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2018年5月13日日曜日

アラスカ付近までベア編隊を飛ばすロシアの狙い

US F-22s intercept Russian strategic bombers flying in international airspace near Alaska アラスカ近くの国際空域を飛行中のロシア戦略爆撃機を米軍F-22が迎撃


Bill Gertz,

f22F-22 Raptors fly in formation over New York, August 21, 2012.US Air Force
  • ロシアTu-95「ベア」爆撃機二機がアラスカに接近しF-22が迎撃した
  • 核攻撃能力を有する同爆撃機は米加領空には侵入していないと軍当局が発表
  • 米国を狙ったロシアの恫喝の一部とみる専門家もいる



シア戦略爆撃機二機がアラスカの防空識別圏に侵入したため米F-22編隊がこれを迎撃した。5月11日金曜日のことで米北方軍司令部が発表した。
Tu-95ベア爆撃機二機はべーリング海上空に設定の防空識別圏に金曜日早朝に侵入してきたと北方軍および米加共同北米防空司令部(NORAD)広報官スコット・ミラー海軍大佐が発表。
「東部標準時10 a.m.ごろアラスカ配備のNORAD所属F-22戦闘機二機がロシアTu-95ベア長距離爆撃機機二機を目視で確認した。ロシア機は房区識別圏内でアラスカ西海岸沖合からアリューシャン列島北部を飛行していた」と大佐はワシントン・フリー・ビーコンに伝えてきた。
ロシア機は米加いずれの領空も侵犯していないと大佐は付け加えている。
また今回の迎撃で異常な動きは見られるz、F-22隊と爆撃機編隊で交信も発生していないという。
核運用可能な爆撃機は国際空域を飛行し「国際規範に従って飛行した」という。
「NORADは今後も空の上の動きを注視していく」(ミラー大佐)
ただし大佐はロシア爆撃機のミッションに関してこれ以上の詳細には触れていない。今回はロシアが米国を狙って行う力の誇示の最新事案となった。
「プーチンのロシアは核の恫喝を行い、爆撃機に無駄に燃料を消費させ、その他空中給油や整備作業を行わせてまで長距離飛行させこの一環としているのです」とペンタゴンで戦略兵器分野の専門家だったマーク・シュナイダーが解説する。「核兵器で脅しをかけるのロシアの得意分野です」
Tupolev_Tu 95 russian bear bomberA Tu-95 Bear bomber.Wikimedia Commons
一年以上前になるがやはりベア爆撃機二機がアラスカのADIZ内を飛行しており、この際はSu-35フランカー戦闘機編隊も随行していた。
アラスカにはペンタゴンも戦略ミサイル防衛拠点をフォート・グリーリーに置いている。
フォート・グリーリーには地上配備迎撃(GBI)ミサイル44発が配備されICBMに対応する。その他カリフォーニア州ヴァンデンバーグ空軍基地にも同じ装備が展開している。
ウラジミール・プーチン大統領の反米姿勢で米ミサイル防衛をやり玉に挙げているのは、ロシア軍ミサイルへの対抗手段と受け止めているからだ。
ペンタゴンの説明では米ミサイル防衛体制の対象はロシアではなく、北朝鮮のICBMや今後登場するイランの長距離ミサイルだ。
ベア爆撃機にはKH-55空中発射式巡航ミサイルや最新かつ最強のKH-101・102(通常弾頭・核弾頭)が搭載される。
2012年6月にロシアは大規模戦略核部隊の演習でアラスカの米ミサイル迎撃基地への模擬攻撃をしている。
前出のシュナイダーは近年のロシア爆撃機には戦闘機の護衛がつくときとつかないときがあると述べている。「それはともかく、プーチンが2007年から始めている『戦闘哨戒飛行』は訓練ではなく核の恫喝が目的でしょう」
「KH-55、KH-101,KH-102といった巡航ミサイルは射程距離数千キロで、何もわざわざ迎撃を受ける地点まで接近させる必要はないはずです」

ロシア軍がADIZ内飛行に踏み切るのは接近しなければ『恫喝効果』が生まれないからでしょう」(シュナイダー)■

2017年5月5日金曜日

ロシア機のアラスカ接近で初めて戦闘機エスコートを確認


ロシアの動きが気になるところです。日本にも東京急行のパターンで防空体制を探るような動きをしていますね。ベアがどこまで補修を受けているかわかりませんが、機体寿命が長くないのではと思います。それでも日米の動きを探るけん制の効果があるとクレムリンは判断しているのでしょうか。

