例を分析しているようです。米海軍大学校准教授が中国記事を読んで分析していますのでご紹介しましょう。

 

What Do China's Military Strategists Think of the Battle of Midway? 中国軍事戦略思考家はミッドウェイ海戦をどう理解しているか


China likely recognizes that once wars are started with America, even when militarily successful, they may be extremely difficult to end.
中国もいったんアメリカと交戦すれば、軍事的に成功しても戦争終結が極めて困難だとわかっているのだろうか

The National InterestLyle J. Goldstein June 4, 2017

  1. 1942年の6月に米海軍航空部隊は日本帝国海軍の主力空母4隻を海底に沈めて歴史の流れを変えた。勝因には戦略、暗号解読、急降下爆撃機の技量、訓練の蓄積、運のよさに加え少なからぬ勇気と犠牲が加わった。
  2. エドワード・「レム」・マッシー少佐の例を挙げよう。1930年の海軍兵学校卒でニューヨーク州出身の少佐は米海軍初の魚雷投下で命中を上げている。本人が率いる飛行隊が1942年2月にクウェジェリン礁付近で日本海軍に打撃を与えている。運命の6月4日朝に少佐は飛行隊を率いてミッドウェイ海戦の大きな局面となった空母飛龍攻撃に向かった。「僚機は隊長機が大きな火の玉になるのを見た」
  3. マッシー少佐はむき出しのコックピットに乗り乗機TBD(アヴェンジャー)から250フィート下に魚雷を投下したが、命中で発生した炎から逃げることができなかった。海戦の結果を知るものからすればアヴェンジャー隊の犠牲は無駄死にではないと言える。デヴァステーター艦爆隊に道を開き半年前の真珠湾攻撃の仇を返すしたからだ。
  4. 今日の世界では太平洋の対岸で中国がミッドウェイ海戦を真剣に研究している。北京が空母二号艦を進水させ三号艦建造に向かっていることからすれば驚くべきことでもないが中国の海軍専門誌「現代艦船」に長文記事が掲載されたのは興味深い。記事は「ミッドウェイ島への道」の表題で戦術、技術、勇敢さのいずれも取り上げず、かわりに極めて厳密に1942年春時点での日本海軍上層部にあった作戦立案の選択肢を分析している。ミッドウェイの奇跡を生んだ要因の中で中国の分析記事は「戦略洞察力」あるいは日本が軍事的に有利な位置を無駄使いした事実に着目している。
  5. 分析では日本が東南アジア各地を瞬く間に占領し、しかも驚くほど代償を払わずに達成したことから始まっている。簡単に勝利が手に入ったため「次をどうする」が真剣に問われた。1942年3月の日本海軍は二方面作戦を検討していたといわれる。南方からオーストラリアを攻略するか、北に向かいアリューシャン列島を陥落させるかだった。日本海軍の作戦を立案し真珠湾攻撃を考えた山本五十六大将はハワイ攻略の是非も検討させたといわれる。興味深いのは日本海軍はインド洋まで遠征してセイロン(スリランカ)を攻略していた点だ。分析が示しているのは東京のインド洋作戦は突飛な発想でないことだ。日本海軍がインドまで勢力を展開したことで英国は脅威を感じ、インド植民地で英国支配に抵抗する勢力を勇気づけるとともにドイツに好印象を与え、枢軸勢力が手をつなぎ石油豊富なペルシア湾をおさえる可能性が現実にあったからだ。
  6. オーストラリア侵攻は一度も真剣に日本は検討していないと記事分析は結論づけている。実施しすれば最低20万の兵員とともに限りある日本の船舶力の三分の一をつぎこむことになるからだ。日本陸軍には海軍を支援し各種作戦をアジア太平洋で展開することに全く関心がないことを中国側は指摘している。日本の地上部隊はシベリア制圧を想定していたためである。他方で海軍はハワイ占拠で米国最大の太平洋の軍事拠点を無効にし、米軍による日本本土攻撃の可能性も大きく減ると見ていたと記事では強調しており、陸軍の「主体性のなさ、非協力的態度」はあからさまで海軍を支援する作戦には及び腰だったとまとめている。
