
待望の極秘B-21レイダー爆撃機(潜在的に最高性能のステルス機)は
今年後半に実機が公開される

ノースロップグラマンが主導するB-21の取り組みは、長距離打撃爆撃機(LRS-B)という控えめなタイトルで2015年に始まり、それ以来、秘密主義のベールに筒あmれて機能している。最近では、高解像度カメラがここまで普及しているもかかわらず、B-21の画像は7年間の開発期間中、6機のテストモデル機が完成間近であるにもかかわらず、1枚もインターネット上に流出していない。
この新型ステルス爆撃機は、伝説的な前身であるノースロップ・グラマンのB-2スピリットの成功の上に成り立っているが、少なくとも「2世代」先のステルス技術を活用していると言われる。それ自体、重要な主張である。B-2は四半世紀前から運用されているにもかかわらず、いまだに世界で最高のステルス機と言われている。
34年ぶりの新型ステルス爆撃機
1988年11月22日、ノースロップのパームデール組立工場の巨大格納庫の扉が、歓声に包まれ開いた。陽光に包まれ、黒くなめらかな機体がゆっくりと姿を現した。1920年代にソビエトのチャイラノフスキーBIChシリーズ、1940年代にノースロップ社のYB-49など、歴史上開発された全翼機に似た翼幅172フィートの機体は、本来不安定な設計を全く別の目的に活用した。
当時空軍長官のエドワード・C・オルドリッジ・ジュニアは、「単にアメリカの最新戦略爆撃機を発表しているのではありません。戦略的抑止の新時代を切り開いているのだ」と挨拶した。
初期の全翼機は、空力効率の実験用だった。全翼機の設計では、垂直尾翼で抗力を増加させる代わりに安定性をもたらす装備を排除している。そのため、全翼機は、燃料効率を高める手段と考えられていた。確かに全翼機は空力的に効率的だが、胴体がないため、翼自体の垂直方向の厚みや、乗客や機材を収容するための機体高が必要となり、空力効果が限定されてしまう。

試験飛行中のノースロップ社製YB-49 (Wikimedia Commons)
しかし、新型爆撃機B-2の洗練されたデザインは、無給油航続距離7,000マイル近くを誇るにもかかわらず、燃費重視で設計されたものではない。ステルス技術を駆使し、世界最先端の高性能防空システムの突破を目的に作られたのである。
アメリカ政府は1980年に初めてステルス技術の存在を認めたが、それまではステルス機は誰も見たことがなかった。1983年に就役したF-117ナイトホークが一般公開されるのは、2年後だった。
記者や野次馬は、機首を向けたまま爆撃機の後ろ姿を見ることは許されなかった。公開の翌日、エドワード・C・オルドリッジ・ジュニア空軍長官は、「報道陣以上にソビエト軍を近づけさせない」と言ったとワシントン・ポストが伝えていた。新型爆撃機の機体だけでなく、採用された技術があまりにも重要だったのだ。
当時は、ソ連がB-2技術を真似て、自国のステルス爆撃機を開発する懸念があった。

B-2スピリット公開時のパブリックビュー (Wikimedia Commons)
34年がたち、アメリカはステルス爆撃機技術の独占を何とか保っているが、リードは消えつつある。中国とロシアがステルス爆撃機運用を開始しただけでなく、さらに高度な防空システムで、スピリットのステルス性が相殺されている。
アメリカは新しいステルス爆撃機を必要としている。来る12月の第1週目には、B-2と同じパームデール組立工場から、新型機が送り出される。
ノースロップ・グラマンB-21レイダーもまた、歴史に見られる全翼機のデザインに似ている。しかし、スピリット同様に、レイダーの単純に見える外形には、戦場での能力における技術の大きな飛躍が隠されている。レイダーは、60,000ポンド積載量を誇るB-2スピリットより小型になる予想だ、サイズの不足を性能で補うことができるだろう。
B-21はF-35やF-22より高ステルス機になる
B-21は、B-2が飛行を開始して以来、ステルス設計における30年以上にわたる価値ある進歩の恩恵を受け、新しい爆撃機を検出し、ターゲットにす敵の努力を無効にできる合理的かつ効果的な形状となる。
ステルスの基本は、ソ連の物理学者であり数学者であるピョートル・ウフィムツェフの研究から生まれた。1971年9月に空軍の外国技術部が翻訳した「回折の物理理論におけるエッジ波の方法」という40ページに及ぶ学術論文は、本国ではほとんど評価されなかった。しかし、翻訳がスカンクワークスの数学者でありレーダー専門家でもあるデニス・オーバーホルサーDenys Overholserの手に渡った。ウフィムツェフは「ステルスの父」と呼ばれるが、その研究を応用し、3次元航空機のレーダー断面積を計算する数式を考案したのはオーバーホルサーであり、将来の利用への道を開いた。
しかし、計算は難しく、レーダー偏向設計の複雑さは、コンピュータが登場してもなお、手に余った。ホープレスダイアモンドとそこから生まれたF-117ナイトホークのギザギザの角度は、このステルス計算と空力的要求の間の難しい妥協の結果だ。ロッキードとF-117の契約を争い敗れたノースロップも、ステルスの野望をあきらめず、そこで得た教訓を新しいプラットフォームに展開し、ロッキードのナイトホークを上回る性能の飛躍的な向上を実現した。
その後、計算機性能は飛躍的に向上し、より小型のステルス機の設計が可能になった。今日、ステルス性と空気力学の間の妥協は、はるかに少なくなっており、B-21は、着実に改善された設計概念の最新の成果だ
進歩の結果はF-35やF-22のような現行のステルス戦闘機に見えるが、ノースロップB-2がこれらの第5世代戦闘機のいずれよりも高ステルスであるというと、多くの人が驚くだろう。