ツポレフTu-95MSベア戦略爆撃機、モスクワの戦勝70周年記念での飛行中。Host photo agency / RIA Novosti

U.S. intercepts Russian bombers, fighter jets near Alaska

アラスカ沖で迎撃したロシア爆撃機には戦闘機エスコートが付いていた
By STEFAN BECKET CBS NEWS May 4, 2017, 11:21 AM

WASHINGTON -- 米戦闘機編隊がロシア軍用機複数をアラスカ沖の米領空そばで迎撃した5月3日の事件は米ロ両国の航空機遭遇で最新の出来事になった。
  1. 米政府関係者がCBSニュース安全保障担当記者デイヴィッド・マーティンに事件を確認し、遭遇はあくまでも安全かつ規律の取れた形で発生したと述べた。ロシア機による米領空侵犯はなかったとも述べた。
  2. 該当のロシア機はTu-95ベア爆撃機二機で4月からアラスカ近辺まで飛行を繰り返している機種だ。今回は初めてSu-35戦闘機二機が随行しているとマーティンが伝えている。米関係者は該当機は前日にシベリアの前線基地に居るのが確認されていると語った。
  3. フォックスニュースは迎撃したのは米空軍F-22ステルス戦闘機二基で水曜日午後9時ごろの出来事と伝えている。
  4. 4月には4日にわたりロシア爆撃機、偵察機が米領空付近まで飛行しており、連続したのは2014年以来初めてだ。
  5. ロシアがパトロール飛行を再開した理由を関係者はいろいろな理由があると解説している。ひとつは飛行再開はトランプ政権によるシリア空軍基地攻撃が4月にあったことへの対応という。ロシアはシリアの盟友として攻撃を強く非難していた。
  6. もう一つの説明としてロシア長距離爆撃機部隊はほぼ二年間にわたり飛行を停止し深刻な保守点検問題に取り組んでいたが、今や飛行可能となり訓練をしているとする。
  7. 米政府関係者は両方とも正しいかもしれないとだけ述べている。
  8. トランプ大統領はプーチン大統領に電話会談を火曜日に行っている。また7月初めにはドイツのハンブルグで初の直接会談の予定がある。■

2016年10月9日日曜日

まだまだ現役、B-52の現状と今後の改修の方向性


まだまだB-52は供用されそうですね。エンジン換装が実現すれば一層その効果を発揮するでしょう。良い投資だったことになりますね。

The National Interest


Why America's Enemies Still Fear the B-52 Bomber

October 2, 2016


9月26日、大統領候補討論会でドナルド・トランプはヒラリー・クリントンから核戦力について聞かれこう答えた。

「ロシアの戦力増強で装備は近代化している。それに対し米国は新型装備配備が遅れている。
「先日の晩にB-52が飛んでいるを見たが皆さんの父親より古い機体で祖父の世代が操縦していた。このようにほかの国に追いついていない」

つまりB-52は老朽機で米空軍が世界から特にロシアから大幅に遅れを取っていると言いたかったのだろう。

でも本当に古い機体なのでは?

B-52ストラトフォートレスの初飛行は1952年で生産は1962年まで続いた。現在運用中のB-52H合計76機より高齢のパイロットは皆無に近い。トランプ発言は「祖父」というところまでは正確であり、B-52乗員の中には三世代続けて同機に搭乗員という家族がすくなくとも一組存在する。

その機体が今でも有益なのかが疑問となっているわけだ。

BUFFのニックネームが付くB-52は当初は核爆弾を上空から投下してソ連を攻撃するのが役目だった。だが地対空ミサイル、空対空ミサイルの登場で想定した任務は1960年代末に自殺行為となり、今でも同じだ。

では何に使うのか、米空軍がまだ運用しているのはなぜか。

B-52は湾岸戦争以降ほぼすべての戦役に投入されている。その理由は何か。

B-52には二つの大きな利点がある。大量の爆弾、ミサイルを搭載できること、遠距離に運べることだ。空中給油なしでも8,800マイルを飛べる。また性能向上用のスペースは機内に豊富にある。

同機は爆弾、ミサイルの長距離配達トラックということか。

防空体制を整備されあt標的にはどうするか。AGM-86空中発射式巡航ミサイルを最大20発を搭載する。核・非核両用の同ミサイルはスタンドオフ攻撃用だ。

だが高価な巡航ミサイルをB-52は発射していない。敵対勢力のタリバンやISISに強力な防空体制がくB-52は高高度を上空飛行できるからだ。

B-52はGPS方式のJDAM誘導爆弾12発あるいはGBUレーザー誘導爆弾を4から10発積んで戦闘地区上空で待機し、近接航空支援の要請を待つことがある。もちろんジェット戦闘機でも同じ仕事はできるが、戦闘機は上空飛行待機時間も限られる。アフガニスタンのタリバン討伐作戦を開始した2001年当時はB-52やB-1が米本土から飛来し爆撃していた。当時は近隣に米空軍が運用できる基地がなかったためだ。現在もB-52はタリバン、ISISを相手に作戦を展開している。

ISISへ絨毯爆撃していると聞いたが

絨毯爆撃では数百から数先発の非誘導型爆弾を投下し標的を爆撃する。無差別攻撃となりそのショック効果は大きい。B-52はこのために最適な機材で500ポンドから750ポンド爆弾なら51発を搭載できる。あるいはクラスター爆弾なら40発となる。イラク軍が砂漠地帯に陣取った1991年の湾岸戦争で低レベル絨毯爆撃を行っている。

ただし今日の空軍は絨毯爆撃には関心がない。空軍が同機を投入するの高密度目標だけだが敵側にそれだけの標的がないのが普通だ。付随被害も発生するので民間人居住区の近隣で実施できない。

BUFFは他にどんな任務に役立つの?

