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2017年9月14日木曜日

次期コンパスコール機にG550採用、特殊任務機材の流れが変わりそう


流れが変わったと思います。大きければよいという発想ではなく、目的と経費を考えると当然の流れかもしれません。さらに電子装備での技術革新が加わるのでしょう。ボーイングには痛手となりました。737でも大きすぎるということでしょうか。コンパスコールとは搭載装備の名称だったのですね。


It's Official, the USAF's Next Jamming Plane Will Be a Gulfstream BizJet

米空軍次期ジャミング機はガルフストリームのビズジェトが選定された

The US military is finding this type of aircraft increasingly attractive for various specialized missions. 米軍の各種特殊任務機にビジネスジェット機が進出する予感

BY JOSEPH TREVITHICKSEPTEMBER 8, 2017
OWEN65 VIA WIKIMEDIA

  1. 議会・業界の反発を押しのけ米空軍が次期ジャミング機材にガルフストリームG550ビジネスジェットを選定した。老朽化進みながら依然重要な現行機材EC-130Hコンパスコールの後継機へ道が開けたが米各軍で同様の機材を特殊任務に採用する動きにつながる可能性が出てきた。
  2. 2017年9月7日に空軍がL3と契約成立させコンパスコール搭載機材を新型機に移し替えることになったと発表。契約内容には機材の最終選定権が契約企業に認められ、G550となった。
  3. 「L3が社内検討と空軍事業推進室との協議を経てガルフストリーム550を空中早期警戒機(AEW)として選定しました」と空軍報道官アン・ステファネックAnn Stefanekが述べている。「次期コンパスコール機はEC-Xと呼称されます」
  4. 事業経費総額が不明のままなのは、契約はいわゆる「非明確化」方式でL3は直ちに事業に取り掛かりつつ最終価格を空軍と交渉する形のためだ。現時点でコンパスコール機能の抜本的変更は想定されず、機材に焦点が集まっている。
GULFSTREAM
  1. G550空中早期警戒機には一体型空中早期警戒Conformal Airborne Early Warning機の名称もついている。
  2. 米空軍がEC-130H初号機を受領したのは1982年のことでC-130Hハーキュリーズを改装した。以来14機体制を維持し、二回にわたる大規模近代改装のほか小改良を受けている。
  3. 実際の性能や改修内容は極秘扱いだがコンパスコールのミッションは敵の通信、レーダー、他電子送信を妨害して空と地上双方の作戦を支援することだ。直近ではEC-130H部隊はイラク上空を飛行しISISの無線交信や携帯電話利用を妨害し、即席爆発装置の作動を食い止め小型無人機を墜落させているはずだ。
  4. コンパスコールの機内装備では妨害のため各種発信源を把握追跡する機能があるため限定的ながら敵の配置や進行方法の情報収集能力も実現している。米軍がISIS作戦を開始した前からEC-130Hはイラク、アフガニスタンで60千飛行時間にわたる活動を展開していた。.
  5. 残念なことに機体老朽化が進み保守管理が一層困難になっている。空軍も一時はコンパスコール機材半数を廃棄する検討をしたが後継機検討はしていなかった。
  6. ガルフストリームに単独調達契約を交付することには議会が反対した。2016年にはEC-37Bの名称をついていた。米空軍、海軍、沿岸警備隊は初期型のガルフストリームVやG550をVIP搬送用にC-37AならびにC-37Bとして運航中だ。
  7. 議員にはとくに選挙区に航空機メーカーがある議員から手続きを競争方式にせよとの圧力がかけられた。空軍はこれに対してL3に委託して近代化改修を行わせ同社に機材を選択させる奇策に出た。空軍は同社に既存EC-130Hの保守管理経費を支払っている。
USAF
EC-130H コンパスコール機
  1. さらに抗議の声を上げたのはボーイングとカナダのボンバルディアでそれぞれ737とグローバル6000の採用を期待していた。だが空軍は事業を先に進め、2017年8月25日に米会計検査院が両社の抗議を却下している。両社はL3は長年ガルフストリームで仕事しており最初からG550ありきの姿勢で偏向していると非難していた。