第4世代(非ステルス)戦闘機と第5世代(ステルス)戦闘機のレーダー探知時の単純比較
全翼機のステルス効果とは
B-2スピリットの初飛行は1989年で、F-22が就役する16年前、F-35が海兵隊で初期運用能力を獲得する26年前だった。ステルス戦闘機は、戦闘機領域における全体的な低観測性では、実質的に比類なき存在だが、B-2は最先端ジェット機のいずれより検出および追跡が困難な性能を維持している。B-21レイダーで優位性をさらに拡大することになる。
戦術戦闘機には曲技飛行が要求されるため、F-35のような戦闘機には操縦性と制御のため垂直尾翼が必要である。
戦闘機設計は、高周波レーダーシステムに対する探知性を制限するため最適化できるが、それでも、低周波の早期警戒アレイに対しては、リターンが発生する傾向がある。実際、レーダーリフレクターや外部燃料タンク、弾薬なしで飛行していても、航空管制レーダーがステルス戦闘機を発見することは珍しくない。

by Rebecca Grant, Mitchell Institute, 2010
一方、B-2スピリットやB-21レイダーのようなステルス爆撃機は、戦闘機に求められるような高Gスタントを行う必要がないため、尾部などステルス戦闘機によく見られる部分を省略できる。そのため、高周波の火器管制レーダーで狙われにくいだけでなく、低周波レーダーでも発見するのが難しい。
ステルス性能の秘密をB-21がフル活用する

(Northrop Grumman)
B-21レイダーがB-2よりステルス性を高める理由は、デザインだけではない。現代の航空機は、デザインだけでは真のステルス性は得られません。レーダー吸収材(RAM)の層で覆われ、レーダーリターンを大幅に低減させることも必要だ。機体に小さな傷やひび割れがあると、ステルス機の外観が損なわれてしまうため、素材は機体の仕上げを滑らかにするのに役立つ。さらに重要なことは、RAMは航空機に当たるレーダー波を熱へ変換し、放散させることだ。
「RAMは、航空機が電磁波エネルギーを吸収して反射信号の強度を最小にする原理で機能する」と、エイドリアン・モリツAdrian Mouritzは学術書 "Introduction to Aerospace Materials "に記している。
現在のステルス戦闘機のRAMは、受信電磁波エネルギー(レーダー波)の70~80%を吸収する驚異的な性能を誇るが、非常に高価でメンテナンスに時間がかかり、高熱や水、塩などにさらされると破損しやすい欠点もある。RAM技術の開発は、防衛技術の世界では最も秘密にされているが、ノースロップ・グラマンが過去30年にわたり、この領域で前進を続けているのを示唆する証拠がある。