長距離飛行性能は海洋上空の監視飛行に最適だ。南シナ海の広大さと中国が覇権を狙っていることを想起してもらいたい。

B-52には海軍用機材が搭載するセンサーはないが、一部機材にライトニング、ドラゴンズアイの水上監視用レーダーポッド二種類が搭載され水上艦船の識別に使える。また別にAGM-184ハープーン対艦ミサイル8発搭載用に改修された機材もあり、160マイルの射程を誇る。このため水上戦闘でもB-52は威力を発揮できる。

ミサイルトラックとしてのB-52をもう一歩進めて空飛ぶ弾薬庫とする構想もある。その場合対空ミサイルも搭載するだろう。

戦闘機では空対空ミサイル搭載数に限りがある。特にステルス戦闘機でこの傾向が強い。そうなると数の上で優勢な敵との対決で不利だ。そこでステルス戦闘機の特性を活かし、アクティブ電子スキャンアレイレーダーにより接近してくる敵を探知させ、データリンクとネットワーク技術でデータを友軍機に送らせる。「弾薬庫」機としてB-52やB-1に長距離空対空ミサイルを多数の搭載させる構想がある。

現時点では理論にすぎず、制約もある。だがペンタゴンは構想を真剣に検討している。

ミサイル以外にB-52をどう活用できるだろうか。力の誇示で目立つ機材だ。弾道ミサイルとの比較では航空機は核兵器運搬手段として脆弱性が避けられない。だが地上配備、海中配備のミサイルはその存在が見えにくく、、一方でB-52は危険地帯近くへ飛ぶことができる。上空飛行で明白な力のメッセージを伝えることが可能だ。

B-52が南シナ海上空や核実験直後の北朝鮮付近を飛行する様子を伝えるニュースを耳にしただろう。ロシアのTu-95ベア爆撃機がイングランドやカリフォーニア沖合を飛行して嫌がらせをするようなものだが、B-52の上空飛行の方が政治的に大きな意味を有する。

だが機体の金属部品が疲労しないのか。また旧式エイビオニクスやエンジンはどうするのか。

その点は考慮ずみで心配は不要だ。空軍はB-52は2040年までの飛行供用は可能としさらに延長の可能性もあるとしている。B-52の設計が堅固かつ保守的であるのが理由で、その後登場した高性能機よりストレスへの許容範囲が高い。空軍は大規模投資でB-52の飛行性能を維持向上している。

だが搭載エイビオニクスは旧式だ。ニューヨーク・タイムズは油圧系統と配線が旧式でコンピュータも故障が多い旧型のまま機内に搭載されていると指摘している。

そこで空軍は11億ドルでBUFFにCONECTエイビオニクス改修を加え新型ディスプレイ、通信装置、データリンクによるネットワークを導入する。また兵装庫改修で誘導爆弾を追加搭載させる。現在はJDAMなら8発搭載可能だが、小型空中発射おとり(MALD)ミサイルも搭載し敵防空体制を混乱させる他、レーダージャミング装置も搭載する。

B-52のTF-33ターボファンエンジンは効率が劣る。一時間3,000ガロンの燃料を必要とする。そこ空軍はエンジン換装で整備コストともに経済性の向上を検討しているが予算がない。そこで浮上してきたのが民間会社に保守整備を信用払いで委託し、新エンジン換装で浮いた運用経費で費用を賄う支払い方法だ。

欠点はあるものの、B-52は今でもしっかりした仕事をしており、空軍も評価しているのは明白だ。ただし古ければすべてよし、というものでもない。

2015年にB-52一機を事故で喪失した空軍は13百万ドルで有名な航空機の墓場(アリゾナ州)からB-52H一機を代わりに復帰させた。13百万ドルで新型爆撃機は調達不可能だ。(なお、墓場にはB-52Hがあと12機温存されている。)

後継機種はないの?

空軍にはより近代的な爆撃機が二機種ある。B-2スピリット・ステルス爆撃機とB-1ランサーだ。だが両機種ともB-52の後継機種とはみなされていない。

B-2スピリットはステルス機で敵防空網の突破が期待されている。高度能力を持つ敵国に十分有効だが、20機しかない。運行は条件に作用され、飛行整備経費は一時間135千ドルとB-52のほぼ二倍だ。経費とともに搭載燃料・兵装量が少ないこともあり、爆弾トラックとして比較的安全な空域で毎日運用することは考えにくいし、海上監視機としても使いにくい。ただしステルス性能が効果を出すがステルスが外交的な力の誇示の目的には適さないことは明らかだ。

B-1BランサーはB-52と同様の効果が期待できる機体だ。搭載兵装量はより大きく、速度は25%も早く、レーダー探知も困難だ。だが今日の防空体制能力ではステルス機も探知されない保証はなく、迎撃を回避する速度も不足している。そこでB-52より性能が高いとは言え、空軍は同機を防空体制が整った空域に送りたくないはずだ。

そうなるとB-1(愛称ボーンズ)はレーザー誘導弾や巡航ミサイルを遠方から発射することとなり、B-52と同様になる。

B-1Bは高性能だが運用経費は一時間60千ドルとB-52より10千ドルも安い。ただし同機も63機と機材数が少ない。B-52がB-1の不足を補うことのか、爆撃ミッションを中止するのかとなり、このためB-52が今年はじめにISIS戦に投入されたのだ。
だがB-52に未来はあるのだろうか。空軍からB-21レイダーの調達を進めると今年発表が出た。これまで長距離打撃爆撃機と呼ばれていた機体だ。B-21はステルス機でB-2スピリットと形状が似ている。

B-21の設計思想は長距離爆撃機で遠隔地に飛び、敵防空レーダーに探知されずに飛行させることにある。中国、ロシアの低帯域レーダーはステルス機の探知にも有効と言われる。機体はB-2よりやや小さくなるだろう。

B-21の機体価格は5億ドルを超えるとされ、空軍としても新技術に真剣に対応しているというだろうが、ペンタゴンは最終価格でこっそりと交渉中と言われる。

ロシアには「最新性能」があるのか?