  2. もちろんガルフストリーム550やほかのビジネスジェット機で早期警戒管制や情報収集といった各種ミッションを行わせる構想は前からある。ガルフストリームも独自に特殊ミッション部がありイスラエル航空宇宙工業(IAI)と共同でこうした用途用の機材をイスラエル軍に提供しており、一体型空中早期警戒Conformal Airborne Early Warning (CAEW) 機と呼んでいる。これが空軍のEC-Xの原型になるはずだ。イタリア、シンガポールも独自にCAEW機を運用しており、オーストラリアもG550原型の電子戦機材の調達に向かっている。
  3. 手順が適正かは別にして今回の決定内容で今後の特殊任務機材に大きな意味が生まれた。G550のような比較的小型機材でコスト効果が大きくなっているのはジェットエンジン技術の改善効果が大きい。
  4. コンパスコールの次期機材更新は米海軍のNP-3D「ビルボード」機の更新案に続くものだ。ここでもガルフストリームG550を特殊用途に改装し、NC-37Bと呼称している。この機材はミサイルテストの監視の他各種研究調査にも投入し、あわせてテスト現場に望ましくない訪問者が来ないか監視の任務にも就く。
GULFSTREAM
米海軍のNC-37B想像図 
  1. 同時にL3とガルフストリームはノースロップ・グラマンと合同で空軍の求めるE-8C共用監視標的攻撃レーダーシステム(JSTARS)レーダー機の後継機事業にも提案している。共同事業体はここでもG550を提案しているが機体上部に「カヌー」と呼ぶ強力なレーダーを搭載しCAEWがレドームを付けているのと対照的だ。二機種で共通性があることからノースロップ・グラマン案には大きな訴求力がある。
  2. EC-Xと合わせてオーストラリアが前述のようにG550を電子攻撃装備で調達するのも大きな要素だ。ペンタゴンは海外軍事販売制度で進めようとしており、米軍が機材調達すればコストを下げる要因になる。空軍他も機材運営のシステム共通化に関心を示す中で有事対応を簡素かつ安全に合同実施したいとしている。
  3. 今後もビジネスジェット機を原型にした機材が空軍のE-11A戦場空中通信中継 Battlefield Airborne Communications Node (BACN)通信機材といsてボンバルディアのグローバル6000を原型に搭乗するはずだ。さらにVIP用機材は各軍で広がっており、先述したC-37以外にC-20Cを大統領も使っている。
  4. ビジネスジェット機がもっと多くの任務をこなすことになりそうだ。機体サイズからコスト面で現存の情報収集監視機材より有利となる。大型爆撃機を簡単な偵察任務に投入しているが、はるかに合理的な活用方法となる。
USAF
米空軍の E-11A BACN機
  1. 現時点で米陸軍は中古のボンバルディアダッシュ-8双発ターボプロップ機を低機能偵察機に転用する余地絵でRO-6Aとして2023年に稼働開始する。だが陸軍の使用機材ではすでに生産終了しているものがあり、G550のような機材に必要な装備を移したいと考えているのは米空軍のコンパスコール事例同様だ。
  2. 米特殊作戦司令部SOCOMも新型有人情報収集機材を調達して現状のU-28Aおよびビーチクラフト・キングエア原型のスパイ機の補助に充てる検討中だ。空軍の第645航空システムズ集団(特殊プロジェクト担当部門でビッグサファリの名称の方が知られている)と共同でSOCOMはドルニエDo-328ターボプロプ双発機をクーガーの名称で新型センサー他の装備試験用に飛ばしている。そのほかにも機密性の高い有人機装備があり、早晩後継機の検討に迫られるだろう。.
  3. G550をCAEWとして運用すればSOCOMにも情報集機材の選択肢が生まれそうだ。空軍特殊作戦軍団が供用中の機材は民間機原型でありビジネスジェットの投入はさらに訴求力を増すはずだ。
  4. 新型EC-Xは今後の米軍機材のトレンドの一部でビジネスジェットの大きさの機材がこれから特殊任務をより多くこなすことになりそうだ。■
Contact the author: jtrevithickpr@gmail.com

2017年7月20日木曜日

米空軍向け採用を狙うガルフストリームの狙いは特殊用途機の小型化


以下記事はガルフストリームが行ったメディアツアーの結果なので多分に同社の言い分が中心で内容は要注意です。こんな小型機でボーイング707原型機が行っているミッションがこなせるのなら大幅に運航経費がひらせていいのですが、大きいことはいいことだ、大は小を兼ねると信じる向きには簡単に信じられないでしょうね。