RAMコーティングを施されたB-2スピリット (Northrop Grumman)
2004年、ノースロップ・グラマンは、のB-2に代替高周波材料(AHFM)と呼ばれる新しいRAMコーティングを施すと発表した。新型RAMは、毎回のメンテナンスで約3,000フィートにわたるRAMテープを機体に貼る必要がなく、同じレーダー吸収性能を持ちながらメンテナンスを低減させることができる。しかし、そこで終わりではなかった。
2017年、ノースロップ・グラマンは、B-21レイダーの製造場所と同じカリフォルニア州パームデールに、新たな「コーティング施設」を建設するため3580万ドルを受注した。ただし、この契約と当時のノースロップのリリースでは、爆撃機の名前に触れていない。2021年になると、ノースロップ・グラマンはコーティング工程の進歩について、もはや恥ずかしがることはなくなった。B-21のコーティングのエネルギー吸収能力改善の可能性については言及しなかったが、ノースロップの爆撃機部門担当副社長スティーブ・サリバンSteve Sullivanは、新型爆撃機に活用される材料がB-2を大きく改善することは明らかだと述べていた。
「B-2や他のステルス機で学んだ教訓を応用し、デジタルエンジニアリング技術を用い、生存率と空力性能の両方の観点からB-2を大幅に改善した設計を実現しただけでなく、B-2システムのステルス性能と同様に保守性において革命的なコーティングシステムも実現しました」と、Breaking Defenseに語っていた。
以前の紹介したように、最近登場したセラミックベースのRAMコーティング(電磁エネルギーを90%以上吸収すると言われる)は、ステルスにおいて大きな進展となる可能性があります。この素材は砂より硬く、華氏1,800度以上の温度に耐え、既存のポリマー製RAMよりメンテナンスが大幅に削減されそうだ。
2020年、ノースカロライナ州立大学のチームは、空軍科学研究局からセラミックRAMコンセプトの開発継続契約を獲得した。この10年後に就航するB-21にこの素材が搭載される可能性は低いようだ。しかし、2012年時点で、一般雑誌Popular Scienceが、ノースロップグラマンの次期爆撃機を、従来の鉄をセノスフィアと呼ばれる中空のセラミック球体に置き換えた新RAMを開発するCeno Technologiesの取り組みと結びつけていた。
この球体をさまざまな材料で覆えば、軽量で耐久性のあるRAMができ、さらに特定の周波数でのレーダー波を吸収するようカスタマイズできる。B-21が実際にこのような高度RAMを使用するかは不明だが、ノースロップグラマンがこの件について口を閉ざしていることは予想される。RAM科学は、電子戦同様に、新しい進展を企業が口にしない傾向がある領域である。
(Northrop Grumman)
B-21は太平洋の抑止力で極めて重要な存在となる
太平洋における中国の海軍プレゼンスは、隻数ですでにアメリカの海軍を上回っているが、中国がアメリカの戦力投射能力に対して与えている最大の脅威は、隻数ではなく、対艦兵器システムの備蓄を増やしていることだの対艦弾道ミサイルは、DF-21Dのように1000マイルを超える射程を誇り、DF-ZF含む最新の極超音速対艦兵器は、現在の技術ではほぼ防御不可能と考えられている。
これらの兵器で、中国沿岸から1000マイル以上に及ぶ領域拒否の泡を作り、米空母がF-35CやF/A-18スーパーホーネットの戦闘出撃のため安全に接近して航行することを阻んでいる。アメリカの11隻のスーパーキャリアーのうち、たった1隻を比較的少数のミサイルで失うことは、第二次世界大戦でHMSプリンス・オブ・ウェールズやレパルスが日本の爆撃機に沈められたのと同様に、アメリカ海軍の軍事ドクトリンの基礎に壊滅的な打撃を与えかねない。実際、中国が採用している比較的低コストで高性能な対艦兵器の出現により、スーパーキャリアーの時代は終わったと主張する人も出てきた。
しかし、B-21レイダーは、低い観測能力、ペイロード能力、長距離ミッションセットのおかげで、この領域拒否の優位性を相殺できる。また、AGM-158B JASSM-ERのような長距離、低観測性兵器を運用できるため、探知されないまま文字通り数百マイル離れた場所から中国の既知の対艦兵器システムを攻撃することが可能である。
B-21レイダーと巡航ミサイル搭載潜水艦による早期攻撃で、米国は空母打撃群が接近し運用する道を効果的に切り開くことができる。
B-21レイダーは新世代の航空戦力の先駆けだ
20世紀後半、アメリカはF-15やF-16のような高性能戦闘機からB-2スピリットのような超ステルス爆撃機まで、航空パワー技術のグローバルリーダーとして台頭した。そして今、B-21が就役に向かっており、遠からずアメリカの格納庫を埋め尽くす多数の先進的機材のさきがけとなる。
B-21レイダーは2020年代半ばに就役し、次いで空軍の次世代航空優勢戦闘機が2030年代半ばに、海軍のF/A-XX戦闘機が直後に就役する予定だ。
B-21レイダーはB-2スピリットを置き換えるだけでなく、超音速重装備のB-1Bランサーにも交代する。空軍は新型爆撃機を100機以上調達する予定で、これまでに納入されたB-2の5倍にあたる。B-21レイダーは常にオンタイムかつオンバジェットと報告されている。
B-21レイダーのお披露目は、1988年の前任機のお披露目と同様にエキサイティングなことだ。B-2同様に、この新しい爆撃機は、アメリカの航空戦を一変し、潜在的な敵対者の戦闘計算を複雑にし、抑止力と戦闘能力の双方において、ステルスの水準を高める可能性がある。
34年前に発表されたB-2時と異なり、筆者はもう大人である。
だから、ノースロップグラマン...招待状を送ってもらえませんか?■
Alex Hollings
Alex Hollings is a writer, dad, and Marine veteran who specializes in foreign policy and defense technology analysis. He holds a master’s degree in Communications from Southern New Hampshire University, as well as a bachelor’s degree in Corporate and Organizational Communications from Framingham State University.