ロシアは三機種の爆撃機を運用中だ。高速のTu-22M3バックファイヤー、もっと高速のTu-160ブラックジャック、Tu-95ベアで冷戦時の機体設計だ。ただし、ステルス性能はなく、B-2や今後登場するB-21に匹敵する機材はない。

可変翼Tu-22M3はB-1より速度が70%も早いが兵装と燃料の搭載量を犠牲にしている。スピードが防御策にならないことは実証済みで2008年にジョージアで地対空ミサイルで一機撃墜されている。

巨大なTu-160は可変翼式でマッハ2とB-1よりはるかに高速だが兵装搭載量はほぼ同じだ。極めて高価な機体で製造、維持は大変だ。ロシアは16機を保有しているが大部分は飛行可能な状態にない。B-1同様にレーダー断面積は小さいが、敵防空網の突破は期待できない。

そこでTu-95SMとTu-142ベアがある。ロシア版B-52と言える機体で原型のベアは初飛行が1952年でB-52とほぼ同じ任務に投入されている。またうまく任務を実施している。だが何と言ってもプロペラ推進は低速で騒音がすざまじく、兵装搭載量はB-52の半分程度だ。

そうなると一定数の機材が運用されている唯一の重爆撃機は中国のH-6の120機で、冷戦時のTu-16を改修したものだが、飛行距離・兵装搭載量ともにB-52とは比較にならない。

ではトランプの言う「新能力」とは爆撃機以外のことを指しているのだろうか。ロシアにはたしかに新兵器が多数あるが、空の上で追いつくのに必死だ。Su-35はまだ生産が低調だがF-15より優位だといわれている。だがF-15は1976年初飛行で、Su-35はF-22ラプターには追随できない。

またT-50ステルス戦闘機の開発がある。現在の発注数は12機でラプターの一割にも満たない。米国にはラプターに加えやや性能が劣るがF-35も加わる。

地上兵力技術でロシアが進歩しているのは間違いなく、T-14アルマタ戦車には100両の発注がある。だが今のところはT-72戦車改良型数千両が主力で、米軍が1991年の湾岸戦争で粉砕した戦車の改良型だ。

一方でロシアのミサイルには畏怖させるものあり、これから登場するジルコン水上発射ミサイル、S-400地対空ミサイル、イスカンダル短距離弾道ミサイルが要注意だ。特に後者はロシアが航空機による効果に期待できない中で依存を高めそうだ。またロシアも米国同様に大陸間弾道ミサイルによる核戦力を保持している。

ロシアがここ数年で軍事力を増強しているのは明らかで、経済の停滞とは対照的だ。ただし、米国が2016年に投じた国防予算は597百万ドルに対しロシアは87百万ドルで7対1の差がある。多くの場合にロシアが有望な新技術を開発していても実際には十分な配備をする予算がないというのが実情だ。

そうなると…

B-52の愛称BUFFは「デカくて不格好な太っちょ野郎」という意味だ。

だが外観で判断してはならない。B-52にはセクシーさもステルス性能もなく、敵防空網突破やSAM回避はできないかもしれないが、地球の反対側に大量の兵装を投下することができ、ISISやタリバンの本拠地を壊滅することは可能だし、苦戦する地上部隊の援護にもかけつける。

新型機も同じ任務に投入できるし、より高性能機材も登場するだろう。だがB-52はこの時点でも後継機の必要がないほどの活躍をしている。古くても信頼性が高くしっかり仕事をこなす機体を廃棄する必要はない。■

Sébastien Roblin holds a Master’s Degree in Conflict Resolution from Georgetown University and served as a university instructor for the Peace Corps in China. He has also worked in education, editing, and refugee resettlement in France and the United States. He currently writes on security and military history for War Is Boring.
Image: A B-52H Stratofortress takes off after being taken out of long-term storage at Davis-Monthan Air Force Base, Arizona. Flickr/U.S. Air Force

2016年9月5日月曜日

★歴史に残る機体10 Tu-95ベアはロシアのB-52,旧式化したとはいえ威力は十分




The National Interest

The Tu-95 Bear: Russia Has Its Very Own B-52 Bomber

She might be old but she packs a big punch.
An air-to-air overhead view of a Soviet Tu-95 Bear aircraft. Wikimedia Commons/U.S. Navy

September 3, 2016



ツボレフTu-95「ベア」ほど特徴的な機体は珍しい。四発の戦略爆撃機で哨戒機でもあり、一角獣のような空中給油管がついた形状はまるで前世紀から蘇った怪獣のようだが実際に第2次大戦直後に生まれて今日も運用されている。

ただし外見にだまされないように。60年に渡りTu-95が軍務についてこられたのは大ペイロードで長距離飛行できるからである。つまりTu-95はロシア版のB-52であり、洋上飛行を得意とし欧州、アジア、北米の防空体制に挑戦してきた。

