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2025年1月29日水曜日

米国の「敵意」を恐れるロシアが宇宙紛争を「早期にエスカレート」する可能性がある: ランド研究所の指摘(Breaking Defense)

 


RUSSIA-POLITICS-SPACE

2022年4月12日、ボストーチヌイ宇宙基地を訪問し、スピーチを行うロシアのプーチン大統領。 (写真:Yevgeny Biyatov/Sputnik/AFP via Getty Images)


NATOとロシア間の紛争において、先進的な対宇宙能力を有するだけでなく、ウクライナ侵攻で西側の宇宙資産を標的にする最も効果的な方法を学んだロシアへの準備を米国は求められる


宙空間における米国の先制攻撃に対するロシアの「膨張した」恐怖と、モスクワの「リスク許容度」の高まりが、天空の平和を維持したい米国の努力に課題をもたらしていることが、宇宙軍の委託を受けたシンクタンクの新しい研究で明らかになった。

 ランド研究所が本日発表した研究、"Emerging Factors for U.S.-Russia Crisis Stability in Space "は、サマー・アソシエイトのシャイアン・トレッターが執筆したもので、米国の政策立案者や外交官に対し、ウクライナ紛争におけるロシアの宇宙領域に関する「相対的な自制」を将来の紛争において期待すべきではないと警告している。

 ランド研究所の研究作業は、宇宙軍の最高戦略・資源調達責任者ショーン・ブラットン中将の委託を受け、ランド・プロジェクト空軍戦略・ドクトリン・プログラムの中で、2023会計年度プロジェクト「宇宙における危機安定」の一環として実施された。


 重要な問題は、宇宙における米国の軍事的意図に対するモスクワの超疑わしい見方が、ロシア軍をより攻撃的で引き金を引く姿勢に駆り立てていることである。

 「宇宙領域における米国の早期エスカレーションの誘因に対するロシアの懸念と、米国の敵意に対する認識は、宇宙における米国の行動に対する誤解の可能性を高めている。エスカレーション管理に対するロシアの新しいアプローチは、エスカレーションはコントロールできるとの信念に基づくコスト押し付け戦略であり、早期エスカレーションのインセンティブをさらに強める可能性がある」。

 実際、ロシアのアナリストの間では、モスクワの核抑止力の宇宙ベースの要素に対するアメリカの脅威や、ロシアから報復能力を奪うために、ワシントンが宇宙を利用した武装解除攻撃を計画している可能性を強く懸念する一派が存在する、と同調査は付け加えている。

 著者は2つの重要な提言を行っている:

「宇宙における米露の危機管理を担当する米政府関係者は、ロシアとな協力や意思疎通ができない不測の事態に備える必要がある。当局者は、エスカレーションのリスクを管理する米国の試みを複雑にする不確実性と膨張したロシアの脅威認識に満ちた意思決定空間をナビゲートする必要がありそうだ。

 「米国当局は、ウクライナ紛争中のロシア宇宙活動から、宇宙におけるリスク回避をロシアが示していると考えるべきではない。宇宙での戦闘計画がより明確になったため、ロシアの宇宙でのリスク許容度が高まっている可能性さえある。NATOとロシアの間で紛争が起きた場合、米国は、先進的な宇宙空間と対抗空間能力を保有するだけでなく、ウクライナ侵攻で西側の宇宙資産を最も効果的に標的にする方法の教訓を得た敵に直面する覚悟をしなければならない」。■



Fearing US ‘hostility,’ Russia could ‘escalate early’ in a space conflict: RAND

"In a conflict between NATO and Russia, the United States should be prepared to face an adversary that not only possesses advanced space and counterspace capabilities but has also learned lessons during the invasion of Ukraine about how to target Western space assets most effectively," finds a new Space Force-commissioned study.

By   Theresa Hitchens

on January 23, 2025


https://breakingdefense.com/2025/01/fearing-us-hostility-russia-could-escalate-early-in-a-space-conflict-rand/



2016年6月26日日曜日

宇宙アセットをどう守るか 米宇宙軍団が新構想を発表


各種宇宙装備は軍事作戦に不可欠な存在ですが、中国の衛星攻撃実験で(発生したデブリはどうするのでしょうか)、衛星の脆弱性が急にクロースアップされているという理解で正しいでしょうか。システム冗長性にくわえて防御のための攻撃能力開発が新しい切り口ですが、宇宙非武装化の概念が揺らいでいくのでしょうか。