  7. 山本大将は真珠湾攻撃の立役者として後光がさすほどの存在であったが日本海軍上層部には12月7日の奇襲攻撃でハワイ燃料集積地攻撃を逸した大失敗、さらに艦船修理施設も攻撃しなかった点も見逃していなかったと記事は紹介。ただし一番の失策は米空母部隊をせん滅する機会を逃したことだった。ドゥーリットル空襲で日本本土が直接攻撃されたため、これらの失敗は日本海軍上層部で喫緊の課題と認識された。さらに日本の軍上層部は決戦は先送りできず今仕掛ける必要を感じていた。米国で空母11隻が建造中なのに日本では1隻しかなかったからだ。
  8. それでもミッドウェイ作戦に反対の意見の軍上層部もかなり多かった。中国の分析では反対派は上空援護が不十分、かつ米国が空中で主導権を握る可能性があることを根拠にしている。ミッドウェイ島自体は何ら資源のない土地だが同島を抑えることで太平洋中部の日本の海上活動を抑える効果がある。反対意見ではミッドウェイ島は小さく、防御も難しいが大部隊の駐屯も困難と指摘していた。だが中国分析では山本が例えミッドウェイ島占領に成功してもハワイ攻略作戦の実施は不可能と断念したとある。つまるところもし日本がハワイを占領すれば4千キロという大海原があれば米国と言えども日本が新たに獲得した拠点の奪回に部隊を集結させるのは困難になると見ていた。
  9. ただしここまで大胆な作戦の実施前に日本海軍は米空母部隊をせん滅する必要があり、このためにハワイを攻撃するおとり作戦で米空母を決戦に引きずり出そうとした。アメリカへの欺瞞として日本海軍は「米軍の注意を分散させる」作戦を打撃部隊四つを別行動させた。だが中国記事の分析では「作戦案が過剰なまで複雑」で各独立行動部隊にそれぞれを支援する能力がなかったとまとめている。記事は戦略方針の検討を重視し個別の戦いの進展では説明を省いている。ただ日本側の情報部門がUSSヨークタウンが珊瑚海海戦で損傷したものの迅速に修理され戦場に復帰するとは見ていなかったことを失策としている。中国記事では日本側戦力(空母4艦載機227)は米戦力(空母3艦載機234)に対して圧倒的に多いとはいえず、ミッドウェイは「過剰なリスク」になっていたと分析する。
  10. おそらく中国による評価で一番興味をひかれるのは文末の数行で日本の観点による戦争終結の話題だ。1942年春に日本が戦争で目指していたのはアメリカを「戦争終結の交渉の席につかせる」ことだった。皮肉なのは日本が勝利を収めればそれだけ米国が日本との和平交渉に応じる余地が減ることだ。この観点からいったん開戦すればどれだけ軍事勝利をおさめても戦争終結が極めて困難になるとわかる。
  11. この点をさらに深めて、一度アメリカを怒らせたり、恐喝すれば、米国は必要な犠牲を厭わず勝利のため負担も苦と思わない国であることを中国戦略思考家にも理解してもらいたい。中国側作戦立案部門には軍内部の競合関係がどれだけ危険かを本事例から学んでいるかもしれない。また民間商船が戦略予備部隊として必要だと認識し、戦略的な集中をさらすことの危険性(例スリランカ)と資源を中心的課題に収集する必要性も教訓となるはずだ。中国がミッドウェイ海戦分析から得る可能性のある教訓は日本の失敗はハワイ攻略に必要な軍事力を整備せず努力を集中しなかったことだ。地理条件は今も昔も変わらないので結論として核の時代である今日の中国戦略思考家が十分なまで高度に思考し同様の作戦を今日実施すれば即座に大惨事になるとわかっているとよい。■
Lyle J. Goldstein is an associate professor in the China Maritime Studies Institute (CMSI) at the U.S. Naval War College in Newport, Rhode Island. The opinions expressed in this analysis are his own and do not represent the official assessments of the U.S. Navy or any other agency of the U.S. government.