冷戦時の核爆撃機として

  1. ベアは第二次大戦時の米国航空兵力に匹敵する戦略爆撃機を熱望した戦後のソ連で生まれた機体だ。ソ連立案部門は1950年に四発爆撃機で数千マイルを飛行して米国を爆弾12トンで攻撃できる機体を求めた。
  2. ただし当時のジェットエンジンは燃料消費が多すぎた。そのためアンドレイ・ツボレフ設計局はNK-12ターボプロップ4発に反転プロペラを選択した。
  3. NK-12にはプロペラ二基がつき、二番目のプロペラを逆回転させ第一プロペラが生むトルクを打ち消し、速力を確保する。反転プロペラは効率が高い反面、製作コスト維持コストが高くなるだけでなく信じられない程の高騒音を生むため、広く普及しなかった。Tu-95飛行中の騒音は潜水艦やジェットパイロットからわかるほどだといわれる。
  4. ただしTu-95ではこの選択が効果を上げた。巨大なTu-95は最速のプロペラ機であり、500マイル時巡航が可能だ。プロペラ直径は18フィートもあり、先端では音速をやや上回る速度になる。後退翼を採用したプロペラ機としても希少な存在だ。
  5. Tu-95は巨大な燃料搭載量があり、9,000マイルを機内燃料だけで飛べる。後期モデルでは特徴的な空中給油管を搭載してさらに飛行距離を伸ばした。冷戦時の警戒飛行は10時間におよんでいたが、実際はその二倍程度の飛行が可能だった。
  6. Tu-95の乗員は6名から8名と型式により異なる。パイロット2名、航法士2名のほかは機関銃やセンサーの操作員だ。原型ベアは23ミリ機関砲二基を搭載していた。だが長距離空対空ミサイルの登場でこの装備は陳腐化し後期型では尾部だけとなった。(尾部機関銃でB-52は2ないし3機をベトナム戦で撃墜している)
  7. ベアの当初想定ミッションは明白だった。冷戦が熱い戦争に発展した場合に数十機がばらばらに北極海を飛び越えて核爆弾を米国に投下するはずだった。途中でミサイルや防空網の犠牲となっても数機は突破できる想定だった。
  8. 米軍の作戦構想を真似てソ連も24時間滞空待機する核爆撃機を運用していた。
  9. 核実験にも投入された。Tu-95Vが投下したのは史上最大の核爆弾で1961年にセヴェルヌイ島で爆発した50メガトンの爆弾の王様Tsar Bombaだった。同爆弾は地表から4キロ上空で爆発し、きのこ雲を40マイル先まで送った。衝撃波で投下したベアも高度を数千メートル失ったが、パイロットは制御を取り戻し、基地に帰還している。乗員は生存可能性は50パーセントしかないと知らされていた。
洋上哨戒機として
  1. 1960年代に入るとソ連は米本土に爆撃機で核爆弾を投下する方式では戦果が望めないと賢明な判断をし、弾道ミサイルの費用にはかなわないことがわかった。そこでTu-95新型にはこれまでと異なるミッションが想定された。
  2. 同機を長距離巡航ミサイルの母機に使う構想が生まれた。Tu-95Kは大型のKh-20核巡航ミサイル(NATO名称AS-3カンガルー)を搭載した。同ミサイルの有効射程は300から600キロでMiG-19の胴体をモデルとし主翼を取り外した形状だった。
  3. もう一つのミッションが米空母打撃群の追尾飛行だった。探知船舶を広い海洋の各所に配備するのは難しい課題だった。だがもし米空母群の位置が判明すれば、陸上から爆撃機多数を飛ばし攻撃できる。ベアなら洋上を何時間も飛行して広大な海洋をカバーできるので米艦隊捜索用にうってつけの機材だった。
  4. Tu-95RT洋上偵察型はこのため専用に製造された機体で水上捜索レーダーを胴体下のポッドに搭載し、さらに捜索用のプリスター型観測窓を設けた。
  5. 有事になれば敵艦隊の位置を追跡することは有益であり、さらに米海軍には航空攻撃を受ける可能性という心理的圧迫をかけられる。米空母からはつきまとうベアを追い払おうと戦闘機を緊急発進させることがよくあった。ベアと戦闘機が一緒に収まる写真は冷戦時の象徴だった。
その他各型
  1. 試験機材のベアは多数あり、Tu-95LALは原子炉を搭載し推進動力とした。Tu-95KにMiG-19戦闘機を搭載し空中母艦としようとした。
  2. 量産型にはTu-95MR偵察機、改良型Tu-95K、KMがあり、後者はKh-22ミサイル運用能力がついた。
  3. ソ連は対潜哨戒偵察機をベアから専用機材Tu-142として製造している。この開発の背景にはポラリス潜水艦発射弾道ミサイルの恐怖があった。Tu-142はベルクート(ゴールデンイーグル)水上探索追跡レーダーで識別できる。尾部ブームにMAD磁気異常探知装置をつける。Tu-142は機体を若干延長してセンサー類を搭載している。
  4. 冷戦期に搭載システムを数回アップグレードしており、米潜水艦技術の進展に追随した。現在はTu-142MZがあり、RGB-16、RGB-26ソノブイを搭載しエンジン出力を強化している。数回に渡りTu-142は米潜水艦追跡に成功している。 二機のみ製造されたTu-142MRはロシア潜水艦との通信専用機材だ。
  5. ロシア海軍航空部隊が今日でもTu-142を15機運用している。そのうち一機がシリアで最近目撃されている。シリア反乱勢力の位置情報をつかもうとしたのか米艦隊を追尾したのだろう。
  6. 1988年からインド海軍はTu-142MK-Eを8機運用中で、近くP-8Iポセイドン12機に更改される。
  7. ベアはロシア初のAWACSたるTu-126となった他、Tu-114旅客機型はフルシチョフを無着陸11時間でモスクワからニューヨークへ運んだ。ただし今日では両機種とも飛行していない。
  8. Tu-95として今日も稼働中なのはTu-95MSが50機あり、Tu-142を元に開発し、Kh-55ミサイル(AS-15)を運用する。この機体は最近になり巡航ミサイル16発を搭載する改装を受け、新型航法目標捕捉システムを取り付けた。Kh-55は核、非核弾頭の双方あり射程も3千キロから300キロまで別れる。
  9. Tu-95MSMが発射するはKh-101および核Kh-102ステルスミサイルは低空飛行で低レーダー断面積を誇る。射程は5,500キロにまで及ぶ。
  10. これだけの威力を誇るものの、ベアも老朽化には勝てない。2015年夏には二年間で二機に喪失事故が発生したため全機飛行停止措置となった。
現在の状況
  1. 21世紀に入ってもベアは相変わらず太平洋大西洋上空を飛んでいる。主要任務は他国の偵察だ。
  2. Tu-95がイングランド沿岸沖、カリフォーニア沖50マイル地点、アラスカの防空識別圏内、日本の領空内を飛行する事案が発生している。接近飛行で相手国の迎撃戦闘機の出動を誘発させているが、他国領空の侵犯は通常は行っていない。
  3. 冷戦時にはこうした哨戒飛行は通常の事だったが、プーチンが2007年に再開させた。真意はロシアが今でも核搭載爆撃機を各国に飛ばす能力があると誇示するものだ。
  4. 米RC-135スパイ機の飛行で中国、ロシアの戦闘機も迎撃することがあるが、RC-135は非武装機だ。
  5. ベアはステルス性は皆無であり、最新鋭の防空体制では残存は期待できないが、巡航ミサイル発射により敵防空網に接近せず初回攻撃を実施できる。
  6. 2015年11月に就役後59年が経過してTu-95は爆撃機として初めて戦闘に投入された。ロシア国防省公表のビデオによれば巡航ミサイルを発射し、シリア反乱勢力の拠点を破壊している。ロシアが初めて巡航ミサイルを空中、海上双方で投入したことは自国軍事力を世界に世界に誇示する意味があったと解釈された。
  7. 今日のロシア軍には各種爆撃機がありペイロードも選択の幅が広く、Tu-95より高速飛行可能な機材もある。ただし、ベアは大型巡航ミサイルの運用に最適であり、太平洋大西洋で監視の目を提供しているのだ。■