Gulfstream mounts pro-bizjet blitz ahead of major Air Force competitions ガルフストリームが空軍採用を期待しビズジェットを攻勢中

 By: Valerie Insinna, July 18, 2017 (Photo Credit: Gulfstream)

WASHINGTON — ガルフストリームは同社G550が空軍向け次期JSTARSおよびコンパスコールに採用されると期待し、空軍への営業活動を大々的に開始している。空軍は特殊作戦向け機材の次期機種検討も始まる。
  1. ガルフストリームはまず小型ビジネスジェット機でも要求水準は十分実現でき、大型旅客機は不要だと空軍の説得する必要がある。
  2. 「米国だけでなく世界各地で進行中の案件で商談していますが、根本的な課題は次世代機材はビジネスジェット機、旅客機のいずれを原型にすべきかという点です」とトロイ・ミラー同社軍用販売営業担当副社長が述べている。同社は報道陣を7月13日サバンナ(ジョージア州)に招き、G550生産拠点を公開し特殊用途への改装工程を見せた。
  3. ガルフストリーム社関係者はボーイングを名指さなかったが同社プレゼンテーションではJSTARSやコンパスコール向けにG550を提案する方がボーイング737-700のような旅客機を原型にするより優れているとの主張が中心だった。
  4. 「空軍が進める構想の方向性そのものについてはコメントできません。空軍上層部とは定期的に意見交換しています。空軍は当社機材の提供する性能に大きく関心を示していますよ」(ミラー)「最終的には空軍は最終決定を迫られます。どちらがふさわしいのか、どちらの提案が正しいのか。ただし世界規模での特殊用途の方向性を考えればビジネスジェットに向かうのが自然な流れと思いますよ」
  5. 今後数か月で空軍は特殊任務用機材二機種で重要な決断を迫られる。結果は各社競合にも影響を及ぼす。JSATRSの後継機選定は早くて来年初めでノースロップ・グラマンがガルフストリーム、L3と共同してボーイングに対抗している。ボーイングは737-700を提案し、ロッキード・マーティンボンバルディアとチームを組みグローバル6000ビジネスジェットを提示している。
  6. ガルフストリームはコンパスコールでも採択を期待する。同事業はボーイング、ボンバルディアからの抗議を受けており、両社の言い分は調達方針がガルフストリームに有利にというもの。
  7. さらにミラーはビジネスジェットは電子戦、ISR、高官輸送、空中早期警戒にも転用可能と同社が見ていると紹介。ガルフストリームはE-3AWACSやRC-135リヴェットジョイント後継機候補にもなるという。
  8. 「これまでは大型機が必要と思われてきたミッション多数で旅客機を原型にしてきましたが今やガルフストリームが適正機材になっています。当社は各分野での応用に前向きに取り組んでいます」(ミラー)
  9. 「空軍は開かれた対話に前向きで当社製品の性能と将来のミッション要求内容に関する意見交換に乗ってくれています。二種類の機材で先入観による判断は働いていないことに自信があります。既存機種から推測が生まれがちですが当社は大きな可能性を見ています」
  10. 興味深いのはガルフストリーム社幹部が同業他社に言及しなかったことで、ボンバルディアはその例だ。そのかわりにG550のコスト低水準や高高度でのミッション能力、高速性能、中距離飛行性能が民間旅客機よりも有利だと主張した。
  11. G550の上昇限度51千フィートは通常の旅客機より10千フィートほど高いとミラーは指摘し、軍用装備で若干の高度性能、速度や航続距離が下がるのは共通と指摘した。
  12. JSTARS(共用監視目標捕捉攻撃レーダー機)の場合は地上、空中共に監視し戦場の全体像を作る必要があり、高高度飛行性能は有利に働く。悪天候や他機の飛行も避けられるとミラーは指摘。
  13. また同機の速度マッハ0.85は民間旅客機平均0.82より高く、高高度に早く到達できる。長い航続距離は途中の給油回数を少なくし現地で長時間情報を集められるとミラーは述べた。
  14. 他方でボーイングは737を原型に特殊用途機材として売り込む意向で、空軍の現行特殊用途機はJSTARTSであれAWACSあるいはリヴェットジョイントまでボーイング製旅客機の軍用転用型が大部分だ。
  15. ボーイングと同社支持派の主張は737-700のサイズが大きいことが大きな利点になるという。余裕ある空間、出力、冷却能力で追加装備の搭載が将来に発生しても対応できるからだとする。
  16. だがガルフストリームの言い分は違い、大きすぎることが良いとは限らないとする。
  17. 「拡張の余裕があるということはミッションに必要以上の機数を提供することになりませんか」とミラーは言う。技術の進歩で装備は小型化し電力消費も少なくなり、冷却の必要も減るということだ。人手も減るので乗員数も減らせるとミラーは続けた。■

2017年5月11日木曜日

★次期コンパスコールは商用機ベースで2020年代末登場。それまでEC-130H供用を続ける。

日本でもC-130Hが供用中ですが....