2017年6月7日水曜日

★米海軍の進める電磁レイルガンの最新動向



ONRはリスク低減策を模索し、EMRGの砲身耐用期間を延長し毎分10発の発射を実現しようとしている。Source: John Williams/USN

レイルガンの実用化を一番恐れるのはロシア、中国、北朝鮮といったミサイルで西側を脅かそうとする勢力でしょう。それだけに米側も開発の実態を極力秘匿しておきたいようで、予算要求案を見ても一括要求都市レイルガン自体の開発予算はわからないようにしています

USN recharges railgun science and technology effort

米海軍はレイルガン研究開発に引き続き取り組む姿勢を強化

 Geoff Fein, Washington, DC - IHS Jane's Defence Weekly
06 June 2017
  

  1. 米海軍は2018会計年度予算で電磁レイルガン(EMRG)の艦艇搭載は要求せず、かわりに研究開発に予算を引き続き計上し試作型のテストを2019年度に実施をめざす。
  2. 2018年度予算で海軍が要求するのは93百万ドルで研究開発試験評価 (RDT&E)を数点の革新的海軍試作装備 (INPs) に投入するとし、EMRGもその中に含まれる。ただしレイルガンへの要求額は明らかでない。海軍がEMRG研究開発単体の予算額の公表を避けているからだ。
  3. 実際の予算額がどうであれ、EMRGは目標の32メガジュール毎分10発発射で長期間稼働可能砲身の実現にむけて引き続き開発を続けると海軍研究部門ONRでEMRGを担当するトム・バウチャーがJane'sに述べている。
  4. 一般の艦載砲と異なりEMRGは電力で砲弾を発射する。(弾頭はつけない)射程は100カイリ超となる。磁界が高電流で生まれ、金属製導体(アーマチャア)を加速し、4,500から5,600マイルで砲弾を発射する。
  5. 現在開発部門が取り組む課題は以下の分野だ。毎分10回発射の実現、EMRGの砲身内部の耐用期間を延長できる素材の模索、内部の熱管理、EMRGの電源管理システムの作成である。■

2017年6月2日金曜日

5月31日、新型空母フォードを米海軍が受領


米海軍としてはやれやれというところでしょう。発電容量を大幅増加させているのは将来のレーザー等新兵器を見越しているのでしょう。フォード級は三隻の予定ですが、途中でニミッツ級と交代していきます。なお、三号艦はエンタープライズとなります。

Sailors man the rails as the Gerald R. Ford returns to Norfolk on April 14, 2017, after conducting builder’s sea trials. The first-of-class ship is the first new U.S. aircraft carrier design in 40 years. Mass Communication 3rd Class Matthew R. Fairchild/NavySailors man the rails as the Gerald R. Ford returns to Norfolk on April 14, 2017, after conducting builder’s sea trials. The first-of-class ship is the first new U.S. aircraft carrier design in 40 years. Mass Communication 3rd Class Matthew R. Fairchild/Navy

At Long Last, Supercarrier Gerald R. Ford Delivered to the Navy ついにスーパー空母ジェラルド・R・フォードが海軍に引き渡された