Sébastien Roblin holds a Master’s Degree in Conflict Resolution from Georgetown University and served as a university instructor for the Peace Corps in China. He has also worked in education, editing, and refugee resettlement in France and the United States. He currently writes on security and military history for War Is Boring.
Image: An air-to-air overhead view of a Soviet Tu-95 Bear aircraft. Wikimedia Commons/U.S. Navy


2016年8月6日土曜日

★★生産再開するTu-160M2ブラックジャックのここに注目



The National Interest

What Makes Russia’s New Tu-160M2 Blackjack Supersonic Bomber Special

August 4, 2016


ロシアの新型ツボレフTu-160M2ブラックジャック超音速戦略爆撃機が2018年末に初飛行する見込みで、本格生産が2021年に始まる。原型たるブラックジャックは少数生産のままソ連崩壊の1991年で生産終了していた。
  1. Tu-160M2初号機は2018年末に初飛行し本生産は2021年開始の見込み』とヴィクトール・ボンダレフ上級大将が国営通信RIAノーヴォスティで語っている
  2. 今回の大日程はこれまでのロシア政府発表と微妙に異なり、以前は初飛行2019年、本生産開始は2023年としていた。現下の経済情勢でロシア政府が予算を確保したことから同機がロシア戦略爆撃機の中核とみなされていることがわかる。
  3. Tu-160M2は全く別の機体と言ってよい。新型機のミッションシステムは更新されエンジンはクズネツォフNK-32アフターバーナー付きターボファンの性能改修型だ。ロシアは同型機をおよそ50機調達するとしているが、原型のTu-160が16機あり、これも改修を受けるかは不明。
  4. ロシア空軍の用兵思想は米空軍と異なり、敵防空網突破を大々的に行うことは想定していない。Tu-160はマッハ2でスタンドオフ兵器の発射地点へ急行する。ステルス性は重視されていない。
  5. だがTu-160M2は長く供用中のTu-95ベアを更新機体にならないようだ。両機種は今後も併用される。「B-52HとB-1Bのように共存するでしょう」とマイケル・カフマン(CNAコーポレーション、ロシア軍事問題研究員)は述べる。「それぞれ代替できない機種で、Tu-160がTu-95の後継機種という説には納得できませんね」
  6. そうなるとB-52同様にTu-95も今後も長く供用されそうだ。「Tu-95の完全退役は20年ほど先でしょう。パイロン改修でKh-101/102ミサイルの運用能力が生まれたのは今後も供用する意向を示しています」(コフマン)
  7. ロシア空軍には同機のペイロードに意味がある。ステルスミサイルのKh-101はシリアで実証ずみで、核弾頭付きKh-102はともに防空体制の整備された敵領空に進入する能力があり、爆撃機は遠隔地で発射すればよい。両ミサイルの射程は1,800マイル以上でロシア戦略爆撃隊の主要装備になるだろう。
  8. ツボレフには新型PAK-DAステルス爆撃機もあるが、機体が姿を表わすのはまだ先のことだ。「ロシアは新型機の公表を好みますが、実現しなくても希望的観測でしかも財政的に厳しい時でも公表するようですね」とコフマンは先に語っていた。
Dave Majumdar is the defense editor for the National Interest. You can follow him on Twitter: @davemajumdar.

Image: Creative Commons.