A new Compass Call: The Air Force is replacing its Vietnam-era electronic warfare planes

By: Stephen Losey, May 4, 2017 (Photo Credit: Stephen Losey/Staff)

  1. 知名度が低いが対イスラム国で最重要装備品といえるのがEC-130Hコンパスコールで、複雑な通信妨害装備を老朽貨物機に詰めこんでいる。
  2. 十数年かけてコンパスコールに新しい生命が吹き込まれる。2029年末までに米空軍はEC-130Hの搭載装備品を新型機材10機に移植する。新機材はEC-Xと呼ばれる。
  3. 現在15機あるEC-130H各機は数十年の機齢で老朽化が目立つ。第386派遣飛行隊が中東に展開中だが運用機材は1973年調達が一機、もう一機は1964年初飛行の機体だ。EC-130Hは1983年に開発開始され、旧型C-130を利用している。
  4. 各機は米軍の主要作戦に毎回投入されてきた。コソボ、ハイチ、パナマ、リビア、イラク、セルビア、アフガニスタンとつづき、2004年から米中央軍を支援している。コンパスコールは毎日飛んでISIS戦闘員間の通信妨害により連合軍のイラク軍支援で有効手段となっている。
  5. 「交信できなければ戦闘もできない。極めて単純です」とジョシュ・コスロフ中佐(第43遠征電子戦闘飛行隊司令)が今年1月に386隊の本拠地で語っている。「われわれの仕事はダーイシュ通信網を大規模かく乱することです」ダーイシュはISISをアラブ世界で軽蔑的に呼ぶ呼称である。
  6. だが機齢四十年、五十年になる機体を中東のような過酷な状況で集中的に飛ばすのは相当困難な仕事だ。
  7. ジョン・カリム中尉は第43隊で整備員34名を統括し機齢だけが「理由でなく故障が多くなっている」という。コンパスコール各機では構造上の定期点検の必要があり、整備陣も各機の配線やエンジン状況を注視している。古い機体に最新電子戦装備を乗せると面倒な状況も起こる。EC-130Hの機体は「もともと現在の任務用には作られていない」とカリム中尉も言う。
  8. 空軍は既存の商用機調達に傾き、専用機材の開発は断念して新EC-Xとすると空軍報道官エミリー・グラボウスキ大尉が伝えている。
  9. 現在のコンパスコールの契約企業L3コミュニケーションズが機材を選択と装備品搭載を担当するとグラボウスキ大尉は説明し、米空軍はL3に特定の機材の指定をしないという。
  10. 「契約企業主体で行う選定なので空軍は結果をあらかじめ予測できない」とグラボウスキ大尉は述べ「選考過程と結果を尊重しつつ要求内容が実現するよう期待する」
  11. EC-Xコンパスコール一号機は2020年末に稼働開始すると空軍は期待しているとグラボウスキ大尉は述べ、残る機材も2020年代中に配備され、EC-130Hは全機退役させる。
  12. グラボウスキ大尉の説明ではコンパスコールの機材切り替えに今後10年間で20億ドルを10機と初期予備部品をインフレを考慮して算定している。
  13. 現行機材を30年供用し続けた場合と比較すれば新型機導入で「数十億ドル」の節約になるというがグラボウスキ大尉は節約効果の詳細を明らかにしなかった。
  14. 空軍参謀総長デイヴ・ゴールドファイン大将は議会で証言し2017年度に国防費制限措置を継続すれば新型コンパスコール機の配備にも遅れが生じると警告していた。
  15. グラボウスキ大尉は予算制限措置を通年で行うとEC-X一号機の調達も最低12か月遅れると述べている。その間空軍は旧式コンパスコール機材を補修しながら供用することになり3億ドルの追加予算が必要となると述べた。■