POSTED BY: HOPE HODGE SECK JUNE 1, 2017


  1. 建造に8年かかり、三隻建造する新型空母の一番艦が海軍に引き渡された。ジェラルド・R・フォードがハンティントン・インガルス工業から5月31日夜に納入され、今年夏の就航に一歩近づいた。
  2. 「大きな意味のある夜になった。ジェラルド・フォードにはほぼ10年間かかりきりだったので」とトム・ムーア中将(海軍海上システムズ本部司令官)が戦略国際研究所に集まった聴衆に6月1日に語っている。「受領前公試は大変うまく行った。海軍は昨夜フォードを受領した」
  3. フォードはニミッツ級10隻に続く新型空母でニミッツ級最終艦ジョージ・H・W・ブッシュは2009年に就航していた。フォード級はニミッツ級とほぼ同じ大きさだが、小型艦橋、エレベーター数削減などの工夫で搭載機数が増えている。
  4. 新技術も数々導入されており、電磁式航空機発進システムEMALSや高性能拘束ギアがテストの遅れや予算超過で話題となっていた。
  5. フォードは2014年引き渡しの当初予定が2016年に変更されていた。だがその後さらに日程は先送りされたのはテストの遅れとともにペンタゴンの兵器試験部門が新技術の成熟度が低いと懸念を表明したためだ。
  6. 新技術でとくにEMALSカタパルトが再びニュースの話題になったのはドナルド・トランプ大統領がTime誌インタビューで新技術は高価格すぎかつうまく作動しないので旧式装備に戻すべきと発言したためだ。
  7. 海軍関係者は二号艦以降で電磁式を蒸気式に戻す予定はないと発言しているが、退任近づく海軍長官レイ・メイバスは昨年末に新技術導入を急ぎすぎたと報道陣に語っていた。「新技術の搭載はもっと時間をかけるべきだった。もともとは当時の国防長官ドナルド・ラムズフェルドが2002年に下した決定だ。この新技術は三隻の新型空母に搭載されるが実効性は未証明のままだった」
  8. 「フォードが艦隊編入されれば威力を証明するはず。しかし如何せん時間がかかりすぎたのは全く新規の技術だからで一番艦に搭載すべきではなかった」(メイバス長官)
  9. このため建造費用が105億ドルから130億ドルに急増している。だがフォード級は艦隊に新戦力となる。
  10. 海軍関係者によればフォードは航空機発艦回数を三分の一増加させ艦内の発電容量は三倍に増えるという。
  11. 海軍は原子炉を50年間燃料交換不要にするつもりだったがこの技術の費用が高すぎるとわかったとムーア中将は明らかにした。それでもフォードは次回燃料交換は2040年まで不要となるという。
  12. 正式就役前に、フォードは来月「試運転」して乗員の習熟度を上げる。さらに入港時に海軍は追加作業を仕上げながら不具合点をつぶす。フォードは2020年に作戦可能となる。
  13. 二号艦ジョン・F・ケネディは建造が最終段階にあり、2020年に引き渡し予定だ。■

以下は米海軍による公式発表です
WASHINGTON (NNS) -- The Navy accepted delivery of the future USS Gerald R. Ford (CVN 78) aircraft carrier in Newport News, Virginia, May 31.

Delivery followed the ship's successful completion of acceptance trials May 26.

"Congratulations to everyone who has helped bring CVN 78 to this historic milestone," said Rear Adm. Brian Antonio, program executive officer for aircraft carriers. "Over the last several years, thousands of people have had a hand in delivering Ford to the Navy -- designing, building and testing the Navy's newest, most capable, most advanced warship. Without a doubt, we would not be here without the hard work and dedication of those from the program office, our engineering teams and those who performed and oversaw construction of this incredible warship. It is because of them that Ford performed so well during acceptance trials, as noted by the Navy's Board of Inspection and Survey."

"Well done to our shipbuilding partners, Ford's crew and everyone who supported them," said Vice Adm. Tom Moore, commander, Naval Sea Systems Command, who also embarked for acceptance trials.

Ford is the lead ship of its class and the first new-design aircraft carrier delivered to the Navy since USS Nimitz (CVN 68) in 1975. It is also the first aircraft carrier to join the fleet since USS George H. W. Bush (CVN 77) delivered in 2009. The future USS Gerald R. Ford honors the 38th president of the United States and pays tribute to his lifetime of service to the nation in the Navy and in the U.S. government.

The next generation of aircraft carrier, the Gerald R. Ford class delivers unprecedented flexibility to the fleet. Due to a larger flight deck, the ability to host more aircraft, additional weapons and aviation fuel storage, and the Electromagnetic Aircraft Launch System and Advanced Arresting Gear, Ford will be able to increase sortie rates by one-third when compared to the Nimitz class. Further, the Navy's newest aircraft carrier generates three times the amount of electricity as previous classes and is designed to rapidly add capabilities as new systems become available over the course of its projected 50-year service life.

Ford will be commissioned into the fleet this summer, formally placing the ship into active service. Following this, there will be a "shakedown" period where the ship will conduct several at-sea events to provide longer underway periods for the ship's crew to operate and train on ship's systems. In addition, planned deferred work will be performed, and any deficiencies identified during trials will be addressed during in-port periods.

Ford is expected to be operational in 2020 following achievement of initial operational capability.



For more news from Naval Sea Systems Command, visit www.navy.mil/local/navsea/.