2014年9月20日土曜日

ロシア、中国の新型爆撃機開発の現況


西側との対決姿勢を示すロシアが軍事装備の拡充を図っているのは周知のとおりですが、伝統的な長距離航空戦力でも進展が生まれつつあるようです。中国はもっと秘密のベールに覆われていますが、空母と合わせ長距離爆撃機の開発を進めているのは間違いないようです。これに対し米空軍のLRS-Bが本当に開発できるのか、F-35で相当計画が狂っている各国の防空体制が中ロの新型機に対抗できるのか、今行われている投資が2020年代意向の航空戦力図を決定することになるのでしょうね。





Future Bombers Under Study In China And Russia

China may follow Russia in bomber developments
Sep 18, 2014Bill Sweetman and Richard D. Fisher | Aviation Week & Space Technology


Long-Range Plans
ラドゥガKh-101/-102ALCMは全長が大きく、Tu-95の爆弾倉に入りきらず主翼下パイロンに装着する。
VIA INTERNET

米空軍の長距離打撃爆撃機(LRS-B)開発が来年にも本格実施を目指す中、ロシア、中国も次期爆撃機を開発中。このうちロシアのPAK-DA(perspektivnyi aviatsionnyi kompleks dal’ney aviatsii、次期長距離航空システム)は1977年のツボレフTu-160以来となる新型爆撃機、他方、中国は初の国産爆撃機の実現を狙う。
  1. PAK-DAはユナイテッドエアクラフトUnited Aircraft Corp. (UAC) 傘下のツボレフが開発にあたる。ツボレフは第二次世界大戦終結後のロシア長距離爆撃機のほぼすべてを手がけてきた。開発の正式決定は2007年。新型爆撃機が登場するまで既存機種の改修が進められる。

  1. 亜音速全翼機あるいはブレンデッドウィング形式の機体にステルス性能を加えた案が2012年初頭に提出されている。実現すればロシア初の全方位高性能ステルス機となり、1997年就役のB-2と同等の基本性能を手に入れることになる。

  1. PAK-DA製造の最終決定は昨年末で、作業開始は2014年。UACにPAK-DAの設計、製造契約が交付され初飛行は2019年を予定。最終組み立てはUACのカザン Kazan 工場。2023年までに公試を終え、2023年から25年の間に就役、とロシア報道が伝える。エンジンはユナイテッドエンジンUnited Engine CorpのJSCクズネツォフ部門JSC KuznetsovがTu-160搭載のNK-32アフターバーナー付きターボファンを原型に開発する。

  1. それ以上のPAK-DA情報はほとんどないが、ロシア爆撃機部隊の構成やミッション内容から推測は可能だ。
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  1. 現有の長距離爆撃機部隊はTu-160(13機)、Tu-95MS(63機))と減衰中のTu-22Mバックファイヤーで構成。このうちTu-22M3は戦域レベルの陸上攻撃任務で小型だが使い勝手の良いスホイSu-34に切り替え中。

  1. Tu-160近代化改修を2020年までに完了しTu-160Mになるとロシア国防省が2012年に発表。Tu-95も改修を受けてTu-95MSM名称に変更している。ともに大規模な改修で新型レーダーや電子戦装備、計器・データ処理で改良を受けた。機体寿命の延長、エンジンの寿命も長くなった。2010年試算で80億ルーブル(220百万ドル)を2020年まで投入する。NK-32エンジンは2016年までに完成し、PAK-DAのエンジンの基礎となる。

  1. 両型とも長距離空中発射巡航ミサイル(ALCM)を搭載する。ロシアは二型式のALCMを開発中でタクティカルミサイル企業Tactical Missiles Corp.のラドゥガ事業部Raduga divisionが一手にとりくんでいる。このうちKh-555は通常弾頭だが80年代のKh-55核弾頭を改良し、慣性誘導、レーダー地形参照誘導、赤外線誘導を組み合わせる。

  1. これに対し新型で大型のKh-101/102(通常弾頭/核弾頭型)の生産が本格化しており、Tu-160は機体内部に12発、Tu-95MSは主翼下に計8発搭載する。ALCMでは最大で発射時重量は 5,300 lb.と推定。ターボファン動力であるのはKh-55と共通。ロシアの長距離巡航ミサイル在庫は850発。

  1. PAK-DA登場後も改修済み旧型爆撃機は10年ないし15年使用される見込みだ。一方PAK-DAは敵地侵攻任務に投入されるだろう。

  1. 新型爆撃機のエンジンをNK-32原型に開発するとの発表があったこと、ロシア爆撃機は空中給油への依存度が米国より低いことから、機体寸法は大型と推測できる。NK-32は3軸・低バイパス比エンジンでミリタリー推力は31,000-lb、アフターバーナー使用時55,000-lb.。PAK-DA用はアフターバーナーを省き、バイパス比をわずかに上げる。エンジン4発だと重量200トンとなり、B-2およびLRS-Bの推定寸法を上回り兵装搭載量と航続距離が大きくなるだろう。

  1. これに対して中国も新型爆撃機を開発中と伝えられている。人民解放軍空軍 (Plaaf) と海軍航空隊(PLAN-AF)が今でもソ連時代のTu-16を使用し続けているため中国は世界クラスの戦略爆撃機の製造に真剣でないと思われがちだ。Tu-16は中国には1959年から導入され西安航空機 Xian Aircraft Corp. (XAC) が轟炸六型(爆撃機6型、H-6)として製造。ただし改良を加えつつ製造継続していることから長距離空軍力への中国の関心度が推し量られる。

  1. 中国政府、人民解放軍(PLA)双方も今後の爆撃機開発について何も語っていないが、漏れ伝わる情報を総合すると新型爆撃機が開発中なのは明らかだ。H-20の名称で2025年までに登場するとのアジア某国政府の情報もある。