By COLIN CLARK on June 20, 2016 at 4:01 AM

WASHINGTON: 米空軍宇宙軍団は宇宙空間での勝利への道筋を「宇宙事業構想」Space Enterprise Vision、 SEV との無害な表題の構想で発表した。
構想の存在は機密事項ではないが、内容の多くは機密扱いとなっている。
宇宙軍団広報官ジョン・ドリアン大佐はSEVを「わが方宇宙装備の復元力を強化し、能力を向上し、脅威に対応する能力のため必要な対策全部を包括的に展望しています」という。
現行の武器システム各種に加え計画中の装備ならびに訓練や機構運営の変更点が内容に網羅されている。ドリアン大佐によればSEVは政府全体で進める宇宙ポートフォリオ検討SPRの直接の成果ではないというが、「関連はある」という。その大きな理由にSPRが扱う米スパイ衛星群は宇宙軍団の管轄外のためと記者は考える。
構想に宇宙問題専門家が好意的な見解を示している。「米政府がやっと国家安全保障問題として宇宙空間を真剣に見るようになったのはよいこと。長い間にわたり話題だけで行動はなかった」と語るのはテレサ・ヒッチンス(メリーランド大国際安全保障研究センター主任研究員)だ。
ただしこれまで見過ごされてきたわけではない。「宇宙装備ではこれまで『単一点故障』に近い水準しか許されてこなかったのです」とヒッチンスは述べ、一回の事故あるいは攻撃により中核機能が失われる事態を指している。「これではだめで、米国どころか世界の安全保障に有害です。なぜならそのためにこちら側装備を標的にする勢力が出てくるためです」
ジョン・ハイテン大将(空軍宇宙軍団司令官)も4月11日配信の空軍記事でこれを認めている。
「米国の軍事宇宙衛星の大部分がそもそも脅威を想定しておらず、長期間にわたり機能し効率を維持するつくりになっている。数十年にわたりシステムが機能する装備も中にはある」と発言している。「脅威を想定しないため設計で稼働期間と価格が重要な要素となり、ミッションにも反映されている。しかし今となると宇宙軍装備としては不適当と言わざるを得ない」
ヒッチンスが評価する進展は次の通りだ。
  • 「宇宙空間での状況把握能力改良」
  • 「IC(各情報機関)と軍の間に見られる宇宙装備に関する認識の違いを埋める努力(これは深く深刻な問題で克服の必要がある)」
  • 「回復力」
  • 「ミッションの成功のために装備を分散すること」
  • 「同盟各国と協力して冗長性を確保すること」
  • 「分離(戦略上重要な装備と戦術戦装備を区別すること)」
だがヒッチンスは「全部20年前に実施しておくべきことだったのにまだ実現していない」と付け加えた。
今回の構想で述べた新技術開発で情報諸機関が大きな役割を果たす。省庁間共同宇宙作戦センター (JICSPOC) が実戦演習を行い指揮統制手順やシステム各種をこれから作っていくためだ。公式説明では国家偵察局(NRO)が米スパイ衛星群の製造運用の監督機関で空軍とともにSEVの実施調整にあたるとハイテン大将は説明している。
空軍の公式説明ではSEVの新しい概念に「復元能力」があり、「宇宙配備装備が既知の脅威対象全般にどこまで対応でき、どれだけ迅速に将来の脅威に適応できるか、一方で宇宙から各軍や同盟軍に支援を引き続き提供していく」としている。ここで消えたのが「機能有効性」による評価の概念でこれまでの衛星の運用や設計に用いられてきた。旧基準は「これから登場する脅威に対応しきれない」と公式説明は述べている。
高復元力の宇宙装備を作る根本的な理由のひとつに衛星地上局でこれまでより多くの衛星を自動管制できるようになったことが挙げられよう。管制員をデータ遠隔測定、追尾、通信の仕事から解放し人員削減が可能となる。
地上局の機能強化と並び、宇宙軍団はシステムを冗長に保有し、代替システムもあり、アメリカの全力を経済、外交、軍事で行使し、敵勢力に対してこちら側衛星を攻撃する代償は高くつくと理解させようとしている。
SEVの機微部分は宇宙対抗装備、攻撃兵器の開発配備に関する予算だ。これにヒッチンスが憂慮している。
「米国がここまでの能力を必死に開発すれば、新たな基準となってしまい、TCBMがすでに揺らいでいることもあり、健全とは言えません」という。ヒッチンスが言及しているTCBMとは透明性信頼性醸成手順 Transparency and Confidence-Building Measures のことだ。
なぜか。「三大宇宙利用国は危機エスカレーションにつながりかねない要素を理解しておらず危機が紛争に変わることもあり得ます」という。「強い姿勢を見せ、邪魔をする、強硬な態度はリスクを上げるだけです」
「各国には理解を深める時間がまだ残されており、武装化を性急に進める必要はないのでは」と主張する。
ドリアン大佐は抑止力の重要性を認めつつ宇宙対抗攻撃兵器の開発、配備の予算は極秘情報だとするが、2017年度予算案では宇宙対抗手段で支出予定が三倍に増えているのは周知の事実だ。■