  1. H-20の登場時期は中国が目指す二つの戦略目標と一貫性がある。まず「第一列島線」と呼ぶ日本、台湾、フィリピンを結ぶ線に米国が接近するのを拒否する役目が新型爆撃機に期待できる。二番目に兵力投射の手段となり、中国空母部隊を補完し揚陸能力を整備する海軍を助ける事になる。

  1. これまでも次世代爆撃機の噂は非公式な筋から流れていたが、ノースロップ・グラマンB-2がベルグラードで中国大使館を誤爆した1999年5月が開発開始の契機といわれる。中国がB-2情報をノースロップ・グラマン技術者ノシル・ゴワディア Noshir Gowadia からどれだけ入手したか不明だ。ゴワディアは2011年に軍事機密を中国に渡した罪で刑期32年の有罪判決を受けた。

  1. この新型爆撃機でも西安航空機が主契約企業となっる可能性が高い。ロシア、米国の新型機と同様にH-20も亜音速低探知性の「全翼機」形状となるだろう。
  1. 興味深い情報が人民解放軍の研究部門から出ている。中国報道ではPlaafのWu Guohui大佐(国防大学National Defense University 准教授)がステルス爆撃機が「国家の関心を再度呼び起こし」て「中国は爆撃機が弱体だったが今後は長距離打撃機開発をめざす」と発言しているのだ。
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  1. また同大学の准教授Fu Guangwenは2013年に中国の爆撃機開発の障害はエンジン、素材だという。一方で、新型機は第二列島線のグアム、南シナ海、インドを標的にし、ステルス性で侵入が容易になり、「情報対決」つまりサイバー電子戦に対応し、核・非核両用対応、と発言している。

  1. 新型爆撃機の設計は2008年に開始ずみとの報道が2014年1月にSina.comから出ている。報道では機体は全翼機形式で米西海岸が攻撃目標になる。

  1. 2013年にB-2に酷似した想像図が中国の技術報に出ている。2014年初めにはコウモリの翼形状のラジコン機がテストされている場面が流出している。中国が次世代軍用機の形式を真剣に検討中なのは明らかで、情報漏出は意図的な国内、海外向けだろう。

  1. このうち上記のラジコン機は長距離無人航空機 (UCAV) の想定かもしれず、中国が長距離無人攻撃機を開発している可能性を示す。メディアが大々的に全翼機「利剣」LiJian(瀋陽航空機 南昌Hongdu航空機共同開発)のデビューを2013年11月に報じている。ボーイングX-45Cと形状、寸法が酷似した利剣は両社から今後登場する大型UCAVの魁だろう。ロシア、米国に追随し西安航空機がH-20の無人機版を開発する可能性もある。

  1. また中国は超音速中距離爆撃機にも関心を示しているのが2013年に低視認性双発形状のモデル機が登場したことでうかがえる。実現すれば全長25メートルから30メートルで1950年代のコンヴェアB-58(西側では最大規模の超音速爆撃機)とほぼ同寸。しかし開発が進行中なのか不明で、過去の競作で不採択案なのか、予算がつかなかった案件なのか不詳。

  1. PAK-DAは合衆国内地点を目標とする戦略的野心作だが、中国の新型機が同様の想定とは考えにくい。とはいえ、長距離飛行し生存可能性高い機体で大量のミサイル搭載により中国の近隣地区の敵陸上基地や海軍部隊には大きな脅威になる。超音速ステルス戦闘機J-20の存在も考慮する必要がある。

  1. 一方でPLAはH-6新型の開発と既存各型改修も進めている。ロシアからTu-22M3購入を断られて、H-6の大幅改修に迫られた背景がある。
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  1. H-6Kはロシアが提供した推力26,500-lb.のUEC-サトゥルンD-30KP-2ターボファンを搭載し、1950年代のターボジェットから3割近く出力が増えている一方、高バイパス比 (2.24:1) で燃料消費効率が向上。戦闘行動半径は3,500 km と言われる。機首に新型レドームとし、電子光学式目標捕捉センサーを搭載。グラスコックピットに改装し、主翼下のパイロン6つは射程1,500-2,000-kmのCJ-10/KD-20 対地攻撃巡航ミサイルを搭載する。また精密誘導爆弾も中国国内企業4社が製造中で運用可能だ。

  1. 旧型H-6も改修中。空軍のH-6G三個連隊には新型超音速ラムジェット式YJ-12対艦ミサイルの配備が始まる。射程400 kmとみられる。さらに旧式のH-6MもCJ-10/KD-20 対地巡航ミサイル運用能力を付加されている。先出のアジア某国政府筋によるとPLAにはH-6が130機配備されているが、2020年には180機になるという。つまりH-6Kの生産が今後も続くということだ。

  1. PLA戦略爆撃部隊の将来は空中給油能力の整備に大きく左右される。今年3月から4月にかけてPlaafはイリューシンIl-76MD三機を取得してウクライナでIl-78給油機に改修している。各機には給油用ロシア製ドローグ・ホースシステム3組があり、旧式H-6U給油機(推定24機)は1組搭載で搭載燃料重量も小さいことから大きな進展になる。

  1. 将来は西安Y-20大型輸送機を改造した給油機も登場するだろう。ロシアとの間でワイドボディ輸送機開発の話もあり、この改装版になるかもしれない。
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  1. ただし今後の大型機へ対応するには給油効率を上げる必要があり、中国もフライングブーム給油方式の採用を検討するはずだ。2013年の学会発表として西工大 Northwest Polytechnical Universit yから北斗 Beidou 航法衛星の発信信号に光学システムを組み合わせホース・ドローグあるいはフライングブーム式の空中給油を自動制御する方法が提案